黒崎くんの言いなりになんてならない

黒崎くんの言いなりになんてならない

暗い中学時代を経て高校デビューを果たした赤羽由宇は、校内で「黒悪魔」と呼ばれ恐れられている黒崎晴人に目を付けられてしまう。そんな由宇と晴人が、最悪の出会いから少しずつ関係を深め、人間的にも成長していく姿を描いた青春ラブコメディ。「別冊フレンド」2014年2月号から2021年11月号にかけて連載された作品。2015年12月にテレビドラマ化、2016年2月に実写映画化。

正式名称
黒崎くんの言いなりになんてならない
ふりがな
くろさきくんのいいなりになんてならない
作者
ジャンル
ラブコメ
 
学園
レーベル
講談社コミックス別冊フレンド(講談社)
巻数
既刊19巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

白王子と黒悪魔

春美ヶ原学園高校に通う赤羽由宇は、高校入学を機に地味で冴(さ)えない容姿から大変身し、楽しい高校生活を送っていた。由宇は中学時代、男子に「赤地蔵」「赤羽地蔵」というあだ名を付けられていじめられており、女子の友人も一人もいなかった。そのためそんな自分を変えて、幸せな高校生活を送ることを決意する。入学してすぐのある日、由宇は突如父親が転勤になり、母親が共についていくことを知らされる。そこで急遽(きゅうきょ)由宇は、春美ヶ原学園高校の学生寮に入ることになるが、そこには「黒悪魔」と呼ばれ恐れられているクラスメイトの黒崎晴人が、副寮長として君臨していた。寮長は「白王子」と呼ばれ慕われている白河タクミだったが、タクミは晴人に学生寮の運営を一任しており、晴人のやりたい放題状態だった。そんな晴人は、由宇の入寮初日、梶祐介がゴミを指定の場所に捨てないことに激怒していた。祐介が捨てたガムが晴人の髪の毛についてしまい、止めに入ったタクミまで晴人の怒りを買ってしまう。このまま見過ごすことができない由宇は、ガムがついてしまった髪の毛を切ることで、無理やり晴人をなだめる。この行為により由宇は晴人から反抗的で生意気な女性と認識され、彼に目を付けられてしまうのだった。

あくまでオシオキ?

赤羽由宇黒崎晴人の髪を切ったことで、長髪だった晴人はショートヘアになっていた。この大きなイメージチェンジによって、校内で「黒悪魔」扱いされていた晴人の容姿のよさが知れ渡り、女子からは「黒王子」と呼ばれるようになるが、由宇は晴人を警戒していた。晴人は自分の髪の毛を切られたことで由宇を敵視しているはずだが、由宇が困っていると割って入ってきて結果的に助けられたり、生意気で気に入らないと言いながら突然キスをしたりと、何を考えているのかわからない行動ばかりしていた。そのうえ由宇は晴人から、無断で髪の毛を切った罰として、今後は自分に絶対服従するようにと理不尽な命令をされてしまう。これに反発した由宇は、寮から逃げ出して友人宅に泊まる生活を送っていたが、そんなある日、晴人から無断外泊は寮則違反で認められないと、指摘を受ける。反省した由宇は草むしりに励んだあとにお風呂に入っていると、そこになぜか晴人がやって来る。最近由宇は晴人や白河タクミとなかよさそうにしているため、ほかの女子寮生たちから反感を買っていた。そこで女子寮生たちは、由宇を騙(だま)して晴人と鉢合わせするように仕組んだのである。

トラブル☆シューター 黒崎くん

お風呂でのハプニングで赤羽由宇黒崎晴人に助けられ、女子寮生たちから嫌がらせを受けることがなくなる。そのうえ晴人は、由宇がコンプレックスに感じているすっぴんを見てもまるで気にする様子もないため、由宇は晴人のことが気になり始める。そんなある日、由宇と晴人は球技大会の実行委員に任命されるが、晴人は委員としてはまじめに職務をこなすものの、競技に出る気はまったくなかった。由宇はこれを不思議に思いつつ準備を進めていくうちに、その理由の一端を知る。晴人はスポーツ万能ながら、クラスメイトたちから晴人が恐れられていることから、自分が競技に参加するとみんなの輪を乱すと考えていたのだ。そんな晴人に対して、由宇は勢いで晴人が活躍してクラスを優勝に導いたら、どんなことでも聞いてあげると約束する。この申し出に発奮した晴人は翌日から練習に参加するようになり、球技大会でも白河タクミ率いるD組に競り勝ち優勝を飾る。その後の打ち上げも晴人は参加しようとせずに帰ろうとするが、由宇の説得によって、以前よりもクラスメイトと馴染(なじ)んでいく。

王子と悪魔の特別レッスン!

球技大会が終わって中間テストも終了するが、赤羽由宇は平均点以下の成績に終わってしまう。黒崎晴人に成績が悪かったことを知られ由宇は腹を立てるが、球技大会での約束もあって由宇は晴人に逆らえないでいた。そんな中、白河タクミから勉強会を開くことを提案され、由宇は晴人と共にタクミ、芦川芽衣子来栖タカコ梶祐介の六人で勉強会をすることになる。そこで由宇は、教師役を務める晴人の姿を見て改めて晴人を見直すが、勉強中に突然雷によって寮が停電となる。その混乱に乗じて、由宇は晴人から首筋にキスマークを付けられてしまう。晴人は、由宇がタクミと親しげにしているのが気に入らず、イタズラを仕掛けてきたのだ。しばらくして電気がつくと、由宇はこれをなんとか誤魔化そうと席を外すが、なぜかタクミが追いかけてくる。そしてタクミは、唐突に由宇をデートに誘うのだった。由宇はこの申し出に驚きつつも当日タクミと楽しく過ごすが、その途中に起きたトラブルで制服が汚れてしまう。するとタクミは替えの服をプレゼントし、さらに由宇にキスしようとする。

白王子、動く?

