秘密 THE TOP SECRET

秘密 THE TOP SECRET

死者の脳を覗き込み、生前にその脳の持ち主が見ていた映像を映し出す機器「MRIスキャナー」を用い、薪剛と青木一行を中心とする警察庁科学警察研究所法医第九研究室(第九)がさまざまな難事件を解決していく姿を描いた近未来SFサスペンス。白泉社「メロディ」1999年3月号から2012年8月号にかけて連載された作品。物語は続編の『秘密 season 0』に続く。第15回「文化庁メディア芸術祭」マンガ部門優秀賞受賞(2011年)。

正式名称
秘密 THE TOP SECRET
ふりがな
ひみつ ざ とっぷしーくれっと
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
 
スプラッター・猟奇
レーベル
花とゆめコミックス(白泉社)
巻数
既刊12巻
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世界観

タイトルの「秘密」は個人が「墓まで持っていく秘密」を意味している。この「秘密」は今までは決して暴かれることがなく、本人の死亡と共に永遠の謎となるはずだった。ところが、毎日自分が頭の中で思い描く、良いこと、悪いこと、良い行い、悪い行い、そんな自分だけのもののはずの「秘密」がMRI捜査により第三者に見られてしまうという、ある意味悪夢のような近未来が描かれていく。

秘密 —トップ・シークレット—』では死者の脳から記憶を読み取るMRIスキャナーの技術を使い、科学警察研究所法医第九研究室の捜査員が、あらゆる「秘密」を根こそぎ暴いてしまう。もちろんこのMRI捜査は犯罪捜査という大義名分の元にだけ許されている。

それでも死者の「秘密」を暴くことは非人道的ではないのか? 犯罪者の病んだ精神によって歪んだフィルターがかかった怒りや憎しみ、残忍な行動を目の前に突き付けられて、捜査員は正気を失わなずにいられるのか? など重いテーマが立ち上がる。

人間が心や行動に「秘密」を持つ理由は深く、しかも重い。捜査員は犯罪捜査という目的のために人の悩み苦しみ、密かに誰かを想う気持ち、後悔、狂気等に生々しく立ち会うことになる。

秘密 —トップ・シークレット—』の描写は精緻で淡々として見えるがゆえに、逆に痛々しいストーリーや「秘密」の重さを際立たせている。「秘密」が「秘密」でなくなる時、真の恐怖、自分の世界の変容に読者は真摯に向き合うことになる。

あらすじ

「秘密 —トップ・シークレット—1999」第1巻

第1話は読み切り短編で本編とは別の番外編。舞台はアメリカ。第57代大統領、ジョン・B・リードはアメリカの歴代大統領の中で最もクリーンと言われている。清廉潔白、汚点のないところが汚点と言われるほどである。そのジョン・B・リード大統領が休暇中に別荘で死去する。死の原因が事故なのかそれとも殺人事件なのかを探るべく、最新の捜査技術「MRIスキャニング」が適用される。

「MRIスキャニング」は死んだ人間の見ていた映像(脳の記憶)を最大2年間までMRIスキャナーでスクリーンに映し出す技術である。ウィルス予防のために埋め込まれている脳内チップにより、脳が見た電気刺激を再現できる。この映像を分析する事で大統領の死の原因を探っていくが、映像は音のない映画の様であり、口の動きを読唇術で解析して何を話しているかを読み取る。

ジョン・B・リード大統領が感じていたこと、その毎日のもの思いのすべてが脳の再現映像によって丸裸にされていく。風呂、トイレ、ベッドの中のことまで全てが暴かれていき、ついに大統領が墓場まで持って行こうとした「秘密」が明らかになってくる。

「秘密 —トップ・シークレット—2001」第1巻

2060年新春、皇室の結婚式に日本中が沸き返る中、同じ少年院にいた少年たちが次々と自殺していく事件が起こり、科学警察研究所法医第九研究室で日本で11例目のMRI捜査が始まる。1999年当時より進化したMRI捜査は、死亡後10時間以内に脳を取り出すことができれば脳内チップなしで映像の再現が可能であり、しかも最大5年まで遡ることができる。

青木一行は、宇宙ステーションばりの最新設備を誇り、8人の捜査員のほとんどが東大・京大卒で占められるエリート集団「科学警察研究所法医第九研究室」、通称「第九」に配属される。

「第九」の室長・薪剛は、33歳だが見た目は未成年にさえ見えるほど若く、容姿端麗であるが性格に癖がある。天才的な頭脳を持ち、常にクールだがヒステリー気味で、部下を急に怒鳴りつけたり、急に気を失ったりもする。死者の脳をスキャンし生前の記憶を映像化するMRI捜査の危険性から、薪は青木に「お前のように、見た物や聴いたことをそのまんま信じて受け止めてしまう単純な人間は、狂った脳に簡単に引きずり込まれる」と「第九」には向いていないことを告げる。

「第九」の捜査官は、死亡した猟奇的な殺人犯の狂気や被害者の恐怖や絶望に満ちた脳の映像を毎日見続けて捜査をしていくため、精神に異常を来したり、自殺したり、入院を余儀なくされることも多い。命を削るようにして捜査員たちが「秘密」のベールをはぎ取り、明らかにしていく事件の真実が、事件関係者の心を救うことができるかどうかはわからない。真実を知ったために、さらなる地獄に落ちてしまうことさえある。MRI捜査は革新的だが無慈悲でもある諸刃の剣である。

実は、薪は同僚で親友だった鈴木克洋を正当防衛で射殺した過去があり、そのトラウマに苦しみぬいていた。危うい精神のバランスを辛くも保ちながら、薪は「第九」を背負っていた。青木は薪とともに、凶悪犯・貝沼清孝が引き起こした「28人連続殺人事件」の解明に挑んでいく。事件捜査に取り組んでいく中で青木と薪は限界まで互いにせめぎあい、そのヒリヒリした感覚の中で深く共感していく。

「秘密 —トップ・シークレット—2002」第2巻

2060年8月、男ばかりの世界だった科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)に、初の女性職員・天地奈々子が配属される。彼女は生霊やオーラが見える、という特異な能力と感性の持ち主だった。教育係を押し付けられた青木一行だったが、天地奈々子の空気を読まない仕事ぶりや口を開けば霊やオーラだのという発言にうんざりしてしまう。

そんなある日、彼女は所長の薪剛に対して重大な基本的ミスをおかす。彼女への指導責任を薪から厳しく問いただされた青木は、苛立ちを抑えきれない。渋谷の連続少女殺人事件のヒントを天地が切り出しかけたが、突き放し怒鳴りつけてしまう。それが青木が彼女と交わした最後の会話となった。配属3ヶ月後、天地奈々子が無断欠勤した3日目、「第九」に臓器専用のキャリーケースが送りつけられる。その中に入っていたのは、人間の脳と「SEARCH MY BODY」と書かれたメッセージカード、それに天地の写真だった。

脳は天地のものであることが判明したため、MRI捜査にかけて脳内の映像を見ることが決定する。「第九」の捜査員たちがMRI技術で脳内を探っていくと、そこに現れたのは壮大な夢だった。脳の見ていた夢を解読し、事件解決を目指していく。

「秘密 —トップ・シークレット—2003」第2巻

父親が亡くなり、実家の福岡で葬儀を終えた青木一行は、年明け早々に科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)に戻ってきた。葬儀中、母親から頼まれたという姉に、「お父さんの脳みそ取って見たりしないわよね?」と「第九」の仕事に疑念を示され苦悩していた。

