迷宮ブラックカンパニー

迷宮ブラックカンパニー

有り余る財産を得た二ノ宮キンジは、今後の怠惰な生活を楽しみにしていたが、突如として異世界のアムリアに転移し、ブラック企業の社畜として強制就職することとなった。ダンジョンで命がけで働くが、上司たちのむちゃ振りは増えるばかり。二ノ宮はそんな理不尽を憎み、下克上による成り上がりを決意する。悪知恵の働く社畜青年が、仲間たちと共に迷宮を攻略し、成り上がっていく姿を描くプロレタリアダンジョンファンタジー。「MAGCOMI」で2016年12月から、「月刊コミックガーデン」で2018年5月号からそれぞれ連載の作品。2021年7月テレビアニメ化。

正式名称
迷宮ブラックカンパニー
ふりがな
めいきゅうぶらっくかんぱにー
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
 
ファンタジー
関連商品
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あらすじ

社畜の世界へようこそ

二ノ宮キンジは艱難辛苦の果てに莫大な財産を築き、死ぬまで怠惰な生活を満喫しようとするが、その直後、謎の現象に襲われて異世界のアムリアへと転移してしまう。無一文で異世界に放り出された二ノ宮は、ブラック企業「ライザッハ鉱業」で炭鉱夫として働くこととなった。奴隷同然にこき使われる中、一発大逆転の秘策を思いついた二ノ宮は、同僚のワニベをそそのかし採掘した魔石を、偶然見つけた迷宮の隠し通路に隠し始めるのだった。しかし計画を順調に進めていたある日、二人は巨大な魔物に襲われてしまう。絶対に勝てないと悟った二ノ宮は、魔物に不遜に語りかけて説得し、「リム」と名乗ったその魔物の食事の面倒を見るという約束を交わし、難を逃れることに成功する。その後、二人は大量の魔石を手に帰還。大きな利益を前に喜色満面の二ノ宮だったが、リムの食費がそれ以上かかると知り、愕然(がくぜん)とすることとなる。これを皮切りに、新たな儲󠄀(もう)け話を考えては失敗するという日々を続けていた二ノ宮は、ある日、迷宮アリの大群に襲われ、さらに会社の上層部に見捨てられ、魔物の中で孤立してしまう。しかし二ノ宮は、得意の口八丁手八丁で迷宮アリを懐柔し、無事脱出に成功。この一件で上層部への不満を爆発させた二ノ宮は、リムや迷宮アリと共に「迷宮ブラックカンパニー」を結成する。そして、人知れずライザッハ鉱業上層部への反逆を企て始める。

クレイジー・デスマーチ

儲け話自体は失敗するものの、会社に着実に利益を上げる二ノ宮キンジは上層部にその手腕を認められ、探索部の3課に異動することとなった。魔法を使った文字どおりの洗脳教育が行われる新人研修を、得意の機転とワニベの知識を使って無事乗り越えた二ノ宮は、新たな職場で新たな上司である勇者キノウ・シアと共に働き始める。しかしシアは、会社の成績のためなら社員の犠牲をなんとも思わない究極の社畜だった。強引な精神論を振りかざすシアに付いていけないと悟った二ノ宮は、リムを使ってシアの弱みをにぎり、味方につけることに成功する。一方、ライザッハ鉱業ベルザ・シューバッハは、迷宮で起きた異変から周回忌が近いことを察知。周回忌を最大限に利用して利益を得るべく、彼女は勇者であるシアを利用しようともくろむ。そんな中、ついに発生した周回忌において、二ノ宮とシアは異変に巻き込まれて仲間たちと離ればなれになってしまう。さらに10日間にわたって迷宮内を遭難した末に、ベルザの狙いどおりに二人は迷宮の魔神に襲われることとなった。そんな中、二ノ宮はマジックアイテムを使って魔神のみを地上に転移させる。地上から再びシアを狙って地下に潜ってくる魔神だったが、迎撃態勢を整えた二ノ宮とリムによって討ち取られるのだった。

Return to Work

魔神を倒して一息つく間もなく、二ノ宮キンジリムは謎の現象によって転移することとなった。二ノ宮が目を覚ますと、そこは謎の地下シェルターだった。二ノ宮はシェルターの人々から預言書に記された救世主と崇(あが)められ、世界を脅かす魔王と戦うように頼まれる。しかし、相手が自分たちを都合よく利用しようとしていることを見抜いた二ノ宮はこれを拒絶。交渉の末、彼らから物資を供給してもらう代わりに戦うことを約束する。巫女(みこ)のランガを供にして、シェルターから外に出た二ノ宮は、この滅び去った世界が異世界、アムリアの未来の姿であることを知る。そんな中、魔王軍に接触した二ノ宮は、そこでかつての迷宮アリの1匹と再会。成長して出世した迷宮アリから事情を聞いた二ノ宮は、すべての鍵をにぎるのが魔王であると確信する。魔王に会うために二ノ宮は魔王軍に寝返り、軍の中で功績を立てて順調に出世していく。そしてついに許された魔王との謁見において、二ノ宮は魔王の正体、そして世界崩壊の真実を聞かされる。そして二ノ宮は、魔王から過去に戻って歴史を変えてほしいと頼まれるのだった。一方的な願いの詫(わ)びとして日本への帰還も提示されるが、二ノ宮は自分の意思で現代のアムリアに戻る道を選ぶ。

生きるため生き残れ

世界の崩壊は、ライザッハ鉱業デトモルド魔鉱遺跡の迷宮の遺産を手にしたことが引き金となって起きていた。過去に戻ってきた二ノ宮キンジは、仲間たちに未来の事情を説明して自分が世界の覇権をにぎり、崩壊を防ぐプランを語る。ワニベキノウ・シアを巻き込み、自信満々な二ノ宮だったが、そんな彼に周回忌以降、迷宮では大変動が起き、その難易度が大幅に上昇しているという現実がつきつけられる。戦闘力がなく、足手まといと言われた二ノ宮は特訓に精を出すも、魔力を扱うことができないために八方ふさがり。そんな中、二ノ宮は未来のアムリアから持ち帰った銃、ハバキリを起動させることに成功する。こうして戦闘能力を向上させるという目的を達成した二ノ宮は、迷宮探索を開始。しかしハバキリは燃費が悪く、周囲の装備や素材を勝手に分解して燃料にしてしまうのだった。ハバキリによって装備をすべて分解された二ノ宮一行は、装備を補充するために半裸の状態で冒険者の砦(とりで)に向かう。砦では冒険者が何者かにあやつられている事件が起きていたが、一行が元凶の魔導士を発見。彼女の話を聞き、成仏させたことでどうにか事件を収束させる。

