妖精王

妖精王

妖精の王国を舞台とした、ライトエルフとダークエルフの争いを描いた、スペクタクルファンタジー。ギリシャ神話やケルト神話の他、作者・山岸凉子の故郷である北海道の神話や伝説に登場する、神や精霊などが随所に登場する。

正式名称
妖精王
ふりがな
ようせいおう
作者
ジャンル
ファンタジー
レーベル
花とゆめコミックス(白泉社)
巻数
既刊5巻
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概要・あらすじ

病気療養のため東京から北海道の親類宅にやってきた忍海爵。悪夢を見たを救ったのは騎士クーフーリン。その後も不思議な体験をし、月影の窓を開け妖精の国ニンフィディアへ足を踏み入れる。「ミッド・サマー・ナイト」に集まった妖精たちを、クイーン・マブの幻影が襲うが、風野燐から渡された勇者の角笛を吹いて消し去り、角笛に認められた妖精王の子グィンの生まれ変わりと知らされる。

はダークエルフからニンフィディアを守るため、失われた「水の指輪」を取り戻そうと、鹿の妖精プックをお供に、クイーン・マブの居城のある魔州湖に向かうのだった。

登場人物・キャラクター

忍海 爵 (おしみぬ じゃっく)

肺の病で進学校を休学し、北海道の親類宅へ療養に来る。「ミッド・サマー・ナイト」にニンフィディアに集まった妖精たちを、クイーン・マブの幻影が襲った際、風野燐から渡された勇者の角笛を吹いて幻影を消し去った。妖精王の子グィンの生まれ変わりと教えられ、ニンフィディアを救うため、鹿の妖精プックをお共に、クイーン・マブから水の指輪を取り返すため魔州湖へ向かう。

クーフーリン

妖精王の子グィンの第一の従者。赤枝の騎士団を率い、グィンとは深い信頼関係で結ばれていた。妖精王として目覚める前の爵に忍び寄る、ダークエルフの魔の手から爵を救う。失われていた妖精王が復活する100年目の「ミッド・サマー・ナイト」に爵を迎え、クイーン・マブから水の指輪を取り返すよう伝える。 ケルト神話の英雄クー・フーリンがモチーフ。

風野 燐 (ふうの りん)

爵が療養に来た河村家の司、美夜子兄妹のイトコ。H大学始まって以来の秀才で、優秀な地質学者。爵に角笛のネックレス(勇者の角笛)を渡し、「何かあったら月影の窓を開くんだ」と伝える。妖精王の一の従者クーフーリンの、人としての姿。

グィン

妖精の国ニンフィディアの王ナッドの子。人間の少女エリザベスを愛し、親友クーフーリンに裏切られたため、命を落としたとされている。「いつの日か再び角笛を吹く者が現れる。それこそ自分」と言い残し、エリザベスに勇者の角笛を託した。角笛を受け継いだ、エリザベスの曾孫にあたる。 爵の心に呼びかけ、爵を「分身」と呼びニンフィディアの未来を託した。

エリザベス・シルヴァバーグ

金色の巻き毛に青い瞳の人間の少女。妖精王の子グィンが恋をした相手。クーフーリンに裏切られたと思ったグィンが、勇者の角笛を託した。スコットランド生まれで、明治時代に日本人の元へと嫁いできた忍海爵の祖母。ニンフィディアで出会ったグィンが恋に落ちたが、成長とともにエリザベスからは忘れ去られた。

ケルピー

真っ白なたてがみをたなびかせた黒毛の馬。ニンフィディアでは上半身は人の姿。背に人を乗せるとどの馬よりも早く走る。クーフーリンを乗せているが、クイーン・マブの色香に惑わされ、時に爵を危険に陥れる。爵をニンフィディアに誘うため、角笛を奪い魔州湖へ向かう。 イギリスに伝わる伝説の幻獣ケルピーがモチーフ。

