月光

月光

1人の少女と、異なる世界の少年が出会い、やがてそれぞれの世界を巡る混乱に巻き込まれていく壮大なファンタジー作品。プロトタイプとなった作品『Over the lights・Under the moon』が本作の第1話として採用され、その後を継ぐ形で本編の『月光』が続く形となっている。「花とゆめ」平成5年2号から平成7年23号にかけて、途中休載を挟みながら掲載された。

正式名称
月光
ふりがな
げっこう
作者
ジャンル
ファンタジー
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概要・あらすじ

高校1年生の高野藤美は、コンビニで出会った少年が落としたペンダントのようなものを拾った。その少年がロックバンド「オーバー ザ ライト」のボーカルのカイトだと気付いた藤美は、そのペンダントを持って「オーバー ザ ライト」のライブに出向く。しかしライブ会場に大きなが出現し、バンドのメンバー全員が姿を消すという奇妙な出来事を目の当たりにする。

その後藤美は、拾ったペンダントのようなマーカーを取り戻すために再び姿を現したカイトと打ち解け親しくなる。そして、カイトたち「オーバー ザ ライト」のメンバーは、異なる世界からやって来た宮廷騎士団の一隊であり、藤美たちの世界に迷い込んだ女王のコモンを探しに来たことを知る。

やがてコモンを発見し、自分たちの世界へと帰ることになったカイトは別れを惜しみ、マーカーを藤美に渡して去っていくのだった。その後ほどなく、カイトたちが住む世界「光の半球」ではコモンが亡くなり、天空宮は混乱をきたすこととなる。そんななか、光の半球と相反する世界である闇の半球から、ギンガと闇の半球の王が現れ、2つの世界を1つにして新たな世界を作ると宣言。

その闇の半球の王とは、宮廷騎士団の一員であるサバだった。そしてギンガによって「異世界」と呼ばれる藤美のいる世界への道が開かれ、サバは藤美が持つカイトのマーカーを狙う。こうして藤美は、光の半球と闇の半球の攻防に翻弄されることとなる。

登場人物・キャラクター

高野 藤美 (たかの ふじみ)

高校1年生の16歳の少女。カイトたちが言うところの異世界の住人にあたる。カイトたちと不思議な出会いをし、別れの際にカイトからマーカーを渡されたことで、闇の半球の王としてカイトのマーカーを奪おうとするサバとカイトたちの攻防に巻き込まれてしまう。やがてカイトと一緒に光の半球の境界地域に落ち、カイトとともに天空宮を目指すこととなり、以降、闇の半球の力の介入による光の半球での混乱に巻き込まれていく。 境界地域でカイトとはぐれて1人になった時には、迷ったらどこでも同じと開き直り、落ち着いてカイトの助けを待つ気丈なところがある。また、異世界の人間でありながら通信術を使うこともできる。天空宮内の王の部屋にカイトと一緒に入った時に調和の力が働いたことから、高野藤美とカイトのどちらかが新たな王であるとされ、ロチェ山で王の審査を受けることになる。

カイト

光の半球の宮廷騎士団の一員で、16歳の少年。口が悪く、異世界で会った最初は高野藤美にも大きな態度を取っていたもののすぐに打ち解け、光の半球に戻る時には藤美との別れを惜しんで、自分のマーカーを藤美に託した。サバが異世界に渡って藤美が持つマーカーを狙うようになったため、サバと攻防を繰り広げ、その混乱の中で藤美を光の半球に連れて来てしまう。 2年前まで亡くなった祖父と二人暮らしだったが、祖父の遺言により宮廷騎士団に入団した経緯があり、コモンには本当の孫のように可愛がられていた。世間知らずな一面もあり、そもそも口が悪いのも、長く祖父以外の人と接していなかったことが原因である。天空宮内の王の部屋に藤美と一緒に入った時に調和の力が働いたことから、カイトと藤美のどちらかが新たな王であるとされ、ロチェ山で王の審査を受けることになる。

エービー

光の半球の宮廷騎士団の一員で、18歳の少年。実はフルブクの7番目の王子であり、父親はフルブク候、母親はフルブク妃。高野藤美が持つカイトのマーカーを狙ってサバが異世界に向かった際、マーカーを藤美に渡してしまったため空間移動できずにいたカイトのことを、異世界へと連れて行った。 フルブク候がギンガたちの差し金で宮廷への謀反を企てていると知った時には、危険を承知で1人でフルブクに向かう。

