牧神の午後

牧神の午後

20世紀初頭。ロシア・バレエを代表するとともにモダン・バレエの元祖でもある伝説のバレエ・ダンサーヴァーツラフ・ニジンスキーの成功と苦悩を、振付家ミハイル・フォーキンの視点から描く。

正式名称
牧神の午後
ふりがな
ぼくしんのごご
作者
ジャンル
バレエ
レーベル
KADOKAWA
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概要・あらすじ

1909年、パリ、シャトレ座。ロシア・バレエ団のバレエ・マスターであるフォーキンが公演直前の準備に大わらわになっているところから物語は開幕する。この時、フォーキンにとって19歳のニジンスキーは、興行師のディアギレフの愛人という認識でしかなかった。しかし、メイクアップし、舞台に立ったニジンスキーの入神の舞踏にフォーキンは圧倒される。

それ以降、彼はニジンスキーから目を離せなくなるのだが、徐々にその致命的な弱点にも気付いていく。芸術家としての才能と社会的な能力の欠如した幼児性が同居するニジンスキーは成長に従って内面のバランスを崩していく。高まり続ける世間の評価、結婚、ディアギレフとの確執など経て、ついに発狂へと至り、後半生は自分の内側に閉じこもってしまうのだった。

登場人物・キャラクター

ヴァーツラフ・ニジンスキー (ゔぁーつらふにじんすきー)

天才的なバレエ・ダンサー。タタール人の血が混ざっており、東洋的な美貌の持ち主。マリンスキー劇場(マリインスキー劇場)の団員だったが、興行師ディアギレフの寵愛を受け、ロシア・バレエ団のソリストとして、パリ公演で目利きの観客たちを魅了し、世界的スターの座に登り詰める。 天性の身体能力とバレエ・センスで、振り付けを超えた舞踏を行う。しかし、内面は幼児的で、コミュニケーション能力が低く、周囲からは浮いている。マリンスキー劇場の団員だったが1911年に解雇、セルゲイ・ディアギレフのロシアバレエ団に入団。代表作「薔薇の精」を踊る。翌年、ニジンスキーが自ら振り付けた「牧神の午後」を初演するが、エロチックなラストが賛否両論の嵐を呼ぶ。 その後結婚し、ディアギレフと決別。独自のバレエ団を結成するが破綻。一時はディアギレフと和解するも再度決別。やがて静かに発狂し、死去するまで自分の殻に閉じこもることになる。実在の伝説的バレエ・ダンサー、ヴァーツラフ・ニジンスキーがモデル。

セルゲイ・パーブロヴィッチ・ディアギレフ (せるげいぱーぶろゔぃっちでぃあぎれふ)

ロシア・バレエ団のパリ公演を牽引した、やり手の興行師で同性愛者。ニジンスキーの才能を見抜き、抜擢する。ニジンスキーがマリンスキー劇場(マリインスキー劇場)を解雇されたことを機にセルゲイ・ディアギレフのロシアバレエ団を立ち上げ、再びパリ公演を成功させる。 同性の愛人を複数持っていたが、心底愛していたのはニジンスキーだった。「水の上で死ぬ」との予言を恐れ、船を嫌い、ロシア・バレエ団の南米公演には同行しなかった。予言通り、水の都ベニスで死去する。実在の人物、セルゲイ・ディアギレフがモデル。

ミハイル・フォーキン (みはいるふぉーきん)

バレエ・マスター。本編の語り手。ニジンスキーの何かが憑依したかの如き舞踏に衝撃を受けるが、それが社会性を欠いた幼児性の賜物であることも見抜き、いずれ訪れる破滅を予感する。「薔薇の精」の振り付けを担当。後に渡米し、活躍。実在の人物であるミハイル・ミハイロヴィチ・フォーキンがモデル。

ロモラ・ド・ブルスカ (ろもらどぶるすか)

ハンガリーの国民的女優エミリア・マルクスの娘。バレエは素人同然だが、実家の財力に目を付けたディアギレフがロシア・バレエ団に入団させる。南米公演でニジンスキーに接近し、プロポーズされ、結婚する。実在の人物、ロモラ・デ・プルスキがモデル。

ミリアム・ランベルグ (みりあむらんべるぐ)

フォーキンの助手。ニジンスキーに想いを寄せている。フォーキン退団後、ニジンスキーの面倒を見ることになるが、ロモラにニジンスキーを奪われてしまう。

ブロニスラヴァ・ニジンスカヤ (ぶろにすらゔぁにじんすかや)

ニジンスキーの妹。才能あるバレリーナで、兄を追ってロシア・バレエ団に入団する。後に振付師としても活躍。実在の人物、ブロニスラヴァ・ニジンスカがモデル。

レオン・バクスト (れおんばくすと)

画家。ロシア・バレエ団の衣裳、美術担当。「薔薇の精」「牧神の午後」の衣裳、装置も担当。実在の人物、レオン・バクストがモデル。

タマーラ・カルサーヴィナ (たまーらかるさーゔぃな)

フォーキンの元恋人。1909年のパリ公演では、「アルミードの館」のパ・ド・トロワでニジンスキーと共に注目を集める。実在の人物、タマーラ・カルサヴィナがモデル。

アストリュク

パリ、シャトレ座支配人。実在の人物、ガブリエル・アストリュクがモデル。

ボルム

ロシア・バレエ団のバレエ・ダンサー。ニジンスキーのテクニックと人気に嫉妬する。作中ではフルネームでの紹介はないが、実在のダンサー、ロシア出身のアドルフ・ボルムと推測できる。

集団・組織

ロシア・バレエ団 (ろしあ・ばれえだん)

『牧神の午後』の組織。作中では詳細が省かれているが、1909年、マリンスキー劇場やボリショイ劇場のシーズンオフに、ディアギレフがセゾン・リュス(ロシアの季節)企画のために、それぞれの団員を選抜して結成したバレエ団。1910年にもベルリンとパリで公演を行う。

セルゲイ・ディアギレフのロシアバレエ団 (せるげいでぃあぎれふのろしあばれえだん)

『牧神の午後』に登場するバレエ団。1911年、ディアギレフが結成したバレエ団「バレエ・リュス」(ロシア・バレエ)。1929年に解散。

その他キーワード

薔薇の精

『牧神の午後』に登場する作品。フォーキン振り付けによるバレエ作品。1911年、モンテ・カルロ歌劇場にて初演。ニジンスキーの代表的な演目である。音楽はカール・マリア・フォン・ウェーバーの「舞踏への勧誘」のエクトール・ベルリオーズ編曲版が使われた。薔薇の精の相手となる少女役はタマーラ・カルサーヴィナが踊った。

牧神の午後

『牧神の午後』に登場する作品。本作のタイトルに使用されたニジンスキー振り付けによるバレエ作品。1912年のパリ、シャトレ座公演にて初演。初演時の当時としては露骨な性的描写(自慰)が物議を醸し、「ル・フィガロ」紙の非難記事と、それに対するディアギレフ、画家オディオン・ルドン、彫刻家オーギュスト・ロダンの反論記事の同紙掲載により世間の耳目を集めた。 モダン・バレエの原点とされる。音楽はクロード・ドビュッシー作曲の「牧神の午後への前奏曲」より。

書誌情報

牧神の午後 KADOKAWA

(2008-03-22発行、 978-4040660257)

(2008-03-22発行、 978-4840122160)

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