暴力の都

暴力の都

過激な報道が売りのニュースキャスターが、社会問題や時事ネタを斬っていく様をダークヒーロー的に描いた作品。「週刊ヤングジャンプ」で1996年から1999年にかけて連載された。「第1回ヤングジャンプ原作大賞」の受賞作であり、原作者の戸田幸宏にとっての商業デビュー作、作画担当の中祥人にとっての連載デビュー作にあたる。

正式名称
暴力の都
ふりがな
ぼうりょくのみやこ
原作者
戸田 幸宏
作画
ジャンル
ダークファンタジー
関連商品
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あらすじ

第1話 暴力の都(第1巻)

「ニュースエクスプレス」というニュース番組のニュースキャスターをしている木戸重光は、いじめ自殺事件の加害者の実名を報道したり、政治家からのスキャンダルもみ消し依頼を撮影録音して、すべてそのまま放映したりと、過激な手法で人気を博していた。しかし、局の方針から番組は打ち切りになってしまう。

第2話 復活(第1巻)

木戸重光は「ニュース・タイクーン」という新しいニュース番組に移籍する。そこで重光は、再び政治家のスキャンダルを暴き、その政治家とつながりのある暴力団幹部、森山誠一の手で拉致されてしまう。その後、暴力団内部でのトラブルにより部下だった団員に誠一が撃たれ、重光はその混乱に乗じて脱出し、一連の事件のすべてを放送するのだった。

第3話 闇(第1巻~第2巻)

殺害された女子高校生が、コンクリート詰めにされて海に捨てられるという事件が発生。事件の被害者の父親から、犯人達を皆殺しにするから、その模様を中継してくれ、という連絡が「ニュース・タイクーン」に入る。独自にコンクリート詰め事件の容疑者達との接触を図った木戸重光は、三人の犯人のうちの一人が自首しようとしている事、コンクリート詰めに使われたドラム缶に謝罪の言葉が刻まれていた事を知る。被害者の父親と犯人達が接触した際、重光は主犯格の少年を殴り飛ばし、被害者の父親が殺人を犯さないように身を挺する。のちに自供された証言から、謝罪の言葉を刻んだのは自首を申し出た少年ではなく、主犯の少年であった事が判明する。

第4話 正常と異常の境界(第2巻)

若い女性ばかりを狙った連続殺人事件が発生する。何故か現場に「ニュース・タイクーン」が録画されたビデオを残すという異様な犯行から、木戸重光に何らかの恨みを持っている人間の犯行であると見られた。結局、その犯人は重光の高校時代からの友人の小林秀明であった。母親の死と、職務のストレスから精神を病んだ秀明は、重光に対する歪んだ愛憎の末に事件を起こしたのである。

第5話 生きろ(第2巻)

大浦理恵子が、過労とストレスのために胃潰瘍を患って入院する。見舞いにやって来た木戸重光は、その病院で以前とある患者が不審な死を遂げたという話を小耳に挟む。スクープの匂いを嗅ぎつけた重光であったが、その直後、その病院で若い医師が謎の拳銃自殺を遂げるという事件が起こる。重光の調査の末に、事件はその若い医師が違法な安楽死の施術を行い、そしてその上司であった教授がもみ消しを図ったという事がわかった。

第6話 虹の彼方に(第3巻)

木戸重光はテレビ局で、中島榛名という若いアイドル女性と知り合いになる。榛名はアイドルとして売れるために枕営業をしていたが、同様にアイドルを目指していた自分の故郷の旧友が、枕営業を強要されて自殺した事件にショックを受ける。重光はその犯人を突き止めて証拠を入手し、「ニュース・タイクーン」の放送中にすべての真相を明るみにする。

第7話 老大の死(第3巻~第4巻)

木戸重光は、台湾系マフィア同士が過激な抗争を起こしている事件に単独取材を試みる。劉鎮華という台湾系マフィアの青年の抗争相手は、彼がもともと所属していたマフィア組織のボスで、失態を犯した鎮華の弟を死に追いやった人物であった。鎮華は病院で交通事故のために植物状態になっていたボスを射殺し、そして自らも警官隊に射殺されて死亡する。鎮華の死後、重光はその最後のインタビューフィルムを公表するのだが、その中で鎮華は恋人に対し、「愛してる 結婚しよう」というメッセージを残していた。

第8話 トモダチハイマスカ?(第4巻)

