ダレン・シャン

ダレン・シャン

イギリスの児童向けファンタジー小説「ダレン・シャン」のコミカライズ作品。吸血鬼となり、人の理から外れてしまった少年の、20年以上にわたる葛藤と戦いを描いた長編アクション漫画。「週刊少年サンデー」誌上にて、2006年36・37合併号から、2009年10号まで連載された。また、2009年には英訳版が、イギリス、アメリカで発売されている。原作はダレン・シャン。

正式名称
ダレン・シャン
ふりがな
だれん しゃん
原作者
ダレン・シャン
作者
ジャンル
その他ホラー・オカルト
関連商品
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世界観

吸血鬼をはじめとした、ダークな世界観が特徴。吸血鬼という人ならざる姿に変貌してしまったダレン・シャンが、これまで幻想の中の世界と信じていた闇の領域へと足を踏み入れ、その荒波に揉まれつつも、新たに得た仲間とともに前向きに生きていく様子が描かれる。また、物語の後編では、傷あるものの戦という、バンパイアバンパニーズの、無慈悲なまでの激しい争いが描かれる。

あらすじ

奇怪なサーカス(第1話~第4話)

スパイダーが好きだと語る少年、ダレン・シャンは、親友のスティーブ・レナードに誘われ、シルク・ド・フリークを訪れる。そこは、狼の身体を持つ凶暴なウルフマンや、蛇の身体を持つ少年エブラ・フォンなどが所属している奇怪なサーカス。なかでも2人の目を引いたのは、バンパイアラーテン・クレプスリーと、その相方である毒蜘蛛、マダム・オクタであった。彼らの芸にすっかり魅了されたダレンは、出来心からマダムをサーカスから持ち去るが、その後に発生した事故により、マダムはスティーブを噛んでしまう。1部始終を見ていたクレプスリーは、スティーブを助けたければ、自分の血を受け入れ、バンパイアになれと迫る。

若きバンパイア(第5話~第14話)

半バンパイアになってしまい、絶望に暮れるダレン・シャンは、やむなくラーテン・クレプスリーとともに旅に出る。ダレンの様子を懸念するクレプスリーは、シルク・ド・フリークの仲間たちとともに過ごすことを提案。ダレンは新たな仲間たちとすぐに馴染み、蛇男のエブラ・フォンや、サーカスに興味を持つサム・グレストと友達になる。しかしある時、サーカスのテントにデズモンド・タイニーが来訪し、ダレンはタイニーの不気味な雰囲気に気圧される。さらに行き過ぎた自然保護思想を持つレジー・ベジーによって、サーカスの危険人物であるウルフマンが解き放たれる。本能のままに暴れるウルフマンによって、サム・グレストが絶体絶命の危機に陥ってしまう。

バンパイア・クリスマス(第15話~第24話)

忌まわしいウルフマンの事件から1年後。ダレン・シャンらのもとに、バンパイア将軍ガブナー・パールが現れた。ラーテン・クレプスリーは彼からもたらされた情報をもとに、ダレンとエブラ・フォンを連れて、クレプスリーの故郷であるという都会に向かう。そこでダレンは、デビー・ヘムロックという少女と出会い、バンパイアであることを隠しつつ、親交を深めていく。しかし、時を同じくして、街で殺人事件が横行し始める。被害者はすべて、全身の血を吸い取られているという共通点があった。

バンパイア・マウンテン(第25話~第34話)

12年に1度開かれるという、バンパイア総会に参加するため、ダレン・シャンラーテン・クレプスリーは、バンパイアの総本山であるバンパイア・マウンテンへと向かう。しかしその道のりは、吹きすさぶ吹雪の中を裸足で踏破しなければならないという過酷なもので、その旅路そのものが1つの試練となっていた。デズモンド・タイニーの言いつけで、ハーキャット・マルズを加えたダレンたちは、雪山の中でガブナー・パールと合流し、狼のルディと親交を深め、順調に山道を踏破していく。しかしその道中で一行は、バンパニーズの痕跡を発見。さらにハーキャット・マルズから、「バンパニーズ大王の夜が来る」という、Mrタイニーの伝言を聞かされる。

バンパイアの試練(第35話~第44話)

