イレブンソウル

イレブンソウル

発達した遺伝子技術によって生まれた怪物のシャヘルと近未来の侍達との戦いを描くSFロボットアクション。暗い人間達の欲望とシャヘル達の狂える生存本能、それらに触れ続けた塚原武道が一つの答えを見い出すまでの軌跡を描く。「月刊コミックブレイド」2006年1月号から2008年10月号にかけて第一部が、2010年1月号から2013年5月号にかけて第二部が掲載された。

正式名称
イレブンソウル
ふりがな
いれぶんそうる
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
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あらすじ

第1巻

A.D.2051年、天敵となる存在であるシャヘルの出現によって、人類は苦境に立たされていた。日本はその状況に対抗するため日本軍の再編を決定し、対シャヘル専門兵力であるの統括所、侍所の設立を行った。そんな中、侍になる事を目指して侍所を訪れた塚原武道は、軍事経験が皆無にもかかわらず、いきなりエリート部隊の機甲歩兵大隊特殊実験部隊に配属されてしまう。戦闘に関してはまったくの素人である塚原は、当初こそ同期の九十九五六八からも辛く当たられていたものの、驚異的な成長を果たし、部隊の過酷な訓練にも適応していく。

第2巻

厳しい訓練にも少しずつ慣れ始めた塚原武道は、九十九五六八をはじめとした部隊の面々とも少しずつ信頼関係を築いていた。そんなある日、塚原は自身の部隊の隊長である伊藤始と、五番隊隊長の乃木玄之丞の確執を目撃してしまう。元来面倒見のいい乃木が、自身の尊敬する伊藤を極悪人とののしって対立する姿に疑問を抱いた塚原は、やがて伊藤がシャヘルを生み出した科学者の孫であるという事実を知る事となる。時を同じくして、シャヘルに対抗するためのK計画は、次なる段階へと進展していた。そしてK計画遂行のため集められた塚原達は、新装備である「天国」の試験を任せられる事となった。塚原ら侍所は「天国」を使用した実践演習を行うため硫黄島に向かうが、そこでシャヘルとの不期遭遇戦に突入してしまう。

第3巻

初の実戦に緊張した上に、目の前で五番隊梅津誠が戦死した事で、塚原武道は極度の混乱状態に陥ってしまう。九十九五六八乃木玄之丞の助けもあり、危機を脱する事に成功するものの、塚原は極度の疲労と緊張から熱を出して倒れてしまう。初の実戦、初の戦死者を経験した事で、塚原は気持ちを落ち込ませるものの、仲間達とのにぎやかな交流を通じていつもの調子を取り戻す。一方、今回のシャヘルの遭遇戦を重く見た軍、政治の上層部は急遽「臨時与党幹部会」を行う事になった。そこで明かされるシャヘルの進化とK計画の全貌を知った伊藤始は、辛い選択を強いられるが、すべてを犠牲にしてでもシャヘルを倒す事を決意する。

しかしシャヘルの進化は上層部の想像以上で、時を置かず上層部のもとに後方であるアラスカの軍本部である「クロンダイク基地」襲撃の報がもたらされる。ジャミング下でも動ける群れの出現、そして敵の温存作戦によって、間もなく苦しい戦いが始まると懸念した人類のブレインであるシャレムは、戦いを終わらせるために第三世代外骨格兵器の存在を伊藤に明かした。

第4巻

伊藤始の弟、伊藤万と、始と友人関係にあった塚原武道は、始の話題を中心に、お互いへの理解を深めたり、九十九五六八の人間関係にやきもきしたりと、にぎやかで充実した日々を送っていた。しかし、そんな平和な日々も終わりを告げる。海辺に打ち上げられたシャヘルミスラ(シャヘル)の死骸を回収し、解剖、研究を行っていた研究施設から連絡が途絶えたのだった。送り込んだ先遣隊も壊滅し、ただ事ではないと判断した上層部は、始達の実験部隊を施設に送り込む事を決定する。

第5巻

研究施設がシャヘルに乗っ取られ、わずか半日でレベル6のとなってしまい、送り込んだ第二波も全滅した事で、これ以上の一刻の猶予もないと判断した上層部は、伊藤始ら実験部隊を送り込む事を決断する。伊藤、乃木玄之丞円谷円と隊長格に混じって塚原武道も抜擢され、四人は施設の地下を目指す。しかしそこに待ち受けていたのは、新種のシャヘル達だった。「硫黄島」の戦いで侍所を学習したシャヘルは施設でタイガピアースの性能を調べ、対抗策を生み出して四人に襲い掛かる。シャヘルの能力に翻弄されていた塚原と伊藤だったが、塚原の捨て身の攻撃によって辛うじて撃破するのに成功する。シャヘルを全滅させた事で、ケガを負った塚原を助けようとする伊藤だったが、そこにシャヘルの死骸に隠れていたミスラ(シャヘル)が襲い掛かる。不意をつかれて致命傷を負った伊藤を盾にされ、行動できずにいた円谷だったが、介錯を申し出た乃木によってミスラは伊藤ごと銃で撃破された。

一方、同時期、地上の警戒を担当していた九十九五六八は、新種のシャヘルの内一体が市街地に逃げ込んだ事を確認する。一般人に襲い掛かるシャヘルを前に、九十九は命令違反をしつつも駆けつけ、かろうじて倒す事に成功する。しかし九十九は規律を乱した罰を受ける事となり、父親であり現場指揮官でもある神永功との溝がさらに深まる事となった。

第6巻

伊藤始の殉職によって変化を余儀なくされる一番隊。しかし、命令違反で感情の整理ができない九十九五六八。尊敬する隊長を失ってショックを受ける千葉進太郎。隊長の死の要因となった事で自責の念に苛まれる塚原武道。そして伊藤の後釜として新たに一番隊の隊長になったものの、経験不測から隊員をまとめられない楠木鉄也と、一番隊は空中分解寸前だった。そんな中、かねてより予定されていたアメリカ大陸への「派兵」が始まる。人類の命運を左右する戦いであったが、一番隊の空気は最悪で、独断専行した九十九は敵の攻撃を受けて行方不明となってしまう。塚原は敵地で単身孤立する危険があるものの、九十九を見捨てられず一人敵地に残り、九十九の捜索を開始する。乃木玄之丞の助言もあり、九十九を見つける事に成功したものの、弾薬も残り少ない状態で、九十九と塚原は救助が来るまで敵地で一夜過ごす事となった。そこで胸に色々なものを抱えた二人は思いの丈を吐露し、お互いの過去を知る事となる。

第7巻

敵地で孤立していた塚原武道九十九五六八を助けるため、救出部隊も行動を開始。そして塚原に助言をした乃木玄之丞や、後輩を見捨てる事ができないと、考えを改めた千葉進太郎ら救出部隊は、ついに二人を発見する。しかし同時に彼らはシャヘルにも見つかり、救出部隊もろとも全滅の危機を迎えてしまう。仲間と九十九を守るため、塚原は時間稼ぎをしようと単身シャヘルに挑む。地を覆いつくすほどの物量で迫るシャヘルにひるみもせず戦う塚原は、今まで一番隊で身につけたすべてを使い、シャヘルを屠(ほふ)っていく。ラーマンと呼ばれる特別なシャヘルの登場に危機に陥るものの、仲間との協力によって塚原はシャヘルを打ち破り、二人は敵地からの脱出を果たす事となる。また神永功も娘である九十九を助けるため、生身でシャヘルとの戦いに身を投じる。危機を前にまとまる侍所の面々を前に、九十九は自らの過ちを認め、仲間への謝罪と父親との和解を果たすのだった。

第8巻

2051年12月に侍所の実験部隊は解散され、部隊の面々はそれぞれの任務についていた。そして2052年5月、塚原武道は鹿島灘沖にある「東華表島(ひがしとりいじま)」にできたシャヘルを駆逐するため、海軍に応援として出向していた。新型EMESの配属によって意気揚々としていた海軍だが、シャヘルの巣が今までにない大型レールガンに変形し、海軍に奇襲を加える。「東華表島」のとなりにあり、避難中の民間人が多数いる「華表島」にもシャヘルが向かい、翻弄される海軍。その状況を見かねた九十九五六八は自らの権限で、「東華表島」の戦いに介入し、電光石火の手際で事態の収拾を行った。一方「華表島」では避難中の民間人を助けるため塚原が戦っていた。激戦の果てに塚原はシャヘルを倒したものの、敵を倒した直後に突然、「第一級国家反逆罪」の容疑で捕まってしまう。極秘兵器である第三世代EMESの強奪事件を調べていた監察部門脇恭介は、疑いの目を塚原に向けたのだった。作戦行動中に突如、行方不明になった神永功円谷円の存在もあり、塚原は監視チップを植えつけられ、祢々切として第三世代EMESとその運用艦「あつた」の行方を追う事となった。

第9巻

あつた」強奪を追う祢々切に、「情報部」から応援としてやって来た滝川奈々。彼女は塚原武道を一目見て気に入り、猛烈にアタックを開始する。そんな二人の様子を九十九五六八は、心中穏やかではない様子でうかがっていた。和気藹々と仲を深める一行だったが、第三世代EMESを自在にあやつるとされる「あつた」強奪犯に対抗するため、塚原を主体に新たな第三世代EMES開発を進める。一方、門脇恭介は「あつた」強奪の事件を利用して侍所の技術やノウハウを吸収し、軍部の実験を握ろうと暗躍していた。行方不明であった神永功円谷円も海外で行動を開始し、一行の思惑が交錯し始める。