誰がために金は成る

魔導士の事件を解決したものの、装備を失ったままである二ノ宮キンジは、近場の商店であるシンディ商店で装備を整える。しかし出費をケチった二ノ宮は、店長のシンディにクレームを言って駄々をこね、タダで装備を手に入れようと目論む。シンディは二ノ宮の態度に困り果てるも、二ノ宮はシンディの思いのたけを聞いたことで逆に気に入り、彼女の店の手伝いをし、その見返りとして装備を安く手に入れることに成功する。二ノ宮たちはそのまま迷宮の地下4階に向かうが、そこは凶悪なモンスターだらけの階層だった。一行は先に進んでいたライザッハ鉱業の調査課と整備課に合流する。彼らの話を聞き、二ノ宮は地下4階が脱出不可能な階層で、地下5階に続く道も自分たちの帰り道も塞がれていることに気づく。二ノ宮は生き残るため、一時的に彼らと共闘することを決め、力を合わせて拠点づくりを始める。そんな中、二ノ宮のもとに女王が合流。女王はかつての魔神のなりそこないを保護しており、現在の迷宮は魔神の弱体化によって深刻な不具合を起こしている事実を知らされる。魔神と迷宮は一心同体の関係であることを知った二ノ宮は、逆転の発想で、迷宮を整備することで魔神の状態を健全化することを目論む。整備課をうまくそそのかした二ノ宮は、迷宮を整備していくことで、状況を打破して塞がれた地下5階への道を開通させる。

Gone to Jail

迷宮の地下5階に足を進めた二ノ宮キンジは、地下5階に取り残されたままだったライザッハ鉱業の戦闘員と合流する。彼らはベルザ・シューバッハの親衛隊ともいえる者たちで、ベルザに似て傲慢な性格をしており、同僚すら使い捨てにしていた。そのため、親衛隊は同じ会社に所属する調査課たちからも見捨てられ、迷宮の中で孤立していたのだった。しかし地下5階は凶悪な魔物だらけで、まともに進むこともできない状況だったため、二ノ宮は親衛隊に言葉巧みに近づき、彼らを懐柔していく。そして二ノ宮は、親衛隊を利用することで遺跡の力を掌握し、ついにその力で世界に覇を唱え始める。ライザッハ鉱業に退職届を叩(たた)きつけ、ベルザに宣戦布告した二ノ宮は、迷宮の力を使い新たなビジネスを次々立ち上げる。二ノ宮の手腕によってライザッハ鉱業の成績は右肩下がりとなり、怒り狂ったベルザは、謀略を張り巡らし、二ノ宮を陥れようとする。ベルザの謀略によって二ノ宮は逮捕されてしまうが、それは二ノ宮による己の身を使った囮(おとり)作戦で、二ノ宮の逮捕劇を隠れ蓑(みの)にワニベ・シュリーマンたちは水面下でライザッハ鉱業の買収を進める。また、二ノ宮は己の無罪の証拠が後で出てくるよう計算しており、ライザッハ鉱業の買収完了のタイミングで無罪放免となり、二ノ宮はライザッハ鉱業の社長として君臨する。ベルザに完全勝利を宣言した二ノ宮は、世界をその手に収めていく。

グローリーの街へようこそ

二ノ宮キンジベルザ・シューバッハを降(くだ)し、ついにライザッハ鉱業を掌中に収める。すべてを手にした二ノ宮であったが、その様子はどこかおかしく、ワニベ・シュリーマンたちは二ノ宮が元の世界に帰るつもりではないか心配する。しかしその心配は杞憂(きゆう)で、二ノ宮はさらに会社を大きくすべく、画策していただけであった。ワニベたちは安心して一息つくが、その瞬間、謎の男がどこからともなく現れ、二ノ宮たちに襲い掛かる。二ノ宮たちは手も足も出ず謎の男に敗れ去り、どことも知れぬ謎の空間に放り出される。そして気が付いた二ノ宮が目にしたのは見たこともない街だった。しかも二ノ宮は仲間たちともはぐれ、さらには記憶まで失い、今までの傍若無人っぷりから打って変わって、気の弱いまじめな青年となっていた。無一文で冒険者の街「グローリー」をさすらう羽目となった二ノ宮であったが、孤児院を経営するタスク・リストに保護され、日銭を稼いで過ごしていた。肩身の狭い思いをしつつも平穏に暮らしていた二ノ宮であったが、ならず者であるクルーガー兄弟がリストに襲い掛かる現場に遭遇する。二ノ宮はリストを助けたため、クルーガー兄弟に目を付けられ、二ノ宮はクルーガー兄弟の弟、ダフト・クルーガーと闘技場で決闘することとなる。しかし勝ち目はまったくないため、二ノ宮は大いなる力を与えるという「遺物」の噂(うわさ)に賭け、遺物の眠る「塔」の探索を開始する。そんな中、二ノ宮はナミダと出会い、彼女からハバキリこそが遺物であると教えられ、その力を解放してもらう。そして二ノ宮はその力でダフトとの決闘を勝ち抜き、リストを守ることに成功する。

ワニベとニノミヤ

二ノ宮キンジは決闘を勝ち抜いたことで噂となり、その話を聞きつけたキノウ・シアが合流する。しかし、シアは二ノ宮が記憶喪失となっていたことに愕然としつつ、二ノ宮に自分がこの世界に来て知り合ったカミラ・ネイキッドの暴走をなんとかして欲しいとお願いする。カミラは資産家の令嬢だが、破天荒な言動をしており、下請けの業者に無茶ぶりをしていた。折しも二ノ宮はタスク・リストたちグローリーの弱者を救済するため「迷宮ホワイトカンパニー」を立ち上げるのを決意し、その下請け業者であるアルカ・ライザッハに自分のアイディアを話す。藁(わら)にもすがる思いでアルカは、二ノ宮の魔石の新たな用途を模索するアイディアに飛びつく。そしてアルカと二ノ宮はそのアイディアを発展させ、新たなビジネスチャンスをつかむ快挙を果たす。その一部始終を見ていたシアは、今の世界が過去のアムリアで、アルカがライザッハ鉱業の創設者ではないかと疑念を抱く。そしてその疑念は、記憶を失いながらもピンポイントに歴史に介入して見せた二ノ宮にも向けられるのだった。大きな商機をつかんだことで、二ノ宮は迷宮ホワイトカンパニーの経営を軌道に乗せる。技術革新した魔石商品は飛ぶように売れるが、程なくして悪質なコピー商品が出回り始めたため、二ノ宮たちはその出どころの調査に赴くこととなる。一方、ワニベ・シュリーマンは気が付けば魔物たちの村「モービル」で保護されており、彼らと交友を育んでいく。モービルは巨大な魔石の恩恵によって発展していたが、それに目を付けた冒険者たちが村を襲撃していた。ワニベは世話になった魔物を助けるべく、彼らと戦う。そこに魔石の出所を探っていた二ノ宮たちが現れる。ワニベたちは二ノ宮たちも魔石を狙っていると考え、双方は認識がすれ違ったまま、矛を交えることとなる。

