砂の下の夢 ~空の下の緑~

砂の下の夢 ~空の下の緑~

TONOの『砂の下の夢』の続編。寿命を迎えた危険なオアシスを廃棄するため、「見届け人」と呼ばれる砂漠の民と、死者の魂を核として、砂漠にオアシスを作る不思議の民であるジャグロ族の若者が旅する姿を描いたファンタジー。「プリンセスGOLD」2007年1月号から2016年4月号にかけて不定期に掲載された作品。

正式名称
砂の下の夢 ~空の下の緑~
ふりがな
すなのしたのゆめ そらのしたのみどり
作者
ジャンル
ファンタジー
関連商品
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あらすじ

第1巻

荒くれ者と売女しかいない、とある砂漠のオアシス。鳥飼いの親方のもとで鳥を育て、肉や卵を盗ることで生計を立てていたジスは、ある日、オアシスを訪れたジャグロ族の若者たちに見届け人として指名され、南西の古いオアシスを廃棄する旅に同行することになった。フェイスチャリティと名乗る若者たちから、目的地のオアシスがかつて王様だった男の魂から作られていることを聞かされたジス。話の中の王様は、異国からめとった王妃が自分を愛していないことを悟り、自国へと返したあとに生涯を独り身で過ごしたという。旅の終わりに、そのオアシスのそばで謎の老婆の姿を見たジスに対し、フェイスとチャリティは老婆がいた場所を尋ねる。自国へ戻った王妃は、老境に達してから王様の魂で作られたオアシスまでやって来て、その傍らで息を引き取っていたのだ。老婆の目撃場所から王妃の髑髏を掘り出したチャリティは、王様と王妃の髑髏を使い、古いオアシスを畳むのだった。ひとつのオアシスの終焉を見届けたジスは、元のオアシスに、ありのままの自分として帰ることを決意するのだった。(第1話「王様のオアシス」。ほか、4エピソード収録)

第2巻

村はずれのとある家で家族と幸せに暮らしていた少年ポルトスは、口の中にいつのまにか飴ができるという謎の現象に悩まされていた。ある日、ボルトスは村を訪れたジャグロ族フェイスチャリティに指名され、古いオアシスを撤収する見届け人の一員として同行することになってしまう。目的地のオアシスに着いたポルトスは、彼のことを「若様」と呼ぶ謎の男たちと、妹のギネアにそっくりで、名前も同じというオアシスの主に出会う。オアシスの主の最後の客としてもてなされた一行だったが、その過程でポルトスは育ての親であるツバイが、本当の両親を殺害した張本人であり、口の中にできる飴が殺害される直前に、母親が口に含ませてくれたものだったことを思い出してしまう。かつての一族の男たちからツバイへの復讐を促されるものの、ポルトスはこれを拒否。フェイスの説得で一族の男たちはその場を去り、ポルトス自身も過ぎたことをすべて砂の下へ葬ることを決め、元の村へ帰るのだった。(第1話「ギネアのオアシス」。ほか、4エピソード収録)

登場人物・キャラクター

フェイス

長い黒髪と青い瞳を持つ若者。性別や年齢は不詳だが、容姿端麗で美青年のようにも、美女のようにも見える麗人。死者の魂から砂漠にオアシスを作るジャグロ族の出身で、古くなり危険になったオアシスを廃棄および撤収するため、恋人のチャリティと共に砂漠を旅している。やや短気なうえにぶっきらぼうな性格で、思ったことは遠慮なく口にする。直情的な反面、責任感が強く、荒事にも慣れているために何かと頼りになる。チャリティの魅力について語り出すと止まらなくなる。

チャリティ

明るい赤い髪と緑の瞳を持つ若者。性別や年齢は不詳だが、容姿端麗で美青年のようにも、美女のようにも見える麗人。死者の魂から砂漠にオアシスを作るジャグロ族の出身で、古くなり危険になったオアシスを廃棄および撤収するため、恋人のフェイスと共に砂漠を旅している。フェイスとは対照的に穏やかな性格をしており、見た目や物腰も柔和。フェイスからは「チャル」という愛称で呼ばれている。