第10巻

第三世代EMESの開発を進めていた九十九五六八塚原武道であったが突如、人工島「ミズチ」がシャヘルに襲われた報を耳にする。人類の守りの要である「ミズチ」が陥落した場合、日本はシャヘルと全面戦争を余儀なくされるため、祢々切はこれの迎撃のために出撃する。強力なシャヘルの群れに苦戦する「ミズチ」の防衛隊だったが、九十九が合流し、「ドラゴン・アイ」を使った事で戦局は逆転する。しかしそこに群れの親玉「ウルスラグナ」が登場し、戦場のすべてをなぎ倒す。圧倒的な破壊力で「ミズチ」を追い詰める「ウルスラグナ」だったが、九十九の用意した策によって大ダメージを受け、海中に没してしまう。それでも戦意が衰えない「ウルスラグナ」だったが、そこに突如、奪われたはずの第三世代EMESが現れる。基地のシステムすらハッキングし、戦場を支配した第三世代EMESは、その圧倒的な力をもって一行が苦戦した「ウルスラグナ」を完封し、一刀のもとに切り捨てた。

第11巻

かろうじて「ミズチ」の防衛に成功した一行だったが、そこに新たな報がもたらされる。神永功を始めとする行方不明の隊員達が日本に戻り、政治家達との交渉を望んでいると言うのだ。しかしそれは神永の脱走を決定づける証拠でもあったため、九十九は侍所の責任者として門脇恭介によって拘束されてしまう。塚原武道北条に拘束されて別の場所に移送されるが、神永によって救出され、神永から一連の事件の真実を聞かされる。「あつた」の強奪は北条ら情報部によって行われ、自分達は外からその犯人を追っていたと言う神永。そして第三世代EMESに対抗するため、一行は同じ第三世代の運用艦「ふたら」の強奪を決心する。塚原は乃木玄之丞率いる五番隊の面々と「ふたら」強奪のため、幕府軍本部庁舎「ピンゾロ」に潜り込むが、そこで死んだはずの伊藤始に遭遇する。それは伊藤と同化したミスラ(始)であり、五番隊の面々を次々と切り捨て、伊藤の記憶によってトラウマを刺激された塚原は精神的に追い詰められ、遂には監視チップが発動してしまう。そして脳を破壊され、半死半生となった塚原を救うため乃木は殿を務め、ミスラ諸共自爆する。

第12巻

ふたら」強奪と時を同じくして、囚われの身となった九十九五六八のもとにも滝川奈々が救助に来ていた。しかし門脇恭介によって追い詰められた滝川は、九十九に激励の言葉を送り、彼女を助けるため銃弾に身をさらす。滝川の命を賭した助力によって逃げ切れた九十九は、祢々切リリーに助けられ、神永功と合流を果たした。そして神永は第四世代EMESの情報を引き換えにして政府と交渉し、24時間の猶予を手に入れた。この期限内に「あつた」強奪事件を解決すれば、自分達の存在を日本政府に認めさせる事ができるため、神永と丹波庵は事件を解決させる鍵となる塚原武道の蘇生を試みる。体内にある「シャヘル細胞」によってかろうじて命をつないでいた塚原に、丹波が仲間達の声、そしてかつての親友、伊藤万の本当の思いを届けた事で塚原は覚醒する。

第13巻

神永功達の行動に協力的だった門脇恭介だったが、彼は神永とミスラ(始)を戦い合わせ、邪魔者を一掃する事で漁夫の利を狙っていた。発見した「あつた」に門脇は「KVB-S」を打ち込み「あつた」を轟沈する。しかし第三世代EMESで逃げ延びたミスラは、それを駆って「ピンゾロ」に攻め入る。そして九十九五六八は遂にミスラと対峙する。大量の無人機をあやつって数の優位を見せるミスラだったが、九十九が「KVB-S」を用いた奇策を使う事で寡兵による包囲戦を行い、優位に立つ。しかしそれでも圧倒的な技量を持つミスラ相手には決定打にならず、ミスラが前線に出た事で戦線は崩壊。九十九も後一歩のところまで追い詰められてしまう。窮地に陥った九十九だったが、そこに第三世代EMESに乗った塚原武道が到着した事で、戦いは次なる段階へと進む。

第14巻

激しい剣戟を繰り広げる塚原武道ミスラ(始)。そんな二人の戦場に乱入する者が現れる。「」と呼ばれる兵器をあやつる門脇恭介は、この戦いを利用して邪魔者を一掃しようとしたのだ。通常兵器が通用しない「左」の存在に苦戦する塚原と祢々切の面々であったが、応援に訪れた石川昇侍所の助けもあり、突破口を見出す。しかしそこで突如裏切る石川達に、神永功は混乱に陥ってしまう。そして死んだと思われていた滝川奈々が、「あつた」強奪から始まる一連の事件の黒幕として現われ、すべてを語る事で状況は一変する。門脇すら手玉に取った滝川は、「左」の操作権と「ふたら」を奪い、ミスラや「説得」した人間達を使って人類の破滅を行おうとする。「ふたら」の無傷の無人機を奪ったミスラと「左」、そして一部の軍も敵に回った事で祢々切は一気に窮地に立たされる。さらに滝川は南米のシャヘルが巨大なレールガンを築き、シャヘルの大群を日本に撃ち込む準備をしているのを語る。早ければ数時間以内に日本にシャヘルが降って来て絶望的な戦争が始まると、滝川は夢見る乙女のように語り、人類とシャヘルの絶望的な戦争を起こそうと目論んでいるのだった。

第15巻

絶望的な状況に陥った塚原武道だったが、丹波庵の提案する「侍の意固地」大作戦に乗り、反撃の狼煙を上げる。絶望的な状況でも諦めずに戦う達によって事態は動き出し、神永功九十九五六八は「ふたら」から脱出する事に成功する。塚原もミスラ(始)と対峙し、最後の戦いを行う。激しい戦いの果て、遂に塚原の刃はミスラに届き、最期は伊藤始として塚原に希望を託し、愛する人に看取られながら死亡した。ミスラを失った事で戦力の大半を失った滝川奈々だったが、密かに手にしていた「K-7」を使い、人類の抹殺を行おうとする。シャヘルの大群が日本に到着する時間が刻一刻と迫る中、塚原は人類の滅亡を止めるため、滝川の駆る「ふたら」に単身挑む。また侍達もシャヘルから日本を守るため、全力で迎撃の準備を始める。

登場人物・キャラクター

塚原 武道 (つかはら たけみち)

侍所の一番隊に所属する16歳の少年。軍事経験のまったくない素人であるため体力も技術もなく、エリート部隊である実験部隊に配属されたが、周囲からはお荷物と思われていた。しかし直向(ひたむ)きな努力家で適応能力が高く、厳しい訓練にもすぐに慣れ、ほかの隊員と遜色ない働きをするようになった。また父親の影響で剣道の経験があり、白兵戦での能力は同隊の隊員数人がかりでも相手にならず、伊藤始と互角の戦いを繰り広げるほどである。 年齢の割りに子供っぽい部分が目立ち、周囲からは急激な成長をあやぶんで見られつつも、のんきな性格に呆れられ、「たけちー」のあだ名で親しまれている。天文学が趣味で、いつか宇宙に行くのを夢にしており、ヒマさえあれば星空を見ている。 家族への手紙を書いているが、実は2046年の日本初のシャヘル襲撃事件で家族とは死別しており、天涯孤独の身の上で、家族への手紙は心の整理をしておくものだった。本人もその事件でシャヘルによって体を改造されており、同じ境遇で友情を育んだ伊藤万の助けによって生き永らえている。この際のシャヘルによる強化が強化手術のモデルとなっており、塚原武道の情報は機密扱いされていた。 実戦の中で迷い、落ち込む事もあったものの周囲の人とのつながりから成長し、遂には戦う理由を見出す。「アメリカ派兵」では地を覆い尽くすほどのシャヘルの大群に寡兵で立ち向かった。九十九五六八には思いを寄せていたが、第二部では滝川奈々に言い寄られ、思わぬ三角関係を築く事となる。 また激戦を潜り抜けた事で精神面もタフなものとなっており、2052年以降、監察部に監視チップを埋め込まれ、多大な重圧をかけられても決して折れなかった。実は滝川のあやういところにはうっすらと気づいており、「ピンゾロ」の戦いで彼女が現われても動揺しなかった。

九十九 五六八 (つくも いろは)

侍所の一番隊に所属する16歳の少女。父親である神永功の影響で、幼少期から特殊部隊の訓練を受けており、その高い素質から将軍直々にスカウトされた。侍所に所属してからは、新兵ながら伊藤始に並ぶ高い前線隊員の適正からスーパールーキーとして強く期待されている。ただし飛行機の搭乗経験が少ないため降下訓練が苦手で、飛行機に乗ると途端に子供のように慌てだす。 またメンタル面は年相応に幼い部分があるため、部分的に不安定な面が存在する。特に父親である神永には複雑な感情を抱いており、神永を前にすると冷静な判断ができなくなる。ただし、乃木玄之丞はそのメンタルの弱い部分を克服すれば大化けするとしており、実際、父親と和解して以降はその才能を大きく開花する事となった。 2051年末の「キューバ奪還戦」では前線指揮官として大きな活躍を果たし、右目を失うと言う大きな負傷をしつつも、その活躍が認められ、皇室から特別に「判官」の位を授かる。以降は九十九五六八のみが行使できる「ドラゴン・アイ」の能力も相まって「独眼竜」の二つ名で呼ばれるようになった。 しかし「あつた」強奪事件によって立場は悪くなっており、侍所が監察部に牛耳られている事もあり、ほかの軍部からの評判は悪くなっている。同期である塚原武道の事は最初こそ邪険に扱っていたものの次第に気の置けない存在となっており、滝川奈々の存在によって心がかき乱されて以降は、急速に自分の気持ちに気づきつつあった。

伊藤 始 (いとう はじめ)

