柔道讃歌

柔道讃歌

かつて女三四郎の異名を取った天才女性柔道家の息子・巴突進太が、高校の柔道部に入部し、鬼コーチやライバルと鎬を削り成長していく姿を描いた熱血柔道漫画。『巨人の星』『あしたのジョー』の梶原一騎得意のスポ根ものだが、元天才柔道家の母とその息子、その母に恨みを持つ鬼コーチという三者の構図が梶原作品の中でも特異である。原作・梶原一騎、作画・貝塚ひろしで、両者の代表作の一つ。

正式名称
柔道讃歌
ふりがな
じゅうどうさんか
原作
作画
ジャンル
柔道
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概要・あらすじ

外房・九十九里の漁村で育った少年・巴突進太は、小柄ながら喧嘩に明け暮れる暴れん坊。母・輝子はそんな息子を叱るどころか、「勝って帰るまで家に入れない」と厳しく言い放つ気性で、2人は村で「母子シャチ」と呼ばれていた。母・輝子がかつて講道館で女三四郎の異名を取った天才柔道家だと知った突進太は、母の夢と執念を受け継ぎ、紅洋高校の柔道部に入部する。

同校に赴任してきた柔道の鬼・利鎌竜平は、巴輝子がかつて自分の兄を引退・自殺に追いやった女性だと知り、柔道部のコーチに就任。仇である輝子の息子への復讐を宣言する。こうして母子シャチ対柔道の鬼の激しく熱い戦いが始まった。

登場人物・キャラクター

巴 突進太 (ともえ とっしんた)

小柄な体格ながら、ケンカに強く、柔道に天賦の才がある。母子家庭に育ち、大のマザコン。母・輝子が作る「アジのタタキのシソの葉まぶし」と「オハギ」が大好物。初登場時は高校一年生。女三四郎の異名を取った天才女性柔道家の母の執念を継ぎ、紅洋高校柔道部に入部。「柔よく剛を制す」の夢を果たし、日本柔道再生のため、鬼コーチ利鎌竜平のもと、猛練習に明け暮れる。 以後、数々の柔道大会で活躍。日米柔道親善試合の選抜メンバーや講道館からの招待試合などを経て、柔道日本一を決める全日本柔道選手権大会に出場。一選手として大会に参加した利鎌と死闘を演じ惜敗するが、全日本4位となる。大会後、スカウトされ講道館に所属。 「講道館の星」「昭和の西郷四郎」の異名をとる。世界選手権大会で師であり生涯の敵である利鎌と再び対決する。必殺技は巴二段投げ、巴黒潮くずし、巴津波落とし、山嵐。

巴 輝子 (ともえ てるこ)

主人公・巴突進太の母で未亡人。突進太が子どもの頃から、喧嘩で負けて帰ると「勝つまで家に入れない」と再び喧嘩に戻るよう言い渡す激しい気性。ただ厳しいだけではなく、限りない愛情もそそぐ。旧姓は朝香で、講道館女子部で女三四郎の異名をとった天才柔道家。「柔よく剛を制す」の夢に憑りつかれ、タブーであった男女対決で利鎌竜平の兄・不忍剛介に得意技・巴投げで勝利。 しかし禁を破ったことで柔道界を追放される。力に頼る現在の柔道界を案じており、息子に自分の夢を託し、日本柔道の真の姿を取り戻そうとする。輝子に敗れた不忍剛介が失意の末に亡くなった話を聞き、利鎌竜平の復讐を甘んじて受ける覚悟をするが、利鎌の復讐の刃が息子の突進太に向けられたため、母子で利鎌と対決する決意を固める。 途中から利鎌の宣戦布告が突進太を奮起させるためのものだと気づき、利鎌と和解。恋愛感情を抱くが、そうと知った突進太の自殺未遂により破局する。利鎌が去った紅洋高校柔道部の特別コーチに就任。打倒利鎌に向けて息子を鍛え上げる。

利鎌 竜平 (とがま りゅうへい)

