青い鳥症候群

青い鳥症候群

大学生の二宮杏奈は、自分の父親によって破滅させられた幼なじみの入院費用を稼ぐため、憎むべき父親から譲り受けた詐欺の才能を利用していた。愛する人のため、詐欺を重ねていく一人の女性の姿を描くサスペンス。基本的に1~2話完結の連作形式で描かれるが、後半では記憶を取り戻した森枝慎吾と、詐欺から足を洗った杏奈の行く末を描く長編物語が展開される。1999年にはテレビ朝日系にて安達祐実主演でTVドラマ化されている。

正式名称
青い鳥症候群
ふりがな
あおいとりしんどろーむ
作者
ジャンル
サスペンス
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あらすじ

第1巻

大学生の二宮杏奈には詐欺師というもう一つの顔があった。彼女は美貌を武器に資産のある男性に近づき、幼なじみの森枝慎吾の高額な入院費を稼いでいた。ある日、「鳥飼物産」の一人息子、鳥飼道郎に目をつけた杏奈は、世間知らずの道郎をその気にさせる。道郎は両親を説得して杏奈に会せるが、杏奈は自分の父親は詐欺の常習犯で刑務所に入っており、道郎のためにも私とは結婚しない方がいいと道郎の両親に告げ、彼らの同情を買う。(PART1「アーバン・ロード」)

ある晩、妙子が運転する車が飛び出して来て、杏奈の車と接触。後日、杏奈は妙子の車に同乗していた村上良一に連絡を入れる。良一は、片思いの相手の妙子が、ヒモのような男、ジュンと付き合っている事に気を揉んでいた。杏奈は良一に、妙子にやきもちをやかそうと提案し、密かにジュンにも接近。杏奈は良一からジュンへの手切れ金を受け取り、妙子には良一と婚約したと告げる。(PART2「ガラスの棘」)

会社社長の桐島が、娘の桐島美貴を溺愛していると知った杏奈は、美貴の恋人、長崎が詐欺師であるという情報を得る。杏奈は良家のお嬢様として長崎に接近。杏奈は弟の入院費と偽って桐島に金を借りたあと、桐島を長崎と美貴がいる現場に誘導し、長崎に自分の友人が騙されたと桐島に吹き込む。後日、桐島から娘の目を覚ますため、長崎の本性を暴いてほしいと頼まれた杏奈は、長崎が杏奈に囁いた愛の言葉を録音し、桐島に渡す。(PART3「星屑ゲーム」)

杏奈は、慎吾と同じ病院に入院している井上幸司に、政治家である実父の田川幸一郎から5000万円ゆすりとってほしいと頼まれる。母親を早くに亡くした幸司は施設で育ち、杏奈は幸司の母親の若い頃にそっくりだったのだ。意外な事に、杏奈の申し出を幸一郎は快諾。彼はずっと幸司を気に掛けて援助していたという。だが幸一郎は急死してしまう。そんな中、杏奈は幸司の叔母が幸一郎からの養育費を自分の懐に入れ、幸一郎から遺贈された幸司の遺産を狙っている事を知る。杏奈は大学のレポートだと偽り、幸司に遺言状を作成させる。(PART4「青い寓話」)

杏奈は隣室に住むOLの江上に、交際していた上司の一彦を誘惑してほしいと持ち掛けられる。一彦は江上を捨て、取引先の令嬢と結婚したのだという。一彦の弟の良二もそんな一彦に手を焼いていると知った杏奈は、良二の助けを借り、自分と一彦の決定的な場面を一彦の妻に見せる。だが、杏奈は一彦の失墜を願っているのは、社長の座を狙う良二であり、彼こそが江上の恋人だと気づく。杏奈は江上の疑いが良二に向くよう、一芝居打つ。(PART5「ノーカウント」)

杏奈は倒れていたミドリを病院に運ぶ。彼女が石油会社の跡取り息子の高柳秀生の子供を流産したと知った杏奈は、ミドリになりすまし、秀生の父親の高柳に接近。杏奈は、父親のいない子供を郷里に帰って生もうとする健気な女性を演じ、高柳はそんな彼女にほだされていく。さらに、杏奈は高柳のせいで流産したと見せかけ、その後自殺未遂を装うのだった。(PART6「フォグライト」)

ある日、杏奈はテレビで人気の山根教授の息子で、高校生の山根豊が万引きする場面を目撃する。杏奈は、いい子でいる事に耐えられずに家出して来た警察官の娘だと噓をつき、豊の関心を引く。次に杏奈は山根教授を酔わせ、豊を呼び出す。そして、援助交際の客が眠り込んだので、カメラに撮って脅迫しようと豊に持ち掛ける。(PART7「黒いパンプス」)

車を追突された事で知り合ったに頼まれ、杏奈は彼のいとこの医科大生の婚約パーティに出席。だが、晃のいとこは杏奈の高校時代のクラスメートで、杏奈が毛嫌いしていた正人だった。杏奈のマンションを訪れた正人は、杏奈の父親の二宮が横領罪で捕まった過去をネタに、杏奈を思い通りにしようとするが、杏奈は拒絶。だが後日、あえて彼の提案に乗る振りをして、杏奈は正人を家に招くのだった。(PART8「メモランダム」)

杏奈は、君の父親が両親を心中まで追い詰めたと、慎吾に責められる悪夢に苦しんでいた。そんなある日、手術のために東京の病院に転院していた慎吾を見舞った杏奈は、火事に遭い運ばれて来た奈々と奈々の母親の血液型が合わない事に気づく。また、奈々のもとに女優の阿久津みゆきが訪れているのを目撃した杏奈は、フリーライターに扮し、みゆきに取材のアポイントを取る。(PART9「白いページ」)

