タッチ

タッチ

双子の兄弟、上杉達也・上杉和也と彼らの幼馴染みの少女・浅倉南、3人の恋物語と成長を、高校野球を通じて描いた青春ストーリー。

正式名称
タッチ
ふりがな
たっち
作者
ジャンル
ラブコメ
 
野球
レーベル
小学館文庫(小学館)
巻数
全14巻完結
関連商品
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世界観

どこにでもありそうな、ごく普通の中高一貫校である「私立明青学園」。そこに通う、上杉達也上杉和也の双子の兄弟と、その幼なじみの少女・浅倉南が本作の主人公である。

この3人の織りなす青春コメディが、この作品のイントロにおける展開である。

このため、本作はいわゆるラブコメ漫画の文脈で語られることが多い。だが、その実、ストーリーの根幹をなすのは、野球においては素人同然のダメ男・上杉達也がいかにして甲子園出場選手にまで成長していくか、いかにして「よくできた弟」の影を払拭していくか、というスポーツ漫画の部分である。そこへ、主人公の上杉達也上杉和也浅倉南の3人を軸に、クラスメイトたちのそれぞれの思いがからみあうシリアスな青春ストーリーが展開されていく。日常を彩るコメディの部分は、その重さをオブラートにくるむために存在するといっても過言ではない(もちろん、そこが本作独特の空気感を生み出している大きな魅力の部分でもあるのだが)。「見た目はコメディ、中身はシリアス」、それが『タッチ』という物語である。

作品が描かれた背景

タッチ』が描かれた80年代は、少年漫画に「ラブコメ」がもちこまれた時期であった。

それまでにも、少年漫画にヒロインはもちろんいた。しかし、それはどこまでいっても「紅一点」のあつかいであった。基本的に女子との恋愛シーンを細かく描くのは気恥ずかしいことで、それがストーリーの主軸になることはありえず、主人公たるものヒロインの誘惑をはねのけて硬派を貫いてナンボ、といった風潮だった。70年代の後半になると、その風潮にも変化は現れるが、やはり依然として少年漫画はヒーローを主軸にした世界だった。

そんな殺伐とした少年漫画の世界に変化がおとずれたのは、『タッチ』の連載がはじまるほんの2年ほど前、1978年頃のことである。男女の三角関係や浮気問題、それに連鎖するいくつもの複雑な恋愛感情という微妙な恋愛の形を、しかも日常のストーリーの流れに自然にかつ、ややドタバタしたコメディとしてもちこんだのは、この『タッチ』の作者あだち充や、『うる星やつら』の高橋留美子らをはじめとする、70年代末に台頭してきた新進気鋭の作家陣であった。

これらラブコメ作品群の特徴は、なんといってもヒーロー以上にヒロインが魅力的な点である。キャラ造形的に「可愛い」のは当然として、それまで少年漫画においては添え物でしかなかったヒロインは、主人公以上に悩み、葛藤し、発言し、決断し、積極的に行動する。その内面の機微において、ラブコメヒロインはそれまでの少年漫画のヒロインとは明らかに一線を画していた。『タッチ』においても、上杉和也上杉達也の甲子園を目指す原動力となったのは、「野球で天下をとる!」といった少年漫画的動機ではなくて、浅倉南の「甲子園に連れて行って」という、なにげない一言だった。これは、それ以前の野球漫画、スポコン漫画ではありえない現象といえよう(ただし、努力よりも根性よりも、天性の素質がなによりも大事という世界観は、ぐるっと回って昨今の少年漫画の根底に通じるものがあるともいえる)。

「ラブコメ」という言葉は大流行し、少年漫画の一潮流となった。そればかりか、漫画の世界から飛び出して、「ラブコメ」が一般名詞化するきっかけともなった。その旗手となった作品のひとつが『タッチ』であり、その後世への影響力ははかり知れない。