赤羽由宇は、以前からあこがれていた白河タクミとのデート中、キスをされそうになるが、突然割り込んできた黒崎晴人に制止され、その後無理やり乗せられた観覧車で、今度は晴人にキスをされてしまう。翌日、由宇はなぜ晴人のキスを拒めなかったのかと悩みつつ、まずはタクミからプレゼントされた洋服代を返すため、食費を抑えてお金を貯め、夏休み中もアルバイトをすることを決める。その後、洋服代の件で改めてタクミと学校で話し合っていた由宇は、そこでもタクミからキスをされそうになるが、なぜか拒んでしまう。自分の気持ちがわからなくなって混乱する由宇は、それでも授業に戻るが食費を抑えていたことから倒れてしまう。すぐに倒れたことに気づいて由宇を保健室に運んだのは晴人だった。そこで由宇は観覧車でキスをした理由を尋ねるが、晴人の口から出た言葉は、単なる嫌がらせ目的であるというものだった。この言葉に腹を立てた由宇は、そもそもの元凶である髪の毛を切ったことを清算するため、晴人の目の前で自分の髪の毛を切ってしまう。そして今後は、いっさい晴人の言うことは聞かないと宣言するのだった。

ヒミツの夜

夏休み直前、赤羽由宇芦川芽衣子から黒崎晴人が気になるので、成就に向けて協力して欲しいと頼まれた。先日プールで溺れかけた芽衣子は、晴人に助けられたことで晴人に思いを寄せるようになっていたのだ。由宇はひとまずこの申し出を了承し、寮で行なわれる花火大会と肝試しイベントに、寮生ではない芽衣子と来栖タカコを誘うことにする。そして当日、肝試しのお化け役となった由宇が医務室で着替えていると、突如何かが服の中に入り、声を上げてしまう。服の中に入ったのが野良猫であることを突き止めた晴人は、猫を解放して由宇を助ける。しかし由宇が晴人に感謝した途端、晴人は由宇が猫に引っかかれた部分を舐(な)めたり、ベッドに押し倒したりとイタズラを仕掛けてくる。結局その場は、なかなか由宇が医務室から出て来ないことを不思議に思った白河タクミがやって来たことで難を逃れる。しかし由宇は、その時にタクミが晴人に言った、中学時代のように問題を起こしたくなければ、少しは大人しくしろという言葉が気になっていた。

嵐、来たれり!

赤羽由宇は寮での肝試しイベントの直後、白河タクミから改めて告白され、交際を始めた。そして由宇は、交際を始めたことを黒崎晴人に報告し、今後は自分にちょっかいを出さないようにと釘(くぎ)をさす。しかし晴人は、由宇はタクミとは交際できないと断言する。由宇はその意味が理解できないままその場を去るが、先日タクミのキスを拒んだこともあり、その指摘を無視できなくなっていた。夏休みが始まり、由宇はアルバイトに勤(いそ)しんでいると、アルバイト仲間の小兼井が客に絡まれている姿を見て、とっさに助けに入る。これがきっかけで、由宇は小兼井が晴人と同じ中学出身であり、当時なんらかのかかわりがあったらしいことを知る。そんな中、ほとんどの寮生が帰省することになり、残っていた由宇と晴人、寮監の三人で台風対策作業を行っていると、晴人がケガを負ってしまう。そこで由宇は手当てついでに小兼井のことを尋ねるが、その途端に晴人の態度は一変する。由宇には関係ないと一蹴したうえに、また由宇にキスをしてくる。この時も結局キスを拒めなかった由宇は、こんな自分ではタクミと交際する資格はないと、彼に別れ話を切り出す。

ひと夏のアバンチュール?

赤羽由宇は、白河タクミに別れて欲しいと頼み込むが、この話はあいまいなまま終わり、由宇はタクミの誘いでタクミの別荘へ行くことになった。その後、黒崎晴人芦川芽衣子来栖タカコ梶祐介も加わった六人で行くことになり、到着後、由宇は別荘の管理人から、タクミと晴人の過去について話を聞く。子供の頃のタクミは今よりも気が弱く、友人も晴人しかいなかった。そのため、これまではタクミは晴人と二人だけで別荘に来ていたが、今年は晴人以外の友達を連れて来たことを、管理人は喜んでいたのだ。由宇はこの話に驚きつつも、管理人に勧められて別荘内のお風呂に入いっていると、晴人と鉢合わせしたうえにタクミまで現れる。結果、由宇は晴人に助けてもらう形でタクミをうまく避けることに成功するが、途中で二人の会話を聞き、タクミの本心を知って戸惑うこととなる。タクミは今回の旅行で、由宇と一線を越えるつもりでいたのだ。その後も六人は楽しい時間を過ごすが、夜になって由宇はタクミから自室に誘われる。緊張しつつも準備をする由宇だったが、夕食中に偶然見つけた新聞の切れ端に、晴人の名前を見つけて驚きつつもひとまず保管する。さらにタクミの部屋に向かう途中で、またも由宇は晴人に出くわす。

アクマが二人?

赤羽由宇は、黒崎晴人から再び白河タクミと交際することはできないと言われたことや、どうしても晴人を拒めずにいる現状を鑑みて、タクミと別れることを決意。翌朝、由宇はタクミからボートに乗ろうと誘われて応じるが、ここで衝撃の事実を知る。昨日見つけた新聞記事では、晴人が強盗事件に巻き込まれたと書かれていたが、実際は晴人に恨みを持つ男たちが黒崎家に押し入って来た暴力事件だったのだ。それでも由宇は、晴人の過去ではなく、今のタクミの気持ちが知りたいと尋ねる。するとタクミは、由宇との交際はゲーム感覚であり、最近晴人が執着している由宇を、自分が奪い取ったら楽しいだろうという程度のものだったと打ち明ける。この言葉に由宇は、これまで王子様のような人物だと思っていたタクミの悪魔的な本性を知る。

ムカシのあたし

白河タクミの別荘から一足先に寮に戻った赤羽由宇は、中学時代の同窓会に参加していた。中学時代とは別人のようになった由宇は、誰にも気づかれることなく一次会を終えるが、二次会に行かず帰ろうとした途端、当時のいじめっ子が由宇に気づいて絡んでくる。呆(あき)れた由宇がいじめっ子たちに言い返そうとした途端、偶然通りがかった黒崎晴人白河タクミが現れ、いじめっ子たちを返討ちにし、慣れない靴で足が疲れているだろうと、由宇を寮までお姫様抱っこで運んでくれる。これを機に由宇は、自らの晴人への気持ちを確かめるためにも二人に対して壁を作らず、今後も友人関係を続けることにする。しかし、これまでとまったく変わらずに接してくる晴人に対し、タクミは先日の発言を撤回して再び由宇にアプローチを始め、由宇は混乱してしまう。こうして夏休みは終わり、体育祭の季節を迎える。そこで梶祐介から寮生だけで応援団を結成すると聞いた由宇は、晴人に協力してくれたらまたなんでも言うことを聞くという条件で、再び晴人を応援団に誘う。由宇は多少強引な手段を取っても、晴人といっしょの思い出を作りたいと考えたのだ。晴人はこの申し出に呆れつつも応じるが、そんなある日、由宇は晴人が父親らしき人物といっしょにいる姿を目撃する。

体育祭チェイス!

