ヴァンパイア十字界

ヴァンパイア十字界

強大な力を持つために封印された妻を救うため、ヴァンパイアの王は孤独な戦いを続けていた。しかしやがて地球の危機を知った彼は、それまで敵対していた人間やダムピールと手を組み、新たな侵略者との戦いに身を投じる。吸血鬼をテーマにしたSFバトル漫画だが、綿密に練り込まれた設定や謎によるミステリー要素も強い。「月刊少年ガンガン」平成15年9月号から平成19年3月号にかけて連載された作品。原作は城平京。

正式名称
ヴァンパイア十字界
ふりがな
ゔぁんぱいあじゅうじかい
原作者
城平 京
漫画
ジャンル
その他ホラー・オカルト
関連商品
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世界観

「吸血鬼は実は別の星からやって来た宇宙人だった」という設定のもと、敵対関係にあった人間と吸血鬼が手を取り合い、謎の侵略者「星人フィオ」と戦う姿を描く。原作者の城平京がミステリー作家であることを活かした緻密な設定と、各キャラクターが抱える秘密が少しずつ明らかになることで、最終的に思わぬ真実にたどり着くミステリー要素の強いストーリー展開が魅力。

作品誕生のいきさつ

原作者の城平京は、本作『ヴァンパイア十字界』のコミックス第1巻のあとがきで、知り合いの編集者から「木村有里という新人作家にヴァンパイアを題材にした作品を描かせたいので、原作を担当してほしい」というオーダーを受けたことから企画が始まったと語っている。当時別の作品の構想を練っていた最中だったうえ、ヴァンパイアを題材にした作品は非常に多いため独自性を出すのが難しく、城平京は原作の依頼を引き受けることに悩んだという。しかし「無茶を言うなあ」と思いつつも最終的には依頼を引き受け、連載がスタートすることとなった。

あらすじ

第1巻

かつて至高の王として称えられつつも、あまりの強さに敵はおろか同族からも存在を疎まれたローズレッド・ストラウスであったが、その妻であるアーデルハイトは愛する王が処刑されるのに耐え切れず、自らの力を暴走させ天変地異を引き起こしてしまう。女王は結束した人々に封じられてしまったため、ローズレッドは愛する妻を取り戻すため、封印を破壊するための旅を始めたのであった。そして1000年、ローズレッドは数々の追っ手や宿命の敵ともいえる「黒き白鳥」の宿り手と戦い続けるも、封印は偽者ばかりで未だにアーデルハイトを取り戻す事ができずにいた。迫害されていたダムピールの少女レティシアと共に旅を続けていたローズレッドであったが、第50代目の黒き白鳥である比良坂花雪ブリジット・アーヴィング・フロストハートの一派に遂に追い詰められてしまう。しかし、後一歩で勝負が決まるその時、当の花雪がローズレッドをかばい、ブリジット達に対してローズレッドの味方になると宣言する。

第2巻

相容れない存在であるはずの比良坂花雪に助けられ、瀕死の体でありつつも窮地を脱したローズレッド・ストラウスレティシアに、ブリジット・アーヴィング・フロストハートダムピールの執拗な追撃が襲い掛かる。傷ついた体で本来の力を出し尽くせないローズレッド、ダムピールとは相性の関係で不利な花雪、ダムピールとしてまだ半人前のレティシアは、協力し合ってダムピールを迎撃する。花雪とローズレッドは連携によって鉄扇寺風伯を負傷させる事に成功するが、刃蓮火の援軍によって事態はさらに緊迫したものになってしまう。一進一退の緊迫とした攻防を続ける戦場であったが、そこに突如乱入者が現れる。世界の財政界の黒幕である山田二郎は、花雪の祖父を名乗り、戦いを調停するために駆けつけたのだった。そしてブリジットは苦渋の思いで山田の言に従い、矛を収めて去って行くのであった。

