星が原あおまんじゅうの森

星が原あおまんじゅうの森

精霊や動物が住む雑木林「あおまんじゅうの森」で、森の保全をしている人間の蒼一は、ある目的のために困っている精霊を助けることでもらえるスタンプを集めていた。スタンプカードのスタンプをためるために奮闘する蒼一の姿を描くファンタジードラマ。「ネムキ」2008年9月号から2015年5月号にかけて連載された作品。

正式名称
星が原あおまんじゅうの森
ふりがな
ほしがはらあおまんじゅうのもり
作者
ジャンル
ファンタジー
関連商品
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あらすじ

第1巻

星ヶ丘にあるあおまんじゅうの森には、森で唯一の人間である蒼一と、精霊や動物、植物たちが暮らしていた。蒼一は森の保全を行いながら、精霊を助けるともらえるスタンプカードのスタンプをためていた。そんなある日、あおまんじゅうの森に育ての親である白い犬を捜してニワトリのキイロがやって来る。(第1話。ほか、7エピソード収録)

第2巻

田中洋平は、蒼一に会うためにあおまんじゅうの森へやって来るが、蒼一は睡眠中で話すことができずにそのまま引き返す。その道中で洋平は、蒼一に反感を持っている精霊たちに蒼一とまちがわれて襲われてしまう。その危機を蒼一と科子に助けられた洋平は、科子からスタンプカードにはなんの効力もないという衝撃の真実を聞かされる。(第10話。ほか、8エピソード収録)

第3巻

あおまんじゅうの森で火事が起こり、森の木々や植物は燃えていた。火事の発端は、野分蒼一科子を別れさせるために暖炉をそそのかしたもので、それを知った科子は野分と共に森を離れることを決意。やがて雨が降って鎮火するものの、森にいる多くの精霊たちは姿を消してしまう。(第25話。ほか、7エピソード収録)

第4巻

野分あおまんじゅうの森から科子を連れ出したことで、森に風が吹かなくなり、木々は葉を落とし、動物は眠り始め、精霊の姿も少なくなっていた。蒼一は森を元の姿に戻すため、野分と対決してでも科子を取り戻そうと決意する。そんな中、科子は最後の力を振りしぼってあおまんじゅうの森へと戻ってくる。(第33話。ほか、7エピソード収録)

第5巻

科子を取り戻すため、野分は再びあおまんじゅうの森へと降り立った。野分はなりふり構わず嵐を起こして森を破壊し始め、蒼一をも殺そうとする。蒼一と科子は、森の精霊や生き物たちの力を借りて野分を宥めようとする。(第37話。ほか、5エピソード収録)

登場人物・キャラクター

蒼一 (そういち)

あおまんじゅうの森の小屋に住む男性で、容姿は若く見えるが年齢不詳。黒い短髪でカーディガンを羽織っている。物腰が柔らかく基本的に誰に対しても敬語で話す。首には科子から渡されたスタンプカードが下げられている。もともと精霊の姿が見えやすい体質だったが、科子の力によってはっきり見えるようになる。森を守りながらスタンプをためるために精霊の困り事を聞いているが、スタンプがたまったら森を出て風になり、科子と共に生きたいと考えている。子供の頃、弟の田中耕次と共に風に対して感謝するお祭りをささやかに行っていた際に科子と出会って以来、科子に対して恋心を抱いており、周囲には「心に決めた人がいる」と公言している。父親は学生の頃に自殺しており、母親もその後病死し、耕次とも絶縁状態が続いて孤独な身となっていた。野分に対しては、当初科子との関係を認めさせようと考えていたが、森が火事になった原因が野分だと知ると怒りに変わり、彼を憎むようになる。しかし、野分自身も寂しい思いをしていることを知ると、歩み寄って理解しようとした。科子と出会ってから森の外へ出ないと決めたため、森の中で時間が止まっており、現実世界の時間は数十年経過しているにもかかわらず、若い姿のままである。そのため、森の外に出ようとすると体が急激に老化してしまうが、蒼一自身は自分の時間が止まっていることに気づいていなかった。耕次との再会を機に時間が止まっていること、森の外へ出るとあおまんじゅうの森自体が崩壊してしまうことを自覚する。