体育祭の準備をしていたある日、黒崎晴人が突然応援団をやめると言い出す。赤羽由宇は、先日の父親が関係しているのではないかと考えるが、晴人はなにも答えずに由宇が無理やり連れ戻す形で準備を進めていく。そして体育祭の当日、由宇は晴人が参加していることに安堵(あんど)し、さらに客の中に小兼井を見つけて声をかけるが、小兼井は由宇を無視してどこかへ行ってしまう。午前の部は終わり、由宇と晴人は観戦に来ていた由宇の両親といっしょに食事をして楽しく過ごす。そして午後の部が始まる直前、忘れ物を取りに行った由宇は、柄の悪い男たちがたむろしているのを目撃する。彼らは体育祭をぶち壊すための準備をしていたのだ。由宇がどうにかしないといけないと戸惑っていると、由宇は小兼井に監視される形で倉庫に閉じ込められてしまう。先ほどの男たちは中学時代に晴人に絡んでいたがいつも返討ちにされ、小兼井はそのストレスのはけ口としていじめられていたのだ。今でもその関係は続いており、小兼井は彼らに絶対服従で、今回の体育祭をぶち壊す計画に加担させられていた。しかし由宇が小兼井に、変わる努力をするべきだと諭すと、小兼井の態度が急変。由宇こそが自分の理想の女性だと言い出し、由宇に襲い掛かる。

偽装カップル?

体育祭の最中、小兼井に襲われかけた赤羽由宇は、事態に気づいた黒崎晴人白河タクミに助けられた。由宇は、晴人が暴力でこの場を収めるのではないかと不安を覚えるが、晴人は反撃しようとはせず、教師たちが来るまでの時間稼ぎに徹すると決めていた。こうして事態は無事に収束し、体育祭が終わった直後、由宇は突然晴人に呼び出される。どうやら晴人は今回の件に責任を感じているらしく、そのお詫(わ)びとして、遊びに付き合うつもりでいたのだ。そして二人は映画館や水族館に行き、ケンカをしながらも楽しい時間を過ごす。しかし帰ろうとしていると悪天候で電車が止まっていることが判明し、仕方なく近隣のホテルに泊まることになる。

アクマでひみつ

赤羽由宇は、先日黒崎晴人とホテルで一晩いっしょに過ごしたことがきっかけで、晴人への思いを自覚する。しかしこれには大きな問題があった。由宇は以前芦川芽衣子に、晴人との関係を応援すると約束していたのだ。そこで由宇はこの約束を優先して自分の気持ちは隠し続けることにするが、そんな中、偶然出くわした白河タクミに、由宇とタクミがすでに別れたこと、今の由宇にはほかに気になる人物がいることを芽衣子にばらされてしまう。結局その場はなんとか誤魔化したものの、タクミはすでに由宇の気持ちに気づいている様子で、由宇は必死に口止めをするほかなくなってしまう。それから少し経ったある日、由宇は芽衣子を寮に招き、泊まってもらうことにする。その夜、由宇と芽衣子は晴人、タクミと四人で夕食を食べていると、晴人は突然芽衣子の目の前で由宇にキスをする。

お部屋訪問

突然、黒崎晴人赤羽由宇にキスをした理由は、単にそういう気分になったというものだった。一方、激怒した由宇は今後こんなことをしないで欲しいと晴人に直談判するが、晴人が応じる様子がないことに由宇は混乱する。その後、由宇は芦川芽衣子に、先ほどのことは単なる嫌がらせであると説明し、芽衣子からの頼みで男子フロアに潜入する。しかし、白河タクミに会ったあとに晴人の部屋を訪れると誰もおらず、出ていこうとした途端、晴人やタクミ、梶祐介が戻って来る。由宇たちはすぐに見つかってしまうが、そこに寮母までが点検に現れ、由宇はタクミと同じ布団の中に隠れてその場をやり過ごす。こうしてなんとか女子フロアに戻った由宇たちだったが、二人が寮則を破ったことに怒る晴人と、寮則違反だとわかっていながら晴人の部屋を教えたタクミは険悪になってしまう。そんな中、文化祭準備が始まって由宇たち1年D組の出し物は謎解きアトラクションゲームに決まるが、晴人は今回に限ってなぜかやる気に満ちており、自分の衣装作りを由宇に依頼する。由宇は困惑しつつもこれに応じるが、これがきっかけで由宇の気持ちが芽衣子にばれてしまう。

前進

文化祭まであと1週間、気まずい雰囲気だった赤羽由宇芦川芽衣子は、黒崎晴人白河タクミのサポートによって無事仲直りした。由宇は、もともと苦手なタイプの晴人に惹かれてしまったことを打ち明け、芽衣子もまた、晴人のことが気になっているが、異性が苦手な自分には距離を縮められないだろうと告げ、二人は以前よりも本音を話せる関係となる。一方の晴人とタクミは、険悪な雰囲気のままだった。そこで晴人はなぜ最近自分を避けるのかとタクミに尋ねるが、タクミは応じず、しばらく寮には帰らないと言い出す。そしてタクミは翌日から学校にも来なくなり、由宇が連絡をしても返信もない。そんなある日、寮にタクミが戻って来るが、タクミは晴人にだけ聞こえるように由宇を奪い返すと宣言すると、また出ていってしまうのだった。