メディアミックス

テレビアニメ

2021年7月から9月にかけて、本作『迷宮ブラックカンパニー』のテレビアニメ版『迷宮ブラックカンパニー』がTOKYO MX、BS日テレ、AT-X、インターネット配信ほかで放送された。製作はSILVER LINK.が担当している。キャストは、二ノ宮キンジを小西克幸、リムを久野美咲、ワニベ・シュリーマンを下野紘が演じている。テレビアニメ版は原作コミックス第1巻から第6巻までをまとめた内容となっており、アニメオリジナルの描写も存在する。またテレビアニメ版では『秘密結社鷹の爪』とコラボレーションし、第9話と第11話で「鷹の爪団」のキャラクターが登場した。

登場人物・キャラクター

二ノ宮 キンジ (にのみや きんじ)

日本でニートとして暮らす青年。物語開始時点の年齢は24歳。財産投資をして若くして不労所得を手にしたネオニートで、弱者を見下し、死ぬまで怠惰な生活をしようとしていた。しかし、念願叶(かな)った瞬間に異世界「アムリア」に転移し、無一文で働くこととなる。デトモルド魔鉱遺跡のライザッハ鉱業で、使い捨て同然の社畜となるも、持ち前の反骨精神を発揮し、徐々に成り上がっていく。同僚のワニベ・シュリーマンをそそのかし、魔物のリムを口先三寸で丸め込み、迷宮アリに襲われた際には言葉巧みに彼らを扇動して、支配下に置くことに成功する。そして手勢をまとめあげて「迷宮ブラックカンパニー」を結成し、ライザッハ鉱業を乗っ取るため暗躍を開始する。迷宮の謎の装置で未来のアムリアに飛ばされた際には、そこで魔王から世界崩壊の真実を聞く。日本への帰還の道も示されたが、己の意思でアムリアに帰ることを決意し、ベルザ・シューバッハよりも早く遺跡の力を手にして、世界を己の手に入れることを目論む。目的のためなら手段を選ばない卑劣な男で、仲間からの評価は「外道」。しかし弱者を嫌うが、それは弱者でいることに甘んじる者を侮蔑し、己の力で未来をつかもうとする強い意思の裏返しでもあり、その一本芯が通った部分は味方からも信頼されている。力や金を持つとすぐに調子に乗るが、基本的にその後すぐ大きく失敗する。異世界人であるため、魔力を扱う臓器「魔臓(まぞう)」を持たず戦闘能力は貧弱となっている。デトモルド魔鉱遺跡を攻略後は、その遺跡の力を手にし、破竹の勢いで成り上がる。策謀によってベルザも降し、ライザッハ鉱業も掌中に収めるが、その後、謎の男の襲撃によって過去のアムリアに飛ばされる。過去の世界では記憶喪失となり、今までとは打って変わって気弱で品行方正な青年となる。そしてグローリーの在り方に心を痛め、弱者を救済し、自立をうながすための組織「迷宮ホワイトカンパニー」を結成する。

リム

二ノ宮キンジが、デトモルド魔鉱遺跡の迷宮で出会った魔物。食欲の権化のような存在で、食べる物を求めてさまよっていたところ、二ノ宮とワニベと遭遇。彼らを食べようとしたところ、二ノ宮から「地上の美味」と引き換えに「二ノ宮を食べない」という約束を交わし、彼らに同行する。当初は見上げるほど巨大なドラゴンの姿をしていたが、二ノ宮の仲間になってからは桃色の髪を長く伸ばした人間の少女のような姿となる。ただし人間形態でも角を生やし、手足には爬虫類の鱗がある。人間の姿でもその戦闘能力は健在で、強力な魔物も難なく倒す実力を示す。また、本気を出すと成長した美女の姿となり、さらに強大な力を振るうことができる。ただし1日の食費は軽く5万G(ギリー)を超えるうえに燃費は悪く、何か仕事をさせるとすぐにお腹を空かすため、二ノ宮はあまり仕事をさせたがらない。ふだんは食べることしか考えていないが、二ノ宮との約束は律儀に守っており、彼の危機には自発的に行動して彼を守る。その正体は迷宮の主の魔神。カロン人に「星の守護者」として、迷宮を通して世界の魔力の循環を管理するように作られたが、設計者の想定以上にバカだったため、役目を忘れて地上で遊びほうけていた。そして、このことが迷宮に大変動をもたらす原因となってしまう。

ワニベ・シュリーマン (わにべ しゅりーまん)

爬(は)虫類型の亜人であるリザードマンの男性。トカゲの特徴を色濃く持つ種族で、トカゲがそのまま人型となったような厳(いか)つい見た目をしている。だが気弱な性格をしているため、どこか冴(さ)えない容姿をしている。ライザッハ鉱業で働いており、二ノ宮キンジの同僚。うだつの上がらない生活を続けていたが、その内面を二ノ宮に見透かされ、彼の口車に乗る形で協力していくこととなる。臆病で要領が悪く、見た目に反して戦闘能力も低い。しかし、根はまじめで根気強い部分があるため、研究者として優秀で、魔石の研究で大きな成果を出している。また田舎育ちであるため、野草やキノコの知識が豊富。流されるまま二ノ宮に協力し、迷宮ブラックカンパニーに所属する。二ノ宮から振り回されることが多いが、一方でその人柄が信頼されており、ベルザ・シューバッハとの対決では二ノ宮が囮となっているあいだに水面下で根回しをして、二ノ宮の社長就任を助けた。その後、二ノ宮と共に会社を盛り立てていたが、謎の男の襲撃で重症を負い、そのまま過去のアムリアに放り込まれて行方(ゆくえ)不明となる。目覚めた際には魔物たちの村「モービル」でルヴィに保護され、彼女らと交友を育む。過去のアムリアでは自分でも気づかないうちになぜか戦闘能力が大幅に向上しており、その力で集落を襲う冒険者たちを撃退していた。二ノ宮の傍若無人っぷりを知るだけに、モービルの存在を知られれば彼にいいように利用されると危惧し、二ノ宮たちと対立する道を選ぶ。

