赤んぼ少女

赤んぼ少女

悲惨な生活を送ってきた少女南条葉子が、実は裕福な屋敷の娘だったというシンデレラ・ストーリーで始まる。だが、屋敷の天井裏に隠れて住んでいた南条タマミによって幸福は一転し、以前よりさらに惨めな生活を強いられてしまう。タマミは赤ん坊のまま成長せず、牙や鋭い爪が生えた化け物のような姿である。葉子を虐待する心理の裏には、自分の醜さへの呪いと、相手の美しい容姿への嫉妬があった。運命の逆転と、美醜のコンプレックスに少女の心理を反映させたホラー作品であり、タマミは楳図かずおの代表キャラの1人。1967年、『赤んぼ少女』のタイトルで週刊少女漫画誌に連載された。1969年の単行本化で、『のろいの館』と改題される。そのほかに『赤んぼう少女』という改題もある。

正式名称
赤んぼ少女
ふりがな
あかんぼしょうじょ
作者
ジャンル
ホラー
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
関連商品
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概要・あらすじ

12年前、ある事情で、南条葉子は生まれてすぐ親と離ればなれになり、ご飯もろくに食べられない惨めな生活を送ってきた。南条家の父が苦労して捜し出し、葉子は東京の裕福な南条家で暮らすことになる。幸せに胸が躍る葉子だが、まもなく、屋敷の天井裏に自分の姉が隠れて住んでいたことを知る。姉は南条タマミといい、赤ん坊のような姿であった。

母親の南条夕子はタマミがずっと成長しないので気が変になり、タマミを可愛がりながら言いなりになっている。父親は悪魔のように残忍なタマミを恐れ、南条家から排除しようとするが、行方不明になってしまう。葉子はタマミの居た天井裏に住まわされ、前より惨めな生活を強いられる。

タマミの虐待が続く中、葉子は南条家のばあやに連れられ、父親の行方を捜して田舎の実家へ向かう。そこで、自分とタマミの出生に関する意外な事実を知る。

登場人物・キャラクター

南条 葉子 (なんじょう ようこ)

『赤んぼ少女』に登場する、東京の南条家の娘。事情により、生まれてすぐ親と離ればなれになっている。そのため、ご飯もろくに食べられず、新しい洋服など一度も着たことがなく、施設に入れられたり、人の家で家政婦代わりにこき使われるなど、惨めな思いをしてきた。南条家の父が葉子の存在を知って苦労して探し出し、裕福な南条家の娘として幸せな生活が始まるはずだったが、屋敷には葉子に敵対心を持つ姉の南条タマミがいた。 タマミは赤ん坊のまま成長しない姿をしていた。

南条 タマミ (なんじょう たまみ)

『赤んぼ少女』に登場する、赤ん坊の姿のまま成長しない少女。南条葉子の姉であるが、出生に謎がある。南条家に葉子が来る5年前に、父親が施設に預けたはずだったが、実際は、母親が屋敷の天井裏に匿っていた。葉子と初めて会った時、赤ん坊のふりをしていたが、自由に動け、しわがれ声で話す。鋭い牙と爪が生えており、力も強い。 平気で人を殺す残酷な性格だが、少女らしい感情もあり、自分の醜さを呪い、葉子の美しい容姿を妬んでいる。

南条 夕子 (なんじょう ゆうこ)

『赤んぼ少女』に登場する、南条家の母親。南条家の父によると、南条タマミがいつまで経っても赤ん坊のまま成長しないので、変になってしまったらしい。タマミのことを非常に可愛がっており、タマミの命令で南条葉子につらく当たる。南条家のばあやは、タマミが普通ではないから夕子は余計に可愛いのだろうと考えている。

南条家の父 (なんじょうけのちち)

『赤んぼ少女』に登場する南条葉子の父親。歴史学者であり、世界の芸術品をコレクションしている。南条タマミをばけものと呼んで恐れ、南条家から排除しようとする。葉子が南条家に来る5年前にタマミを施設に預けたはずだったが、母親が屋敷の天井裏に匿っていた。葉子が生まれてすぐに離ればなれとなったことを知り、苦労して探し出し、南条家に連れ戻した。 父は山川産院で取り違えられたタマミが南条家の娘ではないと知っているが、タマミを恐れるあまり、葉子の姉ということにしておいた。

南条家のばあや (なんじょうけのばあや)

『赤んぼ少女』に登場する南条家のばあや。身も心も悪魔のような南条タマミが恐ろしくて我慢できず、南条葉子を連れて、家がある山奥の田舎の村に戻ろうとする。そこに、葉子の父の実家もあり、行方不明の葉子の父がそこにいると考えた。田舎の家に、吉野高也という高校2年生の孫がいる。

吉野 高也 (よしの たかや)

『赤んぼ少女』に登場する、南条家のばあやの孫。戸津川高校2年生。父親の行方を捜して、ばあやと一緒に田舎に来た南条葉子と出会い、親しくなる。南条タマミは高也のことが好きになり、高也と親しくする葉子をますます憎むようになった。

山川産院の院長 (やまかわさんいんのいんちょう)