第3巻

山田二郎ブリジット・アーヴィング・フロストハート、そしてローズレッド・ストラウス、三者三様の思惑が絡み合い、こう着状態となった状態で、ブリジットは山田を呼び出す。ブリジット達ダムピールの本気の警告に山田は動きを封じられ、場は再び混迷したものとなる。そして山田について来た比良坂花雪レティシアは、ブリジットから「ローズレッド・ストラウスはアーデルハイトを愛していない」という衝撃の真実を伝えられる。真実を確かめようとローズレッドに話を聞いた二人は、そこでローズレッドが本当に愛したのはステラ・ヘイゼルバークという名の娘で、アーデルハイトは嫉妬に駆られてステラを惨殺したという話を聞く。ローズレッドの真の目的がアーデルハイトへの復讐だと察した花雪は、このままでは自らの目的を達成させる事が困難になると大きく動揺する。そして花雪から話を聞いた山田も、ローズレッドに対抗するためブリジットの協力を得ようと画策し、ブリジットに自らの目的を語り始めるのだった。

第4巻

山田二郎の真の目的、それは地球を侵略しに現れた宇宙人「星人フィオ」に対抗するため、地球最強の魔人であるローズレッド・ストラウスアーデルハイトの協力を得ようというものだった。荒唐無稽な話をすぐに信じる事ができなかったブリジット・アーヴィング・フロストハートであったが、星人フィオからの「第三次退去勧告」が来た事でそれが真実であったと痛感する。星人フィオからの第三次退去勧告によって突如、世界各国の空に異形の物体の立体映像が浮かび上がり世界は大混乱に陥ってしまったのだった。このままでは1年後に地球人類は星人フィオによって滅ぼされてしまうため、ヴァンパイアダムピール、人間の三つの勢力は一時的に手を組む事を約束する。星人フィオの本拠地であるビッグ・モーラを破壊する作戦の指揮を執る事となったメリル森島は、「オーバームーン作戦」を立案し、ローズレッドには宇宙に出るための準備、ブリジットにはアーデルハイトの封印の破壊と、それぞれに役割を課すのであった。

第5巻

刃蓮火に過去を聞かれたブリジット・アーヴィング・フロストハートは、1000年前ローズレッド・ストラウスアーデルハイトを身近で見続けた自らの過去を語り始める。「腐食の月光」の名から高慢で残虐と世間では思われていたが、アーデルハイトは意外にも心優しく穏やかな性格をしており、ローズレッドとブリジット、アーデルハイトは三人で穏やかな日々を過ごしていたという。そんなある日、ローズレッドがただの村娘であるステラ・ヘイゼルバークに惚れて、そのまま拾ってきたのだった。初めての恋に浮かれるローズレッドに不機嫌になるブリジットであったが、最終的にはステラを認め、良好な関係を築くに至った。しかしブリジットは、その幸せがステラとそのお腹の子の暗殺という形で終わり、ローズレッドが苦悩で心を殺す姿をその眼で見てしまう。愛する者を失ったローズレッドは王となり、国に大いなる繁栄をもたらしたが、それは同時にローズレッドという大きな力を周囲が恐れ、排斥しようとする流れを生み出してしまったとブリジットは語るのであった。

第6巻

ローズレッド・ストラウスの処刑が決まったその時に、アーデルハイトが「ステラの首飾り」を持っていた事をローズレッドとブリジット・アーヴィング・フロストハートは知る。ブリジットは復讐に向かうローズレッドを止めようとしたが、ローズレッドによって意識を奪われてしまった。そして眼を覚ましたブリジットが見たのは、世界を滅ぼそうとする「腐食の月光」の脅威だった。世界を救うためマリア・セイバーハーゲンの協力を取り付けたブリジットは、数百人がかりの儀式を行いアーデルハイトを封印する事に成功し、一時の平和を得る。しかし「腐食の月光」を眼にした人類はヴァンパイアの迫害を始め、同時にローズレッドは復讐のためにブリジットを裏切り、出奔してしまう。そしてブリジットは生き残った同族を助けるため、セイバーハーゲンと協力してローズレッドと戦い続けたと語るのであった。その話を聞いていたレティシアメリル森島はブリジットの話に違和感を感じ、まだ隠された真実があるのではないかと考察を続けた。そしてそれは、ローズレッドが「太陽を克服したヴァンパイア」である、という形で明かされる事となった。