ダレン・シャンは、ラーテン・クレプスリーの名誉回復と、自身の力がバンパイアに相応しいことを示すため、力量の試練を受けることになる。試練は非常に厳しいもので、失敗した場合は確実な死が待っている。クレプスリーやガブナー・パールカーダ・スモルトらのサポートを得て、何とか試練を攻略していくダレンだったが、血を飲んだイノシシとの決闘において、絶体絶命のダレンを救うため、ハーキャット・マルズが乱入してしまう。このことにより処刑が決まってしまうダレンは、ガブナーたちの手引きにより、バンパイア・マウンテンから逃亡することとなる。ダレンはその逃亡の最中、更なる悲劇に見舞われてしまう。

バンパイアの運命(第45話~第54話)

逃亡の最中、遭遇したバンパニーズとの争いで犠牲者を出してしまったダレン・シャンは、その原因となった裏切り物を告発すべく、死を覚悟のうえでバンパイア・マウンテンに戻ることを決意。道中で再会したストリークと、優れた知恵を持つオオカミの老婆マグダの案内により、内部への潜入に成功する。裏切り者を告発しようとするダレンだったが、彼はその告発を否定せず、この凶行に及んだ本当の理由を語りだすのであった。

黄昏のハンター(第55話~第64話)

ダレン・シャンバンパイア元帥となって6年が過ぎたが、バンパニーズ大王についての有力な手掛かりは依然得られずにいた。そんなある日、バンパイア・マウンテンに突如、デズモンド・タイニーが来訪。これから数回にわたって、バンパニーズ大王と接触するチャンスがあるが、そのチャンスを逃したらバンパイアに未来はないと語る。さらに、バンパニーズ大王と接触できるバンパイアはたったの3人のみだという。その3人の中に選ばれたダレンとラーテン・クレプスリー、そして彼らに同道を申し出たハーキャット・マルズは、大王追跡のヒントを持つというレディー・エバンナのもとへ向かう。

単行本の装丁

裏表紙に原作小説を彷彿とさせる模様がついており、カバーの折り返しには、次のエピソードに関する予告と、その発売月が記載されている。また、最終巻となる12巻の折り返しには、原作者のダレン・シャンによるメッセージが添えられた。

メディアミックス

映画化

本作『ダレン・シャン』の原作小説を映画化した作品。アメリカなどで2009年より公開されている。配給会社はユニバーサル・ピクチャーズで、キャストはダレン・シャン役をクリス・マッソグリア、スティーブ・レナード役をジョシュ・ハッチャーソン、ラーテン・クレプスリー役をジョン・C・ライリーが演じている。2010年には日本でも公開されており、配給している東宝東和株式会社は、プロモーションの一環として漫画版からのアプローチを考えており、アメリカにおけるパイロット版の試写会に作者の新井隆広を招いている。

作者情報

原作

ダレン・シャンは、イギリス出身の小説家。代表作は小説『ダレン・シャン』や『デモナータ』など。漫画版を毎週楽しみに読んでいたと語っており、キャラクターの造形に悩む新井隆広に対し、的確なヒントを与えることもあった。また、「週刊少年サンデー」の企画で、新井との対談が掲載された。

登場人物・キャラクター

ダレン・シャン (だれんしゃん)

ラーテン・クレプスリーの手により半バンパイアとなった少年。バンパイアとしての生態がいずれ家族や友人を傷つけると危惧し、自らが死んだように見せることで家族や友人たちとの別れを済ませ、クレプスリーとともに故郷を旅立つ。半バンパイアながらも、降りかかった運命に屈することなく、ウルフマンやマーロックなどの強敵と戦い続け、次第に強力なバンパイアとして一目置かれるようになり、さらには異例の若さでバンパイア元帥に就任する。 バンパニーズ大王と戦う運命にある3人のバンパイアに抜擢されたことにより、傷あるものの戦に参加する。この時純化作用が発生したことで肉体が急速に成長し、バンパニーズの大軍相手にも立ち向かえるほどの戦闘能力を獲得した。 モデルとなった人物は、本作「ダレン・シャン」の原作者であるダレン・シャン。

スティーブ・レナード (すてぃーぶれなーど)

ダレン・シャンの親友。スポーツ万能なガキ大将で、大人にも臆さず立ち向かうことから、仲間たちの信頼を集めている。反面家族には恵まれずに、父親はおらず、母親との関係もうまくいっていない。ダレンとともにシルク・ド・フリークに赴いた際に、ラーテン・クレプスリーをバンパイアだと看破。自分もバンパイアにしてほしいと願い出るが、拒絶される。 さらに、ダレンが持ち出したマダム・オクタに噛まれ、猛毒による重症を負ってしまう。ダレンとクレプスリーの取引によって一命を取り留めたが、スティーブ・レナードを助けるためとは知らないままバンパイアになったダレンと、ダレンだけを選んだクレプスリーに並々ならぬ憎悪を抱き、バンパイアを狩るハンターになると言い残し、姿を消した。

