氷球姫×常磐木監督の過剰な愛情

氷球姫×常磐木監督の過剰な愛情

ある学校の女子選手をひたすらストーキングしていた少年が、その戦術眼を買われることによってその女子選手の所属するアイスホッケー部の監督となり、ともに世界制覇を目指していくスポーツ漫画。「週刊少年サンデー」2013年49号から2015年18号にかけて連載された。

正式名称
氷球姫×常磐木監督の過剰な愛情
ふりがな
ひょうきゅうひめ ときわぎかんとくのかじょうなあいじょう
作者
ジャンル
推理・ミステリー
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あらすじ

常磐木の監督就任~花籠女学園アイスホッケー部の改革(第1巻)

常磐木松明は、自他ともに認める変態ストーカー。スポーツ女子に強い憧れを抱く彼は、お嬢様学校として名高い私立花籠女学園高等部花籠女学園アイスホッケー部の練習試合を、覗き見という形で観戦していた。彼の覗きの目的は、「氷上の姫君」の異名を持つ花籠女学園アイスホッケー部のエース薔薇紅羽。よだれを流しつつ、凄まじいテンションで「俺の嫁」と公言する紅羽の応援に励む常磐木は、友人の白樺武郎が「そろそろ縁を切ろうかなと思っている」と冗談半分に言っても取りつく島もない。さらには、花籠女子学園高等部の体育館に単身で忍び込み、紅羽に対して自分を花籠女学園アイスホッケー部の監督にしてほしいと直訴し、警備員につまみだされることもあった。一方、その人気からストーカーのあしらい方も心得ている紅羽は、常磐木から実に5000通ものメールを送信されており、その事実にある意味感心した彼女は、興味本位から5000通目のメールに目を通す。するとそのメールには、紅羽を選手として見た見解が詳細に記されており、紅羽はその戦術眼に興味を抱き始める。

一方、現在花籠女学園アイスホッケー部の監督を務めている轟猛彦は、経歴こそ優秀だが、裏で自分の気に入らない選手を何人も潰しているという悪評があった。実際に轟は、経験の浅い梅ヶ枝風花(フーカ)に辛く当たり、その挙句自分と1対1で勝負することを強要、ついにはスティックで叩くなど、ここぞとばかりに痛めつけていた。懲りずに花籠女子学園高等部に潜入していた常磐木はこれに憤り、轟に向けて抗議。またも警備員につまみ出されそうになるが、紅羽の取りなしによって学園関係者と認められる。常磐木はフーカがフィギュアスケートの経験者であることを見抜き、その能力を活かしたプレーを勧める。これによりフーカは轟を抜き去ることに成功し、常磐木はアドバイザーとしての功績を認められることとなる。そして紅羽の祖父である理事長から、2週間の間花籠女学園アイスホッケー部の監督に仮任命され、さらに、鳥ノ山高校女子アイスホッケー部およびテンプル騎士女学園アイスホッケー部との練習試合で満足のいく結果を出した暁には、正式な監督として迎えるという内容の打診を受ける。常磐木は、自分自身と紅羽が親族公認の仲になったなどと妄想しつつも、練習試合に勝つことで花籠女学園アイスホッケー部の正監督になるべく、紅羽とともに部の更なる改革にいそしむこととなる。

差し当っての花籠女学園アイスホッケー部の改善点は、守備力の薄さの補強だった。唯一の3年生レギュラーで、「氷上の生霊」の異名を持つディフェンダーの宵待鬼灯は、技量こそ確かなものの連携が不得手であるという点から、紅羽からの評価は芳しくなかった。これを改善すべく、常磐木が鬼灯のパートナーとして指名したのは、なんとマネージャーである索牛子あおいだった。選手でもないあおいが指名されたことで意表を突かれる紅羽だったが、試しに2人をともにホッケーリンクに立たせたところ、紅羽を唸らせるほどの見事な連係プレイを見せる。実はあおいは鬼灯の幼なじみで、長らく彼女と一緒にプレーしたいと願っていたが、試合になると極端にあがってしまうため、早々に諦めてしまっていた。しかし、鬼灯と一緒ならその短所を克服できるとわかり、紅羽はディフェンスに2人を起用することを決めるのだった。

花籠女学園アイスホッケー部VS鳥ノ山高校女子アイスホッケー部(第1巻~第2巻)

鳥ノ山高校女子アイスホッケー部との対戦を翌日に控えた朝、花籠女学園アイスホッケー部の練習場に薔薇紅羽の左腕といわれるエースの百合原白(シロ)が現れる。感情が高ぶると吐血してしまうという病弱体質のシロだったが、試合に臨むコンディション調整は万全のようで、練習試合においても優れたハンドリング能力で相手のディフェンスをたやすく抜く活躍を見せる。しかし常磐木松明と紅羽は、現在のフォワードの構成では、各々の実力を100%活かすことができないと考えていた。そこで常磐木は、ライトフォワードに梅ヶ枝風花(フーカ)を据えることを提案。それには当然ながら元のライトフォワードであった秋津葉芙蓉の反発があり、また、紅羽もこの采配には半信半疑といった様子だった。しかし、ものは試しという形で、鳥ノ山女子高校との試合では、紅羽、シロ、フーカの3人を、第1セットのフォワードとして出場させることが決定する。

そして迎えた試合当日。鳥ノ山高校女子のキャプテンである雀田米は、常磐木の明らかに異常なテンションに引きつつも、第1セットのフォワードに抜擢されたフーカに警戒心を向けていた。一方、鳥ノ山高校のセンターフォワードである隼翔子は、花籠女学園は後半になるとシロの疲労によりチーム力が落ちると指摘し、後半に一気に勝負を決めることを画策する。そして試合開始早々、花籠女学園は紅羽とシロの連携によって瞬く間に1点を獲得する。一方フーカは2人に追随することができず、焦りを見せていた。そして1対1のまま、試合開始から12分が経過。体力を温存しつつ攻め入る隙を窺っていた隼は、疲労の色が見え始めたシロを狙うことでパックを流し、フォワード同士の乱戦にもつれ込ませる。紅羽がすかさず奪おうとするも、雀田の妨害に遭い、出遅れてしまう。しかしそこに颯爽とフーカが躍り出て、元フィギュアスケーター特有の身体さばきを活かし、パックを奪取。シロに繋げることで追加点を得る。紅羽すら唸らせるほどのフーカのファインプレーによって、花籠女子学園は勢いづき、常磐木が監督を務めた初戦を見事な勝利で飾るのだった。

花籠女学園アイスホッケー部VSテンプル騎士女学園アイスホッケー部(第2巻~第3巻)

薔薇紅羽をはじめとする花籠女学園アイスホッケー部の面々は、鳥ノ山高校女子アイスホッケー部との練習試合において勝利を収めるとともに、攻撃、守備双方に課せられていた問題を無事に解決させた。その立役者である常磐木松明は徐々に部員からも注目されるようになるが、ある日その常磐木が、全身を殴打された見るも無残な姿で、激怒した秋津葉芙蓉に運ばれる形で花籠女子学園に現れる。その理由は、鳥ノ山との試合でフォワードから外され、それを不服として数日間部活動に顔を出さなかった芙蓉が気になり、彼女の実家であるボクシングジムを訪れた常磐木が、こともあろうに女子ロッカールームに忍び込んでおり、芙蓉の手による折檻を受けたためであった。満身創痍の常磐木だったが、意識を取り戻すや否や、芙蓉をゴールキーパーとして起用してはどうかと紅羽に提案する。この突飛な発想にまたも意表を突かれる紅羽だったが、梅ヶ枝風花(フーカ)と索牛子あおいを適所に配置した実績を見込み、紅羽自身をフォワード、芙蓉をゴールキーパーに置いた、1対1の勝負を提案し、紅羽にライバル意識を抱いていた芙蓉もこれを快諾する。最終的にはゴールを奪われるものの、ゴールキーパー未経験とは思えない活躍を見せる芙蓉。その反射速度は、幼い頃から護身術兼憂さ晴らしのためにボクシングの練習を日常的に行ってきたために培われたものだった。こうして芙蓉は晴れてゴールキーパーとして抜擢され、花籠女子学園は、テンプル騎士女学園アイスホッケー部との試合における万全の布陣が整う。

常磐木は紅羽の心証を更に良くするべく、情報収集のためにテンプル騎士女学園に潜入する。しかし、塀の上から落ちて気を失い、そこをエースプレイヤーである毬愛・ラーゲルレーヴ(マリア)に助けられる。マイペース同士、マリアと意気投合する常磐木だったが、襲っていると勘違いした神音ミサ(カノン)のシュートしたパックがみぞおちに当たり、再度意識を失う。目を覚ました常磐木は、カノンから不法侵入したことを花籠に抗議すると告げられる。これに対し常磐木は、独断なので罰するなら自分1人にしてほしいと涙ながらに訴える。そこを監督であるリーリヤ・ラヴロワ(リーリャ)から助け舟を出され、二度と侵入しないという約束を交わすことで今回だけは見逃される。これを不服とするカノンだったが、逆に常磐木から本調子ではないことを指摘される。それを聞いていたマリアは、油断ならないと思いつつも、その情報をあえて告げた常磐木に興味を抱く。しかし、常磐木がテンプル騎士女学園に潜入した本当の理由は、彼が過去にテンプル騎士女学園で会ったという「初恋の人」の情報を求めるためであった。