黒悪魔と白王子

時はさかのぼる。子供の頃の白河タクミは、気が弱く容姿以外に特に秀でたところもなく、自分とは対照的な黒崎晴人にあこがれていた。晴人は、少々乱暴な性格で周囲には恐れられているものの、6歳の時に出会って以来、タクミがいじめられているといつも助けてくれる、ヒーロー的な存在だったのだ。そんな中学1年生のある日、晴人は担任に無理やり押し付けられる形で、ミサのピアノ演奏を行うことになる。黒崎家は学校に多額の寄付をしているため、担任は晴人の父親に媚(こ)びるために重要な役割を与えたのだ。これを不憫(ふびん)に思ったタクミは、自分が代わりに演奏すると申し出る。しかし課題曲は予想以上に難しく、ブランクのあるタクミは次第に追い詰められていく。ミサ当日、とうとう体調を崩したタクミを見かねた晴人は代わりに演奏を行なう。ミサは無事に終了するが、タクミはあまりの情けなさに自分自身に失望し、その日から晴人と距離を置くようになってしまうのだった。しかし半年後、晴人の自宅が襲撃される事件が起き、ケガをした晴人は入院することになる。心配したタクミがお見舞いに行くと、晴人は以前と変わらぬ態度で接してくれ、タクミは感激する。これがきっかけとなってタクミは、たとえ対等な関係にはなれなくとも、今後自分はずっと晴人をサポートしていこうと決意するのだった。

黒悪魔と白王子2

文化祭当日となり、1年D組の謎解きアトラクションゲーム「軍の隠した謎を追え!!」は、赤羽由宇が制作した黒崎晴人の軍服衣装も好評で、人気を集めていた。そんな中、由宇は白河タクミとお化け屋敷に入ることになる。由宇はそこで、タクミが本当はお化けが苦手なこと、これまで不安を感じている時はいつも晴人が守ってくれたことを知る。そして自分は晴人と対等になることは難しいが、先日由宇と芦川芽衣子が仲直りするのを見て、自分も考えを改めたことを伝えられる。タクミは、由宇が芽衣子に正面からぶつかっていく姿に勇気をもらい、今後は自分も晴人に対してそうありたいと決意したのだ。そんなタクミから、自分のピアノ演奏を聞きに来て欲しいと頼まれた由宇だったが、晴人には自分から離れるなと命令され、自分と晴人の腕を手錠でつながれてしまう。しかし由宇はこんな晴人の横暴な振る舞いを楽しんでいた。そんな中、とうとうタクミの演奏時間となる。そこでタクミは、一人の女性に向けて演奏すると宣言。由宇は、これをタクミからの告白ととらえ、ドギマギするのだった。

雪上のアクマ

文化祭のカップル仮装コンテストの受付が始まり、赤羽由宇黒崎晴人白河タクミに誘われたものの、最終的には晴人と参加することに決める。そして後夜祭で由宇はついに晴人に告白するものの、なぜか返事は保留にされてしまい、そのまま寮生限定スキー合宿に向かうこととなる。このスキー合宿でも晴人とタクミは卓越したスキーの腕前を見せて寮生たちを魅了するが、今回が初体験の由宇はついていくのが精いっぱいだった。それでも由宇は上級者コースへ向かう晴人を追いかけるが、いっしょに乗ったリフトで由宇は不注意から晴人のネックウォーマーを落としてしまう。安全を優先した晴人に、拾いに行かなくていいと言われたものの、紛失を恐れた由宇は取りに行ってしまう。そして道に迷った末に、転んでスキー板を割ってしまうのだった。結局その事態に気づいた晴人が、タクミの協力のもと救助にやって来るが、ここで晴人は突然由宇からの告白の返事をする。それは由宇のことが嫌いなので、もう自分には近づかないでくれという、衝撃的な言葉だった。

アクマで彼氏

スキー合宿での一件がきっかけで、赤羽由宇黒崎晴人と交際を始めた。それは、あまりにも危なっかしい由宇がまた危険な目に遭わないように、晴人が監視するという意味合いのものだったが、それでも由宇は嬉しく思っていた。冬休みとなり由宇たち寮生はクリスマス会を開くが、由宇には悩みがあった。由宇は冬休みに帰省する予定だったが、両親が急遽旅行に行くことになり、年末年始の寮の閉鎖期間中、行くところがなくなってしまったのだ。そのことを知った晴人は、由宇に年末年始は実家に来ないかと誘う。こうして由宇は年末年始のあいだ、晴人と晴人の父親の三人で黒崎家で過ごすことになる。しかし晴人の父親は、由宇のことを快く思っていない様子だった。晴人に帰省できないことを話したことでひとまず泊めてもらえはしたものの、その冷たい態度に由宇は委縮していた。しかし翌日、偶然晴人の父親と話す機会を得た由宇は、意外な事実を知る。晴人の父親は晴人同様に誰にでも気難しい態度で接しているが、晴人に対して愛情がないわけではなく、実際は晴人の暮らしを非常に気にしていたのだ。

遠キョリ交際

年末年始に黒崎家で過ごしたことで、黒崎晴人と晴人の父親の関係は大きく改善される。一方赤羽由宇は、晴人との関係が晴人の父親に認めてもらえたうえに、晴人からネックレスをプレゼントされ大喜びしていた。しかし二人が寮に戻ると、学生寮の閉鎖期間中に設備上の問題が多数見つかり、急遽大規模工事が行われることになる。こうして寮生たちは新学期までのあいだ、男女別に用意された別の建物で暮らすことになる。これによって由宇と晴人はいっしょに過ごす時間が激減してしまう。また二人は公認の関係となったものの、晴人の父親からは、清い交際をするようにと念を押されてしまう。それでも晴人に会いたい一心の由宇は、男子たちが過ごしている旧学生寮に遊びに行くが、そこで晴人を待つあいだ、白河タクミと二人きりで過ごしていたことを晴人に叱られてしまう。晴人の言葉に反省した由宇は、晴人の言いつけどおり晴人以外の異性とは距離を置くことにし、バレンタインに向けた準備を始めるのだった。

バレンタインパニック

バレンタイン当日、赤羽由宇黒崎晴人へのチョコレートを用意したが、ぎりぎりまで準備していたため学校に遅刻してしまう。そのうえ、窓からチョコレートを落としてしまい、白河タクミに協力してもらってようやく見つけた時には放課後になっていた。それでもあきらめきれない由宇は、晴人にチョコレートを渡そうとしている女子たちと共に、現在男子寮生たちが暮らしている旧学生寮に向かう。しかしなぜか晴人は冷たく、チョコレートの受け取りを拒否されてしまう。由宇はこれに深いショックを受けて帰宅するが、その理由を聞き出そうと考えていた中、突如晴人から電話がかかってくる。今晴人は由宇の両親と共に、黒崎家が経営する「帝黒(ていこく)ホテル」にいるのだという。由宇はわけもわからぬまま帝黒ホテルへ向かうが、そこで先ほど晴人が冷たかった理由を知る。晴人は女性からのあまりの人気で、多くの男性から恨みを買っていたのだ。もし由宇がそんな自分の恋人だと知られたら、由宇の身に危険が及ぶと考え、外ではあえて冷たくすることで由宇を守ろうとしていたのだ。晴人の気遣いを知った由宇は、改めてチョコレートを渡して二人の絆(きずな)はまた一つ深まる。

