クロノクルセイド

クロノクルセイド

近代アメリカを舞台としたマグダラ修道会と悪霊や悪魔たちとの戦いを描いた森山大輔の漫画デビュー作。序盤のスチームパンク風世界観から、地球存亡にかかわるサイバーパンクな悪魔同士の戦いへと発展していく。

正式名称
クロノクルセイド
ふりがな
くろのくるせいど
作者
ジャンル
バトル
 
ファンタジー
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あらすじ

第1巻

未曾有の経済発展を遂げる1920年代のアメリカでは、その発展に隠れて目に見えぬ怪異がうごめいていた。お転婆シスターのロゼット=クリストファは相棒のクロノと共に、怪物退治や悪魔祓いを行う専門組織「マグダラ修道会」の一員として活躍していた。しかし彼女達は、悪霊を退治する確かな腕を持ちつつも、トラブルをより大きな物にするトラブルメーカーでもあった。ニューヨークではタンカーを港に突っ込ませ、新開発の武器を勝手に使っては暴走させトラブルを巻き起こす二人であったが、ある日、彼女達は悪魔使いの資産家リカルド=ヘンドリックに囚われたアズマリア=ヘンドリックの保護を任務として請け負う。ロゼットは悪魔使いのもとから逃げ出したいアズマリアを助け、彼女の持つ不思議な力に助けられながら脱出する事に成功する。そして仲を深めていくロゼット達とアズマリアであったが、追っ手に差し向けられたレライエによってアズマリアは再び囚われの身となってしまう。アズマリアを取り戻しに向かったロゼットは、クロノの本来の力を解放してレライエを倒し、アズマリアを助け出すのに成功するのだった。

第2巻

幼い頃、両親を失ったロゼット=クリストファは弟のヨシュア=クリストファとセブンスベル孤児院でなかよく暮らしていた。しかしある日、二人は森の奥に隠された墓所に偶然迷い込み、そこで自らを悪魔と名乗る少年クロノと出会う。悪魔と聞いても物怖じないロゼットとヨシュアは、クロノと友人となり穏やかな日々を過ごす。しかしそんなある日、ロゼットとクロノの前に一羽の鳥が現れ、彼等に不吉な言葉を告げる。鳥の正体はクロノのかつての仲間であるアイオーンで、彼は失ったクロノの代用品としてヨシュアに目をつけたのだ。アイオーンの甘言にたぶらかされたヨシュアはクロノの尖角を付けるも、その力を暴走させて周囲一体の時間を停止させ、姿を消してしまう。残されたロゼットはクロノと契約し、ヨシュアを見つけ出す事を誓うのだった。そしてそれから4年後の現在、ロゼットのもとにヨシュアの手がかりがもたらされる。いても立ってもいられなくなったロゼットは、ユアン=レミントンの課した試練を突破して自らの力を証明し、アズマリア=ヘンドリックを加えた三人で旅に出るのだった。

第3巻

サンフランシスコを目指していたロゼット=クリストファ達は、立ち寄ったニューヨークで「宝石の魔女」の異名を持つサテラ=ハーベンハイトと出会う。仇である「尖角のない悪魔」を探していたサテラは、クロノがその悪魔ではないかと疑い接触。確かめようとするが、直前にサテラに恨みを持った悪霊達の襲撃を受けてしまう。クロノの助けを受けて事態を乗り切ったサテラは彼を信用し、ロゼットの旅に同行する決意を固める。一行はゴタゴタの中で足である車が壊れたこともあり、列車でサンフランシスコを目指す。しかし列車は、すでに敵であるリゼールの手に落ちており、ロゼットは列車の乗務員や客を人質に取られ、仲間達とも引き離されてしまう。圧倒的な窮地に孤軍奮闘するロゼットであったが、罠と気づいたクロノとアズマリア=ヘンドリックの力によって窮地を乗り切る事に成功する。そしてリゼールの本体と対峙したロゼットは、苦戦しつつも機転を利かした戦術で優位に立ち、仲間達の助けを借りつつリゼールを打ち倒す。そして倒されたリゼールは、一行に不穏な言葉を残しつつ息絶えるのだった。

第4巻

リゼールを退け、何とかシカゴにたどり着いた一行であったが、クロノ達はそこで悪魔達の襲撃を受ける。クロノを罪人と言い、襲い掛かる悪魔から逃げ出した一行。そしてクロノは自らの過去をロゼット=クリストファ達に語り始めるのだった。クロノの過去を受け入れた上で協力して戦う一行はマグダラ修道会の援軍が来るまで持ちこたえ、辛くも襲撃をしのぎ切る。そしてロゼット達はマグダラ修道会の助けを借りて、空路でサンフランシスコを目指すのだった。間もなく弟との再会が叶うと知り、不安と重圧で押しつぶされそうになるロゼットだったが、クロノの言葉で全力を尽くす事を改めて誓う。そしてたどり着いたロゼットが目にしたのは、カーニバル真っ最中のカリフォルニアだった。周囲の仲間達も緊張しているロゼットに気をつかって、カーニバルへと送り出し、一行は賑やかな祭りを楽しむ。記念写真も撮りかけがえのない思い出となった瞬間であったが、ロゼットは賑わう祭りの中にヨシュア=クリストファの姿を見つけ、二人は運命の再会を果たすのだった。