カマス

光の半球の宮廷騎士団の一員で、24歳の青年。シファカとは同期。カイトたちの隊を率いる隊長を務めており、かつてロチェ山で理の法術を修行していた僧侶でもある。なお剃髪しているが、これは単にカマスの故郷に風習にならっているためで、僧侶であることとは関係ない。能力を高く買われており、次期騎士団長として打診されていたが、修行中であることや現場の方が好きという理由から、丁重に断っている。 高野藤美とカイトがロチェ山に向かうことになった時には、その一団を率いる長を任される。

サバ

光の半球の宮廷騎士団の一員で、16歳の少年。入団するのが難しいとされる宮廷騎士団に弱冠14歳で入団を果たしており、その非常に高い能力から、入団当時は新しい王の出現とささやかれていた。故郷の母親が亡くなったため里帰りした際に行方不明となり、次にカイトたちの前に姿を現した時には、闇の半球の王としてギンガに連れられていた。 そして高野藤美が持つカイトのマーカーを奪うため、異世界へと赴く。だがその際、藤美に対しては「傷つけたくない」と言っている。

コモン

光の半球の女王であり、300年近く光の半球を治めてきた王。異世界に迷い込んでしまった際、カイトたち宮廷騎士団が捜索に来たことに気付きながらも、異世界での生活を楽しんでいた。コモンが持つ理の力は絶大で、彼女の力によって理の力の安定がもたらされていた。コモンが亡くなったことにより光の半球の理の力は不安定になり、さまざまな混乱をきたすこととなる。 カイトのことは本当の孫のように可愛がっていた。ちなみに、騎士団の証であるマーカーは、すべてコモンによって精製されたものである。

シファカ

光の半球の宮廷騎士団を率いる騎士団長を務める、27歳の青年。カマスとは同期であり、アヴァーヒの弟でもある。宮廷騎士団史上最も若い団長で、早くからその能力を高く買われていた。カイトが高野藤美にマーカーを渡したことから、その行動をめぐって評議会にかけられた時も、全責任を自らが負うことでカイトに寛大な処置をするよう求めるなど、非常に懐の深い人物。

ロリス

光の半球の宮廷書記官を務める、30歳の青年。書記官だけではなく、評議委員も兼ねる宮廷随一の俊英である。シファカが異世界に向かったサバを追って行った時には、騎士団を始め宮廷内の統制を任された。一方で、世界については冷静に見ており、古文書の情報などから理の力による王の時代が終わることを予見している。 そのため、王の存在しない異世界の在り様に興味を持っている。

インドリ

光の半球の宮廷評議委員の1人で、51歳の男性。異世界に迷い込んだコモンを連れ戻す際、コモンが可愛がっていたカイトを遣わすことに賛成していたが、カイトが高野藤美にマーカーを渡して帰って来た時には、騎士としてのカイトを否定する口ぶりだった。一方で状況判断力には長けており、コモンが亡くなった時、世界が混乱をきたすのを防ぐためにその事実を内密にする。

アヴァーヒ

光の半球の新王審査団に所属する審査官で、28歳の女性。シファカの姉。新しい王候補を探すために、日夜飛行船を飛ばして探索している。その道中で、境界地域付近の森に迷い込んだ高野藤美を救出し、カイトとも合流。そして藤美とカイトを乗せて天空宮に戻る。かつてロチェ山で修行をしており、理の法術の能力は非常に高い。 のちに藤美とカイトが天空宮の王の部屋で起こした波動を感じ、これが新たな王であることを意味する調和の力であると判断する。

ギンガ

闇の半球の力を使う男性。コモンが亡くなった時、自らを新たな光の半球の王として名乗りを上げ、サバを闇の半球の王とし、2つの世界を統合して新たな世界を作ることを目論む。非常に強大な力を持ち、本来なら王にしかできない、空間への道を開くことができる。それにより、あらゆるものを異世界に送り込むことが可能。 フルブク候の後ろ盾となり、ブラッザとともにフルブクの宮廷への謀反を後押しする。

ブラッザ

闇の半球の力を使う男性。ギンガとともにフルブク候の後ろ盾となり、宮廷への謀反を指南していた。もともとは宮廷騎士団の見習いであったが、宮廷勤めには不適格とされて天空宮を去った過去がある。他人から奪ったマーカーを使用し、強い力を発揮する。

アン・ワン (あんわん)

ロチェ山において、ギンガやブラッザとともに闇の半球の力を使ってロチェ山を支配しようとする少年。正体は闇の半球人であり、言葉は通じない。ロチェ山にやって来たカイトと対峙して戦い、敗れ去った。その後、天空宮に捕えられるが、アヴァーヒらの通信術を使ってコミュニケーションを取り、カイトと話がしたいと申し出る。

