Papa told me

Papa told me

まだ幼い頃に母親を亡くし、父親と二人暮らしの少女、的場知世の視点から見える日常を綴った物語。普通の子供とも大人とも異なる、独特の感性を持つ知世の自由闊達な心の動きが、繊細な筆致で丁寧に描かれている。さらに、脇を固めるキャラクターの多くが、些細だが本人にとっては切実な問題を抱えており、さまざまな方法でそれに対処していく様も描写されている。また、いくつかのエピソードでは、ファンタジックなストーリーが展開することもある。

正式名称
Papa told me
ふりがな
ぱぱ とーるど みー
作者
ジャンル
その他
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

幼い頃に母親を亡くした的場知世は、小説家の父親、的場信吉と二人で暮らしていた。自宅で仕事をする信吉とは対照的に、離れた私立小学校に電車を乗り継いで通学している知世は、今日もラッシュを避けるため、早めに自宅を出発する。日中、知世は学校で、定期券を落とした事がきっかけとなり、今月編入して来たばかりだという辻野幸子と出会う。幸子が自分と同じ駅から電車で通学している事を知った知世は、幸子を誘い、街を案内しながら帰路につくのだった。(EPISODE・1 シティ チャイルド)

信吉の妹、的場百合子は最近、会社で一大プロジェクトを任され、成功をおさめた。自分が中心になって手掛けた仕事を誇りに思う百合子だったが、一方で、母親は女性が仕事に生きる事をよしとせず、一刻も早い結婚を願っている。そんな母親に認めてもらえないというジレンマに、心を痛めていた。ある日曜日、知世は仕事が思うようにはかどらない信吉に代わって、叔母の百合子とデパートへ買い物に行く事になった。女同士のショッピングを楽しむ中、知世は百合子が内に抱く悩みを知る。(EPISODE・2 ローズ ウォーター)

夏休みに入り、知世は信吉の負担を軽くしようと、張り切って家事手伝いをしていた。そんなある日、出版社からやって来た編集者の小隅が放った、デリカシーのない一言で、状況は一変する。「知世がいなければ、信吉は羽を伸ばせる」という小隅の何気ない言葉に傷ついた知世は、父親を束縛したくないと頑なになり、自分一人で祖父母の家へ泊りに行く事を決める。(EPISODE・3 パフ スリーブ)

知世の学校の体育教師が入院したため、新たな男性教師、田町が赴任し、知世のクラスを担当する事になった。初めての授業に緊張していた田町は、出席確認の途中で知世の名前を間違えて、「ともよ」と呼んでしまう。子供達は笑いながら、口々に「ちせ」であると訂正し、田町もそれに従ったが、それ以降、知世だけを苗字ではなく名前で呼ぶようになる。知世はほかの子と同じように苗字で呼んでほしいと願い出るが、それを反抗的な態度と認識した田町は、意固地になって知世を名前で呼び続ける。苗字で呼ばれるまで返事をしないと決めた知世と田町の関係は次第に悪化し、二人の意図しないところで問題がどんどん大きくなってしまう。(EPISODE・4 アナザー ドア)

日曜日、父親と公園にやって来た知世は、デリカシーの希薄なご近所さんに遭遇する。気遣いのない言葉や態度、かわいく思えない赤ちゃんに辟易した知世は、母親、的場千草の姿に思いを馳せる。知世は、幼い頃に母親を亡くしたため、その声すらも覚えてはいなかった。しかし知世の中で千草の存在は誰よりも清く、尊いものであった。その頃、百合子は、母親が信吉に縁談を進めようとしている事を知る。(EPISODE・5 ファースト レディ)

第2巻

友人、辻野幸子の自宅に招かれた的場知世は、予想以上にゴージャスで大きな家に驚く。そこは、立派な装飾品があり、お手伝いさんのいる典型的な金持ちの家だった。幸子は、家庭より仕事とゴルフ優先の父親と、娘を「理想のお嬢様」に仕立て上げようと一生懸命になりすぎる母親について語る。どこか寂しげな幸子の話を聞いた知世は、自分の知る父親・母親との違いに、さまざまな家族の在り方について考える。(EPISODE.6 ショートケーキ ハウス)

画家の香原は、美術協会から特別表彰される事が決まり、女性記者からインタビューを受けていた。自らの過去を振り返り始めた香原は、離婚後に亡くなった最初の妻・的場千草について語る。その頃、的場百合子は会社の後輩の結婚式に出席した帰りに知世の家に立ち寄り、知世に彼女の母親、千草の話をするのだった。知世は、自分が知らなかった母親の話を聞き、両親の結婚について興味を持ち始める。そんなある日、的場信吉の提案で、知世はフランス料理店へ赴く。(EPISODE.7 ノスタルジー ガーデン)

知世は、家の空気が尖っている事に気づいていた。滅多にないが、信吉がいら立っていたのだ。普段は受けない雑誌の取材に応じたり、さまざまな仕事が重なっただけでなく、面倒な話も多く舞い込んで来た、というのがその理由だった。そんな折、新しく出版する本のプロモーションのために、企画されたサイン会を知った知世は、外で働く信吉の姿を一目見ようと、学校帰りに密かにサイン会場まで行く事と決める。(EPISODE.8 レジメンタル タイ)

ここ数日、知世は学校からの帰宅途中に、何度も誰かの視線を感じていた。そんなある日の下校中、突然見ず知らずの男性二人組から声をかけられた知世は、これを誘拐と判断。怪しい男性を振り切り、逃げ帰って信吉に報告する。事を重く見た信吉は、知世の毎日の登下校に同行しようと決め、怪しい男達を撃退すると意気込む。(EPISODE.9 プリンセス ライン)

叔母の百合子の家で、知世はアルバムに貼り忘れた信吉の昔の写真を見せてもらう。そこには、今のまじめで一途な姿からは想像できない、数々の女性と撮った髪の長い信吉が写っていた。その姿に少なからず衝撃を受けた知世は、「的場信吉は、知世の父親ではない的場信吉の時間のほうが長い」という事実に気づく。知世は、自分が存在しえなかった若かりし頃の信吉に対して、嫉妬に似た複雑な感情を抱く。(EPISODE.10 ソーダ ファウンテン)

第3巻

ジュエリーショップ店員の冬木は、店に勤務するかたわら、夜間には宝石デザインの学校に通っていた。プロの宝石デザイナーを目指して、家計を切り詰めながら勉強に励んだ冬木は、その努力の甲斐あって、店の工房にも出入りする事を許されていた。しかし、郷里で待つ婚約者は、そんな彼女の努力を無駄な時間であると一蹴。早く諦めて帰郷して、結婚しようと急かすのだった。そんな中、誕生日を迎える娘・的場知世からプレゼントにねだられた花を購入した的場信吉は、ほかにもなにか形に残るものをと考え、冬木の勤めるジュエリーショップを訪れる。(EPISODE.11 スターダスト リボン)

児童絵画展で特選に選ばれた自分の絵を見に行こうと、知世は信吉と寄り道をしながら美術館へと向かった。途中、大学時代の同級生、岸田と偶然再会した信吉は、彼の妻や子供達を紹介される。その後、岸田一家と別れた信吉は、知世と共にランチに向かうが、知世は突然口をつぐみ、ハンストを始める。(EPISODE.12 アップルハニーミルク ティー)

文芸誌「ブックエンド」の編集者を務める北原ひとみは、取引銀行の関係者の娘という事で入社して来た高輪との関係に苦慮していた。高輪は物事を自分本位に捉え、それを他人に押しつける典型的なお嬢様気質であり、北原は人の心を土足で踏み荒らす彼女に笑顔で対応しながら、なんとか日々をやり過ごしていた。そんなある日、北原は、出来上がったばかりの本を抱えて信吉の自宅を訪れる。(EPISODE.13 ワーキングガール)

冬を迎え、知世は信吉と共に期間限定のアイススケート場を訪れたりと、寒い季節を楽しんでいた。そんなある日、信吉はPTAでかかわりを持った保護者の一人である大川から電話を受け、こちらの都合を無視した強引な呼び出しをされてしまう。(EPISODE.14 ワイルド ストロベリー)

第4巻

ある日、的場信吉の弟、的場信二とその妻、さと子が、信吉と的場知世の住むマンションに遊びに来る。直前まで部屋の大掃除に追われつつ、なんとか二人を迎えたものの、信二とさと子に気を遣うあまり会話は空回りし、信吉は終始冴えない姿をさらす事になる。その後、信二は学会に、さと子は気乗りしないながらも短期大学の同窓会に出席。しかし、久々の再会を果たした同級生達との何気ない会話で、内向的なさと子の心は次第に曇っていってしまう。(EPISODE.15 ベビーリング)

知世は、出版社のパーティに出席する信吉といっしょに、都心のホテルに宿泊する。多忙な信吉は、知世に部屋から絶対に出ないようにと釘を刺し、パーティ会場へと向かう。部屋に一人残され、すっかり退屈になった知世のもとに、1本の電話が入る。それは、信吉への取次ぎを希望する新聞社からのものだった。知世は、電話の事をだしにして、こっそりとパーティ会場へと向かう。娘を一人残してきた信吉の心配をよそに、知世はホテル内の探索を開始し、一人の時間を謳歌する。(EPISODE.16 ホテル ラビリンス)

信吉の古くからの友人であり、ハードボイルド作家として有名な黒河剛が、知世の家を訪れた。日本に9台しかないというナマズ顔の高級車を乗り回し、真っ黒なサングラスをかけて、どや顔で煙草をふかす黒河は、久しぶりに再会した信吉が、すっかり所帯じみてしまった事を嘆く。そして、いっしょに男のロマンを語ろうと、信吉と知世を自宅に招待する。そこには、小さな家で奥さん相手に亭主関白ぶりを発揮する黒河の姿があった。(EPISODE.17 パパ ヘミングウェイ)