塚原武道達が所属する侍所の実験部隊一番隊の隊長。階級は一等侍尉で、頭脳明晰、冷静沈着、文武両道の完璧人間。美人の恋人である円谷円までおり、公私共にスキのない好青年となっている。料理の腕もプロ級だが、なぜかデザート作りの腕だけは壊滅的で、「伊藤スウィーツ」は侍所では恐怖の代名詞となっている。シャヘルを作り出した六人の科学者の一人、伊藤千秋の孫であるため、見ず知らずの人間から多くの恨みを買っている。 難病で苦しむ伊藤万という弟がいたが、本編開始までに失っている。実はシャヘルに襲われた際に万を見捨てており、その事が強い罪悪感のもとになっている。それ以来、心の中で「自分を憎んでくれる者」を強く求めており、自分が憎まれる度、憎んだ者を叩き潰す事に愉悦を感じる屈折した部分を持つようになった。 今でこそ人間が丸くなっているが、若い頃は自分を痛めつけた門脇恭介達を半殺しにしたり、つねに周囲を見下して行動をしていたりした。塚原から万の話を聞き、円谷と結ばれた事でそうした精神面が強く安定していたが、その直後にミスラ(シャヘル)の襲撃によって命を落としてしまっている。 希少なレベル7適正者で、専用の第三世代EMESも完成間近だったが、始の死亡によって凍結してしまった。

丹波 庵 (たんば いおり)

侍所の実験部隊一番隊に所属する通信兵の女性。階級は二等侍曹で、年齢は20歳。一番隊の中では年長者になるため「お姉さん」ぶる事が多い。性格はつかみどころがなく、初心な塚原武道や負けず嫌いな九十九五六八、いじられ役な千葉進太郎を通信兵の能力を駆使していじって遊ぶ事が多く、隊の中で不思議な立ち位置を確立している。 また機密情報に私的にアクセスしているため、隊の中でも一番の情報通となっている。乃木玄之丞とは古い付き合いで、お互いを理解者として認め合っている。実は元五番隊所属の死刑囚で、本名は「伊丹詩織」。母親と継父の虐待に耐え切れず両親を殺害し、自宅を放火した事で多数の死傷者を出し、死刑判決をくらった。 その際に、運用されたばかりの「五番隊」に徴用されたが、試験運用中の「五番隊」は監視の目も緩かったため、隊の中でも悲惨な経験に合い、遂には耐え切れずに任務中に脱走を図るが、監視チップによって脳を焼かれる。その際に奇跡的に命は助かったが、脳の機能に大きな障害を残し、それ以降痛みを感じず、感情も希薄になった。それ以降は彼女の境遇に同情的だった乃木と神永功の提案により、「伊丹詩織」の存在を殺し、丹波庵として生きていた。 丹波としての生も無感動に過ごしていたが、ある日、塚原の機密ファイルで塚原と伊藤万の関係を見て感動し、彼らの意思を未来につなげる決心をした。ミスラ(始)との戦いで塚原が意識を失った際には、彼を助けるため危険を顧みず塚原の深層意識に潜り、万の遺志を届けて塚原の覚醒をうながした。 また「ピンゾロ」の戦いでは専用に調整された通信機を使って塚原をサポートしつつ、塚原に「侍の意固地」大作戦を提案し、自らの脳に大きな負担をかけつつも各方面を援護した。

千葉 進太郎 (ちば しんたろう)

侍所の実験部隊一番隊に所属する工兵の青年。一等侍曹で、塚原武道とは年の近い同性の先輩として接した。楽観的なお調子者で、隊の中では専ら丹波庵と若山美雪によるいじられ役としての位置を確立している。実家は寿司屋で、軍隊を志望した動機は、クラスで一番適正が高かったというだけで目的意識もなく、自分はヒーローにはなれないと腐っていた。 しかし本物のヒーローと呼べる伊藤始に、自分の能力を認められた事で大きな自信につながり、工兵として大きく才能を開花させる事につながった。尊敬する伊藤が死んだ事で、乃木玄之丞と塚原に強い隔意を抱くようになったが、若山に諭される事で塚原の先輩として戦う決心を固める。「アメリカ派兵」では塚原、乃木と共に多数のシャヘルを足止めし、救出の時間を稼いだ。 第二部では工兵としての実力が買われ、新兵への教育係をしていたが、「KVB-S」実用化のため若山と九十九五六八から相談を受ける。「ピンゾロ」の戦いでは、空から降ってくるシャヘルの大群を迎撃するため、「KVB-S」設置の指揮を担当した。

若山 美雪 (わかやま みゆき)

侍所の実験部隊一番隊に所属する前衛を担当する女性。千葉進太郎とは幼なじみの間柄になるが、階級は三等侍尉で、千葉より上の階級となっており、明確な上下関係が生まれている。精神的にかなり成熟しており、伊藤始が死んで周囲が感情的になった中でも冷静に判断を下し、千葉を諭していた。実家は航空会社の経営者で、2046年の日本初のシャヘル襲撃事件にもかかわっていたため、実家経由の情報で塚原武道の事情について知っていた。 実験部隊が解散したあとは、九十九五六八の副官として彼女を補佐し、祢々切の一員として戦い抜いた。

長篠 優作 (ながしの ゆうさく)

侍所の実験部隊一番隊に所属する狙撃手の青年。階級は三等侍尉。伊藤始とは祖父同士が知り合いと言う事もあり、長い付き合いで気心の知れた存在となっている。普段は瓶底眼鏡をかけているが、これは「ホーク・アイ」の強化手術を受けたためである。眼鏡を外し、「ホーク・アイ」を発動した場合、侍所最強の狙撃手といわれる「那須姉妹」ですら及ばない精度の射撃が可能となる。 しかし「ホーク・アイ」は脳への負担が大きいため、2分以上の使用はできない。伊藤が死んだ際にはその死に強い責任を感じており、円谷円が自分を追い詰めすぎないように何かと気にかけている。「キューバ奪還戦」の際に、神永功達と共に行方をくらませていたが、「情報部」に拘束された塚原武道を助けるため神永と共に姿を現した。 「ピンゾロ」の戦いではミスラ(始)に最後のトドメを刺し、伊藤と最後の別れを果たした。

楠木 鉄也 (くすのき てつや)

侍所の実験部隊一番隊に所属する幹部候補生の少年。年齢は14歳と隊の中で最年少ながら、二等侍尉の階級を持つエリートである。父親は陸軍将補で将来的には陸軍のトップとなる事が約束されている。父親は侍所への所属に反対していたが、春日総理と将軍の推薦と本人の希望であったため父親も拒めず、現在の状況となっている。 父親は侍所を快く思っていないため、父親との関係は若干折り合いが悪いものとなっている。伊藤始の死後、一番隊の隊長に抜擢されるものの、年齢から来る経験不足により隊はバラバラ一歩手前にまで陥ってしまう。しかしそれでも仲間を見捨てず、塚原武道と九十九五六八が敵地で孤立した際には最後まで彼らの生存を信じた。実験部隊が解散した第二部では陸軍に所属し、神永功達に密かに軍内部の情報を渡していた。 「ピンゾロ」の襲撃の際には動きを見せない軍に不審を見せ、父親に抗議したものの、そこで滝川奈々の影響が軍の奥深くにまで及んでいたのを目の当たりにする。シャヘルの大群を迎撃するため、滝川に怯える父親からコードを奪い「KVB-S」を千葉進太郎のもとに届けた。

黒沢 信祟 (くろさわ のぶたか)

侍所の実験部隊二番隊の隊長。鋭い顔つきをした巨漢の男性ながら、言葉づかいは丁寧で、新人の塚原武道に対しても礼儀正しく接した。また前衛だらけの二番隊を冷静な判断力と確かな戦略眼でまとめる優秀な人物で、厳つい見た目とは裏腹に、侍所一のインテリとギャップの多い人物となっている。実は密かに伊藤万に劣等感を抱いており、彼に嫉妬して一方的に嫌っていた。 しかし伊藤の戦死によっていざ自分がその立場に立たされると重圧を感じ、伊藤の偉大さを感じ取った。「ピンゾロ」の戦いでは神永功の応援に参じたが、滝川奈々の影響を受けており、石川昇と共に裏切り、真田正直に不意打ちを行った。しかしその後、反撃を開始した侍達のチャフによってセンサーを無力化され、生きていた真田の反撃によってEMESごと爆破された。

円谷 円 (つぶらや まどか)

侍所の実験部隊三番隊の隊長で、階級は一等侍尉。普段は穏和な性格をしているが怒らせると怖い女性で、自由な行動の多い三番隊の隊員も、彼女の言う事にだけはおとなしく従う。伊藤始とは長い付き合いで、相思相愛の恋人関係となっている。伊藤が死んだあとは悲しみつつも、それでも折れずに戦う芯の強さを見せたが、塚原武道に対して隔意を持つなど複雑な心境となっていた。 しかし伊藤の子供を妊娠していた事を知ってからは、母の強さに目覚め、塚原に対しても隔意がなくなり、和解を果たしている。第二部では神永功達と行動を共にし、姿をくらませていた。実は「あつた」強奪の際に死んだはずの伊藤の姿を見ており、その真実を追っていた。その際に、子供の未来を守るため犠牲になる決意をし、レベル7へと体を強化を果たす。 限界を超えたかなり無理な強化をしたため、余命は10年程度しかないとされている。第四世代EMESを動かすためには、円谷と伊藤の子供が必要不可欠であり、戦争を終わらせる鍵とされている。妊娠しているためEMESには乗れなくなったが、レベル7の強力な処理能力により、「ふたら」をたった一人で動かし、「ピンゾロ」での戦いで塚原を援護した。

那須 茜 (なす あかね)

