馬屋古女王

馬屋古女王

父厩戸王子によってその存在を封じられていた末娘馬屋古女王は、厩戸の死後、山背大兄王子によって監禁を解かれ、外へ出される。父に似た美貌を持つ馬屋古女王の存在は、次第に周囲の人々を惑わし、一族を荒廃へと導く。山岸涼子の『日出処の天子』の続編にあたる中編。

正式名称
馬屋古女王
ふりがな
うまやこのひめみこ
作者
ジャンル
ホラー
 
怪談・伝奇
 
その他歴史・時代
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概要・あらすじ

厩戸王子によってその存在を封じられていた末娘馬屋古女王は、厩戸の死後、山背大兄王子によって監禁を解かれ、外へ出される。厩戸の葬儀を行うため、殯宮に集まった厩戸の一族の人々は、常人離れした美貌の父に良く似ているものの、目も耳も口もきけない馬屋古女王の存在に驚くが、次第に厩戸王子の超能力をも受け継いだ魔性の存在である馬屋古女王に惑わされ、人間関係を狂わせて行く。

登場人物・キャラクター

馬屋古 (うまやこ)

厩戸王子と膳美郎女の間に生まれた末娘。14~15歳。父の美貌と超能力を受け継ぐが、盲目で聾唖。本能のみで生きる魔性の存在。表向きは重度の障害ゆえという理由で、人目に触れさせないよう軟禁されていた。父厩戸の死後、山背大兄王子の手で外に出され、殯宮で一族の男たちを次々に誘惑し、破滅へと導く。 実在の人物馬屋古女王をモチーフとしたキャラクター。

山背 (やましろ)

厩戸王子と刀自古郎女に生まれた長子として、厩戸王子亡き後の上宮王家を一身に背負う当主である青年。政治的にもすでに頭角を現しているが、父亡き後確固たる地位を手にしていないことへの焦りを感じている。真面目で品行方正な人物。だが自分の出生が表向きとは違い、母刀自古郎女とその実兄蘇我毛人の禁断の交わりによって生まれたものであることを祖母より聞かされており、そのことが性格や言動に暗い影を落としている。 末の妹である馬屋古女王を軟禁から解き、無垢な者として可愛がる。実在の人物山背大兄王子をモチーフとしたキャラクター。

蘇我入鹿 (そがのいるか)

蘇我毛人と布都姫の間に生まれた蘇我の頭領息子。山背とはよき友人であり、かつては山背の正妻となった舂米女王を巡る恋のライバルでもあった。真っ直ぐな気性で、自分では祖父である蘇我馬子に似た性格であると考えている。難波王と弓削王と共に厩戸王子の玄室に迷い込んだ馬屋古女王を発見し、不吉な予感を覚える。 実在の人物蘇我入鹿をモチーフとしたキャラクター。

舂米 (つきしね)

厩戸王子と膳美郎女の間に生まれた女王。異母兄である山背大兄王子に嫁ぐ。厩戸王子の利発さを受け継ぎ、山背大兄王子と並んで生前の父厩戸に可愛がられていたため、父の死を深く悲しむ。山背大兄王子とは仲むつまじく、難波と弓削の二子を儲け、平和な家庭を築いていたが、馬屋古女王の出現により、次第にすべてが崩壊していく。 実在の人物舂米女王をモチーフとしたキャラクター。

長谷 (はつせ)

厩戸王子と膳美郎女の間に生まれた王子。厩戸王子の弟来目王子に似た容姿。父に良く似た馬屋古女王に誘惑され、同母妹である彼女への恋心に苦しむ。以前叔母である佐富女王と婚儀の話が持ち上がったことがあり、その時は佐富女王自らが年上であるという理由から婚儀を断ったものの、今も親しく行き来をしている。 実在の人物泊瀬王をモチーフとしたキャラクター。

難波 (なにわ)

山背大兄王子と 舂米女王の間に生まれた王子。弟弓削と共に殯宮を探検した際に馬屋古女王に遭い、その後馬屋古と共に祖父厩戸の玄室にいるところを蘇我入鹿に発見される。それ以来高熱を出して寝込み、馬屋古に強い執着を示す錯乱状態となってしまう。実在の人物難波王をモチーフとしたキャラクター。