そんな青木に薪剛室長は、露口浩一死刑囚の脳を見る「特捜」を命令する。通常の「第九」の捜査と「特捜」が決定的に違うのは、容疑者の刑がすでに確定していることである。容疑者は刑がすでに執行され死亡しており、判決が覆ることはないためである。

薪室長の期待に応えようと「特捜」に打ち込む青木だが、露口浩一の脳に映っていたのは彼が殺人を犯す場面ではなく、相模湾に投棄されたはずの娘・露口絹子が刃物を片手に返り血を浴びてこちらを振り返っている姿だった。そこへ、露口浩一に殺されていたはずの露口絹子が発見されたとの知らせが「第九」に届く。

「秘密 —トップ・シークレット—2005」第3巻

2061年8月、左手左足を粉々に粉砕され、絶命したあとに全身の皮を剥がれたうえ、首を落とされるという猟奇的な殺人事件が発生する。脳には損傷がなかったため、科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)がMRI捜査に取り組むことになった。

被害者の脳が見た映像には、メールや手紙で「5年前にいったい何を見た?」「5年前の死神がお前を迎えに行く」という脅迫まがいの文章があった。そして最後の映像には、何かのマスコットのような着ぐるみが凶器をふりあげている姿があった。脅迫メールに書かれていた5年前の死神とはいったい何なのか? 被害者は5年前にいったい何を見たのか? 真実の追及が始まる。

アイスを買い出しに行かされていた青木一行が、着ぐるみの映像をひと目みて「チャッピーですよね、その着ぐるみ」と言う。「チャッピー」は青木が買ってきたアイスの袋にもプリントされていた。「長ぐつをはいた猫」をモチーフにした、立川市の「花とゆめ動物公園」のオリジナルキャラクターで、小学生低学年に人気のキャラだとわかる。「第九」の捜査員たちは、着ぐるみを手掛かりに猟奇的殺人事件の犯人の「秘密」に挑んでいく。

「秘密 —トップ・シークレット—2007」第4巻

西武新宿線沿線で、1週間に4人が殺害される通り魔的連続殺人事件が発生した。これらの事件は、1週間前の通勤電車内での薬剤師刺殺事件とつながりがあると薪剛室長が見抜く。薬剤師刺殺事件は乗車率140%の混んだ電車内で薬剤師が刺殺され、停車駅の高田馬場駅で犯人も目撃者たちも、人ごみに紛れ込んで消えてしまった都会のミステリーのような事件だった。

青木一行が4人目の被害者・岸谷理香子の脳をMRI捜査していくと、被害者4人全員が1週間前の薬剤師・里中恭子が刺殺された事件現場車両に乗り合わせていたことがわかる。4人は里中恭子が刺殺されるところを見ていたはずだが、誰ひとり警察に名乗り出てはいなかった。岸谷里香子の脳の視界には、薬剤師・里中恭子が車両内で言い争いになった男に刺された姿と、そこにかがみこみ、助けようとしている男の姿が映し出されていた。

青木は、岸谷里香子が殺害される寸前に脳が見ていた映像から、被害者4人に共通するある身体的特徴を確認したうえで犯人は殺害に至ったと推測する。

その身体的特徴についての所見を得るため、青木は4人の遺体を鑑定した法医学研究所第一研究室の「女・薪」とよばれる監察医・三好雪子にMRI映像を見せ、なにか共通する身体的な特徴があるはずだと詰め寄る。

「秘密 —トップ・シークレット—2007 特別篇」第4巻

科学警察研究所法医第九研究室室長・薪剛は犯罪捜査という名目で死んだ人の脳を通して、その「秘密」を暴いてきた。ところが自分だけは自分の持っている「秘密」を守り通そうとしている。そんな勝手なことが許されるのかと、自問自答して苦しんでいた。その「秘密」は国家機密に関わる石丸大臣自殺事件のものと、青木一行に関わるまったくの個人的なものの2つがあった。誰にも話せない孤独を抱えこんで、夜眠ることさえできない薪の苦悩が描かれていく。

「秘密 —トップ・シークレット—2008」第5巻

癌の末期で、もう長くはないことを悟った老人が、神父に自分の犯した殺人について懺悔する。「死ぬ前に、殺して埋めた子供を土の中から出してやりたい」。老人は60年前、金欲しさに子供を誘拐したが身代金授受に失敗し、顔を見られたために子供を殺害して土に埋めたのだった。

老人の供述通りの場所から発見された遺体は、化学工場跡地という特殊な土壌により屍蠟化していた。今にも起き出してきそうな姿をしていたが、遺体は老人が殺害した子供のものではなく、中年の男のものだった。老人が犯した殺人ではない、別の事件が浮かび上がる。

屍蠟化死体を司法解剖することになった科学警察研究所法医第一研究室の監察医・三好雪子は、この死体は20年~25年前に埋められたものだと鑑定し、まだ時効になっていない可能性を指摘する。死者が生前見た映像を再現し、新たな殺人犯を追求することを科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)に依頼する。

しかし「第九」室長の薪剛は、このMRI捜査依頼を断る。表面上の理由は技術的な困難さと他に優先する事件が山ほどあるいうことであったが、実はすでにこの事件の真相に気づいていることを暗にほのめかしていたのだった。

そんな薪に「意地悪だ」と思わず口走ってしまった青木一行は、薪に命令され勤務時間外に1人でその脳のMRI捜査をすることになる。浮かび上がってきた恐ろしい事件の核心におののく青木だった。

「秘密 —トップ・シークレット—2008 特別篇」第5巻

科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)副室長・岡部靖文は、ある日、兄・瑛と弟・歩の幼い兄弟と出会う。岡部の勤務先である「第九」のMRI捜査の内容を知り、兄の瑛は「お父さんやお母さんが僕の頭の中の歩を見たらどう思うのかな。僕ばっかり怒りすぎたって少しは反省してくれるかしら」と岡部に問わず語りに語りかけてくる。思いもかけぬ事件はそこから始まった。

「秘密 —トップ・シークレット—2008 PIECE OF ILLUSION」第6巻

3年前の「貝沼事件」の直後に、「コンビニ店員惨殺事件」が起こる。容疑者は40歳の女性・小島郁子で、店員2人を店の奥で刺殺した後、逃げた店員1人を商店街まで追いかけ刺殺する。この時巻き込まれた通行人も後に死亡し、最終的に4人が死亡した。その後、容疑者は自宅の風呂場で首つり自殺したが、母親はすでに亡くなっていたため、独り自宅で認知症の父親の介護をしていたことがわかる。容疑者の自殺により事件の原因解明をMRI捜査で行う方針が決まり、捜査の全権が捜査一課から科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)に移る。

捜査の全権が「第九」に移ったことに、「あんなのは科学捜査でもなんでもない。ただの覗きと同じじゃないか」と岡部靖文は反発していた。岡部は捜査一課の生えぬきで、迷宮入り寸前の事件を解決して2階級特進した、全国30万人の警察職員の憧れの存在であった。そんな岡部が、「貝沼事件」のMRI捜査により室長の薪剛以外の捜査員がいなくなってしまった「第九」に配属される。

薪は「貝沼事件」による「第九」の崩壊や、同僚で親友の鈴木克洋を失ったトラウマで日々幻覚に悩まされていた。しかし人前でそれを見せるわけにはいかず、人知れず苦悩し続けていた。

岡部は警視総監から、職務時間中に警察官が同僚・部下を撃ち殺すという失態を引き起こした薪を監視し、室長としての薪の能力や精神状態に問題はないか、貝沼清孝の異常な脳に感化されていないか報告をするように求められる。