第7巻

1000年前、ローズレッド・ストラウスが同族からも恐れられたのは、太陽を克服したのが理由だった。「オーバームーン作戦」反対派の攻撃を真昼間に難なく迎撃して見せたローズレッドは、遂にその真実を白日の下にさらす。これによって主導権をローズレッドに握られたメリル森島は、アーデルハイトの復活で事態が動く事に期待する。そして最後の封印がブリジット・アーヴィング・フロストハートによって破壊される事でアーデルハイトが復活するが、そこでアーデルハイトは「ストラウスを救って」と思わぬ言葉をこぼす。今までの真実をすべてひっくり返す彼女の言葉にブリジットは取り乱し、ダムピール達も混乱する。アーデルハイトの話した真実とローズレッドの嘘。矛盾する情報に翻弄される一行であったが、森島はその中でローズレッドの真意にたどり着く。ローズレッドは人間とヴァンパイアの全面戦争を防ぐため国を滅ぼし、ブリジットに後事を託したのだった。明かされるいくつもの過酷な真実に打ちのめされた一行はローズレッドに真実を確かめ、そこでアーデルハイトの新たな真実を知る事となる。

第8巻

ステラ・ヘイゼルバークを殺したのはアーデルハイトではなかった。取り乱したアーデルハイトは、涙ながらに衝撃の真実を語る。ローズレッド・ストラウスが真実を知る事で、ステラとローズレッドの二人が不幸になる事を避けたかったアーデルハイトは、自ら罪を被ったのである。真実をつまびらかにしたヴァンパイアダムピールは、過去の禍根を乗り越え手を取り合う事を決め、ビッグ・モーラの打倒を目指す。ローズレッドはブリジット・アーヴィング・フロストハートと協力して一つの策を実行するが、それによって「オーバームーン作戦」は破綻してしまう。しかし独自に新たな策を練っていたローズレッドは、ビッグ・モーラの破壊は可能であると語る。さらにブリジットはダムピールを救う「最後の羽計画」を始動し、事態は新たな局面を迎えるのだった。その状況の中、比良坂花雪は完全に蚊帳の外に置かれる事となったが、黒き白鳥の限界を迎え暴発してしまう。ローズレッドによって一時的に抑止されたが、そこでローズレッドが隠し続けた残酷な真実が明らかになるのだった。

第9巻

すべての真実を知った比良坂花雪は、ローズレッド・ストラウスを殺すか殺さないか、最後の選択を委ねられる。何が正しく、何が間違っているのかわからない重い選択を前に葛藤する花雪は、ローズレッドがビッグ・モーラ打倒作戦を実行するまでの猶予期間に、人々と触れ合い、自分の中の気持ちに向き合う。そして花雪は苦悩の果てに、迷わず流されず自分が進むべき道を選択する。

登場人物・キャラクター

ローズレッド・ストラウス (ろーずれっどすとらうす)

約1000年前に滅んだヴァンパイアとダムピールの国である「夜の国」の王を務めたヴァンパイアの男性。実年齢は1300歳ほどだが、目が隠れそうなほどの前髪と、水色の髪を肩につくほどまで伸ばしたボブヘアの若い男性の姿をしている。「赤い薔薇」の意味を持つ「ローズレッド」という名前から、周囲からは「赤バラ」と呼ばれることが多い。 本来1000歳を超えたヴァンパイアが王に即位するといわれている中、約200歳で王になったほどの圧倒的な実力を持ち、穏やかで落ち着いた性格に加え、頭脳明晰な戦略家。そのため素晴らしい王になると考えられていたが、あまりにも強すぎる力から同族であるヴァンパイアとダムピールからも恐れられ、処刑されることとなった。しかし、その事実に正気を失くした妻のアーデルハイトが暴走。 ローズレッド・ストラウスの命は助かったものの、アーデルハイトは国に甚大な被害を及ぼしたことで封印されてしまった。ローズレッドはそれに怒って「夜の国」を滅ぼし、アーデルハイトの封印を解くためだけに戦う、ダムピールと人間の両方から恐れられ、命を狙われる存在となった。

比良坂 花雪 (ひらさか かゆき)

