真夜中のオカルト公務員

真夜中のオカルト公務員

新社会人の男性が、オカルト的事象を解決するための知られざる組織に配属されることになり、妖怪や悪魔など、人外の者を相手にさまざまなトラブルを解決すべく奔走する。普通ではない環境に翻弄される公務員の日常を描く物語。「ASUKA」2015年7月号から連載中の作品で、「コミックニュータイプ」2016年8月23日から11月1日配信分も含まれている。

正式名称
真夜中のオカルト公務員
ふりがな
まよなかのおかるとこうむいん
作者
ジャンル
オカルト
関連商品
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概要・あらすじ

オカルト的事象を解決するため、新宿区役所内には夜間地域交流課が人知れず存在する。そこでは、天使や悪魔、妖怪や妖精など、人外の者を「アナザー」と呼び、それらが起こした人間とのトラブルを解決するための活動を行っていた。新たに配属された新社会人の宮古新は、榊京一姫塚セオらとともに、常識の通用しない社会人生活をスタートさせる。

その第一歩として連れて来られた真夜中の新宿御苑で、新は天狗や妖精、天使を目にすることになる。だが、常識を覆すことだらけの中、トラブルを解決するために、それら人外の存在との対話を続ける新の様子を見て、京一とセオの様子が一変。実は新は、人を超越した言語習得能力を持つと言われる「砂の耳」の持ち主で、どんなに優秀な能力を持つ者にも不可能な、アナザーの言葉を理解することができた。

そのうえ新は、現れた天狗の長老から、自分が安倍晴明の子孫だと言われ、さらなる混乱を来すことになる。新は、自分の能力や血縁に一抹の不安を感じながらも、さまざまなアナザーとの対話を介して、数々のトラブルを解決していく。

登場人物・キャラクター

宮古 新 (みやこ あらた)

社会人1年生の男性。新たに公務員となり、新宿区役所内の夜間地域交流課に配属されることになった。超越した言語習得能力を持つといわれる「砂の耳」を持っており、通常は理解できないはずのアナザーの言葉を理解することができる。とても優しい性格で、数々の案件に関してはアナザーと対話し、相手の気持ちを知ったうえで穏便に解決を図る方法をとっている。 亡くなった祖父から宮古家が安倍晴明の血筋であるらしいことを聞いてはいたが、本気にしたことはなかった。しかし、長老の一言から、明確に安倍晴明の血筋である可能性が浮上する。現在は神楽坂の実家に両親とともに住んでおり、平日帰宅後は、パソコンでゲームに明け暮れるインドア派。

榊 京一 (さかき きょういち)

新宿区役所内の夜間地域交流課の業務リーダーを務める男性。仙田礼二の部下で、姫塚セオの後輩にあたる。メガネをかけたイケメンで、酒と女性が大好きなチャラ男だが、仕事に対しては真摯に取り組むなど根は真面目。両親が早くに亡くなり、親戚もいなかったため、姉の榊詩織とともに児童養護施設で育った。しかし姉は17年前に、自分の目の前でアナザーにさらわれたまま行方不明となっている。 このことが原因で今でも心を痛め、大きな喪失感を抱いている。以前はホストとして名を馳せていたが、仙田に拾われて現在に至る。仕事場の女性には一切手は出さない主義だが、ホスト時代に知り合った女性とは、今でも大人の付き合いをしている。ゲイの多い新宿2丁目界隈で、なぜかやたらとモテる。

姫塚 セオ (ひめづか せお)

新宿区役所内の夜間地域交流課に勤める男性。ロック系ファッションで身を包み、ブルーグレーの瞳を持ち、一見女性と見まごうような容姿の元イギリス人。本来髪の色は金に近い茶髪だが、趣味で黒く染めている。アイルランド人の父親と日本人の母親を持つハーフで、現在は日本国籍を取得している。課長の仙田玲二とは、15年くらい前からの付き合いがあり、同期入社で、榊京一は後輩にあたる。 アナザーを見ることができない人のために、見えない存在を見えるようにするスプレー「イブン=グハジスプレー」を開発した。古い魔術書の収集、アナザーのサンプル収集及びデータ化をライフワークとしている。外見と裏腹に、性格は意外と男前。

仙田 礼二 (せんだ れいじ)

新宿区役所内の夜間地域交流課の課長を務める男性。姫塚セオとは15年来の付き合いで、同期入社。入社のための適応判断テストで、自分好みの結果を出した宮古新を個人的に推挙した。その後、宮古家が、安倍晴明縁の家系である可能性が浮上したため、それを確たるものとすべく、家系の裏付け作業を蒲田に依頼し、行っている。 オカルト関係に縁のある家系に生まれ育ったが、もともとはアナザーを自分の目で見ることはできなかった。しかし、さまざまな道具を繰り返し用いた結果、仕事に不自由しない程度には見ることができるようになった。また、他人に対して増幅器となる力を持っており、他者に影響を与えやすい。