ラーテン・クレプスリー (らーてんくれぷすりー)

シルク・ド・フリークに所属しているバンパイアの男性。ダレン・シャンの持ち出したマダム・オクタがスティーブ・レナードを噛んでしまった際に現れ、スティーブを助けたければバンパイアになれと迫る。その強面や、ダレンに行った所業により長らく誤解されてしまうが、本来は思慮深く、優しい性格。無暗に若い人間をバンパイアにしてはならないという掟があるのだが、なぜその掟を破ってまでダレンをバンパイアにしてしまったのか自分でもわからないという。 ともに旅をするようになってからは決して見捨てようとせず、徐々にダレンからも心を開かれていく。バンパイア・マウンテンを降りる以前はバンパイア元帥の候補に挙げられていた実力者で、のちにダレン、バンチャ・マーチとともに大王ハンターに抜擢される。

マダム・オクタ (まだむおくた)

シルク・ド・フリークに所属している大きな毒グモ。ラーテン・クレプスリーの持つ笛の音で大人しくなる性質を持っており、逆に突然慣れない音を聞くと暴れ出してしまう。クモが好きなダレン・シャンを、サーカスでの活躍で魅了し、出来心を抱いたダレンによってサーカスから連れ出されてしまい、さらに事故でスティーブ・レナードを傷つけてしまう。 ダレンがバンパイアになってからは、旅に同行するが、のちにバンパイア・マウンテンで異種族のクモとつがいになり、ダレンやクレプスリーと離れることになる。のちに子孫を残し、その子孫はシーバー・ナイルによって「バー・シャンのクモ」と名付けられた。

アニー・シャン (あにーしゃん)

ダレン・シャンの妹。家族思いの少女で、ダレンとも仲が良く、軽口をたたき合ったり、ダレンがシルク・ド・フリークで手に入れた人形を使ったままごとなどに付き合ってもらったりしていた。それだけに、ダレンが死亡したと思われた時は人一倍の哀しみを見せていた。

ダーモット・シャン (だーもっとしゃん)

ダレン・シャン、およびアニー・シャンの父親。優しくのんびりとした性格の、頼りがいある男性。常に家族を大切にしており、ダーモット・シャン自らも家族に好かれている。また、スティーブ・レナードが傷ついてしまった際に落ち込むダレンを元気づけるなど、包容力もある。ダレンが屋根裏から落ちて死んでしまったと思った時は、人目もはばからずに、ダレンの身体を抱き号泣していた。

アンジー・シャン (あんじーしゃん)

ダレン・シャン、およびアニー・シャンの母親。厳しさと優しさを併せ持つ女性で、やんちゃなダレンの行動に時折呆れつつも、暖かく見守っている。ダレンが自らを死んだことにするため、仮死状態になる薬を飲み窓から身を投げたところを真っ先に発見し、茫然自失としてしまう。

スティーブの母親 (すてぃーぶのははおや)

スティーブ・レナードの母親。親子関係は良好とはいえず、スティーブは親と別れても平気とすら言い放つ。しかし実際はスティーブを大切に思っており、彼がマダム・オクタに噛まれて昏倒した時は気が動転するあまりダレン・シャンを責めるような発言をしてしまう。

トミー・ジョーンズ (とみーじょーんず)

ダレン・シャンの友人で、大柄な少年。ダレン、スティーブ・レナード、アランとよくつるんでおり、シルク・ド・フリークにも興味を示していた。スポーツが得意で、よくダレンたちをサッカーの試合に誘っていた。大人になってからもサッカーを続けており、プロの選手として活躍している。

アラン

ダレン・シャンの友人で、そばかすが特徴の大人しい少年。ダレン、スティーブ・レナード、トミー・ジョーンズとよくつるんでおり、シルク・ド・フリークにも興味を示していた。大人になってからは遺伝学者の道に進んでおり、クローン技術の先駆者として注目を浴びている。

Mrトール (みすたーとーる)

シルク・ド・フリークの座長。シルクハットをかぶった、奇妙な顔立ちの長身男性。サーカスでは司会を務めており、その奇怪な容貌と振る舞いで、観客を恐怖させ、同時に惹き付ける。ラーテン・クレプスリーとは親しく、旅に同行するダレン・シャンのことも気にかけるようになっていく。デズモンド・タイニーには恐れを抱いており、ダレンに対して逆らわないよう警告している。