刺殺された女性の脳のMRI捜査が始まり、被害者の加害者に対する一方的な嫌悪の画像が映し出される。そのあまりにリアルで生々しい事件の映像に岡部は驚愕する。加害者の置かれた状況は救いのないものであったことが明らかになり、事件の真相はとてもショッキングなものだった。

「秘密 —トップ・シークレット—2008 特別編 Copy cat」第6巻

一家惨殺事件が相次いで起こり、世間は恐怖におののいていた。事件の手口がイギリスの古いTVシリーズ「マーダーケース」の再現映像に似ていることを、青木一行が突き止める。狙われた家の立地条件、侵入方法、凶器等が酷似しており「模倣犯」である可能性が高まった。

青木は室長の薪剛に褒められ舞い上がる。その夜、青木は科学警察研究所法医第一研究室の監察医・三好雪子にプロポーズをしている夢を見る。ケースから指輪を取り出そうとするが、自分はまだ指輪を買っていないことを思い出す。しかし、この指輪は見たことがあると自分の過去の記憶を探っていく。ついに見つけた記憶は、2年前にMRI捜査で見た鈴木克洋の脳の映像だった。それに気づいた青木は、一家惨殺事件が単純な「模倣犯」であるかどうか確信を失っていく。

「秘密 —トップ・シークレット—2009」第7巻

3月末、桜が咲き散りゆく中、千堂潮外務大臣の一人娘・千堂咲が誘拐される事件が発生する。4月に入り、金の要求も目的も明らかではない犯行声明が各マスコミに送られた。容疑者の吉田さなえは「大臣に言いな。もうあんたの娘は帰ってこない、二度と、帰って来ないってね」と言い残し、警官隊が踏み込んだ際に自ら頸動脈を切断し自殺した。

死亡した容疑者・吉田さなえの脳をMRI捜査して千堂咲の居場所を特定し救出することを目指し、捜査本部から科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)に全面協力の要請があった。

吉田さなえの脳をMRI捜査していた青木一行は、千堂咲と思われる制服、髪型の少女がコンテナに入れられ、貨物船に積み込まれた映像を見つける。薪剛は船の船尾に書かれた文字の意味や旗から、貨物船は中東の「エルスエコ」の貨物船「アルタイル」であることを解読した。「第九」メンバーは船の現在位置確認のために、海上保安庁と国際海事局にアクセスを開始する。

一方、曽我育秀が容疑者・吉田さなえと千堂潮外務大臣の接点を見つける。吉田さなえは20年前の「デルナ集団拉致被害者」の遺族だった。デルナ集団拉致被害者とは、政情が不安定な国・デルナに日本政府の依頼で行ったボランティアたちが集団で拉致され、そのうち10名がのちに死体で発見された事件であった。残り12名の不明者たちは遺体の出ないまま死亡と断定された。

捜査活動の継続を要求した家族の訴えは却下され、12名の命より国交・国際世論を重視した判断をしたとされたのが、当時、中東アフリカ局長だった千堂外務大臣だった。千堂外務大臣の一人娘・千堂咲の拉致誘拐は、遺族たちによる千堂大臣への復讐とする見方が強まるが、事件は意外な展開を見せ始める。

「秘密 —トップ・シークレット—2009 特別篇」第8巻

科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)では、青木一行科学警察研究所法医第一研究室の監察医・三好雪子の婚約を祝うという名目で飲み会が開催された。来ないはずだった室長の剛薪が私服で現れ、「第九」の将来像が語られる。今の「第九」は解体され、新たに全国8カ所に新しい「第九」ができると言う。

「秘密 —トップ・シークレット—2010」第8巻

神奈川県を中心とした広い範囲で強い地震が起きた。死者の報告はないはずだったが、ただ1つの小学校だけが例外だった。3人の死亡者が出てしまったのだ。1人は小学5年生の男子児童で屋上から転落し、もう1人も小学5年生の男子児童で小学校前の道で車にはねられて死亡した。3人目は男性教諭で、体育館倉庫で倒壊した棚の下敷きになって死亡していた。この3人の死亡した状況、時間に不審な点が多すぎるため、その原因究明は科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)のMRI捜査に委ねられる。

一層多忙になった「第九」に新しい人員が配属されるが、それは風采の上がらない、見た目は中年の山本賢司という小柄な男だった。しかし山本はその風采とは異なり、元副検事というエリートで、「第九」に欠けていた法的見地からの判断に大きな期待をかけられていた。

小学校で死亡した3名の検死をした、科学警察研究所法医第一研究室の監察医・三好雪子が結果を説明する。それによると男性教諭の直接の死因は倒壊してきた備品棚による頭蓋骨骨折と内臓破裂だったが、背中には失血死するほどの刺し傷があった。交通事故死した小学5年生の男子児童は交通事故による内臓破裂が死の原因で、屋上から転落した男子児童は転落死で、事件性を差し示す所見はなかった。

「第九」の捜査員たちは、最初に転落死した小学5年生の男子児童の脳をMRI捜査していく。ところが現れた画像は、「第九」の面々の度肝を抜く異様なものだった。突然、山本賢司が立ち上がり、捜査中止を薪剛に進言する。

「秘密 —トップ・シークレット—2010 The Last Supper」第9巻

2062年、青木一行の母親が6月に姉夫婦の子どもの顔を見に上京し、しばらく滞在することになった。ちょうどよい機会とみて、青木は三好雪子を母親に紹介することにした。

しかし三好雪子は、自分が青木よりひとまわりも年上で、死体を検死する監察医であることを気にしていた。青木は、「雪子さんなら大丈夫。母は絶対気に入ります!」と断言する。眼鏡をはずし顔を洗って髪をおろした青木の姿は、雪子のかつての恋人、鈴木克洋に瓜二つだった。

一方、宇野は、科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)から情報が漏洩していた事件の侵入経路を調べていた。その結果、外部から侵入された形跡はなく、犯行は警察内部の者の仕業だったことがわかる。宇野によると2回侵入されており、1度目は犯人は侵入に失敗していた。侵入失敗の原因はパスワードが古かったためで、今の「第九」メンバーが入る前のパスワードが使われたからだった。宇野の報告を聞き、薪剛はあることを確認しようと車のキーを持ってどこかへ出かけようとする。しかし、薪の車には細工がされていた。

薪の命が狙われる背後には、以前薪がたった1人でMRI捜査をした「カニバリズム事件」が潜んでいた。青木や姉夫婦、三好雪子の周辺には謎の大男の影が現れる。そして「第九」に、薪と同じく「貝沼事件」の生き残りメンバーで、精神病院に入院していた男、滝沢幹生が帰ってきた。

「秘密 —トップ・シークレット—2010 END GAME」第9巻~

「連続一家惨殺事件」の捜査が始まる中、鈴木克洋を正当防衛で射殺した3年前の事件と今回の事件が混じり合い、薪剛は悪夢にうなされている。

TVのトップニュースは、4日前に発生した「恵比寿夫婦惨殺事件」から、新彊(しんきょう)大学医学教授イリハム・ヒラル・アイ氏の最新映像に代わっていた。この人物は、2050年から10年以上軍施設に軟禁されている、中国から独立したチザンメールの反政府運動のリーダーである。

「連続一家惨殺事件」の捜査会議が始まり、管理官は「恵比寿夫婦惨殺事件」の犯人の意図を主張する。第一発見者の青木一行を犯人に仕立て上げることもできたはずのところを、犯人は意図的に異なる証拠を残したという。