そして時は流れ、いよいよ花籠女学園はテンプル騎士女学園の対決の日を迎える。昨年県大会で優勝を飾ったテンプル騎士女との対戦に緊張するフーカに対し、行く手を遮る路傍の石に過ぎないとあくまでいつもの調子を崩さない紅羽。しかしその際にわずかに見せた気負いに、常磐木が気づくことはなかった。花籠女学園とテンプル騎士女学園のメンバーが一堂に会し、いよいよ試合の火ぶたが切って落とされた。気合十分の選手たちに対し、常磐木はいつもの変態的なハイテンション、リーリャは小鹿のように震えながら神への祈りをひたすら捧げているなど、両監督ともに奇行が目立っていた。しかしマリアは、リーリャは本領を発揮するためには、ある程度の時間が必要であると言う。紅羽もそれに同意し、彼女が本領を発揮すれば取り返しのつかないことになりかねないと警戒心をあらわにした。それを見越したのか、テンプル騎士女は第1セットにおいてライトウィングにディフェンダー経験のある栄ひかるを起用し、鉄壁の布陣で臨む。対する花籠女学園は、鳥ノ山高校戦で見せた紅羽、百合原白(シロ)、フーカのフォワードラインに、宵待鬼灯八峯椿を加えた超攻撃的メンバーで迎え撃ち、早々に点を奪うことを画策する。ゴールキーパーも予測できないシロのクイックシュートや、相手が強いほど実力を発揮するとされる鬼灯のロングシュートなど、強烈な攻撃を幾度も仕掛けるが、テンプル騎士女も霧江いのりのファインセーブでそれを阻止する。互いに得点のないまま10分が経過し、じれたテンプル騎士女学園は得点するために仕掛けてくる。しかしこれを紅羽が阻止することでカウンターに繋げ、先取点を奪うことに成功する。先に失点を喫したことでリーリャの緊張はピークに達し、その場で昏倒してしまう。しかしすぐに起き上がり、威圧感に満ちた不気味な表情を浮かべ、的確な指示を次々と下し始める。これこそがリーリャの監督としての本領であり、彼女の指揮の元で立ち直ったテンプル騎士女学園のメンバーは、即座に1点を返す。反撃のための策を考える常磐木だが、リーリャはさらに、ロシアからの留学生であるイリーナ・トルスタヤ(イーラ)を投入。相手の動きを誘導する術に長けるイーラの、フーカの隙を突いた奇襲によって追加点を許し、花籠女学園は逆転されてしまう。常磐木も負けてはおらず、イーラの癖を見抜き選手たちに攻略法を伝授。紅羽がそれを実践し、見事にイーラのフェイクショットを封じて見せる。これに激高したイーラは、故意のラフプレーを仕掛け、紅羽を負傷させる。これによって闘争心をさらに燃やす紅羽だったが、急に狼狽しだした常磐木からこれ以上のプレーを禁じられてしまう。食い下がる紅羽も、「桜花咲耶の二の舞になる」と告げられると急に人が変わったかのように常磐木の言葉に従い、戦線を離脱。紅羽という支柱を失った花籠女学園はそのまま押されていき、ついには敗北を喫する。試合には負け、最愛の紅羽は負傷するなど、常磐木にとって悪夢のような結果が残ってしまうのだった。

常磐木の過去~常磐木VS咲夏(第4巻)

花籠女学園アイスホッケー部テンプル騎士女学園アイスホッケー部との練習試合に敗れて以来、常磐木松明は普段のポジティブ思考が嘘のように落ち込んでいた。その原因は、敗北のショック以上に無意識のうちに薔薇紅羽の姿を初恋の人である桜花咲耶に重ねて見ていたという罪悪感が大きかった。常磐木は幼い頃、テンプル騎士女学園で桜花が参加している試合を見たことで彼女のテクニックに魅了され、それ以降、桜花の練習を見るためにテンプル騎士女学園練習場に通うようになる。桜花と話をする機会に恵まれるようになり、舞い上がる常磐木。桜花もまた既に人並外れた戦術眼を持っていた常磐木のアドバイスに興味を抱き、両者は将来、常磐木が監督となり、桜花が選手となったアイスホッケーチームで世界一を目指す約束を取り付ける。しかしその矢先に、桜花がある試合で選手生命に関わる怪我を負ってしまい、二度とリンクに上がれない身体になってしまう。常磐木はその事実に強いショックを受け、桜花に関する記憶を無意識のうちに封じてしまっていたのだった。しかし、打ちひしがれている常磐木の前に、突如紅羽が姿を現す。テンプル騎士女学園との練習試合に負けてしまったため、監督の話はなくなったのではないかと問う常磐木に、紅羽は二度の練習試合で満足のいく成果を出せたため、正式に監督に迎えたいと申し出る。常磐木は桜花への罪悪感を引きずりつつも、二度と同じ過ちを繰り返さないことを心の中で誓い、花籠女学園アイスホッケー部の監督として正式に認められる。

時を同じくして、紅羽の兄である薔薇咲夏がカナダより帰国する。咲夏は、人気が低迷しているとされる女子アイスホッケー界を再興させるため、コーチや監督としての勉強を続けていたが、突如花籠女学園の監督に就任した常磐木に疑念を抱いており、実際に顔を合わせた際に、自身の目に叶わなければ祖父である理事長に常磐木の退任を進言することを宣言する。一方常磐木は、紅羽の兄であり元エースプレイヤーである咲夏と親しくなることを望んでおり、両者の思惑はいまいち噛み合わないままだった。咲夏は常磐木の資質を見極めるため、お互いが花籠女学園の部員から紅羽以外の6人を選出したチーム同士の練習試合を企画。百合原白(シロ)や梅ヶ枝風花(フーカ)をフォワードに起用する常磐木に対し、咲夏は幼なじみである八峯椿千歳桃を投入する。咲夏が気に入らず、常磐木に残ってほしいと願うフーカは、スケーティングの上手さを活かして桃に食い下がるが、彼女の気まぐれなハンドリングについていけずに抜かれてしまう。さらに、常に広い視野を持つ椿との連携にディフェンダーの索牛子あおいが翻弄され、先取点を決められてしまう。その後も常磐木のチームは点を得ることができずにいたが、観戦していた紅羽と白樺武郎は、フーカやあおいの動きが開始時と比較してよくなっていることに気づく。結果として常磐木のチームは敗れてしまうものの、試合の中でも成長を続けるフーカやあおいの様子から、咲夏は常磐木が選手の適性を引き出す才能を有していることを認める。さらに彼が紅羽の頑なさすら変えてしまったことに興味を持った咲夏は、理事長へ常磐木の退任を進言するという宣言を撤回し、監視という名目で常磐木と行動をともにするようになる。常磐木は選手経験のある咲夏に花籠のコーチに就任することを依頼する。断る咲夏だったが、そこにテンプル騎士女学園の監督であるリーリヤ・ラヴロワ(リーリャ)が現れる。顔見知りである様子の咲夏に対し、紅羽に会わせてほしいと言うリーリャ。花籠女学園の練習場に通された彼女は、紅羽に対して「待っている」と発言し、紅羽もその発言の真意を汲み取る。それを見ていた咲夏も、常磐木に対してコーチを引き受ける事を表明。さらにその中で、紅羽や咲夏、リーリャのそれぞれが、桜花と因縁があることが判明するのだった。

北十字祭(第5巻)

新たに薔薇咲夏をコーチに迎えた花籠女学園アイスホッケー部常磐木松明と咲夏はお互いの長所を活かすことで今まで以上に適切な指導を行い、選手の強化を促していた。そんな中、2人の指導を見ていた薔薇紅羽白樺武郎の前に、花籠アイスホッケー部の1年生である宮城野小萩が倒れ込み、そのまま眠ってしまう。彼女は夢見がちな性格で、眠りに落ちることで現実逃避をするきらいがあり、紅羽と過去に助けられた常磐木に強い憧れを抱いていたのだった。梅ヶ枝風花(フーカ)に次ぐスケーティング能力の持ち主ながらも、気持ちの弱さで本領が発揮できていない小萩だったが、練習試合中に常磐木の声援を受けることで覚醒し、音もたてずに百合原白(シロ)の背後から回り込むという好プレーを見せる。これに対してシロも「ロシアン・ムーヴ」と呼ばれる技術を使い、小萩を抜き去る。紅羽は、シロの成長と彼女を追い詰めた小萩を賞賛し、常磐木たちの指導が実を結びつつあることを改めて実感するのだった。一方、ハンドリングがぎこちないフーカは、咲夏から直々の指導を受けることとなる。咲夏の高圧的な態度に反発するフーカだったが、紅羽からの、静かながらも恐ろしい圧力を受けることでおとなしくなり、花籠アリーナで常磐木も交えて練習することが決まる。そして翌日、白樺や領民と呼ばれるストーカー集団たちと花籠アリーナへ足を運んだ常磐木だが、先に練習をしていたカンナカムイ高校男子アイスホッケー部熊代爪牙から因縁をつけられてしまう。そこに咲夏が現れ、爪牙に対し指導の名目で勝負を仕掛ける。1年前に選手を引退していた咲夏だが、そのブランクをものともしない動きで爪牙を翻弄し、華麗な勝利を収める。さらに爪牙の姉であり、カンナカムイ高校女子アイスホッケー部のキャプテンである熊代火爪が監督である荒神雷とともに現れ、弟の無礼のお詫びとして、花籠女子学園のメンバーたちをカンナカムイ高校とテンプル騎士女学園アイスホッケー部の交流イベントである北十字祭に招待する。これを受けた常磐木たちは、北十字祭の会場であるノーザンクロス・アイスアリーナに向かい、カンナカムイ高校とテンプル騎士女学園の試合を見学することになる。