科子 (しなこ)

風の化身で、ブラウスにスカートを身につけた人間の女性の姿をしている。あおまんじゅうの森が生まれた頃からその存在を知っており、ある時久しぶりに森に降りた際に、蒼一と田中耕次に出会った。この時、二人がささやかに風の祭りを行っていたことで、以後は毎年森に現れるようになった。森を自分の居場所にして蒼一と添い遂げる決心をするが、野分の反感を買い、彼が蒼一に攻撃を仕掛けるきっかけとなった。以後は森の井戸の中に姿を隠していたが、風は一つの場所にとどまり続けると凪いでしまうため、風をあやつる力が弱ってしまっている。大昔、風の使いである薫と共に旅をしてさゆと出会った時は、人間とかかわることに否定的で二人の関係を冷めた目で見ていた。あおまんじゅうの森ができるきっかけとなった祭りを、風をあやつって嵐を起こして壊したが、生き残っていた妊婦の女性だけを助けようとして、お腹の中にいた子供を転生させた。その後、蒼一と出会った時に蒼一が転生させた子供だと気づき、人間とのかかわりを深め始める。

野分 (のわき)

蒼一を敵対視している風の使い。ふだんは幼い男の子のように見えるが、姿は自在に変えられる。嗜虐的な性格で、黒い風をあやつって自然や人に被害を与えて楽しんでいた。時には人間に直接声を掛けて惑わせることもあり、蒼一の父親に自殺をそそのかした。科子に好意を抱いており、科子を独り占めしたいと考えるあまり、蒼一に対して攻撃的になっている。蒼一に攻撃して立場の違いをわからせ、科子をあきらめさせようとするが、二人が離れるつもりがないことに癇癪を起こし、暖炉や田中洋平をそそのかしてあおまんじゅうの森に火事を起こす。

(すず)

あおまんじゅうの森に咲いているすずらんの精霊。白くふんわりした髪型の少女の姿をしている。人懐っこい性格で、初対面の相手とすぐ打ち解けることができる。初めて蒼一と出会った時は種の状態であったが、その時から意識があり、会話ができていた。土の中に埋められることを拒否していたが、蒼一やモモカなどの説得によって土にまかれ、無事にすずらんの花を咲かせて精霊として具現化した。すずらんの咲いていたそばには大きなケヤキの木があり、鈴を守っていたが根腐れを起こして倒れてしまった。その後、ケヤキの新芽として生まれたシンと打ち解けてなかよくなる。

キイロ

あおまんじゅうの森の小屋で暮らすオスのニワトリで、森の中では背広を着ている。森に来る前は人間の家族にヒヨコの時から飼われており、その家にいた白い犬を自分の母親だと思い込んでいる。しかし、その家族が引っ越しをする時に捨てられてしまい、犬の母親を捜しているうちに森へ迷い込んでしまった。横柄な性格だが心根は優しく、鈴やミドリの世話を甲斐甲斐しく焼いている。蒼一に対しては初対面の頃はぶっきらぼうに接していたが、徐々に打ち解けていった。周囲からは「キイさん」と呼ばれている。

モモカ

あおまんじゅうの森の小屋に収納されている百科事典の精霊。小人で、初老の女性の姿をしている。基本的には本に挟まっているが、自分で自由に動くことができる。気さくな性格で、物知りなことから蒼一のサポート役も担っている。本のページをあやつって組み合わせ、任意の形を作ることができる。科子のことは初対面の時は疎ましく思っていたが、蒼一と思い合っていることを知ると科子を受け入れた。

ソファー

あおまんじゅうの森の小屋に置いているソファーの精霊。若い女性の姿をしている。本名はあるが秘密にしている。森で火事が起こった際に延焼してしまい、本体が燃えて精霊の姿が見えなくなってしまった。

オコリ

あおまんじゅうの森の小屋にある扉の精霊。スーツを着た、初老の男性の姿をしている。ニコリとは同じ見た目ながら、怒りっぽい性格でほかの精霊とよく言い争いをしている。扉であるために立ったまま動けず、扉を外して移動させるとその場にとどまってしまう。もともとは蒼一の家族が住んでいた屋敷の扉であったが、屋敷がなくなってからは小屋へ移動した。しかし、精霊として出現したのは移動後であるため、屋敷にいた頃の記憶はない。

