拝啓、旧人類様。

拝啓、旧人類様。

謎の現象により人類が滅亡した後の地球が舞台。人類滅亡後はるかな時を経て新たに誕生した「新人類」たちが旧文明の文化を解き明かしていくというストーリー。しかし、一見シビアな設定に対してその本質はSFの舞台を借りた社会風刺ギャグである。はるかな未来で出土した現代日本文化の化石を、ごくごく偏った知識で真面目に、しかし明らかに誤った方向に考察していく新人類は実にシュールで笑いを誘う。また芸能人や他作品のパロディが豊富に含まれるのも特徴。「月刊! スピリッツ」2011年6月号から2013年5月号まで連載された作品。

正式名称
拝啓、旧人類様。
ふりがな
はいけい きゅうじんるいさま
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
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概要・あらすじ

20XX年、地球はのちに「残念なお正月」と呼ばれる謎の現象に見舞われ、すべての人類が絶滅してしまった。しかし、それから遥かな時を経て、地球には新しい人類「新人類」が誕生する。新人類はほぼ荒野と化した地球を復興するため、絶滅した旧人類の化石の発掘に着手。さらに発掘した化石を復活させる装置の開発に成功し、旧人類の知恵を借りた地球復興を試みる。

しかしその中で、旧人類の中には地球再興には必要のない人間がいることも判明する。そこで新人類は旧人類研究家として名高い教授を筆頭に、掘り起こした旧人類の化石を復活させるべきか否かを問う「方舟評議会」を結成。地球復興のため、旧文明の解明のため、今日も評議会では激しい議論が交わされる。

登場人物・キャラクター

(みね)

旧人類研究家として高い名声を誇り、方舟評議会議長を務める男性。また、ニュウ東京大学では峰ゼミナールという旧人類研究ゼミの講師を務める。Dr.富士のもとで研究に勤しんでいた頃から類まれなる才能を発揮し、富次郎とともに「2人の天才」と呼ばれたほどの才覚を持ち、幅広い知識と固定概念にとらわれない発想力、着眼点で旧人類の文明を解き明かしていく。 また旧人類のさまざまなファッションで身を固めた姿は、オピニオンリーダーとして絶大な支持を受けている。自他ともに認める旧人類信仰者でもあり、「旧人類に無駄な種は1人もいない」という持論を持つ。それ故に方舟評議会において不要とされた旧人類の化石が処分されることには胸を痛めている。

わかば

峰の助手を務める青年。無造作に固めたオールバックの髪型と目鼻立ちの整った精悍な顔つきが特徴。事務的で無愛想、他人からの接触を極端に嫌う孤立主義者であるが、峰にだけは絶大な信頼を寄せており、非常に甘い。過去に旧人類研究者を目指した経緯から、分野によっては師である峰からも助言を請われるほどに深い知識を有する。しかし、その知識が披露されるのはあくまで峰のためだけであり、普段はそれを隠し通している。 ちなみに方舟評議会研究班のリーダーであるうるまは実の兄だが、わかばは天敵と呼べるほどにうるまのことを嫌っている。

富次郎 (とみじろう)

旧人類研究家であり、峰の先輩にあたる男性。方舟評議会の初代議長を務めた経歴を持つ。非常に温厚な人物であり、他人を非難することはほとんどない心優しい性格の持ち主。また旧人類研究家として優れた知識と観察眼を持ち併せ、旧人類研究の第一人者であるDr.富士のもとで研究をしていた頃から峰と並んで「2人の天才」と評されていた。 しかし温厚すぎる性格や旧人類への深い愛情が災いし、方舟評議会において不要とされた旧人類の化石が処分されることに心を痛め、第7回評議会を契機に議長の座を辞退。のちに引きこもり、失踪する。その後、助手ののぶ代とともに再び方舟評議会の場に姿を現すが、旧文明きっての奇病である「中二病」に罹患しており、自身を「皇凶夜」と名乗る。 そして、旧人類を身勝手な理由で処分する方舟評議会に敵対すると宣言した。なお、以前はメガネをかけたぽっちゃり体型だったが、中二病発症後は顔のたるみも引き締まり、スマートな体型になっている。趣味は昆虫採集とテーブルカードゲーム。

