機動警察パトレイバー

機動警察パトレイバー

多発するロボット型作業機械レイバーによるレイバー犯罪に対応すべく、警視庁に専門部署特科車両二課(特車二課)が設立。近未来の東京を舞台に特車二課の面々とパトロールレイバー・通称パトレイバーの活躍が描かれる。第36回小学館漫画賞少年部門受賞作。

正式名称
機動警察パトレイバー
ふりがな
きどうけいさつぱとれいばー
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
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世界観

舞台となるのは20世紀末の東京。過去に首都圏で震災があったため、瓦礫の処理と温暖化による海面上昇対策として東京湾を堤防で囲み、湾内を埋め立てる大規模工事計画「バビロンプロジェクト」が進行中。これにより、東京都市部における用地不足が解消されるとされる。これらの建設作業には大量のレイバーが導入され、工期の短縮、効率化に寄与している。こうしたレイバーの増加により、レイバーを使用した犯罪が急増したことから、警視庁は警備部内に「特殊車両二課」を設立し、「パトレイバー」の導入へと進んでゆく。

また「バビロンプロジェクト」は東京湾の生態系にも悪影響が出るとし、自然保護団体などが様々な形で抗議活動をしており、現実のグリーンピース同様、過激な行動から警察が出動する事態になることも。

大規模工事により労働者が不足することでレイバーが普及したが、同時に外国人労働者も多数働いており、彼らの差別待遇などが問題になることもある。

連載当時は携帯電話が普及し始めた頃だが、作中ではほとんど普及しておらず、ポケットベルや車載電話、警察無線などが登場するのみ。

作品中に登場する東京湾岸などの大規模開発については、『究極超人あ~る』で鳥坂先輩のモデルとなった人物が東京都の職員であったため、実際の資料を参考にしている。

連載が始まったのが冷戦崩壊以前ということもあって、作中では東側の社会主義国群が存在する。西ドイツ国防軍が国境警備で使用するレイバーブロッケン」が登場する。

作品が描かれた背景

元々は1975年に上京したゆうきまさみが、アニメやマンガファンたちが集まる、東京・江古田にある喫茶店「まんが画廊」に通い始め、架空のアニメの設定などを考える「企画ごっこ」という遊びの中から生まれた企画である。1982年頃にメカデザイナーの出渕裕と出会ったゆうきまさみは、その「企画ごっこ」のノートを見せ、出渕は構成としてSF作家の火浦功を引き入れ『機動警察パトレイバー』として再び企画を練り直す。しかし制作プロダクションへのプレゼンに失敗し、火浦も作家業が忙しくなったために撤退する。1985年に小学館で『究極超人あ~る』の連載を開始するが、翌86年には出渕に加えて脚本家の伊藤和典、キャラクターデザイナーの高田明美などアニメのスタッフが参加し、再び企画をリスタートさせる。結果、バンダイのプロデューサー・鵜之澤伸へのプレゼンに成功するが、テレビシリーズではなくOVAとして制作されることとなる。そして最後に企画に参加したのが演出家の押井守で、これら5名の共同名義として「ヘッドギア」という名称が使われた。

マンガ版にしても、アニメ版への援護射撃という形で短期連載のつもりだったが、約6年の長期連載となった。

作品構成

単なる犯罪者ではなく、過激な環境テロリストや生体工学によるクリーチャーの暴走、多国籍企業の組織的犯罪や愉快犯など、遠くない未来に起こり得るであろうリアリティのある事件を扱っている。勧善懲悪というスタイルではなく、時には社会の構造的問題故に、一警官では解決できないような展開も。

本編のメインストーリーとなるのは、多国籍企業シャフト・エンタープライズ・ジャパン企画7課の生みだした試作機、グリフォンとの対決。途中に挟む「廃棄物13号」のエピソードさえも、墜落したグリフォン回収絡みの話である。これらメインストーリーとは別に、各キャラクターの魅力を掘り下げる番外編的なエピソードもちりばめられている。

アニメや小説版など、メディアごとに若干設定が異なっており、漫画版ではアメリカの捜査官として登場する香貫花・クランシーが特車二課に配属されているなど細かい差異が存在する。

あらすじ

20世紀末。多足歩行式大型マニュピレーター、通称「レイバー」があらゆる産業に進出したことによって、レイバー犯罪と呼ばれる事件が多発した。警視庁は警備部内に特殊機械化部隊を新設。パトロールレイバー中隊を編成してこれに対応した。しかし頻発するレイバー犯罪に対し第1小隊に加えて第2小隊が新設され、新型のパトロールレイバーパトレイバー」として篠原重工製の98式AV“イングラム“が導入されることとなった。

