花にけだもの

花にけだもの

恋を知らない女子高生の熊倉久実は、初恋の相手にするにはあまりにもハードルの高い同級生、柿木園豹を好きになってしまう。二人の恋はやがて和泉千隼も交えた三角関係に発展するが、久実の誠実さは周囲の人々に前向きな変化をもたらしていく。そんな久実と、その周囲の人々の恋愛模様を描いた青春学園ラブストーリー。「Sho-Comi」2010年第17号から2012年第23号にかけて連載された作品。

正式名称
花にけだもの
ふりがな
はなにけだもの
作者
ジャンル
恋愛
 
学園
レーベル
フラワーコミックス(小学館)
巻数
既刊10巻
関連商品
Amazon 楽天 小学館eコミックストア

あらすじ

第1巻

高校1年生の熊倉久実は、編入先の私立蓮高校の見学にやって来た日、親切な柿木園豹と出会う。豹は落下物から久実を守ってくれただけでなく、見学に付き合ってくれたりと、心優しい完璧な男性だった。豹に心惹かれた久実は、豹が望むままにキスをするが、翌日、衝撃の事実が発覚する。豹は確かに女性に親切だが、誰とでもキスをするようないいかげんな男性だったのである。これを知った久実は豹と距離を置くようになり、豹にプレゼントしたくまのぬいぐるみを返してもらうことにする。くまのぬいぐるみは亡くなった母親との思い出の品だったため、久実は本当に大切な人に渡したかったのだ。そんなある日、久実は私立蓮高校での最初の友人である日吉竜生から、遊園地に誘われる。当日、竜生の思い人で久実とも親しい大神カンナも加わり、楽しい一日が始まる。しかし、そこに豹が現れて久実をさらい、久実は豹と二人っきりになってしまう。

第2巻

熊倉久実は、遊園地での一件で柿木園豹への思いを自覚する。そんな中、日吉竜生が体調を崩して学校を休んだことを知った久実は、放課後お見舞いに行くことにする。しかしその住所はなぜか保育園で、竜生は見当たらず、久実は園児たちに水をかけられて全身水浸しになってしまう。そこに現れたのは、園児たちの世話をしていた和泉千隼だった。結局その日、久実は竜生には会えなかったものの、千隼から服を借りて、その優しさに触れる。その直後、久実と豹は文化祭の実行委員に任命されるが、クラスメートたちはなぜか乗り気ではなかった。その理由は豹にあり、文化祭では毎年、生徒たちがスクールリングを意中の相手と交換するイベントがある。しかし、すでにほぼ全員の1年生女子がリングを豹にプレゼントしているため、実質中止状態になっていたのだ。それでも久実は必死に準備に取り組み、豹といっしょに過ごす約束をする。そして文化祭当日、久実は豹から女子にもらったリングはすべて返したことを伝えられ、いっしょに交換式に参加してほしいと誘われる。

第3巻

文化祭でのリング交換式に柿木園豹は現れず、熊倉久実は自分を案じてやって来た和泉千隼とリングを交換する。これは千隼が、二人の仲を取り持つためにやむを得ず行ったものだが、周囲はそうは思わなかった。結果、久実と千隼はカップル成立の証として、千隼の自宅でツーショット写真を撮ることになってしまう。さらに、千隼に思い人ができたと喜ぶ千隼の姉たちは、二人の距離を近づけるため、自宅の一室に閉じ込めてしまう。久実と千隼は気まずさを感じながらも楽しく過ごすが、二人がいっしょに眠っているところを姉たちが隠れて撮影。この写真が学校に提出されたことで、二人は私立蓮高校の公認カップルとなってしまうのだった。一方の豹は、久実と距離ができてしまったことに悩んでいた。豹は文化祭の日、約束を破ったのではなく、入院中の兄の容体が急変してお見舞いに行っていたのだ。そのため交換式に参加できず、久実には真実を言えずに誤解されたままだったのである。このままではいけないと考えた豹は、久実を待ち伏せして真実を伝えようとする。

