増田こうすけ ギリシャ神話劇場 神々と人々の日々

増田こうすけ ギリシャ神話劇場 神々と人々の日々

ギリシャ神話をモチーフとした一話完結式のギャグ漫画。古代ギリシャにおける伝説上の神々、および人々の生活を、ユーモアたっぷりに描写している。「ジャンプ改」Vol1より連載していたが、同誌が休刊してからは「小説すばる」で連載している。

正式名称
増田こうすけ ギリシャ神話劇場 神々と人々の日々
ふりがな
ますだこうすけ ぎりしゃしんわげきじょう かみがみとひとびとのひび
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
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世界観

古代ギリシャが舞台。オリンポス12神を始めとした神々や英雄などの活躍を、増田こうすけ独自の観点から描いている。神も人も万能ではないことが特徴で、どのキャラクターも短所をあえて目立たせることで人間味を際立たせることに成功している。また、ギリシャが舞台であるにもかかわらず、通貨には円が使われている。

あらすじ

第1巻

ギリシャの街を闊歩する英雄、ヘラクレスに対し、アキレウスという名の青年が勝負を仕掛けてきた。アキレウスは、ほぼ不死身の身体を持ちながらも、唯一残された弱点であるかかとを蹴られただけで死んでしまう。その極端な体質に懸念を隠せないヘラクレスだったが、軽く擦るだけなら大丈夫という言葉を信じて、かかとを軽くマッサージする。しかし、ヘラクレスのミスによってうっかりかかとを摑まれ、大ダメージを受けたアキレウスは撤退を余儀なくされる。ヘラクレスの恐ろしさを肌で感じたアキレウスは、師匠であるケンタウロス族のケイロンのもとで、さらなる修行に励むのだった。(エピソード「ヘラクレス対アキレウス」)

ある日ケイロンは、海神のポセイドンから経営学についての相談を受ける。ポセイドンは、息子のトリトンと共に海洋レジャー施設であるポセイドンランドを経営しているが、その経営状況は順風満帆とはいえないため、賢者として名高いケイロンの観点から、アドバイスを受けたいというのだ。ケイロンはこれを引き受け、その翌日に客としてポセイドンランドを訪れる。ポセイドンは、ケイロンが見ている前で、英二という名のバンドウイルカを主演としたイルカショーを披露する。しかしその様子は、客席が海から遠すぎて満足にショーを見られなかったり、半人半魚のトリトーンが無理をして陸を張いずってチュロスを売ろうとしたりなど、悲惨としかいいようのないものだった。(エピソード「ポセイドンランド」)

特に自分がいやらしいわけでもないのに、「エロい」の語源が自分自身の名前であるという事に強い不満を持っていた愛の神、エロスは、名前のイメージを払拭すべく、優れた占いをする事で知られる予言の神、アポロンのもとを訪れる。アポロンは水晶玉を叩くだけ叩き、占った結果、西へ向かう事でエロスの本当の姿が見えてくるという予言を下す。それを聞いたエロスは早速占いの館をあとにし、西へ向かうのだった。その先の草むらで、エロスはエロ本らしき本が捨てられているのを発見する。自分は決していやらしいわけではないと考えているエロスだったが、実際はそのエロ本に興味津々のようで、偶然を装ってエロ本を読もうと動き始める。(エピソード「エロスの気持ち」)

勇者ヘラクレスをライバル視しているアキレウスは、不死身の身体を持ちながらも、その実力差から攻撃を当てる事ができず、一方的な敗北を喫したままでいた。腕力だけでは太刀打ちできないと考えたアキレウスは、ヘラクレスにスキができる瞬間をうかがうべく、アポロンに占ってもらう事を決める。決定的な瞬間を占うには高い費用がかかるというアポロンに対して、アキレウスは自分が得をするように交渉を仕掛けるが、結局はアポロンの言い値で占ってもらう事になる。アポロンはここぞとばかりに水晶玉を叩きながら占いを行うものの、二人の予想以上に難航し、水晶玉へのダメージばかりが蓄積されていく。(エピソード「アキレウスの勝機」)

戦いの神であるアテナは、ミス・アテナイ商店街の座に就いていた。しかし、肝心のアテナイ商店街にはまったく活気がなく、このままでは別の商店街に客を取られるという危惧から、商店街に住むテセウスや、喫茶店を営んでいるテセウスの父親、アイゲウスを交えて会合を開く。アテナは、自信満々な様子とは裏腹に、ろくでもない提案をするテセウスを早々に見限り、アテナイ商店街のゆるキャラを作る事を提案する。アイゲウスがゆるキャラを「許せないキャラ」と勘違いするなど、ひと悶着起こしつつも、最終的にはゆるキャラを作り上げる方向で意見は一致する。三人は絵を描く事で、どのようなキャラクターにしたいのかをそれぞれ表現しようとするが、見事に意見がばらついてしまい、その結果、トラウマになりかねないゆるキャラが生まれてしまう。(エピソード「アテナイ商店街のキャラ」)

アテナはある河原で、両手を上下左右に動かしているテセウスと出会う。テセウスは、ギックリ腰になってしまったアイゲウスに代わって喫茶店のマスターを務めるべく、料理修業の一環としてイメージトレーニングをしていたのだ。しかし、自作の料理でアイゲウスが死にかけたとも言っており、アテナはそれに呆れてしまう。そんな矢先に、テセウスは飛んできた水晶玉を見もせずにはたき落とすという芸当を見せる。アテナはテセウスに戦いの才能があるのかもしれないと推測。さらに水晶玉を落としたアポロンも、水晶玉をぶつけかけたお詫びとしてテセウスを占い、その結果、テセウスに勇者としての資質が眠っている事を告げる。(エピソード「勇者テセウス」)

アキレウスは、テセウスが怪物のミノタウロスを退治して名をあげようとしている事を知り、テセウスより早くミノタウロスを倒そうと決意する。それを聞いたケイロンは、今のままではミノタウロスを倒す事は厳しいとして、「ミノタウロスコース」と呼ばれる修行をアキレウスに課そうとする。アキレウスはさらに月謝が上がる事に難色を示すが、背に腹は代えられないとして、ミノタウロスコースの受講を決める。ケイロンは、ミノタウロスは牛の怪物なので突進などが得意であると推測し、修行の結果、アキレウスは突進に対する万全の対策を身につける。(エピソード「ミノタウロスコース」)

「クレタの町」では、怪物のミノタウロスが、建築家のダイダロスに抗議をしていた。ミノタウロスは、自分を倒しに来る勇者を迷わせるために、ダイダロスに依頼して住処を迷宮に改造してもらったのだが、その構造はシンプルでまったく役に立たないものだった。そして、心に迷宮を抱えているというダイダロスを無視しつつ、実際に改造された迷宮に連れていく。その中はシューズクロークや台所、風呂場、ウォークインクローゼットが用意されているものの、構造自体はただの1DKでしかなかった。(エピソード「ミノタウロスの迷宮」)