薪剛科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)で「恵比寿夫婦惨殺事件」の被害者・倉辻政信および倉辻和歌子のMRI捜査に入り、犯人はなぜ「連続一家惨殺事件」と似た手口を使ったのか、この2つの事件のつながりは何なのか、何の目的で倉辻家を狙い夫婦を惨殺したのかを明らかにすると言明した。

夫の政信の脳は滝沢幹生宇野がMRI捜査する。和歌子の脳は薪剛山本賢司が担当し、今井曽我育秀小池穂高はその補佐にまわることとなった。岡部靖文と青木は「連続一家惨殺事件」の洗い直しを始めていた。そんな中、宇野はチームを組んでいる滝沢の素性を密かに調査していたが、ついに、本当の「滝沢幹生」はまったく違う人物であることにたどり着く。現在チームを組んでいる滝沢と名乗る男は、戸籍をすり替えて日本人の警察官として採用され「第九」に配属された、謎の人物だったのだ。

科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)の重要機密「レベル5データ」が強奪され、しかも薪剛が被疑者に断定された。警備員に対する傷害およびレベル5データ強奪の容疑で、薪に対する本部内手配の決定がなされる。現職警察官でキャリアの警視正である薪に対し、拳銃を所持しているという理由で、警察は捜査員の拳銃使用許可を出した。それはまるで、警察が薪やレベル5データをなかったこととして葬ろうとするかのようだった。

無許可でレベル5区間に入る権限を持つ薪がなぜ、わざわざ警備員を傷つけ監視カメラにその映像を残し、データを強奪したのか? その理由は誰にもわからなかった。薪の「第九」室長としての立場を忘れた、常軌を逸した行動の意味するところは何なのだろうか。そして、薪はどこへ消え去ったのだろうか。その鍵を握るレベル5データは「カニバリズム事件」に関するものと判明する。青木一行は、薪をなんとか探し出そうと走り出す。

メディアミックス

TVアニメ

2008年4月から9月にかけて、本作『秘密 THE TOP SECRET』のTVアニメ版『秘密 ~The Revelation~』が日本テレビにて放送された。監督を青山弘、シリーズ構成を鈴木智、キャラクターデザイン・総作画監督を木下久馬が務め、薪剛役を関智一、青木一行役を浪川大輔が演じた。

実写映画

2016年8月、本作『秘密 THE TOP SECRET』の実写映画版が公開された。監督を大友啓史、脚本を高橋泉、大友啓史、LEESORKJUN、KIMSUNMEEが務め、薪剛役を生田斗真、青木一行役を岡田将生が演じた。

登場人物・キャラクター

薪 剛 (まき つよし)

科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」の室長。階級は警視正。2027年1月28日生まれのAB型、身長163cmで体重50kg。2060年時点で33歳。小さい頃の夢はアメリカ人になり全米スペル選手権に出ること。スペル選手権とは子供だけが選手として参加でき、難しい英単語を耳で聞いてそのスペルを当てて勝ち抜いていくもの。例えば「捜査」という英単語は「investigation」なので「アイ、エヌ、ブイ……」と答える。趣味は外国語学。私生活は秘密のベールに覆われており、孤独な雰囲気をいつもまとっている。 小柄で女性のような端正な顔をしており、首も細く未成年と間違えられることもあるほど若く見える。頭脳明晰で冷静沈着、記憶力、判断力いずれも素晴らしい。異例の早さで昇進して「第九」の室長となる。性格はクールで仕事には厳しく、部下を激しく叱責することも多い。「第九」から辞職する者の半数は室長についていけなくなったためと言われる。残りの半数は、犯罪者の脳内映像を見る職務の厳しさから精神が壊れて辞職する。 「第九」創設時からただ1人生き残っているメンバーで、「第九」で扱った事件すべてに関わっている。かつて凶悪犯の脳内映像を見たあと、残りの室員は全員自殺や入院に追い込まれたが、薪だけはただ1人正気を保っている。その脳内には凶悪事件の真相から国家機密にいたるまで、様々な「秘密」が刻みこまれていると言われており、そのため脅迫や誘拐、暗殺などの危険に晒されている。常に防弾チョッキを着用しており、その理由は、殺害される場合には脳の損傷による死亡を促し、死亡後にMRIスキャナーによって自身の脳内の「秘密」を暴かれることを避けるためである。 あえて自分に好意的な人間と距離を置こうとするが、これは自身が晒されている危険に相手が巻き込まれないようにするためである。部下の青木一行には複雑な危うい感情を抱いているが、それを周りに察知されないようにつとめている。心から信頼していた学生時代からの友人であり同僚の鈴木克洋を正当防衛によって射殺した過去を持ち、そのことが大きなトラウマとなっている。「第九」のMRIスキャナーによる捜査の可能性に輝く未来を見ていた鈴木の遺志を継ぎ、硬直した警察組織の中で日々、ほとんど寝ずに捜査に明け暮れている。

青木 一行 (あおき いっこう)

科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」の所員。警察内の階級は警部(2060年に22歳で配属)。2037年12月9日生まれのA型、いて座。身長189cmで体重75kg。やせ形長身で眼鏡をかけている。無類の動物好きで小さい頃の夢は獣医である。東京大学法学部卒で航空機操縦免許を持つ。福岡県出身。眼鏡を外した顔は、「第九」室長・薪剛が正当防衛で射殺した、彼の学生時代からの友人であり同僚だった鈴木克洋に瓜二つである。 性格は誠実で実直、人の話を信じやすい。気安い感じなので「第九」の先輩たちから、いつもおやつの買い出しを頼まれたり、からかわれている。両親はMRI捜査については、少なからず偏見を持っており、その対応に苦慮している。 薪室長の言うことを絶対視しており、その無茶ぶりにさえ喜んで翻弄されるがままになっている。事件関係者への共感力が高く、親身になりすぎたり一途な面がある。自分が正しいと思った場合には、職務を逸脱した行動を起こすこともある。姉・倉辻和歌子とその夫・倉辻政信夫婦の間に生まれた姪の倉辻舞を、我が子のようにかわいがっている。 仕事を通じて知り合った監察医・三好雪子に惹かれ、後にプロポーズし婚約に至る。

天地 奈々子 (あまち ななこ)

科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」の所員で初の女性捜査員。霊感が強いため生霊やオーラが見え、死体や犯罪に強い興味を持っている。凶悪犯罪と心霊現象との関係を研究をしたいという、少し風変わりな性格。初めて見たMRI捜査で、犯人が被害者の死体を切り刻む映像に嘔吐するがエクスタシーを感じていた。 彼女なりに一生懸命に捜査に取り組むが、その場の空気が読めないため対応がずれており、「第九」の男性同僚たちからは距離を置かれる。そのため、まだ新人の青木一行が天地の教育係を押しつけられてしまう。 配属3ヶ月後、天地は室長・薪剛に対して基本的だが致命的なミスをおかす。その後、無断欠勤が続き、とある事件に巻き込まれて帰らぬ人となる。

岡部 靖文 (おかべ やすふみ)

科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」の所員。元捜査一課の敏腕刑事で、警視総監から室長・薪剛の監視役としての密命を託され、「第九」に抜擢人事として異動された。現在は副室長代理で、次期室長候補者である。はじめは現場第一主義で、MRI捜査には否定的な感情を持っていたが、「現場の状況というものが必ずしも客観的とは限らない」ことを身をもって体験したことにより、MRI捜査に理解を示すようになった。また、薪に対しても、捜査員としての高い実力を持つ一方で、内面的な脆さを抱えていることを知り、彼の片腕となる決意をする。 2025年7月20日生まれのA型でかに座。身長181cm、体重79kg。薪室長より1学年上である。出身は新潟県で、警察官だった父親は岡部が子供の頃に病死している。母親、妹と弟の4人家族だが、妹や弟とは年が離れているため、岡部が父親代わりの存在であった。小さい頃の夢は1人部屋を持つことだったが、これは兄弟が多かったためと思われる。 高卒で警察大学校に入校し、卒業後には中野北、池袋西警察署などの所轄勤務を経て警視庁捜査一課へ配属される。迷宮入り寸前の事件を解決して階級特進し、全国30万人の警察職員の憧れの存在となっていた。その後、「第九」に異動となり、東大や京大卒のエリートたちと薪の間に立って調整役を務めている。

