カムイ伝

カムイ伝

江戸時代の日置藩を主な舞台として、多数の人物を交錯させながら、封建制度に対する戦いがいかに起こり、潰えていったかを描く。白土三平自らも立ち上げに関わった青林堂「月刊漫画ガロ」にて1964年から連載。

正式名称
カムイ伝
ふりがな
かむいでん
作者
ジャンル
時代劇
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概要・あらすじ

江戸時代の日置藩夙谷の非人部落に生まれ、公儀隠密の下忍になりながら、抜忍の道を選ぶカムイ花巻村の百姓の中でも最下層の下人から、身を起こし、やがて一揆のリーダーとなる正助日置藩の次席家老の嫡男だったが、数奇な運命をたどる草加竜之進

この三人を中心に、多数の人々を交錯させながら、封建制度に抗った者たちの壮絶な人生が綴られていく。

登場人物・キャラクター

カムイ

日置藩の夙谷で生まれた非人の双子の兄。やはりカムイと呼ばれていた弟が若くして死ぬと現れた。非人の身分を嫌い、剣の道を志すが、公儀隠密に誘われ、下忍となる。しかし、抜忍となった師匠の赤目を追ううちに、しだいに自分の境遇に疑問を抱くようになる。そして、日置藩の秘密を知ったことを機に抜忍の道を選んだ。 若い頃から、正助や草加竜之進たちと、何度も人生を交錯させている。日置藩に現れた怪剣士の鏡隼人は、カムイの変装。

カムイ【弟】

日置藩の夙谷で生まれた非人の双子の弟。非人の身分を嫌い、なんとか抜け出そうとする。非人のコゲラが花巻村の百姓の小頭に罰せられ死んだことを怒り、小頭の家に斬り込んだ。この罪により処刑され、首を晒された。

山丈 (やまじょう)

謎の巨人。日置藩の夙谷の非人部落に現れ、握り飯を差し出した幼子を抱き上げ「カムイ」と呼んだ。また、山中で見かけた白狼、裸になって人間宣言をした正助とナナ、一揆の集団に対しても、「カムイ」と呼んでいる。

正助 (しょうすけ)

日置藩の花巻村の下人。百姓の中でも最下層である下人の身分を嫌い、苦難を経て本百姓となった。しかし、さまざまな体験を経て、より理想的な世界を目指すようになる。徳川幕府の直轄領になった日置領の代官となった笹一角こと草加竜之進の協力を得て、百姓の生活を向上させた。 だが、徳川幕府の意向と、夢屋七兵衛の思惑が結びつき、しだいに生活を圧迫される。ついには仲間たちと共に日置大一揆を起こすが鎮圧され、策謀により裏切り者にされた。カムイの姉のナナと、実質的な夫婦となり、二人の子供をもうけている。

草加 竜之進 (くさか りゅうのすけ)

日置藩の次席家老、草加勘兵衛の嫡男。目付けの橘軍太夫の策謀により、父を始めとする草加一門を誅殺される。以後、軍太夫を仇と狙うが、やがて封建制度そのものに問題があると考えるようになる。やはり生き残った草加一門の笹一角と出会い、共に苦難を重ねるが、やがて別々の道を歩んだ。 権力に抵抗する木の間党の首領となったが、捕えられてしまう。その後、日置藩が取り潰されると、笹一角の名前で日置領の代官となる。正助に協力し、徳川幕府の意向に逆らい、百姓のために尽そうとする。しかし花巻村を中心とした日置大一揆が起こり、竜之進の理想は潰えた。

笹 一角 (ささ いっかく)

日置藩の剣術指南役だったが、浪人者の水無月右近に破れ、地位を捨てた。草加一門に連なる。草加一門が誅殺されたことを知ると、目付けの橘軍太夫を仇と狙う。同じ志を持つ草加竜之進と再会して、しばらく行動を共にしていたが、やがて別々の道を歩む。江戸で日置藩主の日置弾正の暗殺に成功すると、顔を潰し、竜之進だと名乗り出て処刑される。

日置 弾正 (ひおき だんじょう)

日置藩の藩主。暗愚な人物であり、目付けの橘軍太夫に藩政を壟断される。江戸で草加一門の笹一角に暗殺された。

橘 軍太夫 (たちばな ぐんだゆう)

