おさなづま

おさなづま

親の借金のために幼な妻になった少女・旗一子 が描いた漫画、『めぐみのピアノ』(以下『めぐピ』)が瞬く間にヒット作となるが、超が付くダメ男で21歳年上の夫・旗一男 がことごとく浪費し、トラブルを起こしていろいろなチャンスをつぶしてしまう。そのうえ、出版・アニメ・映画の各分野で思惑が飛びかい、問題が連発。しかし、『めぐピ』の超絶した面白さはそういった問題を軽く飛び越し、それどころか障害を糧にしてどんどん世界的なヒットになっていく。ダメ夫の心も、最後に『めぐピ』のおかげで変わっていくという、コメディタッチの漫画業界コミックである。

正式名称
おさなづま
ふりがな
おさなづま
原作者
森高 夕次
作画
ジャンル
作家・漫画家
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

鉄工所を経営する親の借金のために、幼な妻になった16歳の少女・旗一子 (旧制北条)は、団地の主婦たちからいいように使われ、ロリコンでサディストの37歳の夫・旗一男からもいろいろな虐待を受けていた。何をやってもダメな一子 だったが、ある日本屋で立ち読みした漫画雑誌『少女ラブリー』の新人賞公募を見て、これに応募し、大賞をとる。

彼女の才能を見抜いた『少女ラブリー』編集者・杉村雅治は次回作を求めたところ、一子 は100ページのネーム『めぐみのピアノ』を提出。幸運が重なり、この作品は増刊号に一挙掲載されることに。作品は人気を呼び、急遽本誌への連載が決まり、『少女ラブリー』の売り上げは急増し、単行本もあっという間に10万部単位で重版が決まるのだった。

中古車販売会社の社長をやっていた一男は、会社経営に失敗して一子 のマネージャーになるが、欲の塊である彼はことごとくトラブルを発生させる。また、出版・アニメ・映画の各分野で私利私欲や個人のつまらない意地が交錯して、問題が連発。にもかかわらず、『めぐピ』の原初的で超絶した面白さはそういった問題を軽く飛び越し、それどころか障害を糧にしてどんどん世界的なヒットになっていく。

最後にダメ夫・一男の心も、『めぐピ』のおかげである境地に達するのだった。

登場人物・キャラクター

旗 一子 (はた いちこ)

鉄工所「北条板金」を経営する親の借金のために、16歳のときに21歳年上の信用金庫の社員である旗一男と結婚した(旧姓北条)。高校へ行く金も学力もなかったので、中学卒業後に家の手伝いをしていた。背は低く、短めのツインテールで前髪は眉の少し上で切りそろえている。ロリコンでサディストの一男に虐待され続け(「女体盛り」を強要されるなど)、団地内で他の主婦たちからいいように使われたり、パートに出てもいろいろミスをしてすぐクビになるなど、恵まれない人生を歩んでいた。 何をやってもダメな一子 だったが、ある日、漫画を描いて雑誌『少女ラブリー』へ投稿したところ大賞に選ばれる。さらに幸運が重なり、『めぐみのピアノ』(『めぐピ』)という作品の連載が決定。 『めぐピ』は大好評で迎えられ、人気投票で1位になり、単行本も10万部単位の大量重版が決まる。マネージャーとなった夫・一男の欲のせいで、数々のトラブルが発生するが、編集者・杉村雅治と作品のすさまじい魅力によって解決し、さらにトラブルを糧に『めぐピ』の人気と売り上げはより上昇する。 アニメ化・ハリウッド映画化を経て、世界的な作品となるが、一子 はずっと無邪気に一生懸命『めぐピ』を描き続けるのであった。ほとんどアシスタントを使わず、最大月50ページの漫画原稿をたった1人で仕上げてしまう作画能力の持ち主。物語は彼女の16歳から23歳までの人生が描かれている(作品終了時、『めぐピ』は既刊15巻でまだ未完)。

旗 一男 (はた かずお)