第2巻

ファッションデザイナーになる夢を持つ池内幸子は、財布を失くしたところを、二宮杏奈に助けられる。杏奈は幸子のデザイン画に光るものを感じる。だが、大物デザイナーの花田ミキとの面接をドタキャンされた幸子は、郷里に帰る事を決意する。杏奈はミキの息子のを利用し、行き詰っていたミキに、幸子のデザイン画を盗ませるよう仕掛ける。ミキのコレクションでステージのトリを飾ったデザインを見た杏奈は、ミキを呼び出すのだった。(PART10「オフサイド」)

杏奈の大学のクラスメイトの松本さやかは、ホテル業を営む会社社長の娘で、若くハンサムな父親の松本が自慢だった。さやかの知らない松本の一面にいち早く気づいた杏奈は、病気の父親の入院費を工面するピュアな女性になりきり、松本に接近。松本は杏奈の健気さに段々惹かれていく。(PART11「タイトロープ」)

杏奈は、養護施設で「五木美代子」という女性を探していた、うさん臭い探偵に近づき、捨て子だった自分の両親を探してほしいと依頼する。探偵は美代子を探していた富豪の五木に杏奈を会せるが、不思議な事に、五木は杏奈が自分の息子に似ていると、彼女を自分の側に置く。その後も、友人の入院費に300万円掛かるという杏奈に、五木は躊躇なく金を渡す。不審に思った杏奈は、五木の書斎からある手紙を見つける。(PART12「クラクション」)

森枝慎吾の心臓の手術を執刀する事になった渡辺公一は、次期院長の座を義兄の城ヶ崎と争っていた。渡辺医師にはベストの状態で手術に臨んでもらいたいと願う杏奈は、渡辺と看護師との不倫現場を写真に撮った男を追いかける。その男がクラブのママ、青田優子の弟だと判明し、杏奈は現像写真をすり替える。そして、優子のクラブで働くようになった杏奈は、渡辺は前の店の客で彼にしつこく迫られていた、と優子に打ち明けるのだった。(PART13「バックハンド」)

慎吾のとなりの部屋に入院している道上典子は誘拐の真似事をして、父親から500万円騙し取り、父親のお抱え運転手の西田まことと駆け落ちしようと画策していた。さらに、西田は典子の母親から巧みに援助を受けていた。杏奈は西田を尾行、彼が旅行会社で一人分のニューヨーク行きチケットを購入した事を知る。そして、道上家を訪ね、典子といっしょにいた男を見たと、西田にプレッシャーをかけるのだった。(PART14「リングサイド」)

慎吾の両親の墓に参った杏奈は、寺の住職から父親の妹、千草の存在を初めて聞かされる。一方で、手術が間近に迫った慎吾はうなされ、自分の母親と二宮が抱き合っているのを見た、といううわ言を口走る。千草を訪ねた杏奈は、興奮した千草の口から、死んだと聞かされていた母親が生きていると知って驚愕。そんな中、慎吾の手術は成功し、杏奈は祖父母を訪ね、母親の手掛かりを探す。孫が描いた絵から母親の現在の名字を知った杏奈は、アドレス帳から母親の居場所を突き止め、神戸に向かう。だが、母親の刀根亜紀は杏奈を疫病神を見るような目で見る。傷ついた杏奈は、今度は刀根を呼び出すのだった。(PART15「フェードイン」、PART16「フェニックス」、PART17「フィーリング」)

杏奈の車にぶつかった有田一夫という青年は、頼りにしていた友人の家が火事になってしまったため、杏奈は彼を家に泊める。そんな中、彼が杏奈の持ち物を探り、杏奈の周辺を嗅ぎまわっていると気づいた杏奈は、彼を尾行。彼は有馬右近という、杏奈の父親、二宮の詐欺の被害者家族だったのだ。有馬から、家族が火事で亡くなったと吹き込まれた慎吾は雨に打たれ、重体となる。激高した杏奈は有馬をナイフで切りつけるが、有馬の要求はエスカレートする。そんな中、杏奈は有馬の恋人、今井洋子から、彼に放火の前科がある事を聞き出す。(PART18「ロシアンルーレット」、PART19「ダイジェスト」)

第3巻

息子の入院費を延滞している松本啓子に同情した二宮杏奈は、彼女が上司の経理部長から100万円借り、その後、会社の500万円が入った封筒をひったくられた事を知る。一方、森枝慎吾は両親が火事で亡くなったという記憶を取り戻す。啓子から金をひったくるよう指示した人物が経理部長だと気づいた杏奈は、啓子を誘惑しようとしていた経理部長に近づき、彼の自宅から帳簿を盗み出す。(PART20「逆光線」)

慎吾の病室にたびたびやって来るようになった入院患者の女子高校生、秋野ゆかりは、慎吾に恋をしていた。杏奈は、慎吾の病室で人気俳優の杉本隆二のドラマを見る事を楽しみにしている看護婦、山本から、ゆかりが母子家庭であり、母親もこの病院のナースだという事を聞く。そんな中、チンピラに絡まれたゆかりを、杉本が助ける場面を目撃した杏奈は、杉本がゆかりの父親ではないかと察知する。(PART21「迷い鳥」)

杏奈は大学のクラスメイト、立見陽子の結婚相手であり、急成長の化粧品会社に勤める田辺を紹介される。偶然、田辺と同じ部署の村上という男性も同席する事になるが、杏奈は村上が腹に一物ある男だと直感する。田辺の部署でアルバイトを始めた杏奈は、村上が社長の息子である事実を摑む。そんな折、田辺が沖縄に左遷されるという話が浮上。杏奈は田辺の身分不相応な金使いに気づき、業者との癒着を確信する。(PART22「ストライプ」、PART23「摩天楼」)

杏奈の父親の二宮が刑務所から出所するとの知らせを受け、杏奈は逃げるように引っ越した。二宮は夫の志郎に逃げられた江守という資産家の女性に近づき、それを見た杏奈は、お手伝いの光子を通じて江守家の情報を手に入れる。そんな中、慎吾の退院が決まるが、慎吾は自分の記憶が戻っている事を周囲に黙っていた。一方、二宮は慎吾の入院先を訪れるが、慎吾と二宮を会わせまいとする杏奈の偽装工作により、病院から追い返される。二宮を追いやろうと決めた杏奈は、彼が江守家に居られないよう裏から手を回す。