鈴木 克洋 (すずき かつひろ)

科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」の所員。故人。身長186cm、体重78kg、O型、かに座の2026年7月5日生まれ。神奈川県出身。家族は両親と妹。小さい頃の夢は警察官。趣味は夏はダイビングとサーフィン、冬はスキーで、三好雪子と出会うまでは、毎年、薪剛を連れて行っていた。2045年に東京大学法学部に入学、20歳で実家を出て東京にアパートを借り1人暮らしを始める。 警察大学校卒業後は警視庁上野東警察署、警察庁生活安全局、静岡県警刑事部、警視庁刑事部を経て「第九」へ配属される。2059年8月上旬、薪に射殺される。享年33歳。死亡時の階級は「警視」。 薪とは大学時代からの親友で、薪が心を許していた数少ない1人。画期的なMRI捜査技術が、犯罪捜査に果たす大きな進展に希望を抱いていた。薪の精神状態の危うさに気づき、「28人連続殺人事件」の犯人・貝沼清孝のMRI映像を独りで解析したことで精神のバランスを崩し、貝沼のデータを破壊して自殺を試みる。制止に入った薪に正当防衛で射殺されることを狙い発砲し、薪に撃たれて死亡した。 長身のイケメンで能力も高いが、意外に猜疑心が強く勘が鋭い。三好雪子とは婚約していた。

小池 穂高 (こいけ ほたか)

科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」の所員で青木一行の先輩。特徴的なのは糸のように細い目である。2032年1月6日生まれのA型、身長170cmで体重61kg。山羊座で出身は北海道。家族構成は両親と姉、現在独身で彼女はいない。 慶應義塾大学卒業後入庁、警察大学校を経て横浜西署、警備部警備企画課、警視庁警察生活安全部第二経済課課長、その後「第九」に警視として配属。小さい頃の夢は映画監督で、映画・洋楽マニア。常々自分は過小評価されていると思っている、典型的なサラリーマンタイプ。 皮肉屋で、室長の薪剛のことを完全には信頼していない。曽我育秀とはよくつるんでおり、買い出しに行かせたりして、青木のことを曽我と一緒にからかっている。

曽我 育秀 (そが いくひで)

科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」の所員で青木一行の先輩。東京大学卒業後入庁、警察大学校を経て福岡博多西署、警察庁交通局交通指導課、大阪府警察生活安全部第二経済課課長、その後「第九」へ警視として異動。丸刈りの頭が特徴的。2031年11月13日生まれのO型、身長165cmで体重68kg。さそり座で出身は大阪府。TVアニメ版では、名前が曽我孝に変わっている。 家族構成は両親と兄と弟で3人兄弟の真ん中。小さい頃の夢はオリンピック選手だが、出られれば競技は何でも良かった。陽気なボケキャラで、空気が読めないため出世できないと言われている。 小池穂高とはプライベートでも親しく、よくつるんで飲んでいたり、配属直後の青木一行にMRI映像を見せて脅かしたりしている。女性には全くモテず、通算25回のお見合いに失敗している。

宇野 (うの)

科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」の所員で青木一行の先輩。眼鏡をかけておりコンピューターやネットに詳しい。「第九」の機密漏洩疑惑事件では、アクセス解析から犯人の特定を目指す。貝沼清孝の起こした28人連続殺人事件のダメージから回復し現場に復帰した滝沢幹生と、捜査でコンビを組むことになる。

田城 良治 (たしろ りょうじ)

科学警察研究所の所長。穏やかな物腰で、小太りで禿げ上がった頭と眼鏡が特徴的な初老の男性。科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」に新人が配属されるごとに、紹介のために同道する。室長の薪剛の要望する能力の高い人材を的確に配属するので、薪からの信頼は厚い。

三好 雪子 (みよし ゆきこ)

科学警察研究所法医第一研究室、通称「第一」の監察医。2026年10月18日生まれのB型、体重53kgで身長は167cmあり、薪剛より4cm背が高い。出身は京都府。大学卒業後、慶應義塾大学の法医学研究室に入り、警視庁の科学警察研究所を経て「第一」で監察医となる。 男勝りで勝気であり、仕事にプライドを持っている。40度の熱があったとしても仕事をこなし、監察医としての分析に自信を持っている。ウイルスに感染して自分が死ぬかもしれない時にも、感傷に流されず職務を全うする精神的な強さを持っている。 人にどう思われるか気にしないタイプで、初対面の人の前でも平気で大あくびをしたり、寝不足の際には解剖台の遺体の真横で仮眠を取ることもある。ただ、男運の悪さや婚期が遅れていることを気にする人並な部分もある。格闘技は黒帯の腕前で、捜査員を投げ飛ばしたこともある。 薪とは古くからの友人で、「つよし君」と呼ぶ間柄。かつて鈴木克洋と婚約していたため、鈴木との死別を長らく引きずっていた。青木一行の真剣な態度に惹かれるようになり、後にプロポーズを受け容れ婚約する。ただし、本心では薪に深い関心を持っている。

山本 賢司 (やまもと けんじ)

科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」の所員。身長161cmで体重55kg。2025年6月27日生まれ。A型、かに座、出身地は長崎県。小さい頃の夢は裁判官。既婚者で中2と小学生の娘2人の父。 元副検事で司法試験と国家公務員Ⅰ級に合格しているエリートである。元副検事としての能力を買われ、薪剛によって「第九」にスカウトされた。「第九」が潜在的に抱えている、プライバシー保護や捜査の合法性に関する訴訟の可能性に対処する専門家としての活躍が期待されている。 学生時代の過酷なイジメ体験から対人恐怖症となり、性格は内向的で暗く、目つきも悪く、頭はかなり禿げている。「第九」内部の機密漏洩事件の渦中に配属されたため、捜査員たちから疑惑の目で見られてしまった。さらに年齢が同僚内で上なこともあり、「第九」に馴染めず浮いた存在だったが、徐々にメンバーとして打ち解けていく。

滝沢 幹生 (たきざわ みきお)

科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」の所員。本名はアスマン・イエルで、名前の意味は天・大地。2025年3月8日生まれ。身長185㎝、体重83kg、O型。チメンザール出身。小さいころの夢は世界平和。 かつて捜査員として「貝沼事件」を担当した際に精神を病んでしまい、治療施設に入院していた。薪剛は何度か面会に行っていたが、会うことは許可されなかった。2062年10月、病状が完治したとして職場復帰を果たしたが、その経緯に不自然な点が多く、薪は滝沢のアイデンティそのものに疑問を持っている。

今井 (いまい)

科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」の所員。青木一行の先輩で、ハリウッド俳優のような容貌で背も高く、白いスーツを爽やかに着こなして髪はオールバックにしている。作者によると「第九」で1番モテる男であり、独身だが彼女がいる。「第九」のメンバーの中でも、1番現実的な性格で状況判断が的確である。

ジョン・B・リード (じょん・びー・りーど)