北十字祭当日。カンナカムイ高校の男子応援団や、テンプル騎士女学園の聖歌隊などの声援が響き渡る中、試合開始の笛が鳴り響く。開始早々、テンプル騎士女学園のエースである毬愛・ラーゲルレーヴ(マリア)はパックの獲得に成功し、そのままゴール目がけて突き進む。しかし秋鮭勇魚たちによる両翼からの同時攻撃に阻まれ、神音ミサ(カノン)にパスを回そうとするも、大姥百合香の身体を張ったプレーによってパスを阻止されてしまう。さらに火爪がそのこぼれ球を空中でキープし、間髪入れずにシュートを放つ。辛うじて霧江いのりが止めるが、マリアは火爪のパックに対する嗅覚に心底戦慄を覚える。試合はお互い無得点で拮抗したまま終盤を迎え、カノンは突破口を開くべくマリアにパスを向ける。しかしそこをまたもや火爪にカットされ、そのままカウンターを仕掛けることで疲労の色が見えるテンプル騎士女のディフェンスを抜き去り、ついにカンナカムイ高校は勝ち越しのゴールを奪う。男子相手に練習を重ねることで培った体力が、北十字祭を制する決め手となったのだった。一方、常磐木は両者の健闘を興奮しつつ讃えながらも、この試合でイリーナ・トルスタヤが姿を見せなかったことに疑問を抱いていた。

花籠女学園アイスホッケー部VSカンナカムイ高校女子アイスホッケー部(第6巻~第7巻)

北十字祭で姿を見せなかったイリーナ・トルスタヤ(イーラ)。彼女はチームメイトとの折り合いの悪さから、テンプル騎士女学園アイスホッケー部から七咎学園女子アイスホッケー部に移籍していたことが判明する。常磐木松明荒神雷は、高く評価していたイーラの心配をするとともに、彼女を失ったことによるテンプル騎士女学園への影響を懸念する。イーラの移籍先である七咎学園は、選手、指導者ともに各地から問題児を寄せ集めており、特にコーチは名前や顔すら謎に包まれた存在であると噂されていた。一方、花籠女学園アイスホッケー部では、中断していた梅ヶ枝風花(フーカ)のハンドリングの練習が再開された。薔薇咲夏の実力を認めたフーカは、おとなしく彼の指導を受けていたが、そこにカンナカムイ高校男子アイスホッケー部熊代爪牙が現れる。爪牙は先日の咲夏に対する非礼を詫び、アイスホッケーを教えてほしいと頼み込み、常磐木やフーカもそれに同調する。そこで咲夏は、コーチを引き受ける見返りとして、カンナカムイ高校男子ホッケー部が花籠女学園のメンバーの練習相手を務めるという条件をつける。こうして爪牙たちカンナカムイ男子ホッケー部は、熊代火爪や荒神には内緒で花籠女学園と合同練習を行うこととなるのだった。フーカ、爪牙をはじめ、選手たちは合同練習によって着実に実力を伸ばしていく。

全国高校女子アイスホッケー夏季大会まで数日に迫ったある日、常磐木は練習の帰り道で突如ゴシックロリータ・ファッションに身を包んだ人物に鞭で足を引っかけられ、転倒してしまう。わけが分からないまま見上げる常磐木に対し、その人物は七咎学園女子アイスホッケー部の監督・執行青馬と名乗り、自身こそ薔薇紅羽のパートナーに相応しいと一方的に因縁をつける。そこに紅羽が現れその場は収まったが、執行は女装趣味の男性で、常磐木に匹敵する変態であることが判明。紅羽と咲夏は、幼い頃から彼に付きまとわれてはあしらっていたという。その所業にドン引きする花籠女学園の面々だったが、常磐木だけは同じ女性を敬愛する同志として、執行に敬意を表していた。

そして夏季大会当日。花籠女学園アイスホッケー部は1回戦、2回戦を順当に勝ち上がっていき、ついにカンナカムイ高校女子アイスホッケー部との直接対決を迎える。情は判断を誤らせ、腕を鈍らせるという紅羽と、情こそが勝つための原動力と主張する火爪。両者がにらみ合う中、試合の幕が上がる。先にパックを奪った火爪は秋鮭勇魚にパスを回すが、咲夏の指導によってハンドリング技術を飛躍的に向上させたフーカが猛追し、秋鮭を壁際まで追いつめる。思い切ったプレーに秋鮭は面食らうが、2人の接触の隙を突いた火爪がパックを奪い、試合開始早々に1点を決めてしまう。それからも火爪は果敢に攻め込み、宵待鬼灯索牛子あおいのディフェンダーコンビと幾度となくぶつかり合う。反面、火爪に苦手意識を持つ紅羽はプレーに精彩を欠いており、常磐木や咲夏からも懸念されていた。そして、終盤戦を控えた休憩時間。紅羽は情を排した姿勢は間違っているのではないかと自分に疑念を抱き、1人で部屋にたたずんでいたが、そこに常磐木や咲夏、そして花籠女学園のチームメートたちが現れ、激励を受ける。長らく戦場で信じられる者は自分だけと思い込んできた紅羽だが、ここに至って自分を偽ることを止め、目の前の道だけを全力で切り開くことを決意。改めてリンクの上で火爪と相対し、彼女からもその本気を認められる。そして迎えた終盤戦。闘志を燃やす紅羽は火爪の虚をつく形でフーカにパスを渡し、それを受けたフーカはすかさずゴール前の百合原白(シロ)へとパックを回す。シロもまたその軌道を読み、ダイレクトシュートを打ち込むが、間一髪で相手のゴールキーパーに弾かれてしまう。しかし弾かれたパックの前には紅羽が待っていた。常磐木の声援がこだまする中、紅羽は渾身のボレーシュートを放ち、同点ゴールを決める。試合は1-1のまま、残り1分。秋津葉芙蓉が火爪のシュートを止め、リバウンドしたパックをフーカが拾う。そのままカンナカムイ高校のゴール目がけて攻めかかり、コーナーに追いつめられたところで紅羽に対しゴール裏からパスを通す。これを受けた紅羽は残り5秒となる中で必死にゴールを目指し、試合終了とほぼ同時に決勝点を決めるのだった。

花籠女学園アイスホッケー部VS七咎学園女子アイスホッケー部(第7巻)

カンナカムイ高校女子アイスホッケー部を下し、ついに全国高校女子アイスホッケー夏季大会の決勝へと駒を進めた花籠女学園アイスホッケー部。部員たちは激戦の疲れを癒すため、テンプル騎士女学園アイスホッケー部七咎学園女子アイスホッケー部の試合に興味を示す白樺武郎を残して帰路についていた。しかしその途中、常磐木松明のスマートフォンに、白樺から驚くべき内容のメールが送信される。イリーナ・トルスタヤ(イーラ)の移籍によってテンプル騎士女学園の選手たちが動揺し、さらにリーリヤ・ラヴロワのライバルにして常磐木や薔薇紅羽の憧れの人でもある桜花咲耶が七咎学園のコーチとして姿を現したことで、テンプル騎士女学園が本来の実力を発揮できないまま七咎学園に大敗を喫してしまったのである。常磐木たちが試合会場に到着すると、そこには確かに桜花の姿があった。常磐木たちは桜花に声をかけるが、彼女はこれを無視して1人先に帰ってしまう。突如姿を現した桜花の存在に、紅羽と薔薇咲夏もまたショックを受けるが、常磐木は咲耶の指導するチームと対戦できることに喜びを示す。彼のポジティブ思考によって紅羽も立ち直り、花籠女学園は明後日の対七咎学園戦に向けて万全の準備を整える。さらに常磐木は、七咎学園のエースとなったイーラは格下の選手を甘く見る傾向にあるため、これこそが突破口を開く鍵になると部員たちにアドバイスするのだった。

そしてついに、花籠女学園と七咎学園による決勝戦が幕を開ける。試合開始時にフィールドに降りたパックはどちらのチームのものともならないままリンクを流れていき、壁に跳ね返ったところを七咎学園のディフェンダーである蠅王四羽が拾おうとする。しかしそこに梅ヶ枝風花(フーカ)が奇襲をかけ、四羽からパックを奪い去る。イーラは予定通りとばかりにフーカの前に躍り出てカットしようとするが、それこそが常磐木の読み通りであった。イーラが離れたことでフリーになった紅羽にフーカからのパスが繋がり、彼女はそのまま敵陣に向けてシュートを放つ。間一髪で止められたものの、開始早々得点するチャンスを生み出した花籠女学園だが、イーラもまた常磐木と紅羽の思考が桜花の読み通りであると不敵に笑う。0-0のまま試合は進み、宵待鬼灯索牛子あおいにパスを回すことでチャンスを作り出そうとするが、イーラがスティックをわざとあおいの前に出すことで転倒させてしまう。さらにそのラフプレーは桜花による指示だとハッタリをかけるが、今や花籠女学園に、その程度のブラフで動揺する選手など1人もいなかった。そして常磐木もまた、七咎学園が桜花の影響でいい方向に変化していることを確信し、改めて彼女に敬意を表する。最後の休憩時間、自分のなすことがことごとく裏目に出たことで憤りを隠せないイーラに対して、桜花は自分をごまかさず、持てる力のすべてを発揮するようアドバイスをする。桜花はイーラが無意識のうちに全力で勝負することをためらっており、狡猾なプレーはそれを覆い隠すためだと気づいていたのである。そして試合は終盤戦を迎え、すべてを吹っ切った紅羽とイーラは、最後の対決に臨むのだった。