ニコリ

あおまんじゅうの森の小屋にある扉の精霊。見た目は初老の男性で、スーツを着ている。オコリとは同じ見た目ながら、穏やかな性格でのんびりとしている。もともとは蒼一の家族が住んでいた屋敷の扉であったが、屋敷がなくなってからは小屋へ移動した。しかし、精霊として出現したのは移動後であるため、屋敷にいた頃の記憶はない。

ミドリ

あおまんじゅうの森の小屋に住むメスのカエル。森の中ではワンピースを着て二足歩行をしている。名前は鈴が名づけた。森に来た当初は警戒していたが、徐々に慣れていき、周囲とふつうに会話できるようになった。

小石 (こいし)

神様が宿る岩から欠けた小石の精霊。見た目は小さな男の子の姿をしている。元は遠くの町にいたが、田中洋平が引っ越す際に拾い、星が原へ共にやって来た。洋平の願いが叶えられなかったためにあおまんじゅうの森へと投げ込まれ、蒼一たちと出会った。その後洋平と再会し、森の中では洋平と会話できるようになった。

田中 洋平 (たなか ようへい)

小石をあおまんじゅうの森へ投げ込んだ少年。引っ越したばかりで友達がおらず、友達ができるように小石に願掛けをしていたが、内気な性格のためになかなか友達を作れず、やけになって小石を森へ捨てた。その後、お守り代わりにしていた小石を取り戻そうと勇気を出して一人で森へ乗り込んで小石と再会し、以降は森の中限定だが精霊の姿をした小石と会話できるようになった。あおまんじゅうの森の昔話を聞いたあとに、再度森へ忍び込んで科子と出会っている。その際、科子から聞かされた、スタンプカードには願いを叶える効力などないという真実を最初に知った人物。その後、たびたび森へ訪れては蒼一たちと交友している。

田中 耕次 (たなか こうじ)

蒼一の弟で、田中洋平の祖父。小柄な老人で、洋平があおまんじゅうの森に近づくことを止めている。幼少の頃は科子の姿も見えており、蒼一と共に風の祭りを行っていたが、成長に伴って蒼一と行動することを嫌がり、科子の存在も否定するようになった。高校卒業後は家を出て、蒼一とは絶縁状態になっていた。蒼一が森に残っていると思っていたが、役所から蒼一が行方不明になって森の所有権が移ったことを知らされた。しかし、森の売却はしなかった。その後、洋平に蒼一の存在を知らされて森へ入り、蒼一が未だに森を守っていることを知ると、所有者として森を守ることを決意した。森に入っても精霊の姿を見ることができない。

ボタン

とある洋裁店のデッドストックだったボタンの精霊。見た目は小さな男の子で頭に本体のボタンをかぶっている。あおまんじゅうの森に迷い込んで鈴たちと友達になったが、友達のカラスと共に旅立った。

教授 (きょうじゅ)

あおまんじゅうの森に住む年老いた亀で、森の中に入ると会話することができる。森に来る前は用水路の中で過ごしていたが、終の棲家として森へ入った。甲羅の部分に生えている苔とは森に入って話せるようになった。また、森に入る前は苔からカメと呼ばれており、それを名前としていたがモモカから「教授」と命名されてからは定着している。日光浴によって苔が消滅してしまった時に、森の木々や野分にそそのかされて蒼一が苔を殺してしまったと思い込み、苔が復活したことにも気づかずに暴走を始めた。しかし蒼一が森の外に連れ出し、一度記憶をなくさせたことで元通りになった。

(こけ)

教授の背中に生えている苔の精霊で、あおまんじゅうの森に住んでいる。見た目は小さな男の子の姿をしている。教授が森の外にいた頃は具現化していなかったが、意識はあり、教授の動向などは覚えている。教授が日光浴をしている時に乾燥して消滅してしまったが、水分を与えられたことで復活した。