学校で「将来の夢」という作文を書く事になった。知世は、絵画や作文で学校代表になるなど、特に優秀な成績をおさめていたので、担任や親しい友人からも、作文の出来について期待を寄せられていた。しかしそれを、「作家、的場信吉の娘」という肩書によるものとして、快く思わない者も少なからず存在した。それに気づいた知世は、プレッシャーや言いがかりに心を痛め、信吉にあたってしまう。(EPISODE.18 スニーク プレビュー)

第5巻

的場知世は仲のいい友人達と共に、大森ゆう子の住むマンションへ遊びに行く事になった。ゆう子は、最近両親が離婚したため母子家庭になったばかり。しかし、名字が「浅野」に変わったので、芸能人と同姓同名になった、と場を盛り上げる、明るく元気な少女だった。そんなゆう子でも、両親が離婚に至るまでには数々の修羅場を経験し、心には消えない傷を抱えていた。(EPISODE.19 シングル ランチ)

知世は、父親、的場信吉と信吉の妹、的場百合子と共に、遠い親戚の結婚披露宴に参列していた。そんな中、百合子は見合いの話を進めてくる親戚の叔母達の、無神経で一方的なお節介に手を焼いていた。同じ頃、百合子の会社では、結婚により退職する若い女性社員を見送る男性社員達の姿があった。百合子と同僚の女性は、ただ結婚していないというだけで肩身の狭い思いをしなければならない事に、やりきれなさをにじませる。(EPISODE.20 ミス ロマンチック)

信吉は、珍しく仕事が難航したせいで知世と離れ、都内のホテルに一人缶詰めになっていた。一方の知世は、叔母の百合子がマンションに泊まりに来て、いっしょに生活してくれたおかげで、退屈しない毎日を過ごしていた。友人の前では、生活の変化を楽しんでいると強がってみる知世だったが、実際は心ここにあらずな状態にあった。常々「自立」や「大人」を目標に暮らしてきた知世は、初めて一週間も父親と離れ離れになり、改めて自分が大人になれていない事に気付く。(EPISODE.21 スーパー スランプ)

世の中はクリスマス直前の喧騒に包まれていた。信吉は娘、知世のために、知世は父、信吉のために、そして百合子や編集者の北原ひとみも、それぞれが誰かを幸福な気分にしてあげたいと、忙しく走り回っていた。そんな中、的場千草の命日が近づき、信吉は、千草が亡くなってすぐの頃に思いを馳せる。(EPISODE.22 スノー フレイク)

たくさんの古書店が立ち並ぶ通りのはずれに、店頭に怪物の石像がある謎の古本屋があった。今まで何度も歩いているはずの場所なのに、その店の存在に初めて気づいた知世は、信吉と共にその店に足を踏み入れる。小さく見えた店の中は想像以上に広く、アンティックで豪華な造りはまるで城の中のよう。キャッシャーにはブルーグレーの目をした外国人男性が座り、その不思議な雰囲気に、知世はすっかり魅了されてしまう。そこで見つけた綺麗な絵本を開いた知世は、不思議な体験をする。(EPISODE.23 ゴールデン ステアース)

第6巻

的場知世的場信吉の家に、「スーパー家政婦」の小川さんが久しぶりにやって来た。元教師の彼女は、家政婦の仕事とボランティアを生きがいに、忙しい日々を送っており、何でもきちんとしていないと気が済まないタイプ。生活指導員さながらの小川さんのいる生活は、普段何かと緩みがちな毎日を送っている的場家を、緊張感に満ちたものへと変化させる。そんな小川さんだったが、知世を通して元区長の男性、唐沢と知り合って、頑なな心を次第に解かしていく。(EPISODE.24 シュガー シュガー)

ある日の夕方、学校帰りの知世と待ち合わせをした信吉は、近くの書店で立ち読みをしながら知世の到着を待っていた。その時、信吉の耳に車のブレーキ音と、横断歩道で小学生がはねられたらしいと、慌ただしく動き回る人々の声が届く。慌てて事故現場に向かった信吉が目にしたのは、人々に介助されている小学生の姿と、その5メートル手前で立ちすくむ知世の姿だった。(EPISODE.25 ストーミー マンデー)

出先で偶然に高校時代の同級生、若松に再会した信吉は、彼が手掛ける都会っ子のためのサマーキャンプ「わんぱくセミナー」の説明を自宅で受ける。都会のマンションで育つ今どきの子供や、一人っ子に偏見を持つ若松の説明を聞くにつれ、納得がいかなくなった知世は、勢いで「わんぱくセミナー」に参加しようと決めてしまう。多少の後悔も覚えつつ、父親と離れて向かったサマーキャンプで、知世はリーダーとしての力量を発揮する。(EPISODE.26 ハーフビター チョコレート)

思うように仕事がはかどらない信吉は、気分転換に、出店で賑わうほおずき市に知世を連れて行こうと決める。道中、信吉は知世に浴衣一式を買い揃え、すっかり見違えた彼女を連れて会場へと向かう。そんな中、信吉は妻、的場千草と生前にほおずき市に来た時の事を思い起こし、在りし日の千草に思いを馳せる。(EPISODE.27 オリヒメ トランスファー)

勉強も芸術も、かけっこも跳び箱も、なんでもできる知世だったが、ある日、体育の授業で逆上がりができないと気づく。クラス全員ができるようになるまでがんばろう、と意気込む体育教師、田町の言葉に、知世は、自分が最後の一人になるのではないかと不安を持ち始める。自宅でも逆上がりができない事に悩み、憂鬱になっていく知世を見かねた信吉は、知世を連れて区民スポーツセンターを訪れる。(EPISODE.28 マシュマロ トラスト)

第7巻

学校で新聞部に在籍している的場知世は、6年生の乾鷹彦にリレーコラムの原稿をお願いする。鷹彦は学園きっての秀才で、クールビューティーとの誉れも高く、中等部からも注目を集める人気者。有名政治家を父親に持つお坊ちゃんだが、それゆえの気苦労も多く、長きにわたって内に秘めた悩みが、彼自身を傷つけ、蝕んでいた。そんなある日、いつまでたってもコラムの原稿を書こうとしない鷹彦に、しつこく催促し続けていた知世は、鷹彦が胃潰瘍で入院した事を知る。(EPISODE.29 シェル ブルー、EPISODE.30 グリーン プラネット)

知世と信吉が、今のマンションに引っ越してきたばかりの頃。まだ幼かった知世は、初めて手に入れた自分の部屋に興奮しながらも、父親と離れて自分だけのベッドで眠る事ができないでいた。信吉は、そんな知世に本の読み聞かせを始める。知世が夜ベッドに入り、眠る前に必ず行われるようになった読み聞かせは、それ以降どんな日も欠かさずに毎日続けられた。そんな日が何年か続いたある夜、少し大きくなった知世は、信吉に、読み聞かせがもう必要なくなったと告げる。(EPISODE.31 ストーリー テラー)

知世や信吉と同じマンションの5階に住む苅部月子は、銀座のクラブでホステスを務めるクールビューティー。彼女はきらびやかな世界にいながら、孤独で誇り高く生きていた。そして近い将来自分の店を持ち、花屋を開きたいと夢を見つつ、自分と同じく孤独でプライドの高い、近所の野良猫をいつもかわいがっていた。そんなある日、月子はその猫が近隣の子供達にいじめられている現場に出くわす。(EPISODE.32 アーバン キャッツ)

第8巻

的場知世は連休に、父親、的場信吉と二人で海辺のホテルにやって来た。シーズンオフながら、上品で格調高い趣のあるホテルへの滞在を、知世は目いっぱいお嬢様ぶって楽しんでいた。このホテルは、知世の亡き母親、的場千草が子供時代によく訪れたゆかりの場所。千草が信吉と結婚した頃には、贅沢すぎて来る事ができなかったものの、いつか家族で来ようと約束した場所でもあった。信吉にとっても思い出深いこの場所で、知世は不思議な出会いを果たす。(EPISODE.33 シーサイド ダイアリー)

父の日を間近に控えたある日、知世の友人、大森さとみは、母親が趣味にしている造花に息苦しさを感じ、母親の一方的な押し付けを遠因とする両親の不仲に、心を痛めていた。同時に今日子は、単身赴任中の父親に存在意義を感じられずにおり、両親が離婚した浅野ゆう子は、離れて暮らす父親とのかかわり方に頭を悩ませていた。それぞれに父親や家族との関係を模索する友人の姿を見た知世は、自分の父親である信吉に送るカードにどんな言葉を綴ろうか、世界一の言葉を送るために頭を悩ませ始める。(EPISODE.34 リトル ラヴァーズ)

16歳の氏家加奈江は、小説家を夢見る女子高校生で、同時に作家としての信吉のファンでもあった。だが行動力がなく、ファンレターは何通も書いているものの、一度も投かんした事がなく、文章を書く事に関しても実行に移せずにいた。そんなある日、書店に出かけた加奈江は、偶然にも信吉の姿を目にする。(EPISODE.35 ライラック タイム)

ある日、信吉はクラブのママから、女難の相が出ているから気をつけるよう忠告を受ける。その場でホステスのカナ子に酒をこぼされた事を皮切りに、信吉の周囲では女性がからんだトラブルが起こり始める。そんな中、知世からコメントを書いてほしいと言われた信吉は、預かったはずの大切なレポートがなくなっている事に気づく。(EPISODE.36 ローズティー ロンド)

