スプリガン

スプリガン

超古代文明の遺産(オーパーツ)を封印するための組織アーカム。その特殊エージェントはスプリガンと呼ばれる。御神苗優はその一員としてオーパーツを狙う敵と戦う。小学館「週刊少年サンデー」1989年10号から連載。

正式名称
スプリガン
ふりがな
すぷりがん
原作者
たかしげ 宙
作画
ジャンル
バトル
関連商品
Amazon 楽天

時代背景

本作『スプリガン』が連載された1989年から1996年はオカルトブームと呼ばれるほど、幽霊や超能力、オーパーツ、UFOといったオカルトが社会的に流行した時代となっている。また「ノストラダムスの大予言」をはじめとする終末論が流行した時代でもあり、当時、取り上げられていた環境問題も絡めて、環境問題によって世界が滅亡に向かうさまを描く作品が多く発表された。本作もその時代の流行を反映し、作中には当時話題となった実在するオーパーツが登場したり、環境問題に警鐘を鳴らす描写がされていたりする。

あらすじ

炎蛇の章

御神苗優は現役高校生でありながら、超古代文明の遺産の悪用を防ぐエージェント「スプリガン」だった。スプリガンが所属する巨大財閥「アーカム」は、天才言語教授の山菱理恵が富士に眠る古代文明の謎を解くカギであると察し、優に護衛を任せる。しかし、すでに彼女は各国から狙われる身となっており、優はなんとか彼女を刺客から守り抜く。米軍は躍起になって理恵の身柄を確保しようと襲撃を掛けるが、そこにKGBに所属する諸刃功一が乱入。諸刃は米軍を惨殺し、事態は三つ巴じみた様相を呈してくる。優は諸刃を退け、文字の解読のために理恵を富士に存在する古代文明の遺跡「火の社」に連れて行くこととなるが、その道中で再びKGBたちの襲撃を受ける。KGBのヴィクトル・ストローフに襲われて混乱する優と理恵であったが、諸刃がKGBを裏切って彼らを殺害し、遺跡の力を独占すべく理恵を連れ去ってしまう。諸刃は富士文明が封印した炎蛇を復活させ、その力で世界を牛耳ろうとしており、遺跡の力を奪取後、最後の障害である優を殺害しようとする。炎蛇の力をあやつる諸刃に追い詰められる優であったが、諸刃の裏切りに一矢報いたヴィクトルの活躍もあり、諸刃を打ち倒し、遺跡の力を封印することに成功する。

ノアの方舟篇

アーカムの考古学研究所は、トルコのアララト山中でノアの方舟を発見する。しかし、ノアの方舟には古代人によって大きな警告がされており、アーカムは即座にこれが危険な代物だと判断する。古代文明の力を求める者たちによって、ノアの方舟の発掘現場はすでに襲撃を受けている様子で、アーカムはノアの方舟を守るため、御神苗優にノアの方舟の封印か破壊を指示する。優たちは米軍の機械化小隊(マシンナーズプラトゥーン)に襲われるものの、応援に駆け付けたスプリガンジャン・ジャックモンドの力もあり、撃退に成功する。だが息つく間もなく、機械化小隊最強のマクドガルが襲来。マクドガルの力に優は敗れ去り、ノアの方舟はマクドガルに掌握される。しかしそこでマクドガルは、人類に憎悪を抱く本性をあらわにし、米国の思惑すら裏切ってノアの方舟の力で人類を粛清しようとする。ノアの方舟は地球上の気候をあやつる大気調整装置で、マクドガルはその力を使って聖書で語られる大洪水伝説を再現し始める。だが優は不屈の意志で立ち上がり、マクドガルに立ち向かい、遂にその野望を挫(くじ)く。マクドガルは力尽きるものの、最期の力を振り絞ってノアの方舟を自壊させ、自らも崩れ去るノアの箱舟と運命を共にするのだった。