シン

あおまんじゅうの森に生えていたケヤキから発芽した新芽の精霊。見た目は少年の姿で髪が多く、目が隠れている。元のケヤキの意思を継いで鈴を守ろうとしているため、生まれた当初は鈴以外に対して攻撃的になっていたが、蒼一の真意や鈴の話を聞いて物腰が柔らかくなった。森で火事が起こった際、火が回ってしばらく姿を見せられなくなっていた。

暖炉 (だんろ)

あおまんじゅうの森の中に建っていた屋敷の暖炉の精霊。具現化はしておらず、床に顔のような影が入っている。屋敷が建っている頃は家族が集まる場所として充実していたが、屋敷が取り壊されてからは誰も集まらなくなったことに寂しさを覚えていたところ、野分にそそのかされて暴走する。田中洋平の心を惑わせて火をつけさせ、あおまんじゅうの森に火事を起こした。

(かおる)

風の化身である男性で、大昔に科子と共に旅をしていた。旅の途中で降りた人里でさゆと出会い、さゆの願いを叶えると約束をした。科子と共にさゆの成長を見守り、さゆの子供が生まれた頃に一度人里を離れた。数年後、再びさゆのもとへ戻ると村が火事になっており、子供を助けようとするさゆと遭遇する。その際に火事を消そうと風を吹かせたが、炎の勢いを増す結果となり、さゆもその子供も死亡してしまい、自責の念から薫自身も消滅してしまった。

さゆ

とある人里の村に住んでいた女性。幼少の頃、村に盗賊が襲ってきた際に神に助けを求めようとして薫と出会った。毎年決まった日にお参りをすることで、願いを叶えてもらう約束をする。幼少の頃は薫の姿が見えており、会話もできていたが成長するに伴って薫の姿は見えなくなっていった。しかし、大人になっても参拝することはやめず、結婚や出産を報告して子供を薫と遊ばせていた。その数年後、村で起こった火事が原因で死亡した。

大石 (おおいし)

あおまんじゅうの森にある大きな石の精霊。見た目は若い男性の姿で長髪を結んでいる。森ができる前から存在しており、蒼一が亡くなった両親を埋めた場所の目印になっている。達観した性格で森の動向などを静観し、時に蒼一に説教したり、木々たちに蒼一の力になるように呼びかけたりしている。なお、「大石」という名前は鈴がつけたもので、本名は不明。

場所

あおまんじゅうの森 (あおまんじゅうのもり)

星が原1丁目29にある、古い塀に囲まれた雑木林。鬱蒼としており、門から中は見通せないために近所の住民からは「おばけの森」や「神様の森」とも呼ばれている。もともとは蒼一の家族が住んでいた屋敷跡であり、敷地内には屋敷の建物跡や沼なども残っている。現在は元納屋であった小屋に蒼一や精霊たちが住んでいる。森の中では人間も精霊も動物も同じ世界で暮らすことができ、動物も服を着て会話している。大昔、森ができる前は小さな集落のような村があり、村民が豊穣を願って行き過ぎた祭りを開催してしまったことで嵐を呼び、その嵐がおさまったあと、一番穏やかな風が吹き込む場所に森ができたと伝えられている。しばらくは風を祀る祭りを行っていたが、蒼一の父親の代で中止となった。しかし、蒼一は曾祖母の言いつけによって、二人でささやかにお供え物をして祭りを行っていた。

その他キーワード

スタンプカード

科子が蒼一に渡したスタンプを押すためのカード。蒼一が精霊の頼み事や困り事を解決することで精霊からスタンプをもらうことが可能で、スタンプカードにスタンプがすべてたまると、科子と同じく風になれるといわれていた。しかしその実態は、一家離散してしまった蒼一に生きる希望を持たせようとして科子が考えたもので、効力はまったくない。

精霊

生まれてから長年経過したものや、思い入れが強いものなどに宿る存在。基本的に宿った本体のそばに具現化するが、本体から離れて自由に動ける者もいる。あおまんじゅうの森の中では具現化しており、服などを着て会話することもできるが、森から出ると本体の姿になり、森の中の記憶もなくなってしまう。また、本体が損傷してしまうと姿も見えなくなる。

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