東京BJ

東京BJ

会社をクビになった男が、裏社会で暗躍するブラックジャーナリストに活路を見出すハードボイルド作品。「正統的な悪の道」を貫き通す男の、究極のダンディズムが描かれる。

正式名称
東京BJ
ふりがな
とうきょうびーじぇい
作者
ジャンル
裏社会・アングラ
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

ブラックジャーナリスト(第1巻)

ある日、サラリーマンの海輪幸一は、上司を殴って会社をクビになってしまう。自分の軽率さを悔やむ幸一だったが、そんな彼の前に「ジャーナリストのはしくれ」だという「音羽ジャーナル社」の進藤英治が現れ、相棒になってほしいと申し出る。それは1か月辛抱して嫌なら、ほかの会社を紹介するという好条件のスカウトだった。仕事をはじめて幸一は、企業人の弱味を記事にしてゆする「ブラックジャーナリスト」の仕事に嫌悪感を募らせつつも、同時に進藤の男としての魅力に惹かれていく。

裏切り(第1巻~第2巻)

海輪幸一は、「音羽ジャーナル社」の進藤英治から、新しい案件を引き継いだ。それは彼がクビになった会社「リースワダシン」の社長・和田進が、ホステスに約100億円の金をつぎこんだ裏を取るというものだった。この和田の愚行により、「リースワダシン」がリストラを敢行すると聞いた幸一。正義感に駆られた幸一は、社長の悪行を露見させ、リストラを中止できないかと、「リースワダシン」の常務・花山徳二を信用して情報を流す。しかし、それは進藤に対する裏切り行為に等しかった。だが、野心家の花山は大阪の暴力団「浜口組」系の総会屋と組み、幸一の持ってきたネタで和田から1億円を奪った挙句、和田を解任に追い込むのだった。一連の事情を知った進藤は幸一を伴って大阪を訪れ、総会屋の会長・今井に対し、総会屋なら客となった企業を守るべきだと制裁を加える。

総会屋との死闘(第2巻~第3巻)

大手メーカー「全日本電機株式会社」の社長・松井茂雄が、進藤英治に助けを求めてきた。息子が人妻といっしょにいる写真を総会屋「〇△義勇会」に撮られ、脅されているのだという。進藤の指示で、海輪幸一は「〇△義勇会」のメンバーを尾行し、写真の女の身元を追う。だがその途中、進藤と幸一は、「〇△義勇会」の佐分利に拉致監禁されてしまう。二人はどうにか仲間の同業者に助けられたものの、家族への報復を恐れた幸一は、しばらく自宅に身を隠す事を余儀なくされ、妻・海輪晴子との関係が悪化する。一方、そのあいだに進藤は事態をおさめる事に成功し、松井は無事に総会を終えるのだった。

札をまく女(第3巻~第4巻)

妻子に実家に帰られてしまった海輪幸一は、寂しさを紛らわすため、銀座のホステス・エリカに入れ上げていた。そんなある日、幸一はエリカのいる店でホステスのさちこが500万円分の札束をばら撒く姿を目撃する。裏に何かあると感じた幸一はさちこを調べるが、そこで彼女がとんでもないSの女王様である事が判明する。しかも、一匹狼的な総会屋・土方四郎がさちこの客である事も発覚する。調査を進めるうちに幸一は、SM嬢としてのさちこの上客で、一流企業「松昭電建」の社長を務める金子良雄と、バーで言葉を交わす間柄になる。そして、彼がさち事の関係をもとに土方にゆすられている事を知り、自分の正体を明かして良雄に協力を申し出る。

談合(第5巻)

若い女性に入れ込み、借金で首が回らなくなった大手ゼネコン社員の橋爪公一郎は、県下の大手建設会社の談合資料を町金融に持ち込んだ。上層部の総会屋「〇×総研」の指示を受けた町金融は、次の談合の盗聴をすればさらに買取金額を上げると橋爪をそそのかす。その後、橋爪は談合の盗聴を進めた結果、事態の規模が予想以上に大きい事が判明。総会屋「自由克己社」の会長・鬼頭完治が自ら、この一件の指揮をとる事になった。これにより、取り分が減った「〇×総研」の内田は不満を募らせ、独自にゼネコン「早出組」の社長・野口をゆすり始める。

傷(第5巻~第6巻)

「東関東信用金庫」理事長の大前田総二は、総会屋の「山路」という男にロリコン趣味をつけこまれ、罠にはめられてしまう。そんな大前田を助ける依頼を受ける事になった進藤英治は、その過程で「山路」の正体が10年前に自分の妻と子供を殺した暴力団の岸本だと知る。進藤は単身で岸本らに復讐すべく、海輪幸一に「音羽ジャーナル社」の解散を告げる。だが自分の幸せは進藤の側にいる事だと気づいた幸一は、体力の残っていない進藤を手助けする事を決意。幸一の協力を得た進藤は着々と復讐を進め、妻子を殺した一味を全滅させる事に成功する。だが、その黒幕である政治家を始末する前に、病でこの世を去ってしまう。進藤の復讐を果たすため戦い続けるか否かと逡巡する幸一は、そんな中、進藤が死の床で書いた手紙を発見する。

