アポロの歌

アポロの歌

ギリシャ神話のアポロとダフネのエピソードを題材に、愛を知らずに育った少年がさまざまな時代をさすらいながら、報われない恋を繰り返す姿を描くSF青春漫画。「週刊少年キング」1970年4月10日号から11月6日号にかけて連載された。

正式名称
アポロの歌
ふりがな
あぽろのうた
作者
ジャンル
恋愛
レーベル
手塚治虫文庫全集(講談社コミッククリエイト)
関連商品
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登場人物・キャラクター

近石 昭吾 (ちかいし しょうご)

男と女の愛を激しく憎む少年。母親が複数の男と関係を持つふしだらな女で、「望んで生んだ子ではない」と言われたことから男女の愛情を嫌悪。人間はおろか動物のオスとメスが仲良くしているのを見るだけで激昂するようになった。怒りにまかせて動物のつがいを無差別に惨殺したため精神病院送りとなるが、治療の最中に意識を失い、夢の中で謎の女神に遭遇。 愛を憎む罰として永遠に続く試練を与えられ、さまざまな時代で愛する女性と結ばれる前に死に別れるという悲惨な結末を繰り返すことになる。

(えのき)

近石昭吾の治療を担当することになった精神科医の男性。昭吾の心を正常にするべく、電気療法や催眠術などのさまざまな治療を試みる。戦争で敵の少年兵を殺した経験があり、その時に爽快感を感じたことから、世の中には人を狂わせる要素が無数にあり、どんなまともな人間もわずかなきっかけで狂ってしまうという持論を持つ。

女神 (めがみ)

近石昭吾の夢に現れる謎の存在で、石像のような姿をしている。男と女の関係を憎み、動物のつがいを次々に殺した昭吾に「何度もある女性を愛するが、その愛が成就する前に女性か自分かが死ぬ人生を無限に繰り返す」という愛の試練を与える。

エリーゼ

女神の試練を受け、ナチスの少年兵に生まれ変わった近石昭吾が戦火の中で出会ったユダヤ人の少女。強制収容所への移送の途中、昭吾の手引きで列車から逃亡するが、ナチス兵士の姿をしている昭吾のことを信じることができず、彼に対して銃を向ける。

ナオミ

軽飛行機のパイロットとなった近石昭吾が出会うことになる女性カメラマン。芸術家ぶっているわがままな女性で、海中火山噴火の取材のため昭吾の操縦する飛行機に搭乗するが、いい写真を撮ろうとするあまり火山への無理な接近を要求。これが、飛行機が無人島に不時着する原因となった。島で動物たちに襲われて重傷を負い、昭吾の治療のおかげで一命を取り留めるが、自身の将来を守るために彼を殺そうとする。

渡 ひろみ (わたり ひろみ)

殺人の容疑で警察に追われていた近石昭吾を助けた美女。元長距離の選手で昭吾にマラソンランナーの素質を感じたと称し、彼を山荘にかくまってトレーニングを課す。実は精神科医の榎の教え子で、昭吾に近づいたのは彼がなぜ愛に目を背けるのか調べ、それを直す方法を試すためだった。だが、やがて彼を愛するようになり、医師という立場と愛情の狭間で苦しむ。 かつて現役マラソン選手の山部の許嫁だったが、彼の女グセの悪さに愛想をつかして婚約を解消した。

女王シグマ (じょおうしぐま)

未来世界の日本に転生した近石昭吾が出会うことになる、渡ひろみに瓜二つの合成人の女王。自身の身体の一部を保管しており、たとえ死んでもクローン合成によって何度でも蘇る。他の合成人と同じく人間を下等な存在と蔑んでいるが、合成人にはない男と女の愛情に強い興味を抱いており、自分に男女の愛の行為をするよう昭吾に強要する。

ママ

近石昭吾の母親。男をとっかえひっかえしているだらしない女で、息子の世話よりも異性関係を優先している。愛人との性行為の最中に部屋に入って来た昭吾に「生むんじゃなかった」と言い放ち、彼に大きなトラウマを与えた。殺人容疑で追われる身となった昭吾に逃走資金を与えるが、別れ際に「おまえなんか息子でもなんでもない」と告げ、母子の関係を完全に絶つ。

山部 (やまべ)

渡ひろみの元婚約者。ボストン・マラソンで2位になった経験を持つ現役のトップランナーだが、女グセが悪く、ひろみに婚約を解消された。ひろみに未練があり、嫉妬から彼女のコーチを受けている近石昭吾を車で追い、谷底に落として殺そうとする。

眼帯の男 (がんたいのおとこ)

合成人の支配に抵抗するレジスタンスのリーダーを務める男性。合成人のことを激しく憎んでおり、女王シグマの暗殺を計画。レジスタンスの殺し屋に生まれ変わった近石昭吾の歯に強力な爆弾を埋め込み、奴隷となって女王に接近するよう彼に命じる。

ビビンバ

山部によく似た男性の合成人で未来世界の日本の首相。女王シグマの秘書となった近石昭吾を危険視し、密かに彼を抹殺。代理として合成人の昭吾を作り出し、秘書として女王にあてがった。だが、それでも人間の昭吾に執着する女王に激怒し、彼女の首を醜い顔にすげ替え、人間たちの住むエリアに追放する。

ミナ

近石昭吾が未来世界で出会った合成人の少女。昭吾に未来の東京を案内し、なぜ人間が絶滅寸前となったかを教える。人間は嫌いではないと語っているが、合成人に劣る愚かな存在とバカにしており、殺してもかまわないと考えている。

合成人の昭吾 (ごうせいじんのしょうご)

近石昭吾の細胞をもとに生み出された合成人。ビビンバの命令で女王シグマの秘書兼ガードマンとして側に仕える。女王シグマに要求されて人間の昭吾のようにふるまうが、合成人のため感情がこもっておらず、彼女を失望させることになる。

場所

無人島 (むじんとう)

パイロットとなった近石昭吾がカメラマンのナオミとともに不時着した島。野生動物だけが暮らす島で肉食草食の関係なく、すべての動物が助け合いながら共同生活を送っている。島の動物を殺してはいけないという暗黙の掟があり、破った者には理由の如何を問わず動物たちによって制裁が加えられる。

その他キーワード

合成人 (ごうせいじん)

西暦2030年の未来世界において人間が科学的に作り出した人造人間。外見は人間そのものだが、生殖行為や排泄の必要がないので性器はない。知能、身体の丈夫さのどちらも生身の人間をはるかに上回っているため人間たちを見下しており、公害の影響で滅亡寸前となった人間に代わって地上を支配。日本も女王シグマや側近ら合成人の統治下にあり、生身の人間は奴隷として扱われている。

書誌情報

アポロの歌 講談社コミッククリエイト〈手塚治虫文庫全集〉

(2010-11-12発行、 978-4063737967)

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