侍所の実験部隊三番隊の狙撃手の少女。那須梓の双子の姉。語尾に「ござる」を付けて話すハイテンションな性格をしており、妹と共に作戦会議中にトランプタワーを作ったり、ブリーフィングルームでドミノを始めたり、妹同様子供っぽい部分が目立つ。そんな性格だが狙撃手としての腕前は侍所隋一のもので、妹と合わせて最強の狙撃手の名をほしいままにしている。 普段は騒々しい性格をしているが、隊長である円谷円の存在を何より恐れており、彼女が怒り出すと途端に従順になる。戦場では難易度の高い狙撃も悠々とこなし、着実に戦果を上げていく。第二部は円谷と行動を共にした梓と1年間別行動をしていたが、久しぶりに再開した梓に成長を大幅に追い抜かれた事で混乱した。 「ピンゾロ」の戦いでは梓と共にEMESを駆り、狙撃で援護を行った。

那須 梓 (なす あずさ)

侍所の実験部隊三番隊の狙撃手の少女。那須茜の双子の妹。語尾に「なり」を付けて話すハイテンションな性格をしており、姉と共に作戦会議中にトランプタワーを作ったり、ブリーフィングルームでドミノを始めたり、姉同様子供っぽい部分が目立つ。そんな性格だが狙撃の腕前は侍所隋一のもので、姉妹ならではの息の合ったコンビネーションと合わせて最強の狙撃手といわれている。 自由な行動が目立つが円谷円の鉄拳制裁を何より恐れており、彼女の前では借りてきた猫のようにおとなしくなる。第二部は姉である茜と別れ、円谷と行動を共にして姿をくらませていたが、「ふたら」強奪を機に茜と合流した。その際には見違えるほどの成長を果たしており、茜の嫉妬を買ってしまう。 「ピンゾロ」の戦いでは茜と共にEMESを駆り、狙撃で援護を行った。

真田 正直 (さなだ まさなお)

侍所の実験部隊四番隊の隊長。本人も伊藤始の影に隠れてしまうのを自覚しているが、侍所でも十指に入る実力者である。実家はカメラ屋で、営業を行うのが好きで、天文学が好きな塚原武道に対しても望遠鏡の営業を行った。第二部では「ピンゾロ」の戦いに神永功の応援として黒沢信祟と共に駆けつけるが、滝川奈々の影響を受けていた黒沢に突如として裏切られ、不意打ちをくらってしまう。 それによって搭乗していたEMESを破壊されたものの、すんでのところで脱出に成功しており、丹波庵の助けを借りて仲間と合流。黒沢のEMESにバズーカランチャーで攻撃をし、撃墜した。

乃木 玄之丞 (のぎ げんのじょう)

死刑囚で構成された五番隊を束ねる隊長。乃木玄之丞自身も八人の人間を殺した殺人犯で、侍となる事で死刑を延期されている。強面の男性で、極悪人と言われているが、面倒見がよく、新人である塚原武道にも世話を焼いて尊敬されている。我の強いメンバー揃いの五番隊の面々も乃木だけは尊敬し、従っている。レベル3以上に強化されている兵士だらけの実験部隊の中で、レベル2にもかかわらずほかと遜色ない働きをしている。 特に「偵察(スカウト)」に関しては一流で、ほかの隊長格からもその能力は信頼されている。そんな乃木だが、伊藤始にだけは憎しみをあらわにし、場合によっては殺し合い寸前のケンカを始めるほど仲が悪い。実は八人を殺人したのは、優等生の弟を殺した麻薬の売人達に復讐したのが原因。 売人の一人が政治家の息子だったため罪が重くなったが、周囲からは犯行に関しては同情の余地があるとされている。ただ復讐が動機にしても、犯人達を殺害したのを楽しんでいたのを乃木自身自覚しており、自らの境遇にも納得している。伊藤への悪態に関しても、円谷円ですら気づかなかった伊藤のあやうさに気づいており、伊藤の真意である「誰かに憎んでほしい」と言う真意を汲んだうえの行動だったのだ。 塚原は弟に似た感じがあるため何かと注目しており、最期は塚原をミスラ(始)の攻撃からかばったうえで、ミスラを巻き込んで自爆をした。塚原には自身の掲げる「志」の一字に込めた意味を説いたが、それが塚原の指針となり、乃木が果てたあとは、塚原がその「志」の一字を受け継いでいる。

梅津 誠 (うめづ まこと)

五番隊の隊員の青年。現金輸送車を仲間と襲い、四人殺害したとして死刑判決を受け、死刑の延期を引き換えに五番隊に配属された。硫黄島の演習で起きたシャヘルとの予期せぬ遭遇戦で、レールガンでの不意打ちを食らって機体が半壊になったあと、群がってきたシャヘルに襲われ、塚原武道の目の前で命を落とした。享年は19歳。 シャヘルとの遭遇は機密性の関係から隠され、死亡はあくまで「訓練中の事故」と処理された。

鍋島 (なべしま)

五番隊の隊員。警視庁を爆破し、100人以上の人を殺した史上最悪の少年犯罪事件を起こした少年。死刑の延期を引き換えに五番隊に配属された。すべての大人をくだらない存在として見下しているが、唯一乃木玄之丞だけは尊敬していた。第二部では「あつた」強奪犯を探すため、各企業に潜り込んで情報を漁っていた。「ふたら」強奪の際にほかの五番隊と共に乃木に合流するものの、仲間達を全員ミスラ(始)によって殺されてしまう。 乃木に塚原武道と丹波庵の脱出を託され、五番隊の中で唯一の生存者となった。

伊藤 千秋 (いとう ちあき)

伊藤始の祖父で、「GHC(ゼネラル・ヘーリティッジ・コーポレーション)」の農学主任。シャヘル誕生の契機となった発展性成長遺伝子の改良に成功した人物で、このため世界中の人間から恨まれている。アメリカに残って事態を何とか収拾しようとしたものの、最期は暴徒と化した民衆のリンチにあって殺された。「歴史上最悪の罪人」として死んでなお恨まれているが、伊藤千秋の残した遺産によって日本の自給率は上がり、シャヘルとの戦争中にもかかわらず、日本は飢えとは無縁の生活をしていられる。 春日首相は「シャヘルサンプルバイオハザード事件」さえなければ、「今世紀最大の偉人」になっただろうと言っている。シャヘルには実験動物の段階から危険視しており、万が一の保険として「K-7」を作り、日本政府に託していた。

伊藤 万 (いとう よろず)

塚原武道の親友で、伊藤始の弟。塚原と同じく「宇宙に行く」夢を持っており、いっしょに夢を語り合った。実は祖父の伊藤千秋を尋ねたタイミングで「シャヘルサンプルバイオハザード事件」に遭遇し、脱走したシャヘルによって大ケガを負い、その際に「シャヘル細胞」を取り込んだ事で、とても不安定な状態になっていた。 その後、治療を受けるため日本で軍の病院に入り、塚原と友情を育んだ。しかし、自分の余命が幾ばくもない事を悟り、このままでは二人とも死んでしまうため、自分の臓器をスペアとして塚原に提供して死亡した。本来なら臓器が拒絶反応を起こすが、「シャヘル細胞」によって親和性の高い状態となっており、万の臓器は塚原に受け入れられた。 能天気な性格をして塚原を終始振り回していたが、シャヘルのテレパシー能力に目覚めており、周囲が思っている以上に、自分を取り巻く人間関係を理解していた。兄である始が変わってしまった事を心配しており、塚原に兄への伝言と未来への激励を残しており、これが監視チップで意識を失った塚原が覚醒するきっかけとなった。万の死体は研究所に保管されていたが、侵入したミスラ(シャヘル)によって取り込まれてしまう。

春日 (かすが)

日本の現内閣総理大臣。世話好きなおばさんのような姿をした中年の女性で、お金と権力が大好きな小悪党を自称する。周囲からもその振る舞いを「銭ゲバ首相」として評されている。普段はのんきで軽い態度で人と接するが、抜け目のない性格をしており、必要であれば非情な判断を下す人物である。そんな彼女だが、子供をないがしろにした国に未来はないと考えており、子供達によりよい未来を選択させるため、外務大臣時代の伝を使って神永功を教育係として引き抜いた。

シャレム

K計画を立案し、侍所の統括管理をしている者。存在そのものが機密の塊であり、一部の関係者以外には侍所や政治家であっても知らされていない。その正体は「ハイオラクルシステム」とも呼ばれる、世界初の意志を持つコンピューターである。人間を遥かに超える知性を持ち、侍所で使われているさまざまなオーバーテクロノジーはシャレムが発見・開発したものである。 巨大な量子コンピューターの姿をしているが、これはフェイクであり、本体はコンピューターではなくOS「レワノフ」の方となっている。「あつた」強奪事件後、侍所が監察部の監視下に置かれた際には悪用を避けるため、コンピューターを囮にして、「レワノフ」は山浦清の脳を間借りして逃げおおせている。

ヤザタ

シャヘルの中核をなす存在で、「マスターマインド」として「セレブレートコマンダー」達を統括している。ほかのシャヘルとは木の幹と枝ともいうべき関係で、ヤザタと言う幹がなければ、ほかの「セレブレートコマンダー」は遠からず死滅する「首かせ」が付けられている。これはシャヘルが制御不可能な進化をしないための措置だが、同時にシャヘルの可能性を狭めるものであるため、ミスラ(シャヘル)をはじめいくつかの「セレブレートコマンダー」から反感を買っている。 人類の抵抗から人類以外の知的生命体の存在を感じ取り、ミスラの派遣を命じたが、それがヤザタすら想像しないミスラの裏切りにつながってしまった。その後は予期せぬ事態に備えるため、資源の温存を始めたので、シャヘルの人類攻略は大幅に後退する事となった。 第二部では度重なる敗走に業を煮やしてウルスラグナの出撃を許可し、自身も大型レールガン型の巣を作り、シャヘルの大群を日本に送り込んだ。

