銀の花びら

銀の花びら

バイオリン工房の娘として育ったリリーは、町を襲う盗賊団・赤いまぼろし隊の隊長・赤いしし王の娘・マミーだった。かつて小鳥城の城主だった赤いしし王は復讐に囚われ、城を奪還すべく小鳥城のクジャク王子と花園城のチューリップ姫の結婚を機に陰謀をめぐらす。リリーの義兄・ピーターは銀の騎士と名乗ってリリーを連れ戻そうと立ち上がった。出生の秘密から数奇な運命に翻弄されるリリーたちのファンタジーロマン。原作は緑川圭子だが、クレジット表記されていないことが多い。

正式名称
銀の花びら
ふりがな
ぎんのはなびら
原作者
緑川圭子
作者
ジャンル
ファンタジー
関連商品
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概要・あらすじ

バイオリン工房の娘として育った踊りの大好きなリリーは、バイオリンの上手な兄・ピーターと平和に暮らしていた。だが彼女は盗賊団・赤いまぼろし隊の隊長・赤いしし王の娘・マリーだった。しし王まぼろし城で死んだはずの母・きさきと再会したリリーは、母とともにしし王を改心させることを決意する。

登場人物・キャラクター

マミー

ゆるいウェーブのかかった金髪の少女で、左腕に4つの黒子が十字に並んでいる。バイオリン工房の娘で、兄・ピーターのバイオリンの伴奏で踊るのが大好き。実は赤いしし王の娘・マミーだが、幼い頃に小鳥城から逃げた混乱の最中にはぐれて村娘として育てられた。盗賊団の赤いまぼろし隊との取引に向かったピーターに同行。 そのときに腕の黒子を見た赤いまぼろし隊の老女サルヤに、母が生きていると聞かされて連れ去られる。連れてこられたまぼろし城で、病床にあった母のきさきと会う。腕の4つの黒子がマミーの証拠で、生まれたばかりの頃の肖像画にも描かれていた。その後、赤いしし王の命令でチューリップ姫として小鳥城に嫁入りをしたが、発覚して火あぶりにされかける。 再びまぼろし城に連れ戻され、しし王が父だと知らされた。きさきからしし王が小鳥城を奪われて復讐に囚われていると知らされ、きさきとともに改心させるために城に留まることにした。後継ぎは男でないといけないため男装し、留学から帰ってきたマミー王子として城の軍勢の先頭に立つ。 だが、次の王座を狙うしし王の弟・黒博士に命を狙われ始める。ついに姫だと暴露され、王を欺いた罪で死刑になるところを、侍女のチマが入手した薬で仮死状態になる。外に出たがっていたことを知る小姓により、霊安室から小舟に乗せられ城外に流された。そこをジプシーに救われて、宝の島に向かったピーターたちを追って海に出る。 だが黒博士にクジャク王子とともに捕まり、新まぼろし城となった小鳥城に連れ戻される。謀叛した黒博士の平定にやってきたしし王の前に人質として利用され、しし王のために城壁から堀に身を投げた。だが、あえなく黒博士に奪還されて、しし王とともに監禁された。 黒博士の息子マヌーケが父の乱暴なやり方を嫌悪し、二人を脱出させる。ピーターが自分を探しに新まぼろし城に向かったと知り、再び城へ。城の近くの森でピーターと再会するが、しし王がクジャク王子を助けて黒博士に囚われたため城内にもぐり込む。しし王を探すが、炎上する城の中で煙にまかれて気を失う。 気がついたとき、すべては終わっていた。平和の訪れを確認し、ピーターとともに町へ戻る。最後までピーターにしし王の娘であることは隠した。

