血と処女 ~修道院の吸血鬼たち~

血と処女 ~修道院の吸血鬼たち~

絶海の孤島「黒鳥島」には、白い髪を持つ若い修道士ばかりが住んでいるが、その島でたった一人の少女、ニコは、厳しくも優しい修道士たちと幸せに暮らしていた。そんな中、ある出来事をきっかけに修道士たちが抱く秘密と、自分の中に隠された記憶に気づいたニコが黒鳥島の謎にせまっていく姿を描くミステリー。「pixivシルフ」で掲載された作品。

正式名称
血と処女 ~修道院の吸血鬼たち~
ふりがな
ちとおとめ しゅうどういんのきゅうけつきたち
作者
ジャンル
モンスター・異生物
 
推理・ミステリー
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あらすじ

年に2日間しか外界とつながることのできない絶海の孤島「黒鳥島」の修道院で暮らす少女のニコは、院長たちからいつまでたっても子供扱いされていることに不満を覚えていた。そんな中、修道院の敷地内から修道女の石膏像が掘り出される。目隠しをされたその像に既視感を覚えたニコは、その像の手がなにかを隠しているように造形されていることに気づき、像が埋め戻されたとされる森へと向かう。掘り返した像の首筋に、獣の牙が突き立てられたような傷を目にしたニコは、黒い大きな鳥が修道女を啄(ついば)んでいる映像が脳裏に浮かんだことに戸惑いを覚える。そんな中、ジャンパウロ院長の言いつけで薬草を採取に行った先で、ロメオが不審な動きをしていることを知る。ロメオが吸血鬼である自分たちからニコを逃がそうとしていることを知ったジャンパウロは、たとえロメオとニコがうまく逃げ果せても、いずれロメオ自身がニコの血を吸ってしまうだろうと預言する。やがてかつての記憶を取り戻したニコは、島からの脱出を試みる。

登場人物・キャラクター

ニコ

絶海の孤島「黒鳥島」の修道院で、唯一の女性。黒髪のおかっぱヘアで、年齢の割りに小柄な体型をしている。バルトロが保護された時は5歳の少女だったが、現在は15歳。ふだんは朗らかな性格で笑顔を浮かべているが、夜になると夢遊病状態となって高台から海を眺めている。幼少期に、修道院の地下に幽閉された母親がジャンパウロたちによって血を吸われている姿を目にしたことで、自分が将来ジャンパウロたちの94番目の食料となることを知る。しかし、アウジリオの催眠によってその記憶が封印されており、眠っている時だけその記憶が表面化し、黒鳥島から脱出したいという思いが高まる。

院長 (いんちょう)

絶海の孤島「黒鳥島」の修道院で院長を務める男性。吸血鬼で、修道服を着崩して大きく両肩を露出しており、肩までの白い髪をサイドでまとめている。生前は医者で名医だったと自称しており、バルトロが島に打ち上げられた際の治療や看病にもあたった。大雑把な性格で、修道院内で決められたスケジュールもよくサボっている。

ジャンパウロ

絶海の孤島「黒鳥島」の修道院で修道士を務める男性。吸血鬼で、白髪のおかっぱヘアで、丸い眼鏡をかけている。規律に厳しく、よそ者を嫌っているためバルトロにも拒絶感を示していた。ニコに対しては修道院にいる誰よりも厳しく接するが、一方で、誰よりもニコのことを大切に考えている。

アウジリオ

絶海の孤島「黒鳥島」の修道院で修道士を務める男性。吸血鬼で、白い髪を肩上までのウルフカットにしている。深い愛や、愛と見間違うほどの純粋で深い憎悪を好み、そういった感情を抱いた人間を見ると血を与えて吸血鬼にしてしまう癖がある。ジャンパウロを大切に思っており、ジャンパウロの願いであればどんなことでも叶(かな)えてやりたいと考えている。

エイダン

絶海の孤島「黒鳥島」の修道院で修道士を務める男性。吸血鬼で、肩までの白い髪をオールバックにしている。盲目だが針仕事なども問題なくこなすことができるほど器用で、人間用の食事作りを担当している。ニコの身長が低いことを心配しており、献立の栄養を再考すべきかと悩んでいる。

ロメオ

絶海の孤島「黒鳥島」の修道院にいる修道士の男性。一番年少の吸血鬼で、ニコの兄を自負している。ニコに対しては過保護なまでに甘く、ニコが呼ぶとどこにいても駆けつける。生前は騎士修道会に所属していたことから、現在も腕が鈍らないように隠れて剣術の練習を行っている。

アリ

絶海の孤島「黒鳥島」の修道院にいる修道士の男性。吸血鬼で、浅黒い肌をしており、白く長い髪をサイドでまとめている。使用している言語が違うため、ニコと話す時は片言になる。猫に好かれていることから、猫が集まっている場所にはアリもいると考えられている。ニコからは避けられていると思われているが、修道士たちの中でも特に血液に対する欲求が強いため、ニコを傷つけないために距離を取っているだけ。そのため、つねに鐘楼か図書室に出入りして典礼には参加していない。

バルトロ

商人の男性。栗色の巻き毛をしている。フィレンツェへ羊毛を運ぶ途中で輸送船が難破し、黒鳥島に打ち上げられて一命を取り留めた。少年性愛嗜好(しこう)を持っており、ベニートを秘密の恋人として扱い、性的欲求にも付き合わせていた。ベニートからは「ペルッツィのだんな」と呼ばれている。

ベニート

奴隷の少年。浅黒い肌をしている。本名は「イスメト」だが、バルトロに買われた際に「ベニート」と名づけられた。バルトロの輸送船が難破した際に大ケガを負い、死にかけていたところをアウジリオに拾われて吸血鬼となった。幼少期から繰り返し、自らを犯したバルトロを激しく憎んでいる。

場所

黒鳥島 (こくちょうとう)

烏の頭部を模したような巨石が特徴の絶海の孤島。周辺海域の波が高いため、波が凪(な)ぐ夏至と冬至にしか外界と行き来ができない。島中に茨が生い茂っており、この茨は春夏には青い一重の花を咲かせ、冬には血のように赤い実を付ける。黒鳥島には院長がリーダーを務める修道院とその関連施設だけがあり、黒鳥島の地下では死者が夢を見ているという噂があるため、訪れた者は「修道士以外は夜間に出歩いてはいけない」と厳しく言い含められている。実際はニコ以外の全員が吸血鬼であり、死者に血を分け与えることで相手も吸血鬼となる。

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