慶子 (けいこ)

都庁の南北展望室エレベーターの被害に遭った女性。葵とは友達同士。エレベーターに乗り、東京都庁の南展望室に上がったが、翌日、なぜか北展望室で倒れているところをスタッフにより発見された。南展望室に出てから発見されるまでの間の記憶がない状態。結婚を約束していた彼氏がいたが、彼氏側の家族事情で結婚が白紙となり、最近破局に至った。 そのため、泣いて目を腫らし、落ち込む日々を送っていた。被害に遭って以降は、まるで悲しみを忘れてしまったかのようにすっきりしている。

(あおい)

東京都庁でアルバイトをしているショートヘアの女性。慶子とは友達同士。元キャバクラ嬢で、榊京一がホストをしていた頃の客だった。日頃から、都庁展望室を閉める前の最終フロア確認を行っているため、翌日慶子が北展望室で発見されたことで、確認を怠ったと上司からお叱りを受けた。

狩野一 あかね (かのいち あかね)

千代田区の夜間地域交流課に在籍しているベリーショートの女性。立派な洋館に住む由緒正しきお嬢様。「砂の耳」を持つ宮古新の噂を聞きつけ、手を借りたいと新宿区役所の仙田礼二のもとへ依頼した。「狩野一」は元は古くからの陰陽師の家系で、明治の頃に留学し、イギリスの知識を輸入。陰陽師の知識と組み合わせた物作りに目覚め、今では和洋折衷の魔術職人の一族としても名が通っている。 そのため、狩野一製のアナザー対策用アイテムは、アナザーと関わる仕事をしている関係者にとってはおなじみのものであり、組織個人問わずたいてい狩野一製品を持っている。

狩野一 悟 (かのいち さとる)

東京都庁の「夜間文化環境局」に勤めている男性。狩野一茜とは従兄妹同士。冷酷な現実主義者。アナザーに対して情け容赦のない主義で、相手の考えや動機などを理解しようとはせず、基本的に事件解決にはアナザーを「駆除」または「処理」する方針を貫いている。「狩野一」は元は古くからの陰陽師の家系で、明治の頃に留学し、イギリスの知識を輸入。 陰陽師の知識と組み合わせた物作りに目覚め、今では和洋折衷の魔術職人の一族としても名が通っている。そのため、狩野一製のアナザー対策用アイテムは、アナザーと関わる仕事をしている関係者にとってはおなじみのものであり、組織個人問わずたいてい狩野一製品を持っている。

横山 (よこやま)

アナザー案件専門の男性刑事。しかし、警察とはいえ、不可視の存在のアナザーを逮捕したり、法で裁いたりすることは不可能のため、基本的には、問題解決のために被害者が納得する常識的な真実をでっちあげることが仕事。そのほかに、17年前に起きた榊詩織の誘拐事件も担当していた。

蒲田 (かまた)

行政書士の女性。仙田礼二からの依頼により、宮古新の家系が、安倍晴明とつながっているか否かを詳しく調査している。エレガントな笑顔の下の見えない努力により、広い人脈と根性で、通常では調べ得ないところまでの調査を成功させた。

和泉 (いずみ)

宮古新の自宅の近所にある料亭の娘。新とはゲーム友達。実家の料亭の手伝いや受験勉強に忙しい毎日を送るなかで、社会人となった新との時間がなかなか取れないことを残念に思っている。そんなおり、神楽坂の祭に新と一緒に行く約束をし、待ち合わせ場所でアナザーに連れ去られ、行方不明となる。

榊 詩織 (さかき しおり)

榊京一の姉。両親が早くに亡くなり、親戚もいなかったため、弟とともに児童養護施設で育った。その施設内では、子供たちみんなのお姉ちゃんのような存在として慕われていたが、17年前に京一の目の前でアナザーにさらわれたまま、行方不明となっている。

柴 裕子

ウェウェコヨトルが引き起こした儀式に巻き込まれた少女。保護された後、病院で入院生活を送っている。部活が終わった後、帰宅途中に突然目の前が真っ暗になったのをきっかけに、行方不明になっていた。昭和40(1965)年生まれを自称しているが、高校生にしか見えない。行方不明になってから保護されるまでの記憶はほとんど残っていない。 話す分には不自由はないが、歌う声を失っている。

千草 健二 (ちぐさ けんじ)

アナザー案件専門の男性刑事。合コン大好きでチャラい印象があるが、仕事は真面目。上司の横山をとても尊敬しており、チームを家族のように思っている。しかし、警察とはいえ、不可視の存在のアナザーを逮捕したり、法で裁いたりすることは不可能のため、基本的には、問題解決のために被害者が納得する常識的な真実をでっちあげることが仕事。 女子高生の行方不明事件の真相解明に向けて榊京一に情報を提供している。