いじめに遭っている少年と、義父から性的虐待を受けている少女とが街で出会う。少女の母親は少女の義父によって保険金目当てで殺害されようとしていたが、その事を木戸重光によってスクープされ、未然に犯罪は防止される。

第9話 雪降る夜の天使(第4巻~第5巻)

木戸重光は、とある老人ホームを取材に訪れる。そこは理想郷のように謳われる老人ホームだが、その実態はひどいもので、職員による入所者への虐待が日常的に行われていた。ある入所者がライフルを持ち出し、その虐待していた職員を撃って重傷を負わせたのちに失踪する。猟銃を持っていた入所者と、その仲間である老人は、かつて現金輸送車を襲って1億8000万円を強奪した強盗犯であった。重光は二人に接触するタイミングを見計らって、事件の一部始終をスクープする。そして虐待の件が発覚した老人ホームは、入所者がいなくなって倒産してしまう。

第10話 記憶はささやく(第5巻~第6巻)

木戸重光は引退した刑事から、不破修三という元プロボクサーで容疑者の、時効の迫っている未解決の殺人事件の謎について話を聞き、興味を持つようになる。修三は整形手術で顔を変えたうえ、記憶を失ってホームレスになっていたのだ。その後、重光の尽力によってその無実を明らかにされ、記憶も無事に戻り、プロボクサーとして復帰を果たすのだった。

第11話 怪物がめざめるとき(第6巻~第7巻)

ホステスばかりを狙った連続殺人事件が発生する。犯人が岡崎恭一という人物である事を知った木戸重光は、事件のスクープに挑む。恭一は極めて危険な殺人鬼であり、一度は警察に身柄を確保されたにもかかわらず、パトカーの中で警官を三人殺害して脱走。一方、重光は獄中の小林秀明に会い、恭一の人物像について秀明に尋ねると、恭一は母親を殺害しているはずだと答える。逃走中の恭一と接触した重光は、恭一が自殺するために放った火に巻き込まれそうになるが、かろうじて事態を食い止め、スクープを得る事に成功。恭一も逮捕されて、ようやく事件は解決する。

第12話 復讐者の影(第7巻)

殺人事件を起こして服役し、出所した女が、流産したうえに自分が末期がんである事を知る。そして事件にかかわっていた女性を逆恨みして、その子供を誘拐する事件を起こす。たまたま隣人である夫婦が、その犯行をホームビデオで撮影してしまい、それがきっかけで妻が殺されてしまう。夫は復讐を期して、犯人の女を殺そうとする。しかし実はこの事件は厳密には殺人ではなく、もみ合った末に鋏が刺さった事による事故死であったのだ。その事が木戸重光によって明かされ、すっきりしない気持ちを残しながらも事件は解決する。

第13話 砂の砦(第8巻)

カルト宗教団体「エンジェル・ソング」の幹部、荒木直海は、殺人も辞さない過激な手口で資金集めを繰り返していた。その後、信者を殺害した容疑で逮捕されていた教祖が獄中で自殺したため、新しい教祖となった直海は、特殊な薬剤を用いたテロを計画する。しかし、木戸重光大浦理恵子を教団に潜入させて集めた証拠によって、「エンジェル・ソング」の計画はすべて明るみになり、直海はテロ事件の決行前に逮捕される。

第14話 卒業(第9巻)

私立晴山学園は東大を目指す優等生の通う名門進学校であったが、その実態は汚濁にまみれたものであった。教師の一人が篠原沙織という生徒と肉体関係を持ち、しかも沙織に売春をさせて、その金を巻き上げていたのだ。また同校の校長も、いい大学を推薦する見返りとして、生徒に肉体関係を強要していた。その教師は校長にも沙織を差し出し、ギャンブルで作った借金を帳消しにしてもらおうとする。だが沙織がその借用書を盗み出した事で、校長は沙織を殺害してしまう。さらに校長は教師も殺害しようとしていたが、木戸重光に事件をスクープされ、すんでのところで校長は逮捕される。

第15話 濁った水(第10巻)

とある町で産廃処分場の誘致を巡って政治的な争いが起こり、町長選挙の結果として「誘致反対派」の町長が誕生した。さまざまな利権にかかわっている誘致賛成派の人々は、その町長の暗殺を謀る。睡眠薬を盛られ、車に火を放たれた町長だが、怪しんで睡眠薬を飲まなかったために、からくも窮地を脱する。その後、犯行グループの一人が失敗の責任を取らされ、また町長暗殺に反対するようになったために殺害されてしまう。その犠牲者は町長が目をかけていた若者であったため、町長は産廃処分場誘致派に鞍替えするふりをして犯行グループに近づき、その仇を取ろうとする。だが、木戸重光はすべての真相を明るみに出し、町長の凶行を止めるのだった。

