水域

水域

ダムの建設によって追いやられた、都会から離れた山村に住んでいた1つの家族にまつわる、幻想的でノスタルジーに溢れた感動作。「月刊アフタヌーン」2010年1月号から2010年12まで連載された作品。

正式名称
水域
ふりがな
すいいき
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

中学生の川村千波は、夏休みに水泳部の部活動で学校のグラウンドを走らされていた。うだるような暑さのなか、周回を続けていた千波は、ついに意識を失って倒れ、目を覚ますと大きな川のほとりにいた。周囲の景色を見渡せば、そこは大きな山に囲まれた大自然で、川に入ると沢山の川魚が泳いでいた。そのまま川を泳ぎ進んでいった千波は、山間から古い家が立ち並ぶ集落を目撃するが、その瞬間に意識が回復し、自分が部活動中に倒れてしまったことを自覚する。

自宅に帰ったものの、千波は夢の続きが気になって仕方がない。そんな千波が浴室で湯船に手を伸ばすと、意識が朦朧とし、再び夢の世界へと引き戻される。

登場人物・キャラクター

川村 千波 (かわむら ちなみ)

中学生の少女で、両親と一緒に暮らしている。長い黒髪を中分けにして額を出し、髪を後頭部で1つに束ねてひっつめ髪にしている。明るくて活発な性格だが、それゆえに無茶をして怪我をすることも少なくない。学校では水泳部に所属している。夏休み中は村全体が給水制限となり、プールで泳ぐことができないため、部活動ではグラウンドを走らされることが多い。

川村 和澄 (かわむら かずみ)

川村千波の母親。肩までの短い黒髪で、前髪は左に流している。中学までは両親とともに深山村に住んでいたが、村に深山ダムを建設することが決まったため、母親の宮沢清子とともに現在の町へと移り住んだ。立ち退きを拒んで、反対運動を続けていた父親の宮沢辰巳を村に残している。その後、町で知り合った川村と結婚し、娘の川村千波と3人で暮らし始める。

川村 (かわむら)

川村千波の父親。黒髪の短髪で、眼鏡をかけて顎に無精髭を生やしている。妻の川村和澄、娘の千波と3人で暮らしており、近くに住む和澄の母親の宮沢清子のもとへ、和澄と千波とともに頻繁に遊びに行っている。和澄がかつて清子とともに住んでいた深山町での深山ダム建設に関する話の経緯を知っており、中学生になった千波にもその話をするべきなのではないかと考えている。 夏休みに入ってから頻繁に意識を失う千波を心配しており、通学途中に意識を失って病院に運ばれたという連絡を学校から受けた際には真っ先に病院へと駆けつけた。

宮沢 清子 (みやざわ きよこ)

川村千波の祖母。髪型は白髪のショートカット。かつては深山村に住んでいて、幼なじみだった宮沢辰巳と結婚し、息子の宮沢澄夫をもうけた。澄夫は小学4年生の時に行方不明になっている。その後に娘の川村和澄が生まれ、深山村にダムを建設する計画が始まったことをきっかけに、頑なに立ち退きを拒む辰巳を残して村を出た。 孫の千波にはよく懐かれており、度々深山村にいた頃の話をして欲しいとせがまれている。

宮沢 辰巳 (みやざわ たつみ)

宮沢清子の夫。短髪で背が高い。若い頃は徴兵され戦地へ赴いていた。戦争が終わると、故郷の深山村に帰り、幼なじみの清子と結婚し、漁師をして生計をたてていた。その後、息子の宮沢澄夫を授かるが、澄夫は小学4年の時に行方不明になってしまう。娘の川村和澄が生まれた後も、澄夫を失った悲しみは薄れることはなかった。 村に対する郷土愛が強く、深山村にダムを建設することが決まり、村の住民たちが立ち退きに応じた後も、1人頑なに立ち退きを拒んで村に残り続けた。

宮沢 澄夫 (みやざわ すみお)

宮沢辰巳と宮沢清子の息子で、川村和澄の兄。坊主頭で、ランニングシャツに短パンを着用している。父親が漁師なのにも関わらず水が苦手で、泳ぐどころか水の中に入ることさえも苦手。小学4年生の時に同級生たちと遊んだ後、1人帰宅している途中で行方不明になってしまう。

清子の父親 (きよこのちちおや)

宮沢清子の父親。短髪で前髪が少し後退していて額が広く、口の周りにひげを生やしている。専業農家で、他の土地を購入して畑を広げようと考えている。戦争が終わっても戦地から帰って来ない宮沢辰巳を待ち続ける清子に対して、村を出て町に出稼ぎに行くか、どこかの家に嫁ぐよう迫っていた。

治美 (はるみ)

宮沢清子の幼なじみの女性。長い髪を2つに分けておさげにしている。清子とは仲が良く、畑仕事の手伝いをしたり、戦争が終わった知らせを真っ先に伝えたりと、何かと気にかけている。宮沢辰巳とは家が隣同士で、清子が辰巳と結婚した時には、隣同士になることを喜んでいた。しかし、深山村にダムを建設することが決まった際、夫が借金を抱えていたこともあって、巨額の補償金と引き換えに立ち退きに応じ、村を出て行ってしまう。

(とおる)

治美の息子。短髪で背が高い。治美が宮沢清子と親しかったこともあり、高校生の頃は、当時中学生だった川村和澄とよく川遊びに行って遊んでいた。しかし、深山村のダム建設に伴い、立ち退きに応じて深山村を出て行った。その後は立ち退きの補償金を利用して大学の医学部に進学し、現在は町で医者として働いている。

場所

深山村 (みやまむら)

かつて山奥にあった村。山間部の谷の麓にあり、山と川に囲まれた自然豊かな美しい景観を持つ。水資源が非常に豊富なため、住人のほとんどが農家か漁師を営んでいた。戦後、水源地域対策特別措置法の指定ダムに決まり、長い月日を経て村人を立ち退かせ、今から12年前に村は完全にダムの底に沈み、深山ダムが完成した。

その他キーワード

深山ダム (みやまだむ)

かつて深山村があった場所に建設されたダム。当時は村の住民による反対運動で工事が難航し、着工に取りかかるまで長い時間がかかった。最終的には村の住民全員に補償金を支払って立ち退きに応じてもらい、今から12年前にようやく完成した。今年の夏は真夏日が40日も続いたため、連日の雨不足からダムの水位が下がり、県内では節水の協力を呼びかけている。

滝の祠 (たきのほこら)

深山村にある滝の近くにある祠。祠の中には手のひら位の大きさの美しい玉が祀られている。これに関しては、次のような言い伝えが残されている。その昔、深山村へ逃げ落ちてきた武者が、この滝で美しい娘と出会ってたちまちに恋に落ち、やがて2人は夫婦となって子供を授かった。しかし、子供の体には鱗が生えていたため、娘は村人に人ではなく龍の化身だろうと問い詰められる。 娘は村人たちからの尋問に耐えかねて美しい玉を残して姿を消してしまう。祠に祀られているのは、その時に娘の残していった美しい玉であるといわれている。

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