のぶ代 (のぶよ)

富次郎の助手を務める女性。愛する旧人類の化石の処分に心を痛め、方舟評議会議長の座を峰に明け渡した富次郎とともに失踪。それ以来音信不通となっていたが、富次郎とともに方舟評議会の会場に姿を現す。もともとは目の隠れるほど長い前髪を持つ冴えない風貌であり、自己主張の控えめな大人しい性格だった。しかし中二病に罹患したことで、髪を金髪に染め上げ、額が見えるパッツン前髪にするなど変化が見られる。 また大人しかった性格もやや暴力的で自己主張の激しいものに変わっている。

うるま

わかばの兄であり、評議会研究班のリーダーを務める人物。容姿はわかばと瓜二つだが、寡黙ながら激情家のわかばと異なり、非常に柔らかい物腰の性格を持つ。しかし、人当たりが良いのはわかば以外の人間に限ってのことで、わかばに対してはいつも小馬鹿にするような振る舞いをとる。そのため兄弟仲は悪いを通り越して険悪であり、特にわかばからは忌み嫌われているといってもいいほどである。 また、温和で人当たりの良い表面的な態度に反して内心になんらかの思惑がある素振りを見せており、信用のできない人物である。評議会研究班のリーダーを務めるだけあって、旧人類の文化などには深い知識を持ち、さまざまな科学アイテムを開発する天才でもある。

Dr.富士 (どくたーふじ)

峰と富次郎の恩師であり、旧人類研究の第一人者。また旧人類を化石から蘇生する旧人類化石蘇生装置を開発した偉大な人物。ニュウ東京大学で教鞭を取っていたが、峰と富次郎がまだ学生の頃に病によって入院。病床でも旧人類の文化についての疑問に思考を巡らせながら、「中二病には気をつけろ」と遺言を残し、峰と富次郎に看取られながら息を引き取った。 晩年は語尾に必ず「~なう」を付ける話し方をしていた。

シェフ種

方舟評議会によって復活を果たした男性型旧人類の1人。復活を果たした後、ノアハウスに保護されており、日がな一日笑顔を作る練習をさせられている。本人は「復活する前自分は料理人だったはず」と主張しているが、峰らにとってシェフと料理人は別であり、シェフとは「バラエティに出演して、笑顔を振りまくもの」と考えられているため、希望が聞き入れられていない。 その後、笑顔に媚びが足りないというわかばの助言を得て、復活前のような笑顔を作り出すことができるようになった。実在の人物、川越達也がモデルと思われる。

テニス種

方舟評議会によって復活を果たした男性型旧人類の1人。他に復活を果たした旧人類とは違い、峰らが文献から得たとおりの性格のまま復活を果たしているため、他の旧人類種のように何かしらの行動を強要されることなく、ノアハウスで自由な生活を送っている。非常にうるさく、いつでも元気いっぱい。他人に対し「もっと頑張れ」と励ましの言葉を送ったり、常に前向きでいるような心構えを促すのが特徴。 また文献によれば地球温暖化の一因になったとされている。実在の人物、松岡修造がモデルと思われる。

カリスマ種

方舟評議会によって復活を果たした男性型旧人類の1人。復活を果たした後、ノアハウスで全面ガラス張りの部屋を与えられ、ただガラスを割ることを強要されている。また峰からはその他にも「教科書に落書きをする」「盗んでおいたバイクで走り出す」「支配から卒業する」「信じられない大人に反抗する」といった行動を半ば強引に推奨される日々を送っており、うんざりしている。 実在の人物、尾崎豊がモデルと思われる。

人間国宝(予定)種

富次郎によって復活を果たした旧人類の1人で、清滝荘で生活をしている。非常に傍若無人な性格、振る舞いを常とする種であり、清滝荘の一室を占拠。富次郎に女性と酒の提供を強要し、それが聞き入れられない場合は暴力まで振るう。また客人をもてなす手段として灰皿に注いだテキーラを一気飲みするよう求める行為などが見受けられる。 しかし、押しに強い一方で追い込まれると途端に弱気になる性質を持っており、わかばに攻撃を食らった際はすぐに尻込み、その場から逃げ出している。実在の人物、11代目市川海老蔵がモデルと思われる。