主人公・巴突進太の高校のクラス担任で国語教師。利鎌の姓は養子先のもので旧姓は不忍。文学青年だったが、講道館柔道六段の兄・不忍剛介が女三四郎・朝香輝子に敗北し、死に追いやられたことをきっかけに講道館に入門、柔道を始める。常軌を逸した練習や、山籠もり特訓で鬼利鎌の異名をとる。 修行の末、ついに殺人的必殺技・天地がえしを編み出すが、その技で数人の柔道家を半殺しにしてしまい、講道館を永久追放される。復讐のことも忘れ、県立紅洋高校へ赴任したところへ、仇敵、輝子の存在を知り、その息子・突進太への復讐を宣言する。以後、紅洋高校柔道部のコーチに就任。 殺人的なスパルタ教育で突進太をいじめぬくが、じつは突進太に「柔よく剛を制す」の可能性を見出しており、彼を奮起させるためであった。一時期、輝子と恋愛関係になるが、母を取られると感じた突進太の自殺未遂により破局。紅洋高校を去り、飛騨高校柔道部の監督に就任後、日米親善試合選抜チームのコ-チなどを経て、鬼道塾を設立。 講道館のスポーツ化した柔道と決別して、必殺武道としての柔道の復活を目指す。鬼道塾のアピールのため、一選手として全日本柔道選手権大会に出場。突進太との死闘を制し日本一に輝く。鬼道塾も軌道に乗り、自身も世界選手権大会に出場。必殺技・山嵐を引っさげた突進太と最後の師弟対決を行う。

不忍 剛介 (しのばず ごうすけ)

利鎌竜平の兄。柔道六段の猛者。講道館時代、朝香輝子に挑戦され、勝負を受けるも巴投げに敗れる。以来、「女に投げられた男」のレッテルから逃れることができず、田舎やくざの用心棒にまで身を落とし、ついには深酒と睡眠薬で死亡してしまう。

大東坊 一郷 (だいとうぼう かずさと)

紅洋高校柔道部主将。「全校の帝王」と呼ばれ、校長すらその力が及ばない学校の権力者。体重95kgの巨漢。他の運動部で暴れまわった巴突進太への報復として、柔道勝負を仕掛ける。柔道素人の突進太を圧倒するが、捨て身の巴投げに敗れる。突進太の才能に感服し、柔道部にスカウト。 以来ともに汗を流す親友として接する。巴輝子に憧れの情を持っている。

荒尾部長 (あらおぶちょう)

紅洋高校柔道部部長。講道館柔道五段の猛者で髭面の巨漢。虚栄心から、講道館時代、鬼と呼ばれた天才・不忍竜平を投げ飛ばしたと嘘をつく。しかし、利鎌竜平がその不忍竜平だと知ると、素直に謝り、柔道部コ-チに就任してくれるよう頼み込む。

春山 泰蔵 (はるやま たいぞう)

南総里見学園柔道部所属。体重120kgで「巨象」の異名を持つ。主人公・巴突進太が初出場した千葉県下柔道大会選手権・三回戦の対戦相手。圧倒的な体重で突進太を圧殺する。

ジャンボ・クイン (じゃんぼくいん)

全米女子プロレスチャンピオン。体重130kgの巨漢で、2流なら男性プロレスラーも軽くひねってしまうほどの実力者。120kgの春山泰蔵に敗れ、「柔よく剛を制す」の限界に悩んでいた突進太に見せるため、巴輝子が選んだ相手。賞金付きの観客飛び入り試合で輝子と闘う。圧倒的な体格差にもかかわらず、輝子の一本背負い、巴投げに失神する。 ベン・ワーロックの母。

青江 波子 (あおえ なみこ)

紅洋高校新聞部の女性。ミス紅洋高で、全校きってのインテリ美人。実家は九十九里沿岸きっての一流料亭。千葉県下大会優勝の取材で柔道部を訪れ、巴突進太に好意を示す。のちに柔道部のマネージャーとなる。

帯刀 省吾 (たてわき しょうご)

柔道の名門、東京の極東高校柔道部主将。60秒以内に必ず相手を仕留めることから「秒の殺し屋」の異名を持つ天才児。主人公・巴突進太最初のライバル。対抗試合のあと、突進太に喧嘩を売られ、九十九里浜で私闘を行う。圧倒的な差で勝つが、敗北よりも死を選ぶ突進太の闘争本能に負けたといい、将来のライバルの出現を予感する。 必殺技・大竜巻落としの使い手。関東高校柔道選手権大会団体戦準決勝で巴突進太と戦い、巴二段投げに敗れる。のちに必殺の柔道を目指して利鎌竜平が開いた鬼道塾に参加。必殺技・天地がえしをマスターする。

