コタローは1人暮らし

コタローは1人暮らし

古びたアパートの一室に、訳アリな4歳の男の子、さとうコタローが単身引っ越して来た。ポンコツ気味なアパートの住人達から優しいサポートを受けながら、彼らを上回る生活力で立派に一人暮らしを送るコタローの姿を、1話完結で描く笑いあり涙ありのコメディ作品。「ビッグコミックスペリオール」2015年第7号から連載の作品。津村マミの『コンビニの清水』と世界観を共有しており、共通の登場人物も登場する。2021年4月テレビドラマ化。2022年3月ネット配信アニメ化。

正式名称
コタローは1人暮らし
ふりがな
こたろーはひとりぐらし
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
既刊10巻
関連商品
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あらすじ

ある日さとうコタローは、「アパートの清水」の前に小さなキャリーケースを持って佇んでいた。訳あって、今日からここで一人暮らしを始めることになったのだ。まだたった4歳ながらしっかり者のコタローは、何事も始めが肝心とばかりに、ご近所に配るためのあいさつの品を購入するために、近所のホームセンターへ足を運ぶ。(1日目「コタローで候」)

202号室に住む狩野進は、隣人としてあいさつに来た4歳児のコタローの存在に困惑していた。そんな時、部屋に風呂が付いていないことを知らなかったコタローが、狩野のもとを訪れた。狩野はコタローに、近所の銭湯のことを説明した。夜遅くにたった1人で銭湯に向かおうとするコタローをいったん見送るが、放っておけなくなった狩野は、コタローのあとを追い、いっしょに風呂に入ることになる。(2日目「せんとうモード」)

小さなコタローをなんとなく放っておけない狩野は、1人で外出しようとしているコタローに勝手に付き添うことにした。そんな2人が歩いていると、街中で「アパートの清水」201号室に住む秋友美月と出くわす。美月は2人の様子を見て、狩野がコタローの父親であると勘違い。その理由を「顔がそっくりだから」と言われた狩野は、コタローが自分の子供なのではないかという疑念に、頭の中が支配されてしまう。(3日目「認知騒動」)

ある朝、ゴミを捨てに出たコタローと狩野は、201号室の前を通りかかると住人である美月が、ドアを開けたまま玄関で倒れ込んでいるのが見えた。よく見れば、彼女の周囲にはビールの空き缶が散乱している。酔いつぶれて寝込んでしまった様子の彼女をゆすり起こしたかと思うと、コタローは一目散にコンビニエンスストアへと向かい、冷凍のペットボトル飲料を購入。泣きはらした目を冷やすようにと、優しい言葉をかけながら美月に渡す。(4日目「朝帰りのオンナに」)

狩野は、担当編集者である担当から、出来上がった原稿に対してコテンパンにダメ出しをされ、すっかりへこんでしまっていた。そんな折、自宅を訪れたコタローの両ひざに何枚もの絆創膏が貼ってあることに気づいた狩野は、両ひざの絆創膏に、コタローが大好きな「とのさまん」を描いてあげることにした。(5日目「古い絵の漫画家」)

その日、102号室の住人、田丸勇はファミリーレストランにいた。離れて暮らす息子に久しぶりに会えると、プレゼントを片手に意気込んでいたが、別れた妻はそれを簡単に拒絶した。息子に会わせようとしない元妻に対して、田丸は思わず声を荒らげる。そんな様子の田丸に、息子も会いたがらないと言い放った元妻の言葉に、田丸はショックを受け、帰宅したその足でコタローの部屋へと向かう。田丸は息子に会えない寂しさをコタローで埋めようと、コタローに対して必要以上に濃密なスキンシップを図ろうとする。(6日目「噓か誠か?」)

大人が観てもお世辞にも面白いとは思えないアニメ「とのさまん」に熱中するコタローが、狩野には理解できなかった。いつものように2人で銭湯に向かった狩野とコタローは、風呂場で「とのさまん」について語り始める。そしてコタローが、深夜番組である「とのさまん」に執着する理由を知ることになる。(7日目「とのさまんの特別」)

とうとう「とのさまん」が最終回を迎えることになった。それを知った田丸は狩野のもとを訪れ、コタローががっかりするだろうことを想定し、寂しくさせないために自分たちにできることを模索し始める。一方コタローはといえば、アパートの前に「ひとり1かい10えん」と看板を出し、通りすがりの人に「とのさまん」のものまねを披露。ものまねを見て笑ってくれた人には、コタローが10円を支払うという不思議な商売を始める。(8日目「とのさまんの“最後”」)

路上で風船を配る仕事をしていた青年は、もう5分近く、遠巻きにこちらを見つめている少年が気になっていた。こちらから風船を渡しに行くべきか迷っていた時、ようやく声をかけてきたその少年は、複数の風船を欲しがった。しかし、風船は1人につき1つしかあげられない決まりになっていたため、青年は説明のうえで、彼に風船を1つ手渡す。すると時間をおいて、さっきの少年が別人を装い、また風船をもらいにやって来た。少年が妹弟に風船をあげているらしいことに気づいた青年は、仕方なくまた風船を1つ渡す。最終的に少年は繰り返し4つの風船を取りに来たが、後日青年はその少年を公園で見かけ、彼が風船を欲した本当の理由を知ることになる。(9日目「家族のために」)

この日、いつも通っている銭湯「富士湯」が数日のあいだ臨時休業となっていることを知ったコタローと狩野は、あきらめて帰宅することにした。お金がかかることもあり、毎日風呂に入る必要性を感じていなかった狩野は、銭湯が再開するまで風呂に入らなくていいと思っていた。しかし、その日以降コタローは、風呂に入っていない自分は汚れているという理由で、誰に対しても近づくことを許さず、異常なまでに距離を取りたがるようになる。(10日目「フロ騒動」)

幼稚園の入園式の日を迎えたコタローは、声をかけてきた狩野すら振り切って1人で幼稚園に向かった。周囲の子供たちがみんな保護者同伴である中、1人きりで受付を済ませて椅子に座るコタローの姿は、どこか寂しさと戦っているようでもあった。一方狩野は、不在中のコタローを訪ねてきた美月と田丸と顔を合わせる。近所の様子から、今日が幼稚園の入園式であることに気づいた3人は、慌てて幼稚園まで足を運び、コタローの保護者として入園式に参加する。(11日目「“晴れの日”の面々」)

怖い夢を見て、深夜に目を覚ましてしまったコタローは、枕を握りしめたまま、狩野の部屋の前をうろうろしていた。そこへ、仕事から帰宅した美月が通りかかったが、彼女を頼ることなくコタローは自室へ戻っていってしまった。翌日、目の下にクマをつくっていたコタローが、深夜になっても部屋の電気をつけたままにしていることを確認した美月は、コタローが眠れない状況を悟り、自分の部屋に泊まりに来ないかと誘う。(12日目「クマ!」)

幼稚園では、水曜日は手作り弁当の日と決まっていることを知ったコタローは、朝、登園前にコンビニエンスストアへと向かい、お弁当を購入。店内のイートインスペースを借りて、自分のお弁当箱に中身を詰め直してから幼稚園に向かった。お昼になり、友達のお弁当がみんな一様にキャラクターに富んだものになっていることに気づいたコタローは、次の水曜日、コンビニエンスストアの食材で自作のキャラ弁を仕上げる。その帰り道、母親に弁当のお礼を伝えている子供を見かけたコタローは、また次の水曜日、コンビニエンスストアで買い物中の客に声をかけ始める。(13日目「コンビニ弁当からの…」)

コタローを幼稚園に迎えに行った帰り道、出版社へ向かうことになった狩野は、コタローからの希望でいっしょに連れて行くことになった。狩野の原稿を前に、次々とダメ出しをしていく担当。その様子を目にしたコタローは、担当にいちいち反論し、狩野の擁護を始める。(14日目「おでかけの理由」)

コタローと狩野は、美月からの誘いで公園デートにやって来た。ソフトクリームを食べるコタローの姿を写真に収めようと、2人がカメラを構えると、とたんにヘッドバンキングを始めるコタロー。どう頑張っても1枚たりともまともな写真を撮らせてくれない。幼稚園での写真撮影も同様、顔が写らないように、いつも手で顔を隠していた。写真は大の苦手だからと言い張るコタローだったが、それには誰にも話せない理由があった。(15日目「写真に注意」)

突然担当を言い渡された新人弁護士の小林綾乃は、先輩からさまざまな注意を受けたうえで、コタローのもとを訪れた。彼女が任された仕事は、コタローに毎週生活費を渡しに行くこと。緊張しつつアパートに足を運ぶと、コタローからは牛乳による乾杯や歌の披露など、熱烈な歓迎を受ける。(16日目「手土産をどうぞ」)

コタローはファッション雑誌を片手に、珍しく田丸のもとを訪れた。人に好かれるためにモテモテになりたいコタローは、ファッションのことなら田丸に頼むといいという美月からの言葉を信じ、買い物に付き合ってほしいと頼みに来たのだ。いつもなんとなく距離を取られることが多い田丸は、コタローからのお願いに二つ返事で快諾。お決まりのオールバックにサングラス、ヒョウ柄のスーツでコタローと買い物へと向かう。(17日目「おしゃれ道」)

ある夜、美月の勤め先のクラブにやって来て美月を指名したのは、コタローだった。驚いた美月は、とりあえず狩野に連絡し、コタローを迎えに来てもらうことでその場を収めた。しかし翌日、またしてもコタローは1人でクラブに来店し、美月を指名。困惑する美月だったが、それには美月が先日コタローといっしょに過ごした際に口にした、アパートの更新に関することが関係していた。(18日目「指名してみる」)

今日コタローは、幼稚園の友達、山本カケルに招かれ、カケルの自宅にやって来た。そこでは、共働きの両親の代わりにお手伝いの女性、吉田がカケルの面倒を見ていた。吉田に対してわがまま放題のカケルを見たコタローは、後日カケルを連れて近所の池を訪れ、ザリガニ釣りについてレクチャーを始める。(19日目「グルメな奴!?」)

夕方、幼稚園にお迎えに行った狩野は、コタローが鼻の両穴に鼻栓をしていることに気づいた。どうやらコタローは投げられたボールを受け取ることが苦手な様子。ドッジボールでは何度も顔に当たり、鼻血を出してしまったのだ。コタローから頼まれた狩野は、キャッチボールを会話のように考えること。ボールを言葉と思い、言葉のキャッチボールをするようにと、自分なりの極意を授け、公園でコタローにボールの取り方を教え始める。(20日目「ドッジコタロー」)