第4巻

文化祭での誤解が解け、熊倉久実柿木園豹はついに交際を始める。久実は修学旅行で豹や大神カンナとの思い出を作ろうとはりきるが、学力テストで平均70点未満の生徒は旅行に参加できない規則があった。さらに久実は編入生ということもあり、授業についていくのがやっとの状態だった。そこで久実は豹に当面のあいだ勉強に集中するため、しばらく会えないことを伝える。しかし豹は、いっしょに勉強することを提案して久実を自宅に招く。だが、これがきっかけで久実は豹を意識し過ぎてしまい、二人の関係はぎこちなくなってしまう。そこでカンナたちに勉強を教わるようになるが、このままでは豹に寂しい思いをさせているだけだと久実は悟る。反省した久実は豹にあやまり、あらためて豹に勉強を教えてもらい、無事学力テストをクリアするのだった。迎えた修学旅行当日、問題行動の多い豹は、つねに先生といっしょに行動することになってしまう。久実は落ち込むが、豹は急遽携帯電話を買って連絡を取り合おうと久実に提案するのだった。

第5巻

修学旅行中に日吉竜生から、大神カンナに告白しようと思っていることを打ち明けられた熊倉久実は、同じタイミングで柿木園豹に会うことを思いつく。そこで久実は文化祭で渡せなかったスクールリングを、豹に渡したいと考えたのである。しかし久実と竜生は偶然知り合った他校生から、豹とカンナに関する悪い噂を聞かされる。それは二人が中学時代に交際しており、カンナが豹の子供を妊娠して堕胎したことで別れたというものだった。これにショックを受けた久実と竜生は、豹とカンナに対してぎこちない態度を取ってしまう。一方カンナは、その夜ひそかに豹と会って久実には自分たちの過去を秘密にしてほしいと頼む。しかし豹はこれに応じず、久実にはすべてを知ってほしいと、カンナに伝えるのだった。翌日、久実と竜生は噂が本当であっても、自分たちの気持ちは変わらないことを確認し合う。そこで二人はその夜、豹とカンナに会いに行く。そしてついに竜生の思いが伝わり、カンナと交際を始めることとなる。しかし久実は肝心のスクールリングを忘れてしまい、豹に渡すことができなかった。

第6巻

修学旅行最終日、船の最終便に乗り遅れた熊倉久実柿木園豹は、二人だけで宿に泊まることになってしまう。そして豹はその夜、久実に大神カンナとの関係を打ち明ける。中学時代、豹とカンナはお互い孤独だったことから惹かれ合って交際をスタート。しかし当時愛情に飢えていた豹は、カンナとの交際だけでは満足できず、浮気を繰り返したことで二人は別れることとなってしまう。久実はすべてを告白した豹を受け入れるが、それでもこの事実に深く傷つき、落ち込むのだった。クリスマスが近づく中、久実は修学旅行以来気まずくなっていた豹と仲直りするために、豹やカンナ、日吉竜生和泉千隼を誘ってクリスマスパーティを企画する。千隼は参加できずに当日は四人で過ごすことになるが、そこに豹が事故に遭ったという知らせが入る。豹は久実にクリスマスプレゼントを買うためにアルバイトを掛け持ちしており、仕事中にケガをしてしまったのだ。久実たちはすぐさま豹のいる病院に向かう。そして久実に付き添ったカンナは、自分がまだ豹を思っていたことを自覚してしまう。

第7巻

熊倉久実たちは、柿木園豹がケガをするアクシデントはあったものの、楽しいクリスマスパーティを過ごす。しかし久実は、今の豹との関係に疑問を抱くようになっていた。久実は豹が自分のために他人をないがしろにしたり、嫌われ者になっても久実を守ろうとしたりすることに耐えられなくなっていたのである。悩んだ末、久実は一度豹と距離を置くことにする。豹は泣きながらもこの申し出を受け入れ、二人は友人関係に戻る。そして久実はその足で海へ行き、結局豹に渡せなかった自分のスクールリングを捨ててしまう。しかしそこに和泉千隼が現れ、海に捨てられたスクールリングを見つけて渡すが、久実は今は恋愛ではなく、周囲の人たちを幸せにしたいと告げる。三学期が始まり、久実は友人として優しく接してくれる豹に感謝しつつ、三学期最初の行事であるマラソン大会に挑むことになる。大会前日、久実は千隼から、もし自分が一位になったらデートしてほしいと誘われる。

