進撃の巨人 悔いなき選択

進撃の巨人 悔いなき選択

諫山創の漫画『進撃の巨人』を原作とする外伝作品。地下街のゴロツキに過ぎなかったリヴァイが調査兵団に入団し、巨人と戦うきっかけとなった事件を描いている。講談社「ARIA」2014年1月号から8月号にかけて連載された作品。通常版のほかにプレミアムKCから特装版、KCデラックスからフルカラー完全版も刊行されている。

正式名称
進撃の巨人 悔いなき選択
ふりがな
しんげきのきょじん くいなきせんたく
原作者
諫山 創
漫画
ジャンル
アクション
 
ダークファンタジー
レーベル
KCデラックス(講談社)
巻数
既刊2巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

地下街のゴロツキであるリヴァイファーラン・チャーチイザベル・マグノリアは対巨人用の装備である立体機動装置を用いて、窃盗などの悪事を繰り返していた。ある日、調査兵団分隊長のエルヴィン・スミスは彼らの身柄を拘束し、その能力を調査兵団のために用いるならば罪を見逃すと取り引きを持ち掛ける。リヴァイはファーランの抱く「ある企み」を成就させるべく、エルヴィンの提案を承諾。調査兵とのあいだに生じる軋轢を物ともせず、訓練に励む。数か月後、調査兵団は巨人の支配領域であるの外へと出発。リヴァイたちは奇行種と呼ばれる特殊な巨人と遭遇し、初めての巨人討伐に挑む。

第2巻

初陣で巨人を仕留めたリヴァイ、討伐を補佐したファーラン・チャーチイザベル・マグノリアの存在は調査兵団に希望をもたらし、調査兵が彼らを見る目にも変化の兆しが生まれていた。しかし、リヴァイは周囲と打ち解けようとはせず、調査兵団に加入した真の目的について思いを馳せる。リヴァイたちの最終目的は王都の市民権の獲得であり、そのためにはエルヴィン・スミスの持つ「ある書類」を奪取し、ニコラス・ロヴォフ議員と取り引きする必要があった。計画を主導するファーランはの外での書類奪取を半ばあきらめていたが、一夜明けて状況が一変する。雷雨の影響で巨人との交戦回避に主眼を置く長距離索敵陣形が機能不全に陥り、エルヴィンの安全が保証できなくなってしまったのだ。危険を冒してエルヴィンのもとへ向かうべきか、王都で暮らすという仲間の夢をあきらめて生き延びる事を優先させるべきか、リヴァイは選択をせまられる。

登場人物・キャラクター

リヴァイ

地下街で有名なゴロツキの男性。にらみつけるような三白眼で、襟足まで刈り上げたツーブロックショートボブにしている。一人称は「俺」。小柄ながら人間離れした身体能力を備え、独学で習得した立体機動装置の扱いに関しては、調査兵団のベテランすら凌駕する。口が悪く無愛想で、潔癖性の傾向があるなど取っ付き難い性格だが、身内になにかあれば即座に報復を行うなど、仲間思いな一面もある。また、ティーカップを使用する際に取っ手を避けて、上部から覆うように持ち上げる妙な癖がある。ファーラン・チャーチ、イザベル・マグノリアと共に地下街で暮らしていたが、王都の市民権獲得を目的とするファーランの計画に賛同し、調査兵団へ加入。初陣にて奇行種と呼ばれる討伐難度の高い巨人を撃破し、実力を示した。なお、入団前のいざこざから、計画の鍵となる「ある書類」を管理するエルヴィン・スミスに対して殺意を抱くようになったが、ファーランの悲願成就のため、抑え込んでいる。また、入団後はクラバットを巻き付けるようになった。

ファーラン・チャーチ

リヴァイの悪友。淡い髪色の男性で、クセの付いたV字バングの髪形をしている。一人称は「俺」。冷静沈着な頭脳派で、もともとは地下街でギャングのまね事をしていたが、リヴァイに喧嘩を売って返り討ちとなり、リーダーの座をゆずって行動を共にするようになった。社交的な一面もあり、リヴァイやイザベル・マグノリアのブレーキ役を担う事も多い。エルヴィン・スミスから立体機動装置の扱いを高く評価され、リヴァイ、イザベルと共に調査兵団へ加入。初陣ではイザベルと共にリヴァイを補佐し、奇行種と呼ばれる危険度の高い巨人の討伐に貢献した。また、調査兵団としての活動の裏で、ニコラス・ロヴォフ議員が欲している「ある書類」の捜索に奔走。最終的には書類を用いてロヴォフと取り引きを行い、王都へ移住しようと企んでいる。