空を飛ぶ事を志すイカロスは、父親であるダイダロスの作った翼を付けて、家の二階から飛び降りようとしていた。しかし、イカロスが身につけた翼は、空を飛ぶためのものではなく、漫画原稿の上についた消しゴムの消しカスや、トーンのクズなどを払うためのものだった。あえなく墜落していくイカロスの脳内には、空を飛ぶという目標を友人達にからかわれたり、空を飛びたいとダイダロスにおねだりし、何故かイカロスが空を飛んでいる漫画を描かれたり、唐突に母親のナウクラテや「クレタの町」の町長が湧いて出たりと、さまざまな思い出が走馬燈のようによぎっていく。(エピソード「イカロスの翼」)

ダイダロスのふくよかなお腹がクッションになり、墜落の危機を脱したイカロスだったが、空を飛びたいという願いは未だ叶えられずにいた。イカロスは、神であるエロスなら空を飛べるのだろうな、と羨む。一方エロスは、新しくオープンしたという銭湯の壁に背をもたれて休んでいたが、その時、壁の奥から女性の声が響く。エロスは不意に壁を乗り越えたいという欲求に駆られて、土でできた壁を掘ろうとするが、途中で固い木材に阻まれてしまう。エロスは最後の手段として、空を飛ぼうと翼をはためかせるが、身体がなまっていたため、飛ぶ事すらできなかった。(エピソード「エロスの翼」)

飛ぶ事ができない腹いせに、つい自分の翼を引きちぎってしまったエロス。大した怪我にはならなかったものの、このままではまずいと感じた彼は、予言の神であるアポロンを頼って、彼の経営する占い屋へと向かう。占いの結果、医師としても名高いケンタウロスのケイロンか、アポロンの息子であるアスクレピオスなら、翼を元通りにしてくれるという。エロスは、バカ高い軟膏を塗られてしまうというケイロンを避け、アスクレピオスの経営する診療所へと足を運ぶ。しかしアスクレピオスからは、翼をちぎってしまったという事から精神病を疑われてしまう。(エピソード「エロスと2人の名医」)

テセウスは、壊れた眼鏡を直してもらおうとするが、何故か依頼した相手は医者であるアスクレピオスだった。眼科をやってはいるが、眼鏡の修理は引き受けていないと答えるアスクレピオスだが、テセウスに引く様子はなく、逆に医者としての資質を疑いだす。アスクレピオスはそれに対して、自分の腕は確かだと主張し、さらにいつかは死者すら蘇らせるレベルに到達すると公言する。しかし、冥界でこの言葉を聞いたハデスは、死者を蘇らせる事は生命のサイクルを破壊する禁忌であると言い、アスクレピオスに天罰を下すため、彼の診療所へと迫り来る。(エピソード「迫り来る冥界の王 ハデス」)

アキレウスは、かかとの弱点を克服するために、冥界にあるというステュクス河を訪れていた。そこで冥界の王であるハデスと偶然出会い、アキレウスは赤ん坊の頃に、母親に全身をステュクス河に浸らせたために不死身である事、そして、その際にかかとを摑んでいたために河の水が浸らず、不死身になり損ねた事を話す。ハデスは、河に身体を二度浸ける事は冥界の掟で禁じられているというが、かかとには一度も浸けていないのだから二度浸けた事にはならないという、アキレウスの主張を認めるのだった。(エピソード「冥界のステュクス河」)

ハデスは、冥界と人間界の境目となる穴に身体が挟まり、身動きが取れなくなってしまうが、そこに戦いの神として名高いアレスが現れる。ハデスは彼に対して難解な言い回しを用いつつ引っ張り上げてほしい旨を伝え、アレスもそれを承諾する。ハデスの腕を摑み、引っ張り上げようとするアレスだが、ハデスの身体はまるで動く様子がない。いくら引っ張ってもびくともしない現状に、ハデスはほかの人を呼んできてほしいと言うが、アレスはそれにまったく耳を貸さず、自分が全力を出せば必ず引っ張り上げられると訴えながら、ひたすらにハデスの腕を引っ張り続ける。(エピソード「本気のアレス」)

修行を積んだアキレウスは、いよいよミノタウロスを倒すために、彼の潜む島へと向かう事を決める。海路を探していたところで、ポセイドンが営む貸し船屋を見つけるアキレウスだったが、一回6000円と高価で、これを利用するべきかどうか迷い始める。アキレウスの師匠であるケイロンは、ポセイドンの貸し船が得である事を何故か必死にアピールしだすが、その傍らでポセイドンから600円の宣伝料を受け取っていた。これを見ていたアキレウスは、嫌な三角形に巻き込まれたと主張するが、ケイロンはこれを「誰もが得するハッピートライアングル」と語って譲らず、さらに回数券を使用する事でお得感が増す事を訴え始める。(エピソード「ハッピートライアングル」)

ミノタウロスは、アテナイ商店街でバスローブを購入するが、その帰り道でテセウスおよびアテナと出くわしてしまう。アテナイ商店街に攻めてきたと勘違いしたアテナは、テセウスにミノタウロスを倒させて英雄としての名をあげさせようとし、ミノタウロスもテセウスと戦う素振りを見せる。一方、テセウスは眼鏡を紛失しており、目の前がよく見えない状態に陥っていたが、背後でナナホシテントウムシを発見した子供の声を聞く事で、ある作戦を思いつく。テセウスはミノタウロスに突進したところ、彼が得意とする巴投げを食らってしまうが、これこそがテセウスの狙いだった。(エピソード「テセウス対ミノタウロス」)

結果的にとはいえ、テセウスはミノタウロスに勝利した英雄として名を馳せる事になった。アイゲウスは、今こそがアテナイ商店街を盛り上げるチャンスであると考え、テセウスにちなんだグッズを紹介し始める。テセウスまんじゅうやテセウスういろう、テセウス干し柿など、微妙極まりないグッズの提案にアテナは閉口し、予言の神アポロンに聞く方がいいのではないかと提案。それを聞いていたオリンポス12神のヘルメスが、アポロンを訪ねようと申し出る。アテナ達は機動力に定評があるというヘルメスにそれを任せるが、ヘルメスは相談の内容をいまいち把握していなかった。(エピソード「神々の使者」)

ダイダロスの頼みによって、アテナイ商店街でバスローブを購入したミノタウロス。彼はダイダロスが太っている事を揶揄して、「あいつにはバスローブよりブラジャーの方が必要なのでは」とぼやいていたが、その一言が、偶然通りがかったエロスの探求心に火を付けてしまう。悪さをしないようにという名目で、ミノタウロスをどこまでも追いかけようとするエロス。途中、夏の暑さにやられて倒れてしまうが、それでも立ち上がり、ついには彼の住むクレタの町にまで追いすがっていく。(エピソード「エロスの旅」)