特車二課第2小隊は新採用の新米と問題警官たちで構成されていた。1号車に乗るのはレイバーが好きで警察官を志した泉野明。彼女をバックアップするのは、篠原重工の御曹司で実家とは複雑な関係を持つ篠原遊馬。2号車に乗るのは猪突猛進で数々の問題を起こしてきた太田功。彼をバックアップするのはサラリーマンからの転職組でコンピュータに明るい進士幹泰。さらにレイバーを輸送する後方支援担当として、巨漢ながらも心優しい山崎ひろみ等個性的な面々だった。そんな彼らを指揮するのは、かつては本庁で「カミソリ後藤」と呼ばれた後藤喜一警部補。急造されたイレギュラーなメンバーにより構成された特車二課第2小隊だが、新型の98式の性能もあって少しずつ実績を積み重ねていた。

※以下、長編のみの概略

<シャフト編> 第2話「シャフト!」~第7話「AFTER CARE」

多国籍企業シャフト・エンタープライズ・ジャパン企画7課の内海課長。表の顔はアーケードゲーム開発をしているが、その裏では密かにオリジナルのレイバーグリフォン」を開発しており、外国人の少年・バドはそのパイロット要員として養成されていたのだ。内海は西ドイツで国境警備用に開発された軍用レイバーブロッケン」を密かに輸入、98式と戦わせることでその戦闘データを手に入れようと企んでいた。第1小隊が出動時に限って現れるブロッケンには毎回特車二課が対応するが、犯人は逃亡しデータディスクは持ち去られていた。

ブロッケン事件が続く中、第2小隊には新たに熊耳武緒巡査部長が着任。バックアップとして太田の指揮を執ることとなった。ようやくフルメンバー6人が揃った第2小隊だが、その裏では3機のブロッケンによって得たデータを元にパワーアップしたグリフォンが自衛隊と米軍の秘密演習を急襲。ゲーム感覚でグリフォンを操るバドの腕もあって、双方の軍用レイバーを次々と破壊し去って行った。

とある休日。繁華街に出かけた野明と遊馬はゲームセンターで「パトレイバー」なるゲームを見つける。本物に乗っている手前、チャレンジしてみる野明だがあっけなくゲームオーバー。そんな難易度の高いゲームを難なくクリアしていったのが、内海バドだった。

そしてついに晴海の国際レイバーショーの会場を警備していた第2小隊の前に、黒いレイバーグリフォンが現れる。折しも遊馬が量産型の98式をテストするために起動ディスクを使っており、野明の98式は起動できない。量産型の98式はグリフォンの前に倒れ、太田の2号機も歯が立たなかった。ようやくディスクを回収して起動した野明の1号機と駆け付けた第1小隊を前に、グリフォンは空を飛んで脱出する。さらに熊耳は現場で内海を目撃し、部下により銃撃され負傷する。大規模な騒擾事件となったグリフォンを追う松井刑事の捜査線上には香港時代に追っていたリチャード・王なる人物とシャフトの内海が浮かぶ。

一方、シャフト・エンタープライズ内部では内海の暴走を止めるべくSSS(シャフト・セキュリティ・サービス)がグリフォンを追う。フェリーで東京港に現れたグリフォンをSSSのレイバーが襲い、その戦闘が通報され特車二課はフル装備で駆け付けるが報道スタッフが周囲におり、思うようには戦えない。最後はレイバー同士の殴り合いとなり、再び脱出したグリフォンは満足に飛行することもできず墜落し、東京湾に沈んだ。

<廃棄物13号編> 第9話「廃棄物13号」~第10話「STRIKE BACK(逆襲)」

そのグリフォンの残骸から、メインシステムASURA(アシュラ)を回収しようとするのは、ブラジル支社に転勤となった内海に代わって企画7課を指揮する黒崎である。

しかし、折しも同時期に東京湾に貨物機が墜落した。積まれていたのは生物兵器「廃棄物13号」。20年前に隕石から発見されたニシワキ・セル(細胞)をベースに、ヒトのガン細胞を取り込んで作られた生物だった。東都生物研究所と米軍との極秘研究だった筈だが、墜落により東京湾に放たれた13号は水中作業レイバーや水中作業員などに被害を出していた。そんな最中、湾岸警備を強化する特車二課は水中用レイバーのメンテナンスベースに現れた13号と対峙する。リボルバーカノンを食らって逃げ出す13号だが、残された体組織の一部から既存の生物ではなく東都生物研究所のニシワキ・セル由来の物と判明。東京湾に現れた謎の怪物を退治すべく、自衛隊と共同で大規模な駆逐作戦が組まれる。一方、東都生物研究所では栗栖所長が私物化したニシワキ・セルを巡って、発見者西脇博士の娘・西脇冴子が栗栖所長を追い落とすため、13号の餌となる薬剤を東京湾に散布。さらには自衛隊が電気柵で追い詰めた13号を、身を呈して庇うなど事態は混乱を極めてゆく。それに乗じて企画7課はグリフォンの残骸からASURAを回収。後に、13号はレイバーなどが発する音波によって誘引できることが判明し、13号を特車二課のある埋立地までおびき寄せることに成功。細胞組織を破壊する弾丸を撃ち込み、数日後、死体が東京湾に流れ着き事件は終結を見た。