ラーマン

ユーラシア大陸への橋頭保を確保するため、アラスカの攻略を行っている「セレブレートコマンダー」。ミスラ(シャヘル)の独断行動によってアラスカ攻略を一時的に中断させられていたが、アメリカに派兵された塚原武道達の前に姿を現した。ほかの「シャヘル」と違い、外殻のない軟体動物のような見た目をしており、電気エネルギーを自在にあやつって宙に漂っている。 電気エネルギーをあやつる能力を利用して、両腕から渦状のエネルギーを放ったり、弾丸すら止めるほどの反発力を生み出して「バリア」のような使い方をしたり、攻防隙のない存在となっている。大きな攻撃をした際には1.2秒間の吸気が必要という弱点を乃木玄之丞に看破され、乃木と千葉進太郎の援護を受けた塚原によって倒された。

ウルスラグナ

「セレブレートコマンダー」の一体。シャヘルの中では、年若い個体ながらヤザタの行うシャヘルの意思統一会議にも参加しており、好戦的な意見をよく発言する。その好戦的な性格からヤザタにも危険視されていたが、ラーマン、スラオシャを失い、シャヘルにとって危機的状況になった現状を打破するため、人工島「ミズチ」を破壊する目的で送り込まれた。 その姿は最早怪獣ともいうべきものであり、200メートルを超える巨体にもかかわらずマッハ5で動き、頑丈に作られた潜水艦を一撃で倒すほどの攻撃力を誇る。また200メートルを超えるにもかかわらず、背中から稲光を出しながら飛行をする事も可能とする。動き回る風圧だけでEMESがバラバラになるほどの破壊の化身。 実は体中にある浮遊器官によって高速移動を行っているため、ここにダメージを負うと自重を支えられなくなり、満足に身動きも取れなくなるという弱点を持つ。九十九五六八の用意した新兵器と策によって大ダメージを受けた後、第三世代EMESを駆るミスラ(始)に一刀両断され、死亡した。

ミスラ(シャヘル)

「セレブレートコマンダー」と呼ばれる、シャヘルの中でも特別な個体。シャヘルが誕生した当初から存在していた最古参の個体であり、ヤザタから最も信頼されていた。人類の反撃に、人類以外の知的生命体を感じ取ったヤザタが、人類の背後関係を調べるために「硫黄島」に送り込んだが、シャヘルをたった一人で屠る伊藤始の存在を見た事で独断で人類側に潜り込んだ。 日本の研究施設に標本として仮死状態で運ばれて以降は、同施設の職員を殺害し、施設を乗っ取った。伊藤万の死体を食らった事で日本語の能力と万の声を手に入れ、研究所のデータを利用してタイガーピアースに対抗する新種のシャヘルを生み出した。実はヤザタを頂点とする現在のシャヘルのカースト制度に疑問を抱いており、「首かせ」のない自由を求め、ヤザタを打倒を企てていた。 そのための第一歩として始の存在を求めており、研究所の地下で始の頭部を回収して同化した。

ミスラ(始)

ミスラ(シャヘル)と伊藤始が同化して一つとなった存在。伊藤の姿をベースとしているが、髪の毛が銀髪になり、爆弾の直撃を受けてもすぐに修復されたりと、人型のシャヘルというべき存在になっている。始の人格がベースとなっているが、かつての温和な性格は面影もなく、残虐な行為も平気で行う卑劣漢となっている。またミスラの知識や記憶・感情も融合されており、人類に対しては強い嫌悪感を示している。 人類にもシャヘルにも絶望しており、人類の存続にもシャヘルの勝利にも興味はなく、ただ自分と円谷円が生き残る事のみに執心している。滝川奈々の存在には恐怖と嫌悪の感情をあらわにしているが、人類もシャヘルも死滅させるため彼女に協力し、滝川の手引きによって「あつた」を強奪し、第三世代EMESを手にした。 シャヘルの能力を手にした事で通常のレベル7を超える能力を誇り、第三世代EMESの能力を引き出すだけではなく、「天国」の「ボイドフィールド」を斬撃として飛ばすなど、設計者の想定以上の使い方をしている。最終決戦では第三世代EMESを駆って「ピンゾロ」を占拠したが、九十九五六八の奇策によって無人機を封じられ、同じく第三世代を駆る塚原武道との激闘の果てに敗れた。 最期はミスラ(始)ではなく「一番隊隊長・伊藤始」として塚原達に希望を託し、親友である長篠優作の銃弾で止めを刺された。

神永 功 (かみなが いさお)

侍所の実験部隊の現場指揮官の中年の男性。日系人でアメリカ陸軍グリーンベレーに所属していた過去があり、アメリカでのシャヘルとの戦いを生き抜いた古強者である。九十九五六八の父親だが、妻とは離婚しているため九十九からは強く恨まれている。実は離婚をしたのは当時、激戦のアメリカでアメリカ軍の負けを悟った際に、妻と日本に当てたメッセージだった。 機密情報の扱いで九十九に明かす事はできずにいたが、妻と娘を安全な場所に逃がす措置であり、この情報が妻を通じて日本に渡った事で、日本は1年早くシャヘル対策を行う事ができた。のちにこの事実を知った事で九十九とは和解を果たしている。年齢のため強化手術こそできないものの、旧型のパワードスーツでEMESやシャヘルに渡り合う実力者で、経験に裏打ちされた確かな実力を誇る。 また教育者として非凡な才能を持ち、彼に教育された若者は人間性を失わずに高い実力を持っている、と春日首相にも高く評価されている。「キューバ奪還戦」では状況を利用して行方をくらまし、密かに「あつた」強奪犯を探っていた。誰が敵か味方かわからない状況であったため、「雪の下」作戦と言うコードネームで信用できるわずかな手勢に、それぞれ指令を送っていた。 のちに確立した第四世代EMESの情報を手土産に日本に帰国し、上層部と交渉した。「ピンゾロ」の戦いではミスラ(始)と五分の戦いを繰り広げていたものの、信用していた石川昇の裏切りによって一気に窮地に陥った。

石川 昇 (いしかわ のぼる)

元警視庁対テロ特殊作戦局長の男性。現在は日本防衛軍の筆頭将補で、侍所の創始者の一人。神永功とは旧知の間柄であり、彼から密かに送られていた情報によりアメリカ軍の内情を察していた。塚原武道の父親はかつての部下であり、同じく剣の道の同志。父親の忘れ形見である塚原の事を何かと気にかけており、塚原との父親の約束で、いつか塚原と本気の勝負する事を楽しみにしている。 高齢で肉体のピークは過ぎ去っているものの、剣の腕にいっさいの衰えはなく、塚原と互角以上に切り結べるほどの技量を持つ。一見すると文武両道、質実剛健な男性だが、その実、心の奥底には、狂気に染まった戦争を見たい言う暗い欲望を秘めている。神永ですら気づかない内に滝川奈々と通じ、「ピンゾロ」の戦いでは神永を裏切って「ふたら」を占拠した。 神永に戦争の狂気について説いたが、皮肉にも円谷円の「母親の執念」と言うさらに大きな狂気に負けて死亡した。

山浦 清 (やまうら きよし)

侍所の技術部の男性主任。96歳の老翁ながら一佐の階級に就き、高齢のためボケたような言動が目立つが、「ノーベル賞」を2回取った天才である。タイガーピアースや天国を始めとした実験部隊の使う兵器の開発にかかわった。第二部では、技術部は監察部の監視下に置かれており、監察部に気づかれないように密かに神永功に協力していた。 「ふたら」強奪で神永に合流した際に、丹波庵専用に調整した第三世代EMES専用の通信装備を渡した。実はシャレムの中枢システムである「レワノフ」を自らの脳に間借りさせており、監察の目を欺いていた。

門脇 恭介 (かどわき きょうすけ)

特務監察部および検非違使次官。能面のような仮面をかぶった黒装束の男性で、「あつた」強奪事件の捜査を名目に侍所への圧力を強化している。自らの権益を確保するためには手段を選ばない利己的な人物で、塚原武道に対する取調べでも高圧的に振る舞い、半ば脅迫的な方法で塚原を「あつた」捜索に協力させた。「シャヘルサンプルバイオハザード事件」で伊藤万を守って妻を失っており、伊藤始に対しては強い憎しみを見せている。 若かりし頃に仲間と共に始に私刑を行っていたが、逆上した始に半殺しの重症を負わされ、現在も仮面で隠しているが、その時の後遺症で顔面の半分に痛々しい傷を残している。手段を選ばない冷酷な人物だが、その根底には、妻の忘れ形見である息子に平和な世界を見せてあげたいと言う気持ちがあり、年齢から見るとかなり無理なレベル5の強化を自らに施している。 また彼の真意は権益を自らのもとに集中させ、国の垣根を越えた超国家連邦軍を設立し、その実権を握る事で早期に戦争を終結に導くというものであった。神永功や春日首相も、この点では門脇恭介は信用できるという評価を下していた。 「ピンゾロ」の戦いでは、ミスラ(始)と神永の戦いを利用して「左」を使い邪魔者を一掃しようと目論むが、死んだと思っていた滝川奈々に息子を人質に取られたうえに、側近の裏切りによって「左」の指揮権を奪われた。

リリー

祢々切の一人。前衛部隊の隊長で「NC-01」のコードネームで呼ばれていた。普段は覆面姿で行動しているが、素顔は難民の10代前半の少女。人権も、戸籍もなく、「商品」として管理されるだけの自分達を、「人間」として扱ってくれる九十九五六八に感謝の念を抱いており、九十九が門脇恭介に捕らえられた際には、ほかの祢々切のメンバーと共に、自発的に九十九の救出作戦に力を貸した。

北条 (ほうじょう)