日置藩の目付け。目障りな草加一門を誅殺するなど、藩政を壟断した。日置藩主の日置弾正が暗殺された後も、権力者であろうとしたが、日置藩の改易が決定すると、他の藩士の憎しみを一身に集め、自害に追い込まれる。

横目 (よこめ)

日置藩の非人頭。目付けの橘軍太夫の手足として動いていた。日置領になってからは、徳川幕府の意向に従っている。早くからカムイの才能を認め、配下に誘うものの袖にされた。日置大一揆後、非人たちに背かれると、わざと息子のキギスを怒らせ、自分を殺すように仕向けた。 キギスに後を託して死亡。

サエサ

日置藩の非人頭の横目の娘。カムイを一途に慕う。カムイの後を追って、くノ一になった。

水無月 右近 (みなづき うこん)

浪人者で、剣の使い手。日置藩の剣術指南役だった笹一角を倒したことがある。横目と斬り合い、片足を失った。そのため、横目を仇と狙うが、やがてアテナに惚れ、行動を共にするようになる。アテナの死後、生きがいを見失い、一揆の首謀者として江戸に送られる正助たちを助けようとして斬り死にする。

青木 鉄人 (あおき てつじん)

鉄人道場の主。宮本武蔵の二刀流を祖とする鉄人流の使い手。父親を失ったアテナを引き取り養女にした。また、カムイを下男としていた。たまたま遭遇した橘一馬と斬り合いになり倒された。実在した青木城右衛門がモデル。

アテナ

剣客の露木鉄山の娘。鉄山にカムイが弟子入りしようとしたことから、カムイとサナサと知り合う。過去の因縁から公儀隠密に鉄山が殺されると、青木鉄人の養女となった。笹一角を慕い、一角の死後は尼になり、子供たちの世話をしていたが、横目の策謀により暴徒となった百姓たちに惨殺される。 薙刀の名手。カムイに請われて立ち合い、変移抜刀霞斬りを編み出す手助けをした。

苔丸 (こけまる)

日置藩の玉手村の百姓。玉手村の一揆を指揮するが失敗。夙谷の非人部落で暮らすようになる。無数の傷を付けた顔が簾のように見えることから、スダレと呼ばれるようになる。陰から正助を応援し、花巻村を中心とした日置大一揆でも、協力した。

ナナ

日置藩の夙谷の非人。カムイの姉。玉手村の一揆が破れ、ボロボロになって夙谷に現れた苔丸を、献身的に看病した。正助と、実質的な夫婦になり、二人の子供をもうけた。

仁太夫 (にだゆう)

日置藩の夙谷の非人。カムイの弟分を自認する。密猟者として処刑されかかるが、九死に一生を得た。後に、江戸非人の勧進頭の仁太夫となって、日置藩に現れる。

ゴン

日置藩の花巻村の百姓。正助の器の大きさを認め、村の生活向上に協力しながら、大きく成長していく。花巻村を中心とした日置大一揆では、正助と並んでリーダーを務める。一揆後、自訴すると、壮絶な拷問を受け、煮えたぎった鉛を飲み干して死んだ。

クシロ

日置藩の漁村五木代の漁師。金と権力を憎み、五木代に質屋を開いた夢屋七兵衛を嫌う。しかし七兵衛たちと共に五木代にやって来たオキクとは、相思相愛の仲である。孤島で暮らす、日置流弓術の名人の左卜伝と知り合い、大きな影響を受けた。五木代の一揆を扇動するが、そのためオキクが捕われてしまう。 オキクが処刑されるところを、身を挺して助けた。一緒に暮らしたオキクが死亡すると、世の動きとかかわることなく、鮫退治だけをしている。

オキク

流人の娘。房総に漂着した赤目と夢屋七兵衛に出会い、行動を共にする。隠れ切支丹。日置藩の五木代の漁師のクシロと、互いを憎からず思うようになる。五木代の一揆を扇動したクシロを助けるため捕えられ、隠れ切支丹であることが発覚した。その後、処刑されるところをクシロに助けられるが、クシロのために踏絵を踏んだ。 クシロと暮らすようになるが、体を壊して死去する。