プック

鹿の精の子供。ケルピーに角笛を奪われた爵が、月影の窓を開いてニンフィディアに行った時、最初に出会う。ポックル族で、蕗の葉の下に隠れ姿を消すことができる。頼られると断れない。爵の従者になる。一番欲しいものは「あったかくて楽しいもの」だが、それが何かは判らない(おそらく「友情」だと思われる)。 エリザベスから「自分勝手な者には与えられないもの」と教えられ、爵の危機に際しその言葉を思い出して助け、立派な大人の鹿へと成長する。

ウンディーネ

緑の髪に銀の鱗の水の精。髪の毛が弱点。角笛を奪ったケルピーを追う爵が、魔州湖へ行く道を聞こうと近寄り、弱点と知らずに髪を掴んで情報を得る。「ケルピーはハープ・ムーン(三日月湖)に向かっている」と教えるが、道案内をすると偽り爵を湖に引っ張り込み、レテ河(忘却の河)に連れて行こうとする。 四大精霊の1人で、水を司るウンディーネがモチーフ。

井冰鹿 (いひか)

黄泉の国へ通じる井戸の中に住む、人の体に長い尾を持つ青年。コカトライスに蹴られ、瀕死の怪我を負ったプックを助ける為にやってきた爵に、傷を治す薬「悩む者」と引き替えに勇者の角笛を要求する。治す薬は「悩む者」だが、反対に「悩まぬ者」は触れると死ぬ。ダークエルフの王の気まぐれで、ライトエルフとの間にできたクイーン・マブの弟。

クイーン・マブ

魔府(ダークエルフ)の女王で、夢魔の精。ダークエルフとライトエルフとの共存のため、妖精王の子グィンと婚約したが、グィンとクーフーリンとの絆の深さに嫉妬し、グィンを騙し重要な言葉を奪い、水の指輪に閉じ込めて隠している。水の指輪を取り返そうとやってくる爵を亡き者にしようと、次々に魔物を呼び出しては襲わせる。

サラ

真っ赤な髪をした妖艶な少女。クイーン・マブによって呼び出された、トカゲの魔物。サラマンダ(火竜)。髪に触れた者は逆らえなくなる魔力を持つ。爵を誘惑するが乗ってこなかったため、泣き落としで魔州湖へと向かわない別の道を案内しながら、アキレス像や女面鳥獣(ハーピー)に襲わせたり、地底火山を起こしたり、ペガサスのクリュサオルを唆したりと、次々爵の足をとめさせる。 四大精霊の1人で、火を司るサラマンダーがモチーフ。

ルシフェ

ディモランド(羅刹国)の王子。醜い悪魔の姿を嫌い、魔力で美青年に化けている、自意識過剰のナルシスト。新しい妖精王となる爵から角笛を奪い、ニンフィディアの王座を奪おうと近づく。コボルトを呼び出して使役したり、爵にケンタウロスの酒を盗もうと唆す。 クイーン・マブの誘惑に、ドュラハーンを呼び出し協力する。堕天使ルシファーがモチーフ。

ケイローン

上半身が人、下半身が馬のケンタウロス族一の賢者。オキュロエの父。十勝の葡萄を使って美味しいワインを製造。ワイン作りに重要な妖精で、触ったものが、あっという間に腐ってしまう貴腐を連れている。爵が妖精王と気が付き貴腐が触れてボロボロになった服の着替えを用意してくれる。 爵にクイーン・マブとグィン、クーフーリンの関係を語り、プックには「エゾ鹿のはしくれならもっと勇敢にならなくては」と諭す。ギリシャ神話に登場するケンタウロス族の賢者がモチーフ。

ヒポグリフ

ペガサス(天馬)。左の神馬と呼ばれる白い天馬。好きなものには盲目的になるため、熱を上げすぎると目が見えなくなり冷やすと戻る。目が見えず困っていたところで爵と出会い、親切にして貰った。爵が妖精王と知ると「何でも聞く!」と天上の国ヘリコンへと連れ去ってしまう。 爵とオキュロエの危険を知ると、勇気を奮ってアリオンと共に追いかけ、強敵と戦う。グリフォンと雌馬の間に生まれたという伝説の生物ヒッポグリフがモチーフ。

