銀の三角

銀の三角

予知能力を持つ種族銀の三角人の隔世遺伝で現れた子孫ル・パントーによって引き起こされる破滅を回避するため運命を操ろうとするラグトーリンと、変動を予知した暗殺者マーリー・ザ・レイが時空を超えて邂逅し、運命を紐解くハードSF。第14回(1983年)星雲賞コミック部門受賞。

正式名称
銀の三角
ふりがな
ぎんのさんかく
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
レーベル
白泉社文庫(白泉社)
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概要・あらすじ

友人ジェイフ・カルソリから歌手エロキュスのテープを送られたマーリー・ザ・レイは、辺境惑星トメイで行われる彼女のコンサートに訪れる。ジェイフにはただのファンであるように振舞うマーリーの目的は、変位指数の高い危険人物であるエロキュスを暗殺することにあった。折りしも勃発した革命騒ぎに巻き込まれ、重症を負ったエロキュスを保護したマーリーは、失血死するまで彼女を見殺しにする。

死に際のエロキュスから、彼女に音楽のインスピレーションを与えた存在の話を聞いたマーリーは、変位指数の大元を辿るべく、調査を開始する。

登場人物・キャラクター

マーリー・ザ・レイ【マーリー・1】

『銀の三角』の主人公のひとり。予知能力を持つ青年。中央年齢321歳。太陽の変光異常で住民の九割が亡くなった惑星サーザの出身。サーザを脱出して後は、中央に市民登録し、今は青耳にある五位岬の湖に住んでいる。多種の致死因子を持つため、中央の遺伝安定法により、生殖機能を停止させられている。 表向きはルポライターを名乗っているが、社会に対する変位を引き起こす指数を予知し、その原因を排除する保安機構の暗殺者。ジェイフ・カルソリからエロキュスの歌が収録されたテープを送られ、その変位指数の高さから彼女を危険視。辺境惑星トメイの革命に巻き込まれ重症を負った彼女を病院へ連れて行かないという形で暗殺を決行する。 その後、エロキュスの歌にインスピレーションを与えたラグトーリンを探し、赤砂地星へ。リザリゾ王の下にル・パントーが生まれるのを見た後、西の高原へ向かう。そこで時空人としての能力が無自覚に働き、四年後の西の高原へ時間移動を行い、ラグトーリン殺害を試みるが、逆に殺されてしまう。 予知能力が作動する場合は百発百中で鮮明に画像が閃くタイプだが、ラグトーリンの件は音楽が関連していること以外は曖昧だったという。

マーリー・ザ・レイ【マーリー・2】

マーリー・1の21歳時のクローン。マーリー・1が死亡の16日前に記録した記憶を注入しようとしたところ、誤ってエロキュスの記憶も注入されるという事故が起こったため、自己人格記憶が欠落した状態で目覚めた。五位岬の家に居るところを、訪ねてきたラグトーリンにもう一度会いに来るよう伝えられ、赤砂地へ。 宙港でガルガ城主に保護され、飛行機を借りて楽師に会いに行った先で老ペシャから赤ん坊のル・パントーを預けられる。時間を数ヶ月飛んだ先でリザリゾ王に捕えられ、ル・パントー共々軟禁されてしまう。その後はエロキュスとしての自認が強くなっていった。

マーリー・ザ・レイ【マーリー・3】

『銀の三角』の主人公のひとり。マーリー・1の死後、マーリー・2の再生が失敗したことから作られたクローン。マーリー・1が死亡してから約1年後に目覚めた。マーリー・1の記憶を正常に受け継ぐが、赤砂地での予知が不鮮明であるため、不審に思う。また、マーリー・1が殺したエロキュスの記憶がマーリー・2に注入されることも、事故にしては作為的であると怪しみ、チェッカーに調査を依頼する。 エロキュスの死の真相に勘付いた友人のジェイフ・カルソリによって殺害されそうになったところを、彼共々時空間移動。ラグトーリンにマーリー・2とル・パントー、エロキュスについての話を聞かされた後、3万年以上前のプロメへとタイムスリップする。