ベン・ワーロック (べんわーろっく)

巴突進太のライバルの一人。身長1m90cm、体重160kg、鍛え抜かれたボディビルダーのような体を持つ高校生。元全米女子プロレスチャンピオン、ジャンボ・クインの息子。母を手玉に取った柔道の奥深さに感動して来日。アマレスの選手だったが、神奈川のアメリカン・スクールで柔道部を設立した。 練習試合で天才児・帯刀省吾と時間切れ引き分けを演じた強豪。必殺技・回転地獄転がしの使い手。関東高校柔道選手権大会個人戦の決勝で、巴突進太と死闘を演じる。

帯刀 エリカ (たてわき えりか)

帯刀省吾の妹でロングヘアーの美少女。学力に優れ、スポーツ万能の兄を誇りに思っている。

天童 高志 (てんどう たかし)

飛騨高校柔道部主将。巴突進太のライバルの一人。中学二年の時に山で大イノシシを倒し、猪鍋にして食べたというエピソードの持ち主。猪の毛皮を被っている。利鎌竜平監督の特訓で必殺技・天地がえしをマスターする。全国高校柔道選手権大会団体戦決勝で巴突進太と戦い、必殺技同士の衝突で引き分け。 両校同点のため行われた再戦では、巴二段投げからの巴黒潮くずしに敗戦。しかし翌日行われた個人戦では、空中で審判の肩を足場にして天地がえしを放ち、突進太に勝利する。のちに必殺の柔道を目指して、利鎌竜平が開いた鬼道塾に参加。

緋文字 金城 (ひもんじ きんじょう)

全国高校柔道選手権大会沖縄県代表・残波岬高校柔道部主将。長身長髪。少林寺拳法をマスターしており、強烈な払い技を使う。米軍占領下の沖縄で妹を米兵に轢き殺された恨みで、アメリカ人のベン・ワーロックに復讐しようと大会に参加する。

ストーン・モーガン (すとーんもーがん)

サクラメント市で行われた日米柔道親善試合で巴突進太が対戦した相手。黒人の巨漢。頭で無造作にブロックを叩き割り、バットもへし折るウルトラ石頭。頭部へダメージを与える必殺技・巴黒潮崩しが通用しないと目された。

アニマル・モーガン (あにまるもーがん)

ストーン・モーガンの兄。長身の黒人空手家。弟を破った巴突進太をビルの屋上で襲う。ビルから落として殺そうとするが、逆に命を救われ、感動して親友となる。突進太に組手を払うための空手の手刀を指導する。

マックス・ゲーリング (まっくすげーりんぐ)

巴突進太のライバルの一人。日本柔道界を征服したアントン・ヘーシンクの秘蔵っ子。強豪ベン・ワーロックを16秒で気絶させた超巨体の怪物。西ドイツ・ベルリン出身。13歳でオール西ドイツ少年柔道大会に優勝。ヘーシンクに弟子入りし、柔も剛も備えた柔道を体得する。講道館柔道で修業中、巴突進太と出会い、全日本柔道選手権で死闘を演じる。 必殺技・ヘーシンク式原爆落としの使い手。

アントン・ヘーシンク (あんとんへーしんく)

1964年の東京オリンピック柔道無差別級で初めて日本人を下して金メダルを獲得。柔道日本にとどめを刺したオランダの柔道家。柔も剛も制した天才柔道家で、のちにマックス・ゲーリングに天賦の才を見出し、柔道をマックスに任せて自分は新天地プロレスの世界に飛び込む。巴突進太やマックス、利鎌竜平が参加した全日本柔道選手権大会には、ジャイアント馬場やザ・デストロイヤーとともに試合を観戦。 突進太の巴津波落としを見て、マックスに殺人技ヘーシンク式原爆落としを使用するよう命令した。実在の柔道家、アントン・ヘーシンクがモデル。

秋月 影也 (あきづき かげや)

示現流殺倒流の総師範・秋月要助の息子で、同流派の秘密兵器と言われる。巴突進太や利鎌竜平らと並んで、世界選手権大会出場メンバーに選出される。逆二丁投げなど、現代柔道には無い逆関節技を極める荒技を使う。世界選手権大会で突進太と対戦、必殺技・山嵐に敗れる。

集団・組織

鬼道塾 (きどうじゅく)