第5巻

運命の再会を果たしたロゼット=クリストファであったが、ヨシュア=クリストファは正気を失っており、ロゼットを姉と認識せず、精神的にとても不安定な状態だった。アイオーンはロゼットの信念を完膚なきまで叩き折り、彼女の懸命な努力をあざわらう。さらにアイオーンは正気を失ったヨシュアをロゼットに差し向け、彼女をかばったクロノに大ケガを負わせるのだった。圧倒的な危機の中、アイオーンは瀕死のクロノを挑発し、クロノの悪魔の力を暴発させる。暴走したクロノによって街は壊滅的な打撃を受けるが、ロゼットの献身でクロノは我に返り、暴走を鎮めるのだった。しかしクロノは、その隙を突かれアイオーンに敗れ去ってしまう。マグダラ修道会の助力でかろうじて命をつなぐロゼットとクロノだったが、アイオーンはアズマリア=ヘンドリックをさらい、何処かへと去って行くのだった。戦いのあと、ロゼットはクロノが意識不明になったうえに、街を破壊した責任を取らされ処分される事を知る。絶望的な状況に一時は足を止め挫折しそうになるも、ロゼットは仲間達の絆に支えられ再び立ち上がる。そしてロゼットはクロノを救うための行動を始めるのだった。

第6巻

クロノの意識に呼びかけるため、クロノの魂に「潜霊(ダイブ)」したロゼット=クリストファはそこで彼の過去を垣間見る。50年前、アイオーンの仲間であったクロノは先見の聖女マグダレーナと行動を共にし、心を通わせていた。アイオーン達とすら交流し、平和で穏やかな日々を過ごしていたマグダレーナであったが、ある日、回収した魔界の中枢制御体の暴走に巻き込まれてしまう。マグダレーナの力によって暴走を退ける事に成功するも、マグダレーナは魔界の新たな依代となってしまい、アイオーンにその命を付け狙われる事になるのだった。自らの命をあきらめクロノに殺される事を望むマグダレーナであったが、クロノはアイオーンの命にもマグダレーナの予言にも逆らい、彼女を助ける事を決意。アイオーンに尖角を折られ半死半生の傷を負わせられるも、彼女を連れて逃避行へと旅立つ。しかし、尖角を失ったクロノと衰弱するマグダレーナの旅は長く続かず、マグダレーナはアイオーンの手によって殺されてしまうのだった。クロノの過去を知ったロゼットは、彼に思いの丈をぶつけ、二人は共に生き抜く事を約束する。

第7巻

クロノとの絆を取り戻し、ユアン=レミントンの思いを受け取って送り出されたロゼット=クリストファは決戦の地へと赴く。アイオーンの隠れ家の地下に隠された転移装置で、敵の本拠地である「楽園(エデン)」へとたどり着いたロゼットとクロノが目にしたのは、天を覆うほどの悪魔の群れの姿だった。罪人を追う悪魔達は遂に楽園へとたどり着き、アイオーンと戦っていたのだ。悪魔を率いる公爵デュフォーは、圧倒的な力でアイオーンを追い詰める。しかしアイオーンは、自らの大願を果たすための罠を張り巡らしており、ヨシュア=クリストファやアズマリア=ヘンドリック代行者を利用し、アストラルラインを掌握。その力を以って魔界を浮上させるのだった。魔界の復活でレギオンを暴走させ、まともに動けなくなる悪魔達をアイオーンは一蹴し、魔界の中枢へと向かう。ロゼットとクロノは暴走した悪魔達に襲われるも、サテラ=ハーベンハイトと合流し、結界船「メタトロン」で駆けつけたマグダラ修道会の援護を受けつつ魔界へと突入する。そしてサテラ、クロノと仲間達に送り出されて、ロゼットは先へと進むのだった。