帰らずの森篇

御神苗優はインドの探索者が、次々と消息不明となる「帰らずの森」の探索を命じられる。しかし、探索の目的には不明瞭な部分が多く、優たちは命令を出したアーカムに不信感を抱くようになる。それでも命令どおり帰らずの森にたどり着いた優は、偶然、遺跡荒らしの常習犯である染井芳乃と遭遇し、なし崩し的に行動を共にすることとなる。帰らずの森には不老不死の妙薬「神酒」があるとされ、アーカムのライバル組織であるトライデントのエージェントたちもひしめいていた。だが、優は彼らが森の怨霊に殺されていく異常事態を目撃する。森に方向感覚を狂わされ、帰る方法もなくなった優と芳乃は森をさまよい、トライデントのすご腕傭兵・暁巌と出くわす。優と暁は、当初は一触即発な雰囲気となるが、異常事態に休戦を呼びかけて共に森の脱出を目指す。引き続き森の探索を続ける一行は、森の中で息絶えた即身仏を発見。芳乃の口寄せによって、帰らずの森の中枢には、呪いの核となる「呪神樹」が存在することを知る。三人は力を合わせることで呪神樹を破壊し、無事に森から脱出する。つかの間の休戦も終わり、それぞれの居場所に帰還する三人であったが、実は芳乃はこっそり神酒の製法書を確保しており、それを使って一儲けしようと企んでいたのだ。しかし優に看破され、製法書は取り上げられてしまう。それでもあきらめきれない芳乃は、製法書の写真をひそかに撮影していた。だが、それすらも優に見抜かれており、芳乃は優から製法書の解読の結果、今では絶滅した植物が必要と教えられ、苦労は水泡に帰すのだった。

水晶の髑髏

御神苗優アーカムの協力者であり、高名な考古学者であった川原正三が殺害された話を聞き、その調査のために事件のあったアレクサンドリアに飛ぶ。そして優は事件現場で父親を弔う川原鈴子と出会い、行動を共にする。優は父親に大きな反発心を抱く鈴子と、当初は険悪な関係となるが、そこに正三を殺した一派が襲撃を掛けてくる。優は難なく敵を撃退し、敵の正体がナチスの残党が集まって結成した秘密結社「ネオ・ナチス」で、その目的は正三が持っていた「水晶の髑髏」であることを突き止める。優はネオ・ナチスの本拠地に向かい、ネオ・ナチスの戦士、ボー・ブランシェと戦う。強敵のボーをなんとか打ち倒した優であったが、そこに世界一の氣法師・ミラージュが現れ、優は追い詰められつつもすぐさま逃走し、鈴子と合流する。そして邪魔者を退けたネオ・ナチスは水晶の髑髏のテストを行い、ネオ・ナチスは巨大な力を手に入れる。優は水晶の髑髏を使って第三帝国を復活させようとするネオ・ナチスの野望を挫(くじ)くべく、再び水晶の髑髏の奪取に向かう。しかし、水晶の髑髏の真実を目にしたことで、父親の無念を晴らすべく、単独行動をしていた鈴子は敵の捕らわれの身となってしまう。鈴子を人質に取られ、絶体絶命の危機に陥る優であったが、そこでミラージュが反旗を翻して鈴子を救出する。ミラージュの本名は「」で、その正体はネオ・ナチスを潜入調査していたスプリガンで、優の師匠であった。朧の活躍もあり、形成は一気に逆転。優は水晶の髑髏を奪還し、事態は一件落着かと思われたが、朧は潜入調査中にヒトラーが六人写っているという謎の写真を入手しており、ネオ・ナチスの脅威はまだあると震撼するのだった。

混乱の塔

御神苗優は師匠であるが、護衛任務中に護衛対象であるケイトと共に行方不明になった話を聞く。ケイトは聖書で語られる「バベルの塔」と対を成す「リバースバベル」の秘密を握っているとされ、何者かにその身を狙われていた。各国もリバースバベルを狙っており、リバースバベルがあるとされるイラクには、各国の軍隊が集まって一触即発の空気を醸し出していた。このままでは戦争にまで発展しかねないほど状況は悪化したため、アーカムはすぐさま優を応援として差し向けることを決定する。優はイラクで難を逃れていたケイトを見つけ出して合流。彼女を連れてリバースバベルを目指す。ケイトは一族に伝わる「ロッキスの外典」を持っており、その知識でリバースバベルの封印、もしくは破壊を行おうとしていた。しかし、そこに黒魔術師のヘウンリー・バレスが現れ、優を打ち倒してロッキスの外典を奪っていくのだった。リバースバベルは吸い取った生命力を触媒にして、全人類の思想を書き換える装置で、ヘウンリーは各国の軍隊を生贄にして、装置の発動をもくろむ。優はそれを阻止するため、ヘウンリーに再戦を挑む。不屈の意志で新たな力を見せつける優だったが、ヘウンリーを打倒するには一歩届かず、ヘウンリーの不可解な不死身性に敗北する。しかしそこに朧が現れ、ひそかにヘウンリーを観察していた彼は、その不死身のからくりを見抜き、彼を打ち倒すのだった。優はヘウンリーの死とリバースバベルの崩壊を見届けるが、ヘウンリーの怨嗟(えんさ)の叫びを彼の最期の瞬間まで否定することができず、彼の信念に思いを馳せるのだった。