「黒き白鳥」の第50代目宿主の少女。山田二郎の孫娘だが、素性を隠し「比良坂」と名乗って暮らしている。前髪を目の上で切り、お尻まで伸ばした赤毛ストレートロングヘアを高い位置でツインテールにし、一部を縦ロールにしている。容姿が先代の第49代目宿主である小松原ユキに非常によく似ており、丁寧な口調で話す。本来はローズレッド・ストラウスの最大の敵として立ちふさがる予定であったが、星人フィオの襲撃により、共闘を持ちかける。 クールで寡黙な性格だが、ずれた冗談を言ったりくまのぬいぐるみを「心の友」と呼び非常に大切にしていたりと、とぼけたかわいらしい一面もある。

ブリジット・アーヴィング・フロストハート (ぶりじっとあーゔぃんぐふろすとはーと)

ローズレッド・ストラウスの命を狙うダムピールの女性。前髪を目の上で切り、腰まで伸ばした金髪ストレートロングヘアの若い女性の姿をしている。メリル森島からは「姐さん」と呼ばれている。「夜の国」で生まれた当時はヴァンパイア王とその側室のダムピールの間に生まれた王女だったが、10歳の頃に純血のヴァンパイアであるアーデルハイトが生まれたことで王家から追放され、ヴァンパイア王になる前の当時60歳のローズレッドに育てられるようになった。 そのためローズレッドとは血の繋がりはないが、娘同然に育てられ、成長後も周囲からは恋人と誤解されるほど親しかった。しかし、ローズレッドの裏切りにより、現在は敵対関係にある。稀代の指導者として知られており、戦いにおいても屈指の戦術家で、霊力も魔力も強く、剣術においても刃蓮火の次に優れた腕を持つ実力者。 自らを育て上げたローズレッドのことを今でも深く想っており、現状に苦しんでいる。ローズレッドの愛妾であるステラ・ヘイゼルバークを殺害した犯人がアーデルハイトであることを知っており、実はローズレッドがアーデルハイトの封印を解こうとしているのは、救うためではなく、その手で殺すためなのではないかと考えている。

レティシア

ローズレッド・ストラウスの仲間で、ダムピールの少女。あだ名は「レティ」で、ブリジット・アーヴィング・フロストハートをはじめとした敵対者たちからは「山猫」と呼ばれている。ヴァンパイアの血の濃度が薄く身体の成長が遅いため、幼い少女にしか見えないが、実年齢は68歳。前髪を目の上で切り、顎の高さまで伸ばした外はねボブヘアの一部を2本の三つ編みにした髪型で、頭頂部からアホ毛が一房飛び出している。 一途で肝の据わった性格。幼い頃は母親と暮らしていたが、正体がダムピールであると知られたことで住んでいた村を追われ、レティシア1人が逃げ延びる形となり孤独に暮らしていた。そこを50年前、旅の途中のローズレッドと出会い、レティシアの境遇を不憫に思ったローズレッドに誘われて一緒に旅をするようになった。 ローズレッドのことを非常に大切に想っており、何があっても彼の味方でいたいと考えている。

刃 蓮火 (じん れんか)

ブリジット・アーヴィング・フロストハート、鉄扇寺風伯、エセルバート高橋の仲間で、ローズレッド・ストラウスを倒すため戦うダムピールの男性。前髪を真ん中で分けて目の上で切り、銀髪をツンツンに立て、後ろ髪を腰まで伸ばして1つに結んだ若い男性の姿をしている。ぶっきらぼうに見えるが、真面目で心優しい性格。 先代である第49代目「黒き白鳥」の小松原ユキに想いを寄せており、ユキの過酷な運命にも負けない前向きな人柄に惹かれていた。だがユキをローズレッドに殺されて以来、ローズレッドに強い憎しみを抱き、現在ではユキの仇を討つためだけに戦っている。しかし、ローズレッドの過酷な過去を知り、次第に自分の生き方に悩むようになる。

鉄扇寺 風伯 (てっせんじ ふうはく)

ブリジット・アーヴィング・フロストハート、刃蓮火、エセルバート高橋の仲間で、ローズレッド・ストラウスを倒すため戦うダムピールの男性。日本の鎧兜を着込んでおり、顔や表情が見えない。堅物でリアリストな性格。屋台式のラーメン屋を営んでおり、味の評判は良いものの「店主が怖い」と恐れられているため、客は少ない。