相田 小春 (あいだ こはる)

新宿区役所の庶務を務める女性。相田駆と相田亮の母親。男っぽく見られるためか、女性職員からよくモテる。次男の亮が、ある日、突然眠りについたまま目を覚まさない状態となって入院したため、仙田礼二に相談。アナザーによるものであると判断され、夜間地域交流課に対応してもらうこととなった。

相田 駆 (あいだ かける)

相田小春の息子で、相田亮の兄。弟の亮が、眠りについたまま目を覚まさない元凶となったであろう怖い夢の話をよく聞いていた。小学生だが、落ち着きがあり、しっかりしている。弟のためになにかしたいと思っており、夜間地域交流課に学校で流れている夢の噂を話した。

相田 亮 (あいだ りょう)

相田小春の小学生の息子で、相田駆の弟。現在眠ったまま目を覚まさないため、入院中。入院する直前まで、眠るたびに怖い夢を見続けており、恐怖に苛まれていた。そのため、まともな睡眠を得ることができず、日中学校で居眠りすることもしばしば見られたという。「2度捕まったから、次は終わりだ」という言葉を残している。

清水 翔太 (しみず しょうた)

千代田区の夜間地域交流課に在籍している男性職員。宮古新とは、ウェウェコヨトルの案件で知り合った。その後、東京都庁の夜間地域交流課へ出向することになり、新や狩野一悟と行動をともにする機会を得る。

ウェウェコヨトル

アステカ神話の神様のアナザー。性別は不明だが、足元まで伸びる長い髪を持つ美形。音楽やダンス、歌の神と崇められる一方で、自分の退屈しのぎに争いを起こさせて楽しむ災いの神として有名。その名前は「老いたコヨーテ」を意味する。昔、安倍晴明が使役していたという数々の物の怪のなかで、唯一縛らずに友とした物の怪であり、彼を慕っていた。 本当はコヨーテだが、晴明は何度も黒い狐と言い、彼の瞳が黄色いので、琥珀と名付けられた。宮古新を晴明と思い込み、彼を楽しませようと、動く死体を作る儀式を行うための材料を、あらゆるところから強制的に収集している。基本的に考えが幼稚で、その場の快楽と好奇心を満たすため、深く考えずに物事を起こす。表面上はとてもフレンドリーだが、完全な善意で行動することはなく、常に裏がある。

アザゼル

男性の姿をした悪魔のアナザー。地上の人間を監視する役割を持ちながら、人間の少女に恋をするという禁忌を犯し、愛する人を失った。その少女を蘇らせようとしている哀れな悪魔。亡くなった少女の魂を捕まえて、その魂に合う器(体)を作り続けてきた。しかし、彼女の魂は、その体を受け付けず、なかなかうまくいかない状態が続いていた。そのため、少女に合う人間をさらって適合する部位だけを奪い取り、つぎはぎして体を作り上げようと試みている。

ベルフェゴール

男性の姿をした悪魔のアナザー。頭部に2本の角を持った。アザゼルの昔から友人。アザゼルに、「人間の女との幸せな結婚は存在しうるか」と問い、不可能であるという結論を出した。しかし、その矢先にアザゼルは人間の少女と恋に落ち、可能だと言ったため、証明してみろと提案。それから長い時を経ているが、未だにそれを証明できずにいるアザゼルを見守っている。

名なし (ななし)

夢を自在に操る子供のアナザー。すっぽりと頭巾をかぶっており、インパクトの強い2つの目と両足だけが見えている。閉鎖された団地に棲みつき、誰からも相手にされない寂しさゆえ、夢のなかで子供と鬼ごっこをしていた。勝負は3回。すべて自分が勝ったらその子供を目覚めないようにして、自分の仲間にしていた。

長老 (ちょうろう)

背中に翼を持つ天狗の老人男性のアナザー。人間に対しては割と友好的。宮古新を一目見て安倍晴明と間違えた。しかし、新から、晴明と同じ血の匂いを感じ取ったため、新が安倍晴明の血筋であると言い放った。

天狗 (てんぐ)

背中に翼を持つ天狗の男性のアナザー。サイズは天使に比べるとかなり小さい。新宿御苑内で、天使と言い争っていたことが原因で、深夜の騒音問題へと発展していた。主な理由は、自身の息子が行方知れずとなったことであり、息子が天使の妹にかどわかされたからではないかと疑っている。

天使 (てんし)

背中に大きな翼を持つ巨大な女性のアナザー。新宿御苑内で、天狗と言い争っていたことが原因で、深夜の騒音問題へと発展していた。主な理由は、自身の妹が行方知れずとなったことであり、天狗が妹を隠したからではないかと疑っているためである。