あらすじ

作品構成

タッチ』のストーリーは大きく4部に分かれている(明確に作中で区切りがあるわけではない。あくまで大まかなストーリーの流れから判断したものである)。

第1部は、中学生編から、高校1年になり、上杉和也が死を迎えるまでである。

第2部は、新体操へ転身する浅倉南と、野球部に入ることを決意し、野球部に認められていく上杉達也。そして西村勇新田明男という恋のライバルの登場。

第3部は、3年生になって甲子園最後のチャンスにのぞむ上杉達也たちと、新監督・柏葉英二郎との確執。

そして第4部は、高校最後の夏を甲子園出場をかけて駆け抜ける試合の連続である。

どのパートも、演出の緩急はあるものの、基本的には「見た目はコメディ、中身はシリアス」な野球+恋愛コメディ漫画という点で、ほとんどテイストは変わらない。

ただし、上杉和也が死んでからしばらくの間の展開は重苦しさがある。また、全編通してのクライマックス、甲子園出場が決まるかどうかの決勝戦は、息詰まる対決が数話にわたって展開される。

中学生編(第1巻~第3巻)

上杉達也上杉和也は双子の兄弟。明青学園の中等部で野球部のエースとして活躍する弟の和也に対し、兄の達也は運動不足でまともに動く事すらできないという正反対の存在だった。そんな達也と和也の二人を、となりに住む幼なじみの浅倉南が見守っていた。ある日の事、達也の前に西尾佐知子という女子高校生が現れる。彼女は明青学園高等部の野球部でマネージャーを務めていた。達也に和也以上の才能を感じとった彼女は、達也に高等部進学後は野球部に入るように勧める。同じ頃、高等部の野球部キャプテンである黒木武は、和也にピッチャーのポジションを空けて待っていると伝えるのだった。

高校1年生編 1(第4巻~第8巻)

明青学園の高等部に進学した上杉達也上杉和也。和也は早速野球部に入部し、浅倉南もまた野球部のマネージャーになる。一方、達也は原田正平の勧めでボクシング部へと入部する。野球部で頭角を現した和也は、1年生ながらエースとして夏の甲子園出場をかけた予選に臨む。明青学園は順調に勝ち進み、準決勝では春の甲子園に出場した西条高校と対戦する。西条高校の寺島は、プロも注目する本格派左腕として知られていたが、和也の活躍で勝利した明青学園は決勝戦へと進出する。甲子園まであと1勝と迫ったその矢先、試合場へと向かう途中で和也は交通事故に遭って帰らぬ人となってしまう。和也を欠いた明青学園は対戦相手の須見工に敗れ、達也と南は和也を失った事に号泣する。

高校1年生編 2(第8巻~第11巻)

上杉和也が死んで数か月が経った。上杉達也はボクシング部で実力をつけていくが、そんな達也を、野球部のキャプテン黒木武とマネージャーの西尾佐知子が勧誘する。黒木達は、達也には和也以上の素質があると考えていたが、中学から和也とバッテリーを組んでいた松平孝太郎は、達也の入部に反対する。達也も最初は野球部に入る事を渋っていたが、黒木の説得に応える形で野球部に入る事になる。和也に代わって野球部のエースとなった達也は、孝太郎と衝突しながらも少しずつ打ち解けていく。一方、野球部のマネージャーである浅倉南は新体操部からスカウトされ、野球部のマネージャーと掛け持ちで新体操部にも籍を置く事になる。月日は流れ、達也達は2年生となり、そして再び夏がやって来る。

高校2年生編 1(第11巻~第14巻)

2年生になった上杉達也は、野球部のエースとしての日々を過ごしていた。そんなある日、達也は図書館で須見工のスラッガー新田明男勢南高校のエース西村勇に出会う。夏の甲子園出場をかけた予選に臨んだ明青学園野球部は、2回戦で西村の勢南高校と対戦、延長11回の死闘の末、達也の押し出し四球で明青学園は敗退する。その勢南高校もまた、明男のいる須見工に敗れ、この年の甲子園には須見工が出場する事となった。一方、浅倉南は新体操部としてインターハイに出場、いきなり4位という実績を残し、新田と共に同じ世代のスターとなる。

高校2年生編 2(第14巻~第16巻)

甲子園に出場し、準優勝という結果を残した須見工新田明男は、彼の妹である新田由加を助けてくれた上杉達也を家へ招いた。明男は達也の弟である上杉和也と対戦したかったと告げ、達也の中に和也を超えるものがある事を伝える。それから程なくして、須見工が明青学園に練習試合を申し込んで来る。だが明青学園の先発は達也ではなく、彼をライバル視する吉田剛だった。須見工打線を5回まで無失点に抑える好投を見せる吉田だが、明青学園の西尾監督は吉田の肩の消耗を考えて達也に交代させる。達也は明男の第一打席でホームランを打たれるものの、その後は須見工打線を抑え、明男の第二打席では三振に打ち取る。試合は引き分けに終わり、明男は達也に対して夏の予選での再会する事を誓い立ち去るのだった。