ラグトーリン

『銀の三角』の主人公のひとり。神出鬼没に現れる黒髪の女性楽師。その正体は本人自身もよくわかっていない。ル・パントーが死に際に出す声が世界の調和を歪ませてしまうため、ル・パントーの運命を変えようと時空間を行き来して原因を探り、様々な仕掛けを加えてパターンを試している。マーリー・1の出身星であるサーザの太陽を変光を起こして星を滅ぼしマーリー・1の存在を亡き者にしようとするなど、能力は果てしなく巨大だが、赤砂地など一部の場所では時空間の修正が利かなかったり、ル・パントーのように強固な運命を持つ者には直接干渉ができないなど、制約も多い。 幽閉されたル・パントーが夢を飛ばすことを覚えてからは、彼の夢に向かって歌を聴かせていた。

エロキュス

歌手の女性。ルルゴー・モアと名乗っていた百年間は、古典音楽への憧憬が強く、カルメンやトスカなどのオペラを復活させ、中央でネオ・ルネッサンスのブームを起こした。三年前、ラグトーリンがル・パントーに聞かせている歌を聴き、現在の身体自体が鳴り響く楽器のような激しいスタイルに変わった。 熱狂的なファンが多い。前世は7千年ほど前に地球に居た歌人。ラグトーリンの計画によって強制的にこのル・パントーのいる時代へと転生させられた。辺境惑星トメイでのコンサートの最中、革命に巻き込まれ重症を負い、マーリー・1に助けられるが、彼女を危険視していたマーリー・1はそのまま彼女を失血死させる。 遺体は中央に送り返され、精神データのみ保存される形となった。

ジェイフ・カルソリ

マーリー・1の友人。享楽的な遊び人風の青年。頬にいつも異なる模様を描いている。中央の七区出身。保安部の宙港警備で15年働いていたが、現在は雑音消却部でスポンジの研究をしている。エロキュスの追っかけをしており、マーリー・1にテープを送った。マーリー・1がエロキュスを殺したことを知り、マーリー・3の家に押しかけた際、マーリー・3の時空間移動に巻き込まれ、3万年以上前のプロメへとタイムスリップする。

グレイ・ブール

全宇宙の古代民族音楽の研究をしている博士。177中央年齢。中央出身ではないものの、クローン再生の権利を有しているが受け取らず、自分と同じ容姿のコンピューターを作り、遺跡の発掘やデータの分析をさせている。マーリー・1が面会に訪れたのは、第三号コンピューター。生身の本人はエロキュスのコンサートを聴きに行っていたことがある。 また13年前に一度訪れたラグトーリンに、金色で縦長の虹彩を持つ人のことを訊かれている。マーリー・1にラグトーリンと銀の三角人のことを語った。

リザリゾ

辺境の星赤砂地の国リザリゾ王国の王。中央の技術を学び、いずれ中央に属したいと考えている。第三夫人の産んだ子供に銀の三角人の隔世遺伝が現れてしまう。その子供ル・パントーを忌み子として殺すが、時空人であるル・パントーは殺される前の身体を時空間移動させて運んでくる不死の存在であるため、殺害は叶わなかった。 そのため、国内の民の赤ん坊を次々に攫い、殺し始める。ペシャによって連れ去られたル・パントーが、マーリー・2と共に現れると、ふたりを捕えた。その後、毎夜ル・パントーを殺し、マーリー・2を慰み者とする。

ガルガ

辺境の星赤砂地の荒野地方の領主。リザリゾ王の赤子殺しが激化し、我が子も殺されてしまうことを恐れて反乱を企んでいる。赤砂地を訪れたマーリー・2を通して中央を味方につけたいと考え、飛行機を貸すなど行動に協力した。

