桜の花の紅茶王子

桜の花の紅茶王子

山田南平の代表作『紅茶王子』の新シリーズ。名家のお嬢様と、3つの願いを叶える紅茶の精との日常を中心に、『紅茶王子』やその番外編『紅茶王子の姫君』で登場した人物のその後の姿も描かれている。2012年「HCS花とゆめプラチナ」に掲載され、その後「別冊花とゆめ」2013年6月号より連載の作品。

正式名称
桜の花の紅茶王子
ふりがな
さくらのはなのこうちゃおうじ
作者
ジャンル
ファンタジー
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概要・あらすじ

名家のお嬢様である朝霧吉乃は、父親が勝手に決めたお見合い相手を呪うため、親友の奈緒を巻き込んである儀式を決行する。しかしそれは、願い事を3つ叶える紅茶の精「紅茶王子」を呼び出すおまじないだった。そうとは知らずに、紅茶王子であるサクラジョルジを呼び出してしまった2人。吉乃はサクラと、奈緒はジョルジと生活を共にすることになる。

そんななか、かつて紅茶王子と暮らし、別れを経験した人々との出会いを経て、2人はいつか必ず紅茶王子との別れの日がやってくることを知る。来る日を憂いながらも、2人は人間に扮した紅茶王子を交え、慌ただしくもかけがえのない高校生活を過ごしていく。

登場人物・キャラクター

朝霧 吉乃 (あさぎり よしの)

桜庭女子学院に通う女子高生で、サクラを呼び出した主人。おっとりしていて引っ込み思案な名家のお嬢様。名家とはいえ、家にいる下働きの青年たちは、揃ってガラの悪い人ばかり。彼らは気のいい人たちではあるが、黒いスーツを着用し江戸なまりの言葉を使うため、外から見るとヤクザに他ならない迫力を持つ。そんな窮屈な家での自由のない毎日と、過保護な父親からの一方的な見合い話の連続に、自分は父親の人形にすぎないのかと思い悩む日々を送っている。 サクラに想いを寄せているが、前の主人である朝霧八重と自分を重ねて見る彼に、複雑な想いを抱いている。

サクラ

朝霧吉乃に仕えている「サクラティー(紅茶の種類)」の紅茶王子。魔法により「先々代の朝霧家当主の友人である佐倉の次男坊」と周囲に認識させ、朝霧家にたくさんいる下働きの青年に紛れて、吉乃と生活を共にすることになった。また、社長からの言いつけにより、吉乃の通う桜庭女子学院の「売店のお兄さん」として働き、学校でも吉乃のお目付け役として共に学校生活を送る。 ヤンチャな印象だが涙もろく、特に朝霧八重のことになるとすぐ涙が出てしまう。1925年に八重に呼び出され、仕えたことがある。実は八重は吉乃の曾々祖母にあたる女性で、サクラは彼女に特別な思い入れがあった。今回吉乃に呼び出された時には、八重にそっくりな吉乃を見て勘違いし、思わず抱きしめてしまったほど。 その後も度々、今は存在しない八重の思い出に触れてはナーバスになってしまう。

奈緒 (なお)

朝霧吉乃の幼なじみにして親友の女子高生。ジョルジを呼び出した主人。吉乃とは父親同士が仕事上付き合いがあり、幼少の頃吉乃の自宅に父親と共に訪問した際、吉乃が奈緒を気に入った形となり仲良くなって以来の付き合い。さっぱりした性格だが、引っ込み思案の吉乃のことをいつも気にかけている世話焼きタイプ。その様子を香椎薫に「お母さん」と指摘されて以降、薫とは犬猿の仲。 吉乃が一方的に奈緒に依存しているように見えるが、実際は奈緒も自分だけを頼って来る吉乃の存在に依存している。

ジョルジ

奈緒に仕える「ジョルジ(紅茶の種類)」の紅茶王子。魔法により「留学のために奈緒の家に居候しているいとこ」と周囲に認識させ、奈緒と生活を共にしている。マイペースで、空気が読めないタイプ。甘い物に目がなく大食いで、カラオケやスマートフォンなど人間界のすべてに興味津々。純粋に現在を楽しんでいる様子。

吉岡 健太 (よしおか けんた)

吉岡奈子の弟。『紅茶王子』登場時はまだ幼児だったが、本作『桜の花の紅茶王子』では成長し高校生となっている。長期休み中に「関口造園」でアルバイトをしていた際、朝霧家での仕事中に朝霧吉乃と知り合った。奈緒とはクラスメイト。幼い頃から姉の呼んだ紅茶王子と生活を共にしていたため、紅茶王子の姿を見ることができる。 また、紅茶王子が帰ったあとに残された姉の苦悩を間近で見てきたため、今後の吉乃や奈緒の役に立ちたいと考えている。吉乃に対して想いを寄せており、特にサクラとの今後を案じている。吉岡健太自身は紅茶王子を呼び出すことに成功したことはないが、欠番となっているアッサムの紅茶王子に対して無意識に執着している。 なんとかしてアッサムの紅茶王子を呼び出そうと、毎月満月の夜には欠かさずおまじないを実行し、呼び出しを試みている。