幼稚園で誕生会をしてきたという報告をコタローから受けた狩野は、明後日がコタローの誕生日であることを初めて知る。それを聞いた美月と田丸は、アパートでもあらためて誕生日パーティーを開くことを提案する。腑に落ちない表情のコタローに、美月は、誕生日がお祝いであること、「生まれてきておめでとう、生まれてきてありがとうの会」であることを告げると、コタローは自分が生まれてきたことが、祝うべきいいことだったと初めて気が付くのだった。(21日目「“誕生会”とは?」)

ある朝、ゴミを出しにやって来たコタローは、家の前に佇んでいるお婆さんの田辺里江の姿を目撃する。里江はコタローが通りがかるたびに何度もあいさつをし、繰り返し名前を聞いてはほほ笑んでいた。ある時コタローは、里江が首から名前の書いたカードを提げていることに気づく。里江がそれを恥ずかしいと言ったため、翌日からコタローは、大きく名前を書いたカードを作り、自分も首から提げて歩くことを決める。(22日目「毎朝あいさつ」)

口うるさい母親に嫌気がさした幼稚園児のタクヤは、コタローに家出に付き合うように頼みに来た。家出のなんたるかがよくわからないまま、タクヤに付き合うことにしたコタローは、コンビニエンスストアでたくさんお菓子を買ったり、夜遅くまで公園で遊んだりする。不良になることを目指したタクヤだったが、コタローにとっては特別感のないことが続く。(23日目「レッツ家出」)

今週も担当弁護士の小林が、生活費を渡しにコタローのもとを訪れていた。いつものことながら、小林を全力でもてなすコタローだったが、そのもてなしに全力で応じているように見えて、小林はいつも緊張し、固くなっていることに気づいていた。そんな折、不在中の狩野宛に届いた荷物を預かることになったコタローは、その中身がビールであることを確認すると、それを小林に飲ませてしまう。(24日目「ヨッテウタッテ」)

「幼稚園の清水」の星組で、初めての保護者会が開かれた。狩野はコタローの保護者として参加したが、周囲の父兄からの狩野の第一印象は最悪なもので、保護者会の代表を務める野田美代は、まったくやる気を見せない狩野が、保護者の多くから不信感を買っていたことに不安を感じていた。しかし、幼稚園のイベントである夏祭りの手伝いを募る場で、保護者たちがうつむき、手を上げようとする者が1人もいない中、名乗りを上げたのは意外にも狩野だった。(25日目「ナツマツリ」)

幼稚園の友達が軒並みキャラクター付きのかわいいポケットティッシュを持っている中で、コタローは保湿にこだわった上質なものをいつも持ち歩いていた。この日、自宅で使うティッシュを購入するため、狩野と共に近所のホームセンターを訪れたコタローは、ティッシュの成分量を確認しつつ、「甘い」からという理由で、保湿に特化した高級なものを選んだ。不思議に思った狩野は、自宅でテレビを見ている時に、コタローが高級ティッシュを選ぶ本当の意味に気づく。(26日目「こだわりのティッシュ」)

コタローの晩ご飯は、普通とちょっと違っていた。テーブルいっぱいに並べられた小鉢には、それぞれに少しずつおかずが盛られており、一見してとても豪華。それを垣間見た狩野と美月は、そんな様子を羨み、田丸も誘い合わせてコタローの夕食に招いてもらうこととなった。しかし、品数の多い晩ご飯を期待していた3人の前に置かれたのは、コタロー手作りの野菜炒め一品だけだった。(27日目「みんなを御招待」)

ペルセウス座流星群が見えるこの日、亮太は津村山の山頂を目指していた。山頂で先に座って待っていたのは、児童養護施設で生活を共にしていたコタローだった。2人は施設を離れる前、翌年の夏に見られるという流星群をいっしょに見る約束をしていたのだ。約束を果たすため、久々の再会となった2人は施設にいた頃の思い出を語る。(28日目「星の降る夜に」)

ある日、狩野はコタローの様子がいつもと違うことに気づく。コタローは、自分が警察に捕まるかもしれないと頭を悩ませていた。それは、偶然通りかかった女性から目が離せなくなり、無意識にあとを追いかけ、付きまとうようになってしまったというのだ。そんなストーカー行為を、許されないとわかっていながらやめられないのには、コタローにしか知りえない理由があった。(29日目「フラリコタロー」)

「幼稚園の清水」で星組の担任を務める二葉透子は、最近増えた仕事量に負担を感じるようになった。そんな透子が心身ともに疲れ、心から笑顔になれないことに頭を痛めていた時、星組のコタローが、入園してから一度も笑顔になったところを見ていないことに気づく。(30日目「演技派コタロー」)

夜、コタローの眠りを妨げたのは1匹の蚊だった。コタローは蚊に刺されると大きく腫れあがり、痛痒くなって治りも遅い。そのため、なんとしても自分の手で仕留めようと手のひらだけを武器に、夜のあいだ中蚊と戦ったのだ。しかし、蚊を仕留めることはできず、顔を刺されてしまう。朝、狩野と話をしていた中で、蚊が血を吸うことを初めて知ったコタローは、翌日、翌々日と日が経つにつれて刺され跡が増え続けていく。(31日目「血を分ける」)

ある日突然、コタローのもとに、同じアパートの103号室に新たに入居したという男性、青田が訪れる。彼は、仕事の関係で1か月間だけ滞在するのだという。そのあいだ、なかよくしてほしいと頼まれたコタローはこれを快諾し、毎日の銭湯通いも、幼稚園への送り迎えも、青田といっしょにすることになった。青田は、コタローが喜ぶ遊びをよく知っており、コタローは青田と過ごす時間を目を輝かせて楽しんでいた。しかし、青田がコタローのことについて裏でいろいろと詮索し、聞き込みを行っていることを知った狩野、美月、田丸の3人は、青田を問い詰め、彼が探偵であることを確認する。青田は、コタローの父親からの依頼で、詳細を調査していることを吐き出した翌日、突然姿を消してしまう。これに危機感を覚えた狩野たちは、コタローを守らなければという使命感にかられ、幼稚園にも銭湯にもついて行き、身を挺してコタローを守ろうとする。(32日目「新たな入居者」、33日目「何者だ!?」、34日目「いらぬ!!」、35日目「強くなりたい」)

日曜日。コタローは、風邪による発熱でダウンしてしまった狩野の代わりに、漫画の原稿を届けに1人で担当のもとを訪れた。思いがけずコタローと1対1で話をすることになった担当は、結婚して子供もいる自分が日曜日に出社していることに関して、必要以上に心配してくれるコタローに困惑していた。そして、父親としての目線でコタローを見た担当は、彼のはしゃぐ姿や笑顔が見たいと思い、コタローに子供用おもちゃ雑誌の編集部内を案内することにした。(36日目「日曜日なのに…」)

スーパーマーケットで試食を提供しているスーパーの試食係のおなかが大きく膨らんでいることに気づいたコタローは、彼女が売れ残った商品をすべて食べたために太ったと勘違いしていた。心配のあまり連日にわたってスーパーに通っては、彼女が試食販売しているものを残らず買い占めていたコタローは、ある時、彼女から妊娠していることを告げられる。お腹に赤ちゃんがいることをにわかには信じられない様子のコタローだったが、「赤ちゃんは宝物である」という彼女の言葉に心打たれる。(37日目「その“腹”は?」)

青田が「アパートの清水」に引っ越してきて、もうすぐ1か月が経とうとしていた。それは、彼が探偵としての仕事を終え、アパートを出て行ってしまう日が近いことを意味していた。そんなある日、美月は、洗濯をしようとかごに入れておいた自分のパンツがなくなっていることに気づいて大騒ぎ。しかし、青田の高い探偵能力のおかげで、みごと解決に至った。翌日になり、今度はコタローが、部屋にあったはずの箱がなくなった、と青田のもとへ訴えに来た。捜索に駆り出された青田は、アパートの住人に聞き込みを開始する。(38日目「名探偵」)

「オレオレ詐欺」に手を染める金城は、とある老夫婦が住むという家に、息子になりきって電話をかけた。しかし予想外にもその電話に出たのは、まだ幼い声の少年、コタローだった。金城は、不在中だという老夫婦に電話を取り次いでもらおうと、帰宅時間を狙って何度も電話をかけなおす。何度かけなおしてもコタローが対応する電話に、苛立ちつつも、話をしていくうちに、金城は離れて暮らす自分の子供のことを思い出し、父親としての自分の在り方を後悔する。(39日目「その声は」)

ある日、大きなマスクをつけていた美月の頰が腫れていることに気づいたコタローと狩野は、美月が彼氏から金銭を要求されたり暴力を受けたりするなど、ストーカー行為を受けていることを聞く。田丸も参加し、問題解決には警察に通報することを勧めたが、コタローはこれに反発。美月にこのアパートを出ていくことを提案する。(40日目「相手を想えば」)

幼稚園が終わり、帰宅しようとしたコタローと狩野に声をかけてきたのは、コタローのクラスメート、澤口カナとその母親、澤口だった。娘がコタローの家で遊びたがっているからと伝えてきた母親の話に、快諾したコタローは、カナを招いて自宅でいっしょに遊び始める。特別盛り上がることもなかったが、翌日になり、再び母親からカナを遊びに行かせたいと話を受ける。そんな折、狩野は幼稚園に迎えに来ていた保護者達の輪から、澤口に関する不穏な噂を耳にする。(41日目 「なんで遊ぶ?」)

幼稚園で過ごしていたコタローは、クラスメートのケイが、具合を悪くしては頻繁に保健室に行っていることを知る。そんなケイに、自分のお弁当のデザートだったみかんを手渡しつつ、弱いままではダメだと伝えたコタローだったが、翌日幼稚園で、今度は自分が発熱してしまう。しかし強くあろうとするあまり、かたくなに具合が悪いことを認めようとしないコタローは、ケイの心の強さを知ることになる。(42日目「風邪?」)

コタローに毎週恒例の生活費を渡しにやって来た小林は、いつものようにコタローから渡された日記とお土産を受け取って帰路に就いた。数日後、約束なく突然コタローのもとを訪れた小林は、マンションの内見にいっしょに付き合ってほしいと、コタローを強引に誘い出す。(43日目「内見へ行こう」)

コタローが公園で野草を探していると、小さな弟妹を引き連れてやって来た少年、お兄ちゃんと知り合う。彼は、おなかをすかせた妹弟に食べさせてやるための野草を探しに来ていた。コタローが同じ境遇であることを悟った少年は、コタローに弟妹を預け、姿を消してしまった。2時間が経過しても少年が戻って来ないため、弟妹に頼りながら彼らの住む団地を訪れると、そこには1人でポテトチップスを食べる少年の姿があった。(44日目「お前もか!!」)