聖杯

アーカムはイギリスのサルベージ船が沈没したドイツの潜水艦・Uボートをサルベージし、偶然「聖杯」を発見したのを察知する。ネオ・ナチスが聖杯を狙っていることを知ったアーカムは、その力の悪用を防ぐためにスプリガンの一人、ティア・フラットにその奪取を命じる。しかし聖杯の在りかに向かったティアは、染井芳乃ボー・ブランシェに遭遇。彼らの起こした騒動に後れを取り、ボーに聖杯を奪われてしまう。ナチスは第二次世界大戦の頃から超古代の遺物を収集しており、その中には強力な兵器も存在していた。またアドルフ・ヒトラーは生前、己の魂を聖杯に封じ込め、ネオ・ナチスは聖杯とクローン技術を使うことでヒトラーを復活させ、古の兵器で第三帝国を再建しようとしていた。聖杯がネオ・ナチスの手に渡ったことでヒトラーは復活してしまうが、その際の余波で雪崩が発生し、ヒトラーは雪崩に巻き込まれて行方不明となる。気が付いたヒトラーは芳乃と出会うものの、その様子はどこかおかしく、聖杯を欲しがっている芳乃に自分の仕事を手伝ってくれれば渡すと約束を交わす。その申し出を受け入れた芳乃は、ヒトラーと行動を共にする。ヒトラーは実は多重人格者で、もう一人の自分が世界に破滅をもたらすのを阻止すべく、遺跡の封印を目指していた。しかしあと一歩のところでネオ・ナチスに捕まり、ヒトラーのもう一人の人格が目覚めてしまうのだった。一方、ティアの失敗の煽りを受け、御神苗優はネオ・ナチスの対応のために駆け付ける。優は芳乃と合流してヒトラーと戦うものの、聖杯と古の兵器「ヴァジュラ」を手にしたヒトラーは圧倒的な力を発揮する。しかしヴァジュラの力は暴走し、ヒトラー自身をも滅ぼし始める。最期に正気に戻ったヒトラーは、その力と運命を共にすることを選び、ネオ・ナチスの野望は今度こそ完全に潰えるのだった。

忘却王国

何もない海の上に、突如現れては消えるという「幽霊島」が現れ、各国がその存在に注視する。アーカムも幽霊島の存在に気づき、その謎の調査のために御神苗優をスティーブ・H・フォスターと共に海に送り出す。道中、強引に染井芳乃も合流し、賑やかさを増す一行であったが、トライデントの妨害に遭う。危機に陥りながらもなんとか幽霊島に到達する優であったが、そこで優は元スプリガンで、かつての優の恩師であるボーマンと会敵する。ボーマンはトライデントの刺客として優の前に立ちふさがり、優はかつての恩師の豹変に戸惑う。ボーマンの巧妙な戦術に敗北する優であったが、そこに芳乃が間もなく島は太平洋もろとも消え去るという、火急の知らせを持ってくる。芳乃は霊媒体質で島の情報を集め、この島が古代人が作った一種のシェルターで、空間転移装置で異空間に避難するためのものだと説明する。しかし装置が完成する前に、古代に起きた異変によって島の人々は死に絶え、不完全なシステムは不安定なまま稼働し続け、その動力源は飽和状態となっていた。その知らせを聞いた優とボーマンは一時休戦し、島の要であるピラミッドを破壊するために爆弾をセットする。しかし、そこでボーマンは優と決着をつけることを選び、爆発の時間がせまる中、二人は最後の師弟対決を始める。激闘の果て、ボーマンは最後の最後まで優を師として導き、優に敗れることで師としての生き方を全うする。そしてボーマンは優に警告と激励をもって送り出すのだった。島の爆発から逃れた優は、ボーマンの残した警告を思い出し、アーカムの在り方に疑問を抱き始める。