登場人物・キャラクター

海輪 幸一 (かいわ こういち)

一部上場企業「リースワダシン」に勤めていた30代のサラリーマン。妻・海輪晴子とのあいだに幼い息子がいる。ネチネチ嫌味を並べてくる上司を殴った事で勤めていた会社を解雇される。その後、進藤英治にスカウトされて「音羽ジャーナル社」に入社。当初は「音羽ジャーナル社」が手掛ける「ブラックジャーナリスト」という仕事に嫌悪感を抱いていたが、進藤の人柄に魅せられ、徐々に裏社会で活躍するようになる。 優柔不断なところがあるが、その優しい性格は進藤に高く評価されている。大学時代はアマチュアボクシングミドル級のハードパンチャーだった。

進藤 英治

「音羽ジャーナル社」の代表を務める、強面の中年男性。「リースワダシン」を調査していた時に海輪幸一の武勇伝を聞き、会社をクビになった彼をスカウトした。幸一の「ブラックジャーナリスト」としての資質をいち早く見抜いていた。何事も先回りして考えるそつのない性格で、幸一の行動についても、基本的にはすべて予測している。 人生の裏も表もすべて味わった奥深い人物であり、「正統的な悪の道」を貫き通すという美学の持ち主。敵はできるだけ作らず、味方を増やす事をモットーに活動している。銀行と政治家の癒着を追っていた10年前、妻子を暴力団の岸本に殺された過去がある。そのため、岸本の所在をつかんでからは「音羽ジャーナル社」を解散し、単身復讐の鬼と化す。

海輪 晴子

海輪幸一の妻で、幸一とのあいだに幼い息子がいる。優しく思いやりのある女性だが、幸一が「音羽ジャーナル社」で働く事には、当初からうさん臭いと反対していた。幸一が自宅で籠城生活を強いられる事になった際に怒りが頂点に達し、息子を連れて実家に帰った。しかし、幸一とホステス凉子との交際が順調に行き始めた頃、家へと戻って来る。

ママ

進藤英治の行きつけの、赤坂にある料理屋のママ。少々おせっかいなところがあるが、思いやりのある優しい女性。海輪幸一が「音羽ジャーナル社」に入社した時の進藤の喜びようを知る人物で、「音羽ジャーナル」を辞める決心をした幸一に、それとなく進藤が悲しみの余り深酒をして倒れた事を告げ、暗に幸一を引き止めた。

葉山

海輪幸一が以前勤めていた会社「リースワダシン」の同僚男性。優秀な営業マンだが、もうすぐ二番目の子供が生まれるという時、リストラの対象になり、幸一を訪ねて来た。これがきっかけとなり、幸一は会社を救おうと進藤を裏切る恰好で、常務の花山徳二に社長・和田進の巨額の使い込み情報を流す事になる。

和田 進

海輪幸一がクビになった会社「リースワダシン」のオーナー社長を務める男性。女狂いであり、愛人のホステスに青山の画廊を持たせ、絵画の買い入れ費用を含む約100億円を超える会社の資金をつぎこんだ。しかし絵画の価値が十分の一に下がり、会社に損害を与え、結果50名の社員のリストラを敢行する事になる。

ホステス

銀座の一流クラブのホステスの女性。海輪幸一が勤めていた「リースワダシン」の和田進の愛人となり、5年前に青山に画廊を持たせてもらった。この件で進藤英治が不正の匂いを嗅ぎつけ、「リースワダシン」を調べた際、海輪幸一の存在を知る事になる。

花山 徳二

「リースワダシン」の常務で大阪支店長を務める男性。たたきあげの社員であり、海輪幸一がリストラを防ぐため、社長の和田進の金の使い込みの資料を渡した人物。だが、幸一の信用を裏切り総会屋と組んで、和田から金をふんだくったうえ、社長の座を自分のモノにしようとしている悪人。

今井

広域暴力団「浜口組」系の総会屋の会長を務めている男性。「リースワダシン」の常務・花山徳二と組み、社長の和田進から1億円をせしめたうえに、和田を解任させた。進藤英治への仲裁金も払わず、客となった企業を守らない事は全国の総会屋を裏切る行為だという理由で、進藤の制裁を受ける。

松井 茂雄

大手メーカー「全日本電機株式会社」の社長を務める男性。二代目社長となる息子が人妻といっしょにいる写真を総会屋にでっちあげられた件で、人目を忍んで「音羽ジャーナル社」を相談に訪れた。

佐分利

総会屋「〇△義勇会」に所属している男性。自分の愛人を人妻に仕立て上げ、大手メーカー「全日本電機株式会社」の社長・松井茂雄の息子の不利になる写真を撮らせた。一見、迫力のない小男に見えるが、目つきが鋭くタダ者ではない雰囲気を漂わせている。