第8巻

混沌とした空で、それぞれの戦いを繰り広げる人間と悪魔。クロノの封印を解放し、残り少ない命の火を燃やすロゼット=クリストファは、激戦の中、ヨシュア=クリストファと二度目の再会を果たす。正気を失ったヨシュアを取り戻すため、彼と戦うロゼットはヨシュアの尖角を折り、ヨシュアを本当の意味で取り戻す事に成功するのだった。正気に戻ったヨシュアとクロノのもとへと向かうロゼットであったが、クロノは満身創痍、さらにロゼットの命も遂に尽きてしまう。ロゼットの亡骸を前に、ヨシュアとクロノは悲嘆に暮れる。しかしそこにアズマリア=ヘンドリックが姿を現し、ロゼットを救う道を提示するのだった。そしてクロノはロゼットを救うため、そして悲しみの連鎖を終わらせるため、アイオーンのいる魔界中枢を目指す事を決意する。アイオーンによって世界の終わりが始まる中、クロノ、そして仲間達は最後の戦いを繰り広げる。

メディアミックス

TVアニメ

GONZO DIGIMATIONによる制作で、2003年11月24日から2004年6月9日にかけてフジテレビ系列ほかで放送された。原作とは別の展開で、アニメオリジナルの結末を迎えている。また当時のメディアミックス展開としては珍しく、原作コミックスとアニメーションがほぼ同時期に完結している。

登場人物・キャラクター

ロゼット=クリストファ

マグダラ修道会に所属する金髪のお転婆シスター。相棒のクロノ共に行動し、16歳ながら悪魔や悪霊と渡り合う戦闘技術を持つが、性格は勝気で生粋のトラブルメーカーとなっている。彼女が戦闘を行う度、悪魔以上の被害をもたらす事もしばしばあるため、クロノや上司にとっては頭痛の種となっている。4年前悪魔にさらわれた弟ヨシュア=クリストファの存在を追っており、彼を助けるため命を縮めるのを承知しながらクロノと契約を交わしている。そのため30歳まで生きられないと自覚しつつも、全力で人生を駆け抜ける覚悟をしている。所持している懐中時計はクロノとの契約を制御するためのもので、懐中時計の機構を解放する事でクロノの封印を解除する事が可能。ユアン=レミントンは親代わりであると同時に悪魔祓いとしての師匠であるため、あこがれの感情を抱いている。武器は対悪魔用の弾丸を装填した二丁拳銃をメインに戦う。福音弾による一撃は悪魔に致命傷を与える威力がある。また最終決戦ではレミントンから最新装備である「四聖文字砲(テトラグラマトン)」を受け取り、さらに高い火力を手にした。

クロノ

ロゼット=クリストファと行動を共にする黒い髪を三つ編みにした少年。穏やかでまじめな性格をしており、ふだんはロゼットに振り回されつつも、その無茶な行動をフォローしている。その正体は「百人殺し」「爵位剥奪者」とも言われるほど強力な力を持つ悪魔で、悪魔の力の象徴である尖角を失っている事から「折れた尖角」とも呼ばれる。ふだんはロゼットの懐中時計によって力の消耗が少ない少年の姿となっているが、力を解放すると黒い長髪の青年の姿となり、強大な力を振るう事が可能。ただし尖角がないことから、契約者のロゼットの命を代償とするため多用はできない。また任意の空間を「時間凍結」する能力を持つが、尖角がない状態では使用が不可能となっている。50年前までは罪人としてアイオーンと行動を共にしていたが、マグダレーナを救うため離反した。その後、追って来たアイオーンにマグダレーナを殺され、失意のまま彼女の墓所で過ごしていたが、4年前迷い込んで来たロゼットとヨシュア=クリストファと出会った。その後、アイオーンにさらわれたヨシュアを救いたいというロゼットに力を貸す契約を交わした。

アズマリア=ヘンドリック

ポルトガルド出身のソプラノ歌手の少女で、年齢は12歳。不思議な力を持ち、その力を悪魔崇拝者であるリカルドに目をつけられ捕らえられていた。実は代行者の一人で、歌によって霊素(アストラル)を集め、あやつる力を持つが、力の代償として周囲の人との死別という不幸な生い立ちを背負わされていた。当初はそのせいで幸薄い表情をしていたが、ロゼット=クリストファとの出会いで少しずつたくましく、前向きな性格へと変わっていった。悪魔崇拝者のもとから救い出されて以降は、保護されたマグダラ修道会に所属し、悪魔祓い見習いとなった。ロゼットと行動を共にし始めてからは、何もない場所で転んだりドジっ子な一面が見えて来て、仲間達を戸惑わせている。当初はアズマリア=ヘンドリック自身、その力を制御できなかったが、マインドイーターとの戦いでロゼットの呼びかけに応え、自身の力を受け入れる事で力を制御する事が可能になった。代行者としての力は応用する事で、下級魔程度なら一瞬で消滅させるほどの力がある。リゼールとの戦いで力を使った事でアイオーンにその正体を見抜かれ、サンフランシスコの戦いでさらわれてしまう。