不死密売

御神苗優はある日、染井芳乃から自分たちが持ち帰った神酒の製法が流出した疑いがあると教えられる。優はすぐさまその真偽を確かめ、神酒が麻薬シンジゲート「エレクシィ」によってばら撒かれていることを知る。優はさらに神酒のことを調査するため、医療のスペシャリストで、元スプリガンのパーカップ・ラムディに応援を頼む。しかし調査し始めた優のもとに、エレクシィの刺客である源双烈が襲い掛かる。中国武術の達人である双烈はかつてないほどの強敵で、優は成す術もなく敗れてしまう。しかし、パーカップの助けもあり優はなんとか離脱し、パーカップの知恵を借り、エレクシィの本拠地がヒマラヤ山脈にあることをつき止める。エレクシィの作る神酒は服用を止めると死んでしまう不完全な不老不死を与える麻薬で、彼らは神酒で罪なき人々の命を握り、本拠地を守らせていた。優はエレクシィの非道に激怒し、パーカップは己の医者としての力で彼らを救うことを約束する。防衛網を潜り抜けた優は双烈と再戦。を宿敵と定める双烈は、その仲間である優を執拗に痛めつけるが、死の一歩手前まで追い詰められた優は、今まで培った経験が開花し、双烈を打ち倒す。エレクシィの本拠地も破壊し、神酒の騒動を解決した一行であったが、パーカップはエレクシィで事件の黒幕であるエド・クルーガーと遭遇。アーカムの科学者であるエドは神酒の製法書と、その材料であるアンブロディアの種を横流ししていたが、それらはすべてアーカムの腐敗に絶望した行動だった。エドは悲痛な叫びを上げながらパーカップの目の前で自死。一行は神酒の事件を解決したものの、アーカムへの不信感をさらに募らせるのだった。

聖櫃

アーカムでは、ヘンリー・ガーナムが新会長として就任し、その動きを加速させていく。御神苗優はこれまでのアーカムのやり方についに不満が爆発し、仕事のストライキを決行するが、「聖櫃」が発見された話を聞き、その重要性から渋々アーカムからの依頼を引き受ける。聖櫃はすでにトライデントの手に渡っており、彼らの手によって豪華客船を隠れ蓑に運ばれていた。優は船に潜入して聖櫃を奪おうとするが、そこに待ち受けていたのは暁巌と、ネオ・ナチスからトライデントに移籍したボー・ブランシェだった。優は彼らと一進一退の攻防を繰り広げるが、そこで船は未曽有の大嵐に遭遇し、船は大混乱に陥ってしまう。無関係の一般人の危機を前に彼らは一時休戦し、人命救助に奔走する。しかし、聖櫃自体が邪魔者を一掃するためにヘンリーが仕掛けたワナそのものだった。聖櫃がある限り誰も助からないと察した優と暁は、命令違反であるのを承知で聖櫃を海に捨てようとする。だがヘンリーの放った刺客に邪魔をされ、聖櫃は彼らの手によって持ち去られてしまう。優はつかの間の共闘も終わり、暁たちと別れるが、明確に「敵」となりつつあるアーカムに対して敵意をあらわにしていく。

賢者の石

御神苗優はヘンリー・ガーナム率いる現アーカムを明確に敵視するようになるが、そこに一つの凶報が舞い込む。アーカムが各地に保有する賢者の石の採掘場がトライデントの最強部隊「COSMOS」に襲われ始めたのだ。また、敵の中には師匠であるの姿もあり、彼の手によってジャン・ジャックモンドまで討ち取られてしまう。優はジャンの仇を討つため、そして朧の非道を止めるために彼と戦う。激戦を経て、この戦いが朧の最後の教えだと理解した優は、戦いの中で今までの経験を結実させ、朧に匹敵する力を身につける。今までのような火事場のバカ力ではなく、完全な形で己の力を制御した優は、その力と不屈の意志で朧を打ち倒す。そしてジャンも、パーカップ・ラムディの懸命な治療によって奇跡的に復活を果たす。優は朧に送り出されて、COSMOSとの決戦に挑む。優は道中、ジャンと合流し、さらにトライデントから離反した暁巌ボー・ブランシェを紆余曲折の末、仲間に加えて四人で最強の軍隊に戦いを挑む。COSMOSのリーダーである金谷唱は、アーカムによって崩れた世界の軍事バランスを戻すべく、日本の破壊を決意。金谷は地脈を安定させる遺跡「要石」を破壊することで日本に大地震を引き起こして、海に沈めようとするが、優たちの妨害に遭って作戦は失敗に終わる。優たちはなんとか日本を守るのに成功するが、激戦の中、ボーは命を散らしてしまう。優たちは散っていった仲間のためにも、アーカムの暴走を止めることを誓う。

炎蛇再来

ヘンリー・ガーナムは南極にある遺跡を手にすることで、地球の意思である「ガイア」を掌中に収め、星に蓄積された叡智(えいち)と、星そのものの力を手に入れようと企む。それを知った心ある者たちは、アーカムから離反し、アーカムの内部分裂はついに表立った形で表れ始める。各地のスプリガンも現アーカムに反旗を翻し、彼らは南極の遺跡を目指す。御神苗優たちも南極を目指すが、すでに時遅く、南極の遺跡は起動してしまう。しかしヘンリーの予想に反して、ガイアの力は到底制御できるものではなく暴走し、過去に富士山で見た炎蛇が世界各地に現れるという異常事態になってしまう。ヘンリーの手すら離れ、世界は滅亡へと向かっていくが、そんな中でもスプリガンたちはあきらめず、炎蛇を止めるため、それぞれの戦いが始まる。