デズモンド・タイニー (でずもんどたいにー)

予言と称してシルク・ド・フリークの前にたびたび訪れる、謎の男性。リトル・ピープルを召使として使役しており、バンパイアを歯牙にもかけないほどの強大な力を持つ。冷酷かつ非情な性格で、平和を嫌い、戦乱を好む。その一環として、バンパイアとバンパニーズの争いを面白半分に見届けようとしている。なお、未来を見通せる力を持っているため書物や小説などを軽蔑しており、手に取ろうとすらしない。

エブラ・フォン (えぶらふぉん)

シルク・ド・フリークに所属している少年。シルク・ド・フリークにおける、ダレン・シャンの最初の友達である。蛇人間という特殊な種族で、肌は蛇の鱗に覆われており、舌先も2つに分かれている。蛇と心を通わせることができ、サーカスでは蛇を自在に操るという芸を見せる。ダレンとは長らく親友として付き合ってきたが、バンパイア・マウンテンに赴く際に別れることになる。

トラスカ

シルク・ド・フリークに所属している、長身で褐色肌の女性。顎に鬚を生やすことができ、その鬚は並の力では切ることができないとされる。そのミステリアスな容貌とは裏腹に明朗快活な性格で、半バンパイアとなりシルク・ド・フリークに身を置くことになったダレン・シャンともすぐに打ち解けた。

ウルフマン

シルク・ド・フリークの名物たる怪物。狼の頭を持つ大男で、性格は極めて凶暴。一度解き放たれたら、本能が赴くままに人を襲い、喰らう。そのため、シルク・ド・フリークでは厳重な管理がなされていたが、レジー・ベジーの手により解放され、大きな被害を及ぼしてしまう。

サム・グレスト (さむぐれすと)

シルク・ド・フリークに強い興味を持っている少年。好物はオニオンのピクルスで、常に瓶詰にして持ち歩いている。口も手も達者で、ダレン・シャンやエブラ・フォンに対して、サーカスに入りたいと強く主張する。次第にダレンと仲良くなるが、バンパイアと人間は相容れない存在であると教えられたダレンに、突き放されることになる。 さらに、レジー・ベジーが解放したウルフマンに狙われてしまう。

レジー・ベジー (れじーべじー)

サム・グレストの友人の壮年男性。自然保護を志しており、「環境戦士」を自称している。決まった家すら持たず、自給自足の生活をしており、ダレン・シャンやエブラ・フォンに自作の豆料理を振る舞う。しかし、シルク・ド・フリークで、ウルフマンが檻に入れられていることを知ると態度を変え、虐待だと声高に叫ぶ。 更には危険も顧みず、ウルフマンを檻から解き放つという凶行に及ぶ。

ガブナー・パール (がぶなーぱーる)

ラーテン・クレプスリーと懇意のバンパイア将軍。その地位を活かしてさまざまな情報を仕入れては、仲間に伝えている。豪放磊落な性格の中年男性で、クレプスリーの弟子となったダレン・シャンにも気さくに接している。また、感情表現が上手でないクレプスリーの代わりに、彼の密かな気づかいを伝えることもある。

デビー・ヘムロック (でびーへむろっく)

ラーテン・クレプスリーの故郷の町に住む少女。ヘムロックという、自らの苗字を嫌っている。買い物をしていたダレン・シャンに声をかけたことで知り合い、バンパイアであるとは知らずに親しくなっていく。クリスマスイヴはダレンをヘムロック家に招き、パーティをともに楽しむが、その夜に発生したマーロックとダレンの争いに、知らないうちに巻き込まれてしまう。

マーロック

バンパニーズの大男。紫の肌と真紅の瞳を持ち、極めて凶悪な顔つきをしている。バンパニーズの中でも群を抜いて凶暴で、大勢の人間を殺してはその血を吸い尽くしている。その残虐な所業を阻止しようとするラーテン・クレプスリーと対立し、エブラ・フォンを人質にとっておびき出そうとするが、ダレン・シャンの奇策によって目論見は失敗に終わる。

ハーキャット・マルズ (はーきゃっとまるず)