ゆとり種

方舟評議会によって復活を果たした3人の旧人類種。「あらゆる義務・道徳よりも自分が正しいと信じて止まない種族」と伝わっていたが、復活した際はやる気に満ち、非常に勤勉で礼儀正しい種族だった。このことから本来の性質を忘れてしまっているとして、ノアハウスでゆとり種本来の性質を取り戻すための再教育を受けている。再教育カリキュラムでは、常に生気のない顔をする、耳栓をして人の話を聞かない、挨拶をされても返事をしない、などゆとり種特有の性質を取り戻すため真剣に取り組んでいる。

素敵女子種

方舟評議会によって復活を果たした3人の旧人類種。それぞれに名前があり、かな、えり、りえという3人の個体が復活している。過去の文献によれば、飽食の時代にあって肥満を良しとせず、インド発祥のヨーガという精神修行に取り組み、また有機野菜や玄米食などを好む女性僧のような種族であったとされている。しかし復活後の観察では想像されていたデータとはかなり異なる性質を持っていた。

リア充種

富次郎によって復活を果たした男性型旧人類の1人。方舟評議会に宣戦布告をした富次郎が、自ら復活させた旧人類を集めていざ評議会に乗り込もうと意気込むなか、その意見を押しとどめ、復活した旧人類を集めてのバーベーキュー大会を提案する。若者言葉を多用し、人心を掌握する術に長けた人物だが、逆にノリの悪い者たちにきつく当たるという自己中心的な面を持つ。 「ちょ、待てよ」が口癖。実在の人物、木村拓哉がモデルと思われる。

ヲタ種

富次郎によって復活を果たした2人の男性型旧人類種。方舟評議会に宣戦布告をした富次郎が自ら復活させた旧人類を集めていざ評議会に乗り込もうと意気込むなか、特にそれについていくわけでもなく、またその後にリア充種の先導によって始まったバーベキュー大会の輪にも加わらず、ただ室内でテーブルカードゲームに興ずる排他的な性質を持つ。 しかし同種に対する嗅覚は敏感であり、また一度仲間と認めた相手には配慮を持って接する一面も持つ。

リーマン一家種

旧人類の生きた時代において、人類の8割を占めていたと言われる代表的旧人類種。この種を蘇生させることで旧文明の解明に大きな前進をもたらすとして、方舟評議会で蘇生することが決定した。しかし、蘇生直前になり、うるまが持ち込んだバーチャル少年によって峰がその記憶を体験したところ、家族や上司、友人からも疎まれ、儚い人生を送る記憶を垣間見てしまう。 このことで「これまで旧人類を復活させたのは傲慢だったのか」と峰が引きこもる原因となってしまう。

集団・組織

方舟評議会 (はこぶねひょうぎかい)

新人類が旧人類の化石を対象に、その旧人類種を復活させるべきか否かを問うために設立した特殊議会。初代議長は富次郎、現議長を峰が務める。評議会の主な目的は発掘された旧人類を蘇生し、その助力を仰ぐことで一度は滅んでしまった地球の再興を目指すというもの。しかし発掘された旧人類の中には地球再興の役に立たないものもおり、すべてを蘇生させる必要はないと判断。 このことから蘇生する前に各種族の生態や技能を審査するのが評議会の役割となっている。その名前やモチーフは、旧文明に伝わる大洪水が起きた際に記されたノアの方舟にちなむ。

場所

ニュウ東京大学 (にゅうとうきょうだいがく)

文明崩壊後の地球に存在する教育機関の1つ。新文明における最高学府の1つに数えられており、中でも旧人類の研究を行う文科1類に入学するにはかなりの知能が必要とされている。峰はこのニュウ東京大学で旧人類の文化を解明する峰ゼミナールで教鞭を取る人気講師。

ノアハウス

方舟評議会において蘇生された旧人類のために作られた住居施設。峰の提案によって建設されたもので、見た目は巨大な方舟のような施設となっている。なお、住居施設としてはもちろん、旧文明における生態とは異なる性質を持って蘇生してしまった旧人類種の矯正・再教育施設としても使用されており、そのために特別な部屋が設けられていたりもする。