キノウ・シア

ライザッハ鉱業所属の勇者。青みがかった髪をショートカットに整えた若い女性で、剣と魔法を武器に魔物と戦う。会社内では勇者と持ち上げられているが、その実態は会社のために働くことが幸せだと信じて疑わない「究極の社畜」。成果を果たすためならあらゆる犠牲を許容し、それを他者にまで強いる強引な性格をしている。ファリア支部からデトモルド支部に異動して探索3課に配属され、二ノ宮キンジの直属の上司となる。二ノ宮に強引なやり方を批判され、その後、彼に襲い掛かるがリムに敗北。彼に弱みをにぎられる形で協力していくこととなる。父親は「最悪の冒険王」と呼ばれた冒険者で、彼が世界各地の迷宮を攻略したことで、いくつもの迷宮が機能不全に陥って枯渇した。それによって職にあぶれた者たちから母親と共に迫害された過去を持ち、その境遇から救ってくれたライザッハ鉱業には多大な恩を感じている。ライザッハ鉱業にとって都合のいい現在の性格は、この父親への反感と会社への恩から生まれたものだが、そのことをのちに二ノ宮に指摘されて改善していく。会社への忠誠心も薄れてきており、二ノ宮たちが未来のアムリアから帰還し、事情を聞いたあとは彼に協力している。

ランガ

二ノ宮キンジが未来のアムリアで出会った少年。地下シェルターの中にある街、マルシアで勇者に仕える「巫女」として育てられたが、同世代で魔力を持つ子供がランガしかいなかったため、男にもかかわらず女性のような格好をしている。少女と見まごうばかりの紅顔の美少年で、女性として扱われるのも満更ではないと思っており、周囲には自分を女性とカンちがいさせるような言動をわざと取っている。マイペースで自由奔放な性格をしており、巫女の役割を引き受けたのも街の外に出るためだったが、二ノ宮のことを気に入り、彼と行動を共にする。実はベルザ・シューバッハの子孫で、世界滅亡の引き金を引いた者の末裔として謂れのない迫害を受け、マルシアでも正体を隠して生きてきた過去を持つ。ランガ自身のルーツから目を背け、逃げ続ける日々だったが、二ノ宮の言葉で立ち向かうことを決意。ベルザを一発殴るという目的を掲げ、二ノ宮に協力するようになる。魔王との謁見以降は二ノ宮について行く形で、現代のアムリアに転移する。職業は魔法使いで、攻撃魔法を使えるほかに幅広い魔法の知識を持つ。

ハバキリ

二ノ宮キンジが未来で手に入れた遺物。銃の形をした遺物だが、機能不全状態で発見されたため、当初は無用の長物扱いされていた。しかし現代に戻り、魔力を吸収したことで起動する。二ノ宮のつぶやきが偶然、パスワードと合致したため、彼を所有者として認める。多機能高性能な「規格外品」遺物だが、ほとんどの機能を制限されており、その力を十全に発揮することはできない。魔石を魔力に変換して強力な銃弾として発射することができるが、銃弾1発あたりの値段は10万G(ギリー)とコストは最悪な部類となっている。また銃そのものに意思があるが、二ノ宮がほかの武器を使おうとすると嫉妬してその武器を壊したり、捨てても勝手に戻って来たり、さらに二ノ宮に捨てられそうになったら巻き込んで自爆しようとするなど問題行動ばかり起こし、二ノ宮からは「痛い女」のような性格だといわれている。燃費の問題からふだんは「セーフティーモード」で使用されているが、トリモチ弾と閃光(せんこう)弾しか撃てないため、戦闘能力は微妙。二ノ宮が過去のアムリアに飛ばされた際、彼が記憶喪失になったのを利用して、彼を自分好みの所有者に育て上げようと目論む。また、二ノ宮が塔で出会ったナミダによってその制限を大幅に解除され、新たな機能を解放する。新たな機能でガントレット状に変形。魔石をコインに変換して、それを投入することで莫大な力を発揮するようになる。

クルツ

ライザッハ鉱業探索3課所属の男性冒険者。装備はナイフと軽装のもので統一し、バンダナをトレードマークにしている。同社のエリート部署の探索3課に配属され、ミルダ、エルマン、ガドインとパーティを組んで働く。パーティの仲間が危機に陥った際には、危険を顧みずに助け合うなど仲間意識が非常に強い。二ノ宮キンジとは何かと縁があり、彼が8課にいた頃から行動を共にする機会が多いが、二ノ宮にかかわるとロクなことがないため、彼を邪険に扱っている。

ベルザ・シューバッハ

ライザッハ鉱業のデトモルト支部迷宮長を務める女性。紫色の髪を長く伸ばし、左目を隠すようにセットした妙齢の美女。なんらかの亜人らしく、側頭部からは2本の角が生えている。スタイル抜群のクールビューティーで、スーツを身にまとって外面は非常にいい。しかしその内面は、会社の利益のためなら他者の命をなんとも思わない邪悪で強欲な性格の持ち主で、社員を洗脳したり、使い捨てにしたりとブラック上司そのものの言動をしている。名家であるシューバッハの生まれだが、愛人の子で、その生まれから幼少期は誰にも愛されず過ごしてきた。その生い立ちが現在の歪(ゆが)んだ性格を形作っており、実力で成り上がり、周囲を認めさせようとする強い欲求がある。未来のアムリアではデトモルド魔鉱遺跡を攻略して遺跡の力を手にし、その力で世界を滅ぼした魔女としての伝承が残っており、その子孫であるランガは迫害を受けていた。そのためランガからは一方的に敵視され、現代で相対した際には、ランガからその内面をずけずけと指摘されている。現代に戻って来た二ノ宮キンジに遺跡の力を横取りされ、二ノ宮の手腕によってライザッハ鉱業の運営も斜陽となる。怒り狂いながら謀略をもって二ノ宮を陥れるも、その行動は二ノ宮に読まれているため、二ノ宮の存在に気を取られるあまり、水面下でライザッハ鉱業が買収されているのを見逃し、二ノ宮に徹底的な敗北を突きつけられる。その後は二ノ宮の部下として働いているが、意外と上司と部下として良好な関係を築いている。

