デビルマン

デビルマン

悪魔の力を得た主人公不動明が、奇怪な能力を持つ敵デーモンとバトルを繰り広げるSFホラー。永井豪の代表作とも言える作品である。前半はホラー色の強い異色のヒーロー漫画という趣だったが、中盤から物語は一気にスケールアップ、人間を超える者による最終戦争という黙示録的な結末を迎える。執拗に描かれる人間の愚かさや残酷さ、そして衝撃的なストーリーは、高い評価を得た。「悪魔がヒーローになる」というコンセプトは、同作者による『魔王ダンテ』から継承されたものであり、敵キャラクターデザインなどにも共通点が見られる。また、『新デビルマン』、『バイオレンスジャック』『デビルマンレディー』、『デビルマンサーガ』など永井豪自身による、補完作品・後継作品が多数発表されている一方、複数作者によるオムニバス『ネオデビルマン』、衣谷遊による『AMON デビルマン 黙示録』など、別作者に派生作品も多い。また、本作の発表以前から、永井豪の企画を原案とするTVアニメーションの制作が決定しており、漫画版とTVアニメ版は、「同じ基本設定から生まれた別の物語」とも言うべき関係となっている。

正式名称
デビルマン
ふりがな
でびるまん
作者
ジャンル
バトル
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概要・あらすじ

ごく普通の少年だった不動明は、親友である飛鳥了から、地球の先住民であるデーモンの実在と復活を知らされ、その侵略に対抗するためデーモンと合体しデビルマンとなった。は、刺客として襲い来るデーモンたちに何とか勝利を収め続けるが、徐々にデーモンたちは人間社会に紛れ始める。そして、ついにデーモンは人類への全面攻撃を開始し、人類社会に多大な被害をもたらした。

さらにデーモンは人間が変化したものであるという間違った情報が広まったことで、大規模な魔女狩りが頻発するようになり、人類社会は崩壊してしまう。は、人間の愚かさ、残酷さに絶望しつつも、自分と同じようにデーモンの力を得て生き残った者たちを率い、デーモンとの最終決戦に挑むのだった。

登場人物・キャラクター

不動 明 (ふどう あきら)

デーモンの勇者であるアモンと合体し、その力を得てデビルマンとなる。争いを好まない大人しい少年だったが、デビルマンとなったことで、好戦的な性格に変わる。デーモンの無差別合体攻撃により、世界中に自分と同じデビルマンが誕生していることに気づき、これを集めてデビルマン軍団を結成する。 暴徒たちにより、愛する牧村美樹を斬殺されたことで、護るべき存在であった人間に絶望する。

飛鳥 了 (あすか りょう)

不動明の親友。考古学者であった父飛鳥教授が残した研究から、人類の敵であるデーモンの存在を知り、これに対抗する力を得るため、明と共にデーモンとの合体を試みる。しかし、自身は合体に失敗し、デビルマンとなった明の協力者として活動するようになる。その正体は、記憶を封印して人間社会を観察していたデーモンの神、大魔神サタンであった。

牧村 美樹 (まきむら みき)

不動明が居候している牧村家の長女。勝気な性格で、気弱な少年だった明を軽視しているふしがあったが、明が好戦的で強気な姿勢になって以降は(それがデビルマン化の影響によるものとは気づかぬままに)、非常に好意的となる。デーモンへの恐怖から暴徒化した近隣の住人たちにより、斬殺されてしまう。

タレちゃん

牧村美樹の弟で、姉とは6歳違いの小学生。姉には良く泣かされているが、不動明にはなついている。牧村美樹と同じく暴徒化した群集により斬殺される。

牧村夫妻 (まきむらふさい)

牧村美樹とタレちゃんの両親。不動明を自宅に同居させ、実子同様に扱っていた。明が人間ではないことを知らされ、衝撃を受けるが、「人間の心は失っていない」と訴える明を信じ、これを見逃した。しかし、明を逃がしたことで、夫婦共に悪魔特捜隊に捕らえられ、過酷な拷問を受けた末に死亡する。

(まさ)

不動明にケンカを売った不良グループのリーダー。通り名通りに木刀を獲物としている。明に叩きのめされるが、その直後にデーモンに操られていたところを助けられ、以後は仲間ともども明に協力する。直接の描写は無いが、明がデビルマンであることも打ち明けられており、デビルマン軍団のアジトにも出入りしていた。 牧村家が暴徒に襲われた際には、牧村美樹とタレちゃんを護って奮戦するものの、最後には殺されてしまう。

サッちゃん

不動明が以前に住んでいた家の隣家の娘。まだ家の呼び鈴に手が届かないほど幼いが、明のことを「恋人」と呼ぶおませな少女である。たったひとりで新幹線に乗って会いに来るほど明のことを慕っていた。帰りの新幹線がデーモンに襲撃され、ジンメンに食われてしまう。