エセルバート 高橋 (えせるばーと たかはし)

ブリジット・アーヴィング・フロストハート、刃蓮火、鉄扇寺風伯の仲間で、ローズレッド・ストラウスを倒すため戦うダムピールの男性。前髪を目の上で切って真ん中で分け、肩につかない長さの外はねボブヘアをした少年の姿をしている。心優しくやや気の弱い性格で、敵であっても女性や子供は殺さないという考えの持ち主。 仲間たちに比べると戦闘能力ではやや劣るところもあるが、情報収集能力に長けている。ダムピールではあるがヴァンパイアの血が薄いため、昼間も普通に出歩くことができる。昼間は学生として生活しているが、成績は芳しくない。

小松原 ユキ (こまつばら ゆき)

「黒き白鳥」の第49代目宿主となったダムピールの少女で、故人。前髪を右寄りの位置で分けて目の上で切り、腰まで伸ばした赤毛のストレートロングヘアを高い位置でツインテールにした少女の姿をしている。明るくさばさばした性格で、男性のような口調で話し、「黒き白鳥」の背負う過酷な運命にも負けない前向きな性格。ローズレッド・ストラウスを倒すため、仲間の刃蓮火とともにローズレッドに挑むが敗北し死亡。 次代の「黒き白鳥」宿主である比良坂花雪に能力を引き継いだ。戦闘能力はローズレッドに匹敵するほどだった。

ステラ・ヘイゼルバーク (すてらへいぜるばーく)

ローズレッド・ストラウスの元恋人で故人。享年18歳。前髪を目の上で切り、お尻まで伸ばした桃色のストレートロングヘアを、髪の一部だけを低い位置で結んだ髪型をしている。明るくおっとりした性格で、やや天然気味なところがあるが、非常に精神的にタフな人物。ローズレッドたちヴァンパイアとダムピールのの住む「夜の国」の隣国で暮らしていたが、「夜の国」との戦争で住んでいた村をなくし、行く当てをなくしていた。 そこを戦の平定中だったローズレッドに保護され恋に落ちた。その後ローズレッドの愛妾となるが、村娘が愛妾では体面が悪いという理由から、当時の元老のヘイゼルバーク家を後見人としヘイゼルバーク姓を名乗るようになった。のちにローズレッドとの子供を妊娠するが、ある日お腹の子供ごと何者かに殺害された。 マリア・セイバーハーゲンとは義理の親子で、孤児だったところを保護され、14歳になるまで一緒に暮らしていたことがある。

アーデルハイト

ローズレッド・ストラウスの妻で、ブリジット・アーヴィング・フロストハートの異母妹のヴァンパイア。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、腰まで伸ばした金髪ロングウェーブヘアを三つ編みハーフアップにしてまとめている。物体や生物、光までも侵食して腐敗させる力を持つことから「腐蝕の月光」とも呼ばれる。非常に稀有な純血のヴァンパイアとして生まれ、高い潜在能力を持つが、優秀な異母姉のブリジットと比較されるあまり自分に自信がなく、おどおどした性格。

マリア・セイバーハーゲン (まりあせいばーはーげん)

ステラ・ヘイゼルバークとシンシアの母親で、ブリジット・アーヴィング・フロストハートいわく「唯一ローズレッド・ストラウスに勝利した存在」である女性将軍。大霊力使いとして「黒き白鳥(ブラックスワン)」を生み出し、アーデルハイトを封印した張本人でもある。「マリア」という名を隠して主に「セイバーハーゲン」と名乗っており、顔が兜で隠れているため男性と誤解されやすいが女性。 「万の術と万の武器を持ち、その交差するところに無限の力を生み出す」という逸話から「無限十字」の通り名で知られている。厳格で大義のために行動する、誰よりも平和を望む人物。ある日占いで「ローズレッドが災いをなす」という結果が出た日から、ローズレッドの存在を人間の敵として強く恐れていた。 そのためローズレッドを倒すためであれば、孤児として引き取り実の娘同然に育てた子供たちさえも利用する。