メディア化

WEB配信アニメ

2021年5月、本作『スプリガン』のWEB配信アニメ版『スプリガン』の制作が発表された。Netflixによる全世界独占配信で、当初は配信開始日は2021年内とされていたが、さらなるクオリティーアップのために配信は延期となった。キャストは、御神苗優を小林千晃、ジャン・ジャックモンドを阿座上洋平、染井芳乃を伊瀬茉莉也が演じている。

劇場版アニメ

1998年、本作『スプリガン』の劇場版アニメ『スプリガン』が全国の映画館で公開された。総監修は大友克洋、アニメーション制作はSTUDIO4℃が務めた。キャストは、御神苗優を森久保祥太郎、ジャン・ジャックモンドを子安武人が演じている。映画のキャッチコピーは「戦って、死ね。」。ストーリーは原作の「ノアの箱舟篇」をメインに「御神苗抹殺計画」を一部絡めた内容となっている。

登場人物・キャラクター

御神苗 優 (おみなえ ゆう)

「スプリガン」の一人で、黒髪の日本人の少年。年齢は登場時点で17歳。若くして裏の世界に名を轟かせるスプリガンに任命された天才エージェントで、類いまれな戦闘能力を持つ。その才能は世界最高の氣法師であり、師匠である朧をして「天性」と呼ばれるほど。一方、アーカムで働いていた両親は幼い頃、目の前で惨殺されたあと、いとこの御神苗秋葉に引き取られるものの、米軍にさらわれてCOSMOSの被験者となる壮絶な過去を送っている。被験者の際に与えられた番号は「No.43」で、6年間にわたる実験で心を殺され、天性の才能から完璧な「殺人機械」となるが、最初の実戦テストで人を殺したのをきっかけに記憶を取り戻す。しかし精神が不安定になって暴走を開始し、当時のCOSMOSを壊滅に追い込んだ。その後、アーカムに保護されて秋葉のもとに帰るものの、長いあいだ後遺症に苦しめられることとなる。強盗に襲われた際に秋葉に大ケガを負わせて錯乱するが、御神苗隆の体を張った説教で徐々に自分を取り戻す。その後、隆の冒険旅行について行くことで世界中の神秘に魅了される。隆から朧に預けられ、彼のもとで修行を積むことで高い格闘能力を身につけたが、過去の経験から「殺人機械」になることを忌避し、無意識のうちに能力を制限している。そのため、追い詰められた際にはその制限が外れ、思わぬ力を発揮する。装備はアーカムから最新の装備を支給されており、オリハルコン製のファイティングナイフとA・Mスーツをメインに使う。しかしアーカムの内部分裂後、朧と戦って戦いを通じて潜在能力を自在に解放する術と、装備に頼らずに戦うことで朧のような身のこなしを習得する。ふだんは平穏な日常を何より大切にしており、小学館第3高校に通っているが、アーカムの仕事をし過ぎて留年しないか不安に思っている。

ジャン・ジャックモンド

「スプリガン」の一人で、金髪を長く伸ばした青年。見た目はふつうの人間だが、超古代文明の作り出した生物兵器「ライカンスロープ」の末裔で、人間離れした身体能力を持つ。生命力も非常に強く、常人なら致命傷になりかねない傷でも生存できる。また、切り札として己の血を見ることで獣人化することができ、この状態になることで身体能力、再生能力を大幅に引き上げることができる。ただし、この状態になると化け物のような見た目となり、正気を失い、本能に従ってただ暴れることしかできないため、同士討ちもある非常に危険なものとなっている。この出自から幼い頃は迫害されるか、その力を利用するかだったが、捨て子だった自分を育ててくれた娼婦のマリアと弟のように思っている少年・マークに囲まれ、満足に暮らしていた。娼婦たちを守る用心棒のような仕事をしていたが、ある日、ライカンスロープの力を欲したラリー・マーカスンにマリアとマークを人質に取られ、彼らに捕まる。ティア・フラットに助けられて施設から脱出するものの、マリアとマークとは死別し、彼らの弔いのために施設を破壊した。もともとティアにスプリガンとしてスカウトされており、助けられたのをきっかけに「自分の体を調べないこと」を条件にスプリガンとなる。御神苗優とはソリが合わないのか、ささいなことでケンカを繰り返している。好戦的で、敵の命を奪うのに忌避しない非情な性格をしていたが、優に感化され、少しずつ戦い方が変わっていく。アーカムの内部分裂では朧と敵対して彼に殺されたが、ライカンスロープの生命力とパーカップ・ラムディの懸命な蘇生で奇跡的に息を吹き返す。朧との戦いで獣人化の弱点を身をもって体験したため、COSMOSとの決戦では最後までその力を封印して戦った。