サテラ=ハーベンハイト

東海岸を中心に活動する美術商の元締めハーベンハイト家の若き当主。妖艶な雰囲気を漂わせた美女だが、実年齢は19歳となっている。実はハーベンハイト家は「魔石使い(ジュエルサモナー)」の一族で、サテラ=ハーベンハイト自身は「宝石の魔女」の異名を持つ凄腕の魔石使い。宝石(ユヴェール) から使い魔を呼び出し、使役して戦うのを得意とする。ただし使い魔は「輝力」と呼ばれる力を動力にしており、輝力が切れると消滅してしまう。10年前、ハーベンハイト家は「尖角のない悪魔」に襲われて壊滅したため、ハーベンハイト家の最後の生き残りとして仇の存在を追っている。ニューヨークで化け物と戦闘中、ロゼット=クリストファ達の車を壊した事で彼らと知り合う。当初はクロノを「尖角のない悪魔」と思ったが、クロノの人柄とロゼットとの絆を見て誤解だと悟った。その後はロゼット達の旅に同行し、共にサンフランシスコを目指している。サンフランシスコの戦いではアイオーンこそが仇だと確信。さらに自身と同じ宝石術を使うフロレット=ハーベンハイトが姉だと察する。最終決戦ではロゼットとクロノが来るのを信じ、先行して楽園(エデン)に潜入していた。

アイオーン

罪人のリーダーを務める褐色肌の青年。4年前、ロゼット=クリストファとクロノの前に現れ、代行者の力を持つヨシュア=クリストファをさらったり、10年前、サテラ=ハーベンハイトの家族を殺すなど、多くの事件で暗躍している。かつては魔界でも将来を有望視された悪魔であったが、成人の儀の際に禁断の知識を見て「世界の真理」を知ってしまう。それ以降は魔界の存在を憎んで仲間達と共に反逆し、魔界中枢制御体を破壊。多くの悪魔達を殺して逃亡した。最終的に魔界を掌握して、世界そのものを破壊し自由を手にする事を目的としており、そのために代行者の存在や魔界の知識を欲して行動している。50年前、行方不明になった魔界の中枢制御体の首を捜すべく、マグダレーナと接触。彼女の力を利用するも、彼女が魔界に乗っ取られ始めたため、殺している。この事件でクロノとは決別しているが、彼の事は「兄弟」と呼び、今でも一定の情は持っている様子。魔界からの干渉を避けるため尖角を折って剣へと加工しており、剣とフロレット=ハーベンハイトに作らせた宝石(ユヴェーレ)を利用する事で非常に高い戦闘力を持つ。

ヨシュア=クリストファ

ロゼット=クリストファの弟。代行者の一人で、治癒の能力を持っていたが、自身の傷や病気を治療させる事はできず、能力の代償として幼い頃から病弱だった。4年前、両親を失って以降は姉と共にセブンスベル孤児院で暮らしていた。その後、偶然姉と共に迷い込んだ墓所でクロノと出会い、友情を育んだ。病弱ながら好奇心旺盛な性格をしており、クロノの話を聞き、いつか姉といっしょに冒険に出てアストラルラインを目にするのを夢見ていた。姉が病弱な自分に遠慮していることを気にしており、マグダラ修道会が彼を引き取る話を受け入れ、孤児院を去るつもりだった。しかしそこにアイオーンが現れ、彼の甘言に乗りクロノの尖角を身につけてしまう。尖角の力でクロノの「時間凍結」など悪魔の能力に目覚めるが、精神に多大な影響をもたらし正気を失ってしまう。能力の暴走によって孤児院一帯の時間を凍結して以降はアイオーンと共に姿をくらましており、ロゼットはその行方を追っている。現代では侵食がさらに進んでいるが、フロレット=ハーベンハイトの甲斐甲斐しい献身によって不安定ながら辛うじて正気を保っている。

ユアン=レミントン

マグダラ修道会に所属する金髪の青年。凄腕の修道騎士で、悪魔とも単独で渡り合える戦闘能力を持つ。ふだんは飄々とした態度でケイト・ヴァレンタインやエドワード=ハミルトンと接するが、着実に成果を上げる優秀な人物。4年前に起きた「セブンスベル事件」以降、ロゼット=クリストファの保護者を務めており、彼女にとって親代わりであるのと同時に悪魔祓いとしての師匠。ふだんは勝気なロゼットもレミントンの言う事は素直に聞いている。見た目は20代ほどで若々しいが、実年齢は50歳以上の高齢。かつてはマグダレーナの護衛を担っており、クロノとは50年来の因縁を持つ。過去に大怪我を負った際に自ら志願して悪魔の生体組織「レギオン」を自らの体に移植しており、これによって超人的な力と若々しい肉体を手にしたが、定期的なメンテナンスなしでは生きられない体となっている。サンフランシスコの戦いのあと、クロノの抹殺を命じられたが、保護者の最後の役目として、彼等に覚悟と実力を身を以って問うた。ロゼットとクロノの覚悟を見届けたあとは、彼等に最新の装備を手渡し、最終決戦へと送り出した。