旗一子 の21歳年上の夫。信用金庫社員だったとき、一子 の親の経営する鉄工所に融資する代わりに、16歳になる娘の一子 を妻にする。ロリコンでサディストで、一子 に「女体盛り」や「ワカメ酒」を強要。だが性交はせず、あえて処女のままにしておくことにこだわっていた(浮気で性交はさんざん行っている)。 バツイチで、前にも10代の娘と結婚していたが、その娘が23歳になったとき興味を失って別れていた人間のクズ。一子 と結婚後すぐ独立して中古車販売会社を始めるが、欲ばかり強くて経営の才能がなく会社を倒産させかかる。が、一子 が漫画で稼いだ金のおかげで持ち直した。しばらくは一子の漫画、『めぐみのピアノ』(『めぐピ』)の売り上げで会社を維持していたが、やがてあきらめて会社をたたみ、一子 のマネージャーとなった(税金対策で「オフィス旗」を設立している)。 私利私欲からトラブルを多発させるが、編集者・杉村雅治と作品の魅力によってトラブルが回避され、また怪我の功名を生み、さらに『めぐピ』の人気が増大することになる。 一時的に、『めぐピ』への介入を阻止しようとした関東出版の編集者によって、名ばかりの青年漫画原作者「旗正男」になったこともあった。トラブルにより、1度死にかかるが、奇跡的に生き返る。10億円ほど貯金がたまった時、悪徳映画プロデューサー・間亘にだまされ、3億円の借金を背負うが、漫画のハリウッド映画化という幸運でチャラになる。 にもかかわらずまた大型中古車チェーンを買収し、実業家に返り咲こうとするが、あっさり失敗。こらえきれなくなった『少女ラブリー』の杉村雅治に意見され、初めて『めぐピ』既刊15巻(まだ未完)をしっかりと読み、ある境地に達する。一子 からは、「だんなさま」と呼ばれている。

杉村 雅治 (すぎむら まさはる)

大手出版社「関東出版」社員。関東出版が刊行している、月刊少女漫画誌『少女ラブリー』の男性編集者。真ん中分けで前髪を切りそろえている髪型。新人賞で大賞をとった旗一子 (ハタ・イチコ)の担当となり、『めぐみのピアノ』のネームに、感動する。紆余曲折を経て、『めぐみのピアノ』(『めぐピ』)が『少女ラブリー』本誌連載が決まったあと、この作品を守りぬくことを決意する。 連載初期にアニメ化の話もあったが、「ハタ・イチコ以外が考えたものは見たくない」と反対する。一子 の夫が、『めぐピ』継続の最大の脅威と早くから気づいている。その後『めぐピ』発掘と部数増大が評価され『少女ラブリー』の副編集長になり、ハタ・イチコの担当から外れるが、『めぐピ』の守護者であることは止めない。 『めぐピ』の人気が高まってから、再度アニメ化の話が出るが、自分がむかし惚れ込んだ作品を作った高畠勇が監督であり、彼が「自分は『めぐピ』という漫画の伝導師になる」と言い切ったことからアニメ製作を承認する。以後、怒涛の勢いで拡大する『めぐピ』の人気増大とメディアミックスの前に影は薄くなるが、やがて30歳前に『少女ラブリー』編集長になるという異例の人事を受ける。 終盤で、とうとうこらえきれなくなり、一男に意見する。エピローグでは、数十年後関東出版の社長になっている杉村の姿が描かれている。

石田 真 (いしだ まこと)

大手出版社「関東出版」社員。関東出版が刊行している、月刊少女漫画誌『少女ラブリー』の編集長の中年男性。アフロ気味の髪型に、四角いメガネをかけ、口髭を生やしている。旗一子(ハタ・イチコ) が作成した『めぐみのピアノ』(『めぐピ』)のネームに感動し、鶴の一声で増刊号に100ページ一挙掲載を決めた。 以後強力な『めぐピ』ファンとなる。しかし、一子 が夫のせいで右手を骨折して1回休載した時、読者を騙す行為を行うなど編集長として営業を優先した。その後の人事異動で青年漫画誌『ヤングヴォーカル』の編集長になる(この時47歳)。異動の前に一子 の家に訪れ、少女漫画の本当の面白さを理解させてくれてありがとうと言って号泣した。 何かと『めぐピ』に口出ししようとする夫の一男を、名ばかりの青年漫画原作者にして仕事を作り、『めぐピ』に近づけないようにした。部下の杉村に、お前は若くして『少女ラブリー』の編集長になるだろうと予言する。

鈴木 みあ (すずき みあ)

17歳の女性歌手。ムロコファミリーに属している。猫のように大きいつり上がった目をしており、ショートヘアー。『めぐみのピアノ』の大ファンで、直接、旗一子(ハタ・イチコ) に会いに家を訪問した。最初に企画された『めぐピ』の実写映画版の主役を演じるはずだった。が、ロリコン旗一男に変態行為を強要されかかり、心に傷を負って役を降り、映画化は瓦解する。 一子 との友情を大切にしたので、事件のことは誰にも話さなかった。3年後、『めぐピ』がハリウッド映画になる際、主役のめぐみが養子になった先の姉である詩穂を演じることになる。作品制作時の人気歌手、鈴木あみがモデルと思われる。