『赤んぼ少女』に登場する、南条タマミが生まれた山川産院の院長。南条家の父の実家からすぐ近くの町にある。葉子と吉野高也は、12年前の南条葉子とタマミの出生の秘密を探るため、山川産院を訪れた。南条家の父もその件で産院を訪れており、それ以来、院長は良心に責められていたという。 院長は産院の日誌を取り出して、葉子が南条家の子としてここで生まれたことを話す。しかし、タマミの秘密を2人に話す前に、タマミに殺され、日誌も破かれた。

場所

南条家の父の実家 (なんじょうけのちちのじっか)

『赤んぼ少女』に登場する、南条葉子の父親の実家。南条家のばあやの田舎にある。行方不明になった葉子の父親がいると思い、ばあやが葉子を連れて訪ねるが、父親は来ていない。実家のおじとおばは、葉子のことを南条タマミだと思っており、葉子という妹が生まれたとは聞かされていなかったという。 タマミは近くの町にある山川産院で12年前の9月1日に生まれており、葉子も同じ日に生まれていた。しかし、おじは双子が生まれたはずはないと言う。葉子は、自分は南条家のよその子かもしれないと不安に思う。

天井裏 (てんじょううら)

『赤んぼ少女』に登場する、南条家の天井裏。南条家の父に施設に入れられたはずの南条タマミは、母親の南条夕子に匿われて天井裏に住んでいた。父親が行方不明になった後、タマミは南条葉子を天井裏に住まわせる。葉子は以前の自分の部屋が下にある天井裏の節穴を覗き、三面鏡の前で着物を着飾り化粧をしているタマミを目撃した。 タマミは化粧しても醜い自分に涙した後、着物を引きちぎって、葉子を呼びつけた。自分を背負わせると、火をつけた石油ランプを葉子の頭に乗せ、父親の部屋まで歩かせようとする。

井戸

『赤んぼ少女』に登場する、南条家の屋敷の庭にある枯れた井戸。南条タマミが惨めな気持ちを慰めるため、1人で泣きに来る秘密の場所だったという。南条家のばあやの孫である吉野高也から、南条家の娘ではないという出生の秘密と、山川参院の院長殺害の事実を暴かれたタマミが、南条葉子を井戸に連れ込んで、一緒に死のうとする。

その他キーワード

仏壇 (ぶつだん)

『赤んぼ少女』に登場する、南条家の屋敷にある仏壇。父親に施設に入れられたはずの南条タマミを、母親が天井裏に匿い、面倒を見ていた。仏壇には抜け道があり、母親が仏様にお供えするふりをして、タマミに食べ物を与えていた。

ぬいぐるみ

『赤んぼ少女』に登場する手製のぬいぐるみ。南条タマミが南条葉子を屋敷の階段から落ちるように細工したため、怒った南条家の父はタマミを箱詰めにすると、中身を秘密のまま葉子にポリバケツに捨てさせる。父親はタマミを施設に入れたことにした。箱は自転車に乗った男に拾われた後、川原に捨てられるが、タマミは3日後に自力で南条家の屋敷に戻ってくる。 母親の南条夕子はぬいぐるみを作り、それをタマミの代わりにするようになる。実際、ぬいぐるみにはタマミが入っており、父親と2人だけになった時、タマミは中から正体を現した。

よろい

『赤んぼ少女』に登場する、南条家にある西洋甲冑。南条家の父の芸術品コレクショの1つ。南条家の父の部屋に置かれていた。父親が行方不明になった後、母親の南条夕子は南条タマミが嫌がるという理由で、南条葉子と南条家のばあやに手伝わせ、鎧を南条家の地下室に片づける。そして、地下室の扉に鍵をかけた。 鎧には父親が閉じ込められており、後に、ばあやの孫である吉野高也によって助けられた。

ギロチン

『赤んぼ少女』に登場する、歴史学者である南条家の父が外国から集めたコレクションの1つ。下部の木の板に穴があり、その向こうに人魚の人形が見える。人形には紐がかかっており、穴に入れて人形を掴み、紐を外すと金具が作動して手が固定されてしまう。もし、握っている人形を離すと、上からギロチンの刃が落ちてくるという仕組み。 南条葉子が南条タマミに騙され、ギロチンの仕掛けにはまってしまう。

首なし地蔵 (くびなしじぞう)

『赤んぼ少女』に登場する、南条家のばあやの田舎にある首がない地蔵。ばあやの家の近くにあり、帰った時は必ず挨拶するという。ばあやと一緒に田舎に行った南条葉子が、その夜、ばあやの孫の吉野高也と盆踊りに出かけた時、首なし地蔵を見ると首があった。こっそり後をつけてきた南条タマミが、首なし地蔵の後ろから見張っていたのである。

ぼんおどり

『赤んぼ少女』に登場する風習。南条家のばあやの田舎の盆踊り。南条葉子を連れてばあやが田舎の家に戻った時、ちょうど夜に盆踊りがあり、ばあやの孫の吉野高也が葉子を連れていった。この村の盆踊りは変わっていることで有名であり、大人も子どもも自分の好きなお面を被り、一晩中踊り明かす。盆踊り会場に、お面を被った南条タマミが紛れ込んでおり、葉子を人気のない場所に誘い出した。

書誌情報

赤んぼ少女 小学館〈ビッグ コミックス〉

(2008-07-30発行、 978-4091821874)

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