フロレット=ハーベンハイト

アイオーンに仕えるメイド姿の女性。世話好きな優しい性格をしており、生活能力の低い罪人達の生活を支えている。尖角のせいで精神が不安定なヨシュア=クリストファの世話をするのも役目で、つねに彼の側に控え、甲斐甲斐しく世話をしている。仲間内からは「フィオレ」の名で呼ばれているが、実はサテラ=ハーベンハイトの姉の遺体を利用して作られた人形。魔界に対抗するため「宝石(ユヴェール)」の力を欲したアイオーンにさらわれ、その後、人形とされてしまった。現在も人間だった頃の記憶は持っているが、自らの存在意義を果たすべくヨシュアに付き従う存在となっており、サテラに対しても刃を向けている。サテラと同じく宝石を使用して使い魔を使役する事が可能で、さらに人形へと改造された事で四肢を破壊されても修復できるなど人外の治癒能力を持つ。最終決戦ではヨシュアを守るべくロゼット=クリストファ達の前に立ち塞がり、サテラと激闘を繰り広げた。

デュフォー

悪魔達を束ねる軍団長にして、公爵の位を持つ悪魔。黒いコートを羽織った壮年の男性で、獰猛な表情をしている。罪人達の行方を追っており、最終決戦では天を覆いつくすほどの無数の悪魔を率いて、アイオーンの本拠地である「楽園」を襲撃した。強大な力を持つ悪魔で、アイオーンすら一蹴する実力を見せつけた。しかし、実はそれらはアイオーンが張り巡らした罠で、アイオーンの存在に気を取られ、代行者による魔界の浮上を許してしまう。そして尖角を付けていたため、代行者によって中枢制御体を混乱させられた魔界の縛鎖(ギアス)の影響をまともに受けてしまい、身動き取れない状態でアイオーンに殺された。

リゼール

アイオーンと行動を共にする罪人の一人。女性の姿をした上半身に、蜘蛛のような姿をした下半身がくっついた異形の姿をした悪魔。小型の蜘蛛のような姿をした使い魔を人間に取り憑かせ、その人間の行動を意のままにあやつる能力を持つ。人間の行動をあやつり、その影に隠れるといった搦め手の戦法を好む。ヨシュア=クリストファの精神を安定させるため、ロゼット=クリストファの身柄を確保するという命をアイオーンに与えられ、その任務を果たすべくロゼット達に襲いかかる。列車での戦いでは乗務員や客を人質に取り、ロゼットを翻弄したが、クロノの機転とアズマリア=ヘンドリックの能力で人質を解放され、ロゼットに福音弾で吹き飛ばされた。アイオーンを純粋に慕う女性で、今際の際にもアイオーンの命を忠実に果たすべく、使い魔に情報を持たせてアイオーンに送っており、この情報がアイオーンの行動を大きく助けている。実は50年前までは人間に近しい姿をしていたが、魔界の中枢制御体の暴走に巻き込まれ、下半身を修復不可能なまで破壊された。現在の蜘蛛の姿はその傷を補うものとされる。

マグダレーナ

「事象視」の能力を持つ聖女。かつてマグダラ修道会に所属していたとされる。50年前の人物で、現在は故人だが、クロノも多大な影響を与えた人物だとされる。「事象視」は本来なら知りえるはずのない情報を知る能力だが、その代償として、彼女は能力から得られる情報の波に過去の記憶が押しつぶされ、幼い頃の記憶が非常に曖昧になっている。そのため自身の存在の根幹が非常に弱いものとなっているが、唯一自身に終わりをもたらす者として、クロノの事は出会う前からはっきり認識していた。そのためアイオーンが彼女の力を欲し、クロノを差し向けてさらおうとした際にも、おとなしく彼の言う事を聞き、罪人達に力を貸した。悪魔にも分け隔てなく接する不思議な魅力を持った人物で、罪人達の中でも気難しいリゼールやジェナイすら心を許して接していた。しかし魔界の中枢制御体が暴走した際に、「事象視」の能力を通じて中枢制御体に精神を乗っ取られてしまう。アイオーンは完全に乗っ取られる前に殺す事を決めるが、クロノは拒絶。クロノと共に生き抜く決意をし、逃避行に出るが、アイオーンに見つかって殺された。