登場人物・キャラクター

主人公

北海道立森林高校に通っている2年生の少年。スポーツに打ち込む女性が大好きで、所属、種目を問わず競技に打ち込んでいる女性を見ることに青春を懸けている正真正銘の変態ストーカー。試合観戦においては口からよだ... 関連ページ:常磐木 松明

薔薇 紅羽 (そうび くれは)

花籠女学園アイスホッケー部のキャプテンを務めている2年生の少女で、ポジションはセンターフォワード。常磐木松明からは「紅羽たん」、チームメイトからは「姫」、そして、領民と呼ばれるファンたちからは「姫君」と呼ばれている。花籠女学園の理事長を祖父に持つお嬢様で、端麗な容姿とクールかつ優雅な性格、そして他の追随を許さない選手としての才能から「氷上の姫君」の異名を持ち、男女問わず多くのファンを集めている。 中でも常磐木からは異常としかいえないほどの愛情を注がれており、白昼堂々とストーカー行為を受けることも日常茶飯事だが、まったく動じていない。梅ヶ枝風花や宮城野小萩など、薔薇紅羽に憧れて花籠女学園アイスホッケー部に入部したメンバーも多く、特に小萩からは「お姫様」と呼ばれ、慕われている。 常に穏やかな表情をしており喜怒哀楽がわかりづらく、激怒した時も軽く小首をかしげつつたおやかに微笑むだけだが、その際に見られる笑みは「激おこアルカイックスマイル」と呼称されており、長く紅羽と付き合ってきた人物はその微笑みを見るだけで震えあがるほど。 一方で古風な笑いのツボを持っており、落語番組などを好んで鑑賞するという意外な一面を持つ。その立ち振る舞いから天才系と評されることが多いが、実際は自分に厳しい努力家。さらに若干腹黒い性格でもあり、目的のためなら手段をえらぶべきではないという座右の銘を持つ。性格に多大な問題がある常磐木を監督に据えたのも、その能力によってチームが強化されるという打算に基づくものである。 さらに、情に流されれば全力を出し切ることができないと強く信じ切っており、特に恋愛感情を強く否定している。こういったシニカルな一面は、子供の頃憧れていた桜花咲耶が突如怪我で引退してしまったショックによるもので、奇しくも現在の常磐木と似たような境遇にあるといえる。しかし、常磐木や、のちにコーチとして所属するようになった兄の咲夏などの指導によって、花籠女学園ホッケー部自体が改善されていくと、紅羽自身も情が生み出す力というものを信じるようになっていき、選手としてさらに大きく成長していく。

白樺 武郎 (しらかば たけお)

北海道立森林高校に通っている2年生の少年。常磐木松明のクラスメイトかつ幼なじみで、お互いを「たいちゃん」、「カバちゃん」と呼び合っている。「変人観察」が趣味で、良くも悪くも極端な特徴を持っている人間に興味を抱く傾向がある。そのため、堂々とストーカーとして覗きや情報収集などに励む常磐木とよく一緒に行動している。 また、薔薇紅羽をはじめとする花籠女学園アイスホッケー部の部員や、薔薇咲夏、リーリヤ・ラヴロワなどにも、変わった人物として一目置いており、チェックしていくうちにアイスホッケーの試合観戦にもよく足を運ぶようになっていく。読書が趣味で、学校の休み時間は大抵、常磐木の変質的な行動を見ながらの読書を楽しんでいる。 これは2人の姉の影響で、姉弟揃って読書マニアとなっている。また、紅羽ほどではないにせよ若干冷めた性格をしているが、コミュニケーション能力が抜きんでており、初対面の人物にも気軽に話しかける度胸を持ち合わせている。そのため、常磐木と異なり花籠アイスホッケー部とは関係ないものの、部員たち、特に紅羽や咲夏には友人感覚でお互い接している。 なお、名前は「たけろう」ではなく「たけお」と読むが、間違って呼ばれることが多い。常磐木ほどではないが成績優秀で、1学期の中間テストでは3位を獲得している。

薔薇 咲夏 (そうび さえか)

薔薇紅羽の兄。子供の頃は紅羽同様アイスホッケーの選手として活動していたが、中学卒業と同時にプレイヤーを引退。監督、およびコーチの勉強をするため、約2年の間カナダに留学していたが、ちょうど常磐木松明が花籠女学園アイスホッケー部の監督に就任した時期に帰国してきた。容姿端麗なうえに紅羽と同等の技術を持っているため男女問わず高い人気を集めており、領民と呼ばれるファンたちからは「若様」と呼ばれている。 紅羽に付きまとっている常磐木を見るなり「ケダモノ」と呼び、自分の目に叶わない指導をするなら即刻退任を要求すると断言する。しかしこれは飽くまで監督としての資質を疑問視していたため。紅羽に付きまとっていることは、多少目障りに思っているが大して重要視しておらず、梅ヶ枝風花(フーカ)が「常磐木と紅羽がくっついてくれたらスッキリする」と言った時も、特に否定するような態度を見せていない。 常磐木からは、紅羽の兄であるとともに優秀な選手であるという点から敬意を向けられており、迷惑だと振る舞いつつもまんざらでもないという様子を見せる。紅羽との兄妹仲は良好で、お互いに敬意を向けあっているが、揃って浮世離れしたところがあり、奇妙な言動をとりあった際には揃って突っ込みを入れられることもある。 また、紅羽同様に歯に物を着せない発言も目立ち、特にフーカにはハンドリングに関して辛辣な物言いをしたためたびたび反発されている。しかし指導者としての資質は確かなもので、実際に彼の教えを受けた選手は短期間で大きく成長しており、のちにフーカもそれを認めている。 なお、指導者を目指すようになったのは、桜花咲耶が怪我で引退した際に、世間からのアイスホッケー界への興味が一気に薄れたことで、スタープレーヤーが1人いるだけでは意味がなく、監督としてチームの底上げを図るべきだと判断したためである。

梅ヶ枝 風花 (うめがえ ふうか)

花籠女学園アイスホッケー部に所属している2年生の少女で、部員たちからは「フーカ」と呼ばれている。姫こと薔薇紅羽のプレーに憧れてアイスホッケーを始めており、経験自体は1年強と比較的浅い。それ故に技術も部員の中では乏しい方で、かつて花籠女学園アイスホッケー部の監督だった轟猛彦に目の敵にされていた。しかし、実は子供の頃からフィギュアスケートの経験があり、スケーティング能力に秀でていることに着目した常磐木松明によって、その後も主要選手の1人として認められている。 また、フィギュアスケーターとしての経験からスタミナも抜きんでており、終盤戦になってもプレーの勢いが落ちない点も評価されている。反面、ハンドリング能力は拙くシュートなどを苦手としている。 もともとのポジションはライトディフェンスだったが、常磐木の提案によってライトウィングにコンバートされている。おしとやかだがどこか奇妙な花籠女学園アイスホッケー部では珍しく、口は悪いが常識人で、常磐木やチームメイトたちのマイペースな言動にはたびたび突っ込みを入れている。一方、ホッケー選手を志すきっかけとなった紅羽や、長所を伸ばす助けとなった常磐木を強く信頼している。 のちに薔薇咲夏の指導を受け、彼のストレートすぎる物言いに時折反発しながらもハンドリング能力を大きく伸ばし、カンナカムイ高校女子アイスホッケー部や七咎学園女子アイスホッケー部相手にも一歩も引かないプレーを見せている。

宵待 鬼灯 (よいまち ほおずき)

花籠女学園アイスホッケー部に所属している3年生の少女で、ポジションはライトディフェンス。陰気な性格で、リンクの上では暗い雰囲気を漂わせつつ怨霊のように忍び寄ってパックを奪う様子から「氷上の生霊」と呼ばれ、恐れられている。また、普段も率先して人に話しかけるようなことはしないが、幼なじみである索牛子あおいとは仲のいい様子を見せることもある。 守備能力の高さは花籠女学園アイスホッケー部随一で、攻めに要する能力も備えているため、攻撃的な布陣においても起用されることが多い。しかし、連携を苦手としており、キャプテンである薔薇紅羽からは改善を求められていたが、本人はいまひとつ乗り気ではなかった。だが常磐木松明の指示によって、突如あおいとのコンビを組むことになり、これが予想以上の効果を発揮したため、防御に重点を置かなければならない場面では、あおいと両翼を固める役割を担うようになる。

索牛子 あおい (けにこし あおい)