エリカ

銀座のクラブ「花」のホステスで、ロングヘアの女子大生。海輪幸一と親密な関係になるが、彼氏と思しき安田という男性を幸一が殴った事から、疎遠になる。

さちこ

銀座のクラブ「花」のホステスの女性。店で客相手に啖呵をきり、500万円をばら撒いていた。実は、水曜日のみ「企画K室」というSM嬢の派遣会社でアルバイトをしている、生粋のS。金の出どころを探ろうとした海輪幸一に、S女の洗礼を受けさせた。一流企業「松昭電建」の社長・金子良雄はS女としての顧客であり、土方四郎ともつながっている。

土方 四郎 (ひじかた しろう)

銀座のクラブ「花」のホステス・さち子のもとへあしげく通う男性客。人相が悪く、小柄で体つきはガッチリしており、濃い口ヒゲをはやしている。一匹狼的な総会屋であり、その名前を聞いただけで企業の総会屋担当が震え上がるほどの豪の者として知られている。鋭い嗅覚と度胸を持つ一流の総会屋で、進藤英治とはお互いを認め合う仲。

金子 良雄

一流企業「松昭電建」の社長を務める50代の男性。創業者の金子善次郎の長男。会長である善次郎が実権を握る中、お飾りの社長として、社内では軽んじられている存在。家庭でも妻が財閥の名家の出身であり、窮屈な思いをしている。SM嬢の派遣会社経由でさちこと知り合い、彼女に夢中になる。凡庸だが味のある人柄で、さちこを調べていた海輪幸一とは、ひょんな事から、飲み友達のような間柄になる。

金子 正吾

一流企業「松昭電建」の副社長を務めており、創業者の金子善次郎の長女と結婚し婿養子に入った50代の男性。息子の金子正一郎は東大生であり、将来の社長と目されている。旧姓は「脇田」。社長の金子良雄を馬鹿にしており、総会屋の土方四郎と組み、良雄を社長から引きずり下ろした黒幕。しかし、一匹狼の土方と個人でつながりを持った事から、骨の髄までしゃぶられる事になる。

和木 由美子

一流企業「松昭電建」の社長・金子良雄の秘書。優しい雰囲気を漂わせているが芯の強い女性。良雄の事を慕っており、彼が会社を追われた際、自分もいっしょに連れて行ってほしいと懇願したほど。のちに良雄のパートナーとなる。

凉子

銀座でホステスをしている大学生で、ショートカットの髪型をしたコケティッシュな女性。海輪幸一が土方四郎を尾行した先のクラブで知り合い、一目惚れした。父親がリストラに遭い、給料が激減したので生活や学費のために水商売を始めたという実直な一面もある。

橋爪 公一郎

ゼネコン「日本橋土建」の営業部長を務める48歳の男性。マユミという19歳の女性を愛人にした事から、借金を重ねる事になる。暴力団系の町金融に追い詰められ、県内大手18社の談合の資料を総会屋「〇×総研」売る事になり、のちに談合の盗聴をさせられる。

内田

総会屋「〇×総研」に所属する中年男性。子会社的な町金融に橋爪公一郎が提供した、談合資料の件を担当していた。金に執着しており、談合資料が鬼頭完治の手に渡り、取り分が十分の一になった事で不満を募らせ、単独行動で「早出組」のみを脅す。鬼頭らの組織に制裁を加えられるが、のちに腹いせから警察に密告する。

鬼頭 完治

総会屋「自由克己社」の会長で、総会屋界の四天王の一人といわれている男性。小柄だが、何ともいえない迫力を全身から漂わせている。実は談合という制度は素晴らしいと考えており、アメリカへの気兼ねからそれを主張しなかったゼネコンこそが悪だという、無茶苦茶な意見で人を納得させてしまう豪傑。進藤英治とは知り合いであり、彼からは「怪人」と評されている。

野口

ゼネコン「早出組」の社長を務める男性。総会屋「自由克己社」の会長・鬼頭完治に談合資料でゆすられた人物。バブル時代の値崩れした土地を買えという条件を付きつけられ、進藤英治に助けを求める。

岸本

人の性癖につけこむのが得意な悪どい総会屋の男性。融資が見込める人物をターゲットにしており、現在は「山路」と名乗っている。10年前は暴力団組員であり、当時進藤英治の妻子を殺し、進藤の顔にナイフで傷をつけた。のちに進藤に復讐される。

大前田 総二

「東関東信用金庫」の理事長で三代目オーナーの男性。ロリコン趣味で「山路」こと岸本に女子中学生を紹介され、まんまと罠にはまってしまう。その後3億円をゆすられ、進藤英治に相談する事になる。

場所

音羽ジャーナル社

進藤英治が代表を務める会社で、進藤にスカウトされ海輪幸一が入社した。小さなビルの301号室に居を構える、机が三つだけの小さな事務所。「音羽ジャーナル」という出版物に企業人の弱味を記事にして掲載し、これを買い取らせる「ブラックジャーナリスト」の活動で儲けを得ている。

SHARE
EC
Amazon
logo