天使級清楚美女

4月を迎え、赤羽由宇たちは高校2年生に進級した。また寮の改修工事も終わり、たくさんの1年生たちが入寮して来る。しかし由宇は、黒崎晴人とは違うクラスになり、同じクラスになった相田ミナもまた晴人に思いを寄せていることを知る。だが由宇はそんなミナにライバル宣言することもできず、自分にも思い人がいるというあいまいな言葉を口にしてしまう。そしてミナは、ほかの生徒たちよりも少し遅れる形で入寮し、寮でも学校でも晴人に熱烈なアプローチを繰り返し、由宇は焦り始める。そこで由宇は、ほかの生徒たちには見つからない方法で会おうと晴人に提案し、その日二人はこっそり非常階段で会うことに成功。そこで由宇は、晴人もまた秘密の交際をしている現状を物足りないと感じ始めていることを知り、嬉しく思うのだった。

押しても引いても

相田ミナが入寮してしばらく経ったある日、ミナの部屋のカードキーが盗まれた挙句壊される事件が発生する。心配した赤羽由宇は寮監への相談を勧めるが、ミナはこういったことに慣れているらしく、この件は他言しないようにと念を押されてしまう。その後、破損したカードキーの一部を由宇が持っていたことを黒崎晴人に知られてしまうが、それでも由宇は約束を守り、ミナの名前を出さずにいた。そんなある日、今度は由宇とミナが入浴中、脱衣所に閉じ込められる事件が発生する。事態に気づいた晴人と白河タクミが助けに来たことで二人は無事脱出するが、この時現場に残されていたメモから、犯人は1年の男子寮生であることが判明する。一方その頃、梶祐介は新寮生の1年生、氷野に急速に距離を縮められていた。祐介は戸惑いながらも嬉しく思っていたが、これは氷野の罠(わな)だった。氷野はとある計画のために利用できる駒を集めており、祐介に利用価値があると考えて近づいてきたのだ。そんな氷野の策略にはまった祐介は、ほかの女子から無理やりキスされている姿を写真に撮られてしまう。そして祐介は、この写真を恋人の来栖タカコには見せないという条件で、氷野に従うことになってしまう。

黒幕VS黒悪魔

相田ミナを付け狙う人物を突き止められないまま、体育祭の準備が進められていた。そんなある日、赤羽由宇白河タクミを押し倒してしまった場面を黒崎晴人に目撃され、晴人とケンカになって仲直りできないまま体育祭当日を迎える。そんな中、由宇は久しぶりに梶祐介と話す機会を得るが、祐介は上の空だった。さらに話をしていると、突如二人めがけて看板が倒れてくる。幸い二人とも無事だったものの、祐介はおかしなことを口走りながら気を失ってしまう。その騒動を知った晴人が由宇を心配してやって来たことで二人は仲直りする。そして現場検証をした白河タクミは、何者かが故意に看板を倒し、二人がケガするように仕組んでいたことに気づく。これによって晴人とタクミは、祐介が何か知っているのではないかと考え、体育祭が終わってからずっと寮に戻らず、実家に逃げている祐介に会いに行く。すると祐介は氷野に脅されていることを晴人とタクミに打ち明けるが、一方その頃、由宇は氷野から呼び出しを受けていた。

アクマと夏祭り

先日の一件から、一連の事件の首謀者は氷野だと判明する。しかし彼の真の目的は、相田ミナを攻撃することではなく、黒崎晴人と親しい人物全員に嫌がらせをして、晴人を孤立させることだった。氷野は晴人に対して歪(ゆが)んだあこがれを抱いており、晴人にふさわしくない人物は全員気に入らず、晴人から引き離そうと考えていたのだ。1学期が終わり、赤羽由宇たちは寮生みんなで夏祭りに行くが、またも氷野の手先が現れる。ここは危険と判断した晴人は由宇をタクミに任せ、一人で彼らを相手にするのだった。その後、無事にその場を収めた晴人は近くで待っているミナと合流し、改めて告白を受けるが断る。ミナは晴人の理想の女性になるためならなんでもすると言うのだが、晴人はミナがそんな小さな枠に収まるような女性には思えなかった。一方その頃、由宇は晴人と曖昧な関係が続いていることをタクミに相談していた。まだ由宇を思い続けているタクミは、今は焦らずにじっくり関係を深めていけばいいとアドバイスを送る。しかしその場に氷野が現れ、タクミに絡んでくるが、すでに氷野の素性をタクミは調べ上げていた。氷野は新入生として春美ヶ原学園高校にやって来たが、実は年齢は由宇と同じで、かつては晴人の同級生だったのだ。

Back to 赤地蔵

夏祭りで赤羽由宇は、氷野に突き飛ばされて崖から落ち、ケガこそしなかったものの、落下のショックで記憶喪失になっていた。春美ヶ原学園高校に入学してからの記憶は完全に消えており、そのうえに高校デビューを目指してイメージチェンジする前の「赤地蔵」と呼ばれていた頃の自分に戻っていた。こうして、中学時代の気弱で引っ込み思案な性格になってしまった由宇は、黒崎晴人白河タクミを見ても誰だかわからず、特に晴人の横暴な態度には困惑するばかりだった。そんな由宇に、晴人はこれまでどおり接する。晴人は記憶を失った程度では人間性は変わらないのだから、こちらも態度を変える必要ないと考えていたのだ。しかしタクミはそうは思えず、現在の由宇の気持ちを最優先に行動すべきだと考えていた。こうして記憶が戻らないまま由宇は退院するが、そんな由宇に両親は晴人といっしょに一度実家に戻ろうと提案する。

オトナの関係?