イザベル・マグノリア

リヴァイの妹分の年若い女性。赤毛の髪を二つ結びにし、円形のトップを付けたペンダントで胸元を飾っている。潑剌とした男勝りな性格で、一人称は「俺」。馬など動物の扱いに長けているが、暗算を苦手としており、二桁の足し算すらあやうい。地下街の出身で、死にかけていたところをリヴァイに救われてから、行動を共にするようになった。現在ではリヴァイを兄のように慕っている。エルヴィン・スミスから立体機動装置の扱いを高く評価され、リヴァイ、ファーラン・チャーチと共に調査兵団へ加入。初陣ではファーランと共にリヴァイを補佐し、奇行種と呼ばれる手強い巨人の討伐に貢献した。入団当初は調査兵団の面々を馬鹿にしていたが、実戦で彼らの覚悟に触れてからは、邪魔になるような事はしたくないと、態度を改める。

エルヴィン・スミス

調査兵団に所属する長身の男性。階級は分隊長。金髪で、トップにボリュームを残したクルーカットの髪形をしている。一人称は「私」。切れ者として知られ、巨人との遭遇を回避するというコンセプトの長距離索敵陣形を考案し、調査兵団の主任務である壁外調査に光明をもたらした。団長であるキース・シャーディスからも才覚を高く評価されているが、団長すら駒として利用できる人物であると、恐れられてもいる。謀略、根回しの類も得意としており、ニコラス・ロヴォフが調査兵団に潜り込ませていた諜報員を逆に利用し、ロヴォフが憲兵団への物資納品を担うラング商会と癒着している事、壁外調査を廃止に追い込む事で浮いた予算を商会に回そうと企んでいる事を看破。その後もロヴォフと「ある書類」を巡って、水面下での戦いを繰り広げる。また、地下街で暴れ回るリヴァイ、ファーラン・チャーチ、イザベル・マグノリアの立体機動装置の扱いを高く評価し、調査兵団へとスカウトした。「変革の一翼」と表現するなど、彼らの活躍に大きな期待を寄せている。

キース・シャーディス

調査兵団の団長を務める壮年の男性。落ち窪んだ目をしており、揉み上げから顎にかけて髭を生やしている。一人称は「俺」。エルヴィン・スミスの考案した長距離索敵陣形の有用性を認め、陣形の採用をザックレー総統に直談判した。壁外調査廃止の危機に際しては、エルヴィンがイリーガルな手法を用いて壁外調査の廃止を訴えるニコラス・ロヴォフを翻意させようと企んでいる事を察し、根回しを一任。それが功を奏して、壁外調査の実施と陣形の実地訓練の認可まで漕ぎつけている。

フラゴン・ターレット

調査兵団に所属する男性。階級は分隊長。垂れ目で顎先に髭を生やしている。一人称は「俺」。厳しい訓練を積んだ正規の兵士としての誇りから、ただの犯罪者に過ぎないリヴァイ、ファーラン・チャーチ、イザベル・マグノリアを調査兵団に迎える事に反発していた。しかし、団長であるキース・シャーディスの命令により、彼らを自らの分隊に受け入れる事となってしまう。当初はリヴァイたちと反目していたが、実戦を通して彼らの有用性を理解すると、態度を軟化させた。壁の外で巨人の群れに襲われた際には、窮地に陥った部下を救おうと、果敢に巨人に立ち向かっている。

サイラム

調査兵団に所属する男性。フラゴン・ターレットの部下で、一人称は「僕」。地下街出身のリヴァイ、ファーラン・チャーチ、イザベル・マグノリアを目の敵にしている。イザベルの挑発に乗ってフラゴンに叱責されてしまうなど、血気盛んな面も目立っていたが、リヴァイたちの実力を実戦で目の当たりにすると、巨人との戦いに希望を見いだすようになり、態度を軟化させていった。壁の外では絶望的な状況下に陥ってもフラゴンの身を案じるなど、精神の強さをかいま見せている。