アポロンに頼まれていた水晶玉を完成させたヘパイストスは、ヘルメスに対して、水晶玉をアポロンに届けてほしいと頼む。ヘルメスはこれを二つ返事で引き受けるが、その途端すぐに鍛冶屋を出た事で、水晶玉に関する注意書きを受け取らずに出発してしまう。ヘルメスはアポロンに水晶玉を渡し、アポロンはその水晶玉の性能の高さを喜ぶ。しかし、台風の進路を占った結果、何故かタイ風の新郎が浮かび上がり、さらにアポロンが水晶玉を叩くと水晶玉からねばついた液体があふれてしまい、アポロンとヘルメスは混乱に陥ってしまう。そこにタイ風の新郎が、妻を伴って現れる。(エピソード「ヘパイストスが造った水晶玉」)

ミノタウロスを倒したとされる勇者のテセウスは、日々サインをねだられるほどの人気を獲得していた。一方、それを見ていたアレスは、自分がミノタウロスを倒せばよかったとうそぶくが、アテナから「あなたには無理」とはっきり言われてしまう。これを不服に思ったアレスだったが、アテナは畳みかけるように、アキレウスの父親であるペレウスと戦って敗れた事を指摘する。さらに勇者ヘラクレスからKOされていたアレスだったが、彼は敗北したという現実を頑なに認めようとせず、ありとあらゆる屁理屈をこねながら、自分は負けていないという事を主張し始める。(エピソード「アレスの強さ」)

勇者のテセウスに戦いを挑み、完膚なきまでに負けてしまったアレス。彼は例によって、自分が敗れた事をまったく認めようとはしなかったものの、より強くなる必要性を感じており、ケイロンとアキレウスが、竿につるしたボールを叩くという修行をしている様子をつぶさに観察していた。アキレウスは、アレスが修行をやりたがっているのかを尋ねるが、見栄っ張りのアレスは、ボールの空気圧が気になっただけだという。さらにアキレウスは、竿につるしたコンニャクを殴るという新しい修行を始めるが、そこにまたアレスが介入を始めてしまう。(エピソード「コンニャク」)

神々の王であるゼウスの正妻、ヘラは、道を歩いている途中にグロテスク極まりない物体の数々を見て言葉を失う。この物体を、なるべく子供を寄せ付けないように考えた公園の遊具と推測したヘラだが、そこでうずくまっていた虹の神、イリスが、現在精神的なスランプに陥っており、その結果作り出した虹が気持ち悪い物体になってしまったと語る。さらにイリスは、ヘラの息子であるアレスに恋をしており、その感情が集中力を妨げているのかもしれないと言うが、それを聞いたヘラは、あえて無心に徹するようアドバイスを送る。(エピソード「イリスの虹」)

クレタの町で怪我をしてしまったエロスは、ダイダロスとイカロスに介抱されたうえに、家に泊めてもらえる事になった。彼の大ファンであるというイカロスに家の中を案内してもらっていたエロスだったが、聞き間違いから「ダイダロスがエロエロな漫画を描いている」と思い込んでしまう。さらにダイダロスのアトリエが立ち入り禁止であると聞かされ、ますます部屋の中が気になったエロスは、外が嵐に見舞われている事などお構いなしに、ダイダロスのアトリエを覗くため、ありとあらゆる手段を講じようとする。(エピソード「嵐の中で」)

第2巻

エロスダイダロスの家に泊まった翌朝、嵐はすっかり止んでいた。イカロスはダイダロスの頼みで、エロスを港まで送っていく事になった。憧れのエロスと同行する機会を得たイカロスだったが、羽を持っているにもかかわらず一向に飛ぼうとしないエロスに対して、微妙な思いを抱いていた。そんな中、エロスとイカロスは、空を駆けるペガサスの姿を確認する。ペガサスを駆る勇者であるベレロポンが現れた事を知ったイカロスはエロスを放置して、ベレロポンが降り立った場所に向けて全力で疾走するのだった。(エピソード「空を飛ぶことに憧れるイカロスと勇者ベレロポン」)

アキレウスとケンタウロスのケイロンは、ある道具を受け取るために鍛冶屋であるヘパイストスのもとに向かっていた。アキレウスは、本来は乗るために2000円払わなければならないケイロンの背中に乗っており、ケイロンはそれを不満に思っていたが、アキレウスの誕生日に2枚プレゼントした「お願いをひとつきく券」を使われたため、拒否する事ができずにいた。往復で一枚か、片道で一枚かと道中で揉めつつも、ヘパイストスの家に到着した二人。アキレウスは、かかとを守るために開発されたという強化ブーツをヘパイストスから受け取るが、このブーツがケイロンに思わぬ被害をもたらす事になるのだった。(エピソード「ヘパイストスを訪ねるアキレウス」)

勇者のテセウスミノタウロスを倒すという殊勲をあげたものの、相変わらず盛り上がりを見せないアテナイ商店街。アテナは盛り上げるための新たな催しとして、商店街の中央広場に住民を集めてテセウスの活躍をアピールするという「テセウストークライブ」を企画する。さらに、アテナはアイゲウスによってトークライブのゲストに推薦されるが、緊張する事を理由にしり込みする。そこにヘルメスが現れて司会を引き受けるが、相変わらず人の話を聞かないヘルメスは、アテナを勝手にゲストに組み込んでしまう。さらに、テセウスのトークスキルが壊滅的な事も判明し、トークライブは「出口なしの暗闇」と呼ばれるほどの惨劇となり果てていく。(エピソード「テセウストークライブ」)

クレタの町に住むアリアドネは、ミノタウロスを倒したという勇者、テセウスに憧れていた。テセウスの外見すら知らないアリアドネだが、彼女の憧れが生み出した妄想は、テセウスの姿を華美に彩る。そんな中、アリアドネは町に勇者がやってきたという声を聞き、すぐさま家を飛び出す。テセウスに会いたい一心で走るアリアドネは勇者と出会う事ができたが、その勇者はパンツ一丁で、頭は禿げていて出っ歯という、お世辞にも褒められない容姿だった。勇者の正体はテセウスではなくベレロポンだったが、それを知らないアリアドネは、彼がテセウスでない事を必死に願いながら、勇者の名前を聞くのだった。(エピソード「アリアドネの憧れる勇者」)

アキレウスは、ヘパイストスから作ってもらったブーツを履きつつ、戦いを挑むためにヘラクレスを探していたが、夏にブーツは蒸れてしまうという事に気づき、ヘラクレスを見つけた時に「どこをブラブラしていたんですか。靴が蒸れてしまいました」とぼやいてしまう。それを聞いたエロスは「ブラが蒸れた」と聞き間違えてしまい、急にアキレウスとヘラクレスの対決に興味を持ち出す。アキレウスの友人である若い女性がブラをつけていると妄想するエロスは、そのまま二人の決闘を見届けようとするが、一向にブラの話が始まらない事にじれったさを覚え始める。(エピソード「アキレウス対ヘラクレスを見るエロス」)