朝霧 八重 (あさぎり やえ)

朝霧吉乃の曾々祖母。1925年、当時少女だった頃にサクラを呼び出し、今よりまだ少し幼かったサクラとの幸せな日々を過ごした。その頃の容姿は現在の吉乃とよく似ており、吉乃に呼び出されたサクラが間違えて抱きついてしまったほど。朝霧八重とサクラは互いに惹かれあっていたが、自身の嫁入りが決まり、その後の姿を見られたくなかった八重が、サクラのいる毎日に終止符を打った。

社長 (しゃちょう)

朝霧家の当主で、朝霧吉乃の父親。娘の私生活が気になって仕方がなく、吉乃の登校時、付き人を使って尾行させるほどの過保護ぶり。吉乃には自分が望む最低限の条件に見合う男性と結婚をしてほしいと願い、次々に見合い話を勧めてくる。亡き妻の朝霧千鶴とは、20年前の観桜会で知り合い、一目惚れした。

朝霧 千鶴 (あさぎり ちづる)

朝霧吉乃の母親。吉乃を産んでしばらくして亡くなった。代々男児に恵まれない女系の家だったことと、代々女性は体が弱いことが多かったことを理由に、朝霧家に生まれた女子は婿養子を取ることが多かった。そのため、吉乃の父親も朝霧千鶴の婿養子として朝霧家に入り当主となった。また、20年前の観桜会で千鶴が来ていた着物は、祖母にあたる朝霧八重から受け継いだものだった。

黒門 (くろかど)

朝霧吉乃の見合い相手の青年。父親同士が仕事上の関係であり、そこから縁談が浮上したが、吉乃からは嫌われている。頑なに拒否する吉乃を振り向かせるために、吉乃が大切にしている、花を付けない桜の古木に花を咲かせると約束。しかし実際は古木を引き抜いて花の咲いている別の桜の木を植えようと画策していた。幸い、造園業のアルバイトをしていた吉岡健太がこの企みに気付いたため未遂に終わったが、これが原因となり、見合いは破談となった。

増田 (ますだ)

朝霧家で家政婦として働いている女性。掃除から食事の支度まで家事を幅広くこなしている。社長付きの青年たちをも厳しく取り仕切り、朝霧吉乃にとってはお母さんのような温かい存在。

松浦 大吾 (まつうら だいご)

桜庭女子学院の図書館「青径館」の司書教諭。冷凍鍋焼きうどんとビールをこよなく愛す男性。朝霧吉乃や香椎薫、奈緒や吉岡健太、紅茶王子たちと協力し、「青径館」を復活させるために尽力する。のちに薫が黄山紅牡丹を呼び出す場に立ち会ったことで紅茶王子の存在を知り、彼らが小さくなった姿も見ることができるようになる。

香椎 薫 (かしい かおる)

桜庭女子学院の図書館「青径館」にいついている女子生徒。朝霧吉乃と同級生で、不登校でありながら友達は多く、人望も厚い。男子のような外見だが、本が好きで料理上手な一面も持つ。いつも吉乃のフォローをしてまわる奈緒に対して、「おかあさんみたい」とと評したことがきっかけで、奈緒とは犬猿の仲。しかし吉乃のことは気に入っている様子で、何かとちょっかいを出すことが多い。 のちに紅茶王子の黄山紅牡丹を呼び出すことになる。

琴子 (ことこ)

朝霧吉乃の従姉。駆け落ちして実家を飛び出した後、長男の竜太をもうけるも離婚。出戻った形となったため、本家である吉乃の家に顔を出しづらく、朝霧家の集まりに参加しないことが続いていた。学生の頃には吉乃の家で生活を共にしつつ、桜庭女子学院に通っていた。吉乃にとっては姉に近い存在。

竜太 (りゅうた)

琴子の4歳の息子。気が小さく大人しい性格。仏壇の前に置いてあった朝霧八重の遺品であるブローチに興味を示して箱を開けて眺めていたところ、母親から声をかけられた拍子に驚いて取り落とし、壊してしまったことでトラブルを引き起こす。祭に行った時に吉岡杏梨と知り合うが、気が強い彼女には始終振り回されっぱなし。しかし杏梨に対して好意を持っている様子が窺える。

吉岡 杏梨 (よしおか あんり)

吉岡奈子とアシャーの娘で、吉岡健太の姪。気が強い幼稚園児。自分が生まれる前、父親のアシャーが紅茶王子だった時の記憶を持っているため、その頃の記憶を失くしてしまった人たちに対して苛立ちに似た感情を抱く。しかしまだ幼い彼女がその感情を整理しきれるわけもなく、わがままで感情の起伏が激しいと受け取られることも少なくない。 『紅茶王子の姫君』から引き続き登場する人物。