デズモンド・タイニーに仕えているリトル・ピープル。左足を悪くしているため、ダレン・シャンからは「レフティ」と呼ばれている。長らく無言のまま、ダレンやエブラ・フォンに付き従っていたが、バンパイア・マウンテンに向かう途中、実は話せることと、ハーキャット・マルズという名前が明かされた。一度死亡しており、タイニーとの取引により、リトル・ピープルとして蘇ったが、生前の記憶を失っている。

ストリーク

バンパイア・マウンテンを根城にしている狼のリーダー。見るからに凶暴そうな外見をしているが、狼はバンパイアにとても友好的であるため、ダレン・シャンを一目見るなり懐き、一時的に行動をともにすることになる。お腹に一筋の黒い毛が通っているところから、ダレンにストリークと名付けられた。

ルディ

ストリークと行動をともにしている、狼の子供。狼の中でも特にダレン・シャンに好意的で、鼻が赤いため、赤鼻のトナカイ「ルドルフ」からルディと名付けられた。バンパイア・マウンテンの道中で、一度別れることになるが、のちにダレンが窮地に陥った際に偶然再会し、彼の命を救う立役者となった。

シーバー・ナイル (しーばーないる)

バンパイアの必需品を管理する「需品長」を任せられている、バンパイアの老年男性。700年以上の年月を生きている。ラーテン・クレプスリーのかつての師匠でもあり、出会うなり再会を喜び合っている。その立場上、バンパイア・マウンテンの地理を知り尽くしており、ダレン・シャンにさまざまな施設を紹介する。また、マダム・オクタに出会うなり懐かれるなど、只者ではない様子を随所で見せた。

カーダ・スモルト (かーだすもると)

左頬に3つの傷がある、バンパイアの青年。バンパイア元帥への昇格が決まっているが、これはバンパニーズと和解、共存することで、彼らが人を殺すことを阻止しようとした功績によるものである。誇りを重んじるバンパイアでは珍しく、柔軟な思考を得意としており、物腰も柔らかいのでダレン・シャンからも好意を向けられている。 ただし、決して臆病というわけではなく、戦闘においても並のバンパイアをはるかに上回る才能を持っている。

エラ・セイルズ (えらせいるず)

かつてラーテン・クレプスリーの妻だった、バンパイアの女性。戦闘の達人で、身の丈ほどある棒を自在に操り、相手を圧倒する。気位が高く、自分が尊敬に値すると認めた相手でなければ決して握手をしないため、勝ったら握手するという約束でダレン・シャンに勝負を挑まれる。当初は少年と侮っていたエラ・セイルズだったが、ダレンの予想外の善戦に驚き、負けこそしなかったものの、その健闘を称えて握手をする。 その後も一目置くようになり、ダレンが力量の試練を受ける時は、ガブナー・パールやカーダ・スモルトとともにサポートに回った。

ミッカー・バー・レス (みっかーばーれす)

バンパイア元帥の1人で、バンパイア・マウンテンの3人の元帥の中では最も若い。血の気が多いうえに厳格な性格で、掟で定めたことなら、非情なことであっても決断を曲げようとしない。また、元帥でありながら前線に出ることを好み、戦場に赴いてはバンパニーズと戦い、情報を持ち帰ることもある。ラーテン・クレプスリーを高く評価しており、総会が終わった後も、バンパイア・マウンテンに残るように言いつけた。

パリス・スカイル (ぱりすすかいる)

バンパイア元帥の1人。2歳の時にバンパイアになってから800年以上の時を生きている老年の男性で、生ける伝説と評されている。他の元帥2人と異なり穏やかな性格をしているが、バンパイアの秩序を重んじる傾向が強く、掟を曲げることについては慎重な姿勢を示す。

アロー

バンパイア元帥の1人。禿頭の大柄な男性で、かつて人間の女性と結婚して一族を離れたが、妻をバンパニーズに殺されたため、反バンパニーズの急先鋒として知られるようになった。ダレン・シャンがバンパイアに相応しいか見極めるために力量の試練を提案したり、ダレンから、処刑を覚悟でバンパニーズの企みを聞かされた時は、その功績をもってバンパイア元帥に推薦するなど、柔軟な考え方ができる。

マグダ

ストリークの率いる群れの一員である、老いたメスの狼。バンパイア・マウンテンから元帥の間までの抜け道を知っており、裏切り者の存在を告発するダレン・シャンの頼みによって、案内することになる。「マグダ」はダレンが付けた名前で、彼の祖母から取られたものである。案内役を果たした後は、身体が限界にきており、自らの死に場所を定め、1匹で立ち去った。