花籠女学園アイスホッケー部にマネージャーとして所属していた3年生の少女。宵待鬼灯とは幼なじみで、男子にからかわれているところをたびたび助けてもらっており、慕っている。凄まじいまでのドジっ子で、何もないところで転んだり、女子しかいないとはいえリンクの上で堂々と着替えたりするなど、随所でそのドジっぷりを遺憾なく発揮しており、常磐木松明からもそのドジっぷりを属性の1つとして称賛されている。 子供の頃は選手としてアイスホッケー部に所属しており、身体能力こそ高かったがそそっかしい上にあがり症であるため試合で活躍できず、止む無く選手を諦めマネージャーとして活動していた。それを見抜いた常磐木から、ディンフェスにおいて鬼灯とコンビを組むことを提案され、実践したところ、薔薇紅羽すら脅かすほどのコンビネーションプレイを見せつける。 また、鬼灯と一緒に参加している時はあがり症をある程度克服できていることもわかり、防御を固めるべき戦局においてはたびたび鬼灯とコンビを組み、失点を防ぐことに貢献している。一方、行動が素直過ぎるきらいがあり、そこを七咎学園女子アイスホッケー部のイリーナ・トルスタヤに突かれて転倒させられたこともある。

百合原 白 (ゆりはら しろ)

花籠女学園アイスホッケー部に所属している1年生の少女。ポジションはレフトウィングで、部員たちからは「シロ」と呼ばれている。実家は「白百合堂」という老舗の和菓子屋で、大姥百合香などの親戚たちはお菓子をよく食べるため全員太っているが、百合原白だけはスリムな体型を維持している。普段は薔薇紅羽や常磐木松明とは別の意味でマイペースな性格で、ふわふわとしてつかみどころがない。 紅羽自らが自分の左腕と称するほどの腕前の持ち主で、1年でありながら主力である第1セットに組み込まれている。病弱で、緊張したり動揺したりすると吐血してしまうという厄介な体質の持ち主だが、それにも関わらず厚遇されているのは、ひとえにその体質を補って余りある運動神経と先読みの上手さによるもので、事実テンプル騎士女学園アイスホッケー部のエースを相手にしてもまったく引けを取らない。 向上心も高く、「ロシアン・ムーヴ」と呼ばれる、日本では滅多に見られない高度なテクニックを独学で使いこなしている。カンナカムイ高校女子アイスホッケー部に所属している百合香とは親戚で仲が良い。 紅羽が卒業した後は実力の点から次期キャプテンに相応しいとされていたが、仕切るのが苦手という理由で鼓草綿に任せている。

秋津葉 芙蓉 (あきつは ふよう)

花籠女学園アイスホッケー部に所属している2年生の少女。実家はボクシングジムを経営しており、護身と憂さ晴らしのため、気が向けばサンドバッグを叩きトレーニングしている。負けず嫌いで気が強く、薔薇紅羽を一方的にライバル視しており、彼女に追いつくために必死に努力をしている。しかし肝心の紅羽からはあまり対抗意識を持たれておらず、時折ストレスを感じる場面が見られる。 実力は確かなものがあり、紅羽、百合原白(シロ)と並んで、主力である第1セットのライトウィングとして起用されるほどだった。だが、現在の布陣ではシロの負担が大きいと考える常磐木松明の進言により、ライトウィングのポジションを梅ヶ枝風花に奪われてしまう。この決定を不服とし、一時は部活を辞めようとすら考えていたが、もとより常磐木には秋津葉芙蓉をレギュラー落ちさせる気は微塵もなく、ボクシングで培った反射神経を活かしてゴールキーパーをしてほしいと持ち掛けられる。 素直になれない性格ゆえに簡単には了承しようとしなかったが、最終的には紅羽に誘導される形でその申し出を受ける。その結果、カンナカムイ高校女子アイスホッケー部からは1失点、七咎学園女子アイスホッケー部との対戦に至っては無失点に抑えるなど、フォワード時代以上の活躍を見せるようになった。 また、フィールド全体を見渡す機会に恵まれたことで、紅羽のプレイヤーとしての能力をより的確に把握することができるようになり、改めてその実力に舌を巻いている。

八峯 椿 (やつを つばき)

花籠女学園アイスホッケー部に所属している2年生の少女。ポジションはレフトディフェンスで、戦況に応じて索牛子あおいと交代している。昭和以前より武家として薔薇家に仕えているという八峯家の出身で、薔薇紅羽や薔薇咲夏とは幼なじみの間柄。幼い頃から紅羽や咲夏のチームメイトとしてアイスホッケーを続けているが、椿にとっては主従関係という面も強い。 普段は2人に対して様を付けて呼んでいるが、学校や部活では様付けで呼ばないように注意されている。冷静さと視野の広さが強みで、試合の中では次に何が起こるかを常に考え、適した行動をとることができる。また、千歳桃とは幼なじみで、彼女の予測困難なプレーを的確にフォローできるため、咲夏からは優れたディフェンダーコンビとして重宝されている。 また同じポジションのあおいとは正反対のタイプで、1対1では八峯椿に分がある模様。

千歳 桃 (ちとせ もも)

花籠女学園アイスホッケー部に所属している2年生の少女で、ポジションはライトディフェンス。主に主力に次ぐ第2セットでプレーしており、八峯椿とコンビを組むことが多い。小柄な体格のマイペースな少女で、昭和以前より武家として薔薇家に仕えているという千歳家の出身で、薔薇紅羽や薔薇咲夏とは幼なじみの間柄。幼なじみである椿同様、幼い頃から紅羽や咲夏のチームメイトとしてアイスホッケーを続けている。 普段は薔薇兄妹に対して様を付けて呼んでいるが、学校や部活では様付けで呼ばないように注意されている。百合原白や宮城野小萩同様、つかみどころのないマイペースな性格をしており、部員の名前をうっかり忘れることもある。試合においてもその性格が反映されており、敵はおろか、味方選手ですら時折予測できないようなプレーを行うことがある。 このため、まっすぐな姿勢を好む梅ヶ枝風花にとってはやりづらい相手となっている。

宮城野 小萩 (みやぎの こはぎ)

花籠女学園アイスホッケー部に所属している1年生の少女。ポジションはレフトディフェンスで、部員たちからは「ハギ」と呼ばれている。子供の頃から控えめかつ夢見がちな性格で、おとぎ話などの絵本を好んで読んでいた。もともとはホッケープレイヤーになるつもりはなかったのだが、家族とスケートリンクに遊びに行った際にフィギュアスケートをやってみたいと父親に告げたところ、アイスホッケーをやりたいと誤解され、なし崩し的にホッケーを始めることになってしまった。 その後宮城野小萩が「お姫様」と慕う薔薇紅羽を追って、花籠女学園アイスホッケー部に入部する。しかし、いつも眠たげで覇気がなく、それをやる気がないと捉えた轟猛彦によって部活に参加することを拒まれ、失意のまま歩き続けた挙句その場で眠り込んでしまう。 そこを偶然通りがかった常磐木松明に助けられ、それ以降彼を「王子様」と呼び、紅羽同様慕うようになる。現在も、技術力そのものは確かだが、ムラッ気が強く、それ故に扱いづらいと薔薇咲夏から苦言を呈されていた。しかし、常磐木の声援を受けると突如覚醒し、その際は百合原白すら追い抜くスピードとテクニックを発揮する。 また、滑る時にエッジの音をまったく響かせないため、相手選手に気づかれないまま回り込むことができる。

鼓草 綿 (つづみぐさ わたば)

花籠女学園アイスホッケー部に所属している1年生の少女。ポジションはライトディフェンスで、部員たちからは「つづみん」と呼ばれている。花籠女学園アイスホッケー部の中では比較的小柄な方だが、熱血系の性格で気が強く、相手を問わず果敢に立ち向かう気質から、ディフェンダーとして優れた活躍を見せることが多い。七咎学園女子アイスホッケー部との対戦においては第2セットで宮城野小萩とともに参戦し、執行青馬や桜花咲耶すら驚かせるほどのプレーを見せている。 薔薇紅羽卒業後は彼女にキャプテンの座を任され、鼓草綿自身は百合原白の方が向いていると渋りつつも、最終的にはそれを引き受ける。梅ヶ枝風花を個人的に慕っており、彼女が卒業する際には縋り付いて泣きじゃくるといった一面も見せた。

日向 なつみ (ひゅうが なつみ)

花籠女学園アイスホッケー部に所属している1年生の少女。ポジションはライトウィングで、部員たちからは「ヒューガ」と呼ばれている。1年生ながら大柄な体格をしており、その身体を張ったディフェンスは薔薇紅羽からも一目置かれている。明るく溌剌とした性格で、そのパワフルな姿勢も、相手を寄せ付けない一因となっている。また、笑い上戸な性格で、ことあるごとに爆笑しては鼓草綿などから突っ込みを受けている。

轟 猛彦 (とどろき たけひこ)

花籠女学園アイスホッケー部の監督を務めていた男性。かつて指導した高校をインターハイにまで押し上げるなど、優秀な経歴を持っている。しかし一方で、自分の思い通りにならない選手に対して嫌がらせに近い指導を行い、何人も部活から追放しているなどの悪評があり、梅ヶ枝風花(フーカ)や宮城野小萩などがその被害に遭っている。 当初は、強い部に仕立てられれば問題はないという考えから、薔薇紅羽からもその存在を認められていたが、轟猛彦が軽視していたフーカが常磐木松明の指導によってその本領を発揮すると、紅羽の興味は完全に常磐木に移ってしまい、最終的には彼に監督の座を追われてしまう。その傲慢さや女子部員への酷い仕打ちから、温厚かつポジティブ思考の常磐木を激高させた唯一の人物でもある。

