かぶき伊左

かぶき伊左

幕末を舞台に、若き歌舞伎役者たちの奮闘を描く。架空のストーリーだが、主人公は五代目菊五郎、そのライバルは九代目團十郎といった具合に、主要人物は実在した歌舞伎役者がモデルとなっている。

正式名称
かぶき伊左
ふりがな
かぶきいざ
作者
ジャンル
歌舞伎・能・狂言
 
幕末
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概要・あらすじ

時は幕末。若くして太夫元となった市村伊左衛門。ある日、火事場見物に出かけた先で男装の美女おつみと出会う。人気女形で彼の親友でもある澤村矢之助にどうしても会いたいと訴えるおつみに、市村伊左衛門は興味を持つ。その頃、彼が太夫元を務める市村座では、顔見世興行の準備が進んでいた。

今回の顔見世興行は、市村伊左衛門にとっては一世一代の勝負の舞台。だがその裏で、一座の乗っ取りを企む金主、河原崎権左衛門が、舞台をつぶそうと策謀を巡らせていた。

登場人物・キャラクター

市村 伊左衛門 (いちむら いざえもん)

19歳。江戸で人気の歌舞伎役者で、市村座の太夫元(芝居小屋の主)を務める。幼名は花太郎。屋号は立花屋。借金のかたに大坂に行った父親の代わりに、13歳で市村座を引き継いだ。芸のためなら火事場だろうと駆けつける、根っからの芝居馬鹿。金主の河原崎権左衛門から一座を取り戻し、自分が心から面白いと思える芝居をやりたいと考えている。 幼い頃、芝居を教えてくれた八代目市川団十郎を慕ってる。下戸で酒が苦手。五代目菊五郎がモデル。

澤村 矢之助 (さわむら やのすけ)

18歳。幼名は遊次郎。屋号は紀ノ国屋。市村伊左衛門の親友で、絶世の美貌を持つ女形。市村伊左衛門が火事場で出会った男装の美女おつみの双子の兄。「双子は心中者の生まれ変わり」と忌み嫌われており、そのことでひどい差別を受けて育った。人気役者となった今も、かつて自分を蔑んだ者に対する憎しみは消えていない。 唯一、心を開くのは幼い頃からの友人である市村伊左衛門のみで、彼のためなら自分の手を汚すこともいとわない。幼い頃に市村伊左衛門のために八代目市川団十郎を毒殺しようとした。三代目田之助がモデル。

河原崎 権四郎 (かわらざき ごんしろう)

25歳。屋号は河崎屋。市村伊左衛門の好敵手で、質実剛健の演技で客を魅了する。七代目市川団十郎の息子で、八代目市川団十郎の弟。幼少時に河原崎権左衛門のところへ養子に出された。名に頼らずに芸だけで勝負できる役者を志しており、八代目が死んだ後も、団十郎襲名をかたくなに拒む。 曲がったことが嫌いで、市村座を自分のものにしようと企む義父に逆らい、陰ながら市村伊左衛門を助けようとする。己に役者としての華がないことに気づいており、器量も華やかさもある市村伊左衛門に複雑な思いを抱いている。九代目團十郎がモデル。

市川 団十郎 (いちかわ だんじゅうろう)

七代目市川団十郎の息子で、河原崎権四郎の兄。父の後を継いで八代目市川団十郎を襲名した。幼かった市村伊左衛門に芸の手ほどきをした。江戸一番と絶賛された人気役者だったが、自ら命を絶った。享年32。

おつみ

18歳。市村伊左衛門が火事場で出会った男装の美女。火事で焼け出されたところを、市村伊左衛門の幼なじみである菓子屋の姉弟に拾われた。市村伊左衛門の親友、澤村矢之助の妹で、兄に会うことを幼い頃からずっと夢見てきた。芸者である母親からは厄介者扱いされて育った。母が死んだあと、油屋の主人に引き取られ、そこで幼い頃に別れた兄が役者になったことを知る。 澤村矢之助とは不思議な絆で結ばれており、どちらかが怪我をすると、もう片方にも同じ傷ができる。

河原崎 権左衛門 (かわらざき ごんざえもん)

50歳。市村伊左衛門が太夫元を務める市村座の金主(芝居小屋に金を提供する後援者)。もとは河原崎座の太夫元で、借金に困っていた市村座に目をつけ、金主となった。火事でつぶれた河原崎座を復活させるため、市村座の乗っ取りを企み、市村伊左衛門を罠にかけようとする。 養子である河原崎権四郎に九代目市川団十郎襲名を迫るが拒否される。

河竹 彦蔵 (かわたけ ひこぞう)

32歳。芝居の台本を書く狂言作家。市村伊左衛門のことを家族のように思っている。市村伊左衛門が出会った男装の女性(おつみ)の話に着想を得て、名作『青砥稿花紅彩画』(『白波五人男』)を書き上げる。

中村 茨翫 (なかむら しかん)

31歳。市村伊左衛門が太夫元を務める市村座の座頭。市村伊左衛門から兄のように慕われている。踊りが得意だが、台詞を覚えるのは苦手。

岩井 粂路 (いわい くめじ)

33歳。市村伊左衛門が太夫元を務める市村座の立女形(一座で最高位の女形)。市村伊左衛門の親友で、同じ女形である澤村矢之助のことを嫌っている。

おもと

21歳。市村伊左衛門の幼なじみ。弟の榎とふたりで菓子屋を営んでいる。大の芝居好きで、ひいきの役者は河原崎権四郎。

(えのき)

20歳。市村伊左衛門の幼なじみ。姉のおもととふたりで菓子屋を営んでいる。市村伊左衛門にとっては、芝居町外にいる唯一の友達で、彼を幼名の花太郎で呼ぶ数少ない人物。姉と違い、芝居には全く興味がない。

守田 勘乎 (もりた かんや)

守田座の太夫元。先代の父が亡くなり、若くして十二代目守田勘乎を襲名した。市村伊左衛門の考えに共感し、共に芝居の未来を築いていくことを心に誓う。

観照院 (かんしょういん)

市村伊左衛門の親友・澤村矢之助をひいきにしている僧侶。幼い澤村矢之助に頼まれ、毒殺用の水銀を渡した。

場所

市村座 (いちむらざ)

『かぶき伊左』に登場する芝居小屋。市村伊左衛門が太夫元を務める。先代が借金のかたで大阪へ行くことになったため、まだ幼かった市村伊左衛門が後を引き継いだ。その際に河原崎権左衛門が金主を申し出た。以来、その発言権は太夫元である市村伊左衛門よりも強くなっている。

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