漫画の執筆にあたり、ネタの材料収集のために映画を見て来るようにと担当から指示を受けた狩野は、成り行きからコタローとクラスメートの少年3人を連れて、近所の映画館に行くことになった。好き放題わがまま放題の少年たちに振り回されつつも、コタローの立場を鑑みて我慢を続ける狩野。しかしコタローは、そんな狩野の様子を見るにしたがって、次第に表情が曇り始める。(45日目「インソツ」)

コタローの部屋を訪れ、いつものように濃密なスキンシップを図ろうとした田丸は、今日も息子との面会が叶わなかったと肩を落とす。そんなある日、アパートを訪れたのは、やたらとガラの悪い子供だった。パパに会いに来たと話す、サングラスにオールバック姿のその少年、勇太を見て、田丸の息子であることに気づいたコタローは、彼を自分の部屋に招き入れて田丸を呼ぶ。コタローの部屋を訪れた田丸は、息子がいることに驚くが、すぐさま勇太に帰るように促す。(46日目「来訪者」)

美月が引っ越したあと、空室となっていた201号室に入居してきたのは、クール系の美人、武井すみれだった。彼女は、普段から何かと口うるさい委員長のような人物。しかしコタローを前にすると、なぜか大汗をかき、不自然なほど子供を褒めちぎるのだ。その様子に、彼女が子供を苦手としていることを察した狩野だったが、ある日、そんな武井にコタローの幼稚園のお迎えを頼まざるを得ない状況が発生する。(47日目「ニューカマー」)

最近、コタローが太ってきていることに気が付いた狩野は、武井と共にその原因を探るが、コタロー自身に思い当たる節はないという。そんな折、幼稚園で給食会が行われることを知った武井は、自ら給食会への参加を志願し、コタローの肥満の原因について繙(ひもと)く役を買って出る。思いがけず、たくさんの子供たちにまぎれて食事をすることになった武井だったが、そこでコタローが肥満に至る、思わぬ真相を知ることになる。(48日目「疑惑の給食」)

コタローは、さまざまなお気に入りの品々を保管しておく箱を持っていた。その名も「わらわコレクションBOX」。ある日、狩野、田丸、武井宛にコタローから「わらわコレクション展」へのお誘いが届く。お手製の入場チケットを手にコタローの部屋へ向かうと、そこには今まで集めてきた数々の品物が所狭しと並べられていた。武井はその中に、コタローの母親が使ったというビニール手袋を発見する。(49日目「コレクション」)

ある日、コタローのもとを訪れたのは、児童養護施設で生活を共にしていただった。施設で一番仲がよかっただけに、コタローは佑との再会を喜び、部屋に招いてもてなした。それ以来、佑はコタローの部屋を頻繁に訪れるようになる。そんな折、狩野は弁護士の小林から相談を受ける。それは、最近になってコタローが生活費の増額を願い出ているというのだ。3回続けての増額請求を不審に思い、最近何か変わったことがなかったかとの問いに、狩野は真っ先に佑の存在を思い浮かべた。コタローの部屋から出てきた佑に話を聞くと、佑はコタローといっしょに住むために引っ越しの準備をしており、そのための引っ越し費用が必要であることを話した。狩野から佑に関する報告を受けた小林だったが、さまざまなところに疑問を感じ、佑という人物について調査を行うことを決める。すると、佑には借金返済が滞っているという事情があることが判明する。(50日目「ウエルカムな人」、51日目「枕の思い出」)

売れないファッションデザイナーの玉森は、表札に手書きで「天才の」と書き加えるほど自分のセンスに自信を持っていた。今日も数々のデザイン画を描き出しては、その出来栄えに惚れ惚れし、称賛を受ける自分の姿を想像しながら、取引相手から引く手あまたとなった自分を演じる一人芝居に興じていた。そんな中、玉森の家のインターフォンが鳴る。応対に出ると、そこには見ず知らずの少年・コタローの姿があった。コタローの来訪を不審に思いながらも、玉森はコタローが自分がデザインした星柄のTシャツについて言及してきたことに気をよくする。だがその瞬間、玉森はコタローの着ている服が汚れていることに気づく。職業柄、服の汚れが気になる玉森は、帰って母ちゃんに洗ってもらえとコタローに声をかけるが、居ても立っても居られなくなり、結局自分が服を洗ってあげることにする。見ず知らずの子供の服を洗うというおかしな状況に首をかしげながらも、玉森は服が乾くまでのあいだ、コタローを部屋で待たせ、自分のデザイン画を見せたりして共に時間を過ごす。これ以来、コタローは何かと玉森の家を訪問するようになるが、半月ほど経過した頃、玉森は引っ越しをすることになってしまう。引っ越しの手伝いにやって来た友人から、コタローの訪問は寂しさから来るもので、親からネグレクトを受けているのではないかと助言される。すると玉森は、今自分にできることはこれしかないと、コタローのためにデザインしたTシャツを長袖と半袖15着ずつ用意し、服を洗ってあげる代わりにプレゼントする。コタローは、自分の訪問が迷惑をかけたことを玉森に謝罪するが、引っ越し後のコタローの身を案じた玉森は、コタローに他人とかかわりを持たせるため、いろんな家のインターフォンをかまわず押し続けろと助言する。(59日目「ピンポン」)

ある日の夜、コタローは、いつものように狩野と銭湯に行った帰り道、「アパートの清水」の前に人が立っているのを見つける。それが、宇田桃葉であると知るや否や、いつも冷静なコタローが目の色を変え、敵意をむき出しにして襲い掛かろうとする。狩野はコタローがここまで人を嫌うところを見たことがなかった。騒ぎに気づいて田丸や武井も駆けつけるが、彼らが父上の敵だと騒ぎ立てるコタローをなだめているあいだに、宇田は姿を消してしまう。だが翌日、コタローと狩野はあっさりと宇田に再会することになる。実は宇田は、アパートの103号室に新しく引っ越してきた入居者だったのだ。コタローは、宇田が和宮小夜梨と不倫関係にあったことを暴露。パパの存在を知りながら、こそこそと小夜梨を誘惑したのだと宇田に対する嫌悪感をあらわにする。狩野は武井と田丸と共に、コタローが不在の時に宇田を追及しようとするが、ひょうひょうとしていてとらえどころのない性格の宇田からは、ここに来た目的についてなかなか詳細を聞き出すことができない。宇田がコタローの前に姿を現した真意はわからないが、彼を追い出してやってもいいと、田丸はコタローに話を持ち掛ける。しかしコタローは怒りに震えながらも、1か月くらいなら様子をみてやってもいいと答える。それには、コタローなりの理由があった。(79日目「父上の敵で…」)

新年を迎え、狩野はコタローを連れて、伯父さんの家にあいさつにやって来ていた。伯父さんと伯母・多希子は、狩野が中学生の時に両親を亡くして以来、親代わりとなって育ててくれた狩野にとっての恩人。狩野からコタローの話を聞いた多希子が興味を持ち、コタローに会いたがったため、今回の訪問が決まったのだ。コタローはいつにも増してオシャレを決め込み、気合を入れて訪問すると、多希子は優しい笑顔で暖かく迎え入れ、強面の伯父さんも二人を歓迎する。そんな中、コタローは狩野が多希子に対してのみ、敬語を使って話すことに気づく。部屋に通されたのち、その疑問を投げかけると、一瞬にして周囲の空気が凍り付くが、伯父さんがゲーム遊びを提案したことで、この話はなかったことにされてしまう。帰り道、自分の発言のせいで多希子が元気をなくしてしまったのではないかと責任を感じるコタローに対し、狩野はある出来事について語り始める。そして二人が帰ったあと、叔父さんと多希子のあいだでも同じ出来事について話し合われていた。(87日目「コタローの疑問」)

ある日、コタローは宇田のスマートフォンを拾い、本人に返そうとした。だがその瞬間、スマートフォンの画面に映し出されたのは、SNS「つぶったー」のメッセージ。相手の名前は「和宮小夜梨」となっていた。宇田は亡くなった小夜梨からのメッセージに驚きを隠せないが、自分の母親からのメッセージに喜んだコタローは、スマートフォンを宇田に返すとそのまま狩野のもとへと向かう。コタローは、自分のスマートフォンでつぶったーのアカウントを作成してほしいと狩野に要求すると、つぶったーで小夜梨と連絡を取ろうとする。宇田は、小夜梨の名前で相互フォローしていた相手すべてに、コタローのことを覚えているかという趣旨の同一メッセージが送られていることを確認。狩野と共に何者かが小夜梨になりすましている可能性について言及し、コタローにメッセージ送信を思いとどまらせようとするが、母親の確固たる存在に興奮したコタローの耳には届かない。宇田と狩野はただ見ていることしかできない状態にやきもきするが、小夜梨を名乗るアカウントとメッセージのやり取りをする中で、コタローはある発言をきっかけに違和感を感じて対応を一変させる。そして相手が小夜梨ではなく、パパである可能性に気づき、冷静さを取り戻す。(103日目「メッセージ」)

その日、狩野は漫画の締め切りに追われ、コタローに手伝ってもらっていた。原稿のペン入れが終わり、残る作業は消しゴムをかけるだけとなった段階で、締め切りに間に合う目途が立った狩野は、コタローに消しゴムかけを任せ、コンビニエンスストアに買い出しに行くことにした。狩野不在のあいだに全部の作業を終えようと、張り切って消しゴムをかけ始めたコタローだったが、勢い余ってテーブルの上の墨を倒してしまう。しばらくして、買い物から帰って来た狩野が目にしたのは、誰もいない部屋と、なくなった原稿、そして墨で汚れたテーブルだった。状況を察した狩野は、急いでコタローに電話するが、コタローは自分は原稿を汚していないの一点張りで、一方的に電話を切ってしまった。コタローが、墨で真っ黒になった原稿を持って向かったのは、編集部の福野のもとだった。コタローの手に握られているものが、今日締め切りの原稿であることを知った福野は、一瞬気を失いかけるが、すぐ正気を取り戻して狩野に連絡。そして道具一式を持ってやって来た狩野と連携し、どうにか原稿を締め切りに間に合わせることに成功する。だが、狩野を前に小さく身を縮めていたコタローは、どうして原稿を汚してしまったことを正直に言わなかったのかと追及され、そこで初めて自分が狩野に怒られたくなくてウソをついたことに気づいて呆然とする。自己嫌悪するコタローの様子に困惑する狩野は、福野からの「子供らしく成長して嬉しい」という言葉にはっとさせられることになる。(127日目「嬉しい嘘」)