鷲 教助 (おおとり きょうすけ)

鳥ノ山高校女子アイスホッケー部の監督を務めている男性。年季を感じさせる風格の持ち主だが、隼翔子からは軽い感覚で接されている。花籠女学園アイスホッケー部との試合では、相手校の監督である常磐木松明を若造であると軽視していたが、最終的には彼の策によって敗れ去る結果となった。

雀田 米 (すずめだ よね)

鳥ノ山高校女子アイスホッケー部のキャプテンを務めている3年生の少女で、ポジションはセンターフォワード。判断力が高くリーダーシップに秀でており、練習、試合の両方において、的確な指示を下している。また、用心深い性格で決して油断をせず、相手チームに対する警戒を怠らない。花籠女学園アイスホッケー部との練習試合においてもそれは例外ではなく、薔薇紅羽はもちろん、彼女の左腕とされる百合原白や、突如として第1セットのライトウィングに選ばれた梅ヶ枝風花に対しても、気になる選手として早々に警戒の目を向けている。 このような性格から、楽天家である隼翔子の考えをことあるごとに甘いと評し、彼女が相手を侮る発言をするたびにその場で突っ込みを入れたり、説教したりしている。

隼 翔子 (はやぶさ しょうこ)

鳥ノ山高校女子アイスホッケー部に所属している2年生の少女で、ポジションはライトウィング。足の速さとスタミナが自慢で、後半になると力を発揮するタイプ。体格もいいため鳥ノ山女子ホッケー部のエースとして知られているが、相手を甘く見る悪癖がある。花籠女学園アイスホッケー部との練習試合においても例外ではなく、相手校をぬるいお嬢様の集団と評したり、怖いのは薔薇紅羽ただ1人と高を括ったりして、キャプテンである雀田米に注意されている。 しかし、相手を軽視するだけの自信を裏打ちするほどの実力を持っており、後半は相手の体力切れを狙い、果敢に攻める場面も見られた。だが最終的には、元フィギュアスケーターで隼翔子以上のスタミナを持つ梅ヶ枝風花に攻撃を阻止され、これが鳥ノ山女子ホッケー部が敗北する一因となってしまう。

リーリヤ・ラヴロワ (りーりやらゔろわ)

テンプル騎士女学園アイスホッケー部の監督を務めているロシア人の女性で、イリーナ・トルスタヤ(イーラ)からは「リーリャ」、他の部員たちからは「シスター・アンジェリーカ」と呼ばれている。普段は包容力のある心優しい性格で、部活などで部員が集まる際には、必ず自作のお菓子を配っている。このため、部員たちからは敬意や好意を寄せられており、問題児とされるイーラも例外ではない。 一方で、気弱で人見知りが激しく、初対面の人はもちろん、慣れ親しんだ人を相手にする時も常にビクビクしていることが多い。花籠女学園アイスホッケー部と鳥ノ山高校女子アイスホッケー部の練習試合を見に行った時には、偶然応援席で隣同士となった白樺武郎に対し、震えるあまりおかしな行動をとってしまい、そのことが逆に彼の興味を引く結果となっている。 このような極端な人見知りになった原因は、かつてプレイヤー時代に桜花咲耶と対戦中怪我を負わせてしまい、話をする猶予すら与えられないまま、桜花が表舞台から姿を消してしまったため、恨まれていると考えいるためである。このような性格ながら監督としては非常に優秀で、その秘訣はプレイヤー時代から今に至るまでにおけるすべてのチーム、および選手の能力や癖などを完全に把握するほどの記憶力である。 さらに、緊張がピークに達すると彼女の中に眠るもう1つの人格が目を覚ます。この状態のリーリヤ・ラヴロワは「覚醒モード」と呼ばれ、さながら悪魔憑きのような不穏な言動を行うようになる。 さらにその記憶から凄まじい速さで対応策を編み出すようになり、それらは時に常磐木松明の予測、および策略すら一手上回るほどの正確性を誇っている。

毬愛・ラーゲルレーヴ (まりあらーげるれーゔ)

テンプル騎士女学園アイスホッケー部に所属している3年生の少女。ポジションはセンターフォワードで、チームメイトやファンからは「マリア」と呼ばれている。明るく大らかな性格のムードメーカーで、多くの人に愛されている。人当たりも良く、情報収集のため潜入し、バランスを崩したことで塀から滑り落ちて気絶した常磐木松明を介抱したり、厄介者扱いされているイリーナ・トルスタヤ(イーラ)に積極的に交流をしようと働きかけたりしている。 父親はスウェーデン出身のホッケープレイヤーで、その薫陶を受けることで強豪揃いのテンプル騎士女学園アイスホッケー部の中でもトップクラスのプレイヤーとして名を馳せている。さらに薔薇紅羽に匹敵する端麗な容姿から男女問わずファンも多く、常磐木は、一部の界隈では紅羽の毬愛・ラーゲルレーヴのどちらが優れているかで不毛な争いが繰り広げられていると発言している。 好奇心が旺盛で、花籠女学園アイスホッケー部との練習試合では、常磐木の監督としての能力に興味を抱き、勝利してすぐに再戦を望んでいる。一方、イーラの突然の移籍にショックを受けるといった繊細な面も持ち合わせており、全国高校女子アイスホッケー夏季大会の準決勝における七咎学園女子アイスホッケー部との対戦では、その動揺から普段の力を発揮できずに敗れることもあった。 しかし最終的にはそのショックも乗り越えており、改めて行われた七咎学園との練習試合では、イーラと対戦できることを喜ぶ姿が見られた。 好きな食べ物はシナモンロールで、ほぼ毎日のように食べている。また、父親の影響で、フィンランドなどで流行しているお菓子であるサルミアッキも好んでいる。

神音 ミサ (かのん みさ)

テンプル騎士女学園アイスホッケー部のキャプテンを務めている3年生の少女。ポジションはライトウィングで、チームメイトや監督であるリーリヤ・ラヴロワからは「カノン」と呼ばれている。ゴールの僅かな隙間から高速のシュートを正確に叩き込むことから「スナイパー」の異名を持っており、常磐木松明の見立てでは、時速135~140キロのシュートを放つとされている。 自他ともに認める厳しい性格で、情報収集のためにテンプル騎士女学園に潜入して来た常磐木が毬愛・ラーゲルレーヴに迫っていると勘違いした際にはシュートをぶつけ、相手が花籠女学園アイスホッケー部の監督と知ってからは花籠にこのことを抗議すべきだと主張した。また、トラブルメーカーであるイリーナ・トルスタヤ(イーラ)に対してもいい印象を抱いておらず、彼女がミーティングに参加しなかった際にも気に留めていなかった。 しかし、彼女が七咎学園女子アイスホッケー部に移籍したことで動揺するなど、どうでもいい存在とは思っていなかった様子も見せている。

霧江 いのり (きりえ いのり)

テンプル騎士女学園アイスホッケー部に所属している2年生の少女で、ポジションはゴールキーパー。中性的な凛々しい容貌と、185cmもの高身長を誇ることから女性ファンが非常に多く、チームメイトや監督であるリーリヤ・ラヴロワ(リーリャ)からは「キリエ」、ファンからは「キリエ様」と呼ばれている。その体格とシュートに対する反射能力、そして技術力から、現時点の高校女子アイスホッケー界において最強のゴールキーパーと認められている。 一方、仏頂面ながら常識的な性格で、気配りを怠らないことから毬愛・ラーゲルレーヴと並ぶムードメーカーとしても知られている。また、人見知りが激しいリーリャは、人と話す際には霧江いのりの背後に隠れることも多く、その際は困った顔を見せつつも止められずにいる。

栄 ひかる (さかえ ひかる)

テンプル騎士女学園アイスホッケー部に所属している3年生の少女で、チームメイトからは「ヒッキー」と呼ばれている。ポジションはレフトウィングだが、かつてはディフェンダー経験もあり、センターフォワードの毬愛・ラーゲルレーヴの指示で素早く自軍を固め、相手の攻撃を阻止する一役を担う。また、その際に相手からパックを奪うことでカウンターのチャンスを生み出す戦法も得意としている。

イリーナ・トルスタヤ (いりーなとるすたや)