アメリカの第57代大統領。アメリカの歴代大統領の中で最もクリーンと言われ、清廉潔白で汚点のないところが逆に汚点、と言われるほどの人格者でクリスチャン。52歳。別荘で休暇中に金銭目的の暴漢に襲われ刺殺されるが、その死の原因が事故なのか、それとも殺人事件なのかを探るべく、最新の捜査技術「MRIスキャニング」が適用される。 彼が自分の死を賭しても隠したかった「秘密」には、自身の誕生日パーティで娘のボーイフレンドとして紹介されたマシュー・ハーヴェイが深く関わっていたことが暴露されていく。

マシュー・ハーヴェイ (ましゅー・はーぶぇい)

オーストリアの反体制過激派武装組織「B・D」のトップのブレイン。推定年齢18から23歳、国籍不明のハンサムなインテリ男子で、FBIが追っている。本名はロス・マーコレイで、ジョン・B・リードの娘、デボラ・リードに取り入って大統領に近づいた。だが、その目的や任務等は不明のまま失踪した。

デボラ・リード

アメリカの第57代大統領、ジョン・B・リードの娘。勤務先の研究所でマシュー・ハーヴェイと知り合い、彼を父親の誕生パーティーに連れて行く。

ケビン・ルーミス

アメリカの第57代大統領、ジョン・B・リード刺殺事件解決のために、読唇術の能力でMRI捜査に協力する。捜査の実際を見る中で、MRI捜査に自らの「秘密」が暴かれることを危惧する。事件が解決した後、母の元から静かに姿を消したのは、誰にも知られたくない「秘密」を守るためだった。

貝沼 清孝 (かいぬま きよたか)

28人連続殺人事件の犯人。快楽殺人犯であり常軌を逸した手口で28人の少年を殺害した。実はかつてスーパーで万引き犯として捕まった時、薪剛にその罪を見逃されたことがあり、薪は貝沼に、自分が「第九」に所属していることやMRI捜査について話していた。以来、貝沼は薪に対して歪んだ愛情を抱くようになり、それが事件を引き起こすきっかけになったと思われている。逮捕後、貝沼は取調中に留置場内で自殺している。モデルは全米を震撼させたシリアルキラーで、「キラー・クラウン」の異名を持つジョン・ゲイシーである。 貝沼の死後、「第九」の捜査員たちはMRI捜査で貝沼の脳の映像を見たが、そのあまりの異常な思考に影響を受け錯乱したため、3人が死亡した。滝沢幹生も精神障害を負い入院することとなる。「第九」のメンバーは薪だけとなったが、薪も心に消えないトラウマを負ってしまう。

露口 絹子 (つゆぐち きぬこ)

家族を惨殺した罪で死刑執行された男・露口浩一の長女で、魔性の美貌を持つ21歳。「露口一家惨殺事件」当時18歳だった彼女は、失踪し行方不明となっており、父親に殺害されたと思われていた。露口浩一が死刑を執行された後、湖に転落し交番で保護された彼女は、自分が失踪して行方不明になっていた露口絹子であり、失っていた記憶を取り戻したと告げる。彼女は事件の影響で記憶喪失となり、甲府の施設で「山口愛」という名で保護されていたのだった。 露口浩一の死刑執行後、彼の脳を青木一行がMRI捜査していくと、露口の妻と次女の死体を見つけた後、血だらけの義母の脇に包丁を手に立ち尽くす露口絹子の姿が目撃されていたことがわかる。そこから事件のおぞましい「秘密」が立ち上がってくる。

露口 浩一 (つゆぐち こういち)

露口絹子の父で46歳。2058年に起きた「露口一家惨殺事件」の犯人として死刑執行された。露口はモルヒネで体の自由を奪った妻、義母、次女の家族3人を包丁で刺殺した後、頭部を鉄パイプで潰し脳を破壊していた。それはまるでMRI捜査を妨げる目的があるかのようだった。 その残虐すぎる犯行内容のためか死刑判決が確定し、わずか3年後の2061年1月9日に異例の早さで死刑を執行された。その死刑執行直前まで、長女の露口絹子を殺さなかったことを後悔し続けていた。そのあまりにも重い「秘密」が「第九」の捜査により徐々に暴かれていく。

篠崎 佳人 (しのざき よしと)

女の子に間違われかねない、薪剛に似た美少年。16歳の時に、遊園地「花とゆめ動物公園」のマスコット「チャッピー」の着ぐるみを着るアルバイトをしていた。声も女性的で、妹の篠崎香里と間違えられたり、わざと成り済ましたりしていた。11歳の時に大倉正に、妹の香里と共に拉致誘拐される。監禁されている廃墟に、進学塾の勉強合宿が終わった土屋雅紀や片岡修、石崎立矢、西澤、竹内が偶然訪れたため助けを求めたが、見て見ぬふりをされてしまった。 その後、妹の目の前で、大倉正から取り返しのつかない残虐な暴行を受け、一度は大倉の監禁を逃れ自宅に戻ろうとする。しかし、抱え込んでしまった「秘密」が両親を傷つけることを恐れ、姓を関口に変えて大倉と共に生活することを選択する。大倉が自分に愛情を持っていることを利用し、ある「秘密」の計画に着手する。

篠崎 香里 (しのざき かおり)

篠崎佳人の妹。「花とゆめ動物公園」近くの廃棄物処理場の元職員である大倉正に殺害された。

大倉 正 (おおくら ただし)

「花とゆめ動物公園」近くの廃棄物処理場の元職員で身障者、53歳。過去2回、子供にいたずらをして服役している。 火傷の後遺症により左半身の一部が麻痺し、足を引きずっている。さらに顔の左半分に深い火傷痕が残っており、皮膚移植も困難なこの障害のため小学生からもいじめられていた。 勤務していた廃棄物処理場は5年前に廃業となったが、大倉はそこに篠崎佳人、篠崎香里兄妹ら5人の幼児を拉致監禁していた。その際大倉は、破棄処分されたチャッピーの着ぐるみを着用していた。惨劇の幕開けを告げる「秘密」はそこから始まった。

里中 恭子 (さとなか きょうこ)

「秘密 —トップ・シークレット—2007」の登場人物で21歳の薬剤師。田無発新宿行きの西武新宿線車内で起きた「薬剤師刺殺事件」の被害者である。出身は中国で元の名は「朱美恵」だが、刺殺される2年前に日本に帰化していた。勤務する病院に張真が通院しており、2人は面識があったことがわかる。

張 真 (じゃん じぇん)

27歳。大手薬品メーカーの研究生として7年前に来日。中国南方の緑蘭島出身。 大学の研究と商品開発で5つもの商品特許を獲得したエリートで、実家も富裕層。腎臓に持病があり、通院していた病院の薬剤師・里中恭子に密かに恋愛感情を持っていた。 張真は、ある「秘密」の計画で電車に乗り込むが、そこで偶然、里中恭子が男と口論になる姿を目撃する。

浜田 葵 (はまだ あおい)

35歳。科学警察研究所法医第一研究室、通称「第一」の監察医・三好雪子の大学時代からの親友である。婚約者の早瀬昭二との結婚が決まったことを雪子へ報告しにきた際に、たまたま通りかかった薪剛に、婚約者の早瀬からDV(ドメスティックバイオレンス)を受けていることを見抜かれる。 早瀬はアルコール依存症だった。葵の「秘密」の本名こそが、次第に明らかになる屍蠟化死体事件の鍵を握っていた。

梨田 (なしだ)

80歳。癌の末期で、もう長くはないことを悟り、神父に自分の犯した殺人について懺悔する。梨田は60年前、金欲しさに子供を誘拐したが、身代金授受に失敗し、顔を見られたため、子供を殺害して土に埋めたのだった。

