赤ん坊帝国

赤ん坊帝国

世界中の赤ん坊たちが言葉と運動能力を手に入れ、いっせいに姿をくらませて「赤ん坊帝国」を作り上げた。彼らの目的は、大人たちが気づかないうちに地球侵略を進めていた「遊星X人」から地球を守ることであった。赤ん坊が巨大ロボット化した大仏を操って侵略宇宙人と戦うという、奇想天外なSF活劇漫画。赤ん坊は喋ることこそできないが、その思考は天才的であり、成長するにつれて普通になってしまうという発想が、この物語の骨子である。少年向け漫画月刊誌で、1952年6月号から53年9月号まで掲載されたが(うち1回休載)、当時の連載ページ数が少なかったため、全体のページ数は百ページに満たない。後に泉ゆき雄の作画で同じ月刊誌にリメイクされ、1964年新年号から2年間連載は続いた(物語の展開はかなり改変されている)。こちらは何度か単行本化されている。しかし、今まで高野よしてる版は単行本化されたことはなく、同人誌『少年なつ漫王第二十八号<高野よしてる大特集>』にまとまって掲載されただけである(発行は2000年6月)。

正式名称
赤ん坊帝国
ふりがな
あかんぼうていこく
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
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概要・あらすじ

世界中の三歳以下の赤ん坊たちがある日いっせいに姿をくらます。彼らは思考を言語化するおしゃぶりと、身体を大人のように自由に動かす機械を手に入れ、秘かに「赤ん坊帝国」を作り上げていた。彼らが国を作った理由は、大人たちが気づかぬうちに、星ごと移動して地球を侵略しようとする「遊星X人」から地球を守ることであった。赤ん坊たちと「遊星X人」は、様々な超兵器を繰り出して奇想天外な科学戦を繰り広げるのだった。

登場人物・キャラクター

コモリー博士 (こもりーはかせ)

赤ん坊帝国の大統領で、シルクハットをかぶり蝶ネクタイを締めスーツを着ている赤ん坊。思考を言語化するおしゃぶりと、身体を自由に動かす機械のおかげで大人のように振舞うことができる。赤ん坊帝国の指揮を執る。泉ゆき雄版では大統領の名前は三郎になっている。

一般兵士の赤ん坊 (いっぱんへいしのあかんぼう)

ヘルメットにパイロットスーツを身に着けた赤ん坊の兵士。おしゃぶりは離さない。「遊星X」に潜入したり、操縦器を奪われた大仏の中に忍び込んでコントロールを取り戻したりと、とても勇敢である。それぞれに特に名前はつけられておらず、このような表記となった。泉ゆき雄版では「まさかり部隊」の隊長「金時」という兵士キャラが登場する。

遊星X人 (ゆうせいえっくすじん)

星ごと地球に忍び寄り、侵略しようとしていた。高度な科学力を持つ。遊星X人の外見は、特に人間と変わらず、胸にXマークのついたコスチュームを着ていることで違いを見せている。侵略を望む者だけではなく、侵略反対派の科学者も存在している。「星ごと移動して侵略」は、同時期人気のあった小松崎茂の絵物語『地球SOS』の「バグア彗星人」も同様の行為を行っていた。

盗賊 (とうぞく)

遊星Xからの侵略が小休止したとき、赤ん坊帝国に忍び込んで「小型人間の生える植物」を盗み出す。彼らが自分たちの血液を植物に与えると、悪人の小型人間が生えてくる。悪い小型人間は赤ん坊帝国から盗み出した機械を「奈良の大仏」の内部に組み込み、大仏を巨大ロボットにしてしまうのだった。 赤ん坊帝国のコモリー博士は、これに対抗するために「鎌倉の大仏」をロボットにして戦わせるが、負けてしまったので溶解液で盗賊と悪の小型人間を溶かしてしまう。

集団・組織

侵略反対派 (しんりゃくはんたいは)

『赤ん坊帝国』のグループ。遊星X人の中に存在する、地球侵略に反対する科学者の一派。星に侵入してきた赤ん坊帝国の兵士たちに、労働力や兵力として使える小型人間の生える植物を渡す。

その他キーワード

思考言語化おしゃぶり (しこうげんごかおしゃぶり)