高校3年生編 1(第17巻~第19巻)

春。上杉達也達が3年生となった明青学園野球部に、新田明男の妹・新田由加がマネージャーとして入部。さらに、西尾監督が過労で入院したため、回復までの監督代行として柏葉英二郎が野球部にやって来る。しかし、柏葉は監督代行として暴力をも辞さない度を過ぎた練習を部員達に課し、さらに新体操部との掛け持ちでマネージャーを務めていた浅倉南をクビにしてしまう。あまりに横暴な柏葉の態度に、達也や南は西尾に抗議するが、西尾はかつての教え子でもある柏葉に全幅の信頼を寄せていると答えるのだった。

高校3年生編 2(第19巻~第21巻)

明青学園野球部に監督代行としてやって来た柏葉英二郎には兄がいた。実は西尾監督が監督代行に推薦したのは兄の方だった。柏葉は優秀な兄と比較されて育ち、高校時代にはその兄の身代わりとなって野球の道を閉ざされた過去があった事から、野球に対して恨みを抱いていたのだ。その事を知った浅倉南は、柏葉が私怨で明青学園野球部にかかわろうとしており、部員達に対して異常なまでのしごきをしているのも、それが理由であると上杉達也に伝える。しかし達也は、甲子園に出場するためには中途半端な練習では不可能だと答え、このまま柏葉についていこうと考えていた。夏の甲子園予選に向けての合宿に入った野球部は、連日柏葉によるしごきを受けながら、少しずつ実力をつけていくのだった。

高校3年生編 3(第22巻~第26巻)

夏の甲子園出場を目指す予選が始まった。明青学園野球部は苦戦しつつも勝ち進んでいく。上杉達也のライバルである新田明男須見工も順調に勝ち上がるが、達也のもう一人のライバルである西村勇は準々決勝で敗退する。その相手と準決勝で対戦した達也はノーヒットノーランを達成、ついに須見工との決勝戦に臨む。決勝戦は追いつ追われつの好ゲームとなり、延長戦の末に達也は明男を三振に仕留め、明青学園は甲子園への初出場を果たす。だが、達也は甲子園に出場を決めるも、何か心の中で満たされないものがあると感じていた。それが浅倉南への思いだと知った達也は、南に自分の思いを告げるのだった。

特殊設定

タッチ』の舞台はごく普通の私立学園であり、とくにSFあるいはファンタジーのような要素はない。

また、他の学園物にありがちな、超能力者や極端な大金持ちなどの非日常的な生徒が登場することもないし、奇妙で目を引くような部活もない。きわめて地に足の着いた、限りなくリアルに近い学園生活が展開される(もちろん、漫画的デフォルメはあるのだが)。逆にいうならば、この普遍性こそが『タッチ』の魅力である。

メディアミックス

TVアニメ

タッチ』がテレビアニメ化されたことはよく知られており、アニメ版から入ったという人も少なくないだろう。全101話のストーリーは、細かい部分をのぞいてほぼ漫画原作にそっており、両者を見比べてもあまり違和感なく鑑賞できるはずだ。その後、2004年に全話収録のDVD-BOXが東宝から発売された。

テレビアニメ版と平行して、『タッチ 背番号のないエース』『タッチ2 さよならの贈り物』『タッチ3 君が通り過ぎたあとに-DON'T PASS ME BY-』の3本の劇場版アニメが制作されている。これらは、放映時間の関係もあってキャラクターの配置やエピソードに改変が加えられている。

さらに、原作漫画にはないオリジナルの続編ストーリーとして、『タッチ Miss Lonely Yesterday あれから君は…』(1998年)、『タッチ CROSS ROAD 風のゆくえ』(2001年)の2本のテレビスペシャルが制作された。ここでは、大人になった浅倉南上杉達也たちのその後を見ることができる。

実写ドラマ

1987年には「月曜ドラマランド」の一作品として、84分の実写ドラマが放映された。放映時間の関係上、上杉和也の死とそれを乗り越えようとする上杉達也浅倉南のシーンに焦点をあてている。

実写映画

2005年には実写映画『タッチ』が公開されている。こちらは、主人公が上杉達也ではなく完全に浅倉南の視点になっていたり、浅倉南が新体操をやらない点をはじめ、細かいところでかなり原作から改変が行われている。