(PART24「ガラスの夏」、PART25「サマータイム」)

記憶の戻った慎吾は、自分の入院費をどのようにして工面したのか、杏奈の父親、二宮はどこにいるのかを杏奈に尋ねたかったが、口にできなかった。ある日、杏奈がひき逃げされた息子の入院費の金策に苦しむ金子尚二の事を考えていた時、杏奈の車が後ろから追突される。「大和電気」の社長の息子、大和信夫が運転していた事から、杏奈は「大和電気」での職を得る。社内の噂で、信夫が婚約寸前だった岸本を捨て、えり子と結婚する事になったと知った杏奈は、違和感を覚える。さらに二人のなれそめとなった飲み会の帰り、えり子と信夫が車でガードレールにぶつかったと聞いた杏奈は、二人が金子の息子がひき逃げされた事件と関係しているのではないかと疑う。(PART26「ダーツゲーム」、PART27「エモーション」)

大学の友人、明子にいとこの結城英を紹介された杏奈は、英の父親、結城が貿易会社「結城物産」の社長だと知り、就職のコネ目当てで、食事の誘いに応じる。だが、結城を見た杏奈はすぐさま、用事を思い出したと噓をつく。結城は杏奈の父親、二宮の詐欺の被害者だったのだ。一方、杏奈ばかりを働かせるわけにはいかないと、慎吾は偶然居合わせた明子の後押しで、「結城物産」の夜間警備員になる。深夜出掛けるようになった慎吾を尾行した杏奈は、彼の記憶が戻っていると知って愕然とする。慎吾を失いたくない杏奈は、結城に明子が慎吾と駆け落ちすると密告。さらに自分につきまとう英をクラブに誘い出し、誘惑する。(PART28「サスピション」、PART29「分岐点」)

ある日、杏奈の部屋に西山美江という女性が、主人を出してと怒鳴り込んで来た。杏奈のとなりに住む安岡茗子の部屋と間違えての事で、茗子は杏奈に謝罪する。しばらくして、茗子に関するひどい投書があちこちにばらまかれ、美江が犯人だと疑われる。美江がお詫びに持ってきたタルトを食べた茗子は、体調を崩し入院。見舞いに行った杏奈は、茗子が新橋のクラブでいっしょだったというホステスに声を掛けられているのを目撃。杏奈はそのホステスから、茗子が当時から玉の輿を狙っていたという話を聞く。(PART30「ソルジャー・ガール」)

第4巻

二宮杏奈森枝慎吾が暮らす部屋のとなりに、結城英が越して来た。杏奈は英をけん制するが、英は杏奈の周辺を嗅ぎまわる事を止めない。ある日、杏奈は、英の婚約者の大東マリ子が英に強く執着するよう彼女を挑発する。(PART31「ロンサム・ナイト」)

慎吾は、英の紹介で喫茶店「豆の湯」でアルバイトを始める。ある日、「豆の湯」で仕入れの金が盗まれる。マスターの奥村の娘、奥村由加が疑われる。慎吾の潔白を証明したかった杏奈が、暴走族仲間の中絶費用が必要だった由加に疑惑の目が行くよう仕組んだのだ。だが、由加が犯人ではないという裏付けが次々浮かび上がる。しばらくして、奥村の弟、高木研二郎が昔暴走族だったと知った杏奈は、彼が勤めていた会社を既に辞めており、借金で首が回らなくなっている事を突き止める。(PART32「ミラージュ」、PART33「迷宮」)

慎吾に恋をした由加は、恋敵の杏奈に宣戦布告する。一方、英は探偵から杏奈の父親、二宮は慎吾の両親を破滅させた詐欺師で、結城もそのあおりを受けた一人だとの報告を受ける。そんなある日、たちの悪い暴走族に追われている由加の友達の典子を杏奈の部屋で預かる事になるが、慎吾は暴走族に見張られた由加を一人にしておけなかった。その夜、慎吾に抱いてとせがんだ由加だが、拒まれて外に飛び出し、暴走族にレイプされてしまう。そのせいで妊娠してしまった由加は、父親の奥村に問い詰められ、お腹の子供の父親は慎吾だ口走ってしまう。責任を取り、由加と結婚すると言い出した慎吾に、杏奈はショックを受ける。英はそんな杏奈に寄り添い、プロポーズする。そんな中、由加は階段から落ちて流産し、彼女を病院に運んできた二宮と、慎吾は再会する。二宮が「斉藤一雄」という名で会社社長をしていると知った杏奈は、英に「結城物産」の次期社長として二宮に近づいてほしいと頼む。杏奈を見つけ出した二宮は、杏奈から結城物産の一人息子と結婚すると聞かされ、顔色を変える。一方、慎吾の心から杏奈を追い出せないと悟った由加は、慎吾から身を引く。杏奈の思惑通り、二宮は急務でしばらく日本を留守にすると杏奈に告げる。そんな中、警察の足がついた二宮を助けた慎吾は、二宮から慎吾の母親と関係を持ったのは、慎吾が生まれてからだと聞いて安堵する。ほどなくして、二宮が乗った飛行機が墜落したとの連絡が、杏奈の耳に入る。(PART34「小妖精(スプライト)」、PART35「消滅点(バニッシング・ポイント)」、PART36「ミッドナイトシアター」、PART37「サイドシート」、PART38「季節風」、PART39「回帰線」、PART40「乱気流」、PART41「夜間飛行」)

メディアミックス

TVドラマ

1999年10月から12月にかけて、本作『青い鳥症候群』のTVドラマ版がテレビ朝日系列で放映された。全9話。プロデューサーは春日千春、佐々木基、演出は今井和久、徳市敏之が務めた。二宮杏奈役を安達祐実が演じている。