シンシア

「黒き白鳥」の初代宿主となった少女。マリア・セイバーハーゲンが、孤児を引き取って育てたうちの1人で、義理の娘でもある。前髪を目の上で切って、胸の下まで伸ばしたストレートロングヘアをポニーテールにし、ポニーテールの中に細い三つ編みを2本作った髪型をしている。義母であるマリアの願いを叶えようとローズレッド・ストラウスを討つため戦うが、「黒き白鳥」になってから1年ほどでローズレッドに敗北し、死亡した。

山田 二郎 (やまだ じろう)

世界の政財界を牛耳り、その気になれば10か国以上の軍隊を動かすほどの力を持つ、「現代の黒幕」と評される年老いた男性。比良坂花雪の祖父でもある。和服を着て顔を仮面で隠しているため、表情は読み取れない。周囲からは主に「GM御前」と呼ばれている。ちなみに「GM」は「グレートマスク」の略。星人フィオの襲来を受け、地球を守るために、本来敵であるローズレッド・ストラウスと、封印されたままのアーデルハイトの力が必要であると考え、ローズレッドに協力を依頼する。 しかし星人フィオを撃退した後はこれまで通りの関係に戻り、ローズレッドを殺すつもりでいるため、ローズレッドとは休戦協定を結んでいるに過ぎない。

メリル 森島 (めりる もりしま)

星人フィオとの戦いにおいて、指揮官を務める若い男性。階級は三佐。前髪を目の上で切り、腰まで伸ばした茶髪ストレートロングヘアを高い位置でポニーテールにしている。左目の下に入れ墨を入れている。飄々としたつかみどころのない性格で、自らを「不良軍人」と称しているが、分析力・洞察力に長ける非常に優秀な人物。「オーバームーン」作戦がきっかけでローズレッド・ストラウスらと知り合い、ローズレッドたちヴァンパイアの歴史や境遇を知るうち、ブリジット・アーヴィング・フロストハートに想いを寄せるようになる。

萩 なずな (はぎ なずな)

宇宙ロケット「ツクヨミ号」の開発担当者の若い女性。前髪を目の上で切り、肩につくほどのセミロングヘアをしている。3年前、ビッグ・モーラに到達できるロケットを開発するという目的で研究施設のある島へやって来た。明るく好奇心旺盛な性格で、星人フィオを倒すため、「ツクヨミ号」の乗組員として島へやって来たローズレッド・ストラウスに関心を持つ。

李 紅飛 (りー ほんふぇい)

宇宙ロケット「ツクヨミ号」の開発担当者の若い男性。前髪を右寄りの位置で分けて目の上で切り、ツンツンに立てた髪に眼鏡をかけている。3年前、ビッグ・モーラに到達できるロケットを開発するため、研究施設のある島へやって来た。優秀だが真面目でやや気の弱い性格で、萩なずなには振り回されることが多い。

その他キーワード

黒き白鳥 (ぶらっくすわん)

強大なヴァンパイア王を倒すために生まれた秘法で、マリア・セイバーハーゲンが生み出した。人間が世に放った最凶の呪いといわれており、その正体は霊的な寄生体。霊力の強い人間に取り憑くことで、取り憑いた人間「宿主」に、ヴァンパイア王を倒す力を持った特殊な両腕を与える。しかし、取り憑いてから5年以内に宿主がヴァンパイア王を殺すことができなかった場合は宿主を食い殺し、新しい宿主を探す。 宿主が死に、「黒き白鳥」が次の宿主に移動する際は、それまでの宿主の記憶・霊力・技のすべてを受け継ぎ、身体能力も飛躍的に向上するため、宿主は代を重ねるほどに強くなっていく。

ヴァンパイア

宇宙からやって来た地球外生命体。人と同じ姿をし、人との間に子をもうけ、人として暮らしながら人を超越した力を持つ。宇宙空間を何万年にもわたり身体一つで移動した結果、移住先に地球を選んだ。原住生物の遺伝情報を吸血することで吸収・分析しながら、その形態や機構を複製することで生活している。しかし、複製の段階で何らかの変性があったことから、太陽光線を受けると代謝機能が暴走し、肉体が崩壊してしまうという性質を持っている。