日本情報局の局長。北条の名は偽名で、本名は不明となっている。飄々とした雰囲気を持つ初老の男性で、成り立ちからして不明瞭なところが多い侍所に探りを入れていた。実は裏切り者の一人で、「あつた」強奪事件の手引きをしており、それを神永功に見破られた際には、機械化した両腕で二人に襲い掛かった。高齢にもかかわらず無茶な強化と肉体改造をし過ぎており、余命いくばくもない状態だった。 脳だけの状態で辛うじて生きていた滝川奈々を、有機サイボーグの検体にして新しい体を与えたが、意識を取り戻してからの滝川の行動を見て、彼女を心底恐ろしい存在と認識する。彼女の言動にはつねにビクビクと怯え、言い成りになっていたが、同時に彼女の境遇に同情しており、神永功に犯行を暴かれて捕まって以降も、今際の際まで彼女の助命を嘆願していた。

滝川 奈々 (たきがわ なな)

自称「情報部の看板娘」の18歳の少女。陽気な性格をしており、つねにハイテンションな言動で周囲を元気付ける。座右の書は「オズの魔法使い」で、度々、物事を同書に例えて話す。幼少期はアメリカで子役をこなす芸能人として活動しており、その時期に培った語学能力や演技能力を情報部に買われ、エージェントとしてスカウトされた。情報エージェントとしてあつた強奪犯を追う侍所に合流し、一行を助けた。 塚原武道に強い興味を抱いており、「華表島」での塚原の活躍を見て以降は、彼に猛烈にアプローチをしている。初対面にもかかわらず求婚をするレベルで、九十九五六八に強い嫉妬心を抱かせた。門脇恭介に拘束された九十九を助けるため、幕府軍本部庁舎「ピンゾロ」に忍び込む。 無事に九十九を助けたものの追っ手に追い詰められたため、九十九に激励の言葉を送って逃がしたあと、銃弾の前に身をさらした。その後、死亡したと思われていたが、「あつた」強奪から始まった一連の事件の黒幕として、再び九十九の前に現れる。2046年の日本に初めてシャヘルが襲撃した事件で体の大部分を失っており、体の大部分が有機サイボーグと化していたため、銃撃での傷も1日で治ったのだ。 また幼少時にシャヘルに襲われた際に、母親に身代わりにされ、さらに1年のあいだ、脳以外の体がない状態で過ごしたため、心の大部分が破綻している。母親に復讐を果たしても「悲しい」と思えなかったため、もう一度「悲しい」と思うために、心底愛している塚原を絶望させ、その姿を見て悲しみたいと思っている。 九十九を助けたのもその一環で、塚原と心を通じ合わせた九十九を惨たらしく殺すつもりだった。シャヘルと人類の戦いを高みの見物として、泥沼の戦場を作り出そうとしており、自分と同じく戦争の狂気に染まった人間を「説得」し、ミスラ(始)と手を組んで「ピンゾロ」の戦いに介入した。 狂気を持った存在で、自分と同種の人間や人の弱い部分をかぎ分ける事に長けており、彼女に「説得」された人間は軍全体の2%にも及ぶ。ミスラが敗れたあとは、最後の手段としてK-7を使い、人類とシャヘルの殲滅を目論む。

集団・組織

侍所 (さむらいどころ)

2045年に発足した対シャヘル用の軍隊組織。陸・海・空のすべての兵力の指揮系統を統合し、強化した兵士である侍を擁している。2051年時点で侍は1700名ほど在籍しており、第一世代外骨格兵器を利用してシャヘルと戦い抜いていた。組織としては閉鎖的で、設立経緯を含めて機密扱いの部分が多く、使われている技術の出所は味方にも明かされていない秘密主義なため、陸軍からはうさんくさい存在と思われ、信用されていない。 その設立にはシャレムが関わっており、「K計画」の一環でシャヘルと戦うためのノウハウを積み重ねる事が目的であった。のちに「K計画」がフェイズ2に入ってからは、それまで積み上げたノウハウを利用して次々と新装備が開発され、その実戦運用のための実験として一番隊を含む5つの部隊を設立した。 2052年には「あつた」強奪事件を境に監察部の監視下に入っており、それまで積み上げたノウハウなどはほとんど監察部に吸い上げられ、ほかの軍からは「監察の犬」として嫌われていた。

監察部 (かんさつぶ)

軍部の監察を行う組織。シャヘルとの戦争以降、撤退した在日アメリカ軍の研究成果から、ジャミング装置を実用段階まで持って行くという実績が評価され、非常に強力な権限を持っている。国家機密である「あつた」強奪事件を調べる内に、内部犯の可能性に行き着いたため、侍所へ大きな圧力をかけており、2052年以降はさらに大きな権限を手にするに至る。 国外の組織や国とも独自のつながりを得て、「左」など独自に極秘兵器を開発していたが、「ピンゾロ」の戦いで滝川奈々によって監察部内部でも裏切りが起き、組織は瓦解した。

祢々切 (ねねきり)

陸軍が極秘に育てた特殊部隊。全員が仮面と黒装束で身を包み、名前までコードネームで呼ぶ事が徹底されている。個性がいっさい見えないその姿は不気味で、ほかの軍人からも煙たがられている。全員が強化レベルも5以上のエリート部隊で、レベル7以上の適正者で構成されている。そのためEMESに乗れる機甲歩兵の総数は500人以上にのぼる。 その正体はシャヘルとの戦争で生まれた戦争孤児の難民。平均年齢13歳で、全員がレベル7の強化に耐えられる素質を持っており、門脇は祢々切の子供達を後々各国の軍部の幹部として売りつけ、世界の軍部を掌握する腹積もりだった。そのため人権も戸籍もなく人間扱いされておらず、九十九五六八との戦いも「商品」を世界に宣伝するためのものであった。 しかし九十九だけは、自分達を「商品」ではなく「人間」として扱ってくれた。そのため、次第に本当の意味での信頼関係が生まれ、ウルスラグナとの戦いでは自発的に九十九をかばって二人戦死している。また門脇によって九十九が囚われの身になった際には、周囲の予想に反して自発的に九十九の救出に協力した。

一番隊 (いちばんたい)

「問題児部隊」の別名がある侍所の実験部隊。実験部隊の中でもさらに実験的な要素の大きい部隊で塚原武道、九十九五六八、伊藤始、丹波庵、長篠優作など、特殊な境遇や素質を持った者が集められている。当初は伊藤が全部隊の指揮を兼任して隊長を務めていたが、ミスラ(シャヘル)との戦いで伊藤が戦死して以降は楠木鉄也が隊長を務めている。

二番隊 (にばんたい)

侍所の実験部隊の二番隊。男女の脳波の違いを測定するのが目的で、男性のみで構成された部隊となっており、女性のみで構成された三番隊とは対になっている。前衛主体の特攻チームだが、隊長の黒沢信祟の影響か、粗野と言う雰囲気はなく、優秀なチームとなっている。

三番隊 (さんばんたい)

侍所の実験部隊の三番隊。男女の脳波の違いを測定するのが目的で、女性のみで構成された部隊となっており、男性のみで構成された二番隊とは対になっている。後衛中心のチームで、侍所でも上位に位置する凄腕狙撃主が四人も所属している。その分、前衛に適正のある隊員が少なく、一人足りない状況となっている。

五番隊 (ごばんたい)

死刑囚で構成された侍所の部隊。シャヘルとの戦いによって少年法が改正され、未成年にも死刑が適用されるようになったため、強化手術を受けられる未成年で、かつ高い才能が認められた死刑囚のみが五番隊に所属し、侍となる事ができる。侍となれば命の危険と引き換えに、死刑の延期と一定の自由が得られる。ただし五番隊は「スカウト(偵察)部隊」であるため、基本的に危険な戦地に真っ先に投入されたり、監視チップによってつねに行動を見張られたりするため、相応に命の危険は付きまとう。 また監視チップを脳内に埋め込まれるため、五番隊の人間は全員額の同じ部分に傷がある。現在の五番隊も隊長である乃木玄之丞を筆頭に殺人犯、爆破犯、強盗犯と凶悪犯罪者のオンパレードである。 「ふたら」強奪の際にミスラ(始)に鍋島を除く隊員が殺され、乃木も殿のために残り、ミズラを巻き込む自爆を行って手傷を負わせた。

その他キーワード

シャヘル

正式名称は「シャヘル生物群(スウォーム)」。「GHC(ゼネラル・ヘーリティッジ・コーポレーション)」によって、発展性成長遺伝子という特殊な遺伝子を組み込まれて誕生した新種の生物である。シャヘルサンプルバイオハザード事件によって人類の手を逃れ、独自の進化を遂げた事で、有史初の人類の天敵となってしまった。遺伝子情報と言う46億年の生命の積み重ねを味方につけており、遺伝子の中から自らに適した能力を選び、数日でその形に進化する、生命の「いいとこ取り」を行う事ができる。 このため個体ごとに姿形は差があり、虫のように外骨格に覆われたものから、軟体動物のような体を持つもの、果てはウイルスレベルの微細なものまで、一種族でありながらその姿は多種多様である。 そして何より恐るべきはその学習能力と適応能力であり、個体が得た経験を「テレパシー」能力によって即座に群れに反映・進化させる事ができるため、人類の戦術は年々通用しなくなっている。そのシャヘルの中には原理不明の浮遊器官を持つものや、テレパシー能力を持ったものなど、人類には未発見の原理を利用した個体もおり、その全貌は未だに明らかになっておらず、さらに現在進行形でシャヘルの進化は進んでいる。 人類を圧倒するほどの物量を誇るが、シャヘルが活動するには熱量(カロリー)が必要となるため、寒冷地では途端に活動の幅が狭まるなど弱点もある。またジャミング下ではテレパシー能力が阻害され、能力が大幅に制限されるため、現在はジャミングの影響を受けない南北アメリカ大陸に封じられている。