アポロンは、ヘパイストスから新しい水晶玉を入手したものの、夏の暑さからいまいち仕事のモチベーションが上がらない。そんな中、占い屋にナルキッソスという客が恋愛の相談に訪れる。恋愛には向かなそうな顔立ちのナルキッソスは、事もあろうに自分自身に恋をしてしまったと言い、アポロンに対して自分自身と結ばれる方法を伝授してもらえるよう迫る。アポロンは面倒な客の襲来に軽く絶望しつつも、ナルキッソスの恋が成就する方法を探るべく水晶玉を叩き始める。(エピソード「ナルキッソスの恋」)

夏も終わりに差し掛かったある日、インドア派のイアソンは、コルキスと呼ばれる場所にある金の羊の毛皮を求めて冒険の旅に出る事を決意する。まずは心強い仲間を探すべく町に向かい、ヘラクレスやテセウス、アキレウスなど、英雄や勇者として名高い青年達を次々と発見する。しかし、極めてコミュニケーションが苦手なイアソンは、誰に対しても声をかける事ができず、すれ違っては英雄達の弱点や欠点を想像し、自分の選択が正しいと思い込み、当然ながら仲間を増やす事はできずじまいだった。(エピソード「勇者イアソンの冒険の始まり」)

冒険を決意したものの、結局家に帰って来たイアソン。しかし彼にとっては一時的な帰宅に過ぎず、翌朝、再開という名目で再び冒険の旅に出る。イアソンは、アテナイの町に出向き、住民達から情報を集めようとするが、コミュニケーションが苦手なイアソンは、そもそも人に話しかける事ができず、何一つ情報が得られないまま時だけが過ぎていく。収穫ゼロのまま昼を迎えたイアソンは、昼ご飯のおかずを求めて歩き出したところ、ちょうど魚屋を発見する。(エピソード「勇者イアソンの冒険2日目」)

ナルキッソスは自分自身を愛する心を止める事ができず、巷では彼の名前をもとにした「ナルシスト」という単語が生まれていた。銭湯の壁の前に座り、自分の美しさに思わず声に出してしまうが、そこにエロスが現れる。エロスは、ナルキッソスが銭湯の中にある何かを見ていたと勘違いしており、のぞき穴などの類のものを必死に探し出すが、一向に見当たらない。さらに、ナルキッソスも愛の神であるエロスに質問を投げかけてしまい、二人の勘違いはさらにエスカレートしていく。(エピソード「見えない美しさ」)

ヘラクレスといい勝負をできるようになったアキレウスは、ケイロンのもとで修業する事をやめると言い出す。月謝が減ってしまうと考えるケイロンは、お金がなければお手軽コースで修業すればいいと主張し、アキレウスが考え直すように促すが、既に一度お手軽コースを受けていたアキレウスは、その酷い内容を思い出し、さらに頑なになってしまう。ケイロンはさらに、途中で修業を止めてしまったイアソンが勇者として大成できなかった事を語り、イアソンのようになりたくなければ修行を続けるように、再度釘を刺すのだった。(エピソード「お手軽コース」)

冥界の王、ハデスは、豊穣の神、デメーテルの娘であるペルセポネに惹かれており、冥界に訪れたヘルメスに向けて、ペルセポネにラブレターを届けてほしいと頼む。ヘルメスは、ペルセポネが方々で残念な言動を見せている事を指摘するが、ハデスにとってはその残念な点こそが好みであると返され、手紙を届ける事を引き受けるのだった。しかし、例によってヘルメスは、デメーテルには知られないようにしてほしいという話を聞かずに出発してしまい、さらにラブレターは、ハデスが思い立った勢いに任せて書かれていたため、ペルセポネの言動以上に残念な事になっていた。(エピソード「冥界からの手紙」)

リュキアの町の住人達は、最近しょっちゅう出るという怪物のキマイラによって脅かされていた。リュキアの町長であるイオバテスはその対策として、勇者ベレロポンにキマイラ退治を依頼する手紙を送る。一方ベレロポンは、キマイラを捕らえるための投げ縄の練習をしていたが、その際に縄の括りつける部分がアキレウスの首に引っかかってしまう。不死身であるため身体に別状はないものの、ベレロポンは知らずにアキレウスをリュキアの町まで引っ張っていってしまう。こうしてリュキアにたどり着いたベレロポンはキマイラに戦いを挑むが、その戦いは意外な結末を迎える事となる。(エピソード「勇者ベレロポンのキマイラ退治」)

ある日、アキレウスは英雄ヘラクレスから説教されていた。アキレウスはケイロンから[青天の霹靂]という技を教わったのだが、その内容が両手を用いた目つぶしであったため、卑怯であると指摘されたのである。それに対し、アキレウスも卑怯だと理解はしていたが、1980円払って買った技であるために、使わないと損してしまうのではないかと内心を吐露し、さらにあとで月謝といっしょに払う事になっている事を明かす。ヘラクレスは、まだお金を払っていないのなら、技を二度と使わない代わりに代金を払わないようにするか、値切る事を提案する。(エピソード「青天の霹靂」)

アテナイ商店街は、相も変わらず名物に恵まれず、ほかの商店街に水をあけられる日々が続いていた。アテナもまた相変わらずそれを憂えていたが、そんな彼女にテセウスは「アテナイ商店街活性化の最強の一手」としてスタンプラリーを提案。既に準備を終えたテセウスは、まずはミス・アテナイ商店街のアテナに体験してほしいと、スタンプカードと場所のヒントを手渡す。アテナイ商店街のスタンプラリーに出かけたアテナだったが、スタンプのインクの蓋が開きっぱなしでカサカサに乾燥してしまっていたり、スタンプがチェーンで固定されているためインクまで届かなかったりと、テセウスらしいミスに翻弄されていく。(エピソード「アテナイ商店街のスタンプラリー」)

闘いの神を自称するアレスは、相変わらず誰と戦っても歯が立たない有様だった。ベレロポンとの戦いにおいても、誰がどう見てもわかるほど完膚なきまでに敗れ去ってしまうが、例によってアレスは、自分が負けたという現実から逃れるために、言い訳を考えようとする。そんな時にエロスが現れ、「パンツ1枚の奴のパンチに負けるはずがない」という言葉を「パンティ1枚のパンチラ」と空耳してしまう。その一言に俄然興味を抱いたエロスは、アレスとつかず離れずの位置で、彼の独り言を聞こうと企む。(エピソード「アレス対ベレロポン」)