メディア化

テレビドラマ

2021年4月にテレビドラマ化。横山裕(関ジャニ∞)が狩野進役で主演、川原瑛都がさとうコタロー役を演じる。脚本はドラマ「のだめカンタービレ」「偽装不倫」「私たちはどうかしている」などを手がけた衛藤凛、監督は映画「マザーウォーター」やドラマ「きょうの猫村さん」の松本佳奈、音楽は作曲家の篠田大介が担当する。

ネット配信アニメ

2022年3月、本作『コタローは1人暮らし』のネット配信アニメ版『コタローは1人暮らし』が、Netflixで配信。監督は牧野友映、キャラクターデザインは木村友美が務めている。キャストは、さとうコタローを釘宮理恵、狩野進を増田俊樹、田丸勇を諏訪部順一が演じている。

登場人物・キャラクター

主人公

「アパートの清水」203号室で1人暮らしをする事になった男の子。年齢は4歳。子供向けのヒーローアニメ「とのさまん」が大好きで、その影響もあり、古びた言い回し「殿様語」で話す。一人称は「わらわ」。意図的... 関連ページ:さとう コタロー

狩野 進 (かりの しん)

「アパートの清水」202号室に住んでいる男性。年齢は31歳。漫画家として、昨年、雑誌で漫画賞を受賞したが、それ以降、鳴かず飛ばずの状態が続いている。中学生の頃両親を亡くし、親戚の家で暮らしていた。その頃は、周囲に気を遣うばかりに、人の顔色ばかりうかがい、機嫌を取る事が多くあった。一人暮らしになった現在は、自分を作る必要もなくなり、自然体で暮らしている。 女性関係にはだらしなく、短期間で彼女が代わるため、約束を失念したり、相手の名前を間違う事もしばしば。隣室に入居して来たさとうコタローがあまりにも小さい子供である事に困惑していたが、心配になって放っておけない心境に駆られるようになった。時間や場所を問わず、何かと1人で行動しようとするコタローが気になり、彼が外出するところを見かけると、ついいっしょについて行ってしまうお人好しなところがある。 「幼稚園の清水」に入園したコタローのお迎えや保護者会への出席は、自分が中心となってアパートの住人達で助け合って行っている。

秋友 美月 (あきとも みづき)

「アパートの清水」201号室に住んでいる女性。「CLUB DreaM」でホステスを務めている。彼氏からお金をたかられたり、暴力を受けた事がある。別れを切り出してはみるものの、勤務先やアパートの前で待ち伏せされたりする事もあり、なかなか別れられずにいた。しかし、最終的には彼氏からのストーカー行為を終わらせるために、引っ越しを決意する。 さとうコタローには日々関心を寄せており、仕事がない時間帯や、休みの日には積極的にコタローにかかわろうとしている。

田丸 勇 (たまる いさむ)

「アパートの清水」102号室に住んでいる男性。オールバックにサングラスをかけ、ヒョウ柄のスーツと、外見は限りなくチンピラで、柄が悪い。しかしその外見とは裏腹に、子供が大好き。同じアパートに住むさとうコタローの事を「コタローきゅん」と呼び、家を訪れては抱きしめたりほおずりしたりと、濃密なスキンシップを図ろうとする。 別れた妻のもとには息子の勇太がおり、つねに面会を希望し続けているが、妻から一方的に拒絶され、息子にはまったく会えていない状態が続いている。その後、息子自身から、面会の日を母親から伝えられていなかった事を聞き、勇太自らが会いに来てくれる事になる。しかし、面会の約束を破っていい理由にはならないと、息子にすぐに帰るように促した。

福野 (ふくの)

狩野進の担当を務める男性編集者。「小学社」に勤めている。狩野の原稿を見ては、絵柄が古い、好みじゃない、物語に追いついていないなど、多くのダメ出しを繰り返している。狩野の作品に対し、話の構成力が武器だが、絵を始めとするさまざまな面で力不足を感じている。必然的にダメ出しが多くなっているため、非情に見えるが、彼ならできると期待しているからこその愛のムチ。 既婚者で子供がいるが、土日出勤が少なくない。狩野を通してさとうコタローとかかわるようになり、父親としての目線から、彼の子供らしからぬ言動を心配している。元ドラマーのため、太鼓が得意。

青年 (せいねん)

路上で風船配りの仕事をしている青年。たくさんの風船を手に持ち、通りがかった子供に風船を配っている。痩せている印象のためか、たくさんの風船を一度に持って飛ばされてしまうのではないか、とさとうコタローから心配された。1人に付き1つという約束の風船を、別人を装って何度も取りに来るコタローに目をつぶり、訝しがりながらも4つの風船を渡した。 その後公園で、風船を家族に見立てて1人で遊んでいるコタローの姿を目撃し、風船が長持ちする事を願った心優しい人物。

小林 綾乃 (こばやし あやの)

鈴野法律事務所に勤める新人弁護士の女性。年齢は27歳。所長の命令で、さとうコタローの担当者となった。毎週コタローに生活費を届けるのが主な仕事で、その際、コタローから受ける熱烈な歓迎にしっかりノってあげるように、と先輩から指示されている。生活費を渡しに行くと必ずもらえるお土産と、1週間分の日記を見て、胸を熱くし、この仕事をきちんとやり遂げる覚悟を決めた。 以降、コタローに対してはつねに一生懸命対応している。彼に渡す生活費が、母親の保険金から支払われている事を知っている数少ない人物であり、コタローには「優しい人からの寄付」という事で話を通し続けている。酒に弱く、酔って服を脱ぎ、お腹に顔を描く腹芸をコタローに披露した事がある。

山本 カケル (やまもと かける)

「幼稚園の清水」の星組に在籍している男の子。さとうコタローとは同じクラスの友達。共働きで不在がちな両親のもと、お手伝いの吉田さんにわがままを聞いてもらいながら日々を過ごしている。数少ない「とのさまん」ファン。

田辺 里江 (たなべ さとえ)

「アパートの清水」の近所に住んでいるお婆さん。毎朝、自宅玄関の前に立ち、ごみを出しに来るさとうコタローに名前を聞き、挨拶する事を繰り返している。真夏でも関係なしにはんてんを着用し、首からは名前と連絡先が書かれたカードを提げている。ボケの傾向にあり、行方知れずになったり、おかしな言動を繰り返しているが、自分が名前のカードを提げていなければいけない事を自覚しており、同時に恥ずかしさを感じている。

タクヤ

「幼稚園の清水」の星組に在籍している男の子。さとうコタローとは同じクラスの友達。何かにつけて口うるさい母親に反抗しようと、家出を決行。コタローを巻き込み、両親に心配させる事を目的に、食べたいだけお菓子を買ったり、夜遅くまで公園で遊んだりと、「不良」を目指して行動しようとする。

野田 美代

「幼稚園の清水」の星組で保護者会の代表を務める女性。親睦を深めるはずの保護者会で、さとうコタローの保護者として参加していた狩野進の存在が、弊害となっていた事で、今後の活動への不安を感じていた。しかし、夏祭りの手伝いを募る場で、狩野が手を上げて以降、彼に対する見方を変える。

亮太 (りょうた)

さとうコタローと同じ児童養護施設で育った18歳の男性。現在は施設を離れ、大工として生計を立てている。コタローと、翌年の夏にペルセウス座流星群をいっしょに観る約束をしていた。しかしその後、コタローが何の挨拶もなく突如として施設をあとにしたため、いっさいの連絡を取る事ができないままとなった。

二葉 透子

「幼稚園の清水」で星組の担任を務める女性の先生。年齢は23歳で、いつも笑顔で明るい。しかし最近では幼稚園を退職する先生が多く、仕事量が増えた事を負担に感じている。そのためか、疲れが取れず、心の底から笑顔になる事ができなくなっている。また、星組で担当するさとうコタローが、一度も笑顔になった姿を見た事がない事に気づき、心配している。

青田

仕事の関係で、1か月間だけ「アパートの清水」103号室に入居する事になった男性。寂しがり屋で、見知らぬ土地では心細い事を理由に、さとうコタローに対してなかよくしてほしいとアピール。実は探偵業を生業としており、コタローの父親からの依頼で、コタローの居場所を探していた。1か月間、コタローといっしょに銭湯へ通い、風呂で遊んだり、彼の大好きなお菓子を持参してコタローの部屋を訪れたりと、コミュニケーションを図る事に余念がない。 しかしその裏では、アパートの住人である狩野進や秋友美月、田丸勇に対してコタローに関する事の聞き込み調査を行っている。幼少期に、つらい経験をした過去を持ち、腹部にはタバコを押し付けられてできた火傷の跡が複数残っている。

スーパーの試食係 (すーぱーのししょくがかり)

スーパーマーケットのパートの女性。食品売り場で、さまざまな食品の試食の提供をしている。現在妊娠中で、お腹はかなり大きく目立っている。よく買い物に来るさとうコタローと仲がいい。お腹が大きい事を、売れ残った食品をすべて食べつくしていると勘違いしたコタローに、お腹の中には赤ちゃんがいる事、赤ちゃんは愛でできている事、赤ちゃんは宝物である事を教えた。

金城 (かねしろ)

サングラス姿のガラの悪い男性。とあるビルの片隅で仲間3人と共に、相手先の息子になりきって電話をかけ、金銭をだまし取る「オレオレ詐欺」に手を染めている。別れた妻のもとには息子がいるが、もう何年も会っていない。最近息子の事を思い出しては、自分がダメな父親であった事を後悔し始めている。

澤口

澤口カナの母親。最近夫の勤める会社が倒産し、苦しい生活を送っている。娘のカナを降園後、さとうコタローの家にやり、遊ばせる事が増えた。自分の娘よりも恵まれた子の家で遊ばせたくないという心境から、複雑な境遇のコタローを利用している。

澤口 カナ

「幼稚園の清水」の星組に在籍している女の子。澤口の娘。幼稚園ではさとうコタローといっしょに遊ぶ事はあまりないが、最近、降園後に頻繁に彼の家に遊びに行くようになった。正直言ってコタローや狩野と遊んでも楽しくないが、そうしておけば母親が安心して笑うからという理由で、だまって従っている。

