浦野 善治

富田誠のスマートフォンを偶然拾った男性。ガラガラのハスキーボイスの持ち主で、左目の上あたりの額に傷跡がある。誠がスマートフォンの待ち受け画面にしていた稲葉麻美を気に入り、麻美を自分のものにしようと画策。狡猾なクラッカーとしての能力を駆使し、SNS監視ソフトを使ってスマートフォンからあらゆる情報を抜き出し、誠や麻美の友人になりすまして、慎重かつ大胆に麻美に接近を試みる。誠のスマートフォンがランサムウェアの被害に遭った時には、「東西セキュリティ勤務の戸部真彦の後輩」を装い、サポートする形で誠や麻美の信用を勝ち取った。その後、麻美のSNSが乗っ取り被害に遭い、助けを求められた際には、麻美の自宅まで出向き、その信頼をさらに強固なものにした。実は丹沢山連続殺人事件の犯人でもある。インターネットのダークウェブ上でクラッカーのMのアドバイスを仰ぎ、遺体を完璧に埋めたつもりだった。しかし詰めが甘く、結局遺体が発見され、事件が表ざたになってしまう。現在は、これまで浦野善治自身の手で殺害した女性の部屋を自分の部屋のように使用しており、たくさんの鍵を持ち歩いている。また、殺害した女性たちの髪を使って黒髪のカツラを作り、日常的に身に着け、そのカツラを着用することで女性の愛情に包まれたような安心感を得ている。幼少期、母親からネグレクトに遭っていた影響で、母親と同様に黒髪でストレートのロングヘアに固執している。また、ターゲットにした女性をママと呼ぶなど、母親からの愛情に強い執着心を持っている。物心ついた時から父親は他界したと聞かされており、その後母親が自殺したことで天涯孤独の身となった。それからはパソコンが唯一の拠り所となり、次第にネット犯罪者が集う闇の世界へと足を踏み入れるようになる。偽造免許証や偽造パスポート、児童ポルノなどで得た情報に刺激を受け、のめり込んでいく。日常的に「波多野敦史」名義の偽造免許証を使用している。その後、偶然拾ったスマートフォンを利用し、ネットを使った詐欺行為を働き始めた。自分さえ特定されなければどんな違法行為も怖くないという考えを持ち、捕まらないということだけを唯一絶対的な価値観として行動している。以前デリヘルで知り合った宮本まゆが最初に殺害した女性で、まゆに会う時は「山田太郎」という偽名を使っていた。彼女の中に母親像を見出して甘えたものの、所持金が底をついたことで愛想を尽かされ、罵倒されたことが引き金となり、1か月にわたってまゆを監禁。のちに殺害したことで、死ぬほどの恐怖を与えるとつねに自分のことだけを考えてくれることを知った。また、愛する女性の苦しむ様を見ていたいという欲求から、殺害する快感は性的な快楽をはるかに凌ぐものとなり、人を愛することと殺すことは自分の中で同義語になった。「浦野善治」を名乗って日常生活を送っていたが、それまで使っていたいくつもの名前はすべて偽名であり、本名が「浦井光治」であることが、逮捕されたのちに明らかになった。稀代の連続殺人鬼として逮捕されたが、宮本まゆ、池上聡子、笹塚チヒロ、猪俣明日香、西野真奈美、井畑麻未子の六人の殺害は認めたものの、長谷川祥子に関してだけは黙秘を続けている。しかしその後、桐野良一が事情を聞きに来たことで、祥子を殺害していないことを自供した。良一がセキュリティ会社に勤務していた時に手掛けたアンチウイルスソフトの関係で、良一の存在は以前から知っており、良一が自分と似たところがあると感じている。そのため、良一に対して過剰なほどの信頼を寄せていて、仲間意識を持っている。のちに、警察側が事件のさらなる被害拡大を恐れ、善治に捜査の協力を要請。友情の証として良一の秘密を自分だけに明かすことを求め、捜査への協力を承諾した。どんな相手に対しても言葉巧みに接近することができるが、実は人とコミュニケーションを取るのは苦手。しかし何か目的があると、その役割を演じることができるため、その役になり切ることでコミュニケーションを取っている。自分の感情をうまく表現することができず、好きと嫌いの感情の境界線が曖昧となり、両極端な答えに偏っている。