イアソンが冒険の旅に出てから、1か月が過ぎようとしていた。しかし実際のところは、途中3週間ほど家で療養の名目で引きこもっていたりと、相変わらず本気を感じられないものだった。それにもかかわらず、やり遂げたという独り言を呟いていたところ、その発言を、青春の女神であるヘベが偶然にも聞きつける。大言壮語に大いなる青春を感じたヘベは、イアソンの冒険の大成を見届けようと、彼を遠くから追っていく。しかし、もともと内向的なイアソンのやる事は青春を感じさせるものではなく、徐々にヘベは苛立ちを募らせていく。(エピソード「青春」)

アキレウスは突然、おかっぱ頭の青年に声をかけられる。見覚えのない人物であったため、誰なのか聞き返すアキレウスだったが、青年は頭に乗せているライオンとはぐれたヘラクレスだった。ライオンを探しているというヘラクレスに、アキレウスは自分も手伝うと申し出て、二人はかつてライオンを発見したというキタイロン山へと向かう。アキレウスは道中で、いつもと違う様子のヘラクレスを訝(いぶか)しんでいたが、二手に分かれて捜索した結果、ヘラクレスより先にライオンを発見する。(エピソード「ライオンを探してキタイロン山へ」)

夏休みが終わってから1か月ほど過ぎたある日、イカロスは宿題を提出していない事を突如指摘されてしまう。誤魔化しきれなくなったイカロスは、まったく手をつけてない宿題を1からやる羽目になり、自業自得であるにもかかわらず理不尽だと叫び、仮に夏休みが戻ってくるなら、今度は必ず計画的に行う事を宣言する。そこに偶然ながら時の神であるクロノスが通りがかり、イカロスの意を汲んで時を巻き戻す。(エピソード「夏休みの終わり」)

ヘラクレスが道を歩いていると、ギリシャの子供達が一番強い勇者は誰なのか話していた。子供達はヘラクレスの存在に気づかないまま、アキレウスやテセウスの魅力について語り、それを聞いていたヘラクレスは、自分の事については何も語られなかった事に落ち込んでしまう。道でふさぎ込んでいたヘラクレスだったが、そこに現れたアキレウスから、子供達がヘラクレスの話をしていた事を聞き、思わずガッツポーズをする。意表を突かれるアキレウスに対して、ヘラクレスは「これは新手のパンチ」だと言い張るが、そこに「パンチ」を「パンティ」と聞き間違えたエロスが現れる。(エピソード「ヘラクレスのパンチ」)

アポロンが営む占い屋に、再びエロスが現れた。人に翻弄される事が多いという悩みを打ち明けるエロスだったが、アポロンはちょうど水晶玉を日干しにしていたため、エロスの手相を見る事になる。それによると、エロスの手には「エロ線」と呼ばれる線があり、人に翻弄されているのではなく、エロス自身のスケベな思いに翻弄されている事が判明する。しかし、この期に及んでも自分をスケベだと認めようとしないエロスは、さまざまな理屈をこねてアポロンの読みが間違っている事を証明しようとする。(エピソード「エロスとアポロンの水晶玉」)

イアソンが冒険を早々に切り上げてから、しばらくの時が流れた。そして、夏が終わり、涼しくなった事を好機と見たイアソンは、再び冒険の旅に出る事を決意する。出かけようとした際に宅配業者が現れ、判子を求められる。判子の場所がわからないイアソンは代わりにサインをするが、その際に業者から小さく舌打ちをされてしまう。イアソンは業者が帰ったあと、気を取り直して冒険の旅に出るが、宅配業者が去り際に残した舌打ちが頭から離れず、冒険どころではなくなってしまう。(エピソード「勇者イアソンの冒険の始まり」)

アキレウスはリュキアの町でキマイラを退治したが、炎を吐かれて服がボロボロになってしまっていた。お詫びとばかりにリュキア町長のイオバテスからもらったパンツを履いて、徒歩で帰路に就くアキレウス。彼が通りがかった森では、狩猟の女神であるアルテミスが弓の練習をしていた。しかし、アルテミスの腕は鈍りきっており、練習のために射た矢は的を大きく外れてしまい、あろうことかアキレウスの頭を射抜いてしまう。射貫いてしまった相手がアキレウスだと知らないアルテミスは、殺人を犯してしまったと大いに動揺し、隠ぺいするために策をめぐらせ始める。(エピソード「アルテミスの矢」)

イアソンは、共に冒険に出る仲間を集めるべく、掲示板に同志を募る旨のポスターを張っていた。しかし、数日経っても仲間になろうとする者は現れず、イアソンは途方に暮れてしまう。そんな中にアレスが現れ、自分に右手を使わせるほど苦戦させれば仲間に加入するという。イアソンは即座にこれを承諾し、アレスに挑みかかる。しかしその結果、イアソンはアレスに右手を使わせないまま圧倒してしまう。さらにアレスは、負けた事をまるで認めず、右手を使っていない事を主張し続け、二人の交渉はグダグダになってしまう。(エピソード「神と人の戦い」)

ある日の事。ケイロンは、アキレウスが友人であるはずのパトロクロスに絡まれたところを目撃する。ケイロンは、不死身のアキレウスなら返り討ちにするだろうと楽観的な考えを抱いていたが、アキレウスはパトロクロスが命令するままに、ジャンプをしてポケットの小銭を鳴らしてしまう。ケイロンはこの事で、アキレウスはパトロクロスからカツアゲに遭っていると確信するが、パトロクロスの真意は別のところにあった。(エピソード「パトロクロス」)

慕っている勇者であるテセウスに会うため、単身でアテナイ商店街までやって来たアリアドネは、偶然出会ったアテナから、テセウスはアイゲウスが経営している喫茶店に住んでいる事を聞き、そこを訪れる。しかし中にいたのはテセウスではなく、お客として先に訪れていたヘラクレスであった。ヘラクレスの事をテセウスと信じて疑わず、彼に対して名前も聞かないままサインをねだるアリアドネ。一方のヘラクレスもサインを書いた事がいっさいなく、アリアドネを失望させないようなサインを必死に考え、はからずも両者のあいだには緊迫した空気が流れていく。(エピソード「ヘラクレスのサイン」)

テセウスがミノタウロスを倒して有名になったものの、トークライブもスタンプラリーも失敗に終わり、相変わらずアテナは、アテナイ商店街を盛り上げるための決定的な手段を思いつかず難儀していた。そんな中テセウスが現れ、自分の書いた自叙伝を売り出してはどうかと提案する。テセウスのイメージアップにこそ繋がるだろうが、果たしてアテナイ商店街にとってプラスになるかと訝るアテナに対し、さりげなく商店街のアピールも盛り込んでいると自信満々のテセウス。書き上げてきた原稿を受け取ったアテナはその出来のほどを確認しようとするが、テセウスの文才はマイナスの方向に吹っ切れており、自叙伝は商店街の宣伝どころか、テセウスのイメージアップにも到底結びつかない代物だった事が判明してしまう。(エピソード「テセウスの自叙伝」)