第8巻

マラソン大会が始まり、1年生男子は日吉竜生和泉千隼の一騎打ちとなった。二人はそれぞれ大神カンナ熊倉久実から一位のご褒美をもらう約束をしており、全力で競い合っていた。一方、スポーツが苦手な久実は完走を目指すが、スタート直後に足をくじいてしまう。その頃レースでは、柿木園豹が一位に躍り出ていた。豹は基本的に学校行事には消極的だったが、もし久実であればまじめに取り組むだろうと考え、今回はマラソン大会に参加していたのである。しかしそんな中、豹は歩くことができなくなった久実を発見する。そこで豹は走るのをやめ、久実をおぶることにする。久実はこれを申し訳なく思いつつ、豹の優しさに感謝するのだった。結局千隼が一位でゴールし、竜生はキスのご褒美をカンナからもらえなくなったことで、激しく落胆する。この姿を見たカンナは、豹に会いに行き、別れたあとも豹への思いを引きずっていたこと、当時は冷たい態度を取ってしまっていたが、真剣に豹が好きだったことを打ち明ける。これによって豹への未練を完全に断ち切ったカンナは、翌日竜生に会いに行き、今の自分の気持ちを伝えてキスをするのだった。

第9巻

2月のある日、和泉千隼は一位のご褒美で熊倉久実とデートをし、久実は千隼からあらためて告白された。そんな中、久実はマラソン大会を途中棄権した罰として、いっしょに棄権した柿木園豹と図書室の掃除をすることになる。二人は楽しく掃除を進めていたが、そこに千隼から電話がかかってきたことで豹の態度は豹変。豹は今でも久実を思っており、久実と千隼が急接近したことに深く傷ついていたのだ。そんな豹を見た久実は、一方的に豹と距離を置いたことを後悔する。そして、少し時間はかかるかもしれないが、これからあらためて豹と向き合わせてほしいと告げる。こうして久実は2年生に進級し、まずは千隼にやはり交際できないことを伝える。そんな中、久実は日吉竜生から豹が一人暮らししている部屋を引き払ったことを知る。久実は豹の気持ちがわからず混乱するが、意を決して豹の実家へ向かうのだった。

第10巻

柿木園豹の実家に向かった熊倉久実は、豹と再会して自分の気持ちを打ち明ける。こうして二人は復縁し、同時に久実は豹の身の上を知ることとなる。豹は政治家の父親から、ずっと病弱な兄のスペアのような扱いを受けてきたのだ。これに耐えられなくなった豹はある日実家を離れて、複数の女性と交際することで寂しさをまぎらわす生活を送っていたのである。しかし豹は久実を幸せにするために、家族と向き合うことを決意して、一人暮らししていた部屋を引き払う。そんな豹の思いを知った久実は、その夜豹と結ばれる。そして時は過ぎ、久実たちは高校の卒業式を迎える。久実は保育士を目指すため、静岡県の大学へ進学することになり、東京都の大学に進学する豹とは遠距離恋愛になってしまう。久実は寂しさを抱えつつも式を終えるが、豹、日吉竜生和泉千隼が式のあとの第二ボタン争奪戦に巻き込まれたことで、久実と豹ははぐれてしまう。

関連作品

花にけだもの ~ヰタ セクスアリス~

2018年8月、本作『花にけだもの』の続編にあたる『花にけだもの ~ヰタ セクスアリス~』が発売された。こちらはwebコミック「&フラワー」に掲載された作品で、『花にけだもの』の男性メインキャラクターである柿木園豹和泉千隼日吉竜生の三人に焦点を当てており、成長した彼らの恋愛や性に対する本音が描かれた作品となっている。

コラボレーション

本作『花にけだもの』は、杉山美和子の別作品『噓つきくすりゆび』と世界観を共有している。『噓つきくすりゆび』の舞台は、『花にけだもの』で熊倉久実たちが通っている私立蓮高校で、登場人物たちは久実たちと同じように、スクールリングを意中の相手に贈る決まりがある。

メディアミックス

ムービーコミック

2016年8月、dTVにて『花にけだもの』のムービーコミックが公開された。熊倉久実役を花守ゆみり、柿木園豹役を八代拓、和泉千隼役を梅原裕一郎がそれぞれ演じた。

WEBドラマ

本作『花にけだもの』は、2017年10月から2018年1月にかけてと、2019年3月から4月にかけての二回、dTVとFODにてWEBドラマ化されている。両作共に監督は大谷健太郎と宮脇亮、脚本は松本美弥子が担当し、熊倉久実役を中村ゆりか、柿木園豹役を杉野遥亮、和泉千隼役を超特急の松尾太陽がそれぞれ演じた。

