高杉さん家のおべんとう

高杉さん家のおべんとう

一つ屋根の下で住むことになった主人公の高杉温巳と従妹の高杉久留里が、最初はぎこちなかったものの、弁当作りを通じて家族になっていく様子を描く。

正式名称
高杉さん家のおべんとう
ふりがな
たかすぎさんちのおべんとう
作者
ジャンル
料理
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概要・あらすじ

主人公の青年、高杉温巳はある日、急に母を失った従妹の高杉久留里の保護者として、少女と二人きりで同じ家に住むことになる。性格や考え方の違いのために、いろいろな問題が生じるが、毎日の弁当作りといった何気ない生活上の出来事を通じて、理解し合うようになる。

登場人物・キャラクター

高杉 温巳 (たかすぎ はるみ)

地理学の博士号を持つオーバードクターで、当初は東山中学校の非常勤講師だったが、後にN大学の助教となる。未成年後見人として高杉久留里を引き取ってからは寡黙で人見知りな彼女との対話に苦労するが、弁当作りをきっかけに家族の絆を深めていく。きまじめだが鈍感で、かつ話がついつい学者口調になるため、対人関係で失敗することも少なくない。 しばしば行動が空回りするため、周囲からはよく「残念な人」扱いされる。一度は同じ研究室の小坂りいなと両思いになったが、彼女がドイツに留学した際に破局する。その後はなにごとも、久留里の幸せを最優先にしている。

高杉 久留里 (たかすぎ くるり)

高杉温巳の従姉妹で、母親は高杉美哉。温巳のことをハルと呼ぶ。東京で美哉と二人で暮らしていたが、12歳のときに美哉が交通事故死してからは温巳のもとで暮らす。小学生の頃から芸能界のスカウトが来るほどの美少女だが、そのことがきっかけでいじめに遭ったこともあり、人となかなか打ち解けようとしない。 友だちと言えるのは香山なつ希、丸宮光、園山奏くらいである。温巳とも当初はぎくしゃくしていたが、弁当作りをきっかけに心を開くようになる。温巳との間に血縁関係が無いことが判明しても、家族の絆は揺らずにいた。しかし、しだいに温巳のことを家族以上の存在として意識するようになる。 好きなことは家事。特に買い物の節約が大好きで、スーパーの特売にも目がない。料理は弁当作りをしているうちに上達した。毎日のジョギングを欠かさず、運動神経もいいが部活は文芸部。中学時代は幽霊部員だったが、高校に入ると3年に部長を務めるなど積極的に活動している。

高杉 美哉 (たかすぎ みや)

高杉久留里の母親。高杉温巳にとっては叔母(温巳の父の妹だが、実は養子縁組で血縁関係はない)であり、初恋の相手でもある。かつては温巳の弁当を美哉が作っており、その味が知らぬ間に高杉家の絆となっていた。温巳の両親が交通事故で亡くなった際のショックで家を飛び出し、そのまま姿を消す。 その後、同窓生の高遠晶との間に久留里を授かるが、結婚はせずに東京都豊島区の出版社でシングルマザーとして働いていた。だが、突然の交通事故で急死。遺言で、温巳を未成年後見人として娘の久留里を託す。

香山 なつ希 (かやま なつき)

高杉久留里の同級生で、久留里のことを「くるりん」と呼ぶ。久留里が東京から転校してきた当初は、クラスの女子全員で彼女をイジメていたが、元々きれいな女の子が好きだったこともあり、しだいに歩み寄るようになる。母親の玲子が高杉温巳の同期だったこともあり、やがて家族ぐるみのつきあいをするようになり、ついにはいっしょに弁当を食べるくらいの友だちになる。 S女学院に進学し、高校は別々になったが、なにかにつけて久留里のもとを訪ねている。他人の心の機微や恋愛関係に関しては、異様なまでに勘が働き、久留里や丸山光には魔女みたいと怖れられている。

香山 玲子 (かやま れいこ)