吉岡 奈子 (よしおか たいこ)

吉岡健太の姉。アシャーの妻であり、吉岡杏梨の母親。高校生の頃にアッサムの紅茶王子だったアシャーと出会い、さまざまな苦難を乗り越え結ばれた。現在は亡き父親から引き継いだ紅茶専門店「QUALITY SEASONS」の店主としてアシャーと共に多忙な毎日を過ごしている。『紅茶王子』から引き続き登場する。

アシャー

吉岡奈子の夫であり、吉岡杏梨の父親。元は「アッサム(紅茶の種類)」の紅茶王子だったが、奈子と結ばれるために人間になった。その代償として、本人以外のすべての人が彼に関する記憶を失っているため、基本的には紅茶王子であった頃の彼を覚えている者はいない。しかし奈子と杏梨、ルフナのみが例外的にその記憶を持っている。 紅茶の国でも人間界でも人望が厚く、みんなから好かれる兄貴分。『紅茶王子』から引き続き登場する。

高畑 絵里 (たかはた えり)

ルフナを呼び出した女子高生。アシャーが「アッサム(紅茶の種類)」の紅茶王子だったことは、ルフナから話を聞いて知っている。アシャーと吉岡奈子の紅茶専門店「QUALITY SEASONS」にルフナと共によく訪れるほか、吉岡杏梨のシッターを頼まれることもある。アシャーの熱烈なファンのため、アシャーが声をかけると見せる極端な反応を面白がられる傾向にあり、アシャーからよく遊ばれている。 気は強いが、ルフナを大切にしている心優しい女の子。『紅茶王子の姫君』から引き続き登場する。

ルフナ

高畑絵里が呼び出した「ルフナ(紅茶の種類)」の紅茶王子。アシャーが「アッサム(紅茶の種類)」の紅茶王子だった時の記憶を持つ数少ない人物。絵里と共にアシャーと吉岡奈子の紅茶専門店「QUALITY SEASONS」によく訪れる他、店番をしたり、吉岡杏梨のシッターを頼まれることもある。口が悪くカッとなりやすい反面、すぐにへこんだり泣いたりする子供のような一面も持ち併せている。 『紅茶王子の姫君』から引き続き登場する。

黄山紅牡丹 (ふぁんしゃんほんむーたん)

香椎薫に仕える「黄山紅牡丹(紅茶の種類)」の紅茶王子。頑固だが真面目な性格で、主人に対する忠誠心は厚い。紅茶の国ではアッサムと共にサクラの面倒をよく見てきたが、アッサムの記憶は失っている。サクラの精神状態を案じたアシャーが、吉岡奈子に頼んで吉岡健太が黄山紅牡丹を呼び出すように仕向けるも、巡り巡って薫が呼び出すこととなった。 『紅茶王子』から引き続き登場する。

場所

青径館 (しょうけいかん)

桜庭女子学院の図書館の名称。本棟の図書室とは別に古くから残されている図書館で、外部の人も利用が可能となっている。また、この図書館は、朝霧八重が在学中に八重の父親の寄付により建てられたもので、青径館という名称は「竹久夢二」のファンだった八重が、大好きだった「青い小径」という本のタイトルから取って付けたもの。

その他キーワード

紅茶王子 (こうちゃおうじ)

満月の夜に呼び出される紅茶の精。白磁のティーカップに入れた紅茶に満月を映し、銀のスプーンでかき混ぜて飲むと、紅茶の国から紅茶の王子様が現れるというおまじないをもとに呼び出される。男性であれば「紅茶王子」、女性の場合は「紅茶王女」と呼ばれる。呼び出された紅茶王子は、自分を呼び出した人間を主人として仕え、魔法で主人の願いを3つ叶えるまで自国に帰ることができない。 叶えられる願い事には制約があり、「他人に影響を及ぼさないささやかなもの」に限られる。また、小さな姿になることができ、その間は、基本的に紅茶王子の存在を知る者以外はその姿を見ることはできない。なお、紅茶王子が人間になることも可能だが、そのためには、自分以外のすべての人が紅茶王子本人に関わる記憶を失うという代償が必要となる。

前作

紅茶王子 (こうちゃおうじ)

満月の夜に、おまじないによって紅茶の国から人間の世界に呼び出された紅茶王子たち。彼らは自分を呼び出した主人の願いを叶える紅茶の精だった。学校のお茶会同好会に所属する女子生徒を中心に、彼女の友人や家族、... 関連ページ:紅茶王子

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紅茶王子の姫君 (こうちゃおうじのひめぎみ)

前作『紅茶王子』の登場人物である奈子とアッサム(本作『紅茶王子の姫君』のアッシャー)の間に生まれた一人娘、杏梨の心の葛藤を描いた物語。「ザ花とゆめ」2006年6月1日号に掲載された表題のエピソードを含... 関連ページ:紅茶王子の姫君

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