第9巻

ある日の夜、父親、的場信吉と夜の街を歩いていた的場知世は、突然道の突き当りにある、高い塀の大きな家が気になってしまう。そこは誰も住んでいない空き家だったはずだが、灯が見えた気がしたからだ。異常がなさそうな事を確認し、帰宅した知世だったが、後日、学校帰りに改めて塀の中を覗いてみると、家の中に、誰かが倒れているのを発見。知世は大急ぎで自宅に戻って信吉に伝えるが、信吉はそれを真剣に受け止めようとしない。その夜、どうしてもあの家が気になって仕方がない知世は、たった一人でこっそり自宅を出て行ってしまう。(EPISODE.37 クロスストラップ シューズ)

日曜日、美意識に欠けた家族連れが多くいる日曜日の公園に抵抗を感じながらも、ランチをしに出て来た知世と信吉は、そこで翻訳を生業にする女性と、その子供、智佳に出会う。彼女は、自分が未婚の母親である事にとらわれ、何かと暮らしにくい日本という国を出て、外国で暮らしたいと考えていた。そんな彼女の凝り固まった心の内を、信吉と知世が解きほぐしていく。(EPISODE.38 マジック マフィン)

信吉は、編集者の男性から、2~3か月かけて世界各地を回る旅をする企画を提案される。知世の事を考えると現実的ではない、と信吉はその申し出を断るが、編集者からは、再婚して家庭を守ってくれる妻をもらうべきだと進言される。そこから信吉は、知世と暮らす日々を含む、自分の人生を旅になぞらえて考え始める。(EPISODE.39 ペチコート レーン)

女子高校生の杉岡亜季は、ある日突然、動く事も食べる事も息をする事も嫌になってしまった。生きる意志を失い、次第に衰えて自分自身を殺してしまおうとする彼女を、母親やカウンセラーは必死になって正常に戻そうとするが、それは亜季にとって逆効果であった。そんなある日、知世は早朝の公園で生気のない亜季と出会い、彼女を「妖精」だと思い込む。(EPISODE.40 エルフィー エルフランド)

第10巻

バリバリのキャリアウーマンとして忙しい毎日を送っている的場百合子には、中学時代に互いの存在を認め合い、「一番大切な友達、大切な夢の半分」と語り合った親友、浦野がいた。中学卒業以来連絡を取っていなかった彼女の事を思い出し、懐かしく思った百合子は同窓会に参加。しかしそこには、なぜか百合子に対して敵意をむき出しにする、すっかり変わってしまった浦野の姿があった。(EPISODE.41 ダイヤモンド スカイ)

クリスマスイブの夜、会社で社長を務めている御山は、大学時代の友人である的場信吉と、その娘、的場知世を、今年も自社ビルのレストランでのディナーに招待していた。かつて信吉が結婚した時、御山は自社ビルのオープンを迎えており、結婚祝いとして、毎年イブの晩にこのビルでのクリスマスディナーを提供する、と約束していたためだった。「EPISODE.22 スノー フレイク」の後に続く、それぞれのイブの物語。(EPISODE.42 ジャック フロスト)

お正月を間近に控えたある日、知世はとある友達の誕生日に贈るリボンを探していた。生まれてから一度もリボンを付けた事がないというその友達のために、知世は無事に超巨大な赤いリボンを調達。それを持って知世が向かった先は、公園の池だった。(EPISODE.43 プリティー フレンズ)

雨の日曜日、仕事で忙しい信吉に頼まれて、知世ははとこの的場強をラグビー観戦に連れていく事になった。ラグビーに興味がない知世が強にその旨を伝えると、強も同じ気持ちだと明かす。それならばと急きょ予定を変更し、二人は知世の家へと向かう。そこで知世は強に自分の服を着るように促し、若干強引ではあるが、強もそれを受け入れ始める。すっかり女の子と見紛うような姿になった強を連れて知世は外に出掛け、二人で秘密の散歩を満喫するのだった。(EPISODE.44 ミッシング リンク)

区民図書館に来ていた知世は、帰り際、たくさんのどんぐりが落ちているのに気づく。図書館の裏側には、年老いた大きなナラの木が、あまり知られずに存在していたのだ。その木が、年齢によりだいぶ弱っていると知った知世は、足しげく木のもとへ通い、少しずつ心を通わせていく。(EPISODE.45 ウッドランド クラブ)

第11巻

よく晴れた休日、編集者の北原ひとみは、義姉の強引な勧めでお見合いをする事になった。編集の仕事に就いている事、今まで結婚しなかった事を、取り繕うように話を進めていくその場の雰囲気に、ひとみはやりきれない思いを抱く。それと時を同じくして、休日の朝をのんびりと過ごしていた的場信吉的場知世のもとに、けたたましいチャイムの音と共に突然の来客があった。それは、いつまでも再婚に前向きになろうとしない信吉を見かねて、見合いを強行するため、女性を連れて押しかけた信吉の叔母だった。(EPISODE.46 マイ ソリテア)

日曜日、仕事が明けたばかりの信吉を連れて、知世は寒い中、マラソンの応援に繰り出した。その後、行きたかったフリーマーケットにも足を延ばし、知世は信吉と二人の休日を心置きなく楽しんでいた。翌朝、信吉は頭痛や寒気など、風邪の症状を訴え始める。具合が悪そうな信吉の様子を見た知世は、日曜日に寒い中、彼を連れ回した事に責任を感じてしまう。(EPISODE.47 プロムナード コンサート)

知世は、信吉と共に家具店を訪れていた。そこには手も出ないような高級な家具がずらりと並んでいたが、知世はその中でひときわ大きなワードローブに目を留める。そしてそのワードローブの中から、不思議なうさぎが出て来るところを目撃するのだった。(EPISODE.48 シルバー チップス)

時は、信吉がまだ新聞社の記者だった頃にさかのぼる。偏屈で有名な画家の香原がインタビューに応じるという、またとないチャンスを手に入れた信吉は、指定された時間に香原の自宅兼アトリエを訪れた。高い塀で囲まれたその敷地は、手入れの行き届いていない森のような庭であった。そこで信吉は、運命の人との出会いを果たす。(EPISODE.49 プリムローズ ヒル)

ロングヘアをベビーピンクに染めた青年、まさおは、自分の所属していたバンドが解散して以降、スーパーのアルバイトで生活する日々を送っていた。ある朝、知世はスーパーの前で、何日も飼い主を待ち続ける犬の存在に気づく。フラフラと倒れ込んでしまったその犬を助けようとする知世を見たまさおは、知世の代わりに獣医に連れていく約束をする。何日も餌を食べていなかったために栄養失調だったその犬は、獣医とまさおの看護の甲斐あって元気を取り戻す。そして、どうやら捨てられた可能性が高い事が判明する。(EPISODE.50 パンプキン キング)

第12巻

的場信吉は娘、的場知世を連れて、高校時代の友人、荒川の新築披露のホームパーティーを訪れる。自分の城を手に入れた荒川は、とても誇らしげで希望に満ちているように見えた。しかし、一方で大きなものを手に入れた責任や、計り知れない不安感に襲われるようになった荒川は、家を出ると帰宅したくなくなる「帰宅拒否症」に悩まされる。(EPISODE.51 ピンク ストローハット)

知世は最近、クラスメイトの男子、目黒高信の存在に頭を痛めていた。彼は、何かにつけて絡んできては、知世に嫌がらせして困らせ続けていたのだ。目黒は、学校では自分勝手で傍若無人に振る舞い、帰宅すると、優しい母親の手作りのおやつを食べて甘やかされる少年だった。知世はそんな目黒に対してもいちいち相手にせず、大人な対応を心掛けていた。そんなある日、クラスで制作していた看板に、目黒が蹴ったボールが当たり、ついに知世の堪忍袋の緒が切れてしまう。(EPISODE.52 パール ティアラ)

知世の通う学校で栄養士を務める松原は、日々たくさんの子供達に、おいしく栄養のある給食を提供すべくメニュー作りに尽力していた。知世の学校はそんな松原の努力により、受験の際の競争率も高く、特に保護者からの人気を博していた。だが一方で松原は、結婚してお母さんになり、子供に美味しいご飯を作るという、ごく一般的な生活を夢見ており、仕事ばかりの今の自分に、少なからず疑問を感じていた。しかし、子供達や同僚の給食に対する思いを知るうちに、自分への誇りを取り戻していく。(EPISODE.53 イート パラダイス)

クリスマスイブの夜、信吉は、知世がいまだにサンタクロースの存在を信じ続けているので、驚いていた。知世が眠りにつくのを待って、プレゼントを枕元に置く事は年々難しくなってきており、苦労が絶えない。そんな信吉の気持ちも知らずに、知世は今年こそサンタクロースに会おうと意気込み、ベッドの上で眠るまいとがんばるのだった。(EPISODE.54 ウイッシュ リスト)

子供服の店で、ショーウィンドーに飾ってあるワンピースに恋をしてしまった知世は、寝ても覚めてもそのワンピースの事ばかり考えていた。買えないと分かっていても、学校帰りに店に足を運んではワンピースを眺め、想像しては胸を膨らませる毎日。実は店の店員、佳子も、そんな知世の様子には気がついていた。ワンピースに向けられた知世の情熱を感じ取った佳子は、ぜひとも知世にそのワンピースを手に入れてほしいと思い始める。(EPISODE.55 シェリー トライフル)

第13巻

的場知世は、ストリートマジシャンのパフォーマンスを見てからというもの、すっかり彼女に魅了されてしまう。だが彼女は定住せず、転々としながらマジックを披露して生計を立てていた。ある日、雨で行き場をなくしていたマジシャンを見つけた知世は、自宅のマンションに招き入れる。そこで的場信吉は、マジシャンの女性が胸に抱える思いを聞く事になる。(EPISODE.56 ピルグリム ロード)