バンチャ・マーチ (ばんちゃまーち)

バンパイア元帥の男性で、バンパニーズ大王と戦うハンターに選ばれた、3人のうちの1人。デズモンド・タイニーに対して露骨なまでの嫌悪感を示しており、当初はリトル・ピープルであるハーキャット・マルズも信用しようとしてなかったが、すぐに打ち解けた。バンパイアらしからぬ粗野な振る舞いが目立つが、実力は非常に高い。 また、バンパニーズそのものに対しては悪い印象を持っておらず、和解を実現させようとしたカーダ・スモルトを元帥に推薦したのもバンチャ・マーチである。かつて半バンパニーズだったが、人を殺すことに嫌気がさしていたところ、パリス・スカイルに血を注ぎ込まれてバンパイアとして生まれ変わっている。

レディー・エバンナ (れでぃーえばんな)

バンパニーズ大王の手掛かりを知るという女性。デズモンド・タイニーほどではないが未来を見通す力を持っている。また、さまざまな魔法の道具を作り出せるが、魔女と呼ばれることを頑なに嫌う。普段は人間離れした容姿をしており、初めて出会ったダレン・シャンとハーキャット・マルズを面食らわせたが、美女の姿も取ることができる。 バンパイア、およびバンパニーズの子供を出産できる唯一の女性でもある。

ガネン・ハースト (がねんはーすと)

バンパニーズ大王の側近を務める、バンパニーズの青年。冷静沈着で、優れた洞察力と決断力を持つ。しかし、他のバンパニーズやバンペットの勝手な行動に翻弄され、その尻拭いに動かされることも多い。バンチャ・マーチの弟で、かつては半バンパニーズとしてともに行動していた。人を殺したくないと主張し、処刑されるところだったバンチャを救ったのもガネン・ハーストである。 しかし、傷あるものの戦では敵対する立場に立ったことで、幾度となく対決することとなる。

アリス・バージェス (ありすばーじぇす)

警察官の女性。バンパニーズの奸計によって殺人犯に仕立て上げられてしまったダレン・シャンたちを捕らえるべく、組織を率いて立ちはだかる。勇敢な性格で、超人的な身体能力を持つダレンたちにも臆することなく立ち向かう。しかし、誤解が解けるとダレンたちバンパイアに力を貸すことを約束。デビー・ヘムロックと共に、サポート組織であるバンピライツを立ち上げる。

モーガン警部 (もーがんけいぶ)

警察官の男性で、アリス・バージェスの部下。バンチャ・マーチを逃がすために捕えられたダレン・シャンの前に現れる。警察でありながらバンペットとして活動しており、直接対決を望むというバンパニーズ大王の命により、ダレンを警察署から脱走させようとする。その後は大王の配下としてダレンたちの前に立ちはだかるが、徐々に言動がおかしくなっていく。

バンパニーズ大王 (ばんぱにーずだいおう)

バンパイアに破滅をもたらすという、バンパニーズの新しい指導者。バンパイアに所在を知られないよう決まった住処を持たず、バンパニーズやバンペットの部下を伴い各地を旅している。また、護衛としてガネン・ハーストを傍らに置いている。他のバンパニーズを圧倒する力を持つが、傷あるものの戦のルール上、姿を見られることを警戒しており、常にローブを身にまとう。

集団・組織

シルク・ド・フリーク (しるくどふりーく)

世界各地で公演をして回っているサーカス団。観客を楽しませるより怖がらせることを重要視している。Mrトールが座長を務めており、ラーテン・クレプスリーやエブラ・フォンなどが所属している。団員はいずれも人間離れした特徴を持っているが、実際は気のいい人たちが多く、ダレン・シャンがバンパイアとなって孤独に苛まれた時は、このサーカスが拠り所となっていた。 しかし、なかにはウルフマンのような、危険極まりない団員も存在する。

バンパイア

人間の血を命の源として、夜の世界を生きる異形の種族。人間をはるかに上回る身体能力と、10倍以上の寿命を持つ。指先から血を流し込むことで、人間をバンパイアに変えることができるが、無暗に仲間を増やすことは掟によって禁じられている。また、血を吸うために人間を殺害することも認められていない。誇り高いものが多く、恥辱にまみれるくらいなら死を選ぶ傾向にある。