グリフォン編2> 第14話「嵐の到来」~最終話「THE RIGHT STUFF」

第1小隊に新型のAVS-98が導入されることが決定し、野明と遊馬は第1小隊の導入テスト及び演習補佐として同行した。その帰り道、週刊パトスの記者を名乗る梶川という男に篠原重工についての取材を申し込まれるが遊馬は無視。後に週刊パトスに98式導入を巡る篠原の贈与疑惑記事が公開され、第2小隊の雰囲気は最悪となり、人間関係もギスギスしたものとなる。さらに間の悪いことに篠原重工本社には銃を持った右翼団体が乱入し、人質を取ってロビーを占拠、社長本人の釈明を要求する。突然のことに遊馬は現場を放棄し、篠原重工本社に駆け付けてしまう。そんな最中、南米から帰国した内海は企画7課の復活を宣言。グリフォンを再起動させイングラムとの雪辱戦を果たすべく環境団体「地球防衛軍」に改造レイバーを与え、騒動を起こすよう焚きつけた。実は、内海グリフォンの庇護者としてシャフトの極東マネージャーに目星を付け、その性能を実際に見てもらう算段をしていたのだ。出動した第1小隊のAVS-98の前にグリフォンが現れる。最新型レイバーを前に、嬉々として戦うバド。応援に出動した第2小隊も合わせ、4台のパトレイバーを半壊させてグリフォンは海中へと逃走した。現場放棄の遊馬は1カ月の減俸。しかしグリフォンとの再戦に向けて、第2小隊の士気は上がっていった。

グリフォン事件の背後に居るとされるリチャード・王の子供っぽい性格から、挑発に乗ると踏んだ後藤は、篠原重工の新型レイバー用OS、HOSの導入によって98式がさらに強くなると吹聴する。挑発に乗った内海は新潟の廃工場でグリフォンの組み立てを急がせるが、グリフォンが敗北し事件が明るみになることを恐れた黒崎は、逆に組み立てを遅らせようとし、専務と内通する。様々な思惑が交錯する中、内海はSSSによる監視者の前に現れ、彼らの車で堂々と上京する。軟禁された内海シャフト・エンタープライズ・ジャパンの上層部からグリフォンを渡すよう言われ、一度は承諾。専務の別荘裏に隠してあったグリフォンを積んだトレーラーを運び出したところで爆破し、混乱に乗じて逃亡した。

特車二課にはアメリカから熊耳を訪ねて、ニューヨーク市警のクランシー巡査部長がやってきた。人身売買組織「パレット」の顧客としてリチャード・王の名前が上がったためである。彼らの人身売買カタログには子供たちの写真が並び、遊馬はその中にバドと思しき子供の写真を見つける。

逃亡した内海黒崎に爆破したグリフォンが予備部品だと種明かしし、再びグリフォン第2小隊の98式に挑むことを宣言するが、内海の気まぐれを危惧した黒崎は密かにグリフォンを極東マネージャーに引き渡し、バドの処分を決意する。偶然その話を聞いたバドは逃亡。行くあてもなく彷徨った挙句に特車二課に現れる。バドの口から、グリフォンの名前を引き出した後藤たちはバドを保護。バドが警察に保護されたことを知った内海は、熊耳を呼び出し人質とした上で、バドとの交換材料にしようとする。

折しも台風が首都圏に接近している中、内海バド奪還のために特車二課襲撃を計画。埋立地に繋がる橋を爆破した上で、ハヌマーン3機と武装した工作員で二課を占拠して外部との通信手段を断ち、バドを奪還した。しかし幸か不幸か野明と遊馬は陸地側におり、内海たちの襲撃は免れたものの二課へ戻る手段を失ってしまった。偶然近くにあった篠原重工の試験場から、今は使用されていない資材搬入路を使って二課への帰還を目指すが、武装した工作員とハヌマーンを前に篠原の試験機AVR-0を起動。バドの乗るグリフォンと対決するが、野明は慣れない機体に苦戦する。遊馬たちを人質に取られ、外部から強制停止させられたAVR-0から降ろされた野明は、残された98式でグリフォンと最後の戦いに挑み、巧みな操作で動きを止め、戦いに勝利した。