社会に与えた影響

タッチ』は当時の少年読者に、驚きをもって迎えられた。そこに展開されるラブコメティックな学園生活は、あだち漫画特有の独特な間合い(例えば、台詞もアクションもなく、ただ人物が立ちつくしているだけのコマが続いて、それが登場人物たちの心情の移り変わりを表している、など)とあいまって、男の子たちの間にそれまで味わったことのないような、なんともいえず甘酸っぱく、ほろ苦い感覚をもたらしてくれたのだ。まさにそれは初恋の味だった。

新体操部員でもあるヒロイン浅倉南はやがて、「きみのクラスにもいるスポーツ美少女」の代名詞となり、「浅倉南ちゃんを探せ!」というテレビコーナーまで産んだ。

連載中にも女性読者のファンレターは多かったというが、アニメ化にいたって『タッチ』は女性視聴者の心を完全にわしづかみにした。そのため、上杉和也の死は、ファンに大きな衝撃をもたらした。当然、作者への抗議の手紙・電話も殺到したようだ。編集者もこの展開にはとまどい、なんとか上杉和也を死なさず三角関係を続行させようと提案し続けたという。しかし、上杉和也の死は連載開始前からの予定であり、あだち充は予定を変えることなく初志貫徹したという。

アニメ版は、2000年代にいたるまで繰り返し再放送されたこともあいまって、いまや80年代の懐かしのアニメの話題で『タッチ』が上がらないことはありえないくらいである。岩崎良美が歌うアニメのオープニング主題歌「タッチ」も当時大ヒットし、いまだに高校野球の応援歌として使われている。

単行本、文庫本、ワイド版など合わせて総売り上げ部数にして1億部以上。『タッチ』はもはや少年漫画の枠を超えて、男女ともに愛される、世代的な「体験」となっているのである。

著名人との関わり

お笑い芸人コンビ、ザ・たっちは『タッチ』から命名されており、熱心なファンであった母親のおかげで2人の本名も達也と和也になる予定だった(実際には拓也と和也)。

おなじくタレントの磯山さやかは、『タッチ』の大ファンであることから高校のとき野球部のマネージャーをつとめ、その後も漫画の影響で野球のおもしろさにどんどんはまり、現在では「野球狂グラビアアイドル」を名乗っている。

女子プロゴルファーの勝みなみの名前は、『タッチ』のファンだった両親により浅倉南から命名された。

このように、芸能界・スポーツ界にファンの多い『タッチ』であるが、逆に『ドカベン』で知られる野球漫画の大御所・水島新司はテレビに出演した際、「野球を恋愛の小道具として扱っている」と批判している。

作家情報

1951年2月9日、群馬県伊勢崎市に生まれたあだち充は、兄のあだち勉とともに漫画家兄弟であり、高校在学中から漫画の雑誌投稿をしていた。そして、先に赤塚不二夫の元でギャグ漫画家となっていた兄に誘われる形で上京し、後に『750ライダー』を描く石井いさみのアシスタントをへて、1970年に『消えた爆音』でデビューする。だが、その後は原作者が何度かついたものの、長らくヒットに恵まれなかった。

1978年、それまでの劇画調の絵をあらため、少女漫画風のやわらかい線(『タッチ』以降はずっとこの路線)に改めて描いた少年向け野球漫画『ナイン』で新境地をひらく。このことが、やがて少年漫画にラブコメをもちこんだ画期的な作品『みゆき』と、それに続く『タッチ』へとつながっていく。この2作が大ヒットとなり、あだち充は押しも押されもせぬ大作家となった。

あだち充は『柔道一直線』の永島慎二の大ファンで、10代の頃から絵の模写をしていたという。上京したときも永島慎二のアシスタントにつくことになっていたが、永島慎二が仕事を放り出して海外逃亡するという事件が起きたため、やむなく石井いさみの下につくことになったという。

また、高橋留美子とはよき友人にしてライバル同士で、年に数回は互いの作品の感想を述べ合う仲だという。島本和彦とも親しく交友がある。

登場人物・キャラクター

上杉 達也 (うえすぎ たつや)