登場人物・キャラクター

二宮 杏奈 (にのみや あんな)

大学生と詐欺師の二つの顔を持つ美貌の女性。二宮の娘。森枝慎吾とは兄妹のように育った幼なじみだが、彼にそれ以上の感情を持っている。心臓病の慎吾に高額の入院費が掛かるため、詐欺をはたらいて生計を立てている。数年前は頼れる親戚もお金もなく、自分の生活のメドさえ立たなかったが、皮肉な事に父譲りの詐欺の才能が武器となり、自分と慎吾を救う事になった。 父親が慎吾の両親から事業資金を横領し、慎吾の両親を一家心中に追い詰めたという罪の意識に苦しんでいる。火事で記憶喪失になり、記憶が退行した慎吾には真っ白なままでいてほしい、という思いが強い。慎吾の回復を誰よりも願っているが、真実が知れた時に慎吾を失ってしまうかもしれない、という恐怖に怯えている。 クールで頭がよく、いつも神経を張り詰めながら生活しており、大学でも極力目立たぬよう行動し、友人とは一定の距離を置き接している。だが、昔の自分と同じく苦しい境遇にある人をほっておけない性格で、陰で人助けをする事も多い。慎吾の母親と二宮が抱き合っているのを見たという慎吾のうわ言を聞いた事で、自分と慎吾が兄妹ではないかとの疑念を抱く事になる。 だがのちに、死んだと聞かされていた母親の刀根亜紀から、兄妹の可能性はまったくないと聞かされて安堵した。退院前後に慎吾の記憶が戻っていた事を知らなかったため、慎吾も二宮杏奈と兄妹ではないかと悩んでいる事には気づいていない。そのため、二人で暮らすようになってからは、慎吾に一人の女性として見てほしいという思いが日増しに強くなっていく。

森枝 慎吾 (もりえだ しんご)

山奥の「聖風病院」に入院している若い男性。二宮杏奈の幼なじみ。3年前の一家心中による火事が原因で記憶が退行しており、両親はその時亡くなっている。先天性心臓病を患い、体が弱く、ほかの男の子達と外で遊ぶ事ができなかったので、幼い頃はいつも杏奈といっしょに遊んでいた。杏奈の父親、二宮が、友人である自分の父親から事業資金を横領し、一家を破滅に導いた事は覚えておらず、両親は交通事故で亡くなったと聞かされている。 とぎれた記憶の断片をさぐる時に頭痛が起き、体調を崩す事が多い。心臓病の手術を受けるため、東京の「セントラル総合病院」に転院し、無事手術は成功して退院するが、既に記憶が戻っている事は周囲には黙っていた。幼い頃、自分の母親と二宮が抱き合っている姿をに目撃しており、嫉妬に狂った父親から、杏奈とお前は兄妹かもしれないと聞かされていたので、いっしょに暮らすようになった杏奈に、自分の気持ちを正直に伝えられずにいる。 杏奈を思う気持ちに蓋をして、自分がアルバイトを始めた喫茶店のマスター奥村の娘、奥村由加との結婚を決める。しかし杏奈に執着する結城英から、自分の入院費用を工面するために杏奈が心を売っていたと聞かされ、どうしようもないジレンマに陥る。

二宮 (にのみや)

二宮杏奈の父親で、刀根亜紀の元夫。友人である森枝慎吾の父親を騙し、事業資金を横領して森枝夫婦を一家心中に追いやった張本人。慎吾が退院する直前に出所し、杏奈の行方を探している。偶然知り合った資産家の江守という女性の弱みにつけこみ、出所早々に詐欺師としての本領を発揮する。その後、しばらく姿を消していたが、「斉藤一雄」という会社社長として、東京に舞い戻って来た。 慎吾の入院先を探す等、杏奈を見つけるべく奔走し、杏奈と束の間いっしょに暮らす事になる。だが、杏奈から結城英と結婚すると報告され、しばらく姿を隠そうとするが、結城に警察へ売られてしまう。そんな中、流産した奥村由加を助けた縁で、由加により、慎吾と杏奈がお互いを深く思っている仲だと知る。 警察の追っ手から慎吾に助けられ、杏奈の事を託すが、搭乗予定だった飛行機が墜落する。

刀根 亜紀 (とね あき)

二宮杏奈の母親。現在は刀根と再婚して神戸に住んでおり、彼とのあいだに二人の子供がいる。二宮から母親は死んだと聞かされていた杏奈は、森枝慎吾の手術前に、初めて自分の母親が生きていると知る。杏奈を捨てたわけではなく、杏奈と海で心中しようとしていたところを現在の夫の刀根に助けられた。その後、杏奈を自分の手で殺そうとした罪悪感に苛まれ、心の病気を患い杏奈を育てられなくなってしまった。 杏奈は二宮とのハネムーンベイビーで、慎吾が生まれた時に二宮は刑務所に入っていたと、自分と慎吾は兄妹かもしれないという杏奈の疑惑を打ち消した。

結城 英 (ゆうき ひで)

二宮杏奈と同じ大学に通う男性。休学して外国に留学していた経済学部の6年生。貿易会社「結城物産」を経営する父親の結城の取引先のお嬢様、大東マリ子と結婚が決まっている。自分の父親を見て顔色を変えた杏奈に興味を持ち、杏奈が自分を遠ざけようとすればするほど、杏奈にのめりこんでいき、マリ子との婚約を破棄した。野放図であつかましく、スキだらけだが、とらえどころのない人物。 のちに、森枝慎吾と破局した杏奈を支え、プロポーズする。

結城 (ゆうき)

貿易会社「結城物産」を経営する男性。結城英の父親で、明子のおじ。二宮に乗せられて森枝慎吾の父親の会社に投資した被害者で、当時高校生だった二宮杏奈にも罵声を浴びせるほど、憤怒していた人物。英に婚約者と紹介された杏奈が二宮の娘と知り、警察に二宮を売った。