作風

作者の増田こうすけは、本作『増田こうすけ ギリシャ神話劇場 神々と人々の日々』を生み出すにあたって自分の「ムーミン谷」を作りたかったと語っている。その題材として、ケンタウロス族や半身半魚、牛の怪物など、人の姿をしていないキャラクターが多く登場するギリシャ神話を選択したという。また、「ムーミン」の生みの親であるトーベ・ヤンソンの画集に感銘を受け、それに倣って定規やトーンを一切使用しない手法をとっている。なお、本作は開始時の季節が夏になっているが、これも作者の好きな季節が夏であることに起因している。

作家情報

増田こうすけは愛知県出身の男性漫画家。『巨大合体鋼鉄戦士イカンダー』で第48回赤塚賞の佳作、『夢 赤壁の戦い』で第49回赤塚賞の準入選に選ばれており、2000年より「月刊少年ジャンプ」誌上で、デビュー作となる『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』を連載している。

登場人物・キャラクター

アキレウス

ペレウスの息子で、最強の勇者を目指している青年。赤ん坊の時に全身をステュクス河に浸されたことで不死の体を手に入れる。そのとき唯一浸からなかった部位・かかとが致命的な弱点になっており、軽く蹴られるだけで天に召されてしまう。計算高い性格の持ち主で、ヘラクレスとの戦いでは自らの弱点を先んじて告白している。これは有名人であるヘラクレスなら弱点を攻撃するような姑息な戦い方はしないだろう、と考えたためである。

ヘラクレス

ギリシャ最強の英雄として名高い青年。常に頭を小さなライオンにかじられている。戦いを挑んできたアキレウスをペレウスの息子であると一目で見抜き、そのうえで父親そっくりのいい目をしていると称賛する。しかしすぐに前言を撤回し、よく見るとそんなにいい目でもない、普通だと思い直している。なお、頭のライオンとはぐれてしまうと、髪形がおかっぱになるうえに、性格もどこか古風、かつ軽薄になる。

ぺレウス

アキレウスの父親で、高名な勇者の一人。普段は温和な性格だが、怒ると怖い。ある日師匠であるケイロンに誕生日を祝ってもらうが、バースデーケーキのろうそくを吹き消そうとしたところ、突如ケーキが爆発してしまう。さらにそれがケイロンが仕掛けたドッキリだったということがわかり、怒りを露わにした。お詫びを兼ねた誕生日プレゼントを受け取ることで一度は怒りを鎮静させるが、プレゼントの中身がオッサンをかたどった温度計だったため、再度怒り狂う。

ケイロン

半人半馬の身体を持つケンタウロス族の中年男性。武術、音楽、医学など、さまざまな分野に精通しており、その知識を称えて賢者と呼ばれる。武術に関してはアキレウスやイアソンなどを弟子に取っている。お金に汚い性格で、弟子からは容赦なく高い月謝をふんだくり、少しでも自分の支出を減らそうとたくらんでいる。また、下半身が馬なので移動のたびに誰かが背中に乗ることが多いが、特別な事情がない限りは10分乗せるごとに2000円を払わせる。 そんな性格からか経営に関しても一目置かれているようで、ポセイドンからポセイドンランドの経営についてアドバイスを求められている。

ポセイドン

オリンポス十二神の一柱で、「海神」の異名を持つ。上半身は裸で、サスペンダーを付けたズボンを履いている中年の男性。トリトンという息子がいる。ポセイドンランドを経営しているが、どうにも振るわないため、ケイロンに経営のコツを尋ねた。その際にケイロンが間違って口にした「ポセZONE」という名前にやたらと興味を持ち、もし本当にあったら絶対に行くとまで言う。 海を司る神であるにもかかわらず、泳ぐ際はビート板を使う。

トリトン

ポセイドンの息子。下半身が魚の形をしている青年で、基本的には海の中から離れられない。ポセイドンランドではイルカショーの進行を手伝っており、その一環として揚げ菓子のチュロスを200円で販売している。無理をして陸の上を這って客に近寄り、息が絶え絶えになりつつも購入を促すほどの本気ぶりを見せる。しかし、見ていると痛々しくなるため食欲を減退させてしまい、結果チュロスはまったく売れない。

英二 (えいじ)

ポセイドンランド唯一の名物であるバンドウイルカ。人間で言うと中年男性程度の年齢である。歳のためかジャンプ力は低いが食欲は旺盛で、1日で10キロほどの魚をムシャムシャと貪り食う。ポセイドンが試しにゆでたまごをあげたことがあるが、見事なまでに見向きもしなかった。

エロス

愛を司る神。「エロい」の語源になってしまっていることにコンプレックスを抱いている。エロ本に過敏に反応したり、人の会話をエロい方向に聞き違えたりと、エロいことに関しては無駄にエネルギッシュである。ある時、女湯を覗くために空を飛ぼうと翼をはためかせた。しかし大人になってからは全く飛ばなかったため、すっかり体が鈍って1ミリたりとも飛び上がることができず、イライラするあまり自らの翼をむしり取ってしまう。

アポロン

オリンポス十二神の一柱。「デルポイニュータウン地区」で占いの館を開いている。占いにかかる料金は1回1000円が基本だが、内容によっては上乗せを要求することもある。性格は神にしては常識的で、占い自体の的中率も高いため多くの神や人に利用されている。しかし肝心の占いの内容は、妙な掛け声と共に水晶玉を何回も叩くという極めてエキセントリックなもので、客が水晶玉に同情の念をよせることもある。 また、手相を読むこともできるが、水晶玉の占いと比較すると精度は落ちる。

テセウス

アイゲウスの息子。父親と共にアテナイ商店街に住んでいる。眼鏡をかけており、一見すると知的な青年で、絵画や料理などに精通していると自身は思っている。しかし、絵画は夢に出そうなほど恐ろしいタッチのもので、料理は一口食べるだけでショック死しかけるほど酷い味。一方、目の前のハエを指先で突き落としたり、飛んできた水晶玉を見もせずに弾き落とすなど、身体能力は並外れている。

アテナ

オリンポス十二神の一柱で、戦いの女神。トサカのような前立てのついた兜をかぶり、左手に槍、右手に盾を装備している。ミス・アテナイ商店街の座についているが、肝心の商店街に活気がないため、戦いの女神としてアテナイ商店街をトップに押し上げるという野望を抱く。手始めにアテナイ商店街で喫茶店を営むアイゲウスとテセウスを交えた会合を開くが、アイゲウスは若作りによる知ったかぶりが酷く、テセウスはトラウマレベルのイラストを描いてばかりいるなど、前途は多難。