ケイト・ヴァレンタイン

マグダラ修道会の騎士統括局長を務める妙齢の女性。眼鏡をかけた黒髪の女性で、ふだんは年齢相応のお淑やかな言動をしているが、破天荒なロゼット=クリストファに対してはお説教や実力行使を多々行っている。自他共に厳しい人間ではあるが、部下思いのやさしい性格をしており、修道会の多くの部下達から信頼されている。ロゼットに対してもふだんは小言を言っているが、彼女とクロノの特殊性に配慮して、気をつかっている。サンフランシスコの戦い以降、クロノの暴走の責任を取らされて騎士統括局長のポストを解かれる。ただしケイト・ヴァレンタイン本人はもともと現場主義だったらしく、それほど気にしていなかった。最終決戦では結界船「メタトロン」を指揮し、決戦の地へと向かうロゼットとクロノの援護を行い、彼等を見送った。

エリザベス=グランバーグ

マグダラ修道会に来たばかりの頃、ロゼット=クリストファが出会った少女。悪魔であるクロノと契約した事で馴染めず、問題ばかり起こしていたロゼットに唯一対等に付き合った同年代の人物。ロゼットからは「ベス」の愛称で呼ばれていた。規則に厳しく、融通の利かない性格をしており、クロノに対してもよくない感情を持っていたが、悪魔に襲われた際にロゼットとクロノに助けられ考えを改めるようになる。その後、クロノとロゼットの初めての友人となったが、14歳の頃に家庭の事情で修道会を去った。シスターを辞めたあとも、ロゼットとは交流を続けており、のちに医者となって契約の代償で寿命を縮めたロゼットの主治医を務めた。

ジェナイ

アイオーンと行動を共にする罪人の一人。両目を覆う奇妙な眼帯に、テンガロンハットをかぶった青年で、罪人の中でも獰猛で好戦的な性格をしている。悪魔としての本来の姿を現すと、体が黒いライダースーツのようなもので覆われ、左手が剣へと変化する。剣は非常に鋭利な切れ味を誇り、ロゼット=クリストファの放った福音弾をあっさり切り払うほど。また魔界からの縛鎖を防ぐため、アイオーンと同じく尖角を切り落としている。直情的な性格をしているが、仲間意識は罪人の中でも人一倍強く、長年のケンカ友達とも言えるリゼールが死んだ際には大いに荒れ、その仇を取ろうと独断専行するほどである。ヨシュア=クリストファやフロレット=ハーベンハイトに対しては人間であるうえに、リゼールの死の原因となったため、いい感情は持っていない。実は50年前までは人間に近しい姿をしていたが、魔界の中枢制御体の暴走に巻き込まれ、両目と左手を修復不可能なレベルで破壊された。その後から両目を眼帯で覆い、義手代わりに左腕を剣にしている。

レライエ

悪魔崇拝者、リカルド=ヘンドリックと契約した悪魔。暗いまなざしをした青年の姿をしており、主人の命に従ってアズマリア=ヘンドリックを付け狙っていた。実は罪人へと差し向けられた追っ手の一人で、「子爵」位を持つ悪魔。過去にクロノとの戦いに敗れ、傷を癒やすために現在の主人であるリカルドと契約した経緯を持つ。そのため、アズマリアをさらったあとは、自らの主人の目的を利用して集められた霊素(アストラル)を吸収し、契約を破棄したうえで完全復活を遂げた。その際には人間の姿を捨てた完全な異形の姿となり、莫大な霊素を吸収したせいで、かつてクロノが戦った以上の力を見せつけた。悪魔の能力を解放したクロノとも互角以上の戦いを繰り広げたが、眼中になかったロゼット=クリストファからの反撃によって大ダメージを負い、クロノに追撃されて消滅した。

シェーダ

アイオーンと行動を共にする罪人の一人。猫耳の生えた女性の姿をしており、人懐っこくやさしい性格をしている。技術者であるため表で活動する事はほとんどなく、罪人達の本拠地「楽園」で、必要な装備や設備の開発・整備を専ら行っている。アイオーンの目的に賛同しているものの、その陰で犠牲になる者達については罪悪感を抱いている。そのためマグダレーナにもすぐに懐き、ヨシュア=クリストファやフロレット=ハーベンハイト達にも気をつかっていた。実はロゼット=クリストファの持つ懐中時計の開発者。裏切ったクロノの事も未だに仲間と思っており、50年前、尖角を失った状態で逃亡したクロノのために、尖角の代用品となる懐中時計型の「アストラル収束制御ユニット」を完成させ、手渡している。最終決戦ではアイオーンの計画遂行のため、各種のオペレーティングを行い、勝負の決着が着いた際には、被害が周囲に及ばないように尽力した。