セレブレート

シャヘルの中で「貴族」ともいうべき階級。一定の知能と意思を持った存在で、ほかのシャヘルにはないテレパシー能力を行う器官で兵隊をあやつり、ヤザタに与えられた地域を効率よく管理している。ただし高い知能と自我を持った個体の中には、ヤザタに反感を抱いていたり、好戦的な個体もいる。ヤザタはセレブレートコマンダーの反乱防止のため、命令違反をしたり、長期間の単独行動を取ったものを殺す「首かせ」をつけている。 これがなくなった場合、制御を失ったシャヘルは共食いを始め、自ら滅亡するとされている。

(ねすと)

シャヘルが築く巨大な蟻塚のような有機構造体。シャヘルが「兵隊」などを生産・管理する文字通りの巣であり、巣の成長段階によってレベルが1から7の段階が存在する。巣を作る際は1メートルほどの巨大な「種」が発芽する事で成長し、わずか2日足らずで戦車を蹴散らすレベルの兵隊を量産しだす。また規模の大きいレベル6以上の巣は核攻撃にすら耐えうる強靭さを持ち、当初シャヘルと戦っていたアメリカ軍もレベル5までの巣にしか対応できなかった。 また巣自身も一種のシャヘルに属する存在で、状況に合わせて構造や機能に変化をもたらす事ができる。巣から出ている「赤い霧」もその一環で、この「赤い霧」は人体には影響ないものの、吸気を必要とする内燃機関を機能不全に陥らせる能力がある。 人類との戦いを学習したシャヘルが巣にこの機能をもたせたため、人類の持つ兵器のほとんどが封じられてしまった。また作中では、新たに巣そのものが巨大なレールガンに変形するタイプも現れており、シャヘルはこれを利用してジャミングを潜り抜け、日本に対して大規模な攻勢をしかけた。

シャヘルサンプルバイオハザード事件 (しゃへるさんぷるばいおはざーどじけん)

発展性成長遺伝子を利用して、「GHC(ゼネラル・ヘーリティッジ・コーポレーション)」の医学主任「マイケル・ライブラ」が実験動物にヒト遺伝子を与えた結果起きた事件。2042年に人間と同等の知能を獲得した実験動物が、研究員と警備員八名を殺害して逃亡し、カリフォルニアの地下に潜伏し、周囲の動植物の遺伝情報を取り込んで急速に成長して行った。 2年後発見された際にはレベル4の巣となっており、驚異的な学習能力でアメリカ軍を撃退し、シャヘルは人類の脅威としてさらに成長して行った。

発展性成長遺伝子 (はってんせいせいちょういでんし)

カンブリア紀の地層から見つかった微生物から採集された遺伝子。捕食した対象の遺伝子情報を自らの遺伝子に取り込む性質を持っていたものの、当初は無差別に取り込んでしまうため、対象の劣性遺伝子まで取り込んでしまい、最後には自滅してしまっていた。しかし「GHC(ゼネラル・ヘーリティッジ・コーポレーション)」の農学主任だった伊藤千秋が、任意の遺伝子情報を取り入れる改良をほどこしたため、生物の「いいとこ取り」ができる万能細胞へと変化してしまった。

ジャミング

在日アメリカ軍が撤退前に開発していた対シャヘル用のジャミング装置。監察部がその情報をつかみ、実用化にこぎつけた。特定の周波数の電波によってシャヘルの「テレパシー」能力を妨害する事ができるため、ジャミング下ではシャヘルの持つ驚異的な統率能力も適応能力も封じられ、その戦闘能力を大幅に減じる事ができる。ジャミングは大気中よりも水中で大きな効果を及ぼすため、人類は人工島「ミズチ」を始めとして、太平洋と大西洋上にいくつかの人工島を建設する事でジャミングの防波堤を作り、アメリカ大陸にシャヘルを封じ込める事に成功した。 また侍所は高レベルに強化した通信兵の力を借りる事で、一時的に戦地にジャミングを行う事ができる。ただしジャミングも万能ではなく、「セレブレートコマンダー」と呼ばれる特別な個体がいた場合は、ジャミング下でも狭い範囲ならテレパシーを行う事ができる。

K計画 (けーけいかく)

シャヘルに対抗するための計画。シャレムが立案し、侍所が主導で進めている。全部で7つの段階が存在し、フェイズ1はシャヘルに対抗する組織である侍所を結成し、対抗するためのノウハウを培う事。フェイズ2は天国やEMESといった対抗兵器の実用化と量産。そしてフェイズ3はシャヘルとの戦いにおける数の不利を覆すべく、第三世代EMESの実用化となっている。 この時点で人類が勝利できなければ一気に苦境に立たされるとされ、フェイズ4はKVB-Sを利用して大量破壊を行うため、地球環境に多大な影響をもたらすとされている。また最終段階であるフェイズ7が発動した場合、K-7によってシャヘル諸共現人類は死に絶え、生き残れるのはレベル7に強化された0.1%程度の新人類のみとされている。

雪の下 (あんだーすのー)

「あつた」強奪が内部犯だと突き止めた神永功が、極秘に立案した作戦。誰が信用できるかわからない状況であったため、侍所の実験部隊の面々にそれぞれ別々の指令を渡し、「あつた」強奪犯をいぶり出そうとしていた。万が一敵に情報が渡っても、全貌を知られないための措置であり、任務遂行に動いていた塚原武道や五番隊の面々も作戦の一部しか知らなかった。

強化 (きょうか)

各種神経系の能力を強化、最適化する手術。背中の部分に「有機電極」を埋め込み、ナノマシンを注入して有機電極と脊髄を直結させる事で強化する。これを行う事で筋肉の限界性能を引き出したり、知覚能力を拡大したりする事ができる。有機電極部分を通じて脳と外部で直接情報の入出力ができるため、操縦が複雑な機械の操縦でも大きな力を発揮する。 特にタイガーピアースなどの外骨格兵装を扱うためには、人間離れした神経構造が必要となるので、侍となる人間に強化手術が必要不可欠となっている。強化するためには神経が未発達な子供の頃から行うのが最適とされており、大人や適合率の低い人間が行うと、神経障害など大きな副作用を伴う。強化の度合いによってレベルがあり、高レベルほど適合者が少なくなり、手術による副作用も大きなものとなる。 また強化手術にも種類があり、侍所の通信兵となる人間は、特殊な神経改造を受ける事で、見たままを脳内に映像として記録する「写真記憶」や、強化手術を受けた者同士の感覚を共有する一種の「テレパシー能力」を使用する事ができる。

レベル7 (れべるせぶん)

強化手術によって7段階目まで強化された人間。レベル7の段階になると遺伝子レベルの設計が必要となり、その分、超人的な能力を手にする事ができる。適合者の数は少なく、70億人の全人類の中で数10万から100万人ほどとされている。現状は施術回数そのものが少ないため技術的に未発達な部分が多く、レベル7となった人間は定期的にメンテナンスを行わなければ、生命活動を維持する事ができず死んでしまう。

(さむらい)

従来の軍とは違って対シャヘル戦を想定した機甲歩兵。侍は外骨格兵装を使う事を前提としているため、侍になるためには強化手術を受けなればならず、必然的に強化に副作用の出づらい年若い層が多くなっている。現在は全国の子供達の適正を調べ、志願した者を中心に育成・運用している。基本的に侍は全員強化されており、アサルトスーツの働きもあり、高い身体能力を発揮する。 ただし全機甲歩兵1700人のほとんどはレベル1か2止まりで、レベル3を超えるものは500人に満たないとされている。侍は基本的に日本の防衛を行っているが、シャヘルの進行を防ぐため、要所であるアラスカと南大西洋の防衛も持ち回りで担当している。

アサルトスーツ

外骨格兵装を使うために必要不可欠となる特殊装備。侍所ではK-51式のアサルトスーツが使われている。見た目は軽量に作られた薄手のスーツだが、人工筋肉を織り込まれ、耐熱耐弾耐G与圧とかなり頑丈に作られている。また強化手術によって埋め込まれた有機電極から、情報を入出力するのをサポートする能力があり、外骨格兵装をはじめとした機械との親和性を高めるほか、アサルトスーツの筋力補佐能力によって、侍は常人離れした身体能力を発揮する事ができる。 ほかにも各種銃や暗視ゴーグルなど、多様な装備が揃えられている。

天国 (あまくに)

K計画で作られた試作接近用兵装。型式番号はKVB-51型で、タイガーピアースはこれを扱うために生み出された。「ボイドフィールド」と呼ばれる特殊な場を形成する事で、対象を原子分解して切り裂くエネルギーの刃。当たれば文字通り一撃必殺の威力を持つため、高い学習能力と適応能力を持つシャヘルですら対応できない切り札的武装である。 ただし実態のない剣であるため扱いが難しく、また対象の物質を軽い物質に変換して切り裂くと言う特性から、重い物質を切り裂いた場合、放出されるエネルギーによって周囲もろとも消滅してしまう危険があるため、天国の使用には一佐以上の許可が必要となる。

クニツナ

天国の運用データをもとに改良した新武装。天国の弱点を補うため単体でも斬撃が可能なように、ブレード部分はチタナイジング処理した合金による本三枚鍛えとなっており、日本刀のような見た目になっている。またセンサー類も強化されて特定の元素のみ切り裂く事も可能となったため、天国の取り回しの悪さがかなり改善されている。

