鋼鉄の少女たち

鋼鉄の少女たち

戦争の続く異世界において、戦車兵として徴兵された少女たちの戦いを描くSF長編。絶望的な戦況のなか、少女たちが運命と戦う群像劇。戦場での暴力や戦車などのメカニックの描写は非常にリアルだが、兵士たちの日常は時にコミカルに描かれる。「月刊少年エース」「エース桃組」において2001年から2004年にかけて連載されたが、「エース桃組」休刊にともなって連載が終了し、未完となっている。原作は手塚一佳。

正式名称
鋼鉄の少女たち
ふりがな
こうてつのしょうじょたち
原作者
手塚 一佳
漫画
ジャンル
ファンタジー
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概要・あらすじ

舞台は「王国」と「連合」との戦争状態が続く異世界。劣勢の王国は、余剰人口である少年少女たちを兵士として前線に送り出していた。特に、戦車部隊である「鋼鉄の少女」中隊は、ほとんど捨石のように扱われ、年端もいかない少女たちが無残に死んでいった。中隊に所属するリナ・レタ軍曹と、中隊長であるザ・ガミュ・エオナ中尉は、己の無力さに苦悩しながらも、過酷な運命に立ち向かっていく。

登場人物・キャラクター

リナ・レタ (りなれた)

「鋼鉄の少女」中隊所属の下士官。ショートカットの髪型の若い女性で、階級は軍曹。獣医を目指して勉強していたが、徴兵を受け前線に送られた。ちょっとした猥談すら嫌がるような、真面目で潔癖な性格。中隊では一番のベテラン軍曹で、指揮能力はかなり高い。気ままな上官のザ・ガミュ・エオナを押さえたり、部下のミリア・キムやカリン・ウーの世話を焼いたりと、気苦労が絶えない。 しかし、苦難が待ち構えているとわかっていても、エオナに付き従う決意を固めている。

ザ・ガミュ・エオナ (ざがみゅえおな)

「鋼鉄の少女」中隊の中隊長。妖精のような長い耳が特徴的な若い女性で、階級は装甲騎兵中尉。型にはまらない豪快な人柄で、常識人のリナ・レタを振り回しがち。しかし、「屑鉄の少女たち」と呼ばれて士気も低かった隊員たちに、自信を取り戻させるなど、指揮能力は高い。実はラニア公国の公家の末裔であり、本名は「デ・ラニア・エオナール」という。 その事実は周囲に明かされていない。自分に課せられた過酷な運命と、最後まで戦う覚悟を決めている。

ミリア・キム (みりあきむ)

「鋼鉄の少女」中隊所属の女性戦車兵。階級は一等戦車兵で、リナ・レタの部下。ミディアムの髪型が特徴。レタの乗る戦車で砲手を務め、デ・ナウ・フルータからは「砲操作のエキスパート」と認識されている。年頃の少女らしく、ゴシップ好きな面を持つ。ザ・ガミュ・エオナとナウが密室で会っているのを覗こうとし、レタに叱責されたこともある。 戦闘において両足を失う重傷を負い、戦線を離脱した。

カリン・ウー (かりんうー)

「鋼鉄の少女」中隊所属の女性戦車兵。階級は一等戦車兵で、リナ・レタの部下。ベリーショートの髪型で、眼鏡をかけている。レタの乗る戦車の操縦手を務め、デ・ナウ・フルータからは「冷静な戦車操縦手で皆の押さえ役」と認識されている。よくミリア・キムとともに行動しており、ミリアの巻き添えとなって、レタに叱責されたことがある。

デ・ナウ・フルータ (でなうふるーた)

「鋼鉄の少女」中隊に転属してきた情報担当士官。長い黒髪が特徴の女性で、階級は少尉。その職務から記憶力に優れ、中隊のメンバーの顔と名前、情報をすべて記憶している。ザ・ガミュ・エオナを「お姉様」と呼び、公然と慕っている。女所帯とはいえ、人前で平然と脱ぐ癖があり、エオナやリナ・レタをしばしば呆れさせる。エオナと、ラニア大公のデ・ラニア・ダニエルが姉弟である、という機密情報を掴んでいる。