高杉温巳の大学の同期で香山なつ希の母親。S女学園大学の准教授で専門は地理情報システムだが、N大学の風谷久郎研究室にもよく出入りしている。夫のヨシュア・マルティネスとは別居中で、家事は母親の香山節子に任せっきりである。性格はぶっきらぼうだが面倒見は良く、高杉温巳は仕事の面でも私生活の面でも男女関係の面でもしばしば姉御のように尻を叩かれている。 学生時代から、温巳の家を集会場のように使っており、何かにつけてパーティーという名の飲み会を開いている。

小坂 りいな (こさか りいな)

北海道H学園大学の特別研究員として、N大学の風谷久郎研究室に在籍し、やがてS女学園大学の講師となる。専門は養蜂で、高杉温巳にも仕事のことで何かとアドバイスをもらっている。実家は小坂水産という有名な水産会社で、なにかと実家から海産物を送られている。 料理も得意で、弁当作りを始めたばかりの温巳に、何度も適切なアドバイスをしていた。温巳にはずっと好意を抱いており、当初は彼のブログをのぞき見する程度のものだったが、しだいに想いが強まって、一度は告白して両思いになった。だが、温巳が従姉妹の久留里のことを最優先で考えていることを知り、ドイツ留学の際に自分から別れを切り出す。 その後、彼女を追ってドイツまで同行した丸山元と正式に交際をするようになる。少し、妄想にふけるところがあり、その際には目がぐるぐる回る描写がされる。

丸山 光 (まるやま みつる)

高杉久留里の同級生で、初めて会ったときからずっと彼女に好意を抱いている。実家は「スーパーまるまる」というスーパーマーケットで、自身も看板息子として家の手伝いをしている。美少年かつ物怖じしない性格のムードメーカーで、中学時代から女子の人気が高い。その一方、笑顔はどこか作り笑いのところもあり、幼なじみの香山なつ希には本心を見透かされているところが多々ある。 兄弟は全員母親が違い、しかも光本人は連れ子で血縁関係が無いという複雑な家庭環境からか、明るいキャラクターとは裏腹に自分に自信が持てずにいた。そのため、早く自立しようと中学卒業後すぐに就職しようとしたが、周囲の勧めで日中は実家のスーパーで働き、夜は定時制高校に通うこととなった。

園山 奏 (そのやま かなで)

高杉久留里の同級生で、水泳部のキャプテンも務めるボーイッシュな少女。性格は良くも悪くも体育会系で、家族も父親はトライアスロン、母親は卓球、兄は陸上競技というスポーツ一家。中学3年のときに久留里と同じクラスになり、高校も同じところに通っている。少しでも一緒にいたいという理由で生徒会書記に立候補するくらい、丸山光のことを好きだったが、高校3年生の学園祭に告白して正式に振られるまで、ずっと片思いを続けていた。

風谷 久郎 (ふうや くろう)

N大学の地理学教授。高杉温巳の恩師であり、上司でもある。まだ就職の決まっていない温巳に対して「高杉久留里を記述しろ」という課題を出す。この課題に対し、久留里との関係を弁当という形でレポート提出した温巳を買い、正式に助教として採用する。 その後は、巡検のお供として何かと温巳を振り回すこともあったが、研究の片腕としてプロジェクトの案件を任せるようになる。実は石と石垣のファンで、岩村城跡の見学では子供のようにはしゃいでいた。

香山 節子 (かやま せつこ)

旧姓は大林。香山玲子の母親で、孫のなつ希の世話を含めて香山家の家事全般を司っている女傑。外ではいつも強気の玲子も、母親の前ではグチも言えない。高杉久留里にとっては家事の師匠とも言える人物で、料理から掃除に到るまで、色々なことを教わっていた。なつ希の先生である御手洗百合子とは教育実習生時代の知り合いだったが、自身は早くに結婚して教職を断念したこともあり、彼女が定年退職するまで当時のことは隠していた。 その代わり、高杉温巳をたきつけて百合子の謝恩会を開催した。

御手洗 百合子 (みたらい ゆりこ)