ケイ

「幼稚園の清水」の星組に在籍している男の子。体が弱く、よく熱を出したり、具合が悪くなっては保健室に行く事が多い。クラスメイトのさとうコタローからは、弱いままではだめだと言われてしまうが、自分がみんなに風邪をうつす事のほうが悲しいから、みんなと遊びたい気持ちを我慢する、という強い気持ちを持っている。

お兄ちゃん (おにいちゃん)

さとうコタローが公園で知り合った少年。寒い季節にもかかわらず足元はビーチサンダルを履いている。弟と妹を連れており、いつも面倒を見ている。団地に住んでいるが両親は帰って来ず、お金もないため、お腹を空かせた妹弟を連れて公園で野草を探していた。コタローが自分達と同じ境遇にある事を悟り、妹弟をコタローに押し付けたまま姿を消してしまう。

勇太

田丸勇の息子。現在は母親と暮らしている。以前から、父親との面会の日がある事を母親から知らされていなかった。自ら父親に会うために、母親に内緒で父親が暮らす「アパートの清水」を調べ、訪れた。サングラスにオールバック姿で、ガラが悪いところは父親譲り。

武井 すみれ

秋友美月が引っ越したあと、「アパートの清水」201号室に入居して来た女性。結婚して娘もいたが、いつからか娘に嫌悪感を覚えるようになり、娘に触れる際には手袋が必須になるなど、子育てに支障が出るようになったため、現在は一人暮らし。クール系の美人で、何でも細かい事まで口を出す委員長タイプ。子供に苦手意識を持っているが、それを悟られたくない一心で、多量の汗をかきながら無理して子供を褒めちぎる。 そのため、子供が絡むと必然的に不自然な振る舞いとなる。子供を苦手と感じる事を辛く感じている。以前、栄養について学んだ経験がある。

(たすく)

さとうコタローと同じ児童養護施設で育った男性。現在は施設を離れ、ホストとして生計を立てている。派手でノリの軽い、いわゆるチャラ男で、言葉尻には必ず英語を交える。子供の頃万引で捕まった過去を持つ。亮太から話を聞いてコタローのもとを訪れ、再会に至った。その後、頻繁にコタローの部屋を訪れるようになり、コタローといっしょに住む方向で、主にコタローの生活費から引っ越し費用を工面していると言っているが、真相は定かではない。 コタローに関して何かと心配し、口をはさんでくる狩野を疎ましく思っており、所詮アパートの隣人である狩野よりも、同じ境遇の自分の方がコタローを理解できると豪語する。現在は複数の消費者金融から借金があり、返済が滞っている状況。

ヒデ

小学生の男子。子供サッカークラブに所属しており、サッカーが得意。チームメイトとなったさとうコタローに対し、ぶっきらぼうではあるが、ボールの扱い方やサッカーのコツなどを教え、面倒を見ている。友達との関係は良好だが、コーチが指示する大声や誰かが叱られている声を聞いたり、さらには大声で話しかけられたりすると、途端に体が委縮して身動きが取れなくなってしまう。その原因は両親にあり、ヒデが両親の言うとおりにできないと大声で叱責され、自分の教育方針を巡って両親がケンカすることが日常となっていたからである。またそれにより、心に深い傷を負っている。

波江 (なみえ)

おおば歯科で受付を担当する女性。院長の大葉が、子供の診療に1時間の枠を取ることに対して疑問を持っている。子供の診療時間を短くすれば、ほかに来院を希望する患者さんの予約を受け付けることができると考え、大葉に直訴するが理解は得られなかった。大葉が子供に割く時間に何をしているのかを聞き、実際にそれを目の当たりにしたことで、大葉が大事にしている思いを知ることになる。

大葉 (おおば)

おおば歯科の院長を務める歯科医の男性。子供を診療する場合は、通常よりも長い1時間という枠を設けることにしており、そのためにほかの患者の予約がうまく取れないことも多い。それについて、受付を務める波江から短くしてはどうかと指摘を受けるが、子供の診療に使う時間を削ることは考えていない。実は以前、患者として訪れたこのみが、自宅で衰弱死して発見されたという痛ましい事件があった。重度の虫歯に侵されていることを知りながら、このみが母親から育児放棄され、虐待を受けていたことに気づいてやれなかったことに責任を感じ、それ以来、子供の診療には特に時間をかけ、治療のほかにおしゃべりをすることで子供の状況を知るように努力している。現在通院中のさとうコタローが、以前は重度の虫歯に侵されたことで注意して接していたが、最近状態がよくなったことから、最悪の状態は免れたと胸をなでおろしている。

このみ

おおば歯科に通院していた女の子。年齢は5歳。大葉の診察を受けると、口の中の半分以上の歯が重度の虫歯になっていることが判明し、治療を受け始めた。翌週、治療の続きをするための予約をしていたが、予約日の前日に歯が痛いと訴え、一人でおおば歯科を訪れた。だが、その日は予約がいっぱいで、翌日が予約日だったことから、痛み止めを処方されて翌日母親といっしょに来るように諭され、家に帰された。しかしその後、このみが来院することはなく、衰弱死したことが明らかになった。原因は母親の育児放棄と虐待だった。

あかね

狩野進の元彼女。狩野と別れて4年から5年が経過しているが、彼氏とケンカしたことを理由に狩野のもとを訪れ、一方的に居候することを決めた。狩野が漫画の連載のチャンスを前に忙しい中、身を削ってさとうコタローの世話をしていることを知り、複雑な思いを抱く。狩野に無断でコタローを幼稚園に迎えに行ったり、日課である銭湯にも狩野の代わりに同行するなど、二人のあいだに割って入った。コタローには、狩野が仕事で忙しいからコタローの面倒まで見ると大変だと話し、狩野が幼稚園のイベントに参加しないように仕向けるなど、二人の関係を無理矢理断ち切ろうとした。隣人というだけでコタローの面倒を見る義務はないと、何かとかかわりすぎる狩野に釘を刺すも、結局狩野の方がコタローを必要としていることに気づくことになる。その後も何かと狩野のもとを訪れ、コタローともかかわりを持つようになる。ハッキリ物を言うタイプで、同情はするのもされるのも嫌い。さばさばしすぎる性格ゆえに、友達は少ない。

玉森 (たまもり)

ファッションデザイナーを生業とする男性。まだ売れていないが、自分のセンスには人一倍自信を持っている。ある時、インターフォン越しに見ず知らずの少年、さとうコタローの服が汚れていることに気づき、服を洗ってあげたことがきっかけで、コタローが頻繁に玉森自身の家を訪れるようになった。見るたびに汚れているコタローの服を、そのたびに洗濯してあげている。その後、自分がマンションの家賃を払えなくなり、引っ越すことを決めた。また、コタローがネグレクトを受けている可能性に気づき、自分はもう服を洗ってやれないからと、コタローのために自分がデザインした長袖と半袖のTシャツを15着ずつプレゼントした。これまでコタローにデザインを褒められたことはなく、ダサいと言われ続けていたが、GODの文字と星のマークが入ったTシャツは、コタローのワードローブとなった。

朝顔新聞 (あさがおしんぶん)

朝顔新聞の新聞配達員を務める男性。お腹の調子を崩し、いつもより配達が遅くなった日、さとうコタローから配達員に何かあったのではないかと心配したと声をかけられ、コタローの優しさに感動した。その後、コタローが保護者といっしょに住んでいないことを聞き、コタローが5社もの新聞を契約していることを知り、子供だから無理矢理契約させられたのではないかと心配し始めた。自分が協力するから、不要な新聞は解約しようとコタローに話を持ちかけるも、その必要はないと断られ、コタローがたくさんの新聞を契約する理由を知ることになる。

レオママ

レオの母親。健康志向が非常に強い。夫やレオのために、日常的に料理に使う野菜はすべてオーガニック食材を取り寄せており、メニューは魚中心。また化学調味料は使用せず、素材の味を引き立たせる薄味を心がけている。市販の食材を使わず、レオのお弁当の中身もすべて手作りしている。また教育熱心で、将来的に英語が話せるようになった方がいいとの思いから、レオを週2回英語の教室に通わせ始めた。そのため節約を心掛けているが、夫から褒められることはなく、レオからも否定的にとらえられている。いい母親であろうと頑張りすぎているところがあり、せめて主婦仲間のママ友には認めてもらいたいという思いを抱いている。

レオ

レオママの息子。「幼稚園の清水」の星組に在籍している。母親の健康志向が強いため、弁当はすべて手作りで、日常的な食事もすべて健康を意識したものとなっている。だが、レオママの作ったものはどれも野菜が多く薄味で、正直おいしいとは思っていない。しかし、幼稚園でお弁当を食べ残すと、レオママが泣いて怒るため、がんばって完食するようにしている。また、週2回英語の教室に通っているが、楽しいとは思えずに身にも付いていない状況で、不満が溜まっている。

(ちょう)

元プロの料理人で、ホームレスの男性。過去に料理長を務めたこともあり、料理の腕前は一流。ホームレスになってからも、食材が手に入ると本格的な料理を作り、そのおいしそうな匂いから、ホームレス仲間から羨望の眼差しを向けられている。料理を作っていると、おなかをすかせた少年、さとうコタローが決まって現れ、料理の仕方を教えて欲しいと言い寄られるが拒絶している。空腹のコタローに向かって、食べたければ金を払えと言い放った。しかし、お金の代わりにと空き缶を集めてきたコタローが、母親の料理の味を覚えていないと言ったことから、コタローの生活環境を察し、自分にとってのおふくろの味である「どっさり野菜肉団子タマゴ落としスープ」の作り方を教えた。

染島 (そめじま)

さとうコタローを担当している美容師の男性。担当は女性がよかったとコタローにいつも愚痴られているが、コタローに接することに喜びを感じている。涼しい顔をしながら、自分が担当することに不満を漏らすコタローに、つむじが三つあるからカットには技術が必要だと話し、キャリアのある自分が担当する意味を説いたが、実はコタローのつむじは二つ。残る一つはストレスによる抜毛症によってできたハゲで、それをコタローに悟られることなくケアし続けていた。ようやくハゲが治りかけてきた頃、つむじが三つあることで別の客と意気投合したコタローが、ふさがってしまった三つ目のつむじを作るために再び髪を抜いてしまう。そのため、改めてコタローに向き合い、ハゲについて丁寧に説明した。顔には出さないが、大の子供好き。

広末 頑二 (ひろすえ がんじ)