第16話 ビデオテープの女(第10巻)

とある新聞配達員の青年が、客の若い女性に恋をしていた。配達員の先輩が彼のためにその女性の家に隠しカメラを仕掛け、これを楽しめと機材を渡す。ところがその映像を見ていた青年は、その女性が何者かに襲われる瞬間を目撃してしまう。青年は急いで部屋に駆けつけるが、女性も犯人もいなかった。困惑した青年は、その映像テープを「ニュース・タイクーン」あてに送る。木戸重光の取材の結果、殺人は実際には行われておらず、借金を帳消しにする事を目論んでの狂言事件であった事が暴かれた。

第17話 最後の約束(第11巻)

国際テロリストのウォレス・リスゴーシドニー・ビッグスは、日本でセルマーニ共和国のサバティン副大統領の暗殺を計画していた。たまたま素性を知らずにウォレスと知り合った木戸重光は、「サユリという女性を探してくれ」という雲をつかむような頼みを受ける事になる。結局、ウォレスの古い友人である池内小百合は、日本でプロのモデルになっていた事が判明する。副大統領の暗殺は失敗し、シドニーと仲間割れをして互いに撃ち合いを演じたウォレスは、重光と小百合に看取られながら亡くなる。

第18話 恐怖が私を支配する(第11巻)

デパートで働いている子持ちの未亡人が結婚詐欺に引っかかり、その犯人は殺人の疑いでも追われていた。その後、木戸重光に追求された犯人は、殺人については実際には事故である事を主張する。後悔と苦悩の中、犯人はその場に呼ばれていた未亡人との愛を誓い、警察に出頭する事を決意する。

第19話 大いなる幻影(第12巻)

木戸重光が、突然ニュースキャスターを降板すると言い残して姿を消し、BBSテレビの関係者達はパニックとなる。重光は、「ニュース・タイクーン」に行方不明になっていた父親の関係者からの連絡があったために、密かにアメリカに渡っていたのだ。実は重光の父親には、人を殺したという疑いがかけられていた。幼い重光は父親とその仲間達が、拘束された何者かといっしょにいるところを目撃した記憶があった。結局、重光の父親は、アメリカに渡ったあとマフィアになった事が判明するが、人を殺した事はないと語る。不治の病で死の床にある父親の告白を、重光は最後の登板となる「ニュース・タイクーン」で放映し、再び姿を消してしまう。

登場人物・キャラクター

木戸 重光 (きど しげみつ)

BBSテレビでニュースキャスターをしている30歳くらいの男性。「ニュース・タイクーン」を担当している。同性愛者であり、健一という若い男性と同棲していた事がある。正義感が強い性格で人情にも厚いが、仕事では冷徹非情のニュースキャスターとして、大胆で過激な報道や発言を繰り返す。苦手なものはタマネギ。

大浦 理恵子 (おおうら りえこ)

BBSテレビの社員である若い女性。「ニュース・タイクーン」のプロデューサーを務めている。テレビ局の下っ端だった頃の木戸重光を見い出し、ニュースキャスターとして抜擢した。非常に常識的な人物であり、彼の報道姿勢に異を唱える事もあるが、基本的には重光のやりたいようにやらせている。

社長 (しゃちょう)

BBSテレビの社長を務めている壮年男性。「ニュース・タイクーン」の放映が始まった当初は、木戸重光の直属の上司であった熊谷専務とは社内で政敵の関係にあり、重光を利用して熊谷を失脚させた、したたかな人物。重光を高く評価しており、社を挙げて強力にバックアップしている。

刑事 (けいじ)

警視庁の刑事である壮年の男性。多くの事件で犯人を逮捕している敏腕刑事だが、木戸重光には事件をスクープされたり、裏をかかれる事があり、基本的には重光の事を毛嫌いしている。特徴的な出っ歯の前歯を持つ。

森山 誠一 (もりやま せいいち)

暴力団、森山組の組長を務める中年男性。恩人である政治家の梶浦英二郎のスクープを阻止するための目的で、木戸重光を拉致する事件を起こした。その事件の解決後、暴力団をやめ、NM印刷という小さな会社で働き始める。