一方、バドの勝利を確信し先行で脱出した内海は、テレビの中継でグリフォンの敗北を知る。バドを失い、自分に唯一残された熊耳を連れて長城(グレートウォール)で出国しようとするが、過去に散々煮え湯を飲まされたSSSのジェイクによって腹部を刺される。

事件から2カ月後。グリフォンを巡る一連の騒動は「リチャード・王とその一味による犯行」という結果となり、シャフト極東マネージャーにまで捜査の手は伸びなかった。バドはクランシー巡査部長の上司、ブレディ警部が養子に引き取り、熊耳は未だ職場復帰していない。しかし、野明たちは彼女の復帰を信じて待っている。

メディアミックス

アニメーション

初期OVA 1988~1989年

「アーリーデイズ」と呼ばれる各話完結のエピソード。本編中にCMを入れるなどして当時は1万円前後だったオリジナルビデオを、4800円という低価格で提供。アニメ業界においては、ブロックバスター的な作品。5~6話は首都圏でクーデータが発生する前後編となっており、後の劇場版2作目や実写版でも再び同じテーマを扱っている。

TVアニメ 1989年

サンライズによるテレビシリーズ。放送期間は約1年間。OVAシリーズの続編ではなく、野明が特車二課に配属されるところからあらためて始まる。香貫花が帰国し新たに熊耳が配属されるなど、コミック版とは異なる展開も。

劇場アニメ

『機動警察パトレイバー the Movie』 1989年公開

篠原重工の新型レイバー用OS「HOS」の開発者、帆場英一が自殺。HOSに隠された秘密を巡り、松井は開発者である帆場の足跡を追う。本格的なコンピュータ犯罪を軸に、レイバー同士のバトルや消えゆく都市の風景等を盛り込んだサスペンスドラマ仕立て。劇中に登場する新型パトレイバー、AV-0「零式」は第1小隊に配属予定だった。

『機動警察パトレイバー2 the Movie』 1993年公開

PKOで海外に派遣された自衛隊レイバー部隊は、専守防衛の馘から多くの犠牲者を出す。部隊の隊長であった柘植行人は帰国後姿を消し、それから3年後の冬、東京湾横断橋爆破事件が発生する。初期OVA5~6話『二課の一番長い日』の翻案で、「東京に戦争状態を起こす」をテーマにしたポリティカルサスペンス。

『WXIII 機動警察パトレイバー』 2002年公開

初期OVAの第3話『4億5千万年の罠』を下敷きにしたコミック版「廃棄物13号」のエピソードを翻案。前の劇場2作では監督の押井守と脚本の伊藤和典のカラーが強く出ていたが、本作は監督、脚本を一新。特車二課メインではなく、城南署の刑事二人を中心に物語が進んでゆく。

『ミニパト』2002年公開(同時上映)

三つのエピソードからなる短編アニメ。キャラクターの切り絵を動かす紙人形(ペープサート)風の画面処理をしている。脚本・音響プロデュース・演出コンセプトを押井守が担当。

NEW OVA 1990~1992年

テレビシリーズで描かれたグリフォン編を完結まで描いた連作OVA。並行してオリジナルのエピソードも作られた。

実写映画

『THE NEXT GENERATION パトレイバー 1~7章』 2014年公開

『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』 2015年公開

特車二課の三代目たちのエピソード。原寸大のレイバーとキャリアを作り、本編中ではCGで描いた実写版。レイバーは出渕裕のオリジナルデザインをベースにリニューアルされた。「首都決戦」は光学迷彩を装備した戦闘ヘリによって橋を落とされ、東京の1000万都民を人質にするという劇場版第2作を翻案したもの。上映終了後も原寸大レイバーは各地のイベントなどに登場している。

小説

富士見書房から伊藤和典、横手美智子による小説版が5冊刊行。内容はアニメやコミックでは描かれなかった各キャラクターの姿を掘り下げる形になっている。1冊目に収録された『風速40メートル』は劇場版1作目のノベライズ。その後押井守により劇場版2作目のノベライズ『TOKYO WAR - 機動警察パトレイバー』が書き下ろされる。さらに2011年に『番狂わせ 警視庁警備部特殊車輛二課』が刊行されるが、内容は特車二課の三代目を描いたもの。登場人物に一部差異はあるが名前は『THE NEXT GENERATION パトレイバー』とほぼ同じで、同作のプロトタイプとも言えるもの。