ペシャ

辺境の星赤砂地の国リザリゾ王国のリザリゾ王に仕える占い師。予言の能力を持ち、良い予言も悪い予言もすべて喋ってしまう。リザリゾ王の第三妃の赤ん坊について悪い予言をしたため幽閉されていたが、マーリー・1の命乞いにより西の高原へ逃れる。ル・パントーを王宮の別の預言者から預かり、育てていた。 西の高原の隠れ家を訪れたマーリー・2にル・パントーを預ける。ラグトーリンの姿が見え、ル・パントーには黒い髪の守護神がついていると考えている。

チェッカー

中央一区の保安局で働く、マーリー・1、マーリー・3の上司の男性。マーリー・1を有能な暗殺者として高く評価していた。マーリー・1の死後、マーリー・2の再生が失敗すると、ジェイフ・カルソリにマーリー・1の奇妙な行動の情報を与え、探りを入れようとする。

ミューパントー

銀の三角人のひとり。三万年前のプロメで、彼らの種の存続を助けようとするパヴァーと共に、現地の女性と契約を行い、種を残そうとしていたところをマーリー・3と出会う。パヴァーによって様々な惑星の女性と契約を行ってきたが、子孫が作れたら、あるいはできなくても後20年経ったら、太陽から遠い闇の惑星をひとつもらえることになっている。

パヴァー

三万年前のプロメで、ディディンに子孫を作らせようとしていた学者の男性。銀の三角人の衰退を惜しみ、成功してもしなくても銀の三角人が暮らしやすい闇の惑星をひとつあげるという約束でディディンを連れて様々な惑星を巡り、子孫を残させようとしている。銀の三角人自体にも詳しく、マーリー・3に彼らの種の歴史を語る。

ル・パントー

辺境惑星赤砂地の、リザリゾ王国のリザリゾ王第三妃の元に生まれた銀の三角人の血が隔世遺伝で現れてしまった子供。体内に時空軸を持っている時空人で、殺されてもその直前の肉体を時空軸が運んでくるため、形式状不死。自ら体内の時空軸を壊すことで自殺することは可能。実父であるリザリゾ王に幽閉され、毎夜殺されては生き返る日々を送っていたが、14歳の時についに体内の時空軸を壊し、自殺する運命にある。 その時にあげる声が世界の調和を歪ませる力を持っているため、ラグトーリンはル・パントーの運命を変えようとしている。

集団・組織

銀の三角人 (ぱんとー)

『銀の三角』に登場する種族。ヴェラ・ガンマの星系にある暗黒のガスに包まれた星に住んでいた種族。自分たちの住む星を「銀にけぶる三角」と名づけていた。白い髪で、縦長の金虹彩の瞳。繁殖力が弱く、数年に一度星を覆うガスを晴らし、光を呼ぶことで発情し種を存続させていた。近未来を予言する音楽を持っていたため、ヴェラ・ガンマ星系の戦争に狩り出され、次第に衰退していった。 彼らが住んでいた本星は、三万年前に起きた帆座Xのスーパーノヴァによって消え去ったとされる。種族自体は無くなってしまったが、隔世遺伝で今もその血が現れることがある。

場所

青耳 (あおみみ)

中央一区にある太陽系を指す。発展した中央の中心地であるため、長命種が多く、人々は記憶とクローン体の保存によって死んでも再生が可能となっている。マーリー・1の住む五位岬の湖には水ヘビが住んでいる。ラグトーリンによれば、この水ヘビは予知能力を持つ時空生命体であり、これまで青耳の社会が安定していたのは、水ヘビがそれを望んでいたからだという。

赤砂地 (せきさじ)

中央に属さない辺境の惑星。宙港はリザリゾ王国にある。無数の都市国家や遊牧民族の点在する赤砂地の中で、リザリゾ王国は国土の七割が荒野・砂漠だが、地の利に恵まれ建国四百年の歴史がある。

プロメ

三万年前、パヴァーとディディンが子孫を残すべく滞在していた惑星。当時の人々はパラの惑星と呼んでいた。この地にあったレリーフをグレイ・ブール博士が後に発掘し、研究の対象としている。

書誌情報

銀の三角 白泉社〈白泉社文庫〉

(1994-09-01発行、 978-4592883012)

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