小説

本作『花にけだもの』には、二種類の小説版シリーズがある。一つは2012年10月から2013年5月にかけて、FCルルルnovelsから刊行された高瀬ゆのかによるオリジナルストーリーで、こちらは原作では語られなかったエピソードを描く作品となっている。イラストは、原作者である杉山美和子が担当した。もう一つは2018年8月と2019年4月に小学館ジュニア文庫から刊行された橋口いくよによるドラマ版『花にけだもの』『花にけだもの Second Season』のノベライズ版で、こちらはドラマ版の内容に沿った作品となっている。

キャラクターブック

2013年2月、本作『花にけだもの』のイラスト集兼キャラクターブック『花にけだもの 蓮高卒業アルバム』が発売された。こちらは連載中に描かれたカラーイラストをはじめ、キャラクタープロフィールや描き下ろし漫画、作者である杉山美和子のインタビューも収録された、盛りだくさんの内容となっている。

登場人物・キャラクター

熊倉 久実 (くまくら くみ)

港区青山にある私立蓮高校1年A組に在籍する女子。のちに2年A組、3年A組に進級する。前髪を目の上で切り、肩につくほどまで伸ばした、茶色の癖のあるボブヘアにしている。同年代の女子よりもかなり小柄な体形で顔立ちも幼く、実年齢よりも幼く見られることが多い。自己紹介の時に名前をうまく発音できず「くまくらきゅみ」と言ってしまったことから、柿木園豹には「キューちゃん」、和泉千隼からは苗字からとって「クマ女」、亡くなった母親からは「久」、和泉千鶴からは「クマちゃん」と呼ばれている。穏やかな心優しい性格で、自分よりも他人を優先するところがある。しかし他人に頼るのが苦手で、一度決めたことをなかなか変えられない強情な一面がある。父親はおらず、母親を幼い頃に火災で亡くしており、引っ越しを繰り返して、高校1年生の夏からは親戚の家で暮らしている。必要以上に同情されることを嫌い、自分のことは自分でやることを信条としている。そのため高校1年生の夏、私立蓮高校に編入する際も、極力周囲に迷惑をかけずに暮らそうと考えていた。しかしこれを豹に見抜かれ、頼ってほしいと言われたことで恋に落ちる。以来、人を愛することが下手な豹と、向き合いながら成長していくことになる。母親から贈られた、持っていると願いの叶う五体のクマのぬいぐるみを持ち歩いており、大切な人ができたらプレゼントしようと考えている。最終的にこれは、豹や千隼、大神カンナ、日吉竜生に渡ることになる。

柿木園 豹 (かきぞの ひょう)

私立蓮高校1年A組に在籍する男子。のちに2年A組、3年A組に進級する。出身中学は松寿学院中学校で、和泉千隼とはその頃からの友人。大神カンナは、中学時代に交際していた元恋人。日吉竜生とは、高校からの友人。竜生の保育園を手伝うこともあり、その際は園児たちから「王子先生」と呼ばれている。前髪を目が隠れるほど伸ばした茶色のウルフカットにしている。父親は政治家で、裕福な家庭に育つ。しかし、家では病弱な兄が優先されており、ずっと兄のスペアのような扱いを受けてきた。そのため強い孤独を感じており、中学生の頃から家出を繰り返し、現在は小さなアパートで一人暮らしをしている。穏やかで心優しい性格の持ち主。また、女性の扱いに慣れており、私立蓮高校の生徒が思い人に贈る伝統のあるスクールリングを、同学年の女子200人中、カンナ以外の199人から受け取ったほど人気がある。しかし、不特定多数の女性との交際で寂しさを埋める日々を送っており、中学時代にカンナと交際して別れてからは特定の恋人はいない。また、カンナと交際中も浮気を繰り返しており、これが原因で別れた。しかし高校1年生の夏休み、熊倉久実と出会ったことがきっかけで、彼女から真の愛情とは何かを教わる。これによって、久実にふさわしい男性になるべく、少しずつ成長していく。学校行事に消極的なのは兄の容体が急変し、多忙になったことが理由の一つである。

日吉 竜生 (ひよし たつき)