社会に与えた影響

アニメ企画としてスタートした本作は、アニメ、コミックス以外にも多くのメディアで展開することとなった。いわゆる「マルチメディア」の先駆けである。当時の家庭用ゲーム機からラジオドラマ、ゲームブックからテレホンサービスなど多岐にわたる。2015年現在でも実写版の新作が公開されるなど、企画開始から四半世紀以上経る息の長いコンテンツとなった。

評価・受賞歴

コミック

小学館漫画賞(第36回少年部門)〔1991年〕『機動警察パトレイバー

アニメ

第7回日本アニメ大賞・作品賞 『機動警察パトレイバー2 the Movie』

第48回(1993年度)毎日映画コンクール アニメーション映画賞・日本アニメ大賞 『機動警察パトレイバー2 the Movie』

作家情報

ゆうきまさみ(1957年12月19日)。北海道虻田郡倶知安町出身。

マンガ家としてのデビューは1980年にアニメ雑誌「月刊OUT」に掲載された『機動戦士ガンダム』のパロディマンガ。その後もパロディマンガを描きつつ、次第にオリジナルマンガを描くようになる。やがて出渕裕の紹介で「週刊少年サンデー」を紹介されたゆうきまさみは、読み切りや集中連載を経て、1984年に「週刊少年サンデー増刊号」で初の連載『鉄腕バーディ』をスタートさせる。しかし本誌から週刊連載を打診され、『バーディ』を一時中断、1985年から『究極超人あ~る』の連載を開始。その後も週刊で『機動警察パトレイバー』『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』『パンゲアの娘 KUNIE』等を連載。2003年からは「週刊ヤングサンデー」でかつて連載を中断した『鉄腕バーディ』のリメイクを開始。2013年からは「週刊ビッグコミックスピリッツ」で現代を生きる吸血鬼の物語『薄暮のクロニクル』を、「月刊スピリッツ」では兄妹でBLマンガを描く『でぃす×こみ』を不定期連載中。

『パトレイバー』コミック版の著者はゆうきまさみとなっているが、アニメ版などでは権利者表記として「ヘッドギア」が使われている。これは原案のゆうきまさみ、メカデザインの出渕裕、キャラデザインの高田明美、脚本の伊藤和典、アニメ演出の押井守の5名による共同のグループ名。

登場人物・キャラクター

泉 野明 (いずみのあ)

特車2課第2小隊所属の警察官。イングラム1号機の操縦者。階級は巡査。レイバーに強い愛着を持っており、搭乗機であるイングラムには自ら進んで清掃するなど我が子のように愛着を持って接している。ロープワイヤーで蝶々結びをする、犯人のレイバーをワイヤーで引っ掛けて転ばせ捕縛するなど、イングラムの手先の器用さや俊敏さを活かした動作を得意としている。 最初期は過保護なほどにイングラムを大事に扱って傷がつくことを嫌がっていたが、グリフォンとの戦いや様々な事件と向き合ううちに成長し、破損を恐れず任務に挑むようになった。ショートカットでボーイッシュな風貌なため、男子と間違えられることもある。

篠原 遊馬 (しのはら あすま)

特車2課第2小隊所属の警察官。階級は巡査。泉野明とコンビを組み、イングラム1号機の指揮を担当する。冷静で頭が回る人間だが、皮肉屋でとにかく口が悪くストレートな物言いで相手を怒らせることも少なくない。その反面、落ち込んだ野明を励ますなど周囲の人間に気遣いを見せる面も見せる。 レイバー製造会社の大手篠原重工の次男で、レイバーやコンピューターに関する知識が深い。実家のことをあまり快く思っておらず、篠原重工が絡むと周りが見えなくなって暴走するところがある。

後藤 喜一 (ごとうきいち)

特車2課所属の警察官。階級は警部補。第2小隊の隊長を務める。オールバックで飄々とした風貌の中年男性。普段は本気とも冗談ともつかない発言で昼行燈のようにふるまっているが、有事の際の判断力の高さと指示の的確さで隊員たちからは信頼されている。かつて公安部に所属していたことがあり、当時は警視庁随一のキレ者「カミソリ後藤」と呼ばれ恐れられていた。

太田 功 (おおた いさお)

特車2課第2小隊所属の警察官。階級は巡査。イングラム2号機の操縦者。小柄で短気、かつ大雑把な性格の男性。対レイバー戦においては事あるごとに発砲するほか、機体をよく壊すため整備班からは渋い目で見られている。口うるさく横柄な態度で粗暴な人間に見られがちだが、階級や規律には厳しく、警察官としての勤務態度は真面目。 皮肉屋の篠原遊馬とはことあるごとに口論になり、取っ組み合いの喧嘩をすることもある。

