無敵の人

無敵の人

ネット麻雀・雀仙で無敵を誇る邑田瑞樹は、そのあまりの強さに、運営元の会社・ブイラインから、イカサマをしているのではと疑いをかけられる。疑いを晴らすため、ネットではなく現実世界で麻雀の実力者達に挑む事になった瑞樹の戦いを描く。「週刊少年マガジン」2016年第4・5合併号から2016年第28号、「マガジンポケット」2016年第29号から2016年第45号にかけて掲載された。

正式名称
無敵の人
ふりがな
むてきのひと
作者
ジャンル
麻雀
関連商品
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あらすじ

第1巻

「M」こと邑田瑞樹は、日本最大のオンライン麻雀ゲーム・雀仙で圧倒的に勝ち続け、「無敵の人」と呼ばれていた。瑞樹がイカサマをしているのではないかと疑った雀仙の運営元会社・ブイラインは、瑞樹の情報に賞金をかける。そんなある日、アルバイト先で瑞樹を偶然見かけた園川順平は、賞金目当てに瑞樹に接近する。だがそこで順平は、瑞樹がまったくイカサマをしていない事を知る。瑞樹は、交通事故により得た超人的記憶力をもとに、相手の癖を見抜いて勝ち続けていたのであった。だが瑞樹は、その超人的記憶力と引き換えに感情を失っていた。彼の境遇を知った順平は、賞金をあきらめて瑞樹の真の友達になる事を心に誓う。そして順平は、実力が本物である事を証明するために、ブイラインが用意した麻雀大会に出場するよう瑞樹を説得する。しかしその大会は、ブイラインによる罠だった。四人で行う麻雀で、瑞樹以外の三人は瑞樹を負かせようと結託しており、瑞樹は圧倒的不利な状況で大会に臨む事になる。

第2巻

邑田瑞樹は3対1という不利な状況にもかかわらず、見事に大会で優勝を果たす。しかし瑞樹があまりにも強すぎたため、大会のネット中継を見た人達は疑念をさらに強める事となった。園川順平は、次こそ瑞樹の実力を信じてもらうために、ブイラインから提案されたバトルを再び受けるよう瑞樹を説得。一方ブイラインは、瑞樹とのバトルを盛り上げるために、ネット麻雀で何度か瑞樹に勝ち越していた藤岡環を、瑞樹にぶつけようとする。藤岡は、八人でのトーナメント戦を提案。ブイラインはこれを受け入れ、トーナメントが開催される事となった。瑞樹が最初に当たる相手は、ネット麻雀・雀仙の最高位である「雀仙位」の初代の座についた男・GTB。彼との対戦で、瑞樹はさっそく苦戦を強いられる事になる。瑞樹はネット麻雀の観戦をする事で、超人的記憶力を使って多くのユーザーの癖を把握していたが、瑞樹が観戦を始めた頃には、GTBはネット麻雀からは姿を消していた。そのため瑞樹は、GTBの癖を知らなかったのだ。

第3巻

対局の中でGTBの癖を把握した邑田瑞樹は、トーナメント決勝進出を勝ち取る。そして別ブロックでは、藤岡環が圧倒的な実力で決勝進出を決めていた。脳科学者である藤岡は、相手に合わせた麻雀を打つため、瑞樹の癖を見抜く力が通用しない。一方で、相手の感情や心理を読み取って戦う藤岡にとっても、事故によって感情を失った瑞樹の考えは読めず、二人の対決は天敵同士の戦いでもあった。瑞樹の事を心配した園川順平は自ら藤岡に接触し、共に麻雀を打つ事で瑞樹に彼の癖を見つけさせようとするが、その意図はすぐに藤岡に見破られる。少ないデータしか得られなかった事に順平は落ち込むが、瑞樹はそのデータから藤岡のスキを見い出す。そして始まった決勝戦、藤岡は序盤を優位に進めていく。そんな中、瑞樹はほかの対戦者に、藤岡に感情を見破られないよう目を隠す事を勧める。藤岡はそれでもなんとか彼らの感情を読み取っていくが、瑞樹の本当の狙いは別のところにあった。最強の相手への、瑞樹の逆転劇が始まる。

第4巻

邑田瑞樹は自分に感情がない事を逆手に取り、藤岡環に癖を見抜いたと噓をついて心情をゆさぶり、勝利を収める事に成功する。そして真の強者である藤岡を破った瑞樹は、ついにイカサマ疑惑を晴らすのだった。しかしそんな瑞樹に対し、ブイラインはすぐに次の対戦相手を用意する。それはこれまでのようなアマチュアではなく、麻雀プロの鬼崎剣だった。鬼崎の実力の高さを知った園川順平は、瑞樹をさらに強くするために藤岡に協力を仰ぐ。藤岡は瑞樹への復讐心を秘めつつも、瑞樹に自分の研究して来た脳科学の理論を伝授。そして1か月にわたり藤岡と訓練した瑞樹は、鬼崎との対戦に臨む。対戦は鬼崎が優位なまま進んでいくが、そんな中、瑞樹は鬼崎が牌に見えない印をつけている事に気づく。瑞樹はその印を手でこすって消す事で鬼崎に勝利。この戦いの中で、瑞樹はかつて失った感情を取り戻していた。それを確認した藤岡は、瑞樹にリベンジするため大会に参加し、再び彼に戦いを挑む。瑞樹はようやく取り戻した感情を藤岡に読まれ、どんどん不利な状況に追い込まれていくが、勝利を確信する藤岡の前に、急きょ出場する事になった順平が立ちはだかる。