小林 秀明 (こばやし ひであき)

大蔵省で働く官僚の男性。年齢は31歳。木戸重光の高校時代からの友人であり、今でも交流がある。母親の死や勤務のストレスなどで精神を病み、七人の女性をその手にかけた連続殺人犯。重光は事件後に打ち明けられるまで気づかなかったが、同性愛者であり重光に恋愛感情を抱いていた。その後、岡崎恭一の連続殺人事件の件で、面会にやって来た重光に対して、恭一の人物像についての自らの分析を語る。

中島 榛名 (なかじま はるな)

現在売出し中の若い女性アイドル。本名は「和枝」。北海道の函館の出身で、アイドルとしてデビューする際に顔を整形している。故郷にバンドマンの恋人がいるが、関係はあまりよくない。自分の過去のすべてを「ニュース・タイクーン」に出演して打ち明け、アイドルを引退した。

劉 鎮華 (りゅう ちぇんほう)

台湾系暴力団の新興グループのボスを務めている冷酷無比な青年。森山誠一からは「仁義の通用しない、顔色ひとつ変えずに人を殺す人間」と評されている。取材にやって来た木戸重光の前では、「楊」という偽名を名乗る。抗争により連続殺人を犯した末、日本の警官隊に射殺された。立美(リーメイ)という恋人の女性がいる。

不破 修三 (ふわ しゅうぞう)

殺人の罪で指名手配されている元プロボクサーの男性。年齢は36歳。かつてのボクシングジムの仲間からは、「三の字」というあだ名で呼ばれていた。記憶を失って、ホームレスとなっていたが、木戸重光と出会ったあと記憶を取り戻す。なお、殺人容疑は暴力団員によって仕組まれた陰謀によるもので、実際には人を殺してはいない。

岡崎 恭一 (おかざき きょういち)

連続殺人犯の若い男性。最初の犯行はホステス殺しとされているが、実際は自分を虐待していた実の母親を焼き殺したのが初めての殺人。そのほかにも逮捕されそうになった際に警官を数人殺している。これまで何件の殺人事件とかかわっているかは、岡崎恭一自身も把握していない。

荒木 直海

5000人ほどの信徒を抱えるカルト新興宗教団体「エンジェル・ソング」の幹部。まだ教団が小さかった頃からの古参の信徒であったが、金に汚く、権力を得るためなら手段を選ばない。かつては水泳選手であったが、ケガで引退を余儀なくされ、苦悩していた中でエンジェル・ソングと出会った。

篠原 沙織 (しのはら さおり)

私立春山学園1年D組の女子生徒。年齢は15歳。学校の男性教師と付き合っている。援助交際もしているが、その事について自殺未遂を図るほどに苦悩している。男性教師の借金の証文を校長のもとから盗み出したが、それが原因で校長によって殺害された。

ウォレス・リスゴー (うぉれすりすごー)

凄腕の国際テロリスト。シドニー・ビッグスの相棒の白人男性。年齢は41歳。木戸重光の前では英会話の講師であると称し、「ジェレミー・ライアン」という偽名を使っていた。13年前にニューヨークで起こったビル爆破テロ事件の主犯であるが、池内小百合の命を助けた恩人でもある。小百合の行方を捜している。

シドニー・ビッグス (しどにーびっぐす)

凄腕の国際テロリスト。ウォレス・リスゴーの相棒の黒人男性。スラム街の出身で、年齢は29歳。少年時代に強盗によって家族を全員殺されたトラウマから、何らかの強い恐怖に襲われると、無差別に周囲の人間を殺害してしまう、という危険な性質を持つ。

池内 小百合 (いけうち さゆり)

モデルをしている17歳の女性。13年前にニューヨークで起きたビル爆破テロ事件で、近しい家族をすべて失っている。事件直後はウォレス・リスゴーに引き取られていっしょに暮らしていたが、その後、遠縁の親戚に預けられて日本に戻った。ウォレスの行方を捜している。

その他キーワード

ニュース・タイクーン (にゅーすたいくーん)

BBSテレビのニュース番組。木戸重光がニュースキャスターを務めている。既存の権力や権威を無視し、いじめ事件の犯人の少年の実名を報道したり、予告殺人の事件現場に生中継のためのクルーを送り込んだりと、極めて過激な報道姿勢をとる。

クレジット

原作

戸田 幸宏

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