奥村 由加 (おくむら ゆか)

奥村の娘。喫茶店「豆の湯」を手伝っている18歳の女性。高木研二郎のめい。暴走族に所属し、夜中までバイクで走り回っているが、仲間思いの優しい性格でもある。ずっと男嫌いだったが、店でアルバイトを始めた森枝慎吾に恋をしてしまう。慎吾から体の関係を拒まれ、その後、暴走族にレイプされて妊娠。捨て身の覚悟で、子供の父親は慎吾だと言ってしまった事から、二宮杏奈から慎吾を奪う事になる。 だが、慎吾と杏奈のあいだに割って入るのは無理だと悟り、最終的には慎吾から身を引く。

奥村 (おくむら)

喫茶店「豆の湯」のマスター。40代の男性。奥村由加の父親で、妻を亡くしており、由加には甘いと、弟の高木研二郎からいつも指摘されている。町内会会長からは店の土地を売ってくれと圧力をかけられており、由加が暴走族と付き合っている事に頭を悩ませている。おいしいコーヒーが売りで、父親の代から通う顧客も多い。結城英の紹介で、森枝慎吾をアルバイトで雇う事になる。

ガソリンスタンドの店員 (がそりんすたんどのてんいん)

二宮杏奈のマンションの近くにあるガソリンスタンドで働く若い男性。気のいい性格であり、杏奈にベタ惚れしている。杏奈に何かと便宜をはかり、頼まれれば疑いもせず、杏奈のために奔走する。

鳥飼 道郎 (とりがい みちお)

PART1「アーバン・ロード」に登場する。K大学の経済学部に通う大学生の男性。「鳥飼物産」の社長の一人息子で、晩年にやっと授かったので甘やかされており、世間知らず。死んだ恋人に似ていると言われ、すっかり二宮杏奈に夢中になってしまう。お腹にいる子供がいるという杏奈を、自分の子供を妊娠した恋人だといって両親に会わせる。

村上 良一

PART2「ガラスの棘」に登場する。車の接触事故をきっかけに、二宮杏奈と連絡を取り合うようになった男性。父親は政治家であり、裕福な家のお坊ちゃん。お人好しで優しい性格ながら、すべてに不器用で要領が悪く、女性の気持ちに対しても鈍感。幼なじみの妙子に片思いしている。

妙子 (たえこ)

PART2「ガラスの棘」に登場する。裕福な家のお嬢様であり、我がままで気が強い女性。村上良一の幼なじみ。ジュンというヒモのような恋人がいるが、二宮杏奈が良一に近づいた事で、良一に対する自分の気持ちに初めて気づく。

ジュン

PART2「ガラスの棘」に登場する。妙子と付き合っている若い男性。金目当てで妙子と付き合っており、妙子の車を乗り回している。二宮杏奈をナンパし、妙子の車でドライブするが、杏奈がイヤリングを故意に落としたせいで、妙子にふられてしまう。

桐島 (きりしま)

PART3「星屑ゲーム」に登場する。運転手の車が二宮杏奈に泥を跳ねた事から、杏奈を食事に誘った会社社長の男性。桐島美貴の父親。両親を亡くし、妹と二人きりだったが、その妹も病気で亡くしたので、発奮して一代で財を成した苦労人。娘の美貴を猫かわいがりしている。

桐島 美貴 (きりしま みき)

PART3「星屑ゲーム」に登場する。大学2年生の女性。会社社長である桐島の娘。苦労知らずで、世間知らずのお嬢様。カフェバーのオーナーを自称する長崎と交際しており、自分名義の貯金を長崎に貢いでいる。

長崎 (ながさき)

PART3「星屑ゲーム」に登場する。カフェバー経営を自称する男性。桐島美貴から金を騙し取ろうとしている詐欺師。豪邸に住むお嬢様に扮した二宮杏奈には、レンタルショップ経営者として接近するが、自分が杏奈に騙されている事にはまったく気づいていない。いつでも逃げ出せるようにホテル住まいをしている。

井上 幸司

PART4「青い寓話」に登場する。森枝慎吾と同じ聖風病院に入院している20歳の男性。赤ん坊の頃に母親を亡くし、養護施設で育ったが、働き過ぎで体を壊した。最近音信不通だった幸司の叔母と巡り合え、よくしてもらっている事に感謝している。政治家の田川幸一郎の息子であり、自分の母親を捨てた仕返しをすべく、自分の母親の若い頃とそっくりな二宮杏奈に、幸一郎から5000万円ゆすりとってほしいと頼む。 その大金は自分が育ったホームに寄付するつもりでいた。

田川 幸一郎

PART4「青い寓話」に登場する。政治家で、井上幸司の父親。幸司の母親が自ら身を引いたので、幸司の事は認知すらしていなかったが、幸司を忘れた事はなかった。陰ながら、幸司の生活や学費を援助していたが、実はすべて幸司の叔母の懐に入っていた事を知らない。

幸司の叔母

PART4「青い寓話」に登場する。井上幸司の叔母。幸司の実の父親である田川幸一郎から幸司への養育費を、長年にわたって受け取っていたが、幸司を養護施設に入れ、自分の懐にすべて収めていた。幸司の命が長くないと聞いてあせっていたが、今度は幸一郎から分けられた幸司の遺産を狙っている。

江上 (えがみ)

PART5「ノーカウント」に登場する。二宮杏奈のとなりに住む若い女性。上司である一彦と交際していたが、彼が取引先の令嬢と結婚が決まって捨てられたといい、彼からもらったという慰謝料をエサに杏奈に相談する。実は良二と付き合っており、社長の信頼を得ている一彦を失墜させるのが目的。人一倍やきもち焼きなところがある。

一彦 (かずひこ)