熊耳 武緒 (くまがみ たけお)

特車2課第2小隊所属の警察官。階級は巡査部長。ショートカットの凛とした女性。第2小隊の人員不足を解消するため後藤隊長の手引きによって特車2課に配属された。太田功を抑えきれない進士幹泰に代わり、イングラム2号機の指揮を務める。文武両道に秀でており、イングラムを操縦することも可能。 当初は隙のない完璧人間のように思われていたが、実は怪談などの怖い話が大の苦手。かつて香港警察で研修していたことがあり、香港時代の内海と面識がある。

進士 幹泰 (しんし みきやす)

特車2課第2小隊所属の警察官。第2小隊発足時に配属された隊員の一人。階級は巡査。どちらかというと気弱な性格で、常に胃薬のお世話になっている所帯持ちの苦労人。特車2課配属当初はイングラム2号機の指揮担当を任されるが、太田功の度重なる命令無視、独断専行により胃痛に悩まされる日々を送っていた。 熊耳武緒が配属されてイングラム2号機の指揮担当を交代してからはイングラム2号機を輸送するレイバーキャリアの運転手を担当するようになった。

山崎 ひろみ (やまざき ひろみ)

特車2課第2小隊所属の警察官。第2小隊発足時に配属された隊員の一人。階級は巡査。大柄で腕力もあるが、性格は気弱で小心者。暴走しがちな太田功を抑えたり、気落ちしている泉野明を休ませるためにお茶や掃除の当番を交代したりするなど、争いを好まず周囲にマメな気配りができる特車2課随一の心優しい男性。 イングラム1号機を輸送するレイバーキャリアの運転手を担当している。野明や篠原遊馬からは「ひろみちゃん」の愛称で呼ばれている。

南雲 しのぶ (なぐも しのぶ)

特車2課所属の警察官。階級は警部補。セミロングヘアを後ろで束ねた聡明な女性。ベテラン警察官揃いの第1小隊の隊長を務める。第2小隊隊長の後藤喜一とは長い付き合いで、隊長室で机を並べる同僚。後藤の人となりを理解し信頼しているが、彼の飄々とした態度や大胆すぎる行動に、ときたま呆れる果てることがある。

内海 (うつみ)

シャフト・エンタープライズの一部門「企画7課」の課長を務める壮年の男性。常にへらへらと笑っているお調子者で性格も破天荒。見た目は大人だが子供のような発想で周囲の人間を引っ掻き回し、本人もそれを楽しんでいる。イングラムに興味を持ち、環境保護を訴えるテロ集団地球防衛軍に海外から密輸した軍事用レイバーブロッケンを提供する、シャフト社の資産を投じて規格外の黒いレイバーグリフォンを製造するなど常識外れの行動を繰り返す。 香港にいた頃はリチャード・王と名乗っていた。

バドリナート・ハルチャンド

グリフォンの操縦者として内海が連れている男の子。無邪気なわんぱく小僧で負けず嫌いな性格。内海に導かれるまま、悪意も罪悪感もなく遊び感覚でグリフォンを操り、泉野明が操縦するイングラム1号機とグリフォンで戦う。野明とは街のゲームセンターで偶然出会い、当初はお互いのことを何も知らないまま仲良くなった。

黒崎

内海の右腕を務める謎多き男性。内海の忠実な部下で、香港時代の内海を知る数少ない人間の一人。陽気で破天荒な内海と違い、慎重かつ冷徹で、内海のためとあらばほかの者を切り捨てる冷酷さも持ち合わせる。

榊 清太郎 (さかき せいたろう)

特車2課整備班の班長を務める熟年の男性。レイバーが普及する以前より技術者として活躍してきた大ベテランで、篠原重工の常務にも顔が利く人物。荒っぽいところもあるが気のいい大人で、若い女性でありながら警察官の中でも珍しい特機部隊(レイバー隊)に志願する泉野明を気に入り、納入前のイングラムを内緒で見せてくれることもあった。 特車2課整備班の整備士たちからは尊敬の念を込めて「おやっさん」と呼ばれている。

斯波 繁男 (しばしげお)

特車2課整備班で整備士を務める男性。特車2課整備班の中でも実力と知識に秀でた人物で特車2課整備班の整備員たちをまとめるリーダー的な存在。第2小隊の隊員たちとも親交が深く、泉野明や篠原遊馬らと仲が良い。進士幹泰がイングラム用のトリモチ弾を試作しようとした際には、一緒に共謀して実験を手伝う場面もあった。