テンプル騎士女学園アイスホッケー部に所属していた1年生の少女で、チームメイトやファンなどからは「イーラ」と呼ばれている。ロシアからの留学生で、見た目は小柄な女の子だが、常磐木松明が我を忘れて見惚れるほど、運動女子として理想的な体型をしている。相手を見下したり、スティックを相手の脚に引っ掛けて転倒させるなどのラフプレーを好むなど露悪的な言動が目立つ反面、毬愛・ラーゲルレーヴ(マリア)やリーリヤ・ラヴロワ(リーリャ)、桜花咲耶に対しては子供のように懐くなど、二面性のある性格をしている。 リーリャによれば、彼女のこの性格は、過去の経験から人を簡単には信じられなくなったことに起因しているという。こういった性格からマリア以外のテンプル騎士女学園のチームメイトとの折り合いが悪く、そのマリアも常に大勢の仲間たちに囲まれていることからイリーナ・トルスタヤ自身とは住む世界が違うと認識したため、執行青馬の誘いに乗ってテンプル騎士女学園から七咎学園女子アイスホッケー部へ移籍してしまう。 個性派揃いの七咎学園の中においても、連携を無視するなどひときわ異彩を放っており、執行すらその奔放さに手を焼くことがあった。 しかし、全国高校女子アイスホッケー夏季大会の決勝にあたる花籠女学園アイスホッケー部との試合では、ラフプレーや人を見下す性格は自分を覆い隠すための仮面に過ぎないことを桜花に指摘され、自分に素直になり、全力を出して目の前の試合に臨むよう助言される。 これに苛立ちながらも薔薇紅羽と全力でぶつかることで、選手として大きく成長した。なお、テンプル騎士女学園時代のポジションはレフトウィングだったが、七咎学園時代はセンターフォワードを務めている。

荒神 雷 (あらがみ あずま)

カンナカムイ高校男子アイスホッケー部およびカンナカムイ高校女子アイスホッケー部の監督を務めている男性。細かなことにこだわらない豪快な性格をしており、カンナカムイ女子アイスホッケー部のロッカールームに潜入した常磐木松明に対しても何も怪しむことなく自己紹介をし合っている。選手1人1人の様子にしっかりと目を凝らし、的確な助言および指示を与えることから、薔薇紅羽からは常磐木に似た雰囲気を感じると言われている。 また、料理が得意で、栄養のバランスを考えた自作の弁当を用意することもある。一方で勝負はきれいごとばかりではないと言う現実主義の一面を持ち、北十字祭ではトリックスター的な存在だったイリーナ・トルスタヤ(イーラ)がテンプル騎士女学園アイスホッケー部から七咎学園女子アイスホッケー部に移籍した影響による、テンプル騎士女学園の弱体化を懸念していた。 かつては名の知れた選手で、熊代火爪や熊代爪牙と家族ぐるみの付き合いをしていたが、家庭の事情によって引退を余儀なくされてしまい、それを惜しんだ火爪に対して荒神雷自身が試合で使用していたスティックを譲っている。

熊代 火爪 (くましろ かづめ)

カンナカムイ高校女子アイスホッケー部のキャプテンを務めている3年生の少女で、熊代爪牙の姉。ポジションはセンターフォワードで、身なりは小さくコロポックルかと言われるほどだが、男子を交えた毎日の猛練習で培った筋肉は、常磐木松明を虜にするほど整っている。普段は薔薇紅羽同様、大抵のことには動じない性格をしており、その気質は部員たちの信頼を集める一因となっている。 しかし内心には監督である荒神雷に対しての恩や恋心がない交ぜとなった感情を強く秘めており、情は判断を鈍らせ敗北の原因になると言う紅羽に対して、情こそが勝利の決め手となると強く主張している。そのため紅羽からは苦手意識を抱かれている。なお、小学生の頃一度だけ紅羽と対戦したことがあるが、他のメンバーが彼女を華麗な天才と称していたのに対し、火爪は孤独を抱えた危うい印象をこの時から既に察知していた。

熊代 爪牙 (くましろ そうが)

カンナカムイ高校男子アイスホッケー部に所属している2年生の少年。熊代火爪の弟で、カンナカムイ高校の応援団長も務めている。がっちりとした体格で、年頃の男子らしい粗暴さを持っており、運動音痴な常磐木松明を部員とともにからかったり、それを見咎めて対戦を申し出てきた薔薇咲夏にラフプレーを仕掛けるなど、問題行動が目立つ。 しかし一方で素直な面を併せ持っており、華麗なテクニックで熊代爪牙自身を下した咲夏に対して敬意を表し、自分の師匠になってくれと頼み込んでいる。また、隠しごとができないタイプで、咲夏との師弟関係は姉である火爪や監督の荒神雷に内緒にしていたつもりだったが、すぐに見抜かれている。しかし、向上心ゆえの行動ということで火爪はそれを咎めることなく、荒神は咲夏に師事することで爪牙が成長したことを喜んでいた。

秋鮭 勇魚 (あきさけ いさな)

カンナカムイ高校女子アイスホッケー部に所属している3年生の少女で、ポジションはライトウィング。カンナカムイ高校の中では比較的常識人で、個性の強い熊代火爪や大姥百合香に対して突っ込みを入れることが多い。試合においては仲間との連携を重視しており、北十字祭におけるテンプル騎士女学園アイスホッケー部との試合では、パックを奪取し自軍のゴール目がけて突き進む毬愛・ラーゲルレーヴ(マリア)に対して左右から挟み撃ちを行い、そのカットによってマリアが流したパックを火爪が拾うよう仕向けるといった、巧みな戦術を見せている。

大姥 百合香 (おおうば ゆりか)

カンナカムイ高校女子アイスホッケー部に所属している1年生の少女で、ポジションはライトディフェンス。実家は「白百合堂」という老舗の和菓子屋で、その関係からお菓子をよく食べるため太り気味だが、その外見からは想像できない俊敏性を誇る。また、大会前などはお菓子を食べることを禁じられているため、お菓子の広告などを凝視することで食べたつもりになる「エアおやつ」を駆使することで空腹をごまかしている。 花籠女学園アイスホッケー部の百合原白とは従姉妹同士で仲が良いが、アイスホッケーの腕もほぼ互角であるうえにシロはフォワードで大姥百合香はディフェンダーであるため、試合においてはたびたび激しくぶつかり合っている。

桜花 咲耶 (おうか さくや)

かつてテンプル騎士女学園アイスホッケー部に所属していた選手で、女子アイスホッケー界のスタープレーヤーとして広くその名を知られていた女性。常磐木松明の初恋相手で、薔薇紅羽や薔薇咲夏とも交流があった。極めて優れた技術を持ちながら、それをまったく鼻にかけず、面倒見もいいため多くの人々に慕われていた。しかし、ある練習試合においてリーリヤ・ラヴロワ(リーリャ)と対戦し、彼女との接触における事故で選手生命に関わる怪我を負ってしまい、そのまま引退、失踪する。 この出来事はリーリャのみならず、薔薇兄妹にも精神的な傷を残しており、常磐木に至っては、ショックのあまり桜花咲耶に関する記憶そのものを封印してしまう。その後の行方はしばらくの間不明だったが、現役時代の友人だった執行青馬が監督の七咎学園女子アイスホッケー部でコーチを務めていたことが判明する。 リーリャは怪我を負わせた自分を恨んでいるのではと震えあがり、紅羽も少なからずショックを受けるが、桜花のことを思い出した常磐木は、七咎学園の選手たちの、プレーに対する意識が徐々に改善されていることに気づいており、選手時代の優しい桜花のままだと信じていた。 その確信は的を射ており、彼女のアドバイスによって、イリーナ・トルスタヤをはじめとする七咎学園の選手たちは心身ともに一回り成長した。また、怪我を負わせてしまったリーリャに対してもわだかまりはまったく抱いておらず、執行の図太さを見習うことを冗談交じりに勧めている。

執行 青馬 (しぎょう あおば)

七咎学園女子アイスホッケー部の監督を務めている人物。見た目はゴシックロリータ・ファッションに身を包んだ小柄な女性だが、実際は男性で、容姿端麗であるため常磐木松明など一部の人間以外はそのことにまったく気付かなかった。サディズムとマゾヒズムを内面に併せ持つ常磐木以上の変態。薔薇紅羽および薔薇咲夏とは彼らが幼い頃から因縁があり、心底軽蔑されているが、執行青馬本人は紅羽に惚れこんでおり、彼女の活躍を常に期待している。 紅羽に付きまとっている常磐木を「豚」と呼んで罵っているが、常磐木からは紅羽の魅力を理解しているという理由でむしろ好感を抱かれている。紅羽のことから離れた際には、女装を除けば意外と常識的な一面も見せており、イリーナ・トルスタヤをはじめとする七咎学園女子アイスホッケー部の個性的な選手たちに翻弄されつつもしっかりと面倒を見ている。 かつては優れたアイスホッケー選手で、コーチを務めている桜花咲耶は現役時代からの友人。桜花をコーチとして七咎学園に迎えたのも彼女の頼みを受けたためである。

蠅王 四羽 (はいおう よつは)

七咎学園女子アイスホッケー部に所属している2年生の少女で、ポジションはライトディフェンス。明るい雰囲気を持っており、ミーティングでは他のディフェンダーたちと同じ下着を着ていることを明かしている。全国高校女子アイスホッケー夏季大会の決勝戦で花籠女学園アイスホッケー部と対戦した際は、梅ヶ枝風花にあえてパックを取らせつつイリーナ・トルスタヤとともに奇襲を仕掛けたが、あえなく失敗している。

集団・組織

花籠女学園アイスホッケー部 (はなかごじょがくえんあいすほっけーぶ)

