ブラックジャックによろしく

ブラックジャックによろしく

大学病院を舞台に、外科や内科、小児科や精神科など各科における医療現場の実態を一人の若き研修医の視点でリアルに描く。現在は単行本全3巻を電子化し、無料配布している。

正式名称
ブラックジャックによろしく
ふりがな
ぶらっくじゃっくによろしく
作者
ジャンル
医療
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概要・あらすじ

斉藤英二郎は永禄大学附属病院に勤務する研修医。各医局を巡りながら、斉藤が目にする医療の現場における過酷な現実。終末期医療と医療費問題、研修医のアルバイト問題、転院と医局の関係性、病院・医師ごとの技術レベルの違い、出産時の生命選択と障がい、がん治療と緩和ケア。数々の現代の難題を経て斉藤は一人前の医師へと成長する。

登場人物・キャラクター

斉藤 英二郎 (さいとう えいじろう)

永禄大学付属病院の研修医として第一外科から各科で3カ月間研修を行う。研修医としての月給は3万8千円と生活できないので、当直医としてバイトをしている。医療の現場における理不尽なことに本音でぶつかるため、周囲と揉める事が多い。しかし、その一途さが他の医師や、患者をも変えてゆく。 親は中学校の英語教師で次男なので、英二郎と名付けられた。普通だと言われることにコンプレックスを感じている。涙もろい。NICUの看護婦皆川と交際し、後に同棲。

出久根 邦弥 (でくね くにや)

英二郎と同じく研修医。事あるごとに合コンを企画したがる。正直医者になりたいと思ったことはなく、受験戦争のエスカレーターに乗って上を目指していたら、気がつくと医者になっていたという男。英二郎のように医療に対しての情熱を持てない男。

牛田 (うしだ)

誠同病院の勤務医。英二郎が当直アルバイトをした際、初回ということで一緒になった。後に英二郎が患者を他の病院に転院させたことから、永禄大学から回状が回り、学外での当直アルバイトを紹介することができなくなった。それでも相談事に乗るなど気のいい性格。

誠同病院の院長 (せいどうびょういんのいんちょう)

誠同病院の院長。当直アルバイトで重症患者を目の前に、手術できなかった英二郎に、医者の心得を告げる。後に田辺秀勝が障害のある我が子の手術を拒否したことから、英二郎が打開策を尋ねに来た際、親権停止行使の申し立てという悪知恵を教える。

春日部 一郎 (かすかべ いちろう)

永禄大学付属病院第一外科の第代主任教授。手術歴30年にして一度のミスもない。通称ゴッドハンドと呼ばれるが、実際は最初の皮膚切開のみで、後は別の医師が担当している。普段はウナギの解剖実験ばかりしている。

白鳥 貴久 (しらとり たかひさ)

永禄大学付属病院第一外科 英二郎と出久根の指導医。春日部教授の手術では、助手として皮膚切開の後を継いで続行する。手は遅いが丁寧な手術をする。医療の未来を変えるため、教授の座を目指している。助からない患者の延命治療が医療費を圧迫する社会悪だとし、治療を止めるよう英二郎を諭す。 しかしそれは、かつての自分が同じように治療の続行を訴え、後悔したからだった。

宮村 和男 (みやむら かずお)

第一内科に入院している患者。酒屋を営んでいる。38歳。心臓手術は心臓外科の領分であり内科と外科、互いのセクト主義の犠牲となる。永禄大学病院で手術が決まっていたが、英二郎の尽力で南林間病院に転院。北三郎の心臓手術を受ける。

藤井 義成 (ふじい よしなり)

永禄大学付属病院心臓外科の主任教授。金と女と権力が好き。派手なオープンカーを乗り回し、赤城カオリを度々デートに誘っている。

赤城 カオリ (あかぎ かおり)

手術部のベテラン看護婦。様々な病院を渡り歩いてきたが、永禄大学は最低ランクと評する。心臓手術の件数が少ないことから、永禄大学心臓外科の技量を疑っている。腕のいい心臓外科医として、英二郎に北三郎を紹介した。その後も手術の際に度々顔を合わせる。時には辛らつな言葉を英二郎に投げつけてくる。 酒ぐせが悪い。

北三郎 (きたさぶろう)

南林間病院の医師で赤城カオリ曰く「心臓手術の名医」。英二郎が宮村の手術を依頼する。演歌も手術も自分と向き合う作業として、毎晩駅前のカラオケスナックで演歌を歌っている。既に心臓手術からは引退しており、鳥一郎はじめ優秀な弟子が後を継いでいる。英二郎のしつこい懇願に再びメスを持つ。

道場 久善 (みちば ひさよし)