木貞 譲二 (きさだ じょうじ)

「帝国」警察予備隊の国際派遣部隊指揮官。常にゴーグルをつけた若い男性で、階級は警部。「連合」に協力する「帝国」は、戦争に乗り気でないが、彼自身は「帝国」の方針に反し、腹に一物を抱えている。直接の部下ではないが、味方である傭兵部隊を、兵器の実験に使うなど、冷酷な合理主義者。ザ・ガミュ・エオナらに興味を抱き、接触を図ろうとするため、「鋼鉄の少女」中隊の隊員からは気味悪がられている。

デ・ラニア・ダニエル (でらにあだにえる)

ラニア公国の大公の地位にある少年。古ラニア公家の末裔だが、もとは平凡な市民として暮らしていた。ラニア公国が「王国」に併合された後、「連合」陣営に傀儡として担ぎ出された。ザ・ガミュ・エオナの弟にあたるが、その事実は公には伏せられている。離れ離れになって軍人となった姉を心配する優しさを持つ。

ガンツ

ラニア公国を再建するために「連合」から派遣された軍人。恰幅の良い中年男性で、階級は元帥。デ・ラニア・ダニエルを傀儡の君主の座に就け、ラニア公国の実質的な最高権力者として振舞う。男色家であり、主君であるはずのダニエルを慰みものにしている。

ザキ

「王国」軍の随伴歩兵小隊の隊長。鉢巻がトレードマークの少年で、階級は軍曹。リナ・レタ率いる戦車部隊と合同で作戦を行うが、双方の指揮官が意地を張ったため、連携がうまくいかずに失敗してしまう。当初はレタと互いにいがみ合っていたが、戦いや部下の死・負傷といった経験を通じ、「戦友」として認め合うようになり、やがてレタに恋愛感情を抱く。

ユキ

「鋼鉄の少女」中隊の新兵。階級は二等兵。13歳の、髪の毛をツインテールにした少女。ミリア・キムが負傷した後に中隊に配属された。リナ・レタ指揮下の戦車に乗って初陣に出るが、戦場の残酷さに触れて恐怖のあまり失禁。それでも隊長のザ・ガミュ・エオナに励まされ、少しずつ自信をつけていく。気弱だが努力家で、毎日長時間、砲術の練習を行っている。

栗原 京子 (くりはら きょうこ)

「帝国」警察予備隊に所属する兵士。ウェーブがかかった黒髪の眼鏡をかけた女性で、階級は二等警部補。エリートではあるが、杓子定規なところが欠点でもある。捕虜を売り飛ばそうとした傭兵部隊を止めようとしてトラブルを起こし、「理想主義が過ぎる」と、上官の木貞譲二にたしなめられた。冷徹な木貞のやり口に対しては、「鬼」と評している。

ミカエル

「王国」の憲兵隊長を務める青年。階級は少尉。「王国」軍の補給都市「シモタキ」の治安維持の任務に就いている。堂々とした体格で、「本当のワル」として、町の人間からは恐れられている。しかし、士官学校時代の先輩で、かつて肉体関係もあったザ・ガミュ・エオナには「デブエル」と呼ばれ、まったく頭が上がらない。格闘の能力はかなり高い。

カスター

「王国」軍の大隊指揮官。禿頭の軍人らしい風貌をした中年男性で、階級は少佐。「鋼鉄の少女」中隊を含む寄せ集めの部隊により、「連合」の占領する丘を攻める作戦において、指揮官を務めることとなった。考え方が古く、ザ・ガミュ・エオナやデ・ナウ・フルータの発案した作戦を却下し、旧時代的な正面突破作戦を採用する。

ピノ

「鋼鉄の少女」中隊所属の戦車兵。ショートカットの少女で、階級は伍長。「連合」の占領する丘を攻める作戦では、ルッカたちとともに捕虜となり、「連合」軍の兵士によって執拗に凌辱される。その後、ザキ率いる歩兵隊の活躍によって奪還される。心身を傷つけられたにもかかわらず、奪還後は負傷兵の看護を手伝うなど、気丈さを見せた。