知世は、信吉や編集者の北原ひとみ、叔母の的場百合子など、周囲の大人がみな「春」を理由にして憂鬱な面持ちである事を知る。特に信吉は、仕事も手につかず、家事に勤しむ日々を送っていた。そんな信吉に気を遣いつつ、知世は小学校を受験した日、信吉と二人で面接に臨んだ時の事を思い出す。(EPISODE.57 フラワー バスケット)

百合子は、自分の将来を見据えてマンションの購入を思い立った。思いつく限りの条件を並べ、知世と共に不動産店を訪れた百合子は、物件めぐりに奮起する。しかし、理想が高すぎて、なかなか条件に見合う物件に出会えない。知世は知世で、個人的に不動産店を覗き、百合子の好みに合いそうな物件をチェックして楽しみ始める。(EPISODE.58 シルバー スカイスクレーパー)

知世と同じ学校に通う弓倉まりあは、CMで活躍中のタレントとして有名だった。しかしまりあは、周囲からあまりいい印象を持たれておらず、彼女を取り巻く偉そうな友人達も、その悪印象に拍車をかけていた。知世の友人である浅野ゆう子や今日子達は、まりあよりも知世のほうがかわいいと言い始め、「知世ちゃんのほうが本当はずっとかわいいぞ同盟」を結成。知世の思いとは裏腹に、暴走し始めてしまう。(EPISODE.59 バタカップ フィールド)

待ちに待った連休、知世は信吉と二人で、美術館の併設された高原のホテルに行くはずだった。しかし、信吉がスランプになって仕事が滞ってしまったため、旅行はキャンセルとなってしまう。思いがけず時間ができた知世は、旅行用のワンピースを着て散歩に出たり、部屋の模様替えに洋服の入れ替えなど、思いつく限りをやってみる。しかし、心の奥底ではやりきれない寂しさを抱えており、すべてが空回りしてしまう。そして迎えた連休最終日、知世は仕事が終わった信吉と、ようやく休日らしい一日を過ごす。(EPISODE.60 トラベリング バンド)

第14巻

謎の古本屋で、的場知世は不思議な絵本の世界に入り込んだ。そこでは、名門である家の存続のため、一人の男性が愛のない結婚を強いられていた。お世辞にも人柄がいいとはいえない相手の女性から逃げ、本ばかりに興味を持つ彼に憐れみを感じた男性の祖母は、屋敷のメイドを務める一人の美しい女性に目を向け始める。「EPISODE.23 ゴールデン ステアース」の続きを描いた物語。(EPISODE.61 ティータイム エクスプレス)

昇は、優しくて物わかりのいい夫であり息子だった。妻と息子と、両親のいる実家で暮らし、特に母親からは、嫁に対する不満の声を多く受け止める日々を送っていた。昇の住む家は、少年時代に引っ越して来たアンティークな一戸建て。そこは、知世の亡き母親、的場千草が幼少期を過ごした家だった。(EPISODE.62 ムーンライト ウォーク)

的場百合子は、実家に帰省した際、お断りしたはずの見合い話が、母親の意向で継続されており、2回目のデートまでセッティングされていた事を知る。そして母親は、仕事ばかりでいつまでも結婚しようとしない百合子に対し、つい暴言を吐いてしまう。百合子は、娘かわいさのためと理解はしながらも、母親の暴言に悲しみ、傷ついてしまう。それ以降、母親と話もしない険悪な状態が続いていた百合子は、元通りになるきっかけすらつかめず、苛立ちを感じていた。(EPISODE.63 カモミール サシェ)

知世と同じマンションに住んでいる甲田は、幼稚園の教員を務めながら、不妊治療のために通院を続けていた。この日もいつも通り職場を早退して病院に行く予定だったが、いつまでも結果の現れない状態に心が疲弊していた甲田は、病院をサボってしまう。(EPISODE.64 クレッセント ストリート)

近所の公園のモニュメントから、少年が落ちて意識不明となる事故が起きた。事故に遭った少年、上田雄太のクラスメイトである賢介は、雄太が日常的にいじめを受けた過程で事故が起こったのを知っていた。しかも賢介自身が、雄太をいじめていた少年グループの一人でもあったのだ。賢介は事故への責任を感じ、その重大さに押しつぶされそうになっていた。実は、起きてしまったこの惨事の一部始終を目撃していた人が存在した事を、賢介は知っていたのだ。(EPISODE.65 ナーサリー ライムス)

仕事帰り、百合子は街中で友人の妹、合川慶子に再会する。彼女は以前、目前に控えた就職活動について百合子を頼ってきて、相談にのった事があった。その時の合川は、仕事に対する意識が高く、就職にも熱意を感じるタイプだったが、久しぶりに会った彼女は、すべてを諦めた抜け殻のような状態となっていた。(EPISODE.66 ラズベリー フットパス)

第15巻

ネフロレピス王国の王女であるセリア セリレアが来日し、メディアでは連日彼女の事ばかりが報道されていた。そんなある日、的場知世は街中で王女にそっくりの女性に出会う。何者かに追われ、困っていたという女性を助けようと、知世は彼女を自宅へと招き入れる。(EPISODE.67 クリケット ストライプ)

知世の友人・浅野ゆう子は、いつも明るく元気いっぱいで、いっしょにいるととても楽しい人物。ある日、ゆう子が友人達と感想文のための課題図書『二人のロッテ』について話をしていた時の事。本の内容にもかかわりのある離婚に話が及んだ際、離婚を軽々しく考える友人達や、本の内容にどうしようもない憤りを感じたゆう子は、怒ってその場を立ち去ってしまう。(EPISODE.68 アンクル アルバート)

的場信吉は、街中でボロボロの紙袋をたくさん持って歩く、ちょっと不思議な雰囲気を持つ年配の女性と出会う。本を読んでいた信吉に話しかけてきたその女性に、本の内容について話すと、女性はその本にとても興味がある様子を見せる。そこで信吉は彼女に今読み終わったばかりの本を貸してあげる事にした。女性は、目が弱くなったといいながらも、借りた本にのめり込んでいく。(EPISODE.69 スプリング コートヤード)

入院した同僚の代わりに、編集者、北原ひとみは臨時でイケメン作家の宇佐美淳を担当する事になった。彼は、モデルのような外見を持つフェミニストで、周囲にはつねに複数の美人女性の存在があり、作品よりも私生活で話題になる事が多かった。北原とは水と油のようなまるで正反対の宇佐美は、北原を一目で気に入り、軽いノリで口説き始める。(EPISODE.70 ラベンダー コテージ)

知世と同じ学校に通う新聞部の先輩、菱田直子は、妹の存在をどこか快く思っていない。それが原因で同じ夢を見るようになっており、不眠からくる不調を感じていた。それは、母親を愛しているからこそ、誰もが持つ当たり前の気持ちだったが、直子はそんな自分の中の薄暗い感情を怪物のように感じ、恐怖を覚えていた。(EPISODE.71 ローズ ソサエティ)

第16巻

的場知世は、父親、的場信吉といっしょに海辺のコテージにやって来た。白くて明るい新しいホテルのホールには、ギャラリーもあり、教科書で見たような名画がいくつも並べられ、飾られていた。翌日、知世は改めて信吉と共にギャラリーに向かうと、その中でもお気に入りだったリンゴの絵に違和感を覚える。同じ絵なのに、昨日までとは何かが違うと感じた知世は、その絵が贋作である事に気づく。(EPISODE.72 マリン パレード)

バーに勤めているニューハーフのマホは、不安定な生活と未来の見えない人生に煩わしさを感じていた。そんなある夜、知世がサマースクールで手作りした小さな飛行機を、部屋の中で飛ばして遊んでいたところ、飛行機は窓の外へと飛んで行ってしまう。うなだれる知世だったが、その飛行機は夜の公園で座り込んでいたマホの前に現れ、彼に拾われる事になる。(EPISODE.73 デイライト トワイライト)

ある夏の日、知世は公園のベンチで元区長、唐沢と何やら語らい合っている老人男性に出会う。屈託なく話しかける知世に対し、気さくに会話に応じるその男性は、叶える事ができなかった自分の本当の夢について、寂しそうに語り始める。知世は男性の話を聞きながら、どこかで会った事があるような不思議な感覚にとらわれていたが、その夜、テレビで思いがけず、彼の正体を知る。(EPISODE.74 コットン テール)

街中を大雨と雷が襲ったあと、テレビで大雨の被害を知った知世は、信吉の目を盗んで冠水した街の様子を確かめるため、一人で探検に出かける。そこには、いつもとは打って変わった景色が広がっていた。そして水浸しの公園を抜けた先で、知世は不思議な体験をする。(EPISODE.75 グレープ オーチャード)

近々引っ越しを予定している的場百合子は、インテリアを参考にさせてもらうために、知世にお願いして、北原ひとみの自宅を訪れる約束を取り付けていた。それを受けて北原は、くたびれていたカーテンを新しくするための布地を選んだり、新しいフラワーベースを購入したりと準備を行っていた。そんなある日、新婚半年の友人が、新しく購入したマンションのインテリアの事で夫とケンカをして家出し、うなだれながら北原のもとを訪れる。(EPISODE.76 ビクトリア エンバンクメント)

バレリーナを目指して日々レッスンを続けていた有川郁子は、同じ教室でレッスンを受けている友人、今泉美佳に、いつも勝てない事を気に病んでいた。自分は一生をバレエに費やすつもりでがんばっているのに、すべてにおいて自分よりも優れ、才能にも環境にも恵まれている美佳は、バレエもあくまで趣味で楽しんでいるだけ。そんな状態に納得できない思いを抱えていたある日、郁子は「ALICE CAFE」に立ち寄り、店内に飾られていた「伝説の赤いくつ」と呼ばれる、赤いトウシューズに目を留める。(EPISODE.77 オデット オディール)

