羊の木

羊の木

刑期を終えて出所した元受刑者達を受け入れた魚深市を舞台にしたサスペンス漫画。曲者だらけの元犯罪者達がいつ問題を起こすのか、不安を増していく市長の鳥原秀太郎とその友人。呼応するように不穏な動きを見せる住民たち。プロジェクトにより徐々に異変を見せていく地方都市を描く。羊の木とは、コロンブスの時代にヨーロッパ人が、綿のことを羊の生る木と思っていたということを表した絵で、作中の市長室に飾られている。原作を山上たつひこが担当している。

正式名称
羊の木
ふりがな
ひつじのき
原作
作画
ジャンル
推理・ミステリー
 
サスペンス
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概要・あらすじ

刑期を終えた元受刑者を地方都市へ移住させる更生促進極秘プロジェクトの対象となった魚深市。市長の鳥原秀太郎は、江戸時代に流刑人を助け、更正させた鳥原源佐衛門の子孫であることと、助成金を目当てに市民には秘密で元受刑者11人を受け入れることにした。移住民は誰も彼も曲者ばかりで、プロジェクトを手伝う鳥原の友人月末一大塚武は気苦労が絶えない。

そんな中魚深市の奇祭「のろろ祭り」が催される。移住民の杉山勝志が酔って暴れ、宮腰一郎寺田一義鳥原智子を誘拐したりと問題が多発。それでもプロジェクトを継続させる鳥原だが、月末は移住民たちが徐々に集まり始めているのを不気味に思い始めていた。

登場人物・キャラクター

鳥原 秀太郎 (とりはら しゅうたろう)

魚深市市長。普段は温厚だが、頭に血が上ると我を忘れてしまう性格で、若いころ傷害事件を起こしたことがある。元犯罪者たちの更生を信じ、また多額の助成金を目的に更生促進プロジェクトの施行を決断、11人の元受刑者を受け入れた。しかし、実質的な作業を月末一と大塚武に任せっきりな所もあり、娘の鳥原智子から知らされるまで、町の異変に気が付かなかった。 頻繁に訪れてくる更生促進極秘プロジェクト責任者の、三田村浩を怪しく思っている。

月末 一 (つきすえ はじめ)

仏壇店いづやの店主。商店街振興組合の理事長も務めている。鳥原秀太郎の友人で、更生促進プロジェクトを手伝うことになる。気が弱い所もあるが、面倒見がいいため、元受刑者達からの信頼も厚い。理奈という腕っ節の強い一人娘がいる。

大塚 武 (おおつか たけし)

和洋食器屋大塚天宝堂の主人。その傍ら、古い町家を買い取って転入者に貸出している。鳥原秀太郎の友人で、更生促進極秘プロジェクトを手伝うことになる。常に落ち着き払っており、冷静。武術の心得を持ち、作務衣を愛用している。

三田村 浩 (みたむら ひろし)

法務省の官僚で、更生促進極秘プロジェクト責任者。市長の鳥原秀太郎が、鳥原源左衛門の子孫であることを理由に魚深市にプロジェクトを提案した。頻繁に鳥原の前に現れるため、不審に思われている。

頭陀袋 穴助 (ずだぶくろ あなすけ)

魚深市の情報誌を発行している。住民のスキャンダルを好む下世話な男。過去に鳥原秀太郎のスキャンダルを暴いたこともあり、ジャーナリストとして高い能力を持つ一方、容姿にコンプレックスを抱いている。新しく移ってきた住民たちに興味を抱き、調査をしている。

鳥原 智子 (とりはら ともこ)

市長鳥原秀太郎の娘。社交性があり、のろろ祭りではチーフ・ボランティアを務めていた、鳥原秀太郎の一人娘。のろろ祭りの日に、宮腰一郎と寺田一義によって誘拐されてしまうも、大野克実によって助けられる。それからは土壇場で助けの手を出した寺田と交際を始めるが、以降宮腰にしつこく付きまとわれることになる。

鳥原 源左衛門 (とりはら げんざえもん)

鳥原秀太郎の先祖で近隣に名の聞こえた船問屋。近海で嵐にあった流人船を救助し、罪人の更正と引き換えに無罪嘆願をした伝説が残っている一方で、一部の罪人に苦役を課したという記録も残っている。

宮腰 一郎 (みやこし いちろう)

更生促進極秘プロジェクトによって魚深市へと移住した元受刑者。妻やその家族への恐喝及び損傷の罪で服役していた。傍若無人な性格をしており、過去の罪にも反省の色がなく、魚深市でも問題を起こしていく。

大野 克実 (おおの かつみ)

更生促進極秘プロジェクトによって魚深市へと移住した元受刑者。宅配業者を装って主婦を絞殺、盗みを働き強盗殺人の罪で服役していた。鳥原智子が宮腰一郎に誘拐された時に、彼女を救出している。

武満 義人 (たけみつ よしひと)