ピーター

バイオリン工房の息子でリリーの兄。金髪でバイオリンがうまい。正義感が強く、村の富豪が盗賊団・赤いまぼろし隊に脅されていると知って、取引役を申し出る。赤いまぼろし隊にさらわれたリリーを救い出すため、マスクの銀の騎士としてまぼろし城に忍び込む。小鳥城に嫁入りのために向かったリリーと誤認して、囚われていたチューリップ姫を救出。 再度、城に突入したが、今度は捕縛され、しし王から小鳥城にある銀の小箱と引き換えにリリーを返すという約束をさせられる。小箱の入手に失敗したが、チューリップ姫が小鳥城に戻ったため、罪を赦される。リリーがまぼろし城に戻されたと知り、クジャク王子の部隊に参加。 マミー王子と一戦交えたが、あくまでもリリーではなくマミーだと言われて、その場は別れた。スキを見てクジャク王子とともにまぼろし城に乗り込むが、仮死状態のリリーときさきを目撃、二人が死んだと誤認した。小鳥城がしし王に奪われて、銀の小箱に収められた地図と鍵で手に入る宝を軍資金にするため海に出る。 追ってきた黒博士との海戦で船は沈み、チマと二人で無人島に流れ着く。ようやく、リリーを送ってきたジプシーたちの船に救出された。戻ってきたときには、謀叛を起こした黒博士が、しし王をリリーとともに監禁。救出のため城へと向かう。 途中で、黒博士に敵対する勢力と合流し、蜂起の準備をしていたところ、リリーと再会。城に向かうリリーを追っていたが、怪しい馬車を発見して止めてみるとしし王の護送車だった。城に向かったしし王を追ったが、城に火の手が上がりリリーを探す。煙に巻かれて気絶していたリリーを見つけ、駆け寄ったところで黒博士の矢が命中、失神する。 気がついたとき、すべては終わっていた。平和の訪れを確認し、リリーとともに町へ戻る。最後までリリーとしし王の関係を知らされなかった。

クジャク王子 (くじゃくおうじ)

小鳥城の若き城主。黒髪の青年。花園城からチューリップ姫を妃として迎えるはずだったが、赤いしし王の策略によりリリーを迎え入れる。歌と踊りが大好きで心優しいリリーに惹かれていったが、ピーターに救出された本物のチューリップ姫が小鳥城に到着。偽者のリリーを火あぶりにせざるを得なくなった。 チューリップ姫の直訴でリリーを解放し、まぼろし城攻撃に向かい銀の騎士と合流。そこでマリー王子と対峙、しし王の計略によって捕らわれてしまう。リリーとチマの協力で脱出、銀の騎士とともにまぼろし城を強襲しようとする。だが、乗り込んだ城内で仮死状態のリリーを目撃し、兵士に発見されて一旦脱出する。 だが、小姓がリリーたちを城外に船で流したことから、しし王はリリーたちの遺骸を盗まれたと激怒。しし王に小鳥城を奪われる。反抗の軍資金のために銀の小箱の宝を求めて海に出たが、後を追ってきた黒博士に捕らえられる。新まぼろし城に連れてこられ、ライオンの生贄にされるところをしし王に救出される。 このときチューリップ姫の救出に成功し、自らは再び新まぼろし城に向かう。途中エンマを捕らえて人質として城内に入る。城に火をかけて黒博士をおびき出し逮捕に成功。我が身より子供の身を案じたことで情状酌量とし、黒博士親子の刑を国外追放に留め、国の平和を取り戻した。

チューリップ姫 (ちゅーりっぷひめ)

茶色の髪を丸いショートボブにして、左側頭部にチューリップ型の髪飾りをつけている。リリーと同じくらいの年ごろ。リリーたちが暮らす町の近くの花園城の王女。弟王子がいる。小鳥城のクジャク王子に嫁入りに向かっていたところを赤いまぼろし隊に襲われ、まぼろし城のふくしゅうの塔に幽閉される。 迷い込んだりりーと知り合う。銀の騎士として乗り込んだピーターにリリーと誤認されて助け出され、単身小鳥城にたどりつく。偽チューリップ姫としてリリーが火あぶりにされるが、偽物の顔をひと目見てやろうと刑場を覗き、リリーだと知って助け出させる。クジャク王子と銀の騎士の身を案じながら小鳥城で暮らしていたが、赤いしし王に城を奪われたとき、人質として捕らえられる。 宝の回収に海に出たクジャク王子たちを追う黒博士に連れられて、海戦での人質に利用される。クジャク王子とともに新まぼろし城に連れ帰られ、ライオンの生贄にされるが、しし王に救出される。クジャク王子が小鳥城を奪還して平和が訪れたとき、リリーの姿を探したがどこにもいなかった。

赤いしし王 (あかいししおう)