ジス

鳥飼のもとで働いている子供。目元を前髪で隠した、泥まみれの小汚い姿をしている。もともとは戦災孤児で、放浪している最中にカレルに拾われ、鳥飼の仲間となった。鳥を殺すことにも躊躇してしまうなど、心優しい性格をしている。実は女の子だが、周囲にはそれをひた隠しにして、男の子として過ごしていた。フェイスとチャリティに指名され、古いオアシスの廃棄を見届ける見届け人として指名され、南西のオアシスへと旅立つ。

カレル

浅黒い肌をした鳥飼の青年。戦災孤児だったジスを、鳥飼の仲間として迎え入れた。荒くれ者ばかりのオアシスでは珍しく、思慮深く心優しい性格をしている。ジスが女の子であることにもカンづいているが、何も言わないでいる。見届け人としてフェイスたちの旅に同行することになったジスにひそかに金を渡し、もうここには帰ってくるなと諭していた。

ポルトス

村はずれで家族と暮らしている黒髪の少年。家族でただ一人、髪や目、肌の色が異なるため、自分が養子であることに薄々カンづいている。ここ最近は口の中に突如として飴が出現するという、謎の現象に悩まされていた。村を訪れたフェイスとチャリティに、古いオアシスの廃棄を見届ける見届け人として指名され、共に旅立つことになる。目的地でオアシスの主や謎の男たちと会ったことで、自分の本当の両親を殺した相手が現在の養父であるツバイであることを思い出してしまう。

オアシスの主 (おあしすのぬし)

亡くなった女性の魂を核として作られた、古いオアシスを管理している主。容姿はポルトスの妹であるギネアそっくりで、本名も「ギネア」ということから、出会ったポルトスを驚かせていた。もともとはツバイの姉で、ポルトスの一族によって殺害されたのちにオアシスの核となった。

ツバイ

村はずれで家族と暮らしている金髪の中年男性。ポルトスの父親だが血縁はなく、ポルトスの本当の両親を殺害した人物。ポルトスの両親を殺めたことをずっと後悔しており、幼少のポルトスを引き取って愛情深く育てた。

ギネア

村はずれで家族と暮らしている金髪の少女。家族のことが大好きで、兄であるポルトスにも手作りの菓子をよく振る舞っている。卵の殻をお菓子に混ぜ込んでしまうなど、少々ドジな一面がある。

ザザ

オアシスで暮らしている青年。ヘイス族の出身で、お調子者な性格をしている。フェイスによって古いオアシスを廃棄する際の見届け人に指名され、彼の旅に同行することになった。出会った時からフェイスの美しさに魅了されており、フェイスの性別を女と決めつけて、自分に都合のいい妄想にふけっていた。恋人を欲しがっており、そのことをフェイスにも伝えていた。

ベルダ

オアシスで暮らしている女性。商用で砂漠に出かけた恋人のギースが、自分のことだけを忘れてしまったことにショックを受ける。オアシスを訪れたフェイスとチャリティに、古いオアシスの廃棄を見届ける見届け人として指名され、ギースの記憶を取り戻すきっかけを得るために旅立つ。

ギース

オアシスで暮らしている青年。ベルダの恋人で、挙式を間近に控えていた。しかし、商用で砂漠に出かけて古いオアシスで休憩した際に、古いオアシスによって恋人のベルダの記憶だけを奪われてしまう。

オペラ

両親と共にオアシスで足止めを食っている少女。移動手段であるラクダを失ったため、オアシスに立ち寄るキャラバンと交渉し、ラクダを都合してくれる人を探している。オアシスを訪れたフェイスとチャリティに、オアシスが終焉すると聞かされ、オアシスから速やかに出発するようにと促される。