ハンジ・ゾエ

調査兵団に所属する中性的な顔立ちの性別不詳の人物。髪を後頭部で束ね、平時には眼鏡を着用しているが、任務に臨む際にはゴーグルに付け替える。一人称は「私」。壁外調査の最中、討伐の難しい奇行種の巨人を倒したリヴァイに興味を持ち、強さの秘密を聞き出そうと興奮気味に詰め寄るも、軽くあしらわれてしまった。この際、同席していたファーラン・チャーチから「変なヤツ」と評されている。

ザックレー

兵団組織の総統を務める老齢の男性。髪形はオールバックで、口の上と揉み上げから顎にかけての部分に髭を蓄え、丸眼鏡をかけている。これまで調査兵団を支持し、壁外調査に必要な予算を通すなど尽力していた。しかし、ニコラス・ロヴォフが壁外調査の廃止を主張すると、これ以上の支援は難しいと判断。調査兵団を率いるキース・シャーディスに壁外調査は中止になると通達した。その後、エルヴィン・スミスの根回しによって壁外調査が奇跡的に認可されると、今後のためにも確実に成果を挙げるように念押ししている。

ニコラス・ロヴォフ

議員を務める老齢の男性。用心深い性格をしている。髪は長く、口髭と顎髭を蓄えている。貴族院に対して絶大な影響力を持っており、調査兵団の主任務である壁外調査の廃止を強く主張している。調査兵団の内情を探るべく内偵を派遣しており、配下を介しての間接的な形ではあるが、リヴァイとも接触を図っている。この際、王都で暮らす権利をちらつかせて、エルヴィン・スミスが隠し持つ「ある書類」の奪取とエルヴィンの始末をリヴァイ一派に依頼した。エルヴィンの捜査により、数年前から壁外調査の中止で浮いた資金を横領している事が判明している。

集団・組織

調査兵団 (ちょうさへいだん)

壁内人類の擁する軍事組織の一つ。団長はキース・シャーディスが務めている。巨人が徘徊する壁外領域の探索を主任務とする。調査兵は立体機動装置の運用に必要となるハーネスをつねに身につけており、その上から装置の動作を阻害しない丈の短いジャケットとフード付きマントを着用している。また、これらの制服には白い翼と黒い翼を重ねたデザインの紋章「自由の翼」があしらわれている。調査兵は巨人との実戦を経験するため、立体機動装置の扱いに関してはほかの兵団組織より秀でているが、遠征のたびに莫大な費用が発生するうえに、これといった成果を得られていないため、民衆からの心証は芳しくない。ニコラス・ロヴォフを筆頭とする議員の圧力もあり、組織の存在意義すら危ぶまれている。そのほかの兵団組織として、壁内の秩序の維持を任務とする憲兵団、立体機動装置の扱いなどを学ぶ訓練兵団などが存在する。

場所

王都 (おうと)

三重の壁で囲われた人類の生存領域の中心部に位置する都。巨人の支配領域から最も遠い位置にあり、住民は安全で豊かな暮らしが約束されている。豪奢な宮殿が立ち並び、政治経済の中枢部としても機能しているが、権力闘争の舞台でもあるため、キース・シャーディスは伏魔殿と表現した。

地下街 (ちかがい)

王都の市街地の地下に広がる居住空間。かつて、巨人の襲撃を逃れるべく検討されていた地下移住計画の名残の空間であり、計画が放棄された現在では、貧者や悪人が流れ着くスラム街も同然の状態となっている。特に深部は王政の管理が行き届いておらず、治安の維持を担っているはずの憲兵団すら寄り付かないありさまとなっている。イザベル・マグノリアはリヴァイに拾われて深部を脱する事ができたが、その後も深部へと足を踏み入れ、酷い暴力を受けて帰ってきた事がある。

その他キーワード

立体機動装置 (りったいきどうそうち)