第17巻

勤務先の上司から理不尽な扱いを受け続け、心身ともに疲れ切っていた奥井は、ある日の会社帰り、偶然にも不思議な病院の存在を知る。そこは「ハートホスピタル」で、診療科は「心が痛いもろもろのこと科」とあった。日々のストレスを感じていたので、奥井が興味半分で病院のドアを開けると、そこにはナースのコスチュームに身を包んだ子供の姿があった。(EPISODE.78 ハート ホスピタル)

少年、明は都会のマンションに住んでいた。自宅のとなりのビルが解体されて見通しがよくなり、少し離れたマンションのベランダに憂い顔の美少女の姿を発見した明は、すっかり彼女に心を奪われてしまう。一方で、的場知世の住むマンションでは、新たな住人、みのりの引っ越しが行われていた。一人暮らしを始めたみのりは、極端に内気な性格で、引っ越しの挨拶に用意したたくさんの刺しゅう入りタオルも、ただポストに入れて歩くだけ。一軒もきちんと挨拶ができないでいた。(EPISODE.79 レインドロップ ポエット)

新米教師の太田富士子は、初めて担任を務めるので胸を躍らせ、張り切っていた。現代の子供の在り方にいろいろな思いを抱えていた富士子は、子供の教育について確固たる理想があり、そんな自分にゆるぎない自信を持っていた。彼女のクラスの女子生徒、小野田かおりは、そんな担任の些細な押しつけが次第に重圧となり、体の不調を訴え始める。(EPISODE.80 ダンデライオン クロック)

編集者の北原ひとみは、エッセイ集を執筆した紅谷尚子に著者インタビューをする事になった。紅谷は、テレビドラマなどで活躍中の女優として有名だったが、今回執筆したエッセイで、その文才も開花させた。そんな彼女と、とあるホテルのロビーで待ち合わせた北原は、有名女優の思いがけない私生活を垣間見る。(EPISODE.81 ウェルカム ドール)

夏休み、知世は図書館に来ていた。そして、そこで騒ぎ立てる子供達に退出を命じる老人、遠山に出くわす。彼は、図書館で図書の選定委員を務める偉い学者だったが、「母と子の楽しい読書クラブ」のメンバーである母親達と対立関係にあった。彼女達は、子供のためにという大義名分で、趣のある図書館の旧館を壊し、新たに自由に使える子供のための読書ルームを作ろうとしていたのである。遠山の人柄を知っていた知世は、一方的な主張を押し付け、遠山に対して暴言を吐く母親達に腹を立てる。(EPISODE.82 ホワイト モスリン)

第18巻

父親、的場信吉の仕事の関係で、山の立派なホテルに滞在していた的場知世は、その土地の民話「雲小僧」の話を聞く。その話に興味を持ちった知世が、民話のパンフレットを片手に近所を散策していると、ぼさぼさ頭にボロボロの服で、意地悪をしてまわる不思議な少年と出会う。(EPISODE.83 ティー パビリオン)

知世は、信吉と「世界のテディベア展」を訪れた。そこにはたくさんのテディベアが並べられており、中でも3000万円で落札されたというアンティークのテディベアが注目を集めていた。しかし、そのテディベアは価値があるばかりに、分厚いガラスケースに入れられ、防犯カメラにガードマンの警備付き。それを見た知世は、テディベアの姿にもの悲しさを感じてしまう。(EPISODE.84 モヘア プラッシュ)

劇団員の国見君子は、小さな劇場で女優として活動する一方で、生活のためにさまざまなアルバイトに精を出していた。家にある家具は、ほとんどが粗大ごみだったもの。さらに靴下は穴あきのままで、かばんももらい物と、日々充実を感じながらも、ひっ迫した生活を送っていた。そんなある日、君子は友人が勝手に応募した某番組のキャンペーンであるカバーガール募集の書類審査に通り、2次審査に出場する事になる。(EPISODE.85 デイジー トレリス)

3月3日、信吉はちらしずしにお吸い物、甘酒の準備と、朝からひな祭りのために忙しく動き回っていた。一方の知世は、着物の着付けに大忙し。実は信吉がひな祭りをきちんとしたがる理由は、生前の妻、的場千草との会話にあった。そして知世は、自宅にたくさんの友人を呼んで写真を大量に撮るが、そこにも亡き母親に対する思いが込められていた。(EPISODE.86 イースト ウインド)

元区長、唐沢の住むマンションを訪れた知世は、その屋上に何か秘密があるのではないかと考えていた。屋上に出るためとは思えないほどにドアは立派で、防犯カメラやオートロックもついている。誰か人が住んでいるような気配に、知世は興味津々だったものの、有力な情報は得られずにいた。そんなある日、屋上に届け物をしたらしい人とエレベーターで遭遇した知世は、彼女から、屋上には何人も人を殺している怖い魔女が住んでいるという話を聞く。(EPISODE.87 サプライズ サラダ)

第19巻

的場知世は、季節外れの転校生として話題になっていた美少年、磯崎と出会った。彼は、知世が作文コンクールで入選した時に、いっしょに受賞していた少年だったのである。彼はクラスで実際に会ったいじめを題材にした印象的な作品で受賞を果たした。そこで彼を新聞部に勧誘しようとした知世は、ミステリアスな磯崎が抱えていた事情を知る事になる。(EPISODE.88 サンクチュアリ ノッカー)

ボタンが一つ取れた古着のワンピースを買った知世は、同じボタンを探そうと「ALICE CAFE」を訪れ、ボタン専門店を紹介してもらう。そこは、どんなボタンも命をかけて探し出すというボタンハンターの店だった。店内にある星の数ほどのボタンの中にも、同じボタンはなく、知世はあきらめて違うボタンで代用しようとする。しかし、店主の女性の力強い言葉に、同じボタンを探してもらおうと決める。(EPISODE.89 シード パール)

知世は、学校の新しい取り組みとして、校外学習で博物館に宿泊する事になった。そこにはさまざまな美術品が展示されていたが、知世はそこで、美術品の修復を手掛ける修復保存家の女性と知り合う。そして、いわくつきの美術品「天使の象」を目の前にして、修復の仕事について話を聞いていた知世は、その像にひびが入っている事に気づく。(EPISODE.90 マーブル エンジェル)

ある時、知世は新聞に掲載されていた名画に描かれた白いドレスを着た女性の姿が、亡き母親、的場千草に似ていると語る。その話を聞いた父親、的場信吉は、知世が持つ母親像が、いつまでも真っ白で穢れのないままの状態であり続けるので、少なからず危機感を感じ始める。そんな中、信吉は出版社でお世話になった恩師、坂巻と偶然顔を合わせる。(EPISODE.91 ビーズ クラウン)

信吉は、子供がいると気が散って仕事ができないとボヤく友人の話を聞き、自分が自宅で仕事をしているあいだ、同じ空間にいるはずの知世の気配を感じなくなっている事に気づく。一方で知世は、友人、杏子の家に遊びに行き、いう事を聞かない弟と、まだ赤ん坊の妹の世話でてんてこまいの杏子の姿を見る。そこで知世は「姉」という存在が持つ葛藤を知るのだった。(EPISODE.92 ミルクフェッジ ジャムロール)

編集者、北原ひとみは、同僚の香川からの頼みで、作家、宇佐美淳に仕事の依頼をする事になった。宇佐美への電話を済ませた北原は、作家、代官山と担当編集者のあいだでトラブルが起こった事を知る。そんな中、歴代の編集者に怒りをぶつけてきた伝説の作家として悪名高い代官山をなだめ、トラブルを解消するための適任者として、北原に白羽の矢が立つ。(EPISODE.93 ウインターワンダー オーケストラ)

第20巻

寒さが募る日曜日の朝、的場知世は、父親、的場信吉といっしょに、大きな公園で開催されるアンティークマーケットにやって来た。そこは休日の朝早くであるにもかかわらず、すでに大勢の人で賑わっており、知世は負けじと、掘り出し物の発掘を目指してマーケットの探索を始める。(EPISODE.94 アンティーク ロードショー)

知世はようやく仕事の終わった信吉と、「世界名作絵本展」に訪れていた。その帰り道に寄ったカフェで二人は、場所を考えずに大声で話す態度の大きな作家と、その担当編集者を目撃する。その作家は周囲に迷惑をかけている自分を棚に上げ、父娘でやって来た信吉を見て、独自の父親論に基づいた悪口を大声で吐き出し続ける。あまりの状況に、今にもキレてしまいそうな知世に代わって立ち上がった信吉は、作家の担当編集者のもとへと向かう。(EPISODE.95 ホワイトピーチ メルバ)

桜の季節が到来し、世の中は短い桜のシーズンを楽しもうと浮足立っていた。知世はお花見遠足を翌日に控えていたが、信吉はそれをすっかり失念しており、弁当の準備ができなくて大ピンチに陥る。その頃、的場百合子は、大学時代の友達三人と久しぶりに再会する約束をしていたが、友人はいずれも結婚していたため、自分の結婚について話題が及ぶのではと、憂慮せずにはいられなかった。しかし百合子は、友人の一人、野添から、思わぬ話を聞く事になる。(EPISODE.96 サイレント ストリングス)