ファウ・バーハラ

クベーラ金融に勤める若い女性。異世界アムリアに来たばかりで無一文だった二ノ宮キンジに金を貸し、その返済の督促を行っている。女性ながら柄が悪く、時には暴力を用いて返済をうながす。二ノ宮にブラック企業のライザッハ鉱業を紹介したのも彼女で、返済が滞っているのを理由に利子を増やし、二ノ宮から金をむしり取っている。

女王 (じょおう)

迷宮アリの女王。ふつうの迷宮アリは、アリをそのまま巨大にしたような見た目をしているが、女王はアリの下半身に人型の上半身をくっつけたような姿をしている。デトモルド魔鉱遺跡の地下3階に生息していた魔物であるが、魔神であるリムがいなくなったことで縄張りを拡大し、地上への侵攻を目論む。しかし、二ノ宮キンジに迷宮アリの群れを乗っ取られ、女王自身も迷宮ブラックカンパニーの軍門に降る。迷宮ブラックカンパニーでの役職は営業部長。魔神のなりそこないとの戦闘後、大変動に巻き込まれ二ノ宮とはぐれる。その後、人型となった魔神のなりそこないを発見し、その姿に母性を刺激され、彼女を保護する。二ノ宮が再会した際には、人間に擬態する能力を身につけ、長髪の美女の姿となって現れ、彼に魔神のなりそこないの救助を頼んだ。

魔王 (まおう)

未来の異世界アムリアを恐怖に陥れている存在。謎多き存在で、魔王軍でもその正体を知る者はおろか姿を見た者すら少ない。その正体は、現代のアムリアで二ノ宮キンジたちが遭遇した「魔神のなりそこない」の成長した姿で、リムの妹ともいうべき存在。リムとよく似た褐色肌の少女の姿をしているが、現代でリムに首を切られたため、首の部分の接着が甘くよく取れる。リムとは違って理知的な性格をしており、カロン人から与えられた「星の守護者」としての役割を果たすため、遺跡の力を手にしたライザッハ鉱業と戦っていた。ライザッハ鉱業と魔王の最終決戦を避けるため、二ノ宮に過去に戻り、ライザッハ鉱業が遺跡の力を手にする前にその力を奪取してほしいと頼む。「魔王」という以外、魔王自身の名前を指し示すものがないため、リムに過去に戻ったら過去の自分に名前を付けてほしいと頼んでいる。

魔導士 (まどうし)

竜殺しの英雄の相棒だったとされる魔導士。昔話では、姫をさらった竜を英雄と力を合わせて倒したが、姫を独占するために英雄をワナにはめて殺したとされる。しかし英雄は横暴な人物で、竜も魔導士がほとんど単独で倒したが、英雄に手柄を横取りされ、その仕返しのために英雄をワナにはめたのが昔話の真相だった。英雄が自力でワナを脱出したあと、魔導士は弾劾され、迷宮で奴隷のように働かされて死亡した。死後は生前の理不尽な扱いから悪霊化し、迷宮の大変動に伴って活発化する。黒いローブを身にまとったガイコツの姿をしており、魔法を使って魔導士自身の受けた苦痛を一人でも多くの人間に味わわせようとしていた。二ノ宮キンジがかつての英雄に似ていたため、さらって直接洗脳しようとしたが、唯我独尊な二ノ宮には効果がなく失敗。逆に彼から復讐のやり方について生ぬるいと説教を受ける羽目になる。最期は世にはすでに社畜がはびこっており、人々を奴隷のように働かせるという自身の目的がとっくに達成されているという事実を聞き、満足して成仏した。言い伝えでは男性とされていたが、実は女性だった。

ソラ

二ノ宮キンジがデトモルド魔鉱遺跡で出会った魔神のなりそこない。未来において魔王となった魔神の現在の姿で、リムにとって妹とも呼べる存在。二ノ宮が出会った際には巨大な化け物のような姿をしていたが、倒されたあとはリムにそっくりな褐色肌の少女の姿となっている。倒されたあと、二ノ宮が未来に転移した裏で女王に拾われる。しかし、倒されたことで大幅に弱体化し、それに伴って魔神と一心同体である迷宮も機能不全に陥り、それがさらなる弱体化を招くという悪循環に陥っていた。二ノ宮が再会した際には自力で動けぬほど弱っており、女王に請われた二ノ宮が迷宮の環境を改善することで、快復していく。生まれたばかりであるため本能で行動しており会話は不可能。当初は名前もなかったが、リムが「ソラ」と名づけた。もともと知能が高かったため、二ノ宮が遺跡の力を手に入れたあとは急速に知識を身につけ、会話もできるようになる。リムとは正反対で、知的でまじめな性格へと育っている。

シンディ

冒険者の砦で商店を営む若い女性。栗色の髪を長く伸ばしている。亡くなった父親が自分の名前を付けて開いた「シンディ商店」を何よりも大切にしている。一人称は「ウチ」で、語尾に「だべ」を付ける田舎なまりのしゃべり方をする。ベルザ・シューバッハに店の権利を買い取られ、厳しいノルマを課せられ無理して働き続けている。それでも店の看板を守るため、それだけを心の拠(よ)り所にして働いている。二ノ宮キンジにモンスタークレーマー同然の絡み方をされ、大きな迷惑を被るが、自分の思いのたけをぶつけたことで、二ノ宮に気に入られ、彼の手助けで店を繁盛させる。ただし、二ノ宮はポーションを栄養ドリンクとして売り出して成功したが、二ノ宮がポーションに催眠効果のある薬草を混ぜていたことがバレて問題となる。最終的に二ノ宮は混ぜ物ポーションを魔導士の所業とウソをつき、誤魔化せているあいだにあとをシンディに任せて旅立った。実質的に二ノ宮はシンディに面倒ごとを押し付けて逃げ出しただけだが、シンディの目には二ノ宮が問題を解決して颯爽(さっそう)と去っていったように見え、二ノ宮に多大な恩と好意を感じるようになる。二ノ宮が遺跡の力を手に入れたあとスカウトされ、迷宮ブラックカンパニーに所属する。