(おぼろ)

「スプリガン」の一人で、世界最高の氣法師の男性。見た目は黒い髪を肩まで伸ばした若い拳法家だが、中国武術と気功の達人で、御神苗優の師匠にあたる。若く見えるが年齢は不詳で、不老不死である仙人になることを目指している。名前も「朧げな存在」を意味して周囲が勝手に付けた名前で、本名も不明となっている。銃火器で武装した軍隊を相手に素手で突っ込み、涼しい顔で切り抜けるほどの武術の達人で、A・Mスーツの防御すら朧の前では意味をなさない。体一つであらゆる攻撃をかわし、あらゆる防御を無効化するため、その強さは「人間が到達できるレベルの頂上にいる」とも評される。水晶の髑髏を巡る争いでは、「ミラージュ」の名でネオ・ナチスに雇われ、一度は優を打ち倒した。しかし優のピンチに合流し、水晶の髑髏の奪還に協力した。人体の可能性を追求しており、優に対しても装備に頼り過ぎないように助言し、敵対したボー・ブランシェも見込みがあるからと見逃している。アーカムに異変が起きたあともしばらくはスプリガンとして行動していたが、のちにトライデントへと移籍し、優たちの前に敵として立ちふさがる。ジャン・ジャックモンドの命を奪い、圧倒的な力で優に絶望を味あわせるものの、不屈の意志で戦い抜いた優に敗北を認める。戦いを通じて優に対して、師として最後の薫陶を授けており、この戦いで優はその力を大きく伸ばすこととなる。また、ジャンに対してもライカンスロープの生命力なら復活できると踏んでいた。南極遺跡での決戦では優たちが南極で戦っているあいだにアルゼンチン基地に攻め込み、援軍の戦力を全滅させ、優たちを助けている。

ティア・フラット

「スプリガン」の一人で、「魔女」の異名を持つ妙齢の女性。見た目は上品な身なりの淑女だが、異名どおり変幻自在の魔術をあやつる。神出鬼没でミステリアスな雰囲気を漂わせ、物理的な攻撃をことごとく無効化するため、銃弾飛び交う戦場ですら涼しげな顔で渡り歩く。瞬間移動をしたり、敵を異空間に閉じ込めたりと、空間をあやつる能力も持つ。スプリガンの中でも最も謎が多い人物で、ティア・フラットのあやつる「魔術」は万能のようにも思われるが、魔術はきちんと理論体系のある力で、進んだ科学力であれば解明できるものの、不可能なことも多い。南極遺跡の決戦ではアーカムに反旗を翻した科学者たちをサポートし、本社の地下遺跡金庫を襲撃して占拠する。また、本社でヘンリー・ガーナムと直接対峙している。その正体はアーカムの地下遺跡金庫の番人にして、初代会長「T・F・アーカム」その人。伝説の魔導士・マーリンの弟子で、マーリンの意志を継いでアーカムを結成した。

山本 (やまもと)

アーカムの日本支部所長で、スプリガンの管理責任者を務める男性。冴えない中年サラリーマンのような風体をしているが、穏やかな人柄で、御神苗優からも慕われている。ヘンリー・ガーナムがアーカムの新会長になって以降、アーカムに不信感を募らせていく。実はふだんの風体からは想像できないが元スプリガンで、天才的な射撃能力と乗り物の操縦技術を誇る。翻意を明らかにして以降も、中途半端な実力者では返り討ちに遭うだけだとラリー・マーカスンに判断され、刺客を送られなかったほどの猛者。南極遺跡での決戦ではその超絶的な操縦テクニックでヘリコプターを操縦し、炎蛇の群れが乱れる空をくぐり抜けて、無事に科学者たちを遺跡に送り届けている。

山菱 理恵 (やまびし りえ)