トクビレ

ロチェ山における最高位・大僧正の地位にある男性。コモンに次ぐ実力を持つ理の法術者であり、コモンとも旧知の仲。トクビレに謁見するためにアヴァーヒたちが訪れた際には、体調が思わしくないとの理由で代理としてバブーヌが現れたが、実はギンガたちよって幽閉されていた。

バブーヌ

ロチェ山の女房長を務める女性。ロチェ山での女性修行者を統制しており、かつてはアヴァーヒたちも世話になっていたことがある。ただし、ヒステリックな性格でアヴァーヒたちとは相性が悪い。トクビレが病に臥せているとして、自らが大僧正代理としてアヴァーヒたちの前に現れた。

メイチ

ロチェ山の僧侶の男性。カマスがロチェ山で修行をしていた時から、カマスに対して尊敬の念を持っている。カマスたちがカイトを連れてロチェ山にやって来た際、ロチェ山が闇の半球の力に支配されつつある現状を伝えて、カマスやカイトたちとトクビレ救出に向かう。

チカ

フルブクの姫で、エービーの11歳の妹。ギンガやブラッザに懐柔されたフルブク候が、部屋に家族も寄せ付けない状態を作って宮廷への謀反を企てているのを偶然聞いてしまい、その事実をエービーに伝えるべく、城を抜け出し1人で何日もかけて天空宮を訪れる。

フルブク候 (ふるぶくこう)

フルブクの王であり、エービーやチカの父親。コモンが亡くなったのとほぼ同時期にギンガやブラッザを後ろ盾に付け、宮廷に謀反を起こし、世界を手にするよう後押しされる。これを境に、フルブク妃やチカたち家族すらも部屋に寄せ付けなくなっていた。

フルブク妃 (ふるぶくひ)

フルブク候の妃で、エービーやチカの母親。城から姿を消し、何日も戻らないチカを案じるのと同時に、フルブク候が悪に支配されてフルブクが不穏に包まれるのを察知し、戻って来たエービーにすぐに天空宮に戻るように諭す。若干ではあるが、治癒の力を使うことができる。

ターラ

旅芸人の一座に属する踊り子。高野藤美とカイトが、王の座をめぐる天空宮の現状から逃げ出した際に、街で出会った。理の法を使う術師や宮廷役人を嫌っているため、宮廷から追われていた藤美とカイトをかくまう。

ドッコイドッコイ

光の半球の森に住む生物。巨大なげっ歯類のような風貌の、非常におとなしい性格。巣は森の中に迷路のように複雑に作られている。異世界から光の半球の森に飛ばされた高野藤美とカイトが降り立ったところがドッコイドッコイの巣の上だったため、2人がはぐれてしまうことになった。

コモン

300年という長い年月、光の半球(ユース・ドーム)を治めてきた女王。カイトの育ての親とは立場を超えた友人であり、カイトのことは孫のようにかわいがっている。普通は100歳くらいが寿命だが、354歳という長寿で亡くなる。

集団・組織

宮廷騎士団 (きゅうていきしだん)

光の半球の天空宮を護衛する組織であり、シファカを騎士団長としている。複数の隊に分かれており、カマスが率いる隊にはカイト、エービー、サバを含めた全7名が在籍している。宮廷騎士団に入団するのは非常に難しく、理の力を使う能力が高い者のみが騎士となれる。

オーバー ザ ライト

異世界に迷い込んだコモンを探し出すべく、宮廷騎士団のうちカイト、カマス、エービー、サバが異世界で擬態したロックバンド。幻惑を使用して人を魅了する音楽を作り、その音楽によって竜を招喚しようとした。高野藤美は彼らの音楽に惹かれ、ライブに行ったところで竜の招喚を目撃する。

場所

光の半球 (ゆーすどーむ)

カイトたちが住む世界。大気には理の力が満ちており、その流れは天空宮にいる王によって安定が保たれている。闇の半球とは表裏一体であり、理の力を安定させることで闇の半球との調和をなすことができる。女王であるコモンが亡くなったことで、世界に大きな混乱をきたすこととなる。

闇の半球 (でぃすどーむ)

光の半球と表裏一体の世界であり、理の力とは相反する力に支配されている。光の半球の人間が闇の半球に行くことは非常に危険とされており、その実態は明らかになっていない。コモンが亡くなって理の力が乱れたのを機に、闇の半球の力を持つものが多数流れ込んでしまう。

異世界 (どーむぬい)