ライオンの全身の毛皮をかぶり、大きな鼻と鋭い目だけをライオンの口から出している。盗賊団・赤いまぼろし隊の隊長として活動しているが、まぼろし城の城主でもある。かつては赤いしし城と呼ばれた小鳥城の城主だったが、クジャク王子の父王たちと戦って敗れ、山奥に新しい赤いしし城としてまぼろし城を建て、復讐の機会を狙っている。 その軍資金稼ぎのひとつが盗賊団活動。もともとは優しい人物だったらしいが、娘を利用するのもためらわないほど、復讐に取りつかれた。チューリップ姫をさらってリリーを替え玉として送り込みクジャク王子の命を狙ったり、マミー王子として戦場に立ったリリーに偽情報を流してクジャク王子を捕まえたり、その策は成功していた。 リリーときさきが仮死状態で城外に運び出されたことを、クジャク王子たちのしわざと考え、怒りのまま一気に小鳥城を奪還。だが、まぼろし城近くに作ったきさきとリリーの仮の墓の前に、毎日たたずむようになった。新まぼろし城の統治を任せた黒博士が謀叛を起こしたため、平定に向かう。 だがリリーが人質となっていたため投降。監禁されたがマヌーケの協力で脱出し、クジャク王子たちを救出。再び黒博士の手に落ち、暗殺されそうになったがピーターに救われる。リリーとの関係を詰問されるが、リリーが知られたくないと思っているならと、語ることはなかった。 黒博士を追いつめたが取り逃がし、煙にまかれて倒れていたリリーとピーターを最後の力を振り絞って救出し、力尽きた。

きさき

ゆるいウェーブのかかった金髪の女性。マミーの母で赤いしし王の妃。しし王を深く愛しており、復讐にとりつかれたしし王を改心させるためまぼろし城に残っている。心労からか病床にあったが、マミーであるリリーとの再会で快方に向かった。チューリップ姫として小鳥城に送り込まれたリリーがまぼろし城に戻ってきたとき、しし王を改心させたいという気持ちを明かす。 同調したリリーが、まぼろし城に残ると決めたことを喜ぶ。黒博士の策略で捕らえられたリリーが、リマの用意した薬で仮死状態になっているところを発見。毒を飲んで自殺したと思い、側にあったチマの用意した薬を飲み、同様に仮死状態となる。 外に出たがっていたことを知る小姓により、霊安室から城外へ小船で送り出された。小船はリリーの知り合いのジプシーに見つけられ、まほうつかいのおばあさんが作った解毒薬で蘇生。まほうつかいのおばあさんの家でリリーたちの帰りを待つ。リリーの出発後、急激に体調を崩し、リリーからの連絡でようやく復調。 新まぼろし城からリリーとともに戻ってきたしし王と再会を果たす。

黒博士 (くろはかせ)

大きな鼻と鋭い目で膨大な黒いヒゲを生やし、帽子状のものをかぶって黒い服と黒いマントという出で立ちの人物。服の胸には大きなクローバー型のマークがある。赤いしし王の弟。次の王座を狙っていたが、マミー王子の登場で王座への道が遠のいたため、王子暗殺を企てる。戦場で流れ矢を装って暗殺を図るが失敗。 マミーを監視中、部屋にマミーそっくりの女を目撃し、王位継承権のない女子ではないかと疑う。クジャク王子とチマを利用して罠をはり、拘束したマミーの前でチマを責めて女であることを自白させた。しし王が小鳥城を奪還し、呼び名を新まぼろし城と変えて城主を任される。宝の回収に向かったクジャク王子たちを追って海に出て、チューリップ姫を人質に使って捕縛した。 宝の島からの帰路、案内役のミミを見殺しにし、リリーからさらに恨まれる。帰国後、宝を届けるように求めるしし王の命令を拒否。平定にやってきたしし王を、人質のリリーを利用して捕える。クジャク王子とチューリップ姫をライオンの生贄にするが、しし王によって阻止された。 ついにピーターやクジャク王子、しし王たち、黒博士を恨む人々の突入によって捕まる。自分の身よりもマヌーケとエンマの保護を申し出たため、クジャク王子の酌量によって親子で国外追放とされた。

マヌーケ

丸い鼻が上を向いている小柄な少年。黒博士の息子で、黒博士は後継ぎとして期待している。妹のエンマよりも背が低い。いつも黒羽根がついた帽子を被り、黒いマスクをしている。気が弱く泣き虫。黒博士の指示に従うが、暴力や殺人には加担したがらない。弓はわりと得意らしく、マミー王子暗殺には怖じ気づいて失敗したものの、銀の騎士を脅かすことには成功。 リリーをお嫁さんに欲しいと思っている。チマがリリーたちを仮死状態にする薬を持ってきたとき、エンマに見咎められて隠されたが、その薬をリリーに届けた。このとき、チマが残した注意書きを落としたため、リリーときさきは仮死状態となった。 黒博士がしし王やリリーの暗殺を企てることに嫌気がさし、2人を新まぼろし城から脱出させる。黒博士とともに国外追放された。