アメリカのカーネル大学で、教授を務める若い女性。年齢は16歳。専攻は言語学で、その筋では「現代のシャンポリオン」と呼ばれている若き天才言語学者。知識量が広いだけではなく、天才的な閃きを持ち、それらを駆使して複雑怪奇な古代文字を解読していく。超古代文明のことについては知らないが、その類いまれな才能は各組織から注目されており、超古代文明の謎を解き明かしたい者たちの思惑で徐々に裏世界の事情に巻き込まれていく。アーカムの依頼で10年ぶりに日本に里帰りして仕事を引き受けるが、そこで各国の諜報員に襲われる。アーカムから護衛として遣わされた御神苗優に助けられ、以降は彼と行動を共にする。実は優とは日本にいた頃の幼なじみ。両親と死別し、日本では施設で孤立しがちだったが、同じ施設にいた優と仲よくなり、元気づけられる。アメリカの親戚に引き取られてからもずっと優のことを気に掛けており、再会を楽しみにしていた。しかし裏世界に身をやつした優は、その姿を山菱理恵に知らせたくなかったため、正体を隠して接していた。富士の樹海で諸刃功一にさらわれ、火の社の解読を強要される。しかし芯の強い女性で、解読して諸刃に殺されそうになるものの、諸刃を出し抜いて生き残っている。事件解決後に優の正体に気づき、再会を喜ぶ。しかし、教授としての仕事が立て込んでいたため、すぐアメリカに帰国した。その後もアーカムからの依頼を引き受けては、マッパムンディスの解読を行っている。マッパムンディスの解読に深くかかわったため、アーカムの内部分裂では反旗を翻した科学者たちと行動を共にし、暴走した炎蛇を止めるために南極遺跡に向かう。

染井 芳乃 (そめい よしの)

遺跡荒らしを生業とする少女。小柄な体型で見た目は子供っぽいが、遺跡荒らしの常習犯で完全に破壊された遺跡は10以上にのぼり、さらに多くの数の遺跡を機能不全に陥らせている。そのため「遺跡荒らしの芳乃」の悪名で呼ばれており、その筋では要注意人物としてマークされている。楽観的な性格で無責任なところがある。遺跡を荒らし回っているが、手に負えなくなると真っ先に逃げ出し、周囲に責任を押し付けている。御神苗優とはよく遺跡で出くわし、彼に被害をもたらすことが多いため、優からはあからさまに苦手意識を持たれている。基本的に遺跡荒らしをするのはお金のためで、儲けにならない遺跡であった場合はすぐに手を引く。盗賊としての技能は卓越しており、さらにそれに加えて霊媒体質で、人知を超えた存在と交信したり、死者の霊を呼び寄せたりすることができる。厄介なトラブルメイカーであるが、同業者が一般人を巻き込もうとした際には妨害したり、優に対してもサポートしたりするため、極悪非道な人間というわけではない。表向きの立場は有名なお嬢様学校である私立飯床野女子高等学校に通う女子高校生で、病弱な良家のお嬢様と称して学校に通っている。

メイゼル

アーカムに所属する科学者の老齢な男性。眼鏡をかけており、ひょうひょうとしているが、オリハルコン研究の第一人者。さまざまな新装備を御神苗優に手渡しているため、彼からは「オリハルコンを扱わせたら天下一品」と評されている。南極遺跡での決戦ではティア・フラットと連絡を取り合い、反旗を翻した科学者たちをサポートした。また、メイゼル本人も暴走した炎蛇を止めるため、山菱理恵たちと共に南極遺跡に向かう。

ボー・ブランシェ

秘密結社「ネオ・ナチス」に所属する男性。階級は少尉。屈強な大男で、ドーピングによって肉体改造しており、超人的な身体能力を発揮する。選民思想が強いが、同時に選ばれた強い者が弱い者を守るべきという真っすぐな思いを抱く熱血漢。言動が暑苦しく、どこかズレてコメディリリーフな感じがするため、御神苗優からは「お笑い芸人」扱いされていた。ネオ・ナチス復権のため、水晶の髑髏を巡って優と争うが、その際も人質を取るなど卑劣なマネをするハンス・シュナイダーに激昂していた。優をライバル視しているが、水晶の髑髏の争いでは朧に優との戦いを阻まれ、完敗する。その際に見込みがあるからと朧に見逃され、朧と優への再戦を誓う。朧の言に従って薬物によるドーピングは止め、鍛錬を重ねることでさらにスピードに磨きをかける。聖杯を巡る戦いではティア・フラットを出し抜いて聖杯を奪うが、復活したアドルフ・ヒトラーによってネオ・ナチスの歴史に幕を引かれる。その後は優との決着をつけるため、ネオ・ナチスを離れてトライデントに身を寄せる。聖櫃を巡る戦いでは、優と敵対するが、未曽有のトラブルを前に彼と一時停戦して人命救助に奔走する。女子供の身を守る優しさを見せたことで、優からも驚かれたが、攻撃から子供を守ったために負傷する。トライデントでは暁巌とタッグを組むことが多く、勝手に「相棒」認定して、彼がトライデントを離反する際に強引について行った。COSMOSとの戦いでは、無辜(むこ)の民を救うべく優の援軍に駆け付ける。暁が敵の爆弾を解体しているあいだ、たった一人で敵のCOSMOSを足止めした。壮絶な死闘を制して暁を守り抜くが、暁が駆け付けた際には満身創痍で、程なくして彼の目の前で息を引き取った。熱望した優との決着は結局つけずじまいで、その死に優も大きなショックを受けた。