タイガーピアース

型式番号はK-51型で、K計画の一環で生み出された新世代の新型外骨格。旧型の「オールドアイアン」に比べ、新技術の投入により全体的な性能が上昇しており、無補給で2週間活動可能な継続能力や高センサーによる高い知覚能力と、従来の兵器とは一線を画する性能を誇る。特に運動性能は、徹底的な軽量化が図られた事で、人体と寸分違わない動きが可能となるほどである。 反面、重量を犠牲とした事で、取っ組み合いなどの格闘戦は苦手としており、また試作機という事で一機あたりのコストは高く、操縦者への負担も大きい。もともと天国を持つ事を前提として開発されており、一撃必殺の天国を持つ事で格闘戦が苦手な部分が補われ、高い運動性能と合わせて接近戦でも無類の強さを発揮する。 オプションの装備も豊富で、機動力を高める反重力スラスターやライフル、レールガンなどがある。

ハコトラ

第二世代外骨格タイガーピアースの正式量産モデル。侍所で実験運用されていた。この機体の発表に伴って日本の作る外骨格には「EMES」の商標がつく事となり、2052年以降の日本の主力輸出商品となった。タイガーピアースで問題となっていた取り回しの悪さを改善しており、ハコトラは強化レベルが1の人間でも乗れるようになっている。 タイガーピアースに引き続いてオプション装備が豊富で、用途によって装備を付け替えたり、機体ごとにカスタマイズを施したりと拡張性も高い。また祢々切では、ハコトラをベースに改造した「鮫尾」と呼ばれる機体を使っている。

第三世代 (だいさんせだい)

シャレムが侍所で極秘に開発していた次世代型EMES。第三世代に関する情報は機密性が高いため、コードネームである「一(コードワン)」の名で呼ばれる事も多い。伊藤始専用機として1号機が完成していたが、直後に伊藤が死亡してしまったため使われる事なく保管されていた。のちに滝川奈々に強奪され、ミスラ(始)によって使われた。 コンセプトは「一騎当千」であり、数でシャヘルに圧倒的に劣る人類が、数の優位を確保しつつ倒す事を目的として開発された。その正体はレベル7の強化兵を乗せて稼動する無人機の運用・指揮を担当とする機体。強力な通信装置によって最大で1000体の無人機を同時に扱う事ができ、無人機の行動にもファイル化された戦士の行動が反映されるため、非常に強力なものとなる。 無人機を展開できるのは半径10キロが限界だが、優秀な兵士1000人が一糸乱れず連携を行う事で圧倒的な戦闘力を誇り、ミスラは第三世代の能力でわずか2時間でキューバの巣の60%弱のシャヘルを倒している。また強力な通信能力を持っているため、ハッキングに能力を応用する事ができ、ミスラはこの能力を利用して「ミズチ」のシステムを乗っ取った。 このため第三世代に対抗するためには、ハッキングを防ぐための同レベルの通信装置を備えたEMESが必要不可欠であり、塚原武道達はミスラに対抗するため「ふたら」を強奪した。

あつた

第三世代EMES専用の運用母艦。全長240メートル、排水量7トン。重力制御システムとK-52型通信システムを搭載しており、内部には第三世代EMESのあやつる無人機1000体を格納するスペースがある。伊藤始の専用の第三世代EMESと共に開発を進められていたが、伊藤が戦死してしまったため、本州で保管されるはずだったが移送中に何者かに強奪された。 「あつた」の存在はトップシークレットで、その機密は堅固に守られていたため、その疑いは必然的に侍所を始めとした内部に向く事になった。実は強奪には「情報部」がかかわっており、主犯は滝川奈々。第三世代はミスラ(始)に渡されて「キューバ」やウルスラグナとの戦いで用いられた。 門脇恭介がKVB-Sを用いて撃沈したが、実はミスラと滝川にとってそれも織り込み済みで、彼らの目的は監察部が極秘に「あつた」内部に運び込んでいた「K-7」だった。通常の方法では取り出せない「K-7」を監察部が回収させ、のちに滝川がこれを強奪している。

ふたら

第三世代EMES専用の運用母艦。全長240メートル、排水量7トン。重力制御システムとK-52型通信システムを搭載しており、内部には第三世代EMESのあやつる無人機1000体を格納するスペースがある。その性能を十全に発揮するためにはレベル7の兵士一人か、レベル6の兵士に同じくレベル6の通信士二人をサポートする必要があり、莫大な演算能力を必須とされる。 同型艦である「あつた」の強奪犯を捕まえるため建造が進められており、塚原武道の専用機として調整されている。ミスラ(始)との決戦で神永功達に持ち出され、レベル7に強化された円谷円が「ふたら」の操縦を担当した。

第四世代 (だいよんせだい)

生物学者であるフェリシア・カーツがシャヘルのテレパシー能力を解読する事で、完成の目処が立った次世代型EMES。レベル10の通信兵を乗せる事で、指揮系統をテレパシーに頼っているシャヘルを、同士討ちや自滅させる事が可能となり、この機体が完成したあかつきにはシャヘルとの戦争は終わるとされている。ただしレベル10の強化を現人類に行うには不可能とされ、第四世代を動かすためにはレベル7同士の親から生まれる新人類の存在が必要不可欠とされている。 現状でこの条件を満たすのは円谷円の子供だけである。また完成させるためにはテレパシーに介入するためのコードが必要で、それを持つとされるミスラ(始)の死体を可能な限り無傷で手にするのが必要とされている。

KVB-S (けーぶいびーえす)

第三世代EMESと並行して開発されていた兵器。その正体は、アマクニにも使われている「ボイドフィールド」を広範囲に展開する事で一帯を消滅させる爆弾兵器。あまりの威力の高さに実用化は見送られていたが、監察部が完成させた。ただし完成したものは不安定な状態で使いづらく、本格的な実戦投入には改良が必要とされている。 九十九五六八は「ボイドフィールド」を形成する際の性質を利用し、出力を爆発しないレベルまで落として形成する事で「バリア」のような使い方をした。K計画がフェイズ4に入った場合、シャヘルとの戦いに用いられるが、その場合、広域破壊兵器によって地球環境は修復不可レベルまでダメージを負うとされる。

(こーどれふと)

左と言うコードネームで呼ばれる極秘兵器。その正体は、反物質研究の副産物で生まれた「ゴーストウィッチ」と呼ばれるエネルギー体をあやつる装置。エネルギーでできた光り輝く幽霊のような見た目で、物質でないため物理攻撃がいっさい効かず、直接的な破壊能力はないが、体を構成する電気エネルギーを熱や動力に変換してあやつる事ができる。 これを利用して、対象の筋肉組織に電気を流して破壊したりする事ができ、攻撃が通じないため、一方的に敵を蹂躙できる兵器となっている。ただし形を維持するだけで莫大なエネルギーと設備が必要なうえに、動かすのにもコンピューターによる莫大な処理能力が必要となるため、実用には高いハードルがあり、実戦投入は見送られていた。しかし監察部が各国と密かに通じて完成させており、「ピンゾロ」での戦いで門脇恭介が莫大な処理能力を「ふたら」と祢々切を利用して補い、邪魔者を排除するために使った。

K-7 (けーせぶん)

K計画の最終段階で使われるウイルス兵器。その実態は、ヒト遺伝子を持つ生物を無差別に殺す殺人ウイルスであり、伊藤千秋がシャヘルに対する最後の手段として残していた遺産であった。これを使えば、遺伝子レベルで改造されるレベル7の強化手術を受けていれば助かる事ができるが、それ以外の現人類はシャヘル諸共死滅されるとされている。

EMES (えめす)

侍所がタイガーピアースを運用し、培われたノウハウをもとに正式に量産した第二世代以降の外骨格に与えられた商標。正式名称は「軍用強化外骨格(Empwer Military Exo Skeleton)」で、EMESの略称で呼ばれる。商標をつけた裏には春日首相がEMESを日本の主力輸出品にする目論見があり、実際、ハコトラは数万機に及ぶ受注を得られた。

ドラゴン・アイ (どらごんあい)

ホーク・アイのシステムを強化手術の発達によって発展させたシステム。EMESの高性能センサーで拡大した知覚を、K51通信システムによって、現場に存在するあらゆる機器から得られるデータと統合し解析する事で、擬似的な未来予測を可能とする。予測できるのは1秒程度が限界だが、EMESによって知覚が強化されている兵士ならば、敵の攻撃を回避しつつ、攻撃を思った通りに当てる事が可能となる。 ただし使用には6レベル以上の高い強化レベルが必要となるうえ、使用者への負担も大きく、5分以上の発動は使用者の生命活動に悪影響を及ぼす。また軍のあらゆるデータにアクセスするというシステムの設計上、使用者には一尉以上の権限がなければいけないため、現在それらのすべての条件を満たすのは九十九五六八のみとなっている。 彼女はこのシステムを効率的に運用し、激戦区で戦う事の多い祢々切の生存率を95%以上に保っている。

ホーク・アイ (ほーくあい)

狙撃兵用のサポートシステム。衛星から気象、気温、風速などのデータを集めたうえで、赤外線、X線、音波などから敵の急所を割り出し、的確に狙撃をサポートする事ができる。その精度は高く、反動のないレールガンならば、毎秒50発の「狙撃」が可能とされている。

監視チップ (かんしちっぷ)

囚人兵を監視するために作られた監視用のチップ。シャヘルとの戦いによって少年法が改正され、未成年にも死刑が適用されるようになったために作られた。有機素材で作られており、頭に埋め込む事でその人物の感情をモニタニングする。極度に興奮状態に陥ったり、命令違反をした場合は警告音が鳴り、その状態が改善されなかった場合、対象の脳を焼き尽くす。 極々稀に生き残る事ができる人間もいるが、ほとんどはそのまま死亡する。五番隊に埋め込まれたタイプは、脳を切開して埋め込むタイプであるため、全員頭の同じ場所に手術跡がある。第二部で塚原武道が監察部に埋め込まれたのは最新型で、ナノマシンを注入する事で脳内にチップを形成するタイプだった。

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