リコ

オアシスで暮らしている浅黒い肌を持つ少年。早くに両親を亡くし、叔父夫婦によって育てられたが、従兄弟とは異なる差別的な待遇をずっと受けてきた。オアシスの女の子からは、非常に人気がある。叔父夫婦に命じられ、亡き両親がオアシスにばらまいたというガラス片の回収を毎日させられている。

キーラ

オアシスで暮らしている女性。病床である母親のセディが、フェイスとチャリティによって見届け人に指名されたため、セディの代理としてオアシス撤収の旅に同行することになった。気立てはいいが、姉妹の中で唯一セディに似ていない。容姿に恵まれなかったことが、彼女の中で強い劣等感となっている。

セディ

オアシスで暮らしている美女で、キーラの母親。病に伏せっており、余命いくばくもない状態。フェイスとチャリティによって見届け人に指名されるが、母親思いのキーラが強引に代理となって旅に同行していた。キ-ラのことを深く愛しており、コンプレックスに悩まされる彼女をいつも励ましていた。

テグ

とある村に住んでいる少年。背は低いが、かわいらしい顔立ちをしている。不良のストロボたちにそそのかされ、兄であるケヌルの結婚資金のほとんどを持ち出してしまったため、父親の手で村はずれにあるココナツヤシの木に鎖で足をつながれていた。フェイスとチャリティによって見届け人に指名されるが、旅の途中でストロボたちからフェイスたちの性別を探るように命令されてしまう。

ケヌル

とある村に住んでいる青年で、テグの年の離れた兄。結婚を控えていたが、テグによって結婚資金を持ち出される。容姿には恵まれていないが、穏やかな性格をした好青年。弟のことを愛しており、父親によってココナツヤシの木につながれたテグの鎖を外し、いつでも自分の結婚式に出られるようにしていた。

ストロボ

けだるい雰囲気を漂わせる不良少年。ランチェとケプナーという仲間と共に近隣の村々で窃盗や恐喝を繰り返し、その日暮らしをしている。母親を早くに亡くし、年の離れた兄弟しかいないテグをお菓子で釣って子分にし、家から金品を盗ませていた。

メルチェ

大きな屋敷に住んでいる愛らしい少女。忙しい父親と母親に代わって面倒を見てくれる子守りのクーニャによく懐いている。クーニャと父親が不倫をしたことによって家庭が崩壊している真っただ中に、フェイスとチャリティによって見届け人に指名され、サボテンまみれの古いオアシスへと旅立つ。

クーニャ

使用人の女性で、大きな屋敷に住むメルチェの子守りをしている。優しく朗らかな性格をしており、メルチェからはとても好かれていた。メルチェの父親と不倫したことで、メルチェの母親との関係が著しく悪化し、屋敷にいられなくなる。

その他キーワード

ジャグロ族 (じゃぐろぞく)

死者の魂を核として、新たなオアシスを作ることができる技法を持つ神秘の一族。各地にあるオアシスの管理も担当している。砂漠の民からは魔法を扱う一族として一目も二目も置かれており、彼らに逆らう者は皆無。もともと人間のオアシスは耐用年数を過ぎると人々に害悪をもたらす存在となることがあるため、定期的に寿命を迎えたオアシスを廃棄している。廃棄の際に砂漠の民のいずれかを見届け人として指名し、有無を言わさずに旅に同行させる。また、ジャグロ族の若者は、一定の年齢に達するまで性別と年齢を隠すという習慣を持つ。

見届け人 (みとどけにん)

ジャグロ族が死者の魂を核として作ったオアシスを廃棄する際に、それを見届ける役割を担った砂漠の民を指す言葉。本人の意思は関係なく、ジャグロ族側から指名されることで見届け人となる。見届け人はオアシスを廃棄する旅に強制的に同行させられるが、ジャグロ族が砂漠の民から崇拝されているため、トラブルになることはほとんどない。

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