アイゲウス

テセウスの父親。アテナイ商店街の商店会長で、「喫茶アクロポリス」を経営している。禿げ上がった中年男性で、見た目も中身も典型的なオヤジキャラ。若者が好みそうな俗語を無理して使用しているが、「ゆるキャラ」を「許せないキャラ」の略と思っているなど、おかしいを通り越して痛々しいことになっている。息子のテセウスにはやや甘く、自分の想像していなかった提案を彼から受けるとその度に賞賛する。 しかし彼の作った創作料理である「シェフの気まぐれブルゴーニュ風おしゃれビーフのナポリ風セレナーデシェフの気まぐれハチミツ越え」を食べた時は、あまりのまずさに死にかけ、料理名を「三途の川」に改名させようとした。

ミノタウロス

クレタの街に潜む、牛頭の怪物。「悪い怪物」を自称しており、テセウスやアキレウスなど、ギリシャの英雄たちに狙われている。退治に来る勇者たちを迷わせるため、自分の家を複雑な迷宮に改造するようダイダロスに依頼した。作り上げられた迷宮の出来がよくなかったため、手抜きを疑っている。得意技は、向かってくる相手の力を100%利用した巴投げ。

ダイダロス

クレタの街に住む名工で、イカロスの父親。ふくよかな体格をしており、胸にも脂肪が溜まっているため女性と勘違いされることがあり、自らの体型に軽いコンプレックスを抱いている。イカロスの誕生日パーティーでも、自分が太っていることを愚痴ったため、イカロスはこのうえなく微妙な表情を浮かべていた。

イカロス

ダイダロスの息子。空を飛ぶことを夢見ているが、それを知るいじめっ子たちに「チャレンジャー」、「フロンティアスピリット」などの罵声を浴びせられている。それを聞いて激昂し、空を飛べた暁には大地が水没するほどの放尿を行うことを宣言した。これを聞いたいじめっ子たちは、尿の量からして空を飛ぶ以上の難事ではないかとドン引きしている。 翼を持つ存在に憧れており、エロスや、ペガサスに乗るベレロポンなどに尊敬の目を向けているが、彼らの人格自体には呆れている。

アスクレピオス

アポロンの息子で、ケイロンに師事する医者の青年。「アスクレピオスクリニック」という名前の診療所を開いている。人のみならず神の診療も担当しており、むしり取られてしまったエロスの翼も元通りにする腕の持ち主だが、治療中に悪戯をすることがあるのが玉に瑕。死者を蘇らせるほどの高度な医術を修得するのが目標だと公言しているため、それを快く思わない冥界の王ハデスに命を狙われている。

ハデス

冥界の王で、死を司る神。ヴィジュアル系の格好をしている。冥界の掟に厳しく、特に死者を蘇らせたり不死の身体を得るなどして、死という運命を免れようとする者には容赦なく厳罰を下す。アスクレピオスが死者を蘇らせようとしていることを聞きつけたため、罰を与えるために「アスクレピオスクリニック」を訪れる。しかし、居合わせたテセウスに誤って壊れた眼鏡をかけさせられ、バランス感覚を崩されて撤退する。 その後もかかとの弱点を克服しようとステュクス河に訪れたアキレウスを襲撃したり、ペルセポネーにラブレターを送ろうとするが、いずれも失敗している。

アレス

オリンポス十二神の一柱で、戦いの神。腰に自らの名前が記されたベルトを装着している。戦いの神だけあって力が自慢で、奇妙な掛け声と共にその力を振るう。しかし実際はとてつもなく弱く、ヘラクレス、ペレウスに完膚なきまでにボコボコにされている。その事実をアテナに指摘されるが、意地でも認めようとせず、アレスにとって都合のいい脳内補完を繰り返したため、心の底から呆れられた。

ヘルメス

オリンポス十二神の一柱。旅人の神で、冥界の案内人でもある。また、饒舌なため、トークライブの司会を任されることもある。世界のどこまででも行ける機動力と仕事の速さに定評があり、お使いや人探しといった仕事も率先して引き受ける。しかし人の話を最後まで聞かずに出発してしまうという癖があり、これによって毎回トラブルを引き起こしている。

へパイストス

オリンポス十二神の一柱で、鍛冶の神。アポロンが占いに用いる水晶玉が事故によってテセウスに破壊されたため、代わりの水晶玉の製作を依頼される。水晶玉が出来上がるまで手相占いしかできず、ストレスによって徐々に心が病んでいくアポロンと、彼がもたらす可能性のある被害を懸念し、完成した新しい水晶玉を急いで届けるようにヘルメスに頼んだ。 なお、新しい水晶玉は物事を見通す力が増している反面、酷使しすぎると気持ち悪い汁が浮き出るという特徴を持っている。

タイ風の新郎 (たいふうのしんろう)

タイのキックボクサーらしき外見の青年。アポロンが、へパイストスに作ってもらった新しい水晶玉で台風の進路を占った結果、浮かび上がった人物。結婚したばかりで、ハネムーンのためにギリシャを訪れ、偶然通りがかったアポロンの家で占いをしてもらおうとする。見かけによらず聡明で、変な汁が出る水晶玉のせいでパニックになっていたアポロンに対し、解決方法を提示する。

ヘラ

オリンポス十二神の一柱で、アレスの母親。首に真珠のネックレスを付けた中年女性。スランプを抱えたイリスが虹を手当たり次第に作っているところを通りがかり、作られた虹のグロテスクな風貌を「子供をなるべく寄せ付けないように考えた公園の遊具」と表現する。見かけによらず格闘技に秀でており、意思を持って襲い掛かってきた虹にさばおりを食らわせ、関節を外す。 結果、ヘラの格闘能力、虹がヘラを襲撃したこと、虹に骨格があったことの三重の意味でイリスを驚かせた。

イリス

ヘラに仕えている虹の神。その肩書通り虹を作り出す能力を持っているが、メンタル面にやや難がある。その短所が災いし、スランプによって虹と呼ぶことすらおこがましい醜悪な物体を大量に排出してしまい、通りがかったヘラをドン引きさせている。スランプの原因は、修行に打ち込むアレスに一目惚れしてしまったためであったが、ヘラからアレスの実態を聞いてしまい、幻滅。 恋心が一気に冷めたため、皮肉にもそのためにスランプを脱することができた。

ベレロポン

ペガサスに跨り空を翔ける勇者。禿げ上がって出っ歯、ブリーフ一丁で腹が出ているという、勇者のイメージとは真逆の容姿をしている。さらに性格も面倒なため、行く先々で迷惑をかけたり、イカロスやアリアドネを放心させたりしている。しかし勇者としての実力は確かで、ペガサスを所有しているためフットワークも身軽なので、怪物退治の依頼が舞い込むこともある。

アリアドネ

クレタの街の町長の娘。ミノタウロスを倒したというテセウスに強く憧れており、その憧れは妄想の域に達している。一目だけでも会ってみたいと常々思っているが、彼の外見はまったく知らない。勇者が来たという噂を頼りに訪れても、出会えたのはベレロポンやヘラクレスなど別の勇者で、その度に一喜一憂している。