ススムちゃん

タレちゃんの友だちの小学生。人が変わったように自分を虐待するようになった母親を恐れ、「家に帰りたくない」とタレちゃんに訴えたが、迎えに来た優しげな母に連れられ、家に戻る。しかし、母親も父親もデーモンにすり替わっており、その夜に食い殺されてしまった。なお、このキャラクターの名前は永井豪による短編『ススムちゃん大ショック』の主人公ススムちゃんに由来すると思われるが、キャラクターデザインは異なっている。

飛鳥教授 (あすかきょうじゅ)

飛鳥了の父親。故人であり、回想中にのみ登場する。高名な考古学者で、デーモンの存在を示す研究を残す。デーモンに合体され、その支配に抵抗するために焼身自殺したことが飛鳥了によって語られている。

雷沼教授 (らいぬまきょうじゅ)

ノーベル生物学賞受賞歴を持つ学者。北海道の生物化学研究所で、捕獲したデーモンやデビルマン、その死体などの研究を行っていた。研究の末に、「社会に不満を持つ人間が、悪魔(デーモン)に変化する」という結論に達し、これを発表。「悪魔となる可能性がある人間は、その前に処分が必要である」と訴え、人間による人間狩りの引き金を引いてしまう。

アメリカ大統領 (あめりかだいとうりょう)

アメリカ合衆国最高責任者。デーモンと化した自国のミサイル将校が、ソビエト連邦領内へ水爆ミサイルを発射したという報告を受け、戦争回避のためソビエト連邦首相へ攻撃の意思が無いことを伝える。しかし、すでにソビエト連邦の首脳部もデーモンに乗っ取られており、ソビエト側からも水爆ミサイルが発射されてしまう。

ミーコ

デーモンに合体されデビルマンとなった少女。万引きが得意な不良少女だったが、突然醜悪な姿に変貌してしまったことを思い悩む。さらに付き合いが悪くなったと詰め寄る不良仲間の少女たちをデーモンの特殊能力で惨殺してしまう。北海道の生物化学研究所に収容され、実験材料にされていたところを不動明によって救い出される。

犬のデビルマン (いぬのでびるまん)

犬に似た顔を持つ女性のデビルマン。能力等は不明だが、聖書の知識が豊富で、そこに書かれたサタンの情報を不動明に伝える。劇中では名前を呼ばれることは無いが、後に発表された公式書籍ではプフールと呼ばれている。

ヒンズー僧たち (ひんずーそうたち)

デビルマンとなった者を集め、デーモンと戦う軍団を作り上げようとしていた不動明たちの前に現れたヒンズー教の僧侶たち。劇中には6名が登場する。厳しい戒律によって精神が鍛えられていたため、デーモンに合体されてもその意思を失わずデビルマンとなった。全員が強力なテレパシー能力を持っており、その力を駆使して世界中からデビルマンを集める。

アモン

不動明と合体したデーモン。デーモンの中でも勇者として知られ、多くのデーモンに恐れられた戦士。劇中には名前だけしか登場しないが、派生作品である『AMON デビルマン黙示録』(衣谷遊作)では、主要キャラクターとして活躍している。

前川 (まえかわ)

狼のような顔に1本の角を持ったデーモン。人間の姿で社会に潜伏し、人間を襲ってはその肉を喰らっていた。飛鳥了にその正体を暴かれる。

シレーヌ

アモンの能力を奪いデビルマンとなった不動明への刺客として送り込まれた女性のデーモン。頭部に巨大な翼を持ち、四肢のカギ爪を主な武器とする。配下のゲルマーとアグウェルと共に牧村家を襲い、明を追い詰める。

ゲルマー

シレーヌの配下となり、牧村家に潜入したデーモン。水を操り、水と同化する能力を持つ。不動明が発した熱線で、水分を蒸発させられ、本体の胴部を貫かれて死亡する。

アグウェル

シレーヌの配下となり、牧村家に潜入したデーモン。不定形の体を持ち、壁や床と一体化することができる。不動明によって頭部を引きちぎられ死亡する。

カイム

サイのような体の両肩に巨大な角を持つ四足歩行型のデーモン。不動明の反撃により、重傷を負ったシレーヌを救うため、その命を捨ててシレーヌとの合体を図った。デーモンがただの血に飢えた怪物ではなく、仲間のために己を犠牲にすることも辞さない精神を持った存在であることを印象付けた。

ジンメン

亀のような姿をしたデーモン。人間を生きたまま喰らい、犠牲者の顔を生前の意識を保ったままその甲羅に浮かびあがらせる。不動明を慕う幼い少女サッちゃんを喰らい、その顔を人質に明と対峙するが、心を鬼にした明により、甲羅の顔ごと背中を貫かれ、さらに甲羅を引き剥がされて死亡する。

ザン

胸部に4つの目と巨大な口を持つデーモン。大魔王ゼノンに仕える魔将軍のひとりであり、「百の悪魔を従える」と言われる。初登場時には本体を現さず、無数の蜘蛛を使って学生たちを操り不動明たちを襲った。再登場時には、サイコジェニーの精神攻撃によって意識を失った明を襲おうとした部下たちを制止し、「デビルマンをきずつけるな!」というサタンの意思を伝えた。 なお、後に加筆修正された『愛蔵版デビルマン』では、蜘蛛による襲撃は別のデーモンの仕業に変更されている。