ジェイク

民間警備会社シャフト・セキュリティ・システムに所属する男性。やりたい放題の内海を疎ましく思ったシャフト・エンタープライズの幹部から内海の拘束とグリフォン確保の依頼を受け、実行部隊の隊長として任に就く。執念深く、任務に失敗して内海に一杯食わされて以来、内海を執拗に追いかけるようになった。

イングラム

『機動警察パトレイバー』に登場するロボット。特車2課第2小隊に配備された篠原重工製のパトレイバー。型式番号はAV-98。泉野明が操縦する1号機と、太田功が操縦する2号機がある。従来のレイバーとは一線を画し、限りなく人間に近い形状と高い運動性を持つ。自重を支える強度を持ったロープワイヤー、レイバー用拳銃のリボルバーカノン、電磁警棒、シールドを装備するほか、オプション装備として暴徒鎮圧用の散弾銃ライアットガンを使用することができる。

グリフォン

『機動警察パトレイバー』に登場するロボット。イングラムを上回る性能のレイバーを作るため、シャフト・エンタープライズの内海が主導となって秘密裏に製造した試作レイバー。型式番号はTYPE-J9。操縦者はバド。並外れた運動性能と出力で、イングラムをはじめ特車2課をたびたび襲撃して翻弄した。 全身が黒のカラーリングで統一されており、警察内では当初黒いレイバーの通称で呼ばれていた。

ブロッケン

『機動警察パトレイバー』に登場するロボット。シャフトのヨーロッパ社が製造した軍事用レイバー。型式番号はTYPE-7。イングラムと同じく人に近い形状をしており、銃弾をも弾く重装甲、イングラムを上回る出力を誇る。西ドイツ軍に配備されているレイバーで本来日本には存在し得ない機体だったが、イングラムとの戦闘データを欲した内海によって3機が密輸された。

95式 (きゅうごしき)

『機動警察パトレイバー』に登場するロボット。特車2課第1小隊が最初期に使用していたレイバー。民間作業用のレイバーを警察用に改造したものだったが、旧式のため新型レイバーが起こすレイバー犯罪に対応することが難しい状況が続いていた。第2小隊が初出動した事件で機体に大きな損傷を受け、その後は96式改に変更された。

96式改 (きゅうろくしきかい)

『機動警察パトレイバー』に登場するロボット。特車2課第1小隊に配備されたパトレイバー。損傷したレイバー95式に代わって第1小隊に配備された。95式の同列機がマイナーチェンジしたもので基本性能は大きく変わらない。ベテラン揃いの第1小隊により2年以上現役を務めるが、民間レイバーの性能が上がるにつれ対応できない事件が増え、AVS-98に交代した。

AVS-98 (えーぶいえすきゅうはち)

『機動警察パトレイバー』に登場するロボット。イングラムを発展させた篠原重工製のパトレイバー。当初は新設予定だった特車2課第3小隊に配備するため製造されていたが、第3小隊設立の計画が流れたため一度保留となり、その後第1小隊に配備された。イングラムと同じく、電磁警棒とレイバー用拳銃の「リボルバーカノン」を使用する。

集団・組織

特科車両2課中隊 (とくかしゃりょうにかちゅうたい)

『機動警察パトレイバー』に登場する架空の組織。多発するロボット型作業機械レイバーによるレイバー犯罪に対抗すべく警視庁が警備部内に設立した専門部署。最初は第一小隊のみの編成で「警視庁特機部隊」(レイバー隊)と呼ばれていたが、増え続けるレイバー犯罪に対応するため第2小隊を新設し、それに伴い特車2課中隊、通称「パトロールレイバー中隊」へと呼称を変更した。 第1小隊は南雲しのぶ、第2小隊は後藤喜一がそれぞれ小隊長を務める。巨大なレイバーや輸送車両を複数収容する関係から、都内にある陸の孤島のような埋立地の廃工場を買い上げた建物を分署として利用している。

特車2課第2小隊 (とくしゃにかだいにしょうたい)

『機動警察パトレイバー』に登場する架空の組織。対レイバー犯罪の専門部署として特車2課を発足するにあたり新設された2つ目の小隊。篠原重工製の新鋭パトレイバーイングラム2機と隊長の後藤喜一、隊員の泉野明、篠原遊馬、太田功、進士幹泰、山崎ひろみ、熊耳武緒の7名で構成されている。 パトレイバー1機につき、パトレイバーを操縦するフォワード、専用の車両に乗り込んでフォワードに指示を送るバックアップ、パトレイバーを輸送する車両レイバーキャリアの運転など後方支援担当する者の3名が一組となって任務にあたる。