佐富 (さとみ)

田目王子と穴穂部間人媛の間に生まれた女王。厩戸王子の異父妹。穴穂部間人媛に良く似た容貌を持ち、生前の兄厩戸には疎まれていた。卜部として優れた能力を持つ。兄厩戸の死と共に「恐の卦(かしこみのけ)」という良くも悪くも強い影響力を持つ占い結果が出たことを蘇我入鹿に告げる。 この「恐の卦」は14~15年前にも一度出たことがあった。実在の人物佐富女王をモチーフとしたキャラクター。

厩戸 (うまやど)

馬屋古女王の父親。前作『日出処の天子』の主人公。20年間ほとんど歳を取らないような若く美しい容姿を保っていたが、兆候もなく急死する。生前はほとんど人前に出ず、御簾越しに様々な指示を行っていた。大王の位にこそ就かなかったものの、実質的な為政者として辣腕を振るっていた。自身の一族をわずか一代で上宮王家と呼ばれるほどに隆盛させる。 自身の超能力を受け継いだ馬屋古女王と看做し、人目に触れさせないよう軟禁状態で育てる。『馬屋古女王』では直接的な描写はなく、回想および、幻のような姿を蘇我入鹿と佐富女王が垣間見るのみとなっている。実在の人物聖徳太子をモチーフとしたキャラクター。

白髪部王 (しらかべのおうじ)

厩戸王子と、額田部女王の孫娘橘大郎女の間に生まれた王子。4歳の少年。血筋の点で言えば山背大兄王子よりも上宮王家の当主にも大王にもふさわしい存在。馬屋古女王の超能力によって、彼女の部屋の前で、木の下敷きとなって死亡する。実在の人物白髪部王をモチーフとしたキャラクター。

(たから)

厩戸王子と刀自古郎女の間に生まれた王子で、山背の弟。表向きはともかく、実質的に刀自古郎女の不義密通による子供であることは知れ渡っており、そのことにコンプレックスを抱いている。馬屋古女王に誘惑され、彼女と関係を持った後、山背に馬屋古女王を妻に欲しいと懇願する。 実在の人物財王をモチーフとしたキャラクター。

日置 (へき)

厩戸王子と刀自古郎女の間に生まれた王子で、山背の弟。表向きはともかく、実質的に刀自古郎女の不義密通による子供であることは知れ渡っている。馬屋古女王に魅了され、彼女の機嫌を取ろうと果物や獣肉を差し入れる。実在の人物日置王をモチーフとしたキャラクター。

弓削 (ゆげ)

山背大兄王子と舂米女王の間に生まれた王子。兄難波と共に殯宮を探検した際に馬屋古女王に遭い、その後馬屋古と共に祖父厩戸の玄室にいるところを蘇我入鹿に発見される。以来何かにずっと怯えており、白髪部王が死んだ後は、次は自分なのだと泣いて母舂米女王に訴える。 実在の人物弓削王をモチーフとしたキャラクター。

膳美郎女 (かしわでのみのいらつめ)

馬屋古女王の母親。厩戸王子の妻。知的障害者。厩戸との間には八人の子を儲けるが、舂米女王と長谷王以外の子は皆知的障害をもって生まれてきた。厩戸とほぼ同時に亡くなるが、首に何か痕があり、病死ではなく他殺ではないかという噂が立っている。実在の人物膳部菩岐々美郎女をモチーフとしたキャラクター。

刀自古郎女 (とじこのいらつめ)

山背大兄王子の母親。実兄蘇我毛人を愛し、禁断の関係を持って山背を儲けたが、毛人を愛する厩戸王子がそれを承知で山背を実子として育てたことを知り、絶望に陥る。自棄から次々にどこの者とも知れない奴僕の男たちと不義密通を重ねた。実在の人物刀自古郎女をモチーフとしたキャラクター。

前作

日出処の天子 (ひいずるところのてんし)

高い才知と美貌、そして超能力を持って生まれた厩戸王子は、それゆえ余人の理解を絶する孤独の中に生きながらも、朝廷政治においてその才能を花開かせようとしていた。そんな彼を唯一理解し敬愛する蘇我毛人に次第に... 関連ページ:日出処の天子

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