笹原 初穂

小学館第3高校に通う女子。御神苗優のクラスメイトで、考古学マニアである笹原耕一の娘。笹原香穂は双子の妹で、妹とは正反対の活発で明るい性格をしている。黒い髪をショートカットに整えたスポーツ少女で、空手を習っている。学校では不まじめな態度が目立つ優とは仲が悪く、よくケンカをしている。父親が闇ルートで手に入れたパレンケの仮面を巡る争いに巻き込まれ、その事件で優の正体を知る。妹が心配で優に無理を言ってついて行く。若い女性ながら胆が据わっており、人質となった際も自ら崖から飛び降りて優を助けようとするほど、土壇場での思いっきりがいい。崖から落ちた際にはアイアンワームに助けられて事なきを得るものの、自分の身を顧みない行動を優から叱られながらも、旅の中で成長していく。テスカポリトカとの戦いでは勇気を振り絞って尽力し、勝利に貢献した。事件解決後は、優に好意を抱いているが、妹も優に好意を抱いているのを知っているために表に出さないようにしている。学校内では数少ない優の裏の事情を知る理解者で、修学旅行で事件に巻き込まれた際も、優のフォローに努めている。真田柊が好奇心で優の正体を暴き、彼を責め立てた際には激怒してまで優をかばい、柊の改心をうながしている。

暁巌

トライデントに傭兵として雇われている青年で、たくましい体格に恵まれている。野性味のある風貌をした戦士で、戦闘ではトライデント製のA・Mスーツを着用している。類いまれな戦闘技術に各種特殊技能を持ち、どんな過酷な戦場からも生還するため「生還者」の異名でも呼ばれる。御神苗優とは戦場で何度も敵として対決しているが、合理的な判断力を持つ人物でもあるため、時には利害の一致から優と共闘している。聖櫃を巡る戦いでは、聖櫃のもたらす災害によって全滅しかかったために優と休戦し、独断で聖櫃の放棄を決める。しかしその後、トライデントにその責任を取らされる形となって離反する。聖櫃の戦いでボー・ブランシェと組んで仕事をしたが、その際に勝手に「相棒」認定される。トライデントを離反しても、ボーが相棒として勝手についてきたため、行動を共にするようになる。COSMOSとの戦いでは、自分を駒のように扱い、利用しようとしたラリー・マーカスンの鼻を明かすために優の援護をする。日本を沈没させるための爆弾の解体を請け負い、みごと爆弾の無力化に成功するが、その直後にボーの死を看取る。最後まで暑苦しい奴だったと苦言を呈しつつ、ボーの最期を「相棒」として看取った。南極遺跡の決戦ではボーの死に報いるために優に手を貸した。

御神苗 隆 (おみなえ たかし)

御神苗優の叔父で、御神苗秋葉の父親。幼少時に孤児となった優を引き取って育てたため、優の義父となり、彼からは「おやじ」として扱われている。職業は「冒険家」を自称し、「神秘」を楽しむため、世界各地の秘境を渡り歩いている。優を引き取ったものの、冒険家稼業に精を出しているためほとんど家は不在にしている。しかし優のことを気に掛けており、優がCOSMOSの実験体となって戻ってきたあと、錯乱した彼を叩(たた)きのめして、業を受け入れて前を向くことの大切さを説いた。その後、優を連れ出して冒険家稼業を行うことで、優を立ち直らせ、現在の人格形成に多大な影響を与えている。純粋にロマンを追い求める冒険家で、文明の滅びすら自然の流れに任せるべきだと考えており、主義主張の違いからアーカムには属していない。このため場合によってはアーカムにすら敵対することがあり、アーカムがインディアンの儀式阻止に動いた際には優とも戦っている。一方で、優の性格を熟知しているため、優がスプリガンの仕事で無理をしているのを見抜き、その安否を気にしていた。プロの軍人やスプリガンですら手こずるほどのトラップ使いの達人で、身のこなしもかなりのもの。

御神苗 秋葉 (おみなえ あきは)

御神苗隆の娘で、御神苗優のいとこ。アメリカで暮らしており、幼少時に孤児となった優を引き取って育てた。父親は冒険家稼業で家を不在にすることが多く