赤羽由宇は、記憶喪失になる前に黒崎晴人と交際していたことを知り、もっと晴人とコミュニケーションを取ろうとする。晴人に対しては依然として苦手意識があるが、なぜかときめきを感じてしまうこともあり、まずはもう一度距離を縮めようと考えていた。そんな由宇は実家で晴人と共に楽しい一日を過ごすが、翌朝目を覚ますと、心配した白河タクミ相田ミナが遊びにやって来る。そして由宇は、タクミからいっしょにドライブに行かないかと誘われ、由宇は晴人とミナも交えた四人なら構わないと応じるが、タクミは強引に由宇を連れ出し、改めて告白する。由宇は記憶を失ってからもずっと親切に接してくれるタクミに好意を抱きつつも、今自分が傍にいたいのは晴人だと感じていた。さらにそこに晴人から電話がかかってくる。その電話はすぐに切れるが、晴人は切羽詰まった感じで誰かに追われている様子だった。晴人の危機を見過ごせない由宇は、タクミに自分の気持ちを伝えたうえで、いっしょに晴人を助けに向かう。

キスよりも近く

赤羽由宇黒崎晴人を助けたことがきっかけで、ついに記憶を取り戻した。これによって由宇と晴人の関係も記憶喪失前よりさらに深まり、二人は晴人の部屋でいい雰囲気になるが、そこへ突如晴人の兄、黒崎桜がやって来る。桜は海外で医者として働いていたが、急遽帰国したことで3か月間だけ春美ヶ原学園高校と、学生寮の校医を務めることになったのだ。しかし晴人は、この状況を怪しんでいた。桜は単なる仕事ではなく、自分を監視するためにやって来たのではないかと考えていたのだ。2学期が始まり、新たな問題が発生する。中間テストで一教科でも赤点を取った場合、修学旅行には行かせてもらえず、代わりに勉強合宿に参加させられることとなる。英語が極端に苦手な由宇にとっては、これは大問題だった。そこで由宇は猛勉強を決意するが、桜から晴人と使うようにとコンドームを手渡され、困惑する。また晴人もそういったことを期待しているらしいと知った由宇は、晴人とのセックスを意識するあまり、勉強にまったく身が入らなくなってしまう。

アクマでマイペース

赤羽由宇黒崎晴人は、黒崎桜に騙されてラブホテルに入ったが、由宇の意向を尊重した結果、今は無理に関係を待たないことにした。そして二人は、これまでどおりキスまでの関係を続けることにし、中間テストもどうにかクリアした由宇は、無事に修学旅行に参加する。こうして始まったカナダの修学旅行は順調に進むが、由宇たちがナイアガラの滝で観光していると、見知らぬ女性に声をかけられる。彼女は桜の恋人、リサで、晴人を桜とカンちがいして話しかけてきたのだ。すぐに誤解は解けたものの、晴人とリサは妙に親しげな雰囲気で、由宇は嫉妬してしまうのだった。そんな中、由宇たちが夕食を取っていると、リサからの連絡を受けた晴人は、夜間外出が禁じられているにもかかわらず出ていってしまう。二人が何をしているのか気になった由宇は、ホテル内のバーで飲んでいた桜を見つけて話を聞く。桜とリサはすでに10年以上の付き合いでリサは結婚を考えていたが、自分に自信が持てない桜は不安になって日本に逃げ出し、春美ヶ原学園高校の臨時校医となっていたのだ。そんな桜を放っておけない由宇は、これからリサに会ってきちんと向き合うべきだと進言する。

黒天使降臨?

修学旅行中、赤羽由宇黒崎晴人から初めてはっきりと好きだと言われた。由宇はこの言葉に喜びつつ、もう一度旅行中に晴人から好きと言わせるために奮起するのだった。こうしてお待ちかねの自由行動の日になるが、度重なる問題行動のせいで、由宇たちの班は先生の監視下に置かれてしまう。それでも由宇たちはどうにか先生の追跡を巻いて、モントリオール・ノートルダム大聖堂を観光する。このノートルダム大聖堂のあるケベック州は、晴人の父親にとっても大切な場所らしく、晴人も関心を持つようになった場所なのだという。由宇はその話を聞きながら、すっかり晴人の親子関係が修復されたことに喜んでいると、突如晴人から婚約して欲しいと切り出される。そして時を同じくして晴人の父親から呼び出され、二人は修学旅行中でありながら、晴人の父親と会うことになる。こうして晴人の父親と共に食事していると、由宇はそこで衝撃の事実を聞かされる。建築に関心がある晴人は専門的に学ぶため留学を考えており、志望校と春美ヶ原学園高校が提携したため、来年すぐに留学することを決意したのだという。突然の展開に由宇は驚くが、晴人は由宇もその留学先に連れて行くことを決めていた。

メディアミックス

実写劇場版

2016年2月、本作『黒崎くんの言いなりになんてならない』の実写劇場版『黒崎くんの言いなりになんてならない』が公開された。監督は月川翔、脚本は松田裕子が務めている。キャストは赤羽由宇役を小松菜奈、黒崎晴人役を中島健人(Sexy Zone)、白河タクミ役を千葉雄大が演じている。

テレビドラマ

2015年12月、本作『黒崎くんの言いなりになんてならない』のテレビドラマ版『黒崎くんの言いなりになんてならない』が日本テレビ系で放送された。テレビドラマ版は実写劇場版『黒崎くんの言いなりになんてならない』と連動しており、実写劇場版の前日譚(たん)にあたる。演出は河合勇人、脚本は松田裕子が務めている。キャストは赤羽由宇役を小松菜奈、黒崎晴人役を中島健人(Sexy Zone)、白河タクミ役を千葉雄大が演じている。

登場人物・キャラクター

赤羽 由宇 (あかばね ゆう)

春美ヶ原学園高校1年D組に在籍する女子。のちに2年B組に進級する。春美ヶ原学園高校学生寮の寮生でもある。明るいピンク色の髪をストレートセミロングヘアにしている。気が強く派手な見た目ながら、中学卒業までは眼鏡をかけた非常に地味な印象で、一部の男子からはこの容姿をからかわれ「赤地蔵」「赤羽地蔵」などと呼ばれていじめられていた。当時女子の友達もいなかったため淋(さび)しい学校生活を送っており、この現状を変えるために、大変身して高校デビューした経緯がある。現在はこの反動からか、周囲の反感を買っても自分の意見をしっかり言おうという気持ちが強い。そのためこれまで性格も気弱で臆病だったが、現在の気が強く歯に衣(きぬ)着せぬ性格に変わった。高校入学後は困っている人を放っておけない姉御肌として知られているが、しっかりしているようで抜けたところがあり、黒崎晴人からはその注意力が散漫なことを心配されている。春美ヶ原学園高校には実家から通う予定で進学したが、入学してすぐ父親が転勤となり、母親がついて行くことになったため高校の学生寮に入寮することになる。これをきっかけに、高校で「黒悪魔」とささやかれている晴人と出会い、その横暴な態度に憤慨して衝突を繰り返すようになる。しかし、何度もぶつかり合ううちに理解を深め、お互いかけがえのない存在になっていく。梶祐介からは「赤っちょ」というあだ名で呼ばれており、小兼井からは正義感の強い高潔な人物であるという意味で「ジャンヌ・ダルク」と呼ばれることがある。