清滝荘 (しゃどうぱれす)

方舟評議会の初代議長の座を退いた富次郎が現在住んでいる場所。外見は旧文明における日本の昭和時代にみられる木造の2階建てアパートのような古いもの。大家さんがいることから借家であることが分かる。富次郎はこの清滝荘を借り切って、自分が個人的に蘇生させた旧人類を住まわせている。

イベント・出来事

残念なお正月 (すーぱーのゔぁ)

20XX年に突如として地球を襲った謎の現象。この現象による衝撃で、全人類は死滅し、その文明もことごとくが破壊され、地球全土が荒廃した荒れ地になってしまっている。ただし、一部の物質や旧人類は化石としてその当時の姿のまま残されており、地球再興を目指す新人類にとっての重要な遺産となっている。

その他キーワード

新人類 (にゅうめん)

残念なお正月によってすべての人類が滅んだ後、時を経て地球に新たに誕生した人類全体のことを指す。残念なお正月によって荒廃した地球を再興させ、人類の繁栄を目指すという新人類全体の共通意識を持ち、そのためにかつての地球で繁栄を誇ったという旧人類の研究に余年がない。またこれは峰を始めとした旧人類研究家の教育の賜物でもあるが、多くの者は自分たちより旧人類のほうが知能的、道徳的、または人間として優れた人種であったと信じてやまない。 そのため化石から旧人類を蘇生させるという超高度な科学文明を持ちながらも、未だに旧人類の蘇生を試みている。ちなみに新人類は総じて優れた知性と道徳的観念を持っているが、ファッションという文化がないのか、男女の区別なく、一部を除くほぼ全員がダイバースーツのように全身にフィットする服を着用しており、またカラーリングも白一色である。

旧人類

かつて地球で繁栄を謳歌した人類のこと。残念なお正月によってすべての人類は絶滅してしまったが、新人類によって一部の人間や文明が化石となって残っていることが分かっている。この際、発掘された文献やデータから推測するに旧人類は「非常に高度で多彩な文明を誇り、また道徳的、知能的に優れた人間であった」とされており、まるで旧人類すべてが聖人であったかのように扱われることが多い。 発掘された旧人類は「人類」という大きな括りではなく職業や生態に応じて「○○種」と名付けられ、個人の特徴がまるでその種族全体の特徴であるかのように区分けされることが多い。また、旧人類の区分けや種族の特性は残された文献から推測することしかできないため、実際の個体と文献に伝わる種族の特徴に乖離が生じることもある。 なお、地理的な問題なのか、現在発掘されている旧人類の化石はほぼすべてが日本人、あるいは日本のものである。

トチジ

峰とわかばが旧人類化石蘇生装置によって小説家種を蘇生させた際に突如現れたロボ。白髪まじりの髪をなでつけて固め、メガネをかけた中年男性の顔を模したボディから手足が直接生えた外見を持つ。わかばの調べたデータによれば「対小説家葬送兵器」であるとされ、元は処分の決まった化石を破壊するためのものであった。しかし、なぜか暴走してしまっており「ヨシズミ」「水道水うまい」などと雄叫びをあげながら旧人類化石蘇生装置に攻撃を加えた。 実在の人物、石原慎太郎がモデルと思われる。

旧人類化石蘇生装置

Dr.富士が開発した装置であり、名称そのまま発掘した旧人類を化石から生前の状態に蘇生させることができる装置である。なお見た目は人を1人すっぽりと収めることのできる巨大な電子レンジ。原理などは一切不明だが、実際に蘇生させることができる。ただし、蘇生した対象によってはわずかに生前の記憶に混濁が見られることもある。

バーチャル少年 (ばーちゃるしょうねん)

うるまが開発した特殊な機械で、コネクターを旧人類の化石に差し、本体に備えられたゴーグル状のモニターを覗き込むことで、その化石が持つ記憶を垣間見ることができるというもの。外見は1995年に任天堂が発売したゲーム機「バーチャルボーイ」に酷似している。

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