タスク・リスト

冒険者の街「グローリー」で孤児院を経営する女性。修道衣をまとった黒髪のシスターで、優しく面倒見のよい性格をしている。行くあてのない子供たちの世話をしており、記憶喪失となって行き倒れた二ノ宮キンジを保護し、自活できるようになるまで面倒を見ていた。記憶喪失後の二ノ宮は、それまでとは打って変わって品行方正な性格となったため、そのお礼に彼が稼いだ金の一部をもらっている。元は高名な冒険者だったが、闘技場の決闘で大ケガを負って現役を引退した。その後はシスターとして慎ましく暮らしていたが、正義感の強い人柄から、ならず者のクルーガー兄弟と対立。彼らに決闘を申し込まれるが、二ノ宮が代理を申し出て、戦うこととなる。決闘後は二ノ宮のことを強く信頼するようになり、彼の発案である迷宮ホワイトカンパニーの立ち上げにも全面的に協力した。迷宮ホワイトカンパニーの仮の拠点として孤児院の一角を提供している。

ナミダ

冒険者の街「グローリー」で活躍する冒険者の女性。無造作に髪を伸ばしたワイルドな風貌をしている。一人称は「オレ」で、粗暴な性格の持ち主。「規格外品」の遺物を持つ冒険者で、二ノ宮キンジが同じく規格外品の遺物「ハバキリ」を持っていることで興味を抱く。遺物に詳しい「一族」の出身で、家族に捨てられ一族に育てられた。しかしその一族は、ほかならぬ自分の家族によって滅ぼされたらしく、復讐(ふくしゅう)のため家族を探し回っている。復讐の相手は「家族」であること以外は男性か女性かもわかっておらず、自分が持つ規格外品と同じハバキリがその手がかりと思うも結果は空振り。その際に二ノ宮が心底自分の境遇に同情し、親身になったことで彼に絆(ほだ)される。実はグローリーの街で屈指の実力者として君臨しているが、男性への免疫が皆無で、二ノ宮に親身な言葉を掛けられただけで、彼を気に掛けるようになる。二ノ宮に事情があるのを知ると、餞別(せんべつ)として己の力を使ってハバキリの制限を解除して手渡した。

カミラ・ネイキッド

冒険者の街「グローリー」で活動する商家の令嬢。流れるような黒い髪を長く伸ばした妙齢の美女で、スタイル抜群。元は少し気が強いだけの深窓の令嬢だったが、剣術指南役となったキノウ・シアの脳筋的指導と、たまたま目撃した二ノ宮キンジの姿に感銘を受けたことが彼女の中で化学反応を起こし、その素質を大きく開花させる。そしてこれまでの常識や、しきたりで抑圧されていた欲望が爆発し、全裸に近い格好で街を練り歩く露出狂の変態となった。またシアの訓練の結果、戦闘能力も大きく向上しており、邪魔する者をその戦闘能力と実家の資本力で黙らせる横暴な存在と成り果て、シアはその所業を「秩序の破壊者」と呼び、とんでもない化け物を生み出してしまったと後悔している。アルカ・ライザッハに全裸に近いデザインの鎧(よろい)を発注し、機能性とデザインを両立しろという無茶ぶりをする。しかしこの無茶ぶりが結果的に、のちの魔石産業革命のきっかけとなった。アルカが自分の無茶なオーダーに応えたことで彼女を認め、アルカと迷宮ホワイトカンパニーの商売に協力することを約束する。

アルカ・ライザッハ

冒険者の街「グローリー」で鍛冶師(かじし)として働く少女。紫色の髪を長く伸ばしている。大きな丸眼鏡をかけ、猫耳付きのフードを被(かぶ)っている。グローリーで若くして「天才武具職人」として持てはやされている職人で、引退した父親から工房を受け継ぎ、運営している。武器や防具の品質は確かなものながら、カミラ・ネイキッドから奇抜なデザインと鎧としての機能性を両立しろという無茶ぶりをされ、途方に暮れる。そんな中、二ノ宮キンジと出会い、彼と協力して遺物の機構を応用した新機軸の魔石装備「マナシリーズ」を開発する。また苦境を救ってもらったため、二ノ宮のことを信頼し、迷宮ホワイトカンパニーの立ち上げにも全面的に協力している。ライザッハ鉱業と同じ姓を持つ女性で、ライザッハ姓自体は珍しくないが、アルカ・ライザッハと二ノ宮の事業がのちのライザッハ鉱業に符合する部分が多くあるため、キノウ・シアは、今いるのは過去のアムリアで、アルカこそがのちの「ライザッハ鉱業創設者」なのではないかと疑念を抱いている。

ロウ・ガイン

魔物たちの村「モービル」の長を務める魔族の青年。人間に近い見た目をしているが、頭から大きな1本角が生えている。穏和で知的な性格の持ち主で、ロウ・ガイン自身は戦闘を得意としていないが、村の中では強い部類に入り、村の守りとまとめ役を担当する。実は村で巨大な魔石を祀(まつ)っており、その恩恵で迷宮から離れて活動できている。迷宮に戻れば再び過酷な生存競争や戦いの日々となるため、人里離れた場所で仲間たちと静かに平和に暮らすことが望み。しかし、魔物を狩ることは冒険者たちから一種のステータスとされているため、村の近所に魔石の採掘場があることもあり、「ついで」に狩られる立場にある。そのことに憤慨しており、人間に強い不信感を抱いていたが、ワニベ・シュリーマンとは交流していく中で強い信頼感で結ばれ、彼と共に村を守ることを決める。

ルヴィ

魔物たちの村「モービル」に暮らす魔物。鳥に近い見た目をした女性。心優しい性格で、重傷を負ったワニベ・シュリーマンを発見した。村人はよそ者に難色を示したが、その反対を押し切ってワニベを保護し、ワニベを助けた。そのためワニベから強い恩義を感じられており、彼が村を守る決断をする大きなきっかけとなった。

ザキル・クルーガー

冒険者の街「グローリー」で幅を利かせるならず者「クルーガー兄弟」の兄。弟のダフト・クルーガーとは正反対の小柄な体型をした中年男性で、金にがめつい粗暴な性格をしている。街の弱い人間を騙(だま)したり、暴力で脅したりして食い物にしている。タスク・リストとは前からの知り合い同士だが、お互いに信条が正反対であるため対立している。大ケガを負って冒険者を引退したリストを、いたぶって見世物にすることを企(たくら)む。リストが自分の目の前に現れたのを絶好の機会と考え、彼女を挑発して決闘に誘い込もうとするが、直前に二ノ宮キンジに企みを看破され、二ノ宮と弟が決闘することとなる。弟が二ノ宮に負けて以降は大人しく引き下がるが、こずるい悪事はいまだに続けている。