特車2課第1小隊 (とくしゃにかだいいちしょうたい)

『機動警察パトレイバー』に登場する架空の組織。対レイバー犯罪の専門部署として発足した特車2課の1つ目の小隊。隊長は南雲しのぶ。元々は特車2課の前身となった警視庁警備部内の「警視庁特機部隊」(レイバー隊)で、特車2課中隊が編成されるにあたり、そのまま第1小隊となった。初期は作業用レイバーを警察用に改造した95式を運用していたが、後に96式改に乗り換え、技術の進歩とともに旧式レイバーでは対応が難しい事件が増えてきたことから、新型パトレイバーAVS-98を導入した。

篠原重工 (しのはらじゅうこう)

『機動警察パトレイバー』に登場する架空の企業。レイバー製造企業の大手。特車2課第2小隊に配備されたイングラムの製造を手がけたほか、土木作業用、自衛隊用など数々のレイバーを製造している。元は町工場からスタートした民間企業で、現社長は篠原遊馬の父。技術力が高く、篠原重工製の自動的に姿勢を制御する機構「オートバランサー」は高い評価を受けており、これはイングラムにも搭載されている。 また、レイバー用の新型オペレーティングシステムも開発している。

シャフト・エンタープライズ

『機動警察パトレイバー』に登場する架空の企業。世界展開する多国籍企業。日本法人、USA社、ヨーロッパ社のほか民間警備会社であるシャフト・セキュリティ・システムをグループ会社に擁する。家庭用品からゲーム、自動車、果てはレイバーや武器などあらゆる商品を製造、販売している。

シャフト・セキュリティ・システム

『機動警察パトレイバー』に登場する架空の企業。シャフト社のグループ企業である警備会社。民間企業でありながら武装したレイバーや爆発物などの武器を所有しており、警備を務める社員たちは軍隊のような出で立ちをしている。黒い噂も流れており、世間での評判はあまり良くない。

地球防衛軍 (ちきゅうぼうえいぐん)

『機動警察パトレイバー』に登場する架空のテロ集団。環境保護を訴える過激派で、東京湾を埋め立てるバビロンプロジェクトを環境破壊だと糾弾し、開発計画に反対している。構成員は民間人が中心だがレイバーを用いた暴力的な事件を起こすこともあり、内海から提供されたブロッケンや改造レイバーを用いて、幾度となくテロ行為に及んだ。

場所

特車2課整備班 (とくしゃにかせいびはん)

『機動警察パトレイバー』に登場する架空の部署。特車2課所属の整備班。特車2課に配備されたパトレイバーの整備、修理、装備の手配などを担当しており、班長の榊清太郎を筆頭に、斯波繁男ほか多数の整備士が分署に駐在している。パトレイバーの出動には整備士の存在が必要不可欠なため、特車2課の隊員たちと同じく交代で勤務にあたって分署に常在している。

その他キーワード

バビロンプロジェクト

『機動警察パトレイバー』に登場する架空の公共事業。過密化が進む首都圏の人口問題や温暖化による水面上昇に備えるため、東京湾を埋め立てや干拓によって陸地化し、防波堤を作る都市構造計画。大規模な土木工事が必要になるため、作業機械としてレイバーの需要が高まり、レイバー産業の発展を促した。しかしそれと同時に、レイバーを利用した犯罪も急増し、対レイバーに特化した警察組織特車2課中隊およびパトレイバーが誕生するきっかけとなった。

レイバー

『機動警察パトレイバー』に登場する用語。テクノロジーの発展によって生まれたロボット型の作業機械の総称。特殊車両に分類され、操縦するには免許が必要になる。黎明期はショベルカーやクレーン車のような土木作業機械の発展形として生まれたレイバーが多かったが、技術が進歩するにつれ、人型、蟹や蜘蛛のような複数の足をつけた多脚型など、様々な形状のレイバーが誕生した。 東京湾を中心とした大規模工事計画バビロンプロジェクトの施工に伴い爆発的に普及したが、その力を犯罪に利用した凶悪な事件も起こるようになり、レイバー犯罪という新たな社会問題を生み出した。正式名称は「多足歩行式大型マニピュレーター」。

パトレイバー

『機動警察パトレイバー』に登場する用語。多発するロボット型作業機械レイバーによる犯罪を取り締まるパトロールレイバーの略称。警察庁が扱うレイバーすべてを指し、特車2課中隊の第1小隊、第2小隊に配備されたレイバーがそれに該当する。パトカーにパトロールランプが装備されているのと同様に、パトレイバーにもパトロールランプが装着されている点が特徴。

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