英二郎と同じ永禄大学付属病院で研修医をしていた。他大学出身から研修に来ているため、病院では冷たくあしらわれている。そのため心を病み、過食症となり一度は病院から逃げ出す。祖父が国分寺で診療所を開いており、町医者ではなく最先端の医療をやりたくて永禄大学へ研修に行った。 祖父と共に末期癌患者を看取り、医者としての生き方を問い直し、再び研修医として帰ってくる。

高砂 (たかさご)

第三外科での研修を拒否された英二郎を引き受けたNICU(新生児集中治療室)での指導医。喫煙家。いつも紙オムツを頭にかぶっている。NICUを「人間の領域を踏み越えた場所」と言い、英二郎に「患者の家族と親しくるな」とも言っている。子供の腸閉塞手術を拒否する田辺秀勝を説得しようとするが叶わず、苦悩の末独断で手術を敢行する。 医師免許はく奪となる違法行為だが、術後に離婚して親権を得た田辺佳子により手術の許諾を得る。4人の子供を持つ。妻は看護婦で、夜勤の時は高砂が子供の面倒を見ている。

田辺 佳子 (たなべ けいこ)

不妊治療の末、体外受精で双子を授かるが、妊娠8週で陣痛が起こり、帝王切開で出産。超未熟児のため子供はNICUへ収容される。自分の子供だけに愛情も並々ならぬものがあるが、障害という恐怖で苦悩する。兄の死亡後、残った弟の手術を拒否する秀勝に離婚を切り出し、一人でも育てることを決意し手術に同意する。 その後は秀勝と和解し、二人で子育てをしている。

田辺 秀勝 (たなべ ひでかつ)

田辺佳子の夫。弁護士。精子減少症で不妊治療の末、やっと授かった子供だが、未熟児かつ障害を持って生まれてくる子供たちを暗に殺してくれと高砂に依頼する。自分が原因で不妊であることから、自分を肯定することができず、障害を持って生まれてくる子供に対しての愛情との間で葛藤する。 双子の兄が死んだ後も弟の腸閉塞の手術を拒否し、佳子と離婚する。しかし最後は田辺佳子と二人で子供を育てることを決意する。

皆川 (みながわ)

NICU担当の看護婦。田辺秀勝と田辺佳子の子供を救うため、英二郎に結婚しようかと提案する。その後、英二郎と正式に交際を始め、同棲する。ヤクザ映画好き。子供の頃体が弱く、何度も入院したため、看護婦に憧れていた。

安富 (やすとみ)

病院内で常に赤字部門である小児科の医師で、英二郎の指導医。常に笑顔を絶やさぬ小児科らしい小児科医。英二郎に小児科の置かれた立場とその矛盾を教える。

宇佐美 (うさみ)

第四外科の医師。抗がん剤を使わずに、がんと「戦わない」医師。同期の庄司とはかつて児玉典子の治療で共に戦った。しかし、保険の効かない未承認薬とその効果などから、抗がん剤治療について疑問を持ち始め、結果的に庄司とは別の治療方針を掲げ、分かれることになる。最終的に亡くなった児玉典子は宇佐美家の墓に入った。 後に辻本の治療を通じて庄司と和解し、病院内に設立された緩和ケア科の医師となる。

庄司 (しょうじ)

第四外科で英二郎の指導医となる。新しい抗がん剤で治験を行っている研究医。次期教授候補とも言われている。仕事もできて人望も厚い。宇佐美とは対称的に性格は明るくノリが軽い。過去に児玉典子に対する抗がん剤投与についての見解を巡り、宇佐美とは不仲である。辻本の治療に際して、未承認薬の保険適用をさせるためにカルテの改ざんを行った。 その事実が、外部にリークされ退職する。しかし、後に宇佐美によって設立された緩和ケア科にの立ち上げに参加する。

堀内 (ほりうち)

第四外科の教授。他の医局で問題を起こし、研修医としてやってきた英二郎に対し「分をわきまえない人間は、がん細胞と同じ」と告げる。土下座をして許しを乞う英二郎に研修を認め、庄司の元へ送り込む。

辻本 良江 (つじもと よしえ)

永禄大学付属病院に入院した患者。末期の膵臓がん。夫と人の子供がいる43歳の主婦。摘出手術後に肺への転移が発覚、担当医となった庄司の勧めで抗がん剤治療を続け副作用に苦しむ。その後英二郎から正式な病状と余命を告げられショックを受けるが、未承認薬の使用を決意。その後宇佐美や内海との出会いを経て、別の抗がん剤治療を受け延命しつつ自分と家族にとって最善の末期を送っていく。

児玉 典子 (こだま のりこ)