ソビエト連邦首相 (そびえとれんぽうしゅしょう)

ソビエト連邦の最高責任者。登場した時点ですでにデーモンとすり替わっており、アメリカからの攻撃に対応して、世界各地に水爆ミサイルを発射する。しかし、両国のミサイルは空中で消滅。それと同時にモスクワに出現した巨大な光球に包まれ、人間や配下のデーモンともども泡となって消える。

サイコジェニー

巨大な顔から直接手足が生えたような姿のデーモン。強烈な精神干渉能力を持ち、その力で不動明を人事不省にまで追い込んでいる。また、大魔神サタンの命を受けて、サタン自身の記憶を封印、人間飛鳥了としての記憶を与えた。

ゼノン

全てのデーモンを統べる悪魔王。巨大な体と4つの顔を持つ。デーモンの総攻撃に先立って、世界各地に同時にその威容を現し、人類に対する宣戦を布告する。絶大な力を持つと思われるが、劇中では直接的な戦闘描写がまったくないため、その真の力は不明である。なお、『デビルマン』の原点とも言える作品である『魔王ダンテ』に登場するダンテとはほぼ同一のシルエットでデザインされている。

サタン

6対の翼を持つ堕天使。かつては忠実な神の下僕であったが、自らが生み出したデーモンたちを滅ぼそうとする神に反旗を翻し、デーモンの上に立つ大魔神となった。神との戦いに疲弊し、デーモンと共に永い眠りに就いていたが、その間に地球の支配者となった人類を許せず、これを滅ぼす方法を探るため飛鳥了となって人間社会にやってきた。 実は両性生物であり、飛鳥了である間に愛してしまった不動明の命だけは救おうとしていた。

(かみ)

『デビルマン』において、デーモンたちを生み出し、またそれを滅ぼそうとした存在。劇中に姿を現すことは無く、その意図もまったく語られない。アメリカとソビエトが発射した多数の水爆ミサイルを消し去り、触れた者を泡もしくは塩へと変える光球によりソビエトを消滅させるなどの奇跡は神の意思によるものと思われるが、その後の人類は滅ぶに任せている。 また、多くの天使を従えているらしく、デビルマン軍団とデーモンとの最終戦争の後、サタンと同じ姿を持つ天使の軍団の降臨によって物語は幕を閉じる。

集団・組織

デーモン

『デビルマン』に登場する種族。地球の先住種族であり、過酷な生存競争を生き抜くために、他の生物と同化し、その能力を吸収する力を身に付けている。そのため、1体ごとに異なった姿と能力を持つ。その性質は非常に好戦的で血を好むが、一定の社会性を持ち、上位者には素直に従う様子を見せる。また、人間同様に仲間への愛情や同調も示す。本来は自分たちのものであった地球を荒らすものとして、人類を敵視する一方、食料としては人肉を非常に好む者が多いことも描写されている。 ただし、肉体的には決して不死身ではなく、下位の個体は銃や刃物などで肉体を傷つけられただけで死んでしまう。なお、地球に起源を持つ生物種であるという点で、いわゆる悪魔とは異なるが、人間側からは一貫して悪魔と呼ばれ、デーモン側も時として自分たちを悪魔と呼称している(悪魔と書いてデーモンと振り仮名が振られる場合もある)。

悪魔特捜隊 (あくまとくそうたい)

『デビルマン』に登場する組織。人間社会に潜んだデーモンを狩り出すために、日本政府が設立した組織。正式名称は「悪魔特別捜査隊」。脳波探知装置やX線透過装置、血液分析装置などを用いてデーモンを探り出す捜査班と、最新の対悪魔兵器で武装した攻撃班によって構成されている。不動明を逃がした牧村夫妻を苛烈な拷問にかけて殺害し、その救出に駆けつけた明によって本部が壊滅させられている。

その他キーワード

デビルマン

『デビルマン』に登場する言葉で、デーモンと合体してもその心を失わなかった者を指す。物語の中盤までは、不動明以外にデビルマンが存在しなかったため、シレーヌやジンメンが明をデビルマンと呼ぶなど、明個人を指す言葉としても使われていた。デーモンによる人間への無差別合体攻撃によって多くのデビルマンが誕生することになり、不動明はそれらを纏め上げてデビルマン軍団を編成。 サタン率いるデーモンたちとの最終戦争へと突入していく。

メディアミックス

デビルマン

漫画家の永井豪による構想を元にアニメスタッフがテレビ版を、永井豪自身が漫画版を平行して制作した。共通のキャラクターを使いながら両者は全く違う展開になるが、テレビ版はデビルマン(不動明)が毎回異なる敵を... 関連ページ:デビルマン

アニメ

デビルマン

人間界に混乱をもたらす目的で、人間の高校生に乗り移ったデビルマン(不動明)は牧村美樹を愛してしまい、彼女を守るために自分の故郷を裏切る決意をする。デーモン族から次々と放たれる刺客とデビルマン(不動明)... 関連ページ:デビルマン

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