橘 一馬 (たちばな かずま)

日置藩の目付けの橘軍太夫の嫡男。草加竜之進との勝負に負けてから、当てのない暮らしをしていたが、カサグレという謎の人物と修行を重ね、全身を武器とする無人流を会得する。その後、叔父の橘玄蕃と共に、軍太夫のために働いた。日置藩が改易されてからは、玄蕃と共に浪々の身となり、因縁の相手である竜之進と立ち合うが敗北する。

赤目 (あかめ)

公儀隠密団の一員。下忍となったカムイの師匠。しかし抜忍となり、カムイに追われるようになる。わざと罪を犯し、流人となって追手を振り切った。流人船の難破により房総に漂着すると、やはり漂着した流人の夢屋七兵衛と知り合う。七兵衛の野望に共鳴して、市と名乗り、「夢屋」の番頭となる。 しかし、しだいに七兵衛から、心が離れていった。

搦の手風 (からみのてぶり)

公儀隠密団の小頭。日置藩の秘密と、抜忍となったカムイを追って、死闘を繰り広げる。しかしカムイの策により、日置藩の秘密を知り、自分も抹殺されることを確信。抜忍になることを余儀なくされる。

夢屋 七兵衛 (ゆめや しちべえ)

商人。もともとは流人だったが、流人船が難破して房総に漂着する。同じく漂着した抜忍の赤目と、流人の娘のオキクと知り合い、三人で日置藩の漁村、五木代にやって来て、質屋「夢屋」を開く。金の力で権力に対抗しようという志を抱いていたが、金儲けの過程で変心していく。 日置領を食い物にして、身代を太らせた。しかし、花巻村を中心とした日置大一揆により、七兵衛の所業も明らかになり、商人として破滅へと追い込まれる。

キギス

日置藩の非人頭の横目の手下。最初は自分の仕事や身分に疑問を持っていなかったが、しだいに横目に反抗していく。カムイの姉のナナを崇拝している。日置大一揆後に横目を刺すが、いまわの際の横目から、息子であることを知らされ、後を託される。

カムイ【狼】

『カムイ伝』に登場する動物。白毛の狼。白狼のために兄弟の狼たちから疎まれ、一匹で逞しく成長する。山丈から「カムイ」と呼ばれる。

場所

日置藩 (ひおきはん)

七万石の外様の小藩。藩主の日置弾正は暗愚であり、藩政は目付けの橘軍太夫に壟断されている。苛斂誅求に喘ぐ百姓たちが、何度か一揆を起こしている。徳川家康の秘密を握っており、それを暴くために多数の公儀隠密が潜入していた。後に弾正が暗殺され、新藩主が立つものの、徳川幕府の命によって改易。 徳川幕府の直轄領になった。

夙谷 (しゅくだに)

日置藩にある非人部落。カムイの生まれた場所。一揆に失敗した玉手村の百姓の苔丸が、名前を変えて住み着き、花巻村の正助に協力した。また、草加竜之進と笹一角が潜んでいたこともある。

花巻村 (はなまきむら)

日置藩にある農村。正助やゴンが暮らしている。藩の方針により、夙谷の非人と対立することが多かったが、正助の行動により、しだいに打ち解けていった。正助たちの努力により生活が向上したが、徳川幕府の意向と、夢屋七兵衛の野望によって追い詰められ、ついには日置大一揆の中心となった。

その他キーワード

変移抜刀霞斬り (へんいばっとうかすみぎり)

『カムイ伝』に登場する必殺技。カムイの使う刀法。素早い体捌きを使用しながら、背後に隠した刀を繰り出す。アテナの薙刀の技を参考にして編み出した。

飯綱落とし (いづなおとし)

『カムイ伝』に登場する必殺技。カムイの使う秘術。空中で相手にしがみつき、そのまま脳天から落とす。また、相手が空中に居ない場合は、プロレスのバックブリーカーのようにして、脳天を叩き潰す。飯綱イタチが、飛び立った鳥にしがみつき、自らの重みで地面に叩きつける場面に遭遇したこから編み出した。

続編

カムイ伝 第二部 (かむいでん だいにぶ)

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