PART5「ノーカウント」に登場する。叔父が社長である会社の課長を務める男性。良二の兄。メガネをかけた誠実そうな人物で、叔父の信頼を得ており、得意先の令嬢と結婚した。二宮杏奈の誘惑にもガードを崩さず、紳士的に振る舞う。

良二 (りょうじ)

PART5「ノーカウント」に登場する。叔父が社長である会社に勤める男性。一彦の弟。子供の頃から優等生の一彦と比べられるのにうんざりしていた。次期社長を狙っており、社長である叔父からの信頼を失墜させるべく、江上を使い、一彦に二宮杏奈を近づけた首謀者。江上と付き合っている。

ミドリ

PART6「フォグライト」に登場する。「クラブ彩」のホステスの女性。付き合っていた高柳秀生のために身を引き、郷里の北海道に帰ろうとしていた。倒れていたところを二宮杏奈に助けられるが、運ばれた病院で流産してしまう。

高柳 秀生 (たかやなぎ ひでお)

PART6「フォグライト」に登場する。「高柳石油」の社長、高柳の息子で、跡取りとされている男性。ホステスのミドリと本気で付き合っていたが、父親の反対もあり、彼女が自分のためを思って姿を消した事を知り、酔いつぶれてしまう。

高柳 (たかやなぎ)

PART6「フォグライト」に登場する。「高柳石油」の社長を務める男性。高柳秀生の父親。立派な口ひげに濃い眉毛が特徴。秀生と付き合っていたホステスのミドリを調べていた際、ミドリに扮した二宮杏奈に出会い、徐々にほだされていく。

山根 豊 (やまね ゆたか)

PART7「黒いパンプス」に登場する。名門校として知られる南が丘高校に通う17歳の男子高校生。TVで人気の山根教授の息子。ずっと優等生だったが、教育問題の権威である父親に反発心が芽生えてきている。万引きする場面を二宮杏奈に目撃され、自分と似た境遇だという杏奈に惹かれる。しかし根が純真であり、彼女が悪い世界に染まっていこうとするのを、最後は必死で止めようとする。

山根 (やまね)

PART7「黒いパンプス」に登場する。M大学の教授の男性。教育問題の権威としてTV番組で教育相談のコーナーを担当するなど、奥様に人気が高い。山根豊の父親で、妻を亡くしている。片親の場合、甘やかし過ぎと放任に注意しなければならないという教育論を展開するが、自分は息子の誕生日に200万円の時計を買い与えるなど矛盾した行動を取る。

正人 (まさと)

PART8「メモランダム」に登場する。大病院に養子に入るエリート医科大生の男性。二宮杏奈の高校時代のクラスメート。頭もルックスもよく、いつも女の子にちやほやされていたが、人を見下したような高飛車なところがある。自分の婚約パーティにいとこの晃の同伴者として現れた杏奈と再会し、杏奈の父親が横領罪で捕まった事をネタに、杏奈を自分の思い通りにしようと目論む。

(あきら)

PART8「メモランダム」に登場する。駐車場で二宮杏奈の車に追突した男性。少々ぽっちゃりした体型で、メガネをかけ、顔にはそばかすがある。お人好しな性格で、ちょっと気が弱いところがある。いとこの正人の婚約パーティに出席し、いい恰好をしたいがため杏奈に同伴を頼む。

阿久津 みゆき

PART9「白いページ」に登場する。今売り出し中の女優。年齢は23歳。昨年シネマ新人賞に輝き、お嫁さんにしたい女優No.1にも選ばれた。本名は「遠山みゆき」。奈々という娘を生んだが、姉が奈々の母となって育てている。

奈々の母

PART9「白いページ」に登場する。メガネをかけた優し気な女性。阿久津みゆきの姉。手術のために東京の病院に移った森枝慎吾と同じ病院に運び込まれた奈々という少女の母親。火事で火傷を負った奈々に輸血が必要となり、自分の血液型が合わず、二宮杏奈が輸血する事になる。

池内 幸子 (いけうち さちこ)

PART10「オフサイド」に登場する。服飾デザイン学校に通う女性。ファッションデザイナーになる夢を捨てきれず、デザイナーの花田ミキにデザイン画を見てもらおうと家出して来た。両親からは養子をとって地道に家業を継いでくれと言われている。財布をなくし困っているところを、二宮杏奈に助けられる。

花田 ミキ

PART10「オフサイド」に登場する。ファッション界で五指に入る大御所のデザイナーの女性。一番弟子の水島洋子に裏切られ、新聞にはショーがマンネリ化していると書かれた事もあり、非常にナーバスになっている。制作に行き詰っており、池内幸子と面会する約束をキャンセルするが、後日、二宮杏奈に幸子のデザイン画を盗作するよう仕向けられる。

(じゅん)

PART10「オフサイド」に登場する。花田ミキの息子。手が早くて有名な遊び人の男性。六本木のディスコに入り浸っている。池内幸子のデザイン画を盗んだ花田ミキをゆすろうと考えた二宮杏奈に、利用される。

松本 さやか

PART11「タイトロープ」に登場する。二宮杏奈の大学のクラスメイトの女性。プライベートビーチ付きの別荘に杏奈を招待する。ホテル業を手掛ける松本の娘で、母親は既に亡くなっている。若くてハンサムな父親が自慢で、父親が遊び人だとはつゆほども思っていない。

松本

PART11「タイトロープ」に登場する。ホテル業を手掛ける会社社長の男性。松本さやかの父親であり、妻は既に亡くなっている。プレイボーイで、色々な女性と遊んでいるが、さやかには理想の父親として尊敬されるよう振る舞っている。純情で潔癖な女性を演じた二宮杏奈に惹かれていく。