ルッカ

「鋼鉄の少女」中隊所属の戦車兵。髪を真ん中で分けた少女で、階級は伍長。「連合」の占領する丘を攻める作戦において、ピノたちとともに捕虜となる。「連合」軍の兵士の陵辱を受けるが、のちに生還する。厳しく部下を指導する鬼教官タイプの軍人。

マルシェ・レン (まるしぇれん)

「鋼鉄の少女」中隊に配属された補充兵。眼鏡をかけた少女で、階級は二等兵。姉であるキルシェの戦死後に配属された。姉とは瓜二つであり、初めて中隊を訪れた時は、隊員たちにキルシェの幽霊と勘違いされたほど。配属当初は非力で、戦車の砲弾すら1人で抱えられず、ルッカたちを呆れさせた。

クラリッサ・アーゲイア (くらりっさあーげいあ)

苦戦する「鋼鉄の少女」中隊のため、援軍を率いてきた指揮官。長身でボーイッシュな風貌の女性で、階級は中佐。伝説の「最初の戦車兵」として知られ、尊敬を集めている。勿体ぶった男言葉で話し、悠然とした態度を取るかと思えば、突然だだをこねるなど、捉えどころのない人物。

アンドン

「王国」の軍人。階級は不明だが、将官クラス。白髯が特徴の老人。名将として「王国」軍での知名度は高い。「連合」軍に捕虜として捕らえられていたが、「王国」陣営内にも敵が多かったため、長らく帰国が叶わなかった。女好きで、「鋼鉄の少女」中隊の兵士にもセクハラを繰り返すなど、普段の姿にあまり威厳はないが、非常時には頼りになる存在。

集団・組織

「鋼鉄の少女」中隊 (こうてつのしょうじょちゅうたい)

「王国」側の部隊の1つ。思春期の年代の少女たちで構成されている。体が小さいため戦車兵として適任で、前線に送られることが多い。彼女たちに与えられるのは旧式の戦車ばかり。国家にとっては死んでも構わない捨石同然の存在として、「屑鉄の少女たち」と呼ばれ、蔑まれている。しかし、指揮官のザ・ガミュ・エオナのもとで戦果をあげ、自分たちを「鋼鉄の少女たち」と呼んで、誇りを持つようになった。

場所

王国 (おうこく)

異世界の大陸の西部に位置する立憲君主国。物語開始の時点で、すでに15年ほど「連合」陣営と断続的に戦争をしている。隣接する兄弟国のラニア公国を併合したが、これにより「連合」の介入を招くこととなった。当初は「連合」と互角に戦っていたが、国力に勝る相手に勝つ見込みはほとんどない。しかし、戦争をやめることは、即座に「王国」の瓦解を招くことになるため、滅亡への道を進むしかない運命となっている。

連合 (れんごう)

「連合本国」を中心とした国家の集まり。自らを「理想世界を目指す正義の国」として、「王国」に対して「連合」に従うよう要求している。「王国」との戦争では、兵力を補うため傭兵部隊を雇っているが、捕虜を虐待するなどの、傭兵らの蛮行を止められていない。

帝国 (ていこく)

物語開始の半世紀前、「連合」と戦って降伏した国家。その後戦争を放棄し、経済大国となった。旧軍は解体され、現在は警察予備隊となっている。「連合」の強い要請を受けて戦線に参加し、ここ半世紀で初めて武力行使を行うことになった。「王国」との戦いにおいては、「連合」への義理立てとして、後方支援のみの参加となっている。

ラニア公国 (らにあこうこく)

「王国」に併合され、消滅した国家。併合は合法的に行われたが、ラニア公国の救済を大義名分とした「連合」陣営の介入を招くこととなった。地理的には、大陸の東西南北をつなぐ要衝にある。風光明媚な美しい土地でもあり、「王国」と「連合」の双方がその領土を欲している。2つの陣営に挟まれた立地のため、作中の戦争は、基本的にラニア公国の領域で行われている。

クレジット

原作

手塚 一佳

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