学校で、得意の雲梯のスピード記録を更新した知世は、ピースサインを出した瞬間、雲梯から落下し、頭を打ってしまう。特に異常はなかったものの、大きなたんこぶができてしまったため、その日は信吉に連れられて帰宅した。なんとなくいつもと様子が違う知世は、天気の急変を言い当てたり、未開封の郵便物の中身を当てたりと、謎の大活躍を見せる。知世の勘が異常に鋭くなっている事に気づいた信吉は、知世を、近くの大きな病院に連れていこうと決める。(EPISODE.97 アクエリアス エイジ)

ある日、知世は街中で真っ黒な毛並みの美しい猫に出くわす。いつもの調子で猫に話しかけた知世は、猫から思いもよらない事を聞く。その猫は、自分が「夜」であるというのだ。知世は、昼間に猫の姿になっている夜の存在に思いを巡らせつつ、夜が失くなってしまった国の物語を描いた本に入り込んでいく。(EPISODE.98 クライミング ローズ)

知世のもとに、お婆ちゃんから荷物が届いた。中身はリボンやフリルがたくさんついたデコラティブなコットンレースのワンピース。自分の好みとはかなり違ったこのワンピースを、なんとか直して着られるものにしようと、知世は並々ならぬ情熱を見せる。それに対して「たかが洋服の事で」と半ばあきれ顔の信吉に、知世は真っ向から反論し、服に対する思いのたけを語るのだった。(EPISODE.99 コットンレース ワンピース)

第21巻

花火大会の夜、的場知世的場信吉が主催するサマーホームパーティが行われる予定だった。招待されたのは、主にいつも信吉がお世話になっている出版社の担当編集者達。当然、北原ひとみも招かれていたが、当の北原は仕事が片づかず、朝からそわそわし通しだった。仕事は滞りなく進み、あとは作家、丸川達子の原稿が出来上がるのを待つだけの状態となったが、そんな時に限ってトラブルが発生。この事態に対応するため北原は、ずっと楽しみにしていたパーティへの参加が危ぶまれる事態に陥ってしまう。(EPISODE.100 ヒアデス プレアデス)

知り合いの若いSF作家、大浜が意識不明になったと、連絡を受けた信吉は、知世と共に、彼が入院する病室を訪れた。彼は、最近になって書き始めたジュブナイルもののヒロイックファンタジーが評判となっていた。ビルから自殺しようとしていた男性を助けた際、大浜は勢い余って自分がビルから落下してしまったのである。そのまま目を覚まさない彼を前に、みなが絶望を覚える中、大浜の描く小説の主人公、プリンセスラレーニアにそっくりな不思議な女性が病室に姿を現す。(EPISODE.101 ローズマリー アレイ)

知世の友人、乾鷹彦の周囲は、相変わらずにぎやかだった。中等部にはファンクラブができ、彼が廊下を歩くだけで軽く騒ぎが起きるほど。だが、乾を取り巻く少女達が彼をアイドルのように崇め、次第に行動をエスカレートさせ始めると、知世は少なからず危機感を感じた。一方で、乾と同じクラスで学級委員長を務める矢野は、誰よりも静かに乾を見つめ続けていた。(EPISODE.102 チェルシー ガール)

知世のはとこ、的場強は、傍若無人な振る舞いのクラスメイト、田橋の存在に辟易していた。そして田橋の事を心の中で冷ややかに罵りながらも、ただ黙って従うしかできない自分にも苛立ちを感じていた。強は、そんなやりきれない思いを相談するため、知世のもとを訪れる。(EPISODE.103 ナイト フライト)

ある日、北原はグレーのシフォンのドレスに心を奪われてしまう。日常ではなかなか着るチャンスがなさそうなタイプの、しかもかなり値の張る服。そんな「贅沢で役に立たないもの」に、どうしようもなく惹きつけられていく自分を、北原は一方で冷静に見ながらも、止められずにのめり込んでいくのだった。(EPISODE.104 ルナ イクリプス)

知世と同じマンションに住んでいるまさおは、新しいバンド仲間との活動のため、実家を出て一人暮らしを始める。何かと奇異の目で見られがちなまさおを、真っ直ぐに愛してきた彼の母親は、息子の旅立ちを「肩の荷が下りた」と強がってみせるものの、本心は心配で仕方がない。そんな彼女が、バンド練習中のまさおに差し入れを持って行ってほしいと、知世のもとを訪れる。(EPISODE.105 ペールグリーン ブランケット)

第22巻

結婚式を翌日に控えた日、的場知世の遠縁にあたる恭子は、結婚相手の平太とカフェにいた。そんな中、金の話に花を咲かせていた平太のもとに、水を持って来たウエイターの男性が誤って水をこぼしてしまう。真摯に謝罪するウエイターと、横柄に怒鳴り散らす平太を目にするうちに、恭子は平太に愛想を尽かし、ウエイターに心を奪われるのだった。恭子はそのまま結婚式当日を迎えるが、自分をごまかす事ができなくなり、ついに結婚を取りやめる決断を下す。(EPISODE.106 ホリー アイランド)

ある日、的場信吉は、子供の頃に父親から怒られた時の事を夢に見る。「いい子」だが理屈っぽく、生意気だった信吉の子供時代。父親になった今の自分と、大いに威張っていた当時の父親の様子を比較しながら、信吉は「親父」という存在について思いを巡らせる。(EPISODE.107 ヴァニティ ヴァニラ)

かやこは、19歳の女子大学生という身でありながら、執筆した小説で新人賞を受賞。実は彼女は有名翻訳家、織谷圭三の娘であり、理想的な家庭が崩壊する様を描いたかやこの作品は、彼女の家庭の姿なのではないかと、興味本位の人々やマスコミの恰好の餌食になってしまう。パーティに出席し、針の筵となってしまっていたかやこを見た信吉は、彼女に声をかける。(EPISODE.108 モーニング グローリー)

新聞部で知世といっしょに活動している三鷹美加は、悩みを抱えていた。彼女の父親は、有名な会社に勤めるエリートサラリーマン。人事を担当しており、大きなストレスを抱えて病院に入院していた。しかし、突然病院を抜け出して姿をくらまし、それから一年近くが経過したある日、何の前触れもなく、女性の姿になって帰ってきたのだった。当然、そんな彼を受け入れられない家族の中にいる美加は、やりどころのない気持ちを抑えつつ、知世に相談を持ち掛ける。(EPISODE.109 ラディカル ラビット)

美容師の佐久間は一人で上京し、遠縁が店長を務める美容室で働き始めた。店長からは実力を認めてもらっている佐久間だったが、ある日、スタッフルームから彼女を笑う陰口が聞こえてきた。(EPISODE.110 エメラルド シティ)

信吉の知人が新たに開いた画廊にやって来た知世は、そこで1枚の絵画に出会う。母と子を描いたその絵は、40年以上前の作品で、未完成の状態であった。オーナーの男性は、その絵に描かれている女性に惹かれ、前の経営者から引き継いだというが、その絵に関しては、ほかに何もわからないという。その作品に興味を抱いた知世は、調査を開始する。(EPISODE.111 ホワイト リース)

第23巻

オペラ歌手の永子は、情熱的に愛し合っていたはずのチェリストの男性が自分から離れてしまい、生きる意味を見失っていた。いつの間にか年を取り、若かった頃のような魅力が自分にないと気づいた永子は、歌う事にすら価値を見い出せなくなってしまう。そんな中、公園を通りかかった永子は、音大生が歌っているところに遭遇する。(EPISODE.112 スロー ダンス)

ある朝、カーテンを開けると、外が雪で真っ白になっている事に気づいた的場知世は、何やら実家からの電話に頭を悩ませている父親、的場信吉を連れ出し、公園まで足を運んだ。いつもとはまったく違う銀世界へと変貌を遂げた公園で、思う存分はしゃぐ知世は、雪の中で、なくしてしまった自宅の鍵を探している男性と遭遇する。(EPISODE.113 スノー クイーン)

小学校の教師を務める森岡正代は、担当するクラスが学級崩壊の状態になってしまい、自分を責め続けていた。世話になった恩師のような、いい先生になりたいと夢見ていたものの、理想と現実とのあいだで苦しむ森岡は、心身ともに疲れ果てて、入院してしまう。そんな中、彼女が担任を務めるクラスの女子生徒、松本が、森岡の病室に見舞いに訪れる。(EPISODE.114 レゾナンス ボックス)

知世は、叔母、的場百合子とショッピングに出かけた帰り、かわいい男の子がいると評判のパンケーキ店を訪れた。そこには噂にたがわず注目を集める中性的な美少年、立花薫の姿があった。彼は、自分は性別も感情もないロボットである、と知世に語り聞かせる。(EPISODE.115 メイ ストーム)

知世が住むマンションで管理組合の理事を務めている高坂は、娘の高坂多恵子の学校生活がうまくいっていないので頭を痛めていた。知世の通っている学校の中等部に興味を持った高坂は、娘のためにと、学校についての話を聞くために的場家を訪れる。しかし、多恵子のほうは、娘のためを思って何でも先回りして世話を焼こうとする母親に苛立って、つい辛くあたってしまい、逆に頭を悩ませているのだった。(EPISODE.116 フォーチュン クッキー)

知世はいつもと同じ朝を迎えるが、実は今日は、特別な「夏休み最初の朝」であった。そんな素敵な朝の到来に、知世は「一年の計は元旦にあり」とばかりに、この夏休みこそ計画を完璧に忠実に実行していく、という意思を表明する。だが、一日目の計画を読み上げるや否や、さっそく様子が急変してしまう。(EPISODE.117 サマー デイズ)

溶けそうに熱い夏の日、すべてにおいてやる気の出ない知世と信吉は、出かける予定をすべてキャンセルして、エアコンの効いた部屋でのんびりと怠惰な一日を過ごそうと決める。(EPISODE.118 イン ザ ルーム)