五木

PART12「クラクション」に登場する。豪邸に住む高齢の男性。探偵を雇い、養護施設で育てられた孫の五木美代子を探している。探偵に連れてこられた二宮杏奈を、息子の司にそっくりだと、疑いもせずに家に住まわせる。妻が亡くなって以降、折り合いが悪くなった息子を勘当するなど、昔は激しい性格だった。しかし隠居の身になり、人恋しさに耐えかねて、遺産目当てでもいいので誰かに側にいてほしいと、酔狂なゲームを楽しむつもりで、孫探しに乗り出したのが真相。

渡辺 公一

PART13「バックハンド」に登場する。東京の「セントラル総合病院」で外科医長を務める男性。院長の娘と結婚しており、次期院長の座を義兄の城ヶ崎と争っている。若手だが、日本で五本の指に入る心臓病の権威。森枝慎吾の心臓の手術を担当する事になった。城ヶ崎の愛人、青田優子の弟に、看護婦と不倫している現場を写真に撮られてしまう。

城ヶ崎 (じょうがさき)

PART13「バックハンド」に登場する。東京の「セントラル総合病院」で内科医長を務める男性。院長の娘と結婚しており、次期院長の座を義弟の渡辺公一と争っている。院長の長女との結婚は元厚生大臣の紹介であり、多方面に顔が広い。親戚も名医のサラブレッド揃いで、渡辺よりは優位なポジションにいる。クラブのママ、青田優子と不倫関係にある。

青田 優子

PART13「バックハンド」に登場する。クラブ「優子」のママを務める女性。看護師だった頃から城ヶ崎と不倫関係にあり、明るみに出ないよう地方の温泉地で密会している。城ヶ崎と敵対している渡辺公一のスキャンダルを狙っており、クラブでアルバイトするようになった二宮杏奈を渡辺に差し向ける。

道上 典子 (どうじょう のりこ)

PART14「リングサイド」に登場する。東京の「セントラル総合病院」に入院している女子高校生。父親のお抱え運転手である西田と恋愛関係にあり、彼と暮らすために、誘拐の真似事をして父親から500万円奪おうと画策している。西田が典子の母親とも付き合っている事はまったく知らない。

典子の母親 (のりこのははおや)

PART14「リングサイド」に登場する。道上典子の母親。夫は会社の社長を務めている。上品な着物姿の女性で、プライドが高い。夫のお抱え運転手の西田と密かに付き合っており、困っている友達のために金を工面したい西田のために、500万円の価値のある指輪を差し出す。

西田 まこと

PART14「リングサイド」に登場する。道上典子の父親のお抱え運転手である若い男性。典子だけではなく、典子の母親にも取り入っているジゴロ。典子を誘拐したと見せかけて5000万円をせしめようと画策。その後は、一人でニューヨークに高跳びしようと考えている。道に飛び出して典子を助けた事から、運転手の職を得た。

千草 (ちぐさ)

PART15「フェードイン」に登場する。二宮の妹で、二宮杏奈のおば。娘の凉子の縁談を控えており、訪ねて来た杏奈を門前払いする。人を騙すためには何でも利用する兄が許せず、縁を切ったと杏奈をはねつけるが、結果的に杏奈の母親、刀根亜紀が生きていると杏奈に教える事になる。

刀根 (とね)

PART17「フィーリング」に登場する。刀根亜紀の夫。亜紀とのあいだに二人の子供がいる。メガネをかけて口ひげを生やした、紳士然とした優しそうな男性。幼い二宮杏奈と海で心中しようとしていた亜紀を助けた人物で、亜紀が罪悪感に苦しんで心の病気になり、杏奈を手放さなければならなかった理由を、杏奈に話した。

有馬 右近

PART18「ロシアンルーレット」、PART19「ダイジェスト」に登場する。二宮杏奈の車にぶつかった青年。目下失業中で、友人を頼り上京して来た。友人のアパートが火事になり、杏奈の部屋に泊まる事になった。杏奈には「有田一夫」と名乗っている。実は二宮の詐欺の被害者家族であり、杏奈に復讐すべく近づいたルポライターで、杏奈の周辺を嗅ぎまわっている。 ホステスの今井洋子と暮らすヒモ的存在。

今井 洋子

PART18「ロシアンルーレット」、PART19「ダイジェスト」に登場する。クラブ「美人家」で働いているホステス。有馬右近と同棲して、彼に貢いでいる。有馬の仕事仲間だと偽って店にやって来た二宮杏奈に、有馬の素性をしゃべったり、有馬を助けるために自分の貯金を杏奈に渡す。警戒心が薄く、人を信じやすい性格をしている。

松本 啓子

PART20「逆光線」に登場する。杉田産業渋谷支店に勤める28歳の女性。美しい未亡人で、息子が森枝慎吾と同じ「セントラル総合病院」に心臓病で入院している。息子の入院費の支払いを延滞していた。上司の経理部長から借りた100万円で支払いをしたが、後日、500万円入りの紙袋をひったくられ、会社の人間から疑惑の目を向けられたうえ、会社をクビになる。 失意の中、飛び降り自殺しようとしたところを二宮杏奈に助けられる。

経理部長 (けいりぶちょう)

PART20「逆光線」に登場する。杉田産業渋谷支店で経理部長を務める男性。給料を前借したいという部下の松本啓子に、自分のポケットマネーから100万円を貸した人物。善人ぶっているが、啓子に下心を持っており、体の関係を迫る。実は会社の金を使い込んでおり、その証拠を消すために人を雇って、啓子から現金と帳簿が入った封筒を盗ませた。

秋野 ゆかり

PART21「迷い鳥」に登場する。森枝慎吾と同じ「セントラル総合病院」に入院している女子高校生。母親は同病院の看護婦で、母子家庭で育つ。慎吾を慕って毎日病室を訪ねて来るようになるが、二宮杏奈にライバル心を持つようになる。気が強く、かわいげのない態度を取る事も多いが、素直な一面もある。

山本 (やまもと)