「アパートの清水」の近所に住む老齢な男性。10年ほど前に妻の笑美代を亡くして以来、一人暮らしをしている。近所に住む人たちからは、その頑固な性格から愛想が悪いとか、誰ともかかわろうとしないなど、好き放題言われており、近づこうとする人はいない。誰にも頼りたくないという強い考えを持つことから、世話をされないと生きられない花を嫌悪している。ある時、公園で座っている際に、さとうコタローから花を差し出されるが、子供相手であっても自分の考えを貫いて花を拒絶した。それでも妻を亡くした寂しさから、ナンパしようとするも、失敗続きでうまくいかずにいた。コタローからナンパの極意を伝授され、その言葉が心に刺さり、それ以来コタローと親しくなった。

イタルの母 (いたるのはは)

反抗期真っ只中の少年、イタルの母親。イタルが小さい頃に使っていた自転車のチャイルドシートを、今も付けたまま自転車を走らせている。チャイルドシートにあこがれるさとうコタローから、タクシーを捕まえる時のように声をかけられて以来、道で声をかけられるとコタローを目的地まで送る役目を担うようになった。コタローを乗せて走るうちに、小さい頃イタルを乗せて走ったことを思い出す。もう不要になったチャイルドシートを取り外そうとしたところ涙があふれ出し、このチャイルドシートには、イタルとのかけがえのない思い出が詰まっていることに気づく。

椎名 (しいな)

警察署で主任を務める男性。以前、多額詐欺犯、春下の潜伏先に張り込んでいた時に、さとうコタローと出会った。春下とドア越しに何か話し込んでいる様子のコタローを見て、コタローが春下と血縁関係があるのではないかと推測した。その後春下を逮捕し、二人が他人であることが判明した。さらに、コタローがネグレクトを受け、寂しさゆえに近所のインターフォンを鳴らして歩いていると聞き、逮捕された春下に代わって、春下の家でコタローの相手をすることとなる。初めは春下になりすましていたが、コタローには本人でないことがばれており、改めてコタローから構ってくれたことへのお礼を言われた。この経験から社会的にどんなに悪人であっても、誰かにとってかけがえのない存在である可能性について考えさせられることとなり、その教訓は今でも心に抱き続けている。

戸部 まかな (とべ まかな)

「幼稚園の清水」の星組を担当することになった新人の女性教員。年齢は23歳で、今は二葉透子のアシスタントについている。元キャバクラ嬢のため、ノリが軽く、何かとキャバクラ用語を多用している。子供のことはまだよくわかっていないところもあるが、子供思いの優しさを持っている。

まひる

町内の秋祭りで遊びに来ていた女性。年齢は20歳前後。食べるのが大好きで、ぽっちゃりした体形をしている。金魚すくいの屋台で、小さな少年、さとうコタローが手伝っているのを見て声をかけた。金魚すくいを楽しんだが、すくった金魚が1匹ではかわいそうだからと、リリースして帰った。その翌日、祭り屋台をコンプリートしに再び訪れ、コタローから2匹の金魚をプレゼントされることになる。コタローから好意を寄せられるが、実は彼氏とデート中だった。

宇田 桃葉 (うだ とうよう)

「アパートの清水」の103号室に青田のあとに入居してきた大学院生の男性。飄々(ひょうひょう)としてつかみどころのない性格をしている。以前、パパの存在を知りながら、和宮小夜梨に近づいて彼女のことを誘惑し、不倫関係にあったとされている。そのことを知っているさとうコタローからは、「母上ゆーわく男」と名づけられ、敵視されているが、不倫関係が事実かどうかは不明。また宇田桃葉は、パパを警察に通報した張本人であり、自分のせいでパパが警察につかまることとなった。これはコタローの身を案じてのことだったが、それによってコタローから父親を奪うことになったことについては責任を感じ、複雑な思いを抱いている。青田とつながりがあり、小夜梨がすでに亡くなっていることを知っているが、それをコタローに言わないことを条件にコタローの居場所を教えてもらい、同じアパートに住むことを決めた。コタローの前に姿を現すことについては、覚悟を持っていると語っているが、その本心は明かしていない。当時、心身共に疲弊していた小夜梨にとっては、笑顔を取り戻すきっかけを作った心の支えとなった存在であり、宇田自身も小夜梨を心配するあまり、通常は通らない道を通って小夜梨やコタローの様子を確認していた。そんな中、コタローからのSOSを敏感にキャッチし、警察に通報するに至ったという経緯がある。コタローに肯定されたくてアパート清水に来たわけではないと語っているが、コタローに少なからず罪悪感を感じていることは間違いない。自室の真上に住むコタローからは、一晩中床を叩(たた)かれたりと嫌がらせを受けているが、気にしていない。

横城 まりな (よこしろ まりな)

右目に眼帯、右手に包帯を巻いた少女。過剰気味な自意識と妄想癖があり、他人とは違う自分をカッコイイと思ういわゆる中二病。周りからはその挙動から、痛い子と言われることも少なくない。ある時、さとうコタローと知り合い、自分の眼帯や包帯を見て心配されるようになった。だが、特にケガや病気があるわけではなく、ただ単に装備したくなるという理由で、眼帯や包帯を付けているにすぎないことを説明した。コタローの母親の和宮小夜梨が、痣(あざ)を隠すために包帯を巻いていたことを知っていたため、横城まりなも同様に心配されたが、自分は大丈夫とおどけてみせ、コタローを安心させた。しかし、実際は家族からDV被害を受けており、コタローとの出会いをきっかけに、学校に相談することを決意する。

真極 光雄 (しんごく みつお)

マッサージ店「真極マッサージ」を営むマッサージ師の男性。ごつい顔つきのわりに、物腰は柔らかく、女性口調でしゃべるいわゆるオネェ。さとうコタローと武井すみれは常連客だが、特にコタローに対しては、特に凝ってもいないのに全身が凝っているようなそぶりをし続けている。それは、親からの愛情が不足しているコタローに、マッサージという名のスキンシップを行うことで、幸福感を感じてもらおうという優しさからだった。

坊主 (ぼうず)

お寺のお坊さん。大みそかに除夜の鐘を突くために繰り返し並ぶさとうコタローが、鐘をつくことで煩悩を自らの体から出そうとしていることを知って興味を持った。なんの煩悩を出したいのか尋ねたところ、コタローが寂しさだと答えたことから彼の日常を察し、煩悩とは己と向き合って受け入れることが必要だと、教えを説いた。

多希子 (たきこ)

狩野進の伯母。明るく朗らかな人柄で、正月に挨拶に訪れた狩野とさとうコタローを温かく迎え入れた。狩野が中学生の時に両親を亡くして以来、夫の甥(おい)にあたる狩野を引き取り、親代わりとなって育ててきた。だが、自分の子供たちもいる中で、血のつながりのない他人である狩野の面倒をみることはたやすいことではなく、その負担と不満から、夫の伯父さんに愚痴ったところ、それを運悪く狩野に聞かれてしまった。それ以来、申し訳なさから、狩野には必要以上に気を遣うようになり、狩野からも敬語を使われ、気を遣われるようになってしまった。しかし、本当の母親のようでありたいとの思いが強く、狩野が家を出たあともつねに狩野の味方であろうとしている。

伯父さん (おじさん)

狩野進の伯父。強面(こわもて)で頑固そうな見た目ながら、思いやりのある優しい男性。正月に挨拶に訪れた狩野とさとうコタローを温かく迎え入れた。狩野が中学生の時に両親を亡くして以来、狩野を引き取り、親代わりとなって育ててきた。妻の多希子に負担をかけていることを自覚していたが、どうすることもできなかった。また当時、多希子が不満を口にした際には、狩野に聞かれることを防ぐことができなかった。狩野と多希子が必要以上に互いに気を遣い合うようになって以来、その関係をだまって見守って来たが、正月の再会をきっかけに、改めて狩野を我が子のように育ててくれた多希子に感謝した。また、自分といっしょになったことで苦労をかけたこと、それでも結婚してよかったことを、多希子に伝えた。

千村 寅二 (ちむら とらじ)

千村動物園の園長を務める男性。いつも動物の被(かぶ)り物をかぶっている。人とコミュニケーションを取ることが苦手で、人とのかかわりは極力避けたいと考えており、動物を眺めるだけで十分生きていけると思っている。以前、閉園間近の動物園内に、たった一人でいたさとうコタローに気づいたが、声をかけることなくその場を後にしたことがあった。面倒ごとにかかわりたくない思いゆえのことだったが、当時ネグレクトを受け、居場所を求めていたコタローは千村寅二のこの行動により、自分の居場所を見つけることができた。そのため、のちにいじめや不登校などで居場所を失った者に対して、コタローは千村動物園を紹介するようになった。このこともあって、寅二がコタローと再会した際には、当時の行動に対し、コタローから礼を言われることとなった。それがきっかけで、「動物は人を裏切らない。動物さえいればいい」としていた動物園のキャッチコピーを、「どこにいけばいいかわからないなら ここに、あいにきて。」に変更することを決めた。

銅像師匠 (どうぞうししょう)

大道芸人の男性。顔や体などにペイントを施し、あたかも銅像であるかのように振る舞っている。ある時、パン屋のリニューアルオープンに呼ばれ、店頭に立っていたが、思ったほど客を呼ぶことができず、当初の予定よりも短い期間で打ち切りになりそうだった。そんな中、さとうコタローに見初められ、コタローと二人で銅像の姿で店頭に立つと、親子のような姿が微笑ましいとたくさんの人が集まり、予定どおり週明けの月曜日まで店頭に立つことが許された。実は、離れて暮らす娘がこの春小学校を卒業することになっているが、以前の自分の行いが原因で、裁判所命令によって、近づいたり話しかけたりすることが許されない状況にあった。現在は過去の自分を恥じて後悔しており、娘に会いたい強い気持ちを我慢している。パン屋の前を通る娘の姿を見たいがために、どうしても卒業式が行われる月曜日まで店頭に立つ必要があった。コタローの協力のおかげで、無事月曜日に店頭に立つことができ、娘の晴れ姿を見ることができた。

兵藤夫妻 (ひょうどうふさい)

兵藤家の夫婦。赤ん坊のアオミの子育てに忙しい日々を送っているが、夫が育児休暇を取得したため、夫婦で育児に勤(いそし)しんでいる。世間的には、夫は育児によく参加するイクメンと称賛されがちだが、妻としては複雑な思いを抱いている。ある時、散歩中にさとうコタローと知り合い、育児に参加する父親について話をすることになった。夫が席を外すと、育児する夫をイクメンと呼び、ほめたたえる世間の風潮について、妻は日頃の不満をコタローに吐露した。さらに育児する父親は、こだわりの育児論を妻に押し付けがちになるという悲しい思いも経験してきた。だが、それでも妻は育児する夫を持ち上げ、否定することなく気持ちよく協力してもらう方を選択。互いに子供のためにという思いは同じであると、自分の不満を飲み込むことを決めた。そんな妻の思いには微塵(みじん)も気づかない夫は、いつでも全力で育児に参加し、自分がイクメンであることを誇っているが、結局は妻の方が一枚上手である。