上杉和也とは一卵性双生児であり、兄。浅倉南とは隣同士に住む幼馴染み。潜在的な能力は高く、「やればできる」タイプではあるが、努力している和也を見ているが故に、弟を立てて自分は「ダメな兄」を演じていることが多い。照れ屋で感情を表に出すことが不得手なことも相まって、周囲に誤解されやすい。 人と争うことを好まず、南を好きだと自覚してからも、同じく南を好きな和也と争うことに躊躇し、身を引こうとするほど。和也と同じ顔をしているが、素行が良くないせいか女性にはモテない。本格的に野球を始めたのは高校生になってからだが、潜在能力が高いこともあり、瞬く間にエースとなる。右投げ右打ち。打撃では3番を務める。 投手としては剛速球のストレートが武器であり、変化球は不得手。ストレートの球速を重視すると、制球力が落ちる傾向がある。

上杉 和也 (うえすぎ かずや)

上杉達也とは一卵性双生児であり、弟。浅倉南とは隣同士に住む幼馴染み。努力を惜しまず、何事も真面目に取り組む優等生。明青学園野球部ではエースを務め、成績も良く、文武両道。性格も穏やかなため、女性にもモテる。達也と比べてすべての面で秀でているように見えるが、周囲の思惑とは裏腹に、達也が本気を出せば自分は敵わないというコンプレックスを抱いている。 しかし同時に兄として尊敬もしており、不器用なため周囲に誤解されやすい達也の、良き理解者でもある。

浅倉 南 (あさくら みなみ)

上杉達也と上杉和也の隣に住む幼馴染み。明青学園野球部のマネージャーを務めていたが、代役を引き受けた新体操部の活動で注目を集め、掛け持ちするようになる。明青学園中等部時代にミス明青に選ばれたこともあるほど男女ともに人気が高く、成績も良い。「甲子園へ行きたい」という自分の夢を叶えるべく、野球部で頑張る和也を応援しているため、周囲からはカップルのような扱いを受けているが、思い続けている相手は達也である。 和也の好意には気付いているが、相手を傷つけることがわかっているため、明確な答えを返してはいない。いつもいい加減な達也をこき下ろしてはいるが、周囲に誤解されがちな彼をフォローする面もあり、良き理解者の一人である。

松平 孝太郎 (まつだいら こうたろう)

中学生時代から上杉和也とバッテリーを組み、和也に全幅の信頼を寄せる。高校に上がってからは明青学園野球部の正捕手となり、和也とバッテリーを組む。大柄な体格と強肩を併せ持ち、キャッチャーとして恵まれた資質を備え、打撃においても4番を務める。高校3年になってからは野球部のキャプテンを務めた。 性格はおおらかであまり細かいことは気にしないが、見た目と裏腹に、周囲の人間に対して細かく目配りをしている。上杉達也が野球部に入部した当初は反発していたものの、達也の野球にかける思いが本気だとわかってからは、次第に信頼を寄せ、彼のよき女房役となる。

黒木 武 (くろき たけし)

明青学園野球部に所属する、上杉達也たちより1年先輩。2年次にはキャプテンを務める。ポジションはサード。上杉和也が野球部に入る前までは投手で4番を務めていたが、和也が入部したことで打撃に専念するようになった。マネージャーの西尾佐知子とは恋人同士。 和也ではなく達也に才能を見いだした佐知子の直感を当初は疑っていたが、達也の成長を見て評価を改める。

西尾 佐知子 (にしお さちこ)

明青学園野球部のマネージャー。上杉達也たちより1年先輩。野球部監督・西尾茂則の娘。同級生の黒木武とは恋人同士。落ち着いた雰囲気の美人で、野球に関しての直感については外したことがない。当初は人違いであったが、上杉和也ではなく達也に野球の才能を見いだし、野球部へスカウトする。

西尾 茂則 (にしお しげのり)

明青学園野球部の監督。48歳。マネージャーの西尾佐知子の父。明青学園野球部の監督を15年務めている。野球部員を自分の子供のように思っており、野球部に対しては惜しみなく助力する。しかしその思惑や策略が思わぬ方向に発展することも多く、野球部員たちからは今ひとつ尊敬されていない。 ライバル校である須見工の上村監督とは同い年であり高校時代から野球で競い合うライバルだった。しかし今まで一度も勝てたことがなく、自身の入院を機に、柏葉英二郎に野球部を託す。

上杉 信悟 (うえすぎ しんご)