光の半球と闇の半球の外側にいくつかある別の世界で、高野藤美が住む世界はこの異世界の1つにあたる。異世界の存在は、理の力や闇の半球の力を大幅に乱すものとされている。光の半球とは進む時間が大幅に違い、光の半球の数日間は異世界の数か月に該当する。

天空宮 (てんくうきゅう)

光の半球の中心を担う宮殿であり、宮廷騎士団や新王審査団などの組織の拠点となる場所。王が理の力を安定させており、最も理の力が集中する場所でもある。この場所の下には、マーカーを精製するための鉱物が存在し、天空宮そのものも巨大なマーカーとなっている。

ロチェ山 (ろちぇざん)

理の力や世界についての成り立ちなどを研究する拠点であり、また理の法術を学び修行を積む総本山となる場所。トクビレを大僧正とする。天空宮において理の法を操ることができる術者はほとんどこの場所で修行をしており、カマスやアヴァーヒもかつてはロチェ山で修行に励んでいた。

フルブク

フルブク候が治める国であり、エービーはこの国の王子である。コモンが亡くなって以降、女王不在の事実を隠したまま天空宮が周辺地域の警備を強め、フルブクにも守護兵を駐屯させているため、フルブク候の反感を買っている。ギンガたちに懐柔されたフルブク候により、宮廷の守護兵を攻撃する動きに出る。

その他キーワード

餓鬼 (がき)

小さな怪物。異世界で高野藤美が持っていたカイトのマーカーを狙い、藤美に複数で襲いかかった。卑怯な性格であり、カイトたちを悪者に仕立て上げて藤美からマーカーを奪い取ろうとしている。また、コモンの命も狙っているが、カイトには「ザコ」扱いされている。

(りゅう)

光の半球に住み、光の半球と異世界を自由に行き来するとされる生物。カイトたちが異世界で「オーバー ザ ライト」としてライブをした時に竜を招喚し、いったん光の半球に戻ろうとしていた。王や理の法術者なら1人でも招喚できるが、カイトたちの力では複数人が必要となる。

夜の虹 (よるのにじ)

夜であるにも関わらず空に見ることができる虹。異世界にコモンが迷い込み、カイトたちが異世界にやって来てから、複数回出現している。その不思議な現象から、TVで取り上げられるほど話題になった。その正体は、光の半球と異世界の境に生じた亀裂である。

理の力 (ことわりのちから)

光の半球に満ちている力で、天空宮において王がその安定を保っているもの。理の力には決まった方向性がなく、天空宮以外の場所では流れが不安定になることもあるが、マーカーによってその力を集めたり放出したりすることができる。

理の法 (ことわりのほう)

光の半球において、理の力を操るための術。天空宮にはこの術の使い手が存在しているが、彼らもすべての術が使えるわけではなく、それぞれに専門分野が存在している。宮廷騎士団の証であるマーカーも、王が理の法を用いて精製されるものである。

(おう)

光の半球や闇の半球、また異世界にも1人ずつ存在するとされる人物。光の半球では、理の力を安定させ、闇の半球との調和を維持して世界を統治する存在である。本来は、王の座を引継ぐには現在の王が新しい王を見つける形であるが、コモンは新王を見つけることなく亡くなってしまった。各世界の王の動向は連動しており、コモンが亡くなった時には闇の半球の王も同時に亡くなっている。

マーカー

王が宮廷騎士団の証として1人ずつに与えるもので、受け取る者に合わせて精製される。形状はペンダントのようになっており、トップにはパネル上の金属が装着されている。光の半球の地中深くから掘り出す鉱物で精製され、理の力を集中させたり放出することが可能となっている。

境界地域 (きょうかいちいき)

光の半球と闇の半球の境界付近の地域であり、理の力が辛うじて及ぶ範囲。理の力の影響が薄いため、闇の半球の大気が混じっており、この地域周辺には闇の半球の生物が姿を見せる可能性もある。コモンが亡くなって理の力が乱れたため、この周辺の警備が強化された。

通信術 (つうしんじゅつ)

言葉が通じなくとも、自分の思うことを伝えたり相手の思いを読み取ったりできる術。高野藤美は、光の半球に来て出会ったアヴァーヒたちの言葉が最初は理解できなかったが、この通信術により徐々に意思を疎通させられるようになった。その他、藤美は遠くにいるカイトの視点で状況を見ることなどもできる。

黒い月 (くろいつき)

理の力が弱まった光の半球の空に現れた黒い球状のもので、空間にできた穴。闇の半球とつながっており、そこから闇の半球の力の源が吹き込むため、同時に理の力を弱めることになってしまう。この現象について、ギンガはかねてからさまざまな実験を行っていた。

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