補充員 (ほじゅういん)

路上の自動販売機に飲み物を補充して回っている男性。ある暑い日、旧型の自動販売機の裏でうずくまっているさとうコタローを見つけ、あまりの暑さにのぼせ上がっていたコタローに水を買って渡したことがあった。コタローは、旧型で裏から熱を放出するタイプの自動販売機の場所を逐一確認し、旧型自動販売機のマップを作っており、その理由を逃げ場所を失った時のためと語った。寒さの中、唯一暖かい場所だった自動販売機の裏は、当時パパの暴力から逃げた小さなコタローの避難場所だった。そのことを知って以来、旧型の自動販売機の裏に誰かいないかを必ずチェックするようにしている。

シズノ

元看護師の女性。自分が就職して半年で廃業してしまった病院が、肝試しスポットとして有名になった。所有者である元院長から、バイト代を出す代わりに時々見回りに行って欲しいと頼まれたため、友人のサトキと共に見回りを行っていた。その時、病院内にいたさとうコタローと知り合い、病院内を案内することになった。複雑な家庭環境にあるコタローのことを思い、持っていた母子手帳がどれだけ大切なものであるかをコタローに教えた。

セイゴ

小学生の男の子。学校帰りに友達と、公園にいたさとうコタローとタクヤに声をかけ、六人でこおり鬼をすることになった。その際、30まで数を数えることができず、また友達が言った「自販機」がなんのことなのかわからず、それを教えてくれようとした友だちのキヨトに腹を立て、帰ってしまった。実はセイゴは最近施設に入ったばかりだった。幼い頃から親とあまり話ができなかったため、知っている言葉の数が人より極端に少ない。友だちから教えられるのもつらく感じ、うまく覚えることができなかった。だが、そんな状況に詳しいコタローから「勇者の書」を渡される。その本には、これまで実際に助けられた子供たちの名前が記されていたため、勇気をもらうこととなった。

イチ

「幼稚園の清水」で月組に在籍する男の子。夏休み明けの身体測定の際、さとうコタローにこんがりと焼けた肌を自慢し、夏休みの充実を暗に見せつけた。だが、お昼ご飯の時間、コタローからおかずを横取りして食べ続けた結果、お腹を壊してしまった。そして体重測定の結果、夏休みのあいだに体重が数キロ減っていることが判明。両親が多忙のため、お昼ご飯も用意されない状態が続き、公園で水を飲んで空腹に耐えていたことを告白する。

佐保 (さぼ)

アイドルオタクの男性。さとうコタローの友達。女性アイドルユニット「あいどるん」ののんのんに入れ込んでおり、のんのんのことをコタローに教え、コタローがアイドルにはまるきっかけを作った。ユニット結成3周年記念の3日連続握手会イベントに、コタローといっしょに連日参加し、のんのんとの時間を堪能した。だがその際、のんのんとの握手に応じようとしないコタローの様子が気になり、さらにいつも自炊のコタローがコンビニエンスストアのおにぎりで昼食を済ませたり、晩ご飯もお弁当だったりと、ふだんと様子が違っていることに気づいた。そして、コタローの一人暮らしで何かあったのではないかと気にかかり、日常的な家事による手荒れに思い至る。その後、佐保が実家の母親が使っているハンドクリームをコタローに手渡したことで一件落着。コタローが以前と同様、全力で握手を楽しむ様子を見て安心した。

のんのん

女性アイドルユニット「あいどるん」のメンバーの女性。料理することと食べることが趣味で、ぽっちゃりした体型がチャームポイント。ユニット結成3周年を記念して行われたイベント「あいどるん握手会3Days ~いつもより3倍握手しちゃうぞパーティ」で、握手会常連のさとうコタローと佐保を歓迎した。いつもどおり全力笑顔で握手をしようとしたところ、ふだんなら腕がもげそうになるほど強烈な握手を求めて来るコタローが、なぜか手を延ばしても握手に応じようとせず、それが2日続いたことを心配していた。そんな中、コタローからふんわりとハンドクリームのいい香りがすることに気づき、コタローが手荒れに悩んていることを知る。そして握手会最終日となる3日目、自分からコタローに手を差し伸べて握手した。そして、のんのん自身も小さい頃から家の手伝いで水仕事ばかりしていたため、手荒れに悩んでいたことがあったと語り、コタローの手が好きだと伝えた。

所田 澄夫 (ところだ すみお)

「幼稚園の清水」で月組に在籍する所田メイの父親。教育評論家として活動を行っており、不定期ではあるが、小さなホールなどで講演を行うことがある。幼稚園に展示されたさとうコタローの入園直後と現在の二つの作品を見て、この絵を写真に撮ってSNSにアップしたいと、コタローと狩野進に申し出た。コタローは快く許可したが、紹介されたのは、入園当初に描いた薄暗い絵の方だけ。さらに添えられた文章は、心に闇を抱えている、家庭に問題があるなどコタローの絵を問題視するものだった。所田澄夫自身は、子供の心理状態を分析してSOSをすぐに察知するため、こういう絵を具体的に紹介することは世の中のためになると考えてのことだったが、紹介の仕方に疑問を持った狩野からは不信感を抱かれてしまう。その後、評論家としての仕事が忙しくなり、雑誌の取材やテレビ出演、大きな講演会などで多忙な日々を送る中、娘のメイを祖母に任せっぱなしにすることも増えていく。それから約一か月、幼稚園への送り迎えも久しぶりとなった日、幼稚園に飾られたメイの絵は、まさしく心に闇を抱え、寂しさが感じ取れると自分が解説したコタローの絵と同様のものだった。狩野から、この絵を公表できるかと問われたことで、それまで自分がしてきたことの間違いに気づき、コタローに真摯に謝罪した。

織田 仁造 (おだ じんぞう)

ラーメン店で店主を務める独身男性。年齢は74歳。約50年間、カウンター席だけのこぢんまりした店を構えてきたが、店を畳むことになった。10年くらい前から来客はあまり多くない状態が続いていたが、閉店の理由は経営面ではなく、肩を痛めたことで、命をかけてきた湯切りパフォーマンスができなくなってしまったから。織田仁造自身が生み出し、大切に育ててきた湯切りの技は、いわば自分の娘のようなもの。そんな折、さとうコタローと出会い、彼に自分の湯切り技を伝授。閉店は決まったが、娘を嫁に送り出したあとのように、安心して引退することができた。

駒込 (こまごめ)

ポールダンス教室に通う男性。ポールダンス歴は約10年で、すでに年齢が50歳になるにもかかわらず、きれいに踊る姿は、若い生徒たちからも尊敬のまなざしを集めている。同じ教室に通うさとうコタローとは仲がよく、ライバル視されている。ポールダンスを始めたのは、テレビで見て興味を持ったことがきっかけ。平日は家族のために働いて、休日は練習に励み、月1回のレッスンを楽しんでいる。実はポールダンスのことは、家族には内緒にしているために後ろめたさを感じているが、自分だけの楽しみを邪魔されたくないという思いもあり、複雑な思いを抱いている。

誘導員 (ゆうどういん)

夜間に行われる道路工事の現場で交通誘導を行う誘導員の男性。深夜、「アパートの清水」の前の道路に立ち続けている。工事の騒音が大きく、住人たちに対し申し訳なさを感じていた時、アパートの2階からのさとうコタローの視線に気づいた。工事が一旦終了するまでのあいだ、ずっとにらまれ続けたことから、騒音で眠れずに恨みを買ったのだろうと考えていたが、その後コタローの家庭が複雑で、一人で暮らしていることを聞くことになる。そして、コタローは自分をにらんでいたのではなく、一晩中見守ってくれていたことを知る。

イサシ

「幼稚園の清水」の月組に在籍する男の子。ある日、園庭で遊んでいる途中で突然眠り込んでしまい、滑り台を降りたところでばたりと倒れてしまった。問題の根本は家庭にあり、大きなストレスがかかり、心と体をコントロールできなくなってしまったことにあった。これが原因で突然眠ってしまう解離症状をひきおこすようになったが、同様の経験を持つ担任の教師、花輪がすべてを察し、話を聞いてくれた。その結果、母親に原因があったことから、花輪が母親と話し合って、状況は少しずつ改善していく。

花輪 (はなわ)

「幼稚園の清水」の月組を担当する男性教員。ある日、イサシが園庭で遊んでいる途中で突然眠ってしまったことに端を発し、イサシの家庭に問題があるのではないかと考え始めた。イサシに話を聞くと、母親に問題があることが発覚。そしてイサシの母親を呼び、改善を要求したが、なかなかうまくはいかなかった。実は花輪自身も、子供の頃に家で大きなストレスを抱え、心と体をコントロールできなくなってしまったことがあった。これが原因でイサシと同様突然眠ってしまう解離症状をひきおこすようになり、大人になって落ち着いていたにもかかわらず、イサシの一件により再び症状が現れ始めた。園内で強烈な眠気に襲われ、先生方や子供たちから指摘されることも多くなって困っていた時、一連の状態について理解を示したさとうコタローにフォローしてもらうこととなる。

北地 義光 (きたじ よしみつ)

とのさまんファンの男性。アニメが最終回を迎えた後、インターネット上にあったとのさまんファンサイトの掲示板で、自分ととのさまんロスを共有してくれる仲間を募った。そして、集まった15人の仲間と共にとのさまんグループチャットを開設した。最近グループチャットに入室した新人のさとうコタローが、かなり熱量があり、チャット内の会話でもとのさま語を使う強者(つわもの)幼稚園児として、興味を持つようになった。その後、グループの仲間たちが次々に退出するようになり、残されたのはコタローと自分の二人だけとなった。コタローからはいっしょに退出してグループチャットを閉鎖しようと持ち掛けられるが、最後の一人になってしまうかもしれないことを悲しんだコタローの気持ちを知り、このグループチャットは絶対に閉鎖しないと誓った。

陣保 都 (じんぼ みやこ)

「幼稚園の清水」で管理栄養士を務める女性。園児たちの食事風景をこっそり見に行った時、さとうコタローが子供用のサプリメントを大量に持ってきていることを知り、自分の作った献立に問題があったのかと落胆した。自分の考えた給食に問題があるなら教えて欲しいとコタローに尋ねたところ、コタローから一人暮らしゆえの健康不安を聞かされる。そのため、自分がコタローの日々の栄養バランスをチェックすると申し出た。