『赤ん坊帝国』に登場する架空発明品。0歳から3歳までの赤ん坊の天才的な思考を、言葉にして発するおしゃぶり。作中では明確なアイテム名はない。

運動能力付与機械 (うんどうのうりょくふよきかい)

『赤ん坊帝国』に登場する架空発明品。0歳から3歳までの赤ん坊に、大人並みの運動能力を与える機械。これによって赤ん坊たちは、大人のような行動ができるようになった。形状不明。作中では明確なアイテム名はない。

ビニロール

『赤ん坊帝国』に登場する架空発明品。身につけると、姿が消える不思議な布。作動原理不明。赤ん坊帝国の兵士たちは、これを用いて遊星Xの内部に侵入した。横井福次郎の絵物語、『不思議の国のプッチャー』(1947--48)に類似技術「透明外套」が見受けられる。

超小型飛行機 (ちょうこがたひこうき)

『赤ん坊帝国』に登場する架空発明品。赤ん坊用のものすごく小さい飛行機で、卵のような胴体と、短い翼の両端に流線型のエンジンのようなものをつけている。

地球移動用ロケット (ちきゅういどうようろけっと)

『赤ん坊帝国』に登場する架空発明品。地球が遊星Xから離れるために、地球に取り付けた移動用ロケット。これのおかげで遊星Xからの侵略は小休止する。特撮映画『妖星ゴラス』(1962)と発想が似ているが、こちらのほうが十年早い。

小型人間 (こがたにんげん)

『赤ん坊帝国』に登場する架空発明品。遊星X人の侵略反対派の科学者からもらった、使役用の生体ロボットのようなもの。植物に血を与えると、小型人間が生えてきて、労働や戦闘をしてくれる。悪人が植物に血を与えると、悪いことをしたくてたまらない小型人間が生まれる。高野よしてるの『13号発進せよ』にも類似の存在が登場する(毛を植えるとその毛の持ち主の人間に化けるロボット)。

奈良の大仏 (ならのだいぶつ)

『赤ん坊帝国』に登場する架空発明品。盗賊たちに作られた悪い小型人間が、赤ん坊帝国から盗み出した機械を「奈良の大仏」の内部に組み込んで作ってしまった巨大ロボット。操縦機で動かす。東京に進攻し、赤ん坊帝国が改造した「鎌倉の大仏」と海で激突して勝つが、赤ん坊帝国の溶解液に溶かされてしまう。

鎌倉の大仏 (かまくらのだいぶつ)

『赤ん坊帝国』に登場する架空発明品。盗賊たちが作って暴れる奈良の大仏ロボットに対抗して、赤ん坊帝国は鎌倉の大仏の内部に機械を組み込んで動けるようにして、奈良の大仏と激突させる。結果は奈良の大仏に負けてしまうのだが、赤ん坊帝国は溶解液で悪人ごと奈良の大仏を溶かしてしまう。この後飛行装置を組み込んで、赤ん坊帝国の守護神となった鎌倉の大仏だったが、その後再来した遊星X人に操縦機を奪われ、大仏で東京に原爆を仕掛けられピンチとなる。 しかし赤ん坊帝国の勇敢な兵士の捨て身の行為によって、東京は救われる。

大仏の操縦機 (だいぶつのそうじゅうき)

『赤ん坊帝国』に登場する架空発明品。手で持てるくらいの大きさの箱に、ダイヤルが3つほど付いている形。『鉄人28号』(1956年開始)よりも4年前に描かれているが、1930年代に海野十三がすでに『人造人間エフ氏』という小説で、操縦機でロボットを動かすということをやっているので、これが特に日本初というわけではない。

溶解液 (ようかいえき)

『赤ん坊帝国』に登場する架空発明品。何でも溶かしてしまう液体。赤ん坊帝国の鎌倉の大仏が、盗賊の操る奈良の大仏に敗れてしまったため、赤ん坊帝国は溶解液で盗賊ごと奈良の大仏を溶かしてしまう。海野十三の有名な『火星兵団』という小説に、火星人のパワード・スーツを溶かす金属腐食ガスというものが出てくるが、それを思わせるアイテムである。

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