私立蓮高校1年C組に在籍する男子。のちに2年A組、3年A組に進級する。和泉千隼の幼なじみで、柿木園豹の高校からの友人。前髪を目の下まで伸ばして真ん中で分け、額を見せた銀色の外はねウルフカットヘアにしている。明るく心優しい性格で、誰とでも分け隔てなく接することができる。また、非常に高いIQと運動能力の持ち主で、アメリカの研究機関や大学からのスカウトを頻繁に受けているが、断っている。一見完璧な男性に見えるが、恋愛は大の苦手。思い人にはふだんのように接することができず、緊張しすぎて体調を崩してしまったこともある。そのため、高校入学時からずっと大神カンナに思いを寄せていたが、話しかけることもできずにいた。また、友人として豹の生活態度を案じており、彼にはっきり意見できる女性が必要だと考えていた。1年生の夏、編入してきたばかりの熊倉久実に関心を持ち、友人となる。また、これがきっかけとなってカンナとのつながりができ、猛烈なアプローチを繰り返して1年生の秋、修学旅行の時に告白して交際を始めた。しかし、カンナに対しての思いが強過ぎるために愛情を注ぎ過ぎてしまい、いっしょにいると疲れてしまうと言われるようになる。実家は保育園で、よく千隼といっしょに園児たちの面倒を見ている。

和泉 千隼 (いずみ ちはや)

私立蓮高校1年C組に在籍する男子。のちに2年A組、3年A組に進級する。日吉竜生の幼なじみ。出身中学は松寿学院中学校で、柿木園豹とはその頃からの友人で、大神カンナとも当時からの知り合いである。前髪を目が隠れるほど伸ばした、黒のふんわりとした短髪にしている。女装して和泉小鳩の代わりに和泉千鶴の経営する高級クラブで働いた時の源氏名は「ひよこ」。イケメンで豹に次ぐほど女子から人気が高いが、不愛想で近寄りがたいため、和泉千隼と交際するのは不可能だろうと、女子からは噂されている。実際はまじめで面倒見のいい性格をしている。そのため同性からの信頼は厚く、竜生の実家の保育園の園児たちにも非常に慕われている。熊倉久実とは高校1年生の夏、竜生からの紹介で出会うはずだったが、当日遅刻したことで出会うことはできなかった。そのため、竜生の自宅までお見舞いに行こうとしていた久実が、まちがえて保育園側にやって来たことでようやく知り合った。当初は久実のことを放っておけない存在程度に思っていたが、徐々に思いを寄せるようになり、豹との関係に悩む久実を支えるようになっていく。また、本来出会うべき日に出会えず、関係をスタートさせるのを遅れたことを悔やんでいる。

大神 カンナ (おおがみ かんな)

私立蓮高校1年A組に在籍する女子。のちに2年A組、3年A組に進級する。出身中学は松寿学院中学校で、柿木園豹はこの頃に交際していた元恋人。和泉千隼とはその頃からの知り合い。前髪を目が隠れるほど伸ばして左寄りの位置で斜めに分け、胸の下まで伸ばしてゆるく巻いたロングヘアにしている。和泉千鶴と和泉つぐみからは「オオカミちゃん」と呼ばれている。中学時代まではショートヘアで、クールで男勝りな一匹狼をきどっていた。中学時代のある日、屋上で本を読んでいたところを豹に話し掛けられ、親しくなる。やがて交際を始めるが、豹が浮気を繰り返したことで、別れてしまう。しかし周囲に二人が別れたのは、大神カンナが豹の子供を妊娠して堕胎したからだというウソの噂を流されて、高校に進学した今でも孤立したままの日々を送っている。熊倉久実とは高校1年生の二学期、久実が私立蓮高校に編入してきたことで知り合うが、当初は自分と親しくしていると、久実まで嫌がらせをされるという理由で冷たく振る舞っていた。しかし、すぐに久実の温かい人柄に触れて考えを改め、唯一無二の友人となる。不愛想なために冷たそうに見えるが、実際は不器用なだけで心優しい性格の持ち主。久実のことを非常に大切に思っており、彼女に対しては過保護気味なところがある。それゆえに豹との関係を打ち明けられず、悩むこととなる。高校1年生の秋、修学旅行がきっかけで日吉竜生と交際を始める。実はかなりの大食いで、特に好きな食べ物はラーメン。成績は優秀ながら、人に勉強を教えるのは苦手。