オキュロエ

ケンタウロスの長、ケイローンの娘。天馬のクリュサオルに無理矢理天上の国ヘリコンへ連れてこられ、黒い天馬アリオンと想いを通わせる。サラマンダーのサラの企みにより、クリュサオルにヘリコンから出られる滑りやすい危険な道を教えられ、爵と共に下界へ向かい危険な目に遭う。

クリュサオル

ペガサス(天馬)。ヒポグリフの末の弟。黒の天馬のアリオンに対抗心を燃やす乱暴者。ケンタウロスの長ケイローンの娘のオキュロエを見初め、無理矢理天上の国ヘリコンへ連れてきたが、嫌われ続けた挙げ句アリオンに奪われる。サラマンダーのサラに操られ、オキュロエにヘリコンからの滑りやすい危険な道を教え、爵を連れて行かせ危険な目に遭わせる。 ギリシャ神話に登場するクリュサオルがモチーフ。

アリオン

ペガサス(天馬)。神に属する天馬で、右の神馬と呼ばれる黒い天馬。「足速き者」を意味する海神ヒッポテスの血を引き、雷を運ぶペガサスのリーダー。クリュサオルが無理矢理連れてきたオキュロエと心を通わせる。爵とオキュロエの危険を知り、ヒポグリフとともに追いかける。 ギリシャ神話に登場するアレイオーンがモチーフ。

ノーム

地底に棲む、身の丈よりもひげのながい小人。地の精、大地の精。地の次元を踏んで落ちてきた爵が妖精王と知ると、地上への道を教える代わりに角笛を要求。拒否した爵とプックをモノケロスに襲わせるが失敗。地底火山が噴き出しモノケロスに救われ、クイーン・マブを倒さなければ未来は無いと説得され、爵たちに地上への出口に続く蛇の道を教える。 四大精霊の1人で、大地を司るノームがモチーフ。

モノケロス

一つ目のユニコーン。姿の不気味さに反しライトエルフ。地の精ノームと共に地底に住む。爵を襲うが、彼はまだ清いため触れることができず、その姿も小さくなる。しかし、だからこそ「爵ならクイーン・マブに勝つことができるかもしれない」とノームを説得し、地上への出口に続く蛇の道を教える。 ユニコーンのギリシャ語モノケロースがモチーフ。

ユーナ

風の精(シルフィード)の末の妹。海の精(メロウ)に魂を奪われ眠っていた。地の次元を踏んで地底に落ちた爵が、ノームに教えられた蛇の道を通って地上へ戻ったところを、ユーナの姉達が出迎え、ユーナを救うことを条件に魔州湖まで風にのって連れて行くことを約束する。シルフィードは四大精霊の1人で、空気を司るシルフの女性形シルフィードがモチーフ。

鶏頭蛇尾獣 (こかとらいす)

『妖精王』に登場する魔物。雄鶏とトカゲを合わせたような姿をしている。クイーン・マブの命で、ケルピーを追ってニンフィディアに現れた爵を襲う。プックが頭を叩かれ瀕死の重傷を負い、その怒りで爵が力を目覚めさせ、蹴り飛ばしたことで霧散する。伝説上の生き物コカトリスがモチーフ。

メリジェーヌ

オホーツク海に住むただ1人の海の精(メロウ)。海で命を落とした船乗りたちの魂を集め、海底に閉じ込めている。風の精のユーナの魂を虜にしていたが、爵とプックによって浜に引き上げられ、魂を返す。醜い海蛇の姿を見れば誰も愛してくれないと嘆くが、それを気遣ってくれた爵が、片方のイヤリング、飲み込めば水の中ならどこにでも行けるメロウの真珠を渡す。 メロウは、アイルランドやスコットランドで人魚のことを指すモルーアがモチーフ(英語読みのマーメイド)。

ナメクジの魔物 (なめくじのまもの)