ダフト・クルーガー

冒険者の街「グローリー」で幅を利かせるならず者「クルーガー兄弟」の弟。兄のザキル・クルーガーとは正反対の筋骨隆々とした身長2メートルを超える男性。スキンヘッドの強面(こわもて)で、ヒゲを生やし放題の粗野な見た目をしている。性格も見た目どおりの乱暴者で、兄の命令に従って暴れることが多い。実は女性にモテないことにコンプレックスを抱き、兄がタスク・リストをいたぶって見世物にしたあとは、自分が嫁にもらうという条件で彼女と決闘しようとする。しかし、二ノ宮キンジにその企みを看破され、モテない劣等感を二ノ宮に最大限刺激され、彼の挑発に乗って二ノ宮と決闘する。二ノ宮との決闘では優位に戦うが、遺物「ハバキリ」の力に敗北する。

集団・組織

ライザッハ鉱業 (らいざっはこうぎょう)

ドルストンに本拠を構える株式会社。資本金は130億G(ギリー)、社員数3万人を超える巨大企業で、デトモルド魔鉱遺跡の迷宮での探索と魔石採掘、魔石の流通と販売、魔石の研究と開発の三分野を主な産業としている。産業革命以降、魔石の需要は右肩上がりで、それに伴って急速に市場を伸ばしてきた。三分野のうち、特に探索と採掘が企業収益の中心となっており、この二つの部署は専門性を高めるために細分化されている。探索部の3課は魔物相手に大立ち回りをするエリート部署としてあこがれの的となっているが、逆に雑用専門の8課は人間の仕事じゃないと敬遠されている。未来のアムリアでは、迷宮からカロン人の遺産を手にし、それを解明することで急速に成長して世界を牛耳る。しかし急速な成長は魔石の大量消費につながり、世界のバランスを崩壊させ、星の守護者である魔王の逆鱗に触れてしまう。魔王とライザッハ鉱業の戦いは、魔王が辛うじて勝利するものの、世界はその戦いの余波によって荒廃した。未来のライザッハ鉱業は全人類を機械化し、完全社畜国家という名のディストピアを作り出すことを目指しており、いずれライザッハ鉱業と魔王は最終戦争を引き起こすと予想されている。

迷宮ブラックカンパニー (めいきゅうぶらっくかんぱにー)

二ノ宮キンジが現在のアムリアで立ち上げた会社。ライザッハ鉱業の仕打ちに耐えかねた二ノ宮が、迷宮アリを支配下に置いたのを皮切りに、ライザッハ鉱業への反逆を企て結成した。迷宮の魔物を次々と支配下に置き勢力を伸ばしており、従業員のほとんどは魔物によって構成されている。迷宮で魔物の牧場を開いて効率的に素材を集めたり、魔物の力を利用して魔石を採掘したりして利益を上げている。迷宮の大異変によって魔物たちは散り散りとなってしまうが、のちに二ノ宮に合流。二ノ宮が遺跡の力を手に入れたことで、地上侵出を果たす。二ノ宮によって迷宮そのものに手を入れられ、迷宮をアミューズメントパークに作り替えたり、魔物たちにも新たな役割が与えられ、さらに勢力を伸ばす。デトモルド魔鉱遺跡以外の迷宮も支配下に置き、迷宮同士の転送装置を使うことで強大な流通網も形成しており、それによって世界的なシェアを獲得している。わずかな期間によってライザッハ鉱業のシェアの4割を奪う急成長を見せ、最終的にはライザッハ鉱業の株の4割を集め、ライザッハ鉱業すら傘下に置いた。

迷宮ホワイトカンパニー (めいきゅうほわいとかんぱにー)

二ノ宮キンジが過去のアムリアで立ち上げた会社。記憶喪失となった二ノ宮が、冒険者の街「グローリー」の強者が尊ばれ、弱者は搾取される風潮を打破するため、力ない者を守るための互助組織として結成した。当初は資金力もなく、活動の方針も満足に立てられない状態だったが、アルカ・ライザッハとの出会いによって、二ノ宮の魔石の新たな活用法を模索するというアイディアを、アルカの技術力によって形にし、魔石の採掘や流通、加工、販売を担うのを活動方針とするようになる。従業員はアルカのツテで、グローリーでくすぶる低位の冒険者やケガで引退した冒険者、冒険者に虐げられている職人を中心に雇い入れている。魔石を採掘する「採掘課」、戦闘を回避するため最適な道を割り出す「探索課」、採掘課の護衛を担当する「警備課」という風に役割分担をし、適材適所に人材を割り振っている。また過去のアムリアでは珍しく福利厚生もきちんとしており、従業員の心身に気を遣うことで、グローリーの風潮に改革をもたらそうとしている。キノウ・シアは事業内容はまんまライザッハ鉱業と同じと見ているため、ライザッハと同じ姓を持つアルカの存在もあり、両者になんらかの関係があるのではないかと疑問視している。

場所

デトモルド魔鉱遺跡 (でともるどまこういせき)

地下に巨大な迷宮が存在する地。かつては「ダンジョン」と呼ばれており、多くの冒険者が名声と財産を求めて挑んだが、企業によって労働環境が体系化した現在では、もっぱら魔石採掘のための鉱山として扱われている。かつて時間と空間すら支配したといわれるカロン人に作られた古代遺跡で、迷宮の仕組みについては未だにわかっていないことが多い。迷宮内部は洞窟のようになっているものや、屋外と同じような昼と夜の存在する森のような環境が再現されているものなど、そのバリエーションはさまざま。また迷宮内部には凶悪な魔物が闊歩するため、迷宮内部の探索は相応に危険が付きまとう。迷宮は「迷宮の主」とも呼ばれる魔神によって管理されており、魔神が迷宮内部の魔力を循環させることで迷宮は活動する。魔神は巨大な力を持ち、たとえ倒せたとしても迷宮が存在する限り、新たな魔神が生まれるため、完全に倒すことは不可能。また迷宮が魔力を消耗した場合、周回忌を引き起こして回復する仕組みとなっている。魔神であるリムが使命を忘れて迷宮外に遊びに出たことで、迷宮が魔神が死んだと誤認。新たな魔神を生み出してしまうが、イレギュラーな誕生だったために完全な誕生に至らず「魔神のなりそこない」となり、迷宮にも大きな異変をもたらしてしまう。

冒険者の砦 (ぼうけんしゃのとりで)

迷宮内部に存在する施設。冒険者がギルドに管理されていた古い時代に建造された物で、迷宮を探索する冒険者の休息や資材の補充のための中継地点として機能していたが、企業による採掘と探索の効率化によって徐々に衰退し、現代では建物だけが残る廃墟となっていた。しかし迷宮に大変動が起きたあとは、企業の用意していた施設が軒並み崩れていく中、建物が健在だったために施設として再利用される運びとなる。