ダムピール

ヴァンパイアと人間の混血の存在。ヴァンパイアの血の濃度によって、どれだけ太陽光線に耐えられるかと、成長の速度が違う。たとえばヴァンパイアの血の濃度が薄いエセルバート高橋は、日中でも外を移動し、太陽光を浴びても平気な身体をしている。また、特にヴァンパイアの血の濃度が薄いレティシアは肉体の成熟が非常に遅く、大人の女性の身体になるまでに200年ほどかかってしまう。

星人フィオ (せいじんふぃお)

5年前、突如地球にコンタクトを取り「地球の半分を譲渡していただきたい」と持ち掛けてきた謎の宇宙人。10年ほど前に太陽系に到達し、偵察機を通して5年間文明を観察した後、地球を移住地に選んだとされている。1年以内に土地の譲渡を行わない場合は、地球に攻撃を加え占領すると声明を出している。

ビッグ・モーラ (びっぐもーら)

星人フィオたちが使用している移民船。球形で、目玉のようなクレーターのような巨大な穴がいくつも空いた不気味な形をしており、船には見えない姿である。直径は約3460キロで、月とほぼ変わらない。星人フィオが太陽系に到達したのと同じ10年前から、地球から約42万キロ離れた地点から月の背後にぴったりと隠れ、ずっと地球の周りを回っていた。 現在は地球人を威嚇する目的から、リトル・モーラを用いて立体映像を映し、地球のもっと近くにいるように見せている。

リトル・モーラ (りとるもーら)

星人フィオの持ち物で、ビッグ・モーラがあたかも地球のすぐそばにあるように見せるため、立体映像を映している小型機。多数存在し、地球の上に浮かんでいる。その名の通り、ビッグ・モーラがそのまま縮んだような形状をしており、球形で、目玉のようなクレーターのような巨大な穴がいくつも空いた不気味な形をしている。最初は立体映像を移す役割のみを行っていたが、その後地球人を威嚇・監視するため地球に落下。 ミサイルやロケットのような地球上から発射される物体の監視を行い、ビッグ・モーラの脅威であると判断すると攻撃を加える武器としても使われるようになる。

オーバームーン

星人フィオたちが乗り込むビッグ・モーラを破壊するための作戦名。6人乗りの有人ロケット「ツクヨミ号」でローズレッド・ストラウスと、封印を解かれ復活したアーデルハイトを乗せ、月後方まで輸送。そしてビッグ・モーラを破壊し、再び「ツクヨミ号」に乗せて2人を地球へ帰還させるという非常にシンプルな作戦。ローズレッドとアーデルハイトのすさまじい戦闘能力であれば充分成功可能な作戦であるため、ローズレッドらと敵対していた山田二郎のような人間たち、ブリジット・アーヴィング・フロストハートのようなダムピールたちも地球のために一時休戦し、アーデルハイトの復活に協力することになる。

純血ヴァンパイアの屍 (じゅんけつゔぁんぱいあのしかばね)

ヴァンパイアと人間の混血種であるダムピールを、人間に変化させる「人化の術」を行うために必要な触媒。約5000年前、当時のヴァンパイア王テオドールが長年の研鑽の末に刑罰として編み出したもので、一度だけ使用されたことがあるといわれている。「刑罰」と言われる理由は、たとえばダムピールが悪事を働いてヴァンパイアに攻撃し、殺害した場合、自らが殺したヴァンパイアの屍によって人間に変化させられ、ダムピールとしての力を失うため。 「人化の術」は魔職と触媒の数によって効果の範囲を広げることができ、たとえばローズレッド・ストラウスとアーデルハイトの2人の屍があれば、存命のダムピールのほぼ全員を人化することができるといわれている。

ステラの首飾り (すてらのくびかざり)

ローズレッド・ストラウスがステラ・ヘイゼルバークに贈った首飾り。鎖に手のひら大ほどの大きな楕円形の、魔力で加工された石の付いたチャームがかかっており、チャームには三日月と花の意匠が施されている。高価な装飾品を好まないステラのために「金銭的価値がないものなら受け取ってもらえるかもしれない」と考えたローズレッドが自作したもので、一見ただの石ころや手に入りやすい金属でできているようだが、実際はローズレッドが月まで出かけて採取した石で作られている。

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原作

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