更生促進極秘プロジェクトによって魚深市へと移住した元受刑者。強姦の罪で捕まり、出所した20分後に再び強姦を働いた常習犯。身長が異常に低く、疑われずに他人の家に上がり込む特技を持つ。後に同じ元受刑者の太田理恵子と結婚する。

寺田 一義 (てらだ かずよし)

更生促進極秘プロジェクトによって魚深市へと移住した元受刑者。両親が離婚後、施設へと入れられるも脱走。車上荒らしや万引きを繰り返していた。口数が少なく、暗い空気をまとった少年。宮腰一郎と共に鳥原智子を誘拐するも、途中で心を入れ替えて智子を助けたのをきっかけに交際をするようになる。

杉山 勝志 (すぎやま かつし)

更生促進極秘プロジェクトによって魚深市へと移住した元受刑者。入獄前はハンググライダーの教官をしており、教え子に恋心を抱き、ストーカーにまで発展、挙句ハンマーで撲殺し部屋に火を放った。魚深市に移住した後は建設業に携わっている。のろろ祭りにも参加したが、酔っぱらって暴走してしまう。

浜田 保 (はまだ たもつ)

更生促進極秘プロジェクトによって魚深市へと移住した元受刑者。大型家具店の営業部に居たが、厳しいノルマの中で成績を上げらないせいでパワハラを受けていた。ある日我慢の限界に達し、上司を刺殺して逮捕された。気が小さく、寡黙な男。

村野 孝 (むらの たかし)

更生促進極秘プロジェクトによって魚深市へと移住した元受刑者。花屋の店主だったが、経営が悪化した為に顧客から金を騙し取り、詐欺罪で捕まる。魚深市では建設業に従事している。小柄で顔にイボが多い容姿にコンプレックスを抱いている。

福井 広喜 (ふくい ひろき)

更生促進極秘プロジェクトによって魚深市へと移住した元受刑者。遊ぶ金を求めて一人暮らしの老人宅に侵入、揉み合う内に相手の頭を机の角にぶつけてしまい殺してしまった。酒乱の気があり、酔うと人の頭を掴んで、机の角に叩きつけようとする。

入江 行雄 (いりえ ゆきお)

更生促進極秘プロジェクトによって魚深市へと移住した元受刑者。凝り性な性格をしており、アルコール依存症を拗らせて覚醒剤中毒へと陥ってしまった。中毒症状は服役中に治療を終えている。口数は少なく、長いセンテンスでしゃべることはない。のろろ祭りに必要な飾りを作るためにむき出しの包丁を振るい、指を切り落としてしまう。

栗本 清美 (くりもと きよみ)

更生促進極秘プロジェクトによって魚深市へと移住した元受刑者。同棲中の男からDVを受けており、男が寝たのを見計らって一升瓶で撲殺した。執拗に叩き続けた為に、遺体は全身の骨が折れて悲惨な状態になっていた。死体を見つける能力を持つ。陰気な女性。

太田 理江子 (おおた りえこ)

更生促進極秘プロジェクトによって魚深市へと移住した元受刑者。務め先の社長に無理やり愛人にさせられ、二度中絶。その後、社長に新しい愛人が出来た事を知ると彼の娘を誘拐、刃物で何度も切りつけた。誘拐、傷害の罪で服役していた。後に同じく元受刑者の武満義人と結婚する。

場所

魚深市 (うおぶかし)

かつて海上交易で栄えた港町。鳥原秀太郎が市長を務める。現在では過疎化、高齢化の波に飲まれつつある。海上安全と豊漁を祈願した奇祭、のろろ祭りが年に一度催される。

イベント・出来事

のろろ祭り (のろろまつり)

『羊の木』に登場する祭り。巨大なオオカミウオのような姿をした怪魚のろろと、その後ろに魚を模した怪物達が町中を練り歩く、海上安全と豊漁を祈願した魚深市の奇祭。準備として、村人はタブノキに包丁の刃を埋め込んだ物を玄関に置く。深夜のろろが家に来て「もらおう」と声をかけ、住民は「刃がある」と返すと、再び「もらおう、もらおう」とのろろが言う。 それに対し、住民が「刃がある。従いますように」と返すと、のろろたちは逃げ出していく。という一連の流れを家ごとに繰り返していく。祭りの間はのろろを見てはいけないとされ、見たものは変死すると言われている。

その他キーワード

更生促進極秘プロジェクト (こうせいそくしんごくひぷろじぇくと)

『羊の木』に登場する計画。満期受刑者を地方都市に移住させ、地方の過疎化問題と出所者の雇用先問題を解決させるプロジェクト。混乱を防ぐために住民に告げず、また元受刑者同士もお互いの存在を知らされない。市長の鳥原秀太郎の先祖、鳥原源左衛門が過去に多くの罪人を救ったことを引き合いにして魚深市が選ばれた。

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