『柔道讃歌』に登場する組織。必殺の柔道を標榜する利鎌竜平が講道館に対抗して設立した団体。黒い柔道着と、胸の「鬼」の字がトレードマーク。利鎌が全日本柔道選手権大会に優勝したことで全国の若者が集まり、柔道界の一大勢力となる。利鎌の愛弟子である天童高志はもちろん、帯刀省吾も参加。巴突進太は悲願の打倒利鎌を果たすため、鬼道塾には参加しなかった。

示現殺倒流 (じげんさっとうりゅう)

『柔道讃歌』に登場する組織。秋月要助総師範率いる古流柔術の一流派。講道館柔道のせいで古流柔術が廃れた歴史があり、四代にわたって打倒講道館を目指す。世界柔道選手権に代表選手を送ろうと、ヌンチャクを使って闇討ちを行うなど卑劣な手も使うが、利鎌との私闘を通じて改心。正々堂々と世界柔道選手権選抜試合に参戦する。

その他キーワード

天地がえし (てんちがえし)

『柔道讃歌』に登場する必殺技。講道館の鬼と言われた利鎌竜平が編み出した技。体落としを連続でかけるため、相手の体が高く舞い上がり、受け身不能となる。殺人的な威力を持ち、何人もの柔道家を半殺しにした。

巴二段投げ (ともえにだんなげ)

『柔道讃歌』に登場する必殺技。巴突進太が帯刀省吾を倒すために特訓し開発した。巴投げで相手を投げたあと、空中でさらに投げを打つ。空中高くから落下するため、相手は受け身がとれない。二段目の投げの際、突進太の首に足を引っ掛けた利鎌竜平によって破られる。

大竜巻落とし (おおたつまきおとし)

『柔道讃歌』に登場する必殺技。帯刀省吾が使用する。一本背負いなどで敵を投げた後、敵に体当たりし、竜巻のように回転させ頭から落とす技。回転中に襟首をつかんだベン・ワーロックによって破られた。

回転地獄転がし (かいてんじごくころがし)

『柔道讃歌』に登場する必殺技。ベン・ワーロックが使用する。ジャイアントスイングしながらブリッジし、猛スピードで相手を投げ転がす技。捕まる瞬間身体をひねり、うつぶせ状態になることで巴突進太に破られた。

巴黒潮くずし (ともえくろしおくずし)

『柔道讃歌』に登場する巴突進太第二の必殺技。相手をつかんだまま回転する連続巴投げ。敵は脳天を何度も叩きつけられ、大ダメージを受ける。全国柔道大会の天童高志戦では、巴二段投げと見せかけ、空中で回転して巴黒潮くずしを放った。

巴津波落とし (ともえつなみおとし)

『柔道讃歌』に登場する、巴突進太第三の必殺技。全日本柔道選手権大会に出場するにあたって、母・輝子とひたすら巴投げをかけあって開眼した。巴投げで相手を空中にほうり上げ、それを追うようにジャンプ、両足をつかんでそのまま落下する。顔面を畳に打ち付けたあと、さらに両足をもって投げ、相手の後頭部を畳に叩きつける。

ヘーシンク式原爆落とし (へーしんくしきげんばくおとし)

『柔道讃歌』に登場する必殺技。アントン・ヘーシンク直伝の技で、マックス・ゲーリングが使用する。相手を空中高く放り投げ、落下時、体当たりでもう一度空中に放り投げ、背骨をへし折る殺人技。

山嵐 (やまあらし)

『柔道讃歌』に登場する必殺技。巴突進太が講道館に入門し体得した第四の必殺技。相手の重心を最短距離にくずして、最大速力で叩きつける「柔よく剛を制す」の極意の化身のような技で、実在の天才柔道家・西郷四郎が得意とした。作中では相手を高く投げ飛ばす殺人技のように描かれるが、富田常雄の小説「姿三四郎」の必殺技・山嵐のイメージに準じていると思われる。 実際は片側の襟と袖をとり、背負うようにしながら足を払って畳に投げつける技である。

アニメ

柔道讃歌

九十九里で育った巴突進太は喧嘩好きの暴れん坊。進学した紅洋高校の柔道部主将大東坊に見込まれ、柔道部に入部。かつて講道館の{女三四郎}と呼ばれた母巴輝子の教え、恩師となる利鎌竜平や様々なライバルたちとの... 関連ページ:柔道讃歌

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