和泉 千鶴 (いづみ ちづる)

銀座にある高級クラブのママを務める若い女性で、和泉千隼の姉。姉妹である和泉つぐみ、和泉小鳩とは仲がよく、小鳩とは店の経営者と従業員の関係でもある。前髪を長く伸ばして真ん中で分けて額を見せ、腰まで伸ばした巻き髪ロングヘアにしている。明るく親切な性格ながら、やや強引なところがある。そのため、千隼からはうっとうしがられている。熊倉久実とは、久実たちが高校1年生の秋、久実や千隼、日吉竜生が写真撮影をしに来たことで知り合った。その際に千隼が久実に思いを寄せていることを見抜き、それからは二人の距離を縮めるようと手助けするようになる。しかしのちに、千隼と久実に交際する意思はないらしいと理解してからは、姉的な存在として久実の恋愛相談に乗るようになる。大神カンナとも知り合いで、将来はぜひ自分の店で働いてほしいと考えている。

和泉 つぐみ (いづみ つぐみ)

人気モデルの若い女性で、和泉千隼の姉。前髪を目の上で切りそろえ、腰まで伸ばしたストレートロングの姫カットにしている。和泉千鶴と和泉小鳩の姉妹とは仲がいい。クールで落ち着いた性格をしている。パリコレに出演するほどの人気モデルで、下着ブランドのプロデュースもしている。熊倉久実とは、久実たちが高校1年生の秋、久実や千隼、日吉竜生が写真撮影をしに来たことで知り合った。その際に千隼が久実に思いを寄せていることを見抜き、それからは二人の距離を縮めるようと手助けするようになる。

和泉 小鳩 (いずみ こばと)

銀座にある和泉千鶴の店で、キャバクラ嬢として働く若い女性。和泉千隼の姉。千鶴と和泉つぐみの姉妹とは仲がよく、千鶴とは店の経営者と従業員の関係でもある。前髪を目の上で切り、腰まで伸ばした巻き髪ロングヘアにしている。日本一のキャバクラ嬢と呼ばれるほどの人気を誇る。明るく親切な性格ながら、やや強引な一面があるため、千隼からはうっとうしがられている。熊倉久実とは、久実たちが高校1年生の秋、久実や千隼、日吉竜生が写真撮影をしに来たことで知り合った。その際に千隼が久実に思いを寄せていることを見抜き、それからは二人の距離を縮めるようと手助けするようになる。大神カンナとも知り合いで、将来はぜひ自分の店で働いてほしいと考えている。

狐坂 寿美礼 (こさか すみれ)

私立蓮高校1年A組に在籍する女子。のちに2年A組、3年A組に進級する。前髪を耳の下まで伸ばして真ん中で分け、肩につくほどまで伸ばした外はねのセミロングヘアにしている。釣り目釣り眉の三白眼で、目つきが悪い。歯に衣着せぬ性格の姉御肌で、ヤンキー気質なところがある。熊倉久実、大神カンナ、猿渡るうとは高校1年生の秋、修学旅行の班がいっしょになったことがきっかけで親しくなった。面倒見がよく、特に久実には優しいが、カンナには厳しい言葉を投げかけることもある。るうとは喧嘩友達のような関係で、言いたいことを言い合える仲。しかし、友人と親密になりすぎるのは好きではなく、マラソン大会は友人と並んで走るのではなく、一人で孤独に戦うものだと考えている。

猿渡 るう (さるわたり るう)

私立蓮高校1年A組に在籍する女子。のちに2年A組、3年A組に進級する。前髪を目の上で切り、胸の下まで伸ばしたロングウエーブヘアの一部を編み込んでいる。あだ名やハンドルネーム、ペンネームはいずれも「さるるん」。一見おっとりとしたかわいらしい雰囲気ながら、実はオタク気質で大のボーイズラブファン。そのため、オタク以外には意味を理解できない用語を連発して周囲を困惑させたり、日吉竜生や和泉千隼にボーイズラブ妄想をしたりしている。カラオケではアニメソングばかり歌う。熊倉久実、大神カンナ、狐坂寿美礼とは高校1年生の秋、修学旅行の班がいっしょになったことがきっかけで親しくなり、以来それぞれの苗字に「氏」や「嬢」を付けて呼ぶようになる。特に久実のことは気にかけており、久実が1年生の冬、柿木園豹と別れた際には、久実を元気づけようと合コンを企画した。しかし、友人と親密になりすぎるのは好きではなく、マラソン大会は友人と並んで走るのではなく、一人で孤独に戦うものだと考えている。将来の夢は声優で、高校卒業と同時に声優デビューしてその夢を叶えた。