黒崎 晴人 (くろさき はると)

春美ヶ原学園高校1年D組に在籍する男子。のちに2年A組に進級する。春美ヶ原学園高校学生寮の寮生で、1年次は副寮長、2年次は寮長を務めた。少し癖のある黒髪をショートヘアにして、前髪を目が隠れそうなほど伸ばしている。長身で近寄りがたい雰囲気を漂わせたイケメン。人に髪の毛を触られるのが苦手で、ヘアカットは幼なじみの白河タクミに任せている。しかし、春美ヶ原学園高校入学当初は長らくタクミにカットを頼めていなかったため、肩につくほどまでの長さになっていた。そのため入学時はその容姿のよさが知られておらず、ただただ恐ろしい人物として「黒悪魔」と呼ばれていたが、髪を切ってからは美形であることが知れ渡って「黒王子」と呼ばれるようになり、女子から大人気となった。タクミからは「黒」と呼ばれている。成績優秀でスポーツ万能、容姿端麗なのに加え、自分にも他人にも厳しい堅物で規則を遵守する。実は面倒見がよく、困っている人たちを放っておけない心優しい一面があるが、ぶっきらぼうで言葉足らずなことから、あまり知られていない。ホテルなどを経営する黒崎家のお坊ちゃまで、タクミとは6歳からの付き合いで非常に仲がいい。しかし、その性格から誤解されやすく恨みを買いやすいため、春美ヶ原学園高校に来るまではタクミ以外の友人はいなかった。高校に入学してすぐのある日、ガムをポイ捨てした梶祐介を注意していたところ、祐介をかばうために割って入ってきた赤羽由宇に関心を持つようになる。当初は由宇のことを自分に歯向かう希有な存在だと認識し、飼い犬をしつけるような感覚で接していた。しかし、次第にその真摯な人柄に触れ、由宇に思いを寄せるようになる。

白河 タクミ (しらかわ たくみ)

春美ヶ原学園高校1年C組に在籍する男子。のちに2年B組に進級する。春美ヶ原学園高校学生寮の寮生で、1年次は寮長、2年次は副寮長を務めた。フランス人の祖父を持つクォーターで、ふんわりとした金髪ショートヘアの甘いマスクをしている。その容姿に加え、勉強もスポーツも幼なじみの黒崎晴人と競い合うほど優秀な成績を収めている。そのうえ温和で誰にでも親切な人柄から「白王子」の愛称で親しまれ、慕われている。しかし、これらはすべて努力で作り上げたもので、幼い頃は非常に気が弱く泣き虫で、日本語を話すこともできなかった。6歳の頃、カナダから日本に移住するもフランス語しか話せず孤立していた際に、晴人に助けられて友人となる。それ以来、晴人にあこがれるようになり、彼に追いつき追い越そうと努力を重ねた結果、現在の姿になった。しかし、白河タクミ自身は今でも晴人にはかなわないと感じており、一見余裕がある態度ながらも、実際は自分に自信を持てないでいる。そのため晴人を友人として大切に思いつつも、強いコンプレックスを抱えている。また女性から人気があるものの、それは自分が親切な対応をしているからであり、やめたらみんな離れていくのだろうと、冷めた目で見ている。そんな高校1年生の春、晴人にも臆さない赤羽由宇に関心を持ち、次第に思いを寄せるようになった。学生寮の寮生として生活するうちに少しずつ周囲に心を開き、本来の少し意地悪だったり、いい加減だったりする一面も見せられるようになっていく。その結果、梶祐介には「白っちょ」とあだ名で呼ばれるまでの関係になった。しかし今でもお化けや高い場所、飼い犬以外の動物が苦手で、平気そうに振る舞ってはいるものの、由宇にはすべてばれている。

芦川 芽衣子 (あしかわ めいこ)

春美ヶ原学園高校1年D組に在籍する女子。赤羽由宇の友人で、のちに2年A組に進級する。落ち着いた性格で、額を見せたボブヘアにしている。実は男子が苦手で、男子と対峙(たいじ)するとなかなか思うようにしゃべることができない。由宇と来栖タカコとは入学してすぐに親しくなるが、しばらく由宇は白河タクミに思いを寄せており、黒崎晴人のことは苦手なのだと認識していた。そのため高校1年生の夏、晴人に思いを寄せるようになってからは、由宇に協力して欲しいと頼んでいた。しかし自分の性格では、晴人とうまくコミュニケーションを取るのは難しいと自覚する中、由宇もまた晴人が好きなのだと打ち明けられてからは、応援する側に回った。のちに他校の男子と交際するが、自分の意見をうまく言えないことが災いしてうまくいかず、最終的には別れてしまう。春美ヶ原学園高校学生寮の寮生ではないが、由宇や晴人が寮にいることから、しょっちゅう遊びに来ている。小兼井にひそかに思いを寄せられているが、彼のことを女性とカンちがいしているため、本気と受け取らずにふってしまった。

来栖 タカコ (くるす たかこ)

春美ヶ原学園高校1年D組に在籍する女子。赤羽由宇の友人で、のちに2年A組に進級する。ロングウェーブヘアの糸目で、いつも目を閉じているように見える。また唇が厚く、タコの唇のように見えることから、周囲には「タコちゃん」と呼ばれている。マイペースで何事にも動じない性格をしている。そのため何を考えているのかわからないところがあるが、実は恋愛経験豊富。高校1年生の時に梶祐介と交際を始める。春美ヶ原学園高校学生寮の寮生ではないが、由宇や晴人が寮にいることから、しょっちゅう遊びに来ている。

梶 祐介 (かじ ゆうすけ)