バンパニーズ

700年ほど前に、バンパイアから分化した一族。吸血を魂を取り込むためのものと考えており、人を殺さずに血を吸うことを恥ずべき行為としている。そのため、人間の殺害を禁じた掟に反発し、独自の勢力を結成するに至った。現在、バンパイアとは不可侵条約を結んでおり、表立って争うことはなかったが、バンパニーズ大王の出現によって事態は一変。 互いの存亡を賭けて傷あるものの戦に臨むこととなる。

バンペット

バンパニーズに付き従う人間の集団。バンパニーズの血を得ているわけではないので、特殊な力こそ使えないが、逆にバンパイアやバンパニーズは使用できない重火器を操ることができる。なかにはモーガン警部のように、警察組織などに潜伏しているものもおり、バンパイアにとっては決して無視できない存在となっている。

バンピライツ

バンパニーズ、およびバンペットに対抗するため、アリス・バージェスとデビー・ヘムロックが中心となって結成した地下組織。主にバンパニーズの脅威に脅かされているホームレスなどで構成されている。のちにシルク・ド・フリークのメンバーも加わり、ダレン・シャンとともに傷あるものの戦を戦い抜いた。

場所

バンパイア・マウンテン (ばんぱいあまうんてん)

バンパイアたちの総本山。一族を統べるバンパイア元帥が控えており、12年に一度、バンパイアによる総会が開かれる。総会には原則としてすべてのバンパイアが参加することになっており、ダレン・シャンもラーテン・クレプスリーについて行く形で、バンパイア・マウンテンに向かっている。なお、道中は吹雪が吹きすさぶ難所となっているうえ、靴を履いて行ってはいけないという掟がある。

オスカ・ベルムの間 (おすかべるむのま)

バンパイア・マウンテンの玄関口にあたる大広間。「歓迎の広間」と呼ばれている。部屋を訪れた者には、まず上履き用の靴を渡され、水やワインなどの飲み物を差し出される。また、バンパイアの総会では、中央の黒板に参加者の名前が彫られている。

クレドン・ラートの間 (くれどんらーとのま)

バンパイア・マウンテンの食堂として使われている大広間。部屋の名前は、かつて仲間を助けるためにバンパニーズに立ち向かい、命を落としたというバンパイア将軍から取られており、部屋の中央にはその将軍の石像が飾られている。

元帥の間 (げんすいのま)

バンパイア・マウンテンに滞在しているバンパイア元帥が控える大広間。デズモンド・タイニーの手により、血の石とともにバンパイアへと譲渡された。中央には元帥たちの玉座が複数配置されており、その後ろには血の石が存在する。世界で最も硬い物質で構成されており、どんな武器、爆薬、薬品をもってしても、傷1つつけることはできない。

イベント・出来事

傷あるものの戦 (きずあるもののいくさ)

デズモンド・タイニーが予言している、バンパイアとバンパニーズの生存を賭けた戦い。バンパイアは、タイニーが告げた5回の戦いの中で、バンパニーズ大王を倒せば勝利となるが、逆に5回にわたる戦いをバンパニーズ大王が生き残った場合、バンパイアは滅び去ってしまう。また、バンパニーズ大王と戦うことができるのは、タイニーが選んだ3名のバンパイアに限定され、ダレン・シャン、ラーテン・クレプスリー、バンチャ・マーチがそれぞれ該当する。

その他キーワード

血の石 (ちのいし)

バンパイア一族の運命のカギを握るとされる、深紅の石。大きく分けて4つの用途があり、1つ目は仲間と認められたバンパイアの認定と登録。2つ目は、登録されたバンパイアの所在を知らせる機能。3つ目に、元帥の間を維持する魔力の供給。そして4つ目は、バンパイア一族の結束を促し、バンパニーズ大王と対抗する希望を与えることである。

リトル・ピープル (りとるぴーぷる)

デズモンド・タイニーに付き従う、不思議な生命体。人の半分ほどのサイズで、全身をぼろきれに包まれたぬいぐるみのような外見をしている。リトル・ピープル同士、あるいはタイニーに対しては、テレパシーで意思疎通を図れるため、喋ることは基本的にほとんどない。しかし、喋ってはいけないという掟があるわけではなく、ハーキャット・マルズのように、普通に会話を行うリトル・ピープルも存在する。 リトル・ピープルは、一度死を迎えた魂がタイニーと取引することにより、生まれ変わった存在であるとされる。

半バンパイア (はんばんぱいあ)