光浦 あかね (みつうら あかね)

95歳。60年前に息子を誘拐されたが、事件は迷宮入りしたままだった。癌の末期になり罪を告白した梨田の供述により、誘拐事件の全貌が解明されていき、誘拐された息子の運命と向き合うこととなる。

小島 郁子 (こじま いくこ)

40歳。「コンビニ店員惨殺事件」の容疑者。勤務先のコンビニエンスストアで同僚を含む4人を殺害したと目されている。彼女が殺人に至ったと思われる「秘密」の重さが、MRI捜査をする科学警察研究所法医第九研究室、通称「第九」の捜査官たちをたじろがせる。

吉田 さなえ (よしだ さなえ)

63歳。千堂潮外務大臣の1人娘・千堂咲が行方不明になり、その後に犯行声明が出された拉致誘拐事件の容疑者である。警官隊に踏み込まれ「大臣に言いな。もうあんたの娘は帰ってこない、二度と」と言い残し自ら頸動脈を切断して自殺した。

淡路 真人 (あわじ まさと)

66歳。自殺した吉田さなえの元夫であり、千堂潮外務大臣の1人娘・千堂咲の拉致誘拐事件の容疑者。20年前、1人娘の淡路瑞木が日本政府の依頼で国際医療援助隊に出向し、「デルナ集団拉致事件」の被害者となった。生死不明のまま捜査活動は打ち切られてしまったが、淡路真人は瑞木の生存を信じて、家族会での活動を続けていた。 しかし20年間の活動後、スキルス癌で余命1年と宣告され、家族会を脱会した。その際「私はこれから鬼になりますから」と言い残している。「千堂咲拉致誘拐事件」は、淡路真人のその後の「秘密」行動から始まった。

千堂 潮 (せんどう うしお)

現・外務大臣で元外務省の官僚。ボストン総領事や中東アフリカ局長を歴任している。 20年前、中東アフリカ局長在任当時に発生した、医療援助隊拉致事件「デルナ集団拉致事件」では、反政府団体の犯行に見せかけたデルナ政府の国家犯罪ではないかとの見方が強い中、行方不明の邦人12名の命より国交・国際世論を重視し、全員死亡と断定した上、捜査活動を打ち切った。2046年、事件は事実上終結し、翌年からはデルナ政府への日本の援助も再開され事件は闇に葬られた。 日本の国益を最優先し、邦人の命を軽んじるという千堂外務大臣の「秘密」が、「千堂咲拉致誘拐事件」の解決に向かう「第九」の捜査の中で、露わにされていく。

生島 京子 (いくしま きょうこ)

神奈川県田木津市付属小学校の女性教諭で、5年B組の副担任。彼女が抱えている同僚や生徒に対する「秘密」の闇は深く濃い。

山口 和英 (やまぐ ちかずひで)

15歳。自分がいじめた少年が自殺し、その幻影に追い詰められ、駅ビルの屋上から飛び降り自殺をした。

浅野 浩一 (あさの こういち)

17歳。自分がいじめた少年が自殺し、その幻影に追い詰められ、頸動脈を切断して自殺した。

北村 昌人 (きたむら まさと)

17歳。山口和英や浅野浩一と同じように自殺してしまうのではないかと危惧されていたが、唯一生存している。

平井 学 (ひらい まなぶ)

全盲の中学1年生。「露口一家惨殺事件」と深くかかわっている露口絹子と、飼い犬ZIP(ジップ)の散歩途中に再会する。その後、ZIPと一緒に交通事故死。死亡する直前、「露口一家惨殺事件」の加害者を特定する証拠に気がついていた。事件当時は小学4年生だった。

ZIP (じっぷ)

「秘密 —トップ・シークレット—2003」に登場する平井学の飼い犬。学と一緒に交通事故で死亡した。学と自分の死の真相をMRI捜査で調査される。

土屋 雅紀 (つちや まさき)

20歳。左手左足を粉々に粉砕され、絶命後に全身の皮を丁寧に剥ぎ取られ、最後に首を落とされていた。死体の発見が早かったため脳には損傷がなく、「第九」でMRI捜査をされることになった。

片岡 修 (かたおか おさむ)

土屋雅紀とは同じ進学塾に通っていた仲間で、片岡愛の兄。

石崎 立矢 (いしざき たつや)

土屋雅紀とは同じ進学塾に通っていた仲間。

西澤 (にしざわ)

土屋雅紀とは同じ進学塾に通っていた仲間。

竹内 (たけうち)

土屋雅紀とは同じ進学塾に通っていた仲間。

(さかい)

土屋雅紀とは同じ進学塾に通っていた仲間。

片岡 愛 (かたおか あい)

片岡修の妹で、チャッピーと篠崎佳人に連れ去られた。

森山 渚 (もりやま なぎさ)

都内のK女子学園の女子高生で17歳。岸谷理香子と同じ高校の友人。頸部を刃物で切り裂かれ他殺死体となって発見される。「薬剤師刺殺事件」の起きた電車に乗り合わせ、ウイルスに感染していた。

押井 正 (おしい ただし)

55歳で広島県から単身赴任中のサラリーマンだったが、頸部を刃物で切り裂かれた他殺死体となって発見される。「薬剤師刺殺事件」の起きた電車に乗り合わせ、ウイルスに感染していた。

林田 雅子 (はやしだ まさこ)

パートの主婦で、西新宿の職場に勤めていた。「薬剤師刺殺事件」の起きた電車に乗り合わせ、ウイルスに感染していた。

岸谷 理香子 (きしたに りかこ)

16歳。K女子学園の女子高生で、森山渚と同じ高校の友人。他殺体となって発見される。「薬剤師刺殺事件」のあった電車の乗客で、ウイルスに感染していた。

竹村 高志 (たけむら たかし)

44歳。杉並区上井草の会社員。「薬剤師刺殺事件」のあった電車の乗客で、ウイルスに感染していた。全身に出血班が出て黒く変色した状態で死亡する。

石丸外務大臣 (いしまるがいむだいじん)

「外交官一家惨殺事件」の任意取調を前に自殺し、遺書を残していた。しかし、薪剛が石丸大臣の脳をMRI捜査し、真実を発見する。その遺書は、何者かに強制されて書いたものだった。

堀江 太一 (ほりえ たいち)

刺殺された当時40歳だったが、25年を経て、屍蠟化死体となって発見された。日雇いの建設作業員で、妻の千佳子、息子の浜田尚、娘の浜田葵の4人家族であった。アルコール依存症で、酒に酔っての家族へのDV(ドメスティックバイオレンス)が激しく、妻の千佳子に熱した油を浴びせかけ殺害する。 妻の死後は息子の尚や娘の葵を虐待の対象としていた。

浜田 尚 (はまだ たかし)

堀江太一の長男で41歳。本名は堀江尚で浜田葵の実兄である。16歳の時、父・堀江太一の虐待から逃げるために家出をする。しかし、置き去りにした妹の葵への負い目を抱えてしまう。

光浦 信昭 (みつうら のぶあき)

60年前に起きた誘拐事件の被害者で当時10歳だった。誘拐された後、絞殺されていた。

山崎 正 (やまざき ただし)

20歳の大学生で「コンビニ店員惨殺事件」の被害者である。容疑者・小島郁子の父親のことを心配し、大学で医療福祉を学んでいる関係から介護を手伝っていた。

佐藤 佳代子 (さとう かよこ)

18歳の女子大生で「コンビニ店員惨殺事件」の被害者である。山崎正の恋人であり大学の後輩。

陣内 忍 (じんない しのぶ)