PART21「迷い鳥」他に登場する。「セントラル総合病院」に勤務する看護婦。森枝慎吾を担当している。大きなメガネをかけた、明るい性格でおしゃべりな女性。杉本隆二のファンで、彼が出演しているドラマを慎吾の病室で見るのを楽しみにしている。お高くとまっている秋野ゆかり親子の事を快く思っていない。

杉本 隆二

PART21「迷い鳥」に登場する。「摩天楼ブルース」という刑事ドラマに主演する俳優の男性。世の奥様層から絶大な人気がある。最近、愛人の存在が発覚して離婚した。実は秋野ゆかりの実の父親。ゆかりの母親とは18年前に横浜の外科病院で知り合い、不倫関係が続いている。

立見 陽子 (たつみ ようこ)

PART22「ストライプ」に登場する。二宮杏奈の大学のクラスメイトの女性。「ビビアン化粧品」に勤める田辺と結婚して、大学を辞める予定であり、最初は両親に結婚を反対されていた。田辺から300万円の指輪をもらったと、杏奈に自慢した事がきっかけとなり、杏奈が田辺に疑惑の目を向ける事になる。

田辺

PART22「ストライプ」、PART23「摩天楼」に登場する。急成長中の「ビビアン化粧品」に勤務する男性。立見陽子と結婚予定。両親を早くに亡くし、働きながら大学を出た苦労人。会社では労働組合が結成される事になり、委員長に選ばれるだろうといわれている中、沖縄支店への移動の話が浮上。同じ部署の村上に社内外での動向を探られており、のちに、業者と癒着して100万単位の金を懐に入れている事が発覚する。

村上

PART22「ストライプ」、PART23「摩天楼」に登場する。急成長中の「ビビアン化粧品」に勤務する男性。お調子者でまったく仕事ができないが、腹に一物もっていそうなところを、田辺と同席していた二宮杏奈に見透かされてしまう。実は、田辺の業者癒着の証拠を摑むため、スパイとして田辺の部署に潜入した社長の息子。 本名は「五条一夫」。

江守

PART24「ガラスの夏」、PART25「サマータイム」に登場する。資産家の娘で、ショートカットの髪型をした中年女性。会社社長だった夫は秘書と不倫し、駆け落ちしてしまった。世間知らずで猜疑心が薄く、夫の友人で宮沢と名乗る二宮にたやすくひっかかる。お手伝いの光子と二人で暮らしており、東京に金策に来たという二宮を家に泊めた事から、男女の関係になる。

大和 信夫 (やまと のぶお)

PART26「ダーツゲーム」、PART27「エモーション」に登場する。「大和電気」で総務部長を務める男性。父親は「大和電気」の社長。穏やかな性格ながら人に流されやすいところがある。岸本と婚約寸前まで付き合っていたが、突然えり子と結婚する事を決める。だが、岸本が妊娠している事を知り、彼女と陰で復縁した。その一連の行動に違和感を感じた二宮杏奈に、えり子と結婚するに至った真相を突き止められる。

えり子

PART26「ダーツゲーム」、PART27「エモーション」に登場する。「大和電気」に勤めていたが、大和信夫と結婚する事になり、六本木の一等地にブティックを開く事になった。派手好きで、見栄っ張りな性格の持ち主。信夫のほかにボーイフレンドがいる。

岸本 (きしもと)

PART26「ダーツゲーム」、PART27「エモーション」に登場する。「大和電気」に勤めている女性。ロングのウェーブヘアを後ろで一つにまとめ、優し気な雰囲気を醸し出している。大和信夫と婚約寸前まで付き合っていたが、えり子に信夫を横取りされ、失意のどん底にいた。だが妊娠が発覚し、信夫とよりを戻す。

明子 (あきこ)

PART28「サスピション」、PART29「分岐点」に登場する。二宮杏奈と同じ大学に通う友人の女性。結城英のいとこ。おじの家から大学に通っているお嬢様で、卒業したら実家に呼び戻されてお見合いをさせられると嘆いている。貿易会社「結城物産」の夜間警備員のアルバイトをする事になった森枝慎吾に恋してしまう。

安岡 茗子 (やすおか めいこ)

PART30「ソルジャー・ガール」に登場する。社長秘書をしている女性。二宮杏奈と森枝慎吾が住むマンションのとなりに住んでいる。社長との仲を疑われて、社長の妻、西山美江が間違えて、杏奈の部屋にどなりこんで来た事がきっかけとなり、杏奈とかかわるようになる。おとなしそうな外見だが、早くに父親を亡くし、若い頃から苦労してきた、しっかりとした人物。 過去に新橋のクラブで働いていた事があり、当時から玉の輿を狙うという野望をホステス仲間に語っていた。クラブでは「五月」と名乗っていた。

西山 美江 (にしやま みえ)

PART30「ソルジャー・ガール」に登場する。社長夫人で、夫が安岡茗子と浮気していると疑っている女性。1年前に息子を亡くした事もあり、ノイローゼ気味になっている。実は、夫をひたむきに愛しており、社長夫人の座を狙う茗子の用意周到な罠にはまっていると気づいた二宮杏奈が、手を貸す事になる。

大東 マリ子

PART31「ロンサム・ナイト」に登場する。城東女子大学に通う女性。「大東商事」の令嬢で、結城英の婚約者。ショートカットの派手で華やかな美人で、気が強い。二宮杏奈に煽られた事で英に強く執着するが、のちに婚約を破棄されてしまう。

高木 研二郎 (たかぎ けんじろう)

PART32「ミラージュ」、PART33「迷宮」に登場する。「中央モーターズ」という会社で車のセールスをしている男性。奥村の歳の離れた弟で、奥村由加のおじ。仕事の合間に喫茶店「豆の湯」を手伝いに来ているが、実は奥村の土地を狙っており、会社も既に辞めていた事が発覚。数年前まで暴走族グループで顔を利かせていた過去があり、二宮杏奈を襲ったマキオとヨースケの兄貴格。 奥村とは父親が違うため、しばらく疎遠だった過去がある。

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