春美ヶ原学園高校に通う1年生の男子。のちに2年B組に進級する。春美ヶ原学園高校学生寮の寮生でもある。小柄な体型のかわいらしい顔立ちで、ショートヘアにしている。明るく人懐っこい性格で、寮生たちのムードメーカー的な存在。だが、ややお調子者なところがあり、黒崎晴人や白河タクミには叱られたり、フォローされたりすることも多い。入寮当初は自分を強く見せようと粋がっており、ガムをポイ捨てしていた。しかし晴人に即座に見つかり、こっぴどく叱られてからは晴人にあこがれ、絶対服従するようになった。タクミに対しては、知り合った当初はほかの生徒のように王子様扱いしていたが、タクミの本性を知ってからもこれを受け入れ、以前よりも親しくなる。来栖タカコとは恋人同士で、1年生の頃に思いを寄せるようになり、すぐに交際を開始した。

小兼井 (こがねい)

赤羽由宇とは別の高校1年生の男子。眼鏡をかけた細身の体型で、前髪を両目が隠れそうなほど伸ばしたストレートショートヘアにしている。気が弱く思い込みの激しい性格で、自分の非を他人のせいにしてしまいがち。黒崎晴人とは同じ中学校出身。晴人は不良生徒たちに絡まれると返討ちにしているが、小兼井はその不良生徒たちから、ストレスのはけ口としていじめに遭う日々を送っていた。高校進学後もこの状態は変わらず、不良生徒たちが春美ヶ原学園高校体育祭をぶち壊しにするための計画に加担させられた。しかしこの時、由宇から自分を変える努力はいつでも始められると諭されたことから改心。不良生徒たちと縁を切って春美ヶ原学園高校に転入し、新しい生活を始めた。中性的な顔立ちと細身の体型から、文化祭で女装した際には自画自賛するほどかわいらしい姿になった。この時ひそかに思いを寄せていた芦川芽衣子に告白したものの、女装のクオリティが高すぎて女性とカンちがいされてしまい、本気だと受け止めてもらえず成就しなかった。

相田 ミナ (あいだ みな)

春美ヶ原学園高校2年B組に在籍する女子。赤羽由宇とは2年生になって親しくなった。2年生から春美ヶ原学園高校学生寮に途中入寮した。清楚(せいそ)で儚(はかな)げな雰囲気を漂わせた美少女で、黒のストレートロングヘアを姫カットにしている。その美しさと物腰の柔らかさ、品のよさで男子から非常に人気がある。しかし、これは男子にモテるための偽の人格で、実際は思ったことをはっきりという遠慮のない意地悪な性格をしている。1年生の頃から黒崎晴人に思いを寄せており、一度ふられているが、2年生で学生寮に入ってから再びアプローチを始めた。そのため当初は由宇をライバル視しており、早い段階で相田ミナ自身の本性を見せてライバル宣言した。しかし、学校や寮でいっしょに過ごすうちに由宇の人柄を知り、次第に心を開いていく。そして2年生の夏祭りで晴人に改めて告白してふられたが、由宇を友人と認めて非常に親しくなった。つい本性を隠して猫をかぶってしまうところが、白河タクミと似ているために同族嫌悪しているが、なんだかんだで仲がいい。

氷野 (ひの)

春美ヶ原学園高校に通う1年生の男子。赤羽由宇とは2年生になって知り合った。春美ヶ原学園高校学生寮の寮生でもある。刈り上げマッシュショートヘアで、長身の中性的な顔立ちをしている。そのため、入学当初は黒崎晴人、白河タクミに次ぐ「ニュー王子」として話題になった。母親はいないが、父親は地元の名士で、年の離れた兄がいるという晴人に似た境遇ながら晴人と違って、つねに教室の隅にいる目立たない存在だった。そのため、晴人に対して歪んだ愛情を抱いており、入寮してからは晴人が孤立するように、晴人の周辺人物に嫌がらせを繰り返すようになる。しかしこれは、晴人には孤独が似合うと考えているためである。非常に身体が弱く、体調を崩しやすいが、甘いものを口にすると落ち着くため、キャンディなどを携帯している。

黒崎 桜 (くろさき さくら)

黒崎晴人の兄。医師を務める若い男性で、晴人同様、父親譲りの黒髪と切れ長の目で、近寄りがたい雰囲気を漂わせたイケメン。肩まで伸ばしたセミロングヘアを一つに結んでいる。一見軽薄な印象で自由気ままに振る舞っているが、実は臆病で自分に自信が持てないでいる。それゆえに父親とも晴人とも向き合わずに育ち、逃げるようにアメリカに留学して就職した。その過程で恋人のリサと出会い結婚を考えるようになるが、自分のようないい加減な人間ではリサを幸せにできないのではないかと悩むあまり、赤羽由宇たちが高校2年生の夏、リサのもとから突然逃げ出した。そして父親の伝手(つて)で、春美ヶ原学園高校と春美ヶ原学園高校学生寮の臨時校医として働くことになった。由宇と帰国してすぐに実家で出会ったために晴人との関係を知っており、二人の関係が進展するようにちょっかいを出しながらも温かく見守っている。しかし、高校2年生の秋の修学旅行で由宇から諭される形で、自らもリサと向き合うことを決意。由宇から晴人の兄という意味で、ひそかに「黒兄」と呼ばれている。

書誌情報

黒崎くんの言いなりになんてならない 19巻 講談社〈講談社コミックス別冊フレンド〉

第1巻

(2014-06-13発行、 978-4063419269)

第2巻

(2014-09-12発行、 978-4063419412)

第3巻

(2015-01-13発行、 978-4063419627)

第4巻

(2015-05-13発行、 978-4063419818)

第5巻

(2015-11-13発行、 978-4063920154)

第6巻

(2016-02-12発行、 978-4063920277)

第7巻

(2016-07-13発行、 978-4063920468)

第8巻

(2016-11-11発行、 978-4063920871)

第9巻

(2017-04-13発行、 978-4063921106)

第10巻

(2017-09-13発行、 978-4063921298)

第11巻

(2018-02-13発行、 978-4065109151)

第12巻

(2018-07-13発行、 978-4065120361)

第13巻

(2019-01-11発行、 978-4065142257)

第14巻

(2019-06-13発行、 978-4065160343)

第15巻

(2019-11-13発行、 978-4065176351)

第16巻

(2020-04-13発行、 978-4065191378)

第17巻

(2020-10-13発行、 978-4065210833)

第18巻

(2021-03-12発行、 978-4065226100)

第19巻

(2021-11-12発行、 978-4065250044)

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