ナルキッソス

自分自身に恋い焦がれている男性。「ナルシスト」の語源であり、自身を美しいと信じてやまないが、どうすればそう思えるのか不思議なほどの容貌をしている。アポロンのもとを訪れて「自分自身と結ばれる方法」を占ってもらおうとするが、そんな方法は当然のごとく存在しないため徒労に終わった。

イアソン

かつてケイロンのもとで修業をしていた青年。極端なインドア派で、自覚もしている。何気なしに道端で昼寝をしていたところ、勇者の武勇伝を聞いたことで、自身も勇者となるため、コルキスにあるという黄金の毛皮を求めるべく旅立ちを決意。手始めに仲間を集めようとするものの、コミュニケーションが酷く苦手なため、その段階で難儀し続けている。

ペルセポネー

豊穣の女神であるデメーテルの娘。とてもおかしな思考回路をしており、ヘルメスからは「いろいろな意味でギリギリ」と評される。しかし「そのギリギリさがいい」という理由でハデスに惚れられており、後に彼から酷い内容のラブレターを送り付けられる。ペルセポネー自身は手紙を見ても動じないどころか喜んでいたが、同伴していたデメーテルに手紙を見られてしまい、絶対にハデスにだけは嫁にやらないと強く決意された。

キマイラ

獅子の顔と山羊の胴体、そして蛇の尻尾を併せ持つ怪物。口から炎を吐くことができる。リュキアの街をしょっちゅう襲っているため、住人に恐れられている。町長のイオバテスによって招かれたベレロポンと対決するが、イオバテスから受け取った手紙に「キマイラは口元が少し熱い山羊」と書いてあったため、実際に対戦したベレロポンは現実とのギャップに慄いてしまう。 しかし偶然同行していたアキレウスから青天の霹靂を食らい、キマイラは撃退された。

イオバテス

リュキアの町長。街をしょっちゅう襲うキマイラの被害に悩まされており、ペガサスを持つベレロポンに退治を依頼する手紙を送る。不自然なほど我慢強く、頭部にキマイラの炎を食らって燃やされながらも、ただひたすらベレロポンの到着を待ち続けた。

ヘベ

ゼウスとヘラの娘。青春の女神と呼ばれており、その異名の通り青春チックな展開を好む。巨大な魚がいると聞いて川に向かうイアソンを見て、川に向けて大声で叫ぶのだろうと勘違いし、その成り行きを見守る。しかし一向に叫ばないためしびれを切らし、青春チックな行動を実演。その行動によってイアソンからは変な人と思われ、そのまま逃げられてしまう。

クロノス

時間の神。ゼウスの父親である農耕神「クロノス」とは同名の別存在である。時間を操る能力を持ち、「時よ戻れ(シャランラ)」の一声で時を戻すことができる。夏休みの宿題を期日までに仕上げられなかったイカロスの「もし夏休みが戻ってきてくれるなら、必ず宿題を終わらせる」という宣言を聞き実際に時間を戻すが、結局イカロスは期日ギリギリまで宿題をしなかった。

アルテミス

アポロンの妹。オリンポス十二神の一柱で、狩猟を司る女神。ただし本人は狩猟を野蛮だと認識しており、長らく弓を使ってこなかったので、すっかり腕が鈍ってしまっている。勘を取り戻そうと久しぶりに矢を射るが、放たれた矢はあさっての方向に飛んでいき、偶然道を歩いていたアキレウスの頭を直撃してしまう。殺人を犯してしまったと絶望に暮れるが、アキレウスが不死身だったため、事なきを得た。

パトロクロス

アキレウスの友人。屈強な体格といかつい容貌が特徴の青年。ある時アキレスに声をかけるが、その様子を遠くから見ていたケイロンが、アキレウスが不良に絡まれたと勘違いしてしまう。迂闊な性格で、ジュースを飲んだすぐ後にジャンプすると音が鳴ると主張し実演しようとするが、ジュースを飲んでから2時間が経過していたため、証明することができなかった。

集団・組織

オリンポス十二神 (おりんぽすじゅうにしん)

ギリシャ神話における高位の神々。オリンポス山に居を構えていたことが名称の由来となっている。ゼウス、ヘラ、アテナ、アポロン、アフロディテ、アレス、アルテミス、デメーテル、ヘパイストス、ヘルメス、ポセイドン、ヘスティアの12名で構成されているが、ヘスティアの代わりにデュオニソスが該当することもある。

場所

ポセイドンランド

海神ポセイドンと、その息子であるトリトンが経営している動物園。入場料は大人が1200円、子供が1150円。唯一の出し物はイルカショーで、バンドウイルカの英二が跳躍を見せるが、客席とステージがあまりに離れすぎているため、芸は見えず声は聞こえずと、とてつもなく不評。訪れたケイロンに「潰れるのも時間の問題」と言われた。 なお、ケイロンは名前を「ポセZONE」と間違えて覚えていた。

迷宮 (らびゅりんとす)

ダイダロスによって改築されたミノタウロスの家。ミノタウロスは英雄を迷わせるため入り組んだ迷路に改築するよう依頼したが、実際にできあがったのは収納設備だけがやけに整った1DKだった。また、寝室に向かうには否応なくキッチンを通らなければならないため、自然とミノタウロスは料理に打ち込むようになった。

アテナイ商店街 (あてないしょうてんがい)

ギリシャの一角に存在する商店街。アイゲウスが商店会長を務める。最近ライバルである「ミュケナイ商店街」に客をとられ気味で、活気のなさをアテナに指摘されている。これを挽回しようと、ゆるキャラや名産品の制作、トークライブやスタンプラリーなどのイベントが考案されるが、ことごとく失敗している。

ステュクス河 (すてゅくすがわ)

冥界を流れている大河。この河の水に身体を浸すと不死身となる。ただし浸す時期は赤ん坊の頃でなくてはならず、浸してない部位はむしろ弱体化してしまう。アキレウスは母親である海の女神テティスによってこの河に全身を浸されたが、かかとだけは掴んだままだったので浸せず、弱点となってしまった。

その他キーワード

お願いをひとつきく券 (おねがいをひとつきくけん)

その名のごとく、差し出すことでお願いをひとつ聞かせることができる券。アキレウスは誕生日に、ケイロンから2枚をプレゼントされた。ケイロンのケチっぷりが反映されており、たった5日で有効期限が切れてしまう。アキレウスはへパイストスを訪ねる際に、背中に乗せてもらうためにこの券を使った。

青天の霹靂 (せいてんのへきれき)

アキレウスがケイロンより伝授された必殺技。両手の人差し指をまっすぐに伸ばし、敵の眼を突くという新種の目潰し技。片手で繰り出す目潰しと比較すると防御が困難であるという特徴を持つ。ケイロンはこの技を伝授する代わりに5980円を要求したが、アキレウスは値切りに値切った末に50円で会得した。

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