東山中学校の教師で、高杉温巳、高杉美弥子、高杉久留里の担任をしていた。温巳にとっては非常勤講師時代の上司でもある。昼食はいつもふりかけご飯で、おかずの少ない生徒には自分のふりかけを分け与えていた。教師生活33年の大ベテランで、生徒たちがいじめにあってるかどうかを見逃さない観察力を備えている。 久留里たちが卒業した年に定年退職し、その謝恩会で教育実習生時代の思い出を語る。そこで、なつ希の祖母である香山節子が、かつて自信喪失した自分を励ましてくれた大林節子であることが判明した。定年退職後も、温巳や久留里のことで何かとアドバイスしてくれる。

青木 隼人 (あおき はやと)

東京の青果店の長男で芸能プロダクションにも勤めている。高杉久留里のことを小学生の頃から目をつけていて、芸能界に入るよう何度断られてもつきまとう。久留里の母親である高杉美弥子はこの青木の件について弁護士に相談し、弁護士の佐竹は未成年後見人の指名や遺言書を残すよう、彼女に勧めた。 美弥子の死後、久留里が高杉温巳のもとで暮らすようになってからも、ストーカーのように芸能界入りするようつきまとっていた。

丸山 元 (まるやま はじめ)

丸山兄とも呼ばれる。丸山光の兄だが、光とは血のつながりはない。しかし、丸山家そのものが全員母親が違うという複雑な家庭なので、気にはしていない。風谷ゼミの学生で、同じゼミにいる小坂りいなのことが好き。そして、りいなが好意を寄せている高杉温巳のことをライバル視していた。 性格はストレートで思ったことをすぐ口にするが、時には空気を読めない発言になることもある。また、複雑な家庭で育ったためか、人の心を読むのは長けている。高杉久留里もしばしば丸山兄に心を読まれており、そのつど警戒心をむき出しにしている。小坂りいなが温巳と別れてドイツに留学した際はりいなと同じ飛行機に乗り込み、そのまま日本にとんぼ返り。 その後は毎日メールを送るなどのアタックを続け、最終的に交際するまでに到った。

高遠 晶 (たかとう あきら)

高杉久留里の実の父親で養蜂を営む。高杉美哉とは中学時代の同級生で、同窓会で再会した。そのとき、高杉温巳の両親が交通事故で死んだのを二人で目撃し、ショックを受けた美哉の相談に乗っているうちに男女の仲になってしまった。高遠が妻の蜂アレルギーが原因で離婚寸前だったという事情もあった。 やがて、花を追って養蜂の旅を一緒に続けているうちに子供を授かるも、美哉は高遠のもとを離れてしまう。現在は元の妻との仲を取り戻して養蜂業を続けている。性格は善良かつ内気で、久留里の件で昼ドラ的な展開を覚悟していた温巳も拍子抜けするほどである。

場所

串原 (くしはら)

かつての岐阜県恵那郡串原村で、現在は恵那市の一部となっている。高杉温巳にとっては学生時代からフイールドワークの地として、何度となく足を運んだ地であり、地元の人たちから野菜やコンニャクなどもらうことも多々ある。高杉久留里の弁当用にと、手作業で蒟蒻芋からコンニャクを作ったこともある。 コンニャク以外にも「ヘボ」ことクロスズメバチの産地としても知られており、毎年「ヘボ祭り」という祭りも開催されている。温巳は串原で農業や養蜂を営む三好さん一家とのつきあいが長く、三好さんに頼まれて地域興しの手伝いもしたことがある。

ラオス

かつて、高杉温巳は風谷教授らとともにフィールドワークで長期滞在していた。高杉久留里が中学卒業後は進学せずに働きたいと言い出したときは、その説得も兼ねて、高杉家でラオス旅行をしたこともある。ビエンチャン近くの農村では、久留里と年の近いニイという少女と親交を深め、久留里は「クン・ノーイ(小エビ)」というあだ名ももらった。 後にニイが日本に来たとき、久留里はニイの名古屋見物を手配して、そのことをきっかけで地理学を学びたいと思うようになった。

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