クイーン・マブの命令で魔州湖で爵を待ち構えていた魔物。ネトネトとした霧を纏い、母親のように包み込んで爵を閉じ込めようとする。奪い返そうとしたプックを短剣で斬りつけるが、飛んだ血で我に返った爵に返り討ちにされる。消滅する間際、爵に「短剣」を持って行くように言い残す。 その短剣は大きさが自在に変わり、必要な時には現れ爵を助ける。

レタル・カムイ

白い神と呼ばれ、狼の衣をかぶった巨大な人の姿をした、氷のように冷たく残酷な冬の神。天上の国ヘリコンから危険な道を抜けた爵とオキュロエを、僕の白い狼(レタル・セタ)や巨鳥(フリー)に襲わせる。氷の剣で爵を貫くが、爵の血に触れた勇者の角笛が鳴り出し発熱。 その熱で魔力が弱まり、駆けつけたクーフーリン、アリオン、ヒポグリフによって撃退される。幌尻岳に住む狩りの守り神レタル・セタ・カムイ(白い狼神)がモチーフ。

場所

ニンフィディア

『妖精王』に登場する、妖精の王国。妖精王ナッドとその子グィンによって治められていた。その昔はスコットランドのエジンバラ近くにあり、今は北海道にあるが、今も昔も変わらず同じところにある、と語られる異世界。グィンを失って100年目の「ミッドサマーナイト」で、爵はクーフーリンから復活した新しい妖精王であると告げられる。

魔州湖 (ましゅうこ)

『妖精王』に登場する、ダークエルフの王の城のある湖の名。北海道にある摩周湖と同じものながら、違う次元にあるとされる。クイーン・マブから水の指輪を取り戻すため、ニンフィディアを旅する爵が目指す湖。クイーン・マブの命令で爵を近づけないため、数々の魔物が集まっている。

その他キーワード

水の指輪 (みずのゆびわ)

妖精王の子グィンが失った言葉を水に閉じ込め、クイーン・マブがその指に填めていると言われている。勇者の角笛を支配する者(真の妖精王)だけがクイーン・マブから外せる。ニンフィディアを救うため、新しい妖精王爵は、クイーン・マブから指輪を取り返しに、城のある魔州湖へ向かう。

勇者の角笛 (ゆうしゃのつのぶえ)

『妖精王』に登場する、象牙でできた角笛。妖精王の資格を持つ者にしか吹くことができず、他の者が身につけると重さで動けなくなる。風野燐として出会ったクーフーリンが、爵に渡した角笛のネックレスで、普段は指先でつまめるほどに小さいが、必要な時には大きくなる。

月影の窓 (つきかげのまど)

『妖精王』にに登場する、爵の部屋とニンフィディアを繋ぐ窓。外からの月灯りに照らされ、壁に映し出された窓の影。爵から角笛を奪ったケルピーが壁に吸い込まれるように姿を消したのを見た爵は、風野燐から「何かあったら月影の窓を開くんだ」と言われていたことを思いだした。爵は、壁に映された月影の窓を開いてニンフィディアへと足を踏み入れる。

メロウの真珠 (めろうのしんじゅ)

海の精([メロウ)]のメリジェーヌのイヤリングで、飲み込めば水の中ならどこにでも行ける、と言われる真珠。風の精ユーナの魂を取り返した爵に、メリジェーヌが渡したもの。湖を渡りカムイッシュ島へ向かう際に、爵は泳ぎが得意では無いというプックに渡す。メロウは、アイルランドやスコットランドで人魚のことを呼ぶモルーアがモチーフ(英語読みのマーメイド)。

書誌情報

妖精王 5巻 白泉社〈花とゆめコミックス〉

第1巻

(1977-08-20発行、 978-4592110118)

第2巻

(1977-11-19発行、 978-4592110125)

第3巻

(1978-03-20発行、 978-4592110132)

第4巻

(1978-09-20発行、 978-4592110149)

第5巻

(1978-11-20発行、 978-4592110156)

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