エドワード=ハミルトン

マグダラ修道会の開発主任を務める老人。ロゼット=クリストファの配属されている支部の「長老」を務めており、支部内では専ら「長老」と呼ばれている。福音弾をはじめ対悪魔武器を開発する確かな技術を持つが、好色家で、覗きや下着泥棒や女子寮への侵入の常習犯。ロゼットにも日常的にセクハラをしては怒られている。修道会でも古参に入り、50年前のマグダレーナを巡る事件についても深くかかわっている。そのため、クロノとユアン=レミントンの因縁についても知っており、ユアンのレギオンのメンテナンスやクロノの懐中時計の解析も彼が行っている。ふだんは飄々とした態度をしているが、有事の際には危険を真っ先に判断して避難勧告を指示したり、アストラルラインの出現から敵の本拠地を割り出したり、経験に裏打ちされた先見の明を持っている。最終決戦では自らも結界船「メタトロン」に搭乗し、最後まで船のメンテナンスをして修道会の戦いを助けた。

ヴィド

アイオーンと行動を共にする罪人の一人。巨漢の男性で、寡黙で落ち着いた性格をしている。アイオーンを「王」として忠誠をささげており、個人の感情を押し殺し、彼の大願成就のため献身する忠臣。見た目に反して気づかい上手で、熱くなりやすいジェナイのフォロー役を担ったり、人間であるマグダレーナにも早いうちに気を許したりしている。仲間を裏切ったクロノに対しては、アイオーンが目をかけているにもかかわらず頑なに拒絶するため、複雑な感情を抱いている。悪魔としての本来の姿は髪や眉のない異形の顔立ちに、鎧をまとった姿。50年前は巨大な尖角が生えていたが、魔界からの縛鎖を防ぐため切り落としている。

集団・組織

マグダラ修道会 (まぐだらしゅうどうかい)

悪魔や化け物など、さまざまな超自然現象による被害を防ぐための組織。本部はニューヨークに存在し、各地に支部を作りアメリカ全土の超自然現象と日夜戦っている。組織の発端は宗教改革の時代の魔女狩りに起因するため、プロテスタント系キリスト教教団の影響を色濃く残しており、シスターや牧師が多数所属している。各方面への強い影響力を持ち、悪魔や悪霊によってもたらされた被害の後始末を行ったり、福音弾など独自の装備を制作したりしている。また、修道会に所属する悪魔祓い(エクソシスツ)には実力に応じて階級(クラス)を設定しており、上から1ST(ファースト)「修道騎士(ミリティア)」、2ND(セカンド)「修練士(ノービス)」となっている。各地の支部にはエドワード=ハミルトンのように「長老(エルダー)」と呼ばれる役割を持つ者が存在し、修道会の意思決定に大きな影響を与えている。最終決戦では魔界が目覚めた際の余波で起きた津波でニューヨーク本部は壊滅。復活した魔界に対抗するため、ケイト・ヴァレンタインが結界船メタトロンで各地の戦力を率いてロゼット=クリストファとクロノの援護を行った。

その他キーワード

魔界 (ぱんでもにうむ)

悪魔達の母であり、始祖であり、悪魔達の住まう世界そのものを指す言葉。その正体は悪魔達の暮らす船そのものであり、距離感がわからなくなるほどと形容されるほどの巨大な「魚」の姿をしている。内部も広大で、悪魔達の暮らす町が存在する。現在は大西洋の海底に沈んで休眠状態となっており、魔界の中枢制御体が女王蟻のように新しい世代を生み、魔界の環境を管理している。中枢制御体は悪魔を統率するための制御コード「縛鎖(ギアス)」を持っており、これを利用する事で悪魔達の行動を抑制する事ができる。ただし、悪魔達へは尖角を通じて縛鎖を下すため、尖角のない存在には干渉する事はできない。その正体は、遠い星の彼方からやって来た「来訪者」の移民船で、正式名称は「航母パンデモニウム」。1万年前、地球に移住するため来訪したが、転移に失敗し多大な被害を被る。その際に中枢制御体が破損し、艦の意思決定を行う貴族階級が全滅したため、残った者が女性の悪魔や人間を中枢制御体の身代わりにしながら船の機能回復に努めていた。現在は長い月日の果てに真実を知る者がいなくなり、ただ身代わりを立てるシステムをひたすらに繰り返すようになっている。

福音弾 (ごすぺる)

マグダラ修道会の悪魔祓いが使用する対悪魔用の弾丸。錬金術で精製した希少銀に極小単位の呪文を転写した魔法の弾丸で、当たれば強力な力を持つ悪霊も一撃で葬り去る威力を誇る。炸薬の代わりに聖油を用いる「聖火弾(セイクリッド)」に比べても圧倒的な威力を持つが、反面コストと手間が掛かり、撃つ際の反動も大きいため取り回しが悪いなど欠点も存在する。最終決戦では最新装備として福音弾の欠点を克服し、ほとんど反動がない上に威力を上昇させた「四聖文字砲(テトラグラマトン)」が登場している。