菊永 吾郎 (きくなが ごろう)

大手出版社「関東出版」社員。関東出版が刊行している、月刊少女漫画誌『少女ラブリー』の編集者で、杉村の同期。チビ・デブ・メガネで唇が厚く坊ちゃん刈り。杉村が副編集長になってから、旗一子(ハタ・イチコ) の担当となる。『めぐみのピアノ』(『めぐピ』)に旗一男が口を出すので閉口していたが、石田元編集長の助け舟で不要な干渉はなくなる。 『めぐピ』ファンの少女・渡辺ちよりの枕営業に屈してしまったことがある。

渡辺 ちより (わたなべ ちより)

初登場時は18歳の高校生で、旗一子 と同じ歳。かわいいメガネっ娘で、毎週出していたハタ・イチコ へのファンレターに写真を入れておいたところ、ロリコン旗一男の眼に留まり、呼びだされて肉体関係を持ってしまう。漫画を描いていたもののプロになる気はなかったのだが、一男におだてられ、その上、男好きで枕営業を嫌がらなかったため、いつの間にか『少女ラブリー』の編集者・菊永とも肉体関係を持ってしまい、チョリィ★渡辺のペンネームで『ワンワンわん子』という犬を主人公にしたヘタウマ系シュールギャグを『少女ラブリー』に連載することとなり、人気作家になってしまう。 いつしかメガネもコンタクトに変え、アシスタントとホストクラブ通いをするような悪女キャラとなり、打倒『めぐみのピアノ』を叫ぶ。 しかし、心の底では『めぐピ』が好きでたまらないというジレンマを抱える。作品終盤で「読者の望みに合わせて漫画をプロデュースする」タイプの編集者の小松俊樹に『ワンワンわん子』をいじられて人気が下がり、心を病みかけるが、チーフアシスタントの内田夕子の捨て身の行動で自信を取り戻す。

不破 和夫 (ふわ かずお)

株式会社TOKYO13チャンネル(通称トキオサーティーン)の社員でアニメ局勤務の男性。初登場時29歳。4浪して東京大学に入ったあと、またアニメの専門学校に通った過去がある。長めの顔で、額の生え際が後退しており眉毛がつながって髭剃り跡が濃く、顎が割れている。高学歴コンプレックスのトキオサーティーン・アニメ局長大石蔵造に虐げられていた。 トキオサーティーンは弱小局で、大手出版の人気漫画のアニメ化が許諾されたことはなかったが、超人気作『めぐみのピアノ』に惚れ込んだ不破は、劇場用アニメで世界的なヒットを持っている高畠勇のTVアニメ監督復帰という起死回生の案で挑み、高畠の説得に成功した上で、これまで頑なにアニメ化を拒んでいた『少女ラブリー』の杉村から承諾をもらう。 菊永の高校バレー部の先輩でもある。出来上がったアニメは、最大79.5%(最終回)という驚異的な視聴率を叩き出した。

高畠 勇 (たかばたけ いさむ)

劇場用アニメの監督として、世界的な名声を得た男。アフロヘアの50代。かつてトキオサーティーンでTVアニメ『プリンスエドワードのアン』を監督し、視聴率を得られずに傷つき、以来TVアニメから離れたという過去があった。なんとしても自局で『めぐみのピアノ』のアニメを製作したいトキオサーティーン・アニメ局の不破の激しい熱意に押され、それまで刊行されていた『めぐピ』の単行本5巻を読み、心の底から感動し「自分は『めぐピ』という漫画の伝導師になる。 そのためには映画より電波だ」と言い切ってTVアニメの製作・監督を引き受ける。2クール25本で、3巻までを描く。出来上がったアニメの視聴率は、平均47.2%(最終回79.5%)という驚異的な数値に達し、その後、世界中で放映される。 モデルはアニメ監督の高畑勲と思われる。

持田 千歳 (もちだ ちとせ)

小学2年生の少女だが、児童劇団に所属しており、子供とは思えない演技力と女優根性を持っている。おカッパ頭でカチューシャをつけており、タレ目で少しだけ唇が厚い。『めぐみのピアノ』のTVアニメで、謎の声優・CHICCHIとして主役のめぐみの声を当てていた。彼女の舞台を偶然観た高畠監督が説得して起用した。 が、女優志望でプライドの高い彼女は、顔の出ない仕事を恥と思い、正体を秘密にする条件で仕事を受けていた。CHICCHIという名は、飼っていた小鳥からとっている。写真週刊誌に正体をリークされてしまうが、そのせいでアニメの最終回の視聴率上昇に貢献した。旗一子 が団地で遊んでいた子供たちと彼女が同級生であったことから、正体が写真週刊誌にスクープされる前から一子 と出会っていた。 『めぐピ』がハリウッド映画になる際、主役のめぐみ役をスペルマーク監督からオファーされ1度は断るが、スペルマークの素晴らしい演出に感動して受諾し、最高の演技を見せる。