夏休み、森林浴もかねて、暑い中公園の木陰で読書をしていた知世と信吉は、知世が読んでいた本をきっかけに、進化に関して話し始める。そして信吉は、価値観が多様化した現代で、子供達に変化が訪れている事に気づかされるのだった。(EPISODE.119 オン ザ パーク)

第24巻

その日、宇佐美淳はレストランで食事の約束をしていた。宇佐美はオシャレなスーツに身を包み、大きなプレゼントの箱を抱えて時間に遅れないように出発。そして、レストランで年配の女性、綾乃と顔を合わせる。宇佐美は、夫を亡くした女性達のボーイフレンドとなって、人生を美しい物語で彩る手伝いに多忙な日々を送っていたのだ。(EPISODE.120 アップル ハーベスト)

的場知世は、クラスメイトの女子生徒、土居の言動に頭を悩ませていた。彼女は思った事をすべて、言わなくてもいい事まで口に出しては相手を傷つけ、貶めようとする。そのせいで土居はクラス内でも孤立しつつあり、担任の先生は、この問題を解決しようと知世に声をかける。これにより、すべての重圧を知世が負う事になってしまう。(EPISODE.121 フューチャー ゾーン)

12月に入り、的場百合子からもらったクリスマスのアドヴェントカレンダーを毎日一つずつ開けながら、知世はクリスマスを待っていた。そして24日まで、日常の些細な出来事を、日めくりのように体験していく。(EPISODE.122 ジングリング ベルズ)

「ALICE CAFE」にケーキを買いに来た知世は、店内にスノーボールを見つけ、ひっくり返してはもとに戻し、ボールの中に雪の降る様子を楽しんでいた。だが、もう一つあった別のスノーボールに手を伸ばした時、非売品の特別製のため触れてはいけないと、店のオーナー、奏子と詩子から注意を受ける。スノーボールに後ろ髪を引かれながら帰宅する知世だったが、後日、誰もいないすきを見て、特別製のスノーボールをひっくり返した知世は、小さな奇跡を起こすのだった。(EPISODE.123 スノーボール タウン)

ある日、知世はポストに入っていたチラシで、同じマンションに住む田沢の飼い猫、ジョゼフィーヌが行方不明になった事を知る。翌日、街中で知世と出会ったジョゼフィーヌは、ヤマネコに憧れて自ら家を出たと語る。(EPISODE.124 カッパー アイ)

夜中に打ち上げられる予定だったスペースシャトルが、トラブルにより急遽中断されてしまった。そのシャトルには、日本人の女性植物学者が乗るので話題になっていた。知世は、その女性が、父親、的場信吉の間接的な知り合いであると知り、突然宇宙を身近に感じるようになる。すっかり得意になった知世は、身近な人達と宇宙に関する話をしながら、宇宙に思いを馳せる。(EPISODE.125 コズミック キャンディー)

叔母、百合子の伝手で、クマ型ロボット「おりこうベアベア」が知世のもとへとやって来た。「おりこうベアベア」は学習能力があり、話しかけると返事をしてくれるロボットで、知世はもとより信吉もいっしょになって楽しんでいた。それと同じロボットが、はとこの的場強の自宅にも届けられたが、知世から強への宅配便を勝手に開封した母親は、ロボットを強へ渡さずに隠してしまう。(EPISODE.126 グルーミング ボックス)

第25巻

夫から暴力を受け続けていた良子は、幼い息子、高志を連れて夫から逃げようと決めた。必要最低限の荷物だけを持って家を出た二人は、身を寄せる場所と、生活するための仕事を探そうと、街を歩き続けた。そんな時、ベンチに座って母親を待っていた高志は、偶然通りかかった知世が、持っていたテディベアを落としていった事に気づき、テディベアを拾って知世を追いかける。(EPISODE.127 フライ アウェイ)

北原ひとみの同僚、深田洋子は、大人気ファッション雑誌「PINK STRIPE」の編集者として、つねに時代の最先端を走り続けてきた。しかし近頃、ほかならぬ自分達が発信してきた情報に踊らされ、何か大切な事を見失っていると気づく。(EPISODE.128 インナー シティ)

的場知世のクラスメイト、水野は、原因不明のアレルギー症状に悩まされ、空気のいい場所で療養するために転校する。周囲の友人達は、口をそろえて身近なアレルギーについて語るが、知世自身は、アレルギーを持っていなかったため、複雑な心境を抱えたまま帰宅。信吉と、人類の新たなハードルについて語るのだった。(EPISODE.129 イブニング スター)

暑い夏の日、区民プールからの帰り道、公園を通りかかった知世は「ALICE CAFE」のオーナー、奏子と詩子に遭遇する。二人はお店のエアコンが壊れてしまったため、しかたなく休業し、灼熱の太陽のもと涼を取ろうと公園の木陰にやって来たのだった。そして話しかけてきた知世に対し、互いにケンカしながら双子の大変さを語る。(EPISODE.130 フリップ ターン)

休職中の中学教師、弥生は、ふさぎ込んで引きこもり、もう半年になるが、夫は優しく彼女の回復を待ちながらサポートしていた。ある日、半年ぶりに夫と食事に出かけた弥生は、道端で「捨て犬です、だれか拾って」と書いた札を首から下げた青年の存在に気づく。一度は軽く声をかけただけでその場から離れたものの、食事をしながらも、どうしても彼の事が気になって仕方がない弥生は、帰り道にもう一度声をかけてみようと決める。(EPISODE.131 スター スタッド)

平日の朝、今日は学校が特別に休校だったのに、信吉がそれをすっかり失念していたおかげで、知世はいつも通りに早起きをした。滅多にない平日のお休みを堪能するため、知世は朝食のあと、信吉と二人で平日の街へお散歩に繰り出す事にした。一方、編集者、北原ひとみはとんでもなく忙しかった仕事が片付いたため、リフレッシュ休暇を取得。こんな時のためにと買っておいたお気に入りの布地を使って、ベッドカバーとカーテンの手作りを開始。大好きな事に没頭する一日を送る。(EPISODE.132 マロン マカロン)

知世はある日、宇宙や銀河について興味を持つ。翌日、水曜日の昼休み、宇宙について調べてみようと、学校の図書館に向かおうとした知世は、クラスメイトの女子生徒二人から呼び止められる。いじめをなくすために「みんないっしょに遊ばなければならない日」に制定された月曜日と水曜日は、単独行動を禁ずるというのだ。自分が自由であるはずの自由時間を、強制的にしばられて行動しなければならない状況に疑問を感じた知世は、制止する二人を振り切って一人図書館へ向かう。(EPISODE.133 タイニィ スターシップ)

第26巻

我が子、冬美をたった10歳で亡くしてしまった母親は、前向きに生きようと努力していた。しかし、彼女の時間は娘を亡くした7年前から事実上止まってしまっていた。久しぶりに友人と食事に出かけた彼女は、人々で賑わうクリスマスの街角で、天使の羽根を付けた的場知世の姿を目撃。娘の冬美によく似た知世の笑顔に、彼女の時間がようやく動き始める。(EPISODE.134 スターダスト ツリー)

知世は、最近家の近所にできたばかりのファミレスに、遅くなったランチのために訪れていた。そこでは近隣に住む人々を中心に、さまざまな人が思い思いの時間を過ごしていた。そのうちの一人である大河内は、会社を辞めて執筆活動に勤しんでいた。そして、いつまでたっても真っ白なままの原稿用紙を前にして、世紀の名作が生み出されるはずと、ファミレスで頭を抱え苦悩していた。(EPISODE.135 プロミスト ランド)

今日は的場百合子が、鍋の材料を買い込んで知世の家を訪れる予定の日。知世と信吉は、百合子と共に寄せ鍋の準備をしながら、自分達の住処と、生まれ育った実家での暮らしについて語る。実家の母親にとっては心もとないマンションの一室であっても、知世達にとってはこれ以上ない大切な場所であり、我が家であった。(EPISODE.136 ツリーハウス)

2月14日、バレンタインデーを迎えた乾鷹彦は、朝学校に登校するなり、女子生徒達からのチョコレート攻撃を受け始める。もともと甘いものが苦手でもあり、チョコレートをプレゼントされるのは「迷惑だ」と一蹴しながらも、鷹彦はくれた人には律儀にお返しを用意する誠実さも忘れていなかった。鷹彦は、本当に欲しい相手からチョコレートが来ないので内心傷ついていた。しかし、絶対に来ないであろう彼女からのチョコレートに期待して、お返しを1個余分に用意しておく事をやめられないのだった。(EPISODE.137 スウィート ペイン)

出版社の創立30周年記念パーティーに出席した宇佐美淳は、そこで売り出し中のグラビアアイドル、猫田ともかと知り合う。将来的には女優を目指したいと語るともかは、宇佐美の同級生が主催している劇団への口利きをお願いする。宇佐美は、一生懸命な猫田のためにと快諾したが、後日、レストランへ同行した際の様子を雑誌記者に隠し撮りされ、スキャンダル記事として掲載されてしまう。それは、自身の写真集の発売を直前に控えた猫田が仕組んだ自作自演であった。(EPISODE.138 ティードレス)

北原ひとみと同じ大学の先輩である梶井慧は、自身が執筆した作品が7年前に大きな賞を受賞した有名作家だった。しかし、その後の作品はどれも評価されず、とうとう執筆をやめてしまった。現在、田舎に戻って実家が経営する店の手伝いをしている彼女から、しばらくぶりに連絡をもらった北原は、急遽休暇を取り、編集者としてではなく一個人として慧に会いに行く。(EPISODE.139 シャーベット オレンジ)