上杉達也と上杉和也の父親。会社員。44歳。妻の晴子より5歳年上であり、浅倉南の父親である浅倉俊夫の1歳年下。妻・晴子をこよなく愛しており、子供の目の前でも気にせずイチャイチャする。南の父親・俊夫とも仲がよく、事あるごとに3人で外出したり外食したりする。脳天気な性格は、子供たちにはややあきれ気味に受け取られている。 しかし、「優秀な弟と不出来な兄」として見る周囲の偏見には毅然として否定し、親として達也にも平等に愛情を注ぐ。

上杉 晴子 (うえすぎ はるこ)

上杉達也と上杉和也の母親。主婦。39歳。忘れっぽい性格で、子供の食事や弁当作りなどをよく忘れるが、常に笑顔を絶やさず、夫である上杉信悟との夫婦仲も良好。夫と浅倉南の父親である浅倉俊夫の3人でよく外出や食事に行き、子供たちに呆れられている。母親としては双子の達也と和也を差別することなく、二人の性格の違いも把握したうえで平等に愛情を注いでいる。

浅倉 俊夫 (あさくら としお)

浅倉南の父親。45歳。喫茶店「南風」のマスター。浅倉南が幼少の頃に妻を病気で亡くし、以来男手一つで南を育てている。店の経営より、南・上杉達也・上杉和也の晴れ舞台を見に行くことを重視し、よく店を臨時休業にする。一時期、達也をアルバイトに雇っていた。南が和也と結婚することを望んでいたが、南は達也を好きであることを知り、娘の意思を尊重する。 達也・和也の両親である上杉夫妻と仲がよく、たびたび3人で出かけては、子供たちに呆れられている。

原田 正平 (はらだ しょうへい)

上杉達也・上杉和也・浅倉南の同級生。ボクシング部。特に達也とはつきあいが深く、親友ともいえる存在。中学生の頃から、人並み外れた体格と強面の風貌の影響でよく不良に絡まれて喧嘩が絶えないが、本人は争いを好まない平和主義者。南のことが好きだったが、達也たち3人の関係を見て、傍観者に徹する道を選ぶ。 人間観察力に優れており、達也や南の隠された心情や関係の小さな変化にもよく気づき、折々に適切な忠告を与えることも多い。新田明男とは中学生時代からの知り合いであり、新田が不良グループに属するチンピラだった頃を知る数少ない人物。

吉田 剛 (よしだ つよし)

上杉達也・上杉和也・浅倉南の同級生。上杉和也と比較されてもまったく意に介さず、マイペースを崩さない達也にあこがれ、明青学園野球部に入部した。ポジションは投手で、達也を真似たストレート、西村勇を真似たカーブなどを器用に使いこなす。当初は純粋に達也にあこがれ、投球フォームや生活スタイルを真似ていたが、自信をつけてからは達也を見下すようになる。 あこがれからライバルへと認識を改めた達也に対し、野球部のエースの座をかけて対決を申し込むが、急な親の転勤によって海外へと引っ越した。

新田 明男 (にった あきお)

新田由加の兄。須見工業高校(須見工)野球部の一員で、上杉達也のライバル。須見工野球部の4番で、ポジションはサード。天性の長距離打者で、高校2年の時に須見工を甲子園での準優勝に導いた。甲子園での優勝を目指しているが、その反面、地区大会予選で上杉和也と対決できなかったことに未練を残しており、達也に、和也に代わってその果たせなかった対決をさせてくれと頼む。 中学生時代は不良グループに混じって喧嘩をしていたが、高校に入ってからは不良グループとは手を切っている。穏やかで甘いマスクのため、女性ファンが非常に多い。浅倉南への好意をほのめかしていたが、達也との対決を優先させ、具体的な行動にはでなかった。

新田 由加 (にった ゆか)

新田明男の2つ年下の妹。上杉達也・浅倉南が3年生の時に1年生であり、明青学園高等部へ入学する。浅倉南が新体操部との掛け持ちでマネージャー業との両立が困難になったため、実質後任のマネージャーとなる。明青学園に入学した当初の目的は、兄のために須見工へ明青学園野球部の情報をリークすることだったが、達也の優しさを知るにつけて好意を抱くようになる。 気が強く、歯に衣着せぬ言動で女生徒からは反発が強いが、容姿が良いこともあり、男子生徒からの人気は高い。不器用で料理などの家庭的なことは不得手だが、運動神経は良く、合気道の有段者である。兄妹の仲は良く、兄からは向こう見ずな性格を心配されている。