エンマ

セミロングの髪が左右に逆立っている少女。黒博士の娘でマヌーケの妹。マヌーケより背が高い。いつも2本の触角状の突起がついた小さな黒い帽子を被っている。両耳に大きな丸い耳飾り。行動的で気が強く、マヌーケができなかった、チマへの拷問の交代を申し出たりする。仮死状態にする薬を持ったチマを発見し、崖から追い落としたこともある。 クジャク王子とチューリップ姫がしし王に逃がされた後、気晴らしに町に出たところをクジャク王子に見つかる。人質として黒博士の捕縛に利用された。黒博士とともに国外追放された。

チマ

長い黒髪の少女。きさきとマミーの侍女。黒博士にマミーと誤って誘拐され、マミー王子の失脚に利用される。マリーを救出するためにまほうつかいのおばあさんから仮死状態になる薬をもらうが、エンマに見咎められ崖から追い落とされる。クジャク王子に救われ、小鳥城へ。 宝の島へ向かう一行に加わり、黒博士との海戦で船が沈められ、ピーターとともに無人島に漂着。ようやく、リリーを送ってきたジプシーたちの船に救出された。まほうつかいのおばあさんの家でマミーたちと再会する。

バンビ

黒髪の男の子。まほうつかいのおばあさんの手伝いをしているジプシーの少年。ピーターと仲がよい。リリーが赤いしし王にさらわれた後、消息を調べるためにジプシー一座に加わる。仮死状態になったリリーときさきを見つけ、町に戻って薬を処方してもらう。蘇生したリリーとともにクジャク王子を追って、ジプシー一座の船で宝の島へ向かい近くの島に到着。 一行に内緒でリリーとイカダを作り、宝の島へ先行して渡航する。宝の島に向かう案内をしてくれるミミと知り合う。黒博士の船に密航したリリーと別れ、無人島に漂着していたピーターとチマを救出して帰国。まほうつかいのおばあさんの家に戻る。

サルヤ

丸みがかった長い鼻をした老女。長い白髪を頭の上で大きくまとめている。黒く長い服を着用。マミーの乳母だった。赤いまぼろし隊の一員でしし王の忠実な部下。ピーターが富豪の代理で取引に現れたとき、リリーの4つの黒子を発見。おびき出してまぼろし城に連れ去る。リリーがチューリップ姫として小鳥城に送り込まれたときに同行。 ピーターの命を盾に、クジャク王子暗殺をリリーに強要し続けた。

まほうつかいのおばあさん

大きな獅子鼻をしたジプシーの老女。薬屋を開いている。犬がニャアニャア鳴きだす薬でも、猫が踊りだす薬でも作れるという。ピーターに頼まれて、攫われたリリーの行方を占ったときは、赤いものの中にあると応えた。チマの依頼では死んだようになる薬と生き返る薬を処方。生き返る薬は後に再処方。 いずれも高額を吹っ掛けるが、その覚悟や真心を感じると無償にしている。後にきさきはこの家に逗留する。

ミミ

小鳥城の宝が隠された島の住人。腰まである長く豊かな黒髪の少女。頭の左右に大きな花を挿している。おじいさんと二人で島を守っていて、島の周囲の霧に巻かれた船を竪琴で誘導する役目を持つ。リリーに連絡用として貝で作った笛を渡した。マヌーケがリリーの落とした貝の笛を見つけて吹いたため、黒博士の船を誘導してしまう。 宝を略奪した黒博士が脱出する際、霧で迷ったスキをつく計画をおじいさんが立てたが発覚。黒博士から泳いで船を誘導するように命令される。船を迷わせるために、島の周囲を泳ぎ続け沈んでしまう。助けようとしたおじいさんが船を誘導したが、時すでに遅く絶命。海に葬られた。

場所

花園城 (はなぞのじょう)

リリーたちが暮らしている町の近くにある城。ピーターはバイオリンの腕を見込まれて、月に一度登城してチューリップ姫の相手をしている。チューリップ姫のほかに王子がいる。

まぼろし城 (まぼろしじょう)

赤いしし城を追われた赤いしし王が山奥深くに苦労して作り上げた難攻不落の城塞。本来は赤いしし城と呼ばれるはずだが、赤いまぼろし隊の本拠地でもあるためまぼろし城と呼ばれる。監禁のためのふくしゅうの塔などもある。小鳥城奪還後も、しし王は近くに作ったきさきたちの仮の墓から離れられずにいた。

小鳥城 (ことりじょう)

かつては赤いしし城と呼ばれていたが、クジャク王子の父王に奪われて小鳥城となった。父王は没しており、現在はクジャク王子が城主。しし王に奪還され、新まぼろし城と名前を改められる。城主は黒博士。だが、ほどなくクジャク王子に奪還され、小鳥城に戻る。

クレジット

原作

緑川圭子

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