瀬戸内少年野球団

瀬戸内少年野球団

瀬戸内海に浮かぶ淡路島を舞台に、敗戦のショックから立ち直ろうとする島民の姿を生き生きと描くヒューマンストーリー。美しい大自然と、そこで暮らす島民や子供たちの生きる姿は健やかでバイタリティがあり、全体的に明るい世界観となっている。阿久悠の自伝的小説「瀬戸内少年野球団」のコミカライズ作品で、原作をベースに、作画担当の宇佐悠一郎によって独自の解釈が加えられている作品。

正式名称
瀬戸内少年野球団
ふりがな
せとうちしょうねんやきゅうだん
原作者
阿久 悠
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

昭和20年8月15日、日本は敗戦を迎えた。淡路島の国民学校に通う足柄竜太は、やりきれない思いで玉音放送に耳を傾け、進駐してきた米軍人に敵愾心を燃やす。悪ガキで有名な正木三郎は、敗戦という現実もどこふく風で、金儲けに成功した未来を夢想する。また、クラスのアイドル波多野武女は、元軍人将校の父親を持つ手前、世間の冷たい視線を浴びながらもひたむきに生きている。

そして、網元の家に嫁いだ国民学校教師の中井駒子は、出征した夫の生存を固く信じてその帰りを心待ちにしていた。敗戦という現実、暗くよどんだ時代状況、価値観の急激な変化、社会的な混乱と貧しい生活。そんな時代の荒波に揉まれながら、歯を食いしばって生きる竜太たちの前に、足を引きずった謎の復員兵が現れた。

彼は名乗らず、ただ駒子先生にこれを渡して欲しいと頼み込む。それは、「甲子園」と書き込まれた野球ボールだった。

登場人物・キャラクター

足柄 竜太 (あしがら りゅうた)

淡路島の国民学校初等科に通う3年生。幼い頃に父母を亡くし、祖父母と3人で暮らしている。クラスでは級長を任せられるほどの優等生。海軍軍師になるのが夢だったが、戦争に負けてその願いもかなわず、ショックから立ち直れない。そして日本が負けてアメリカに占領されている現実が悔しくて仕方ない。級友の皆がアメリカ軍にチョコレートをもらって喜ぶなか、1人だけ反発して日本人の気骨を示す。 自分の悩みより、友達や先生の境遇、不幸に心を砕くなど、心優しい一面も持つ。

波多野 武女 (はたの むめ)

淡路島の国民学校初等科3年生。足柄竜太の同級生で、クラスのアイドル的存在。物静かで大人しく、清楚な美少女。海軍の退役軍人の父親を持つ。父親が戦犯の疑いをかけられたこともあり、世間から冷たい眼で見られている。それでも竜太たちの前では気丈に振る舞い、弱気なところを見せない。

正木 三郎 (まさき さぶろう)

淡路島の国民学校初等科3年生。足柄竜太の親友。アウトローに憧れ、将来はヤクザになると公言していることから、バラケツ(いわゆる愚連隊)と呼ばれている。皆が敗戦のショックで下を向くなか、1人気を吐いてポジティブに生きている。日本が負けてアメリカ型の民主主義社会になったことを肯定的にとらえ、竜太とたびたび衝突を起こすが、誰よりもお互いのことを心配しており、2人の絆は強い。 波多野武女に想いを寄せている。

中井 駒子 (なかい こまこ)

足柄竜太たちの担任の国民学校教師。網元の家に嫁いだ直後に夫が戦争にとられ、そのまま終戦を迎える。息子は死んだと思っている義理の父母と違い、夫の死を受け入れられず、その帰りを待っている。おしとやかで、芯の強い大和撫子。竜太たちの信頼も厚い。

中井 正夫 (なかい まさお)

網元である中井家の長男。中井駒子と結婚直後に出征し、戦死したものと思われている。高校時代は野球選手として活躍し、甲子園出場を果たしたという輝かしい経歴を持っている。端正な顔立ちからは、誠実そうな人柄が伺われる。妻の駒子に強く愛されている。

中井 鉄夫 (なかい てつお)

中井正夫の弟。兄嫁である中井駒子に想いを寄せている。中井家にやって来た時から駒子に好意を寄せており、兄が戦死したら結婚して欲しいとプロポーズする。無口でぶっきらぼうだが、駒子への想いを隠そうとしないほど純粋かつ真っすぐな性格で、駒子をたびたび困らせる。

トメ

村で床屋を営む戦争未亡人。噂好きで、村人に関する情報を集めてはあることないこと言いふらし、人の不幸話を肴に生きている。夫に未練を残す中井駒子の姿に苛立ちを覚え、義理の弟である中井鉄夫とくっつけようと、余計なおせっかいを焼いたりする。

足柄 忠勇 (あしがら)

足柄竜太の祖父で江坂村の駐在所の巡査を務める。無口で物静かな明治生まれのお爺さん。敗戦で困惑する孫を優しくさとす。息子夫婦を失った悲しみを心の中に隠して静かに暮らしている。感情を表に出さないが、山のように動じず、竜太や妻の足柄はるを支える一家の大黒柱。

足柄 はる (あしがら はる)

足柄竜太の祖母。物腰の柔らかい、やさしいおばあさん。父母を亡くした竜太をたくましく元気な少年に育て上げた。敗戦後も前を向いて懸命に生きようとするが、復員船が入港した知らせを受けるや衝動的に家を飛び出すなど、息子の戦死の事実をなかなか受け入れられずにいる。

ムメの父 (むめのちち)

波多野武女の父親。海軍の退役軍人。現役時代は重職をあずかっていたとされる。戦争犯罪の被告になることは免れたが、一時的にもその疑いが持たれたことで世間の偏見と風当りは強い。戦争で負った心の傷を消すことができず、誰とも交わることなく家の中でひっそりと暮らしている。

正木 二郎 (まさき じろう)

正木三郎の兄。戦地から復員せず消息を絶っていたが、ある日突然、三郎たちの前に現れる。戦後、何らかの商売に成功して成金になったと思われるが、どんな仕事をして成功を収めたのか不明で、島内でよからぬ噂を呼んでいる。

正木 葉子 (まさき ようこ)

正木三郎の姉。兄の正木二郎と共に、派手な姿で三郎たちの前に現れる。兄同様、何をしてお金持ちになったのか、一切謎に包まれている。自由奔放で破天荒な性格で村人たちを戸惑わせる。正木葉子たちに向ける村人たちの視線は厳しいが、三郎は盲目的に兄と姉を慕っている。

長谷川 照夫 (はせがわ てるお)

淡路島の国民学校初等科に通う、足柄竜太たちの同級生。相撲取りのように太った体格の持ち主。食べ物に目がなく、進駐軍が振る舞うキャンディーにだらしなくよだれを垂らす。パンパンガールや水商売の女性をからかい、手ひどくお仕置きを食らう。

クレジット

原作

阿久 悠

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