島井 (しまい)

会社員の男性。1年前新入社員の仕事として、会社を挙げての花見の場所取りを命じられたことがあった。1日でも早く仕事を覚えたいこのタイミングに、ただぼーっと桜の木の下で場所を陣取り、待っていなければならない状況に、歯がゆさと苛立(いらだ)ちを感じていた。場所取りの最中、一人で退屈していると、突然現れた少年、さとうコタローと知り合った。コタローが勝手に座ってお菓子を食べ始めたため注意したが、コタローの相手をしているうちにあっという間に時間が経過したように感じた。その後、会社の者と合流した際にコタローの姿はすでになく、邪険にしたことを後悔したが、1年後に花見会場でまさかの再会を果たした。そしてコタローの境遇と、コタローが場所取りの人を相手にすることの意味を知ることになった。

羽生 冬志 (はにゅう とうし)

鈴野法律事務所に勤める男性弁護士。小林綾乃の先輩にあたる。もともとはさとうコタローを担当していたが、所長に頼み込み、綾乃に担当を変更してもらった。最初にコタローに会ったのは児童養護施設で、コタローのパパが施設に乗り込んできた日の夜だった。コタローを一時避難場所に保護したのち、現在の「アパートの清水」へ入居させた。その後しばらくは生活費を届ける役目を担ってきたが、コタローが自分に対し、ある種のトラウマのようなものを抱いていることに気づき、自ら担当を外れることを決めた。それ以来、綾乃を通じてコタローの様子を知り、安堵(あんど)している。

オモタロ

男性お笑いコンビで、メンバーの名前は「オモヤ」と「タロウ」という。売れていないため、ほぼ毎日同じ時間に駅前の路上でマネージャーに見守られながら漫才を行っている。観客の中に、毎回小さい少年、さとうコタローがいることに気づき、しばらくのあいだはそれをモチベーションに漫才をがんばっていた。しかしコンビの息が合わず、漫才がうまくいかないことが続いたある日、漫才の終わりに必ずコタローがすばらしかったと言いに来ることにカチンときたオモタロは、コタローに八つ当たりする形で、もう来るなと突き放してしまう。だがマネージャーから、コタローが毎日いろんな知人を連れて来ては、オモタロのネタの面白さを説明していたことを知り、邪険にしてしまったことを心から反省することとなった。その後も、コタローを笑わせることをお笑いを続けるうえでのモチベーションとしている。

ミカドママ

「幼稚園の清水」の星組に在籍する園児の母親。さとうコタローとは、ママ友として付き合いがある。自らが経営するパン屋「ミカドベーカリー」で、コタローに個人的にパンの作り方を教えてあげている。パン屋はオープンして3年が経って常連客もつき、やっと軌道に乗った状態。コタローからは、なるべくパン屋を続けて欲しいと言われており、ミカドママに何かあった時は自分が乗っ取ると宣言されている。

石垣 洋次 (いしがき ようじ)

丸丸商事営業課に勤めるサラリーマンの男性。さとうコタローとは、昼休憩中に知り合って以来の付き合いで、営業マンの心得を細かくレクチャーしている。その内容はスーツの着こなしや、営業先での最初の挨拶、名刺渡しのコツなど、多岐にわたる。実は印象はバッチリにもかかわらず、石垣洋次自身の営業成績は社内で一番悪いが、そんなことはまったく気にしていない。

ミナコママ

「幼稚園の清水」の月組に在籍する園児の母親。さとうコタローとは、ママ友として付き合いがある。営業の人が業者から買い取って来た金やプラチナなどの貴金属や地金をチェックし、純度別に仕分けする仕事を行っている。この仕事を始めて10年になるが、その豊富な経験から感触や重さ、見た目などで純度が判断できるようになった。コタローからの頼みで、社長了承のもと、仕事内容についてレクチャーを行っている。

徳松 (とくまつ)

社会人の男性。今の会社に入社してけっこう経つのにもかかわらず、仕事はうまくいかず、付き合っていた彼女にもふられて、いいことがなく落ち込んでいる。友人と酒を飲んでは愚痴をこぼし、からんで相手に迷惑をかけている。泥酔して以前に住んでいた「アパートの清水」203号室に無意識に戻り、勝手に部屋に入ってしまうが、今の住人であるさとうコタローが、見るに見かねて介抱してくれた。その後もたびたび泥酔してはコタローの部屋を訪れるが、のちにコタローが複雑な事情で一人暮らしをしていることを知ると、自分も転職して、心機一転前を向いて頑張ることを誓った。

柚乃 (ゆの)

タバコ屋の店番をする女性。ちょくちょくタバコ屋に来てはタバコ型のチョコ菓子を買っていくさとうコタローを快く思っていない。母親からは、父親の店であるタバコ屋のあとを継ぐように言われているが、どうしても前向きになれないでいる。それはタバコが嫌いだからで、最大の理由は父親がタバコが原因の病気で亡くなったためである。

和宮 小夜梨 (わみや さより)

さとうコタローの母親で、パパの元妻。もともと子供が生まれるまでは仲睦まじい夫婦だったが、広い意味で潔癖なパパとの育児がうまくいかず、苛立ったパパから暴力を受けるようになった。パパの苛立ちの標的はコタローにも向き始めたため、それを見せまいとコタローを目隠ししたり、自身の身を挺してかばうようになった。だが、すべては育児をうまくやれない自分に問題があり、自分がダメな母親だから夫を怒らせていると、すべては自分が悪いと考えるようになった。その頃、知り会った宇田桃葉とは不倫関係にあったことがコタローの口から語られているが、真相は定かではない。だが、宇田が自分やコタローのことを気にかけてくれたことが、和宮小夜梨が笑顔を取り戻す助けになったことは間違いない。また、宇田の通報がきっかけでパパが警察に身柄を拘束され、離婚することとなった。夫と離婚後は、コタローと二人で暮らすことになったが、ビニール手袋を使用してコタローに触れたり、何日もお風呂に入れなかったり、夜中にたった一人でコタローを部屋に置き去りにすることが日常化。食事を与えず、健康管理もせず、視線はいつもスマートフォンに釘づけで、話しかけられても無視するなど、育児放棄をするようになった。のちにコタローは児童養護施設に入所し、その後に小夜梨は死去。それ以降、コタローに毎月手渡される生活費は、小夜梨の保険金から捻出されている。実はコタローと離れたのち、「アパートの清水」101号室に入居し、一人で暮らしていた。その際、夜中にゴミを出そうとしたことがきっかけで、狩野進と知り合い、おひさまの下で胸を張って生きられない時があるという狩野の言葉に共感した。その後、別の場所への引っ越しに際し、自分が大事に育てていたサボテンを持って行くことができなかったため、大家からの勧めで狩野に託すことにした。その際、狩野のような人がコタローの父親だったらよかったと口走ったが、狩野は小夜梨の名前も知らず、小夜梨がコタローの母親でだったことも知らない。

パパ

さとうコタローの父親で、和宮小夜梨の元夫。家族を愛するがゆえに、妻にも自分自身にも些細(ささい)な隠し事をすることすら許せず、そんな自分の性格に苦しめられることになった。小夜梨が出産後、育児休暇を取得したが、潔癖な性格が災いして、妻は育児をまったくわかっていないと話すようになり、小夜梨をダメな母親だと罵るようになる。いつしかそれはモラルハラスメントやドメスティックバイオレンスという形になって表面化。不器用な性格の小夜梨と、自分の思いどおりにならない育児への苛立ちをコタローにもぶつけるようになったが、そんな自分の状態を自覚しており、治療したいという気持ちも持っていた。しかし、結局自分をコントロールすることができず、暴走するようになってしまった。そんな中、家庭の状況を知った宇田桃葉の通報によって警察に身柄を拘束されることになった。その後、小夜梨とは離婚が成立し、子供への接近禁止令により、現在はコタローに会うことも許されない状況にある。のちに児童養護施設に入ったコタローの居場所を突き止め、施設に怒鳴り込んだことで、施設の子供たちを恐怖に陥れた。それ以来、現在に至るまでコタローの居場所を知らないままのため、探偵の青田を雇ってコタローを無理矢理探し出そうとしたが、結局うまくいかなかった。その後、小夜梨のSNSアカウントを勝手に操作し、相互フォローしていた相手にメッセージを送信。コタローの居場所を突き止めようとした。これにより、コタロー本人とSNS上でコンタクトをとることに成功するが、結局ウソを悟られ、居場所を特定することはできなかった。コタローに対しては、父親としての優しさを見せていたこともあり、相合傘をする時には相手を気遣って傘をさすことで、自分の肩が濡れることの大切さを語るなど、コタローにとっては相合傘の師匠でもあり、嫌な思い出ばかりではない。

場所

アパートの清水 (あぱーとのしみず)

老夫婦が営む単身型2階建てアパート。部屋によって風呂なしと、シャワーのみが付いている部屋とに分かれている。全部で6室あり、202号室には狩野進、203号室にはさとうコタローが、102号室には田丸勇が、103号室には青田が入居し、201号室には秋友美月が入居しているが、彼女が引っ越したのちに武井すみれが入居する事になる。 また、101号室は現在のところ不明のままとなっている。基本的に子連れの入居は禁止されているが、コタローに関しては、家賃が払えるならと大家が特別に許可をした。大家の老夫婦は、アパートのほかにも「幼稚園の清水」や「コンビニの清水」など、手広く経営している。

その他キーワード

とのさまん

深夜0時から始まるヒーローアニメ。殿様の姿をしたかわいらしいキャラクターが、弱きを助け悪をくじく典型的なヒーローアニメだが、大人が見ても面白味はない。深夜に放送されている事からか知名度は低く、かなり人気薄。

書誌情報

コタローは1人暮らし 10巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

第1巻

(2015-12-28発行、 978-4091873552)

第2巻

(2016-09-30発行、 978-4091877888)

第3巻

(2017-08-30発行、 978-4091896254)

第4巻

(2018-05-30発行、 978-4091898821)

第5巻

(2019-01-30発行、 978-4098602117)

第6巻

(2019-10-30発行、 978-4098604111)

第7巻

(2020-09-30発行、 978-4098607174)

第8巻

(2021-09-30発行、 978-4098611522)

第9巻

(2022-06-30発行、 978-4098613229)

第10巻

(2023-08-30発行、 978-4098625529)

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