間 亘 (はざま わたる)

映画プロデューサーとして旗一男の前に現れた長身の中年男性。サングラスをかけ長髪で口ひげを生やし、長い輪郭の顔でエラが張っている。大手映画会社の雇われプロデューサーとして、大作映画を1本ヒットさせている。一男を巻き込み独立して、『めぐみのピアノ』を映画化して利益を独占しようとする。 一男に女優や女優志望者の若い女を抱かせ、10億円を超えていた『めぐピ』の売り上げを吸い上げてしまう。さらには一男を社長に祭り上げた映画会社を設立する。しかし、主演男優に予定していた男が、覚せい剤で逮捕されて企画は水泡に帰し、大量の借金だけが残った時にすでに失踪していた。このため一男は妻の財産をすべて使い尽くした上、3億円の借金を背負うことになる。

スティーブ・スペルマーク (すてぃーぶすぺるまーく)

世界的に有名なハリウッドの映画監督。サングラスをかけ口ひげとあごヒゲをうっすら生やし、長い輪郭の顔をした中年の白人男性。アメリカで放映された『めぐみのピアノ』のアニメに感動し、最終回が放映された直後に日本へ向かった。関東出版に現れ、『めぐピ』の映画を作らせてくれと直談判する。『めぐピ』のアニメと漫画を日本語で理解するために短期で日本語を勉強し、怪しいながらも日本語を話す。 旗一男が企画に関わった映画がポシャって、3億円の借金を背負った直後のタイミングで現れたため、もちろんこの企画は承諾される。ハリウッド映画であるが、出演者のほとんどは日本人俳優で、かつ東京で撮影された。映画は全世界で公開され、地球は感動の渦に巻き込まれるのだった。 モデルは映画監督のスティーブン・スピルバーグと思われる。

権田 武雄 (ごんだ たけお)

時の内閣総理大臣。禿頭でものすごく太い眉毛を生やし、太めの八の字ヒゲも生やしている巨漢で精悍な老人男性。自称「G・T・O」(名前のイニシャルから)で、マスコミからは「爺・T・O」と言われる。孫にせがまれ、自分もファンだったので、関東出版に電話をかけ、お忍びでSPを引き連れて旗一子(ハタ・イチコ) の団地の部屋にやって来てサインを貰い一子 と握手する。 この行為はマスコミにスクープされ、国会で税金の無駄遣いと野党に糾弾されるが、自分は『めぐみのピアノ』のファンになってしまったから仕方ないと開き直った。意外にもそれが国民に大好評だったので、調子づいて解散総選挙を行い、圧倒的勝利で所属政党による単独政権を勝ち取ってしまう。 その解散は「めぐピ解散」と呼ばれる。

その他キーワード

めぐみのピアノ

『おさなづま』に登場する架空漫画作品。主人公・旗一子(ペンネームハタ・イチコ)が、関東出版が刊行している少女月刊漫画誌『少女ラブリー』で連載している、前時代的で原初的な設定と展開だがすさまじい感動を読む者に与える少女人間ドラマ漫画。ストーリーは、「孤児だった早坂めぐみが大富豪の一条寺家に引き取られるが、その理由は目の不自由な1人娘詩穂の勉強仲間・遊び相手として選ばれたからだった。 目は見えなかったが詩穂はピアノの天才で、その演奏に感動しためぐみは自らもピアニストになる決心をして、2人で切磋琢磨しながら音楽業界の階段を登っていく」というもの。『おさなづま』中盤で詩穂の手術が成功して眼が見えるようになるとか、映画撮影中のシーンでめぐみが一条寺家のサトルという青年と恋愛関係になっている、などという断片的な展開はわかるものの、具体的な物語は途中でわからなくなっていく(作品終了時でも、既刊15巻でまだ未完の状態)。 この作品のおかげで『少女ラブリー』の最高出版部数は1千万部に達し、単行本は日本で1億部刊行され、全世界71カ国で出版されて9億部の売り上げを突破している(12巻の段階)。 アニメも日本で最大79.5%(最終回)の視聴率を記録し、アメリカでは最大80.0%(最終回)になってしまう。映画も世界で3億人が観たという数字が示され、中国は『めぐみのピアノ』の単行本と映画ソフトを正式に売りたいがために、WTO(世界貿易機関)に正式に加盟してしまうのだった。

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