パンドーラ

都庁の南北展望室エレベーターの原因を作った女性のアナザー。実は東京都庁だけでなく、アジア各地にあるエレベーターを細工し、それに乗った人間のなかから、「大きな喪失感」を持った者を自分のもとへ呼び寄せている。それは、手に持っている小さな箱に詰まっていた「恋による喪失感」を落として失くしてしまったため、その回収を目的としてのことだった。 回収の効率化を図ったがために、恋とは関係なく、ただ大きな喪失感を持つ者をも呼び寄せてしまうことが増えている。

鈴鹿 (すずか)

座敷童のアナザー。「狩野一家」を守る少女の屋敷神。小学生程度の女児の姿をしており、明治大正の頃までは一般的なイメージ通りの和装だったが、それ以降洋装を好むようになった。10年に一度、髪の毛を断髪し、狩野一の技術で加工したものを、結界の種としてとある神社に奉納することを契約。それにより、自分を狩野一の屋敷神として祀ることを許したとされている。

ユキ

猫の姿をしたネコマタのアナザー。二股に別れたしっぽを持つ。御先祖様からの言いつけにより、宮古新の自宅にある倉の中で、古くからある書物などを守って来た。まだ幼かった新とは、普通の猫としてよく一緒に遊んだこともあった。そのため、新をとても慕っている。自分が見える人間があまりいないため、寂しい思いをしている。

集団・組織

夜間地域交流課 (やかんちいきこうりゅうか)

「オカルト的事象」を解決するための組織。東京23区すべての区役所に存在するが、関係者以外には知られていない。東京都庁には、「夜間文化環境局」という名で同じ趣旨の組織が存在する。表向きは、夜間対応の「さまざまな分野及び立場の人々と世代を超えて交流、企画推進する課」とされているが、実際はアナザーとの交流、共生を推進、及びアナザーが一般人と関わって問題が生じた場合、事態を収拾することを職務として活動を行っている。 また、毎年交流を兼ねて、他区と持ち回りで都庁に出向しており、東京都と、各区の職員同士が協力して、各区の越境案件や、各自が抱えている仕事を共同で片づけたりと、仕事を通じて交流することが主目的となっている。

イベント・出来事

都庁の南北展望室エレベーター (とちょうのなんぼくてんぼうしつえれべーたー)

5年ほど前から噂になっている都市伝説。被害に遭った本人から某有名掲示板への書き込みがあったことがきっかけで、「エレベーターに乗り、東京都庁の展望室に上ったら、異世界に着いた」という噂がネット上で流れ始めた。東京都庁の展望室に来たはずなのに、エレベーターを降りたら、どこだか分からないところに着いてしまったというもので、それ以降、同じような現象に巻き込まれた人が続々と現れ始める。 そのうちに、「異世界エレベーター」とも呼ばれるようになった。最近1~2か月の間に、被害者の数が急増しており、そのほとんどが、展望室に行った後の記憶を失っている。

都内女子行方不明事件 (とないじょしゆくえふめいじけん)

東京都内で10代半ばから後半の女子が行方不明となり、未解決となっている事件。その被害者のうちの何名かは歌声が失われていたり、右足が動かないなどの身体部位の機能が失われた状態で生還している。和泉や榊京一の姉である榊詩織も、その被害に遭っており、いずれも同じアナザーのアザゼルが関わっていることが明白となっている。 京一が持っている情報は、東京都内の過去20年間に限られたものだが、この事件による被害は全世界に広がっていると思われる。

(ゆめ)

相田亮の通う小学校で噂が流れている怖い夢のこと。何者かと鬼ごっこをする夢で、その夢のなかで3回鬼に捕まってしまうと、鬼に食われ、一生目が覚めないというもの。実際に夢の話をしていた亮の友人2人が、2回鬼に捕まった夢の話をした後、相次いで学校に登校しなくなり、連絡が途絶えている。亮が目覚めなくなって以降、学校内では鬼の呪いだという噂が絶えなくなり、授業中に震えて失神する子供もいるという。

その他キーワード

アナザー

人ならざる者の総称として、夜間地域交流課が使っている業界用語。天使、悪魔、妖怪、妖精、天狗など、オカルト的な存在全般を指す。一般的に、その姿は見ることができず、彼らの会話はただの音の羅列に聞こえる。しかし、業界関係者で姿を見ることが難しい者のためには、可視化するためのスプレーがあるため、大抵はその姿を確認することができるようになっている。 また、宮古新のように、人を超越した言語習得能力、「砂の耳」を持つ者ならば、彼らとの対話は可能だが、相手は人外の者であるため、話が通じるとは限らない。

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