27歳。「コンビニ店員惨殺事件」の被害者である。

淡路 瑞木 (あわじ みずき)

「デルナ集団拉致事件」の被害者。淡路真人と吉田さなえの1人娘である。日本政府の依頼で国際医療援助隊に出向し、「デルナ集団拉致事件」の犠牲者となった。

千堂 咲 (せんどう さき)

14歳の中学生。「千堂咲誘拐事件」の被害者であり千堂潮外務大臣の1人娘であるが、彼女にはある大きな「秘密」があった。

平野 望美 (ひらの のぞみ)

22歳で「千堂咲誘拐事件」の被害者である。誘拐されて、日本と国交が正常化していない中東の国エルスエコの貨物船「アルタイル」号に閉じ込められる。彼女には千堂潮外務大臣に関わる、ある大きな「秘密」が秘められていた。

有田 晋 (ありた しん)

「秘密 —トップ・シークレット—2010」の登場人物の小学5年生。神奈川県を中心とした震度5強の地震直後に、屋上から転落死した。MRI捜査により脳の機能障害があり、クラスでいじめを受けて孤立していたことが判明する。

馬場 栄一 (ばば えいいち)

「秘密 —トップ・シークレット—2010」の登場人物の小学5年生。神奈川県を中心とした震度5強の地震直後に、なぜか自動車の目の前に飛び出し、はねられて死亡した。

出崎 敦史 (でざき あつし)

5年B組の担任教師で36歳。神奈川県を中心とした震度5強の地震直後に、体育倉庫で棚の下敷きとなって死亡していた。検死により震災前に刺されていたことが判明する。

倉辻 和歌子 (くらつじ わかこ)

東京都渋谷区恵比寿に住んでいる。旧姓は青木で青木一行の実の姉である。性格のおっとりした心優しい29歳の主婦で、母と同じく弟の一行の仕事をあまりよく理解していない。「秘密 —トップ・シークレット—2007」では、夫である倉辻政信との間に長女・倉辻舞を出産している。

倉辻 政信 (くらつじ まさのぶ)

青木一行の義理の兄であり東京都渋谷区恵比寿に住む。眼鏡をかけた30歳の穏和な男で、妻である倉辻和歌子と生まれたばかりの娘・倉辻舞を愛し、幸せに暮らしていた。

倉辻 舞 (くらつじ まい)

青木一行の姪にあたる。青木にとって「かけがえのない大切な存在」で、生きるモチベーションの源である。

集団・組織

科学警察研究所法医第九研究室 (かがくけいさつけんきゅうじょほういだいきゅうけんきゅうしつ)

MRI捜査を専門に行っている組織。科学警察研究所に属するが、警察庁内の正式な機関という位置付けではない。基本的に現行の事件は他部署と合同で行う。

科学警察研究所法医第一研究室 (かがくけいさつけんきゅうじょほういだいいちけんきゅうしつ)

人体組織に関する法医学の研究と鑑定を行っている組織。科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)と同様に、科学警察研究所に属している。「第一」での鑑定の結果、MRI捜査が必要なことが判明し、捜査の管轄が「第九」に移ることもある。

イベント・出来事

28人連続殺人事件 (にじゅうはちにんれんぞくさつじんじけん)

「秘密 —トップ・シークレット—2001」に登場する架空の犯罪。少年ばかり28人が、残酷な手口で殺された事件で、貝沼清孝によって引き起こされた。通称「貝沼事件」や「28人殺し」などと呼ばれる。 あまりの異常性により、MRI捜査で貝沼清孝の脳内映像を見た捜査員5人のうち、2人が自殺、鈴木克洋は錯乱の末に死亡、滝沢幹生は長期入院を余儀なくされており、薪剛以外の4人が科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)からいなくなる原因となった。薪剛のトラウマの1つにもなっている。

石丸大臣自殺事件 (いしまるだいじんじさつじけん)

「秘密 —トップ・シークレット—2007 特別篇」に登場する架空の事件。石丸外務大臣が、自室で遺書を残し自殺した事件。非公式で行われたMRI捜査で、実は自殺ではなく他殺であることが判明したが、科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)の存続と捜査員の安全とを引き替えに、政治的圧力によって事実は隠蔽された。 なお、「第九」の捜査官でこの事実を知るのは薪剛のみである。

その他キーワード

MRI捜査 (えむあーるあいそうさ)

『秘密 —トップ・シークレット—』に登場する架空の捜査方法。MRI技術によって、故人が生前に見た記憶を映像として再現、その映像からの情報を元に事件の解明を行う。捜査対象は、通常の捜査では解決困難な凶悪事件に限られている。 基本的にMRI映像を見ることができるのは、科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)の捜査官などごく限られた人物のみで、特例の場合でも内容について口外しない旨の同意書へのサインが必要となる。プライバシーの問題から、人権擁護団体や倫理委員会などから糾弾されており、一般社会においても、偏見から捜査そのものにマイナスイメージを持つ人が圧倒的に多い。

MRI技術 (えむあーるあいぎじゅつ)

『秘密 —トップ・シークレット—』に登場する架空の技術。死後10時間以内に摘出した損傷のない脳にMRIスキャナーをかけ、故人が生前に見た記憶を映像として再現する。最長で5年前までの再現が可能とされている。 ただし、故人の「見た」記憶を再現するため、必ずしも現実通りではなく、夢や幻覚といった、現実ではなくても強い視覚的イメージで記憶されているものが映像として再現されることもある。視覚による記憶のため音声はなく、読唇術によって会話内容を推測する。再現された映像は秘匿性によって5段階のレベルに分けられており、最高レベルになると、たとえ科学警察研究所法医第九研究室(「第九」)の捜査官でも簡単には見ることができない。

読唇術 (どくしんじゅつ)

読唇術は、相手の声が聞こえなくても口や唇の動きから何を言っているのかを読み取る技術。読唇術を使いこなしている人は聴覚障害者が多く、ろう学校などで教育されている。通常は読話もしくは口話と呼ばれている。読唇術のルーツは、18世紀のろう教育家、グラハム・ベルの父親であるメルビル・ベルの発明とされている。

続編

秘密 season0 (ひみつ しーずんぜろ)

清水玲子による前作『秘密 -トップ・シークレット-』の前日譚と、本編終了後の物語を描いたスピンオフ新シリーズ。白泉社「メロディ」2012年12月号から連載。 関連ページ:秘密 season0

アニメ

秘密 ~The Revelation~

死者の脳から直接映像を取り出して凶悪事件の解決に役立てる「MRI捜査」が確立された近未来の日本。そのMRI捜査を専門に行う科学警察研究所、法医第九研究室、通称「第九」に自らの希望が叶って配属になった青... 関連ページ:秘密 ~The Revelation~

書誌情報

新装版 秘密 THE TOP SECRET 12巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉

第1巻

(2015-12-18発行、 978-4592218319)

第2巻

(2015-12-18発行、 978-4592218326)

第3巻

(2016-01-05発行、 978-4592218333)

第4巻

(2016-01-05発行、 978-4592218340)

第5巻

(2016-02-05発行、 978-4592218357)

第6巻

(2016-02-05発行、 978-4592218364)

第7巻

(2016-03-04発行、 978-4592218371)

第8巻

(2016-03-04発行、 978-4592218388)

第9巻

(2016-04-05発行、 978-4592218395)

第10巻

(2016-04-05発行、 978-4592218401)

第11巻

(2016-04-20発行、 978-4592218418)

第12巻

(2016-04-20発行、 978-4592218425)

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