西村 勇 (にしむら いさみ)

勢南高校野球部の一員。右投げ右打ちで4番。ポジションは投手。新田明男をライバル視しているが、新田からは相手にされていない。上杉達也とはまったく違うタイプの投手で、得意のカーブを武器に、緻密な駆け引きと頭脳戦を駆使したピッチングを信条とする。浅倉南の大ファンで、南を新体操に専念させるため、打倒明青学園に燃える。 また、個人的にも南へ好意を示しており、幼なじみの達也や、同じく南への好意を持つ新田には敵対意識を持っている。その反面、構われたがりな性格でもあり、新田や達也に無視されると、かえって構われようと自分から相手にちょっかいをかけにいくところがある。 達也と同じく、同い年で幼なじみの女の子がいるが、彼女が不器量なため、達也に嫉妬している。

佐々木 (ささき)

明青学園野球部の一員。上杉達也の後輩。新田由加の同級生。当初は「キャッチボールができるようになりたい」という安易な動機で野球部に入部した。しかし、柏葉監督代行のスパルタ練習に新入部員が半分以上辞めていくなか、努力して強くなることに喜びを見いだし、部に残り続ける。 マネージャーの由加に好意を持ち、由加が暴漢に襲われた時には、その身を挺して彼女を守った。運動神経はあまり良くなく、監督代行からも戦力外と見なされているが、相手校の戦績やデータを調べたりと、野球選手以外の部分で野球部に貢献する。

柏葉 英二郎 (かしわば えいじろう)

20代後半。西尾監督に頼まれ、一時的に明青学園野球部の監督代行を務める。丸刈りでヒゲを生やし、昼間からビールを飲んで部員に対し暴力を振るうなど、人格者とは言いがたい人物であるが、懐かれた野良犬を非情に追い払えないなど、冷酷に徹しきれていない。学生時代、優秀な野球選手だった兄・英一郎にあこがれ、野球部へ入部するも、才能に嫉妬した部員から嫌がらせを受けて退部した過去から、明青学園野球部に恨みを抱いており、その復讐のために監督代行を引き受けた。

柏葉 英一郎 (かしわば えいいちろう)

明青学園野球部の元部員。高校時代に野球部キャプテンを務め、甲子園を夢見るが、果たせずに卒業。西尾監督の代行を務める柏葉英二郎の2つ年上の兄。本来、西尾監督から代行を依頼されていたのは英一郎の方だったが、行き違いがあり監督代行依頼のことは知らされていない。 現在は、紳士然としたたたずまいと物腰で人格者として認められているが、弟・英二郎との間に確執があり、弟の話題に触れられると声を荒げるなど、大人になった今でも英二郎とは和解できていない。

上村監督 (かみむらかんとく)

新田明男が所属する須見工野球部の監督。48歳。明青学園野球部監督の西尾茂則とは同い年であり、学生時代からのライバル。西尾監督とは学生時代はライトポジションを競い合い、監督となってからは地区大会優勝を競い合うが、今まで一度も西尾監督に負けたことはない。 2度の甲子園準優勝を飾るが、優勝を目指して新田に期待をかけている。

校長 (こうちょう)

明青学園高等部の校長。恰幅のよい中年男性であり、穏やかな性格ではあるが、強く出られない姿勢から、やや威厳に欠ける。生徒たちの活躍が学園の宣伝になることに前向きであり、活躍著しい野球部や新体操部に対しては手放しで応援している。その反面、宣伝になるとなれば当人の意思はお構いなしに取材などを受けており、浅倉南などからはたびたび抗議を受けている。

寺島 (てらしま)

西条高校野球部のエースで4番。左投げ左打ち。本格派左腕と呼ばれ、寺島が入学してからの西条高校は甲子園常連校と言われていた。上杉和也と同じく速球を武器にする投手であり、ノーヒットノーランの記録を幾度も経験している。

住友 里子 (すみとも さとこ)

人気ナンバー1のトップアイドル。17歳。電車で上杉達也と乗り合わせたことをきっかけに知り合う。アイドルとして過密スケジュールをこなしつつも、自分の意思と関係なく、自分の置かれている環境や存在価値が変わっていくことに不安を抱いている。野球に打ち込むあまり「アイドル・住友里子」の存在を知らず、またそのために特別扱いをしなかった達也に惹かれていく。