バンパイアに血を流し込まれた人間は、すぐに完全なバンパイアになるわけではなく、人間の細胞とバンパイアの細胞の両方を体内に備えた半バンパイアという存在となる。見た目は人間とほぼ変わらず、怪力や成長速度の緩和などが備わるものの、完全なバンパイアほどではない。逆に直射日光を浴びても問題はないなど、半バンパイアによるメリットも存在する。 なお、半バンパイアであるために差別を受けることは一切なく、ダレン・シャンは半バンパイアでありながら、のちにバンパイア元帥に就任している。

バンパイア将軍 (ばんぱいあしょうぐん)

一族の監督を務める責務を負ったバンパイア。罪のない者を殺めたり、バンパイアの力を悪用しようとした者を見つけ、裁くことのできる権限を持っている。バンパイア将軍になるためには、自らの実力を徹底的に磨き上げて、力量の試練を受け、合格しなければならない。

バンパイア元帥 (ばんぱいあげんすい)

一族のすべてを統率する地位にあるバンパイア。元帥になるためには、多くの戦いで功績を上げて、仲間の尊敬を得る必要がある。そのうえで、元帥の1人の推薦を受け、他の元帥もそれに同調すれば、晴れてバンパイア元帥に昇格できる。また、1人の元帥が反対した場合でも、過半数のバンパイア将軍が昇格に賛成すれば、元帥として認められる。 普段はバンパイア・マウンテンの元帥の間に控えているが、バンチャ・マーチやミッカー・バー・レスのように、戦場に出るため、長く留守にする元帥も存在する。

力量の試練 (りきりょうのしれん)

バンパイア・マウンテンで行われる、バンパイア将軍になりたい者が受けるテスト。体力と勇気が試される。数ある課題から5つを選び、すべてをクリアすれば合格となる。試練の内容は受ける直前まで知らされないが、楽にこなせる試練は1つも存在しないとされる。

水の迷路 (みずのめいろ)

力量の試練において、ダレン・シャンが受けることになった最初の試練。低い天井と壁に囲まれた巨大な人工の迷路。壁は取り外すことが可能で、試練のたびに道筋は異なる。試練の開始とともに、迷路全体に水が注ぎこまれ、約15分で天井に達する。挑戦者は、自らの体重の半分ほどの重さを持つ岩を引きずりながら出口を目指し、到達すれば達成となる。 この試練では、焦り、混乱し、諦めたものから死んでいくとされる。

針の道 (はりのみち)

力量の試練において、ダレン・シャンが受けることになった第2の試練。上下に鋭くとがった鍾乳石が無数に配置されており、串刺しにならないよう、鍾乳石を手足でしっかり掴みながら前に進む。鍾乳石には無数のささくれがあり、掴んでいるだけで流血とダメージは避けられない。さらに、鍾乳石自体は衝撃に弱く、バランスを取りながら進む必要がある。 なお、制限時間は存在しないが、ダレンはこの試練を踏破するために90分もの時間を必要とした。

炎の試練 (ほのおのしれん)

力量の試練において、ダレン・シャンが受けることになった第3の試練。水の迷路、針の道をしのぐほどの高難度の試練。ルール自体は、15分の間、部屋のいたる所に空いた穴から噴き出す炎を避け続け、焼け死ななければクリアという、単純明快なもの。しかし、炎の威力はすさまじく、一度でも直撃すれば、たとえバンパイアであってもひとたまりもない。 炎はパイプを通って穴から噴出するため、予測するためには耳を凝らして、炎の流れを読む必要がある。

血を飲んだイノシシとの決闘 (ちをのんだいのししとのけっとう)

力量の試練において、ダレン・シャンが受けることになった第4の試練。円形の闘技場を舞台に、バンパイアの血を飲んで狂暴化した巨大イノシシと真っ向から勝負するというものである。武器の使用も認められており、ダレンはモーニングスターを装備し、勝負に出た。

純化作用 (じゅんかさよう)

半バンパイアが、完全なバンパイアに進化する際に起こる作用。半バンパイアとなって長い年月を過ごし、体内のバンパイア細胞が元の人間の細胞を取り込むことで発生する。純化作用が起こると、全身からおびただしい数の体毛が生えて、視覚、聴覚が鋭敏になり、逆に味覚が完全になくなってしまう。また、成長が急激に起こるため、成長痛にも悩まされることになる。 純化作用を起こすまでには40年ほどの年月がかかるとされているが、ダレン・シャンはバンパイア元帥に昇格する際に、血を注ぎ込まれたため、純化が早まっている。

クレジット

原作

ダレン・シャン

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