常磐木松明が監督を務めている、私立花籠女学園高等部のアイスホッケー部。現在の女子アイスホッケー界において一、二を争う人気を誇る薔薇紅羽がキャプテンを務めていることから、男女問わず大きな注目を集めており、梅ヶ枝風花や宮城野小萩など、紅羽に憧れてこの部活に入部したメンバーも多い。以前は、前監督の轟猛彦の誤った指導で選手が上手く育たず、紅羽のワンマンチームと揶揄されることもあった。 しかし、新たに就任した常磐木や、紅羽の兄である薔薇咲夏による的確な指導が功を奏し、選手層に厚みがあるチームへと生まれ変わった。前年度の全国高校女子アイスホッケー夏季大会では3位に甘んじていたが、今年度は決勝戦で七咎学園女子アイスホッケー部を破り、見事に優勝を飾っている。

鳥ノ山高校女子アイスホッケー部 (とりのやまこうこうじょしあいすほっけーぶ)

鷲教助が監督を務めている、道立鳥ノ山高校の女子アイスホッケー部。キャプテンである雀田米のもと、日々厳しい練習が課せられており、中でもライトウィングの隼翔子はフルタイムを全力で戦えるだけの体力を誇っている。しかし、花籠女学園アイスホッケー部との練習試合においては、雀田以外のメンバーが薔薇紅羽以外のメンバーを侮っていたため、終盤における梅ヶ枝風花の活躍に翻弄され、敗北を喫している。

テンプル騎士女学園アイスホッケー部 (てんぷるきしじょがくえんあいすほっけーぶ)

リーリヤ・ラヴロワ(リーリャ)が監督を務めている、私立テンプル騎士女学園のアイスホッケー部。昨年の全国高校女子アイスホッケー夏季大会優勝校であることに加え、薔薇紅羽と人気を二分するスタープレーヤーである毬愛・ラーゲルレーヴ(マリア)が所属しているため、花籠女学園アイスホッケー部をも上回る人気を誇っている。 昨年優勝校だけあってチームメンバーの実力、結束ともに申し分なく、優れた記憶力を誇るリーリャの采配もあって、今年度においても優勝の有力候補と目されている。その反面、テンプル騎士女学園がミッション系の学校ということもあり、荒神雷いわく「良い子」ばかりが揃っているため、天邪鬼気質を持つイリーナ・トルスタヤ(イーラ)などを上手く扱うことができなかったり、精神的な揺さぶりに乗せられやすいという短所がある。 事実、今年度の全国高校女子アイスホッケー夏季大会における準決勝で七咎学園女子アイスホッケー部と対戦した時は、イーラと桜花咲耶の存在によって、士気がガタ落ちしてしまい、4-0の大差で敗れ去っている。

カンナカムイ高校女子アイスホッケー部 (かんなかむいこうこうじょしあいすほっけーぶ)

荒神雷が監督を務めている、私立カンナカムイ高校の女子アイスホッケー部。カンナカムイ高校はもともとは男子校で、共学となった現在も男子が圧倒的に多いため、監督が同じであることや、練習場の確保などの関係でカンナカムイ高校男子アイスホッケー部と合同練習をすることが多い。日頃から男子と混ざって練習しているため、体格のいい相手などに対しても臆することなく挑む度胸が育っており、その力強さで相手チームを圧倒する戦法を得意としている。 また、キャプテンの熊代火爪は流れたパックの位置を本能的に察知する術を持っており、相手の思わぬところから奇襲を仕掛けるなどの戦法も得意としている。北十字祭ではこれらの特徴を活かしてテンプル騎士女学園アイスホッケー部を1-0で下しており、全国高校女子アイスホッケー夏季大会で花籠女子学園アイスホッケー部と対戦した時も、その気迫であと一歩のところまで追いつめた。

カンナカムイ高校男子アイスホッケー部 (かんなかむいこうこうだんしあいすほっけーぶ)

荒神雷が監督を務めている、私立カンナカムイ高校の男子アイスホッケー部。カンナカムイ高校はもともとは男子校で、共学となった現在も男子が圧倒的に多いため、監督が同じであることや、練習場の確保などの関係でカンナカムイ高校女子アイスホッケー部と合同練習をすることが多い。しかし、部長である熊代爪牙が薔薇咲夏の教えを受ける見返りとして花籠女子学園アイスホッケー部の練習に付き合うことになり、結果的に花籠の成長を促している。 しかしこれによってカンナカムイ高校男子アイスホッケー部も飛躍的に成長しているため、花籠女学園との合同練習に気づいている荒神や熊代火爪からは黙認されている。

七咎学園女子アイスホッケー部 (ななとががくえんあいすほっけーぶ)

執行青馬が監督を務めている、私立七咎学園の女子アイスホッケー部。七咎学園は創立3年目と歴史の浅い高校だが、昨年の全国高校女子アイスホッケー夏季大会ではベスト4に入るなど、確かな実力を誇っている。メンバーは、監督である執行、コーチである桜花咲耶、そして、選手であるイリーナ・トルスタヤたちのすべてが、過去に挫折を味わっているという共通点を持っている。 そのため、部員たちはチームメイトに対する信頼が希薄で、チームワークを無視してバラバラに動くことをも少なくない。そういった問題を抱えているにもかかわらず大会で好成績を収めているのは、個々の能力が突出しているという点が大きいが、実際はそれだけではなく、桜花のアドバイスで選手たちも少しずつ前向きになってきており、試合への取り組み方が改善されていることも起因している。

領民 (りょうみん)

薔薇紅羽および薔薇咲夏のファンたちの総称。名称の由来は常磐木松明が配信しているネット動画番組「領民の集い」から取られており、ほとんどの領民がこの番組を視聴している。紅羽を「姫君」、咲夏を「若様」と呼び慕っており、兄妹の挙動を見るたびに大騒ぎするため、良くも悪くも非常に目立つ。また、女装をして私立花籠女学園高等部に堂々と潜入するなど奇行も目立つが、監督である常磐木が公認しているため事実上お咎めなしとされている。 なお、領民のほとんどは常磐木に対しても崇拝の念を抱いており、「常磐木先生」と呼ぶことが多い。

場所

北海道立森林高校 (ほっかいどうりつしんりんこうこう)

北海道にある道立の男子高校で、常磐木松明、白樺武郎などが通っている。私立花籠女学園高等部のすぐ近くにあるため、自然と話題になることも多く、薔薇紅羽のファンも多い。学校の教育レベルは明らかになっていないが、常磐木は定期試験で毎回満点を取っており、代わりに運動ができないうえに女子のスポーツ選手に対する奇行を隠そうとしないため、色々な意味で注目されている。 のちに薔薇咲夏が転入しており、屋上は常磐木、白樺、咲夏の休憩場所として頻繁に利用されている。

私立花籠女学園高等部 (しりつはなかごじょがくえんこうとうぶ)

北海道にある私立女子学校の高等部。有数のお嬢様学校として知られており、薔薇紅羽や八峯椿、千歳桃といった名家の息女たちが通っている。お嬢様学校であるため他校からは侮られがちだが、スポーツに関してもしっかりと力を入れており、特に花籠女学園アイスホッケー部は、国内有数のスタープレーヤーである紅羽がキャプテンを務めているため、学内はもちろん、北海道立森林高校のような周辺の学校などにも注目されている。 それだけに学校の警備は厳しく、常磐木松明が監督に就任する以前は頻繁に潜入しては警備員につまみ出されていた。

イベント・出来事

全国高校女子アイスホッケー夏季大会 (ぜんこうこうこうじょしあいすほっけーかきたいかい)

毎年8月1日から8月5日の間に北海道で開催されているアイスホッケーの大会。全国各地から集めた18校によってトーナメント形式で争われる。出場校は北海道が中心となっているが、関東や九州などからも選抜されている。出場校の中で強豪と目されているのは、昨年の大会で優勝を果たしたテンプル騎士女学園アイスホッケー部と、決勝を争ったカンナカムイ高校女子アイスホッケー部。 また、古株と言われる花籠女学園アイスホッケー部と、創立3年目にして3位に輝いた七咎学園女子アイスホッケー部も注目株とされている。

北十字祭 (きたじゅうじさい)

北海道の強豪と目されているカンナカムイ高校女子アイスホッケー部とテンプル騎士女学園アイスホッケー部による交流戦。両校の関係者や招待を受けた学校の生徒などが観戦することができる。全国高校女子アイスホッケー夏季大会の優勝候補といえる2校の対決となるため注目度は高く、常磐木松明が是非とも観戦するべきだと花籠女学園アイスホッケー部のメンバーに勧めているほど。

その他キーワード

領民の集い (りょうみんのつどい)

動画配信サイト「Bstream(ビーストリーム)」で、常磐木松明が薔薇紅羽および薔薇咲夏のファンに向けて配信しているラジオ番組。毎週土曜の21時から、番組内容に合わせて2~3時間ほど放送されている。番組内容は、常磐木自らが激写したとされる紅羽の写真を紹介しつつ、彼女に対する「萌え」を熱く語る「今週の姫君」、1週間の咲夏の変わった行動などを届ける「今週の若様」、放送中、番組用掲示板に書き込まれたマニアックな質問や、薔薇兄妹ファンによる萌えトークなどが展開される「おしゃべりコーナー」、紅羽の参加する試合などを告知する「お知らせ」などが存在する。 主な視聴者層は薔薇兄妹の本拠地の北海道民だが、アイスホッケーに興味を抱いている人を中心に本州、九州、沖縄。 果ては海外にもリスナーがいるとされており、現在はチャンネル登録者数が1万人を超えている。なお、この番組の視聴者や薔薇兄妹のファンたちは、この番組のタイトルから「領民」を自称している。

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