パンチ

『タッチ』に登場する犬。上杉家・浅倉家の共有する庭で飼われている犬。当初は浅倉南が拾ってきた捨て犬であったが、食事の世話などは上杉達也がよくしている。犬種は定かではないが、大型犬に近い体格を持ち、やや太り気味。南にはよく懐き言うことも聞くが、達也に対しては無視するなど態度が悪い。 チッチ・ポッポという名の子犬がおり、同じく両家の庭で一緒に住んでいる。

集団・組織

明青学園 (めいせいがくえん)

『タッチ』に登場する高等学校。中等部と高等部があり、中高一貫校となっている。中等部の野球部は軟式野球であり、中等部から野球部に入っていた上杉和也は高等部で初めて硬球を使用した。高等部は野球部以外にも新体操部・ボクシング部・テニス部・サッカー部などがあり、活躍している部活動に対しては特別予算を組むなど、部活動の支援には力を入れている。

須見工業高校 (すみこうぎょうこうこう)

『タッチ』に登場する高等学校。新田明男が在籍する高校。新田の入学以降、地区大会優勝および春夏の甲子園で2度の準優勝を飾る。新田以外にも投手・野手ともに高水準の選手が揃い、野球部のレベルは高い。

勢南高校 (せいなんこうこう)

『タッチ』に登場する高等学校。西村勇が在籍する高校。須見工と並び、地区大会で優勝候補のひとつと言われる。野球部としては投手の西村が有名ではあるが、守備にも優れている。

西条高校 (せいじょうこうこう)

『タッチ』に登場する高等学校。寺島投手が在籍する高校。寺島投手が在籍中は地区大会強豪と言われていたが、上杉達也たちが高校1年の時に上杉和也との対決で敗北して以来、地区大会での優勝争いとは遠ざかる。

佐田商業高校 (さだしょうぎょうこうこう)

『タッチ』に登場する高等学校。高校2年時に明青学園から転校していった吉田剛が、海外から帰国した際に転入している。生徒の男女比は女生徒の方が多く、野球部は弱小。1回戦敗退が常であったが、吉田剛が入部したことで投手力が上がり、地区大会3回戦まで進む。

光北学園 (こうほくがくえん)

『タッチ』に登場する高等学校。須見工が、春と夏の2度の甲子園決勝で対戦し、2回とも敗れ優勝を逃した時の相手校。甲子園での春夏連覇を果たし、上杉達也が3年の時にはダントツの優勝候補と言われる。

場所

南風 (みなみかぜ)

『タッチ』に登場する喫茶店。浅倉南の父・浅倉俊夫が経営する。住宅街の中にあり、店の裏が浅倉家の自宅とつながっている。一時期上杉達也をアルバイトとして雇っていた以外、店員は雇っておらず、基本的に俊夫が一人で切り盛りしているが、浅倉南が臨時的に店を手伝うこともある。カウンター席とテーブル席があり、テーブル席にはゲーム台が備え付けられている。 自営業であるため、俊夫の一存で臨時休業となることがしばしばある。

アニメ

タッチ

明青学園中等部に通う上杉達也と上杉和也は一卵性双生児。天才と言われる弟上杉和也に対し、兄上杉達也は「弟に全ていいところをとられた出がらしの兄貴」とまで言われていた。幼馴染浅倉南の夢をかなえるべく、野球... 関連ページ:タッチ

書誌情報

タッチ 全14巻 小学館〈小学館文庫〉

第1巻

(1999-03-16発行、 978-4091932518)

第2巻

(1999-03-16発行、 978-4091932525)

第3巻

(1999-04-16発行、 978-4091932532)

第4巻

(1999-05-15発行、 978-4091932549)

第5巻

(1999-06-16発行、 978-4091932556)

第6巻

(1999-07-16発行、 978-4091932563)

第7巻

(1999-08-07発行、 978-4091932570)

第8巻

(1999-09-16発行、 978-4091932587)

第9巻

(1999-10-16発行、 978-4091932594)

第10巻

(1999-11-16発行、 978-4091932600)

第11巻

(1999-12-16発行、 978-4091932617)

第12巻

(2000-01-15発行、 978-4091932624)

第13巻

(2000-02-16発行、 978-4091932631)

第14巻

(2000-03-16発行、 978-4091932648)

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