(とう)

冒険者の街「グローリー」に存在する迷宮。かつては誰も近づけない嵐がつねに吹き続けている地だったが、ある日、突然その嵐は止み、その中から天突くほどの巨大な塔が現れた。いつから、なんの目的で存在するのかわからない謎の巨大迷宮で、魔石や財宝を産出することから自然と人を集め、塔を中心に周辺地域は栄え、グローリーの街を形作ることとなった。魔石は加工されて武具などに使われているが、上級の冒険者であれば自分の魔力で己の身を守るため、防具は実用性が薄く、魔石の需要も現代のアムリアに比べて低くなっている。このため、多くの冒険者は「遺物」を狙った一攫(いっかく)千金を狙っており、遺物を手に入れることは冒険者にとって最大の誉れとされている。

グローリー

過去のアムリアに存在する街。迷宮である「塔」を探索する冒険者と、その冒険者を相手にする商人によって作られた。彼らによって街は大きく繁栄し、活気に満ちた街となっている。しかし一方で街は力のある者と、力のない者の格差を急激に広げ、弱者は強者に虐げられるだけの日々を送ることとなる。街には闘技場もあり、もめ事が起きた際には闘技場での決闘で解決することが多く、決闘者たちの戦いは鬱憤の溜まった人々の娯楽として重宝されている。まさしく弱肉強食の時代を象徴する街で、今も多くの者たちが成り上がりを目指してこの街に集っているが、同時に多くの落後者も生み出している。

その他キーワード

魔物 (まもの)

迷宮内部に存在する生物。生命の維持には魔素が必要だが、逆にふつうの生物が必要とする飲食は基本的に必要としない。魔物は例外なく縄張り意識が強く、人に襲い掛かるのも食事ではなく縄張りを守るため。魔物の縄張りは時折、ほかの種類の魔物と重複する場合があり、その場合は複数の種類の魔物が1か所に集まる「魔物だまり」が発生する。魔物にも種類が存在し、迷宮内部で自然発生する発生型、通常の生物のように繁殖する生殖型などがいる。また知能を持つ魔物は意外に多く、二ノ宮キンジは半ば脅す形で魔物たちを従え、牧場を作ったりしている。

魔力 (まりょく)

空気中に漂うマナを変換して生み出すエネルギー。事象に働きかける力を持つエネルギーで、迷宮内部では魔力が結晶化して「魔石」となる。人間の手で魔力をあやつり、任意の事象を引き起こすものを「魔法」、術式の中に組み込んで発動させるものを「魔術」と呼び、これらを発動させる際に魔力は必要不可欠なエネルギーとなっている。口から取り込んだ魔力は、心臓の横にある臓器の魔臓(まぞう)から魔脈を通して全身に行き渡らせることができ、魔力を使う場合はこの仕組みを理解することが重要とされる。魔臓は異世界アムリアの人間なら誰でも持っているが、地球人である二ノ宮キンジには存在しないため、魔力を扱うことができない。

周回忌 (しゅうかいき)

デトモルド魔鉱遺跡の迷宮で起きる現象。魔石の採掘などで迷宮内部の魔力が外に持ち出され、迷宮内部の魔力総量が目減りすることで引き起こされる。迷宮の主、魔神は迷宮の目減りした魔力を回復すべく、迷宮内部の構造に変化をもたらすとともに、人間をはじめとした強い魔力を持つ者を食らって魔力を回復させる。周回忌が終わると、回復した魔力によって迷宮の内部は再配置され、採掘された魔石や討伐された魔物が復活する。およそ10年に一度のペースで引き起こるとされるが、魔神が死ぬなどのイレギュラーが引き起こされると周回忌のペースが早まることがある。また、周回忌は必然的に迷宮内部にいる人間に大きな被害をもたらすため、場合によっては1000人規模の犠牲者を出すこともある。ベルザ・シューバッハは周回忌に勇者を利用することで最低限の被害で、最大の利益を得ようともくろむ。

勇者 (ゆうしゃ)

ライザッハ鉱業でエリートに与えられる称号。社内で高い戦闘能力を持ち、莫大な利益をもたらすと認められた者に与えられる称号で、職業ではない。会社に利益をもたらすために滅私で働く人間を指すため、二ノ宮キンジからは「究極の社畜」と呼ばれている。また勇者は例外なく高い魔力を持つため、ベルザ・シューバッハは勇者を「イケニエ」と呼び、勇者を魔神に食わせることで周回忌に入った迷宮を再生することをもくろんでいた。

迷宮アリ (めいきゅうあり)

デトモルド魔鉱遺跡の地下3階に生息するアリ型の魔物。体長は個体差があるが1.5メートルから1.8メートルほどで、一体一体はさほど強くないが、群れで行動するために非常に危険な魔物とされている。迷宮アリの女王は、アリの中から生まれた少数の雌型のアリが、生存競争の果てに勝者が群れに君臨するという習性を持つ。このため、迷宮アリは強者である女王に絶対服従の社会性昆虫となっている。本来は地下3階に生息していたが、迷宮の異変に伴って地上世界への侵攻を始め、二ノ宮キンジたちに襲い掛かる。迷宮アリは兵隊でも同族相手なら会話可能な知能を持つが、そのことを二ノ宮に気づかれて悪用される。迷宮アリの兵隊は使い捨てされる自身の境遇になんの疑問も抱いていなかったが、二ノ宮に労働の正しい概念を植え付けられ、彼に扇動されて女王に対してデモを行う。その後、女王ともども二ノ宮の結成した迷宮ブラックカンパニーに所属し、二ノ宮をカリスマ的存在として崇めている。未来のアムリアでもわずかながら生存しており、生き残っていた迷宮アリの兵隊はジェネラルアントに進化。二ノ宮の教えた労働の概念を守り、未来でもホワイト体制の労働環境を維持していた。

遺物 (いぶつ)

塔で発見される古代の遺産。手にした者に巨大な力を与えるため、冒険者にとって遺物を手に入れることは最大の誉れとされる。遺物は塔の1階を除くすべての階層に一つずつ存在するとされ、遺物が未発見なのは25階と48階だけで、それ以外では攻略の最前線となる85階以降にしか存在しないとされる。遺物の中には「規格外品」と呼ばれる強力なものが存在し、ナミダがその唯一の所持者とされていたが、ナミダによるとハバキリも同ランクの規格外品だとされる。

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