かつて庄司が担当した患者。膵臓がんの末期で、既に全身に転移。余命半年と言われていた。庄司と宇佐美は未承認薬の使用を決意するが、保険が適用されないため、その治療費は一カ月で200万円を超すこととなる。庄司と宇佐美は不足分を自分たちが支払い尽力するが、病状は悪化。 最後は宇佐美の側で結婚の約束をして息を引き取る。享年4歳。

内海 まどか (うつみ まどか)

宇佐美の担当患者で、末期の膀胱がん。既に全身へがんの転移が進んでいる。宇佐美と出会ってから抗がん剤を使用せず、がんと付き合いながら天寿を全うする選択をする。6歳。

伊勢谷 (いせや)

精神科で英二郎の指導医となる。医師免許を取り立ての頃は救急医療をやりたかったが、急患の多くが精神病患者という事実に直面し、救急患者を減らすために精神科医になった。精神科のことをもっと世間に知ってもらおうと、門脇の体験取材に応じる。○○小学校児童殺傷事件で、犯人が精神安定剤を服用し犯行に及んだという証言から矛盾点を見つけ、詐病の可能性を指摘する。

門脇 耕太郎 (かどわき こうたろう)

読捨新聞科学部のデスク。過去10年近く精神の問題に取り組んできたが、差別と偏見が無くならない事に業を煮やしアルコール依存症患者として、永禄大学付属病院の精神科に体験入院する。若い頃は、ジョン・レノンが世界を歌で救ったように、記事で世界を変えたいと思っていた。退院後も企画を立て、○○小学校児童殺傷事件の背後にある警察と行政の責任を追及しようとするが、事件の報道を指揮する種本に拒否される。 その後、報道が下火になったタイミングで小沢が自殺に至った背景が連載記事になり反響を呼ぶ。しかし、最後は上層部の怒りを買い異動となった。

小沢 (おざわ)

永禄大学付属病院精神科に入院している患者。統合失調症。大学を卒業後、就職が決まらずアルバイトで生活をしていた。しかし、店長から店内での万引きを疑われ逆上。幻聴や奇行から病院に収容されたが、自身は正常であるとして脱走を繰り返す。その後院内で早川小百合と会い、恋に落ちる。退院後は、実家ではなくアパートで一人暮らしをしようとし、無農薬野菜の店に勤務予定だったが、○○小学校児童殺傷事件をきっかけに就職は反故にされる。 世間に自分の居場所がないと感じた小沢は病院の屋上から投身自殺するが、一命を取り留める。

早川 小百合 (はやかわ さゆり)

永禄大学付属病院精神科に入院している患者。統合失調症。過去に複数の男性と関係し、流産の経験あり。そのショックから、幻覚や幻聴が聞こえるようになり、自分をウェンディだと思い込み妖精がやってきて、ピーターパンがこの世界から連れ出してくれると信じている。窓を閉めると妖精が入ってこれないと、家の窓ガラスを割って回り入院することになった。 病院内で小沢と交際を始め、投身自殺を図った小沢に付き添う。

志村 秀治 (しむら しゅうじ)

○○小学校児童殺傷事件の犯人。37歳。東京都落合にある○○小学校に刃物を持って侵入、生徒8人を殺害した。過去に精神安定剤入りのお茶を同僚に飲ませ逮捕。その後不起訴となり精神科に入院させられる。精神安定剤を大量に飲み、朦朧となって犯行を起こしたと報道されるが、伊勢谷がその矛盾を指摘する。 死刑になるために殺人を犯したとも供述。作品中で実際に話す場面は一切ない。

集団・組織

永禄大学付属病院 (えいろくだいがくふぞくびょういん)

『ブラックジャックによろしく』に登場する病院。英二郎が研修医として勤めている。医療については超一流の最先端医療を行っている。坂の上にあり、英二郎は毎日自転車でこの坂を登っている。三鷹にある。

イベント・出来事

○○小学校児童殺傷事件 (○○しょうがっこうじどうさっしょうじけん)

『ブラックジャックによろしく』に登場した架空の事件。東京都内落合の○○小学校に志村秀治が侵入、持っていた包丁で児童らを無差別に殺傷、8人が死亡するという事件。犯人の志村秀治に過去精神科への入院歴があることから、精神病患者へのパッシングが起こった。

その他キーワード

研修医 (けんしゅうい)

『ブラックジャックによろしく』における主人公の役職。年間の間各医局を回り、それぞれ適性を見る。国家試験に通ったことで医師としての資格は持っているが、実績を積むために現場で研修をするという名目。既に学生ではないので給料は支給されるが低額。英二郎の永禄大学付属病院の場合、毎月38000円。当然生活ができないため、研修医の合間に宿直医などでアルバイトをして糊口を凌いでいる。 裕福な実家の援助などがあれば、こうしたアルバイトは必要ない。

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