罪人 (とがびと)

魔界に反逆した悪魔に押された烙印。主犯者はアイオーンで魔界の支配から脱却し、自由を手にする事を目的として活動している。当初はかなりの数の悪魔が所属しており、空中要塞「楽園(エデン)」を本拠地として活動していたが、追っ手の悪魔達との戦いでほとんどが死亡している。またクロノも当初はアイオーンと志を同じくしていたが、マグダレーナとの出会いをきっかけにして離反している。ただしアイオーンから離反しても、クロノは罪人として未だに魔界の悪魔達からその存在を付け狙われている。

尖角 (ほーん)

悪魔の頭から生えている二本の角。その形状は個人差があるが、悪魔の生命維持活動に必要な霊素(アストラル)を吸収する重要器官となっている。悪魔の力の源にもなっており、悪魔は尖角を利用する事でさまざまな力をあやつる事ができる。また逆に他者の尖角を移植する事でその能力を使用する事も可能で、ヨシュア=クリストファはクロノの尖角を身につけた際、本来はクロノが持つ「時間凍結」の能力を使用している。実は悪魔の尖角にはアンテナとしての機能も存在し、魔界から縛鎖(ギアス)を受信する。魔界の縛鎖下ではその行動がほとんど抑制されてしまうため、アイオーンは魔界に対抗するため自らの尖角を折り、剣へと加工している。

代行者 (あぽするず)

強い神霊力を持った存在で、マグダラ修道会では預言に記された神の地上代行者「御使い」ではないかと考えられている。アズマリア=ヘンドリックとヨシュア=クリストファが代行者とされ、それぞれ特異な能力を持つが、同時に力の代償としてアズマリアは不運を招き寄せ、ヨシュアは極度の虚弱体質となっている。その正体は生命エネルギーの大河「アストラルライン」に選ばれし者で、死んでいった亡者達の代弁者であり、星の意思の代行者とも言うべき存在。魔界は霊素(アストラル)を食い荒らす存在として敵視しており、アイオーンは魔界を滅ぼす鍵として七人の代行者を集めていた。ヨシュアとアズマリア以外の代行者の少年少女は「楽園」で眠らされていた。最終決戦では七人の代行者によってアストラルラインを制御し、魔界中枢に大量の霊素を叩き込み中枢制御体の処理をオーバーフローさせた。

メタトロン

マグダラ修道会が建造した巨大な飛行船。強力な結界を張りながら飛行が可能なため「結界船」とも呼ばれている。主砲である「聖三位砲(トリスアギオン)」は一撃で数十体の悪魔を消滅させる威力があるほか、広大な甲板を持ち、多くの悪魔祓いが搭乗・戦闘ができる船となっている。罪人達との最終決戦では、ケイト・ヴァレンタインを船長としてロゼット=クリストファを援護し、多数の悪魔や魔界と戦った。

レギオン

悪魔の体組織を構成する、最下級の意志を持たない悪魔。無数の意志を持たない群れの悪魔であるため「群体」や「群魔」とも書いて「レギオン」とも呼ばれる。レギオンは上位の命令を聞くように設計されているため、力を持つ悪魔が自身の体組織を構成する悪魔を、無意識の内に命令を下して肉体を構築している。またレギオンは尖角が吸収した霊素を用いる事で増殖し、悪魔の肉体を修復する事が可能となっている。レギオンの命令系統の最上位には魔界が存在し、縛鎖(ギアス)によって魔界が悪魔達のレギオンを統制する事も可能なため「兵隊」と書いて「レギオン」とも表現される。

悪魔 (あくま)

人に仇なす異形の存在。霊素(アストラル)を吸収するための2本の尖角と、体の大部分が吹き飛ばされても生命維持活動を続ける体組織「レギオン」を持つのが特徴で、人間を超える圧倒的な能力と寿命を持つ。人間と契約する事で、その人間の霊素を代償として力を振るう事も可能。その際には人間が悪魔の上位者となるため、縛鎖によって契約者の意志によって行動が縛られてしまう。また人間の霊素とは「魂の時間」そのもので、寿命を削るものであるため、悪魔が強大な力を振るえば振るうほど契約者の寿命は短くなる。悪魔の生態は女王蟻や女王蜂といった生物に近く、「魔界」の中枢制御体が母としてすべての悪魔を生み、管理している。このため悪魔には家族の概念がなく、同胞意識が強い。悪魔の中では同胞殺しは最大の禁忌とされているため、「罪人」達はすべての悪魔からその存在を狙われている。その正体は遥か昔に「魔界」に乗って星の彼方からやって来た「来訪者」の末裔。長い時代の中で自分達のルーツも忘れ去られており、悪魔達はかつて作られた社会システムに疑問を持たず、それをひたすら継続している。

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