登場人物・キャラクター

邑田 瑞樹 (むらた みずき)

高校2年生の男子で、年齢は17歳。家族は姉が一人で、かつて10歳の頃に両親と共に交通事故に遭い、その時に両親を亡くした。瑞樹自身も脳に深刻なケガを負っており、額には大きな手術痕が三つ残っている。その傷を隠すため、額にはいつもゴーグルをかけている。オンライン麻雀ゲーム・雀仙を「M」というハンドルネームでプレイしている。 雀仙ではほぼ無敗を誇る事から「無敵の人」と呼ばれており、雀仙での最高位である「雀仙位」の10代目となった。事故の後遺症により超人的な記憶力を持つようになり、雀仙で観戦した数百万局の対戦記録をすべて暗記している。その記憶をもとに、各プレイヤーの癖を見抜き、それを麻雀に活かす事で勝ち続けている。なお、この超人的な記憶力の代わりに感情を失った。 そのせいで学校ではいじめに遭うようになり、以降は引きこもるようになった。しかし麻雀をやる事により、少しずつ感情を取り戻している。

園川 順平 (そのかわ じゅんぺい)

フリーターの男性で、年齢は19歳。雀仙の運営会社・ブイラインのビルの清掃と、ファミレスでのアルバイトを掛け持ちしている。幼い頃に両親が離婚し、妹と共に母子家庭で育った。母親が病弱だった事もあり、家はかなりの貧乏である。ブイラインが出した賞金目当てで邑田瑞樹に近づいたが、瑞樹の不幸な境遇を知って、彼と真の友達になろうと尽力し、やがて瑞樹からも認められ親友となる。 のちに瑞樹のサポートをするため、ブイラインに就職する。瑞樹と藤岡環がトレーニングを行った際、藤岡の研究成果を学習し、麻雀時に自分の気配を消す術を会得している。

藤岡 環 (ふじおか たまき)

オンライン麻雀ゲーム・雀仙のプレイヤーの男性。雀仙において、「M」こと邑田瑞樹に唯一勝ち越している人物。雀仙の最高位である「雀仙位」の4代目で、「トーカン」というハンドルネームでプレイしている。瑞樹が現れるまでは雀仙位昇格の最短記録保持者だった。大学の医学部の研究職に就いているエリートで、専門は脳科学。感情と行動の関係性を研究しており、その研究成果を麻雀の対戦で試していた。 相手の目や手の動きなどから感情を読み取る事が可能で、瑞樹と同様に麻雀ではほぼ無敵を誇る。運の要素が強い麻雀において無敵の存在となり、神の領域にたどり着きたいと考えている。同時に自らの研究を世間にアピールするため、瑞樹に勝つ事に執着している。

北条 (ほうじょう)

雀仙の運営会社・ブイラインの社長を務める男性。邑田瑞樹の出現により雀仙のプレイヤーが減少したために、瑞樹のイカサマを暴こうとする。しかし、実はビジネスライクな人間で、瑞樹の実力が本物かイカサマかどうかには興味はなく、いかに雀仙ユーザーを確保するかだけを考えている。17年前に交通事故に遭っており、その時に瑞樹と同じように超人的な記憶力を手にし、それと引き換えに感情をなくした。 雀仙を開発したのも、感情を取り戻すリハビリ道具としてである。

鬼崎 剣 (きざき けん)

プロ団体に所属する雀士の男性。プロデビュー2年目にして団体の主要タイトルをすべて獲得しており、プロ麻雀界において「無敵の人」と呼ばれる。幼い頃に両親が覚醒剤常習により逮捕され、施設で育った。その後、高校には進学せず、働く事もなく、やがて裏麻雀の世界に入っていった。そこからプロになるまでのあいだ、裏麻雀の打ち手として活躍。 4色型色覚という特殊体質の持ち主で、普通の人には見えない色を認識できる。その4色型色覚を利用して、自分にしか見えないインクを作り、それを牌に印として塗るイカサマで麻雀を勝ち続けていた。

GTB (じーてぃーびー)

オンライン麻雀ゲーム・雀仙のプレイヤーの男性。「GTB」というのは雀仙のハンドルネームで、本名は不明。雀仙の最高位である「雀仙位」の初代であり、現在もオンライン麻雀界で高い人気を誇る。文章や喋りも達者で、さまざまなイベントに参加している。雀仙位についたあとは、降格しないよう雀仙で打つ事を辞めていたが、実は密かにもう一つのアカウントを作っており、そのアカウントで再度雀仙位になる事を目指している。 かつて学生時代にいじめを受けており、麻雀で活躍する事によって他人から認めれられるようになったという過去を持つ。現在、雀仙内で話題の的となっている邑田瑞樹を妬み、瑞樹はイカサマ師であるとブログで痛烈に批判した。しかし瑞樹との対戦後は、彼に強さを認めてもらえた事で、批判をやめる。

その他キーワード

雀仙 (じゃんせん)

日本最大のオンライン麻雀ゲームで、300万人超のプレイヤーがいる。対戦成績によってランクづけがされるシステムとなっており、その最上位が「雀仙位」。雀仙位は、これまで邑田瑞樹を含め10人しかなった事のない非常に価値のある地位であり、プレイヤー達に雀仙位へのあこがれを抱かせる事で、ユーザー数を拡大している。

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