知世は午後、学校の友人、南が新しく引っ越したというマンションに遊びに行く事になっていた。それは、78階建てで、音声認識で開く住人専用のドア、コンピューターで季節が管理されているハイテクロビーがある高級マンション。ショッピングモールに金融機関、区役所にコンサートホールまで擁し、あとは学校さえあれば、一生外に出ずに暮らせるというほどの、小さな街を縦にしたような代物だった。知世はその45階に位置している南の家を訪れる。(EPISODE.140 アフター ノア)

知世と同じ学校の中等部に通う平瀬朱美は、学校の陸上部始まって以来の天才ランナー。その実力を高く評価され、陸上のレベルが高い学校へ転校する事が決まっていた。新しい学校では寮生活を送る事になっていた朱美は、共に戦ってきた陸上部の仲間や、家族と離れ、知らない場所へいくという不安を大きく感じていた。(EPISODE.141 ファイアーバード)

第27巻

久枝の母親、羽塚晶は、自分の私生活、特に恋愛における実体験を、作品として執筆している流行作家であった。だが、高校2年生にしては堅実でしっかりしている久枝は、いつまでも恋愛体質でお気楽な晶が、プライバシーを切り売りし続けている事に苛立ちを隠せずにいた。ある日、雑誌に掲載された作家、的場信吉に目を止めた晶は、その姿に一目惚れし、恋愛モードに突入してしまう。(EPISODE.142 サンデイ サンセット、EPISODE.143 ウェンズデイ モーニング)

元区長、唐沢は、最近の体調不良が気になり、知り合いの医者の検査を受けた。結果、特に問題はなく、至って健康であると太鼓判を押されたが、唐沢は帰り際に医者が微妙な表情をしたのを見逃さなかった。こうして唐沢は、自分は本当は何か重大な病気なのではないかと疑い、弱気でシリアスな一日を送る。(EPISODE.144 アイボリー ゲート)

ある春の日、近所に新しいビルが建ち、それに伴って新しい庭園ができていたと知った的場知世は、天気のいい日に信吉を連れてランチにやって来た。すっかり新しくなってしまった景色に、ここにはもともと何があったのかを思い出せず考え込んだ信吉に、ここには中学校があったのだと一人の女性が声をかける。(EPISODE.145 インター リュード)

ある日、知世が新聞部で書いた力作の記事が、先生の圧力によりボツになってしまい、知世は落ち込んでいた。学校からの帰宅途中、理不尽な扱いを受けた胸の内を語りながら友人と歩いていた知世の前に現れたのは、小さな巻き毛の男の子だった。彼は、知世に向かって、同じ星の仲間であると主張する。そして、その外見に似つかわしくない大人びた口調で、自分が愛する人を探してやって来た事、そしてようやく知世を見つけた事を情熱的に語るのだった。(EPISODE.146 アンドロメダ ギャラクシー)

ある日、「ALICE CAFE」を訪れた知世は、奏子と詩子から、完成すると願い事が叶うジグソーパズルを借りる。そのパズルは、やたらと細かい大量のピースで構成されており、色はほとんどがパールホワイト、枠の形も不明というかなり厄介なものだった。しかし、もしも完璧に出来上がったら、白い森の中の白いお城が立体となって、中央にある扉が開いて奇跡が起こるのだという。知世は、ある願いを叶えるため、奇跡を起こそうと、一週間の期限付きでパズルに挑戦する。(EPISODE.147 パール キャッスル)

中学生の小倉ちはるは、家庭教師をしてもらった、となりに住む賢太に想いを寄せていた。しかし、賢太が就職を期に結婚すると耳にしたちはるは、ショックを受けたうえ、その想いを母親から軽んじられて悲しみを覚え、発作的に家を飛び出してしまう。いとこの的場百合子を頼ってやって来たちはるは、苦しい胸の内を語る。(EPISODE.148 ガーリー ガール)

知世と同じ学校に通う亜子は、家族のために料理を作ってくれる料理上手な母親が大好きだった。そんなある日、新しくできたスーパーの総菜売り場でパートとして働く事を決めてきた母親が理解できず、亜子は怒りや悲しみをあらわにする。しかし、これが亜子の知らなかった母親の新しい部分を知るきっかけとなるのだった。(EPISODE.149 サマー サテライト)

登場人物・キャラクター

的場 知世 (まとば ちせ)

まだ小学生だが、精神年齢が高く非常に聡明な少女。ごく幼い時分に母を亡くし、父である的場信吉と2人で暮らしている。母のことはおぼろげにしか覚えていないが、父のことは大好きで、ややファザーコンプレックス気味でさえある。ただし、父親べったりで他者との接触を嫌うようなことはなく、大人の男性とも気後れすることなく付き合うことができる。 また、時折非現実的な出来事にも遭遇するが、それを素直に受け入れるなど、順応性も高い。虫だけは大の苦手。

的場 信吉 (まとば しんきち)

的場知世の父親で文筆業者。ジャンルは不明だがすでに何冊もの著作があり、エッセイや書評が好評であるらしい。背が高くハンサムな上に、それなりに著名人であることから、縁談も多いが、亡妻への想いと最愛の娘との生活を守るため独身を貫いている。

的場 百合子 (まとば ゆりこ)

的場信吉の妹で、大手化粧品会社に務める独身キャリアウーマン。事あるごとに、兄と姪の住むマンションに顔を出す。姪である的場知世とは、その年齢差にも拘らず親友のような付き合いをしており、自分の生き方を認めてくれない母との確執や仕事上の悩みなども打ち明ける間柄にある。

北原 ひとみ (きたはら ひとみ)

文芸誌ブックエンドの女性編集者で、的場信吉の担当として頻繁に的場家を訪れている。信吉の著述のファンであると同時に、職分を超えた好意を抱いている様が読み取れる。信吉と初めて会った際には、未熟さを感じさせるような言動もあったが、社会人としての経験を重ねて成長した模様。 センスの良さと気安さで知世からも気に入られている。

的場 千草 (まとば ちぐさ)

的場知世の母で故人。知世が幼児のときに他界しており、知世の記憶の中の彼女はおぼろげである。そのためか、知世の夢やイメージの中では妖精のような姿で登場することが多い。的場信吉と出会った時点で、かなり年嵩の画家香原と結婚しており、信吉とはいわゆる略奪婚のような形で結ばれたことが過去を描くエピソードで明かされている。 旧姓山室。

的場 強 (まとば つよし)

的場新吉の従兄弟の息子で、的場知世にとってははとこに当たる少年。中性的な美少年で、年齢も知世と変わらず、知世のいたずら心で女装させられた際には、姉妹のようにそっくりな姿となった。内向的な性格であり、体育会系の父親には鬱屈を秘めつつも黙って従っていたが、知世に本来の自分を肯定されたことで、自己主張ができるようになる。

小川さん (おがわさん)

的場家に出入りしている初老の家政婦。複数の家庭と契約しており、的場家には月に数回訪れているようである。元教師で、夫には先立たれ息子も独立している。非常に活動的な女性であり仕事以外の日にはボランティアなどにも参加している。知世からは「スーパー家政婦さん」と呼ばれる。

唐沢 (からさわ)

穏やかで知的な老爺。現役を退いた元区長で知世からは元区長さんと呼ばれている。自身が所有していた屋敷の敷地を公園にする条件で区に寄贈したが、邸内のバラ園だけは所有権を移さず、ひとりでその管理を行っている。出歩く際には常にペットの小型犬アンドリューを同行している。

奏子と詩子 (かなことうたこ)

知世が行きつけにしている雑貨屋&喫茶店アリスカフェを経営している美人姉妹。双子で髪型や服をいつもおそろいにしている。20代中頃~30代前半に見えるが、年齢は不詳。浮世離れしたところがあり、店には不思議な商品が並ぶこともあるなど、普通の人間ではないと思われる描写がされることがある。

本郷 雄一郎 (ほんごう ゆういちろう)

知世が行きつけにしている雑貨屋&喫茶店アリスカフェで、ケーキ作りと雑用を担当している少年。家出して行き倒れていたところを詩子に拾われ、なし崩しにアリスカフェで働くことになった。

乾 鷹彦 (いぬい たかひこ)

政治家を父に持つ少年。まだ小学生だが、美形でそつがなく、近隣の中学生女子などからも人気があるが、本人は体面を取り繕うばかりの家族に多大なストレスを感じている。自分より年下なのに確固たる自分の世界を持ち、なおかつ周囲とも上手くやっている知世と出会い、その存在を気にかけるようになる。

宇佐美 淳 (うさみ じゅん)

モデルのような外見をした小説家の男性。女性からの人気が高く、数々の浮名を流している。北原ひとみにも熱烈にアタックしているが、相手にされていない。見た目も書くものも軽いが、実は過去のトラウマから女性との深い関係を築くことができず、それを糊塗するための仮面が習い性となってしまっているらしい。 知世にはなぜか素直になれるらしく、冗談めかしつつもカウンセリングを受けたこともある。

苅部 月子 (かりべ つきこ)

的場家と同じマンションでひとり暮らしをしている美女。銀座のクラブカメリアのナンバー1ホステスだったが、ある日仕事をすっぱり止めて、アリスカフェの近くに花屋を開業、的場家には、彼女の店から買った鉢植えが置かれるようになった。

香原 (こうはら)

知世の母千草の元夫であった画家。亭主関白で頑固ではあったが、千草のことは愛しており、自分と千草の離婚を拒否し続けた。最終的には離婚を承諾したが、後に千草が早世したことで結果的に的場幸吉との結婚生活を短いものにしてしまったことを悔いる。かつての妻の忘れ形見である知世に複雑な愛情を抱いており、千草が愛した庭があるアトリエを知世に譲りたいと考えている。

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