調査兵団をはじめとする兵団組織の標準装備。巨人との戦闘を想定して作られた装置で、腰の部分に取り付けた射出機から放たれるアンカーを周囲の物体につき刺す事で、ワイヤーアクションさながらの立体的な高速移動が可能となる。アンカーの発射とワイヤーの巻き取りは左右グリップのトリガー操作によって行われ、グリップには専用のブレードを取り付ける事もできる。立体機動の習得は困難を極めるが、熟練者が使用すれば巨人の攻撃を搔い潜って、弱点であるうなじへ斬撃を浴びせる事も可能。リヴァイ、ファーラン・チャーチ、イザベル・マグノリアは違法な手段で立体機動装置を入手。独自の訓練によって立体機動を会得し、地下街を縦横無尽に飛び回っていた。なお、グリップは順手でにぎる事を想定して作られているが、リヴァイは斬撃をスムーズに繰り出せるよう、ブレードを取り付けた右手のグリップを逆手でにぎる場合がある。

ある書類 (あるしょるい)

王都の有力議員であるニコラス・ロヴォフが欲している書類。彼が主導する横領の証拠となる情報が記されたもので、エルヴィン・スミスが管理していると考えられている。リヴァイ、ファーラン・チャーチ、イザベル・マグノリアは書類を手に入れてロヴォフと取り引きを行い、王都で暮らす権利を手に入れようと画策。エルヴィンから書類を奪い取るべく、調査兵団への入団を決意した。

巨人 (きょじん)

壁の外側に跋扈(ばっこ)する謎の生物。外見は生殖器の存在しない全裸の人間だが、その多くは人間よりはるかに大きく、「20メートル級」など目測の大きさで呼称される。巨体に恥じぬパワーを備えており、人間を見つけると素手でにぎり潰し、そのまま捕食してしまう。また、巨体ながら俊敏で、逃走を図る場合は馬が必要不可欠である。総じて人類の天敵とも呼べる存在だが、うなじを損傷すると体から多量の蒸気を噴出して絶命する。そのため、人類が巨人に立ち向かう際には、立体機動装置を用いて背後に回り、装置付属のブレードでうなじを削ぎ落とすのが基本パターンとなっている。人間を発見すると一目散に襲ってくるため、囮役を用意してスキを生み出すなどの戦術も有効だが、独自の行動原理を備えた「奇行種」と呼ばれる個体も存在するため、油断は禁物である。

(かべ)

人類の生存領域をぐるりと囲む巨大な三重の壁。内側から順にウォール・シーナ、ウォール・ローゼ、ウォール・マリアと名付けられている。最も外側に位置するウォール・マリアの外は「壁外」と呼ばれ、人間を捕食する巨人が生息する事から、常人が出歩く事は不可能。調査兵団の兵士だけが壁外調査と称して、城門から壁外に出る機会がある。

長距離索敵陣形 (ちょうきょりさくてきじんけい)

エルヴィン・スミスが考案した陣形。巨人を倒すのではなく、徹底して交戦を避ける事に主眼が置かれている。具体的には、広域に展開した部隊のうち、最も外側に配置された索敵班が目の役割を担い、巨人を目視した段階で信煙弾を発射。指揮班が煙の色と方角から状況を読み取り、信煙弾で新たな進行方向を示すというものである。死傷者を劇的に減らす効果が望めるとして、キース・シャーディスやザックレーも有用性を認めているが、索敵と伝達を視覚に頼っている事から、天候の悪化に弱いという弱点がある。

壁外調査 (へきがいちょうさ)

調査兵団の主な任務。巨人が闊歩する壁の外へと兵力を動員し、補給基地の確保や巨人の生態調査を行い、人類の活動領域の拡大を図るものである。調査兵団の存在意義に等しい任務だが、実行には危険が伴ううえに、莫大な遠征費が必要となるため、兼ねてより実施については反対の声も上がっていた。昨今は民意すら廃止を望む傾向にある。

クレジット

原作

ストーリー原案

砂阿久 雁(ニトロプラス)

協力

「進撃の巨人」製作委員会

ベース

進撃の巨人 (しんげきのきょじん)

作者、諫山創の初連載作品であり代表作。舞台は人を食らう巨人に追われ、人類は壁のなかで暮らすことを余儀なくされてしまった世界。巨人に母を殺された少年エレン・イェーガーが復讐を誓い、巨人を倒すための調査兵... 関連ページ:進撃の巨人

書誌情報

進撃の巨人 悔いなき選択 2巻 講談社〈KCデラックス〉

第1巻

(2014-04-09発行、 978-4063769616)

第2巻

(2014-08-08発行、 978-4063770469)

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