鮫島 由紀 (さめじま ゆき)

開應(かいおう)高校に通う2年生の男子。三御院鮎美、木野=マナティ=梓と共に、学年で最も人気のある男子三人組として「開應の王様(キング)たち」と呼ばれている。前髪を目が隠れるほど伸ばして左寄りの位置で斜めに分け、襟足を伸ばした短髪に眼鏡をかけている。右目の真下に、ほくろが縦に二つ並んでいる。一見クールに見えるが、非常に怒りっぽく自己中心的な俺様気質。しかし実は女性慣れしておらず、熊倉久実のような穏やかで家庭的な女性に弱い。久実、狐坂寿美礼、猿渡るうとは、るうが企画した合コンで知り合った。るうがカラオケボックスで、アニメソングばかり歌うためについていけず帰ろうとするが、その直後に久実の優しさに触れて残ることとなる。その際、カラオケボックスの店員の柿木園豹が久実と知り合いだと知り、豹や鮫島由紀自身にも半端な態度を取る久実に腹を立てて叱った。しかしこれを豹と、そのあとにやって来た和泉千隼に見つかり、以来久実に近寄らないように邪魔されている。

三御院 鮎美 (みつごいん あゆみ)

開應(かいおう)高校に通う2年生の男子。鮫島由紀、木野=マナティ=梓と共に、学年で最も人気のある男子三人組として「開應の王様(キング)たち」と呼ばれている。前髪を上げて額を全開にし、髪全体を後ろに流した短髪にしている。目が細く、いつも目を閉じているように見える。穏やかなで面倒見のいい性格で、三人の中ではまとめ役を担っている。熊倉久実、狐坂寿美礼、猿渡るうとは、るうが企画した合コンで知り合った。るうがカラオケボックスで、アニメソングばかり歌うためについていけず帰ろうとするが、その直後食べ物で服を汚してしまった由紀を久実が助けたことで、久実に関心を持つようになる。久実に必死にアプローチする梓をいさめたり、緊張している久実をフォローしたりした。

木野=マナティ=梓 (きの まなてぃ あずさ)

開應(かいおう)高校に通う2年生の男子。モデルとしても活動している。鮫島由紀、三御院鮎美と共に、学年で最も人気のある男子三人組として「開應の王様(キング)たち」と呼ばれている。イタリア系のクォーターながら、ほぼ日本語しか話せない。前髪を長く伸ばして真ん中で分け、顎の下まで伸ばした、ふんわりとしたウエーブボブヘアにしている。たれ目でまつげが長く、中性的な雰囲気を漂わせている。あだ名は「キノ」または「キノくん」。穏やかでおっとりとした性格で、女性との距離が近くてすぐに手をにぎったりキスをしたりする。熊倉久実、狐坂寿美礼、猿渡るうとは、るうが企画した合コンで知り合った。るうがカラオケボックスで、アニメソングばかり歌うためについていけず帰ろうとするが、その直後食べ物で服を汚してしまった由紀を久実が助けたことで、久実に関心を持つようになる。そこで久実をデートに誘おうとするが、失敗に終わる。気に入った人物を「お姫様」や「王子様」と表現する癖がある。

書誌情報

花にけだもの 10巻 小学館〈フラワーコミックス〉

第1巻

(2010-12-24発行、 978-4091335296)

第2巻

(2011-03-25発行、 978-4091336873)

第3巻

(2011-07-26発行、 978-4091340429)

第4巻

(2011-10-26発行、 978-4091341389)

第5巻

(2012-01-26発行、 978-4091340276)

第6巻

(2012-04-26発行、 978-4091345141)

第7巻

(2012-07-26発行、 978-4091346278)

第8巻

(2012-10-26発行、 978-4091344083)

第9巻

(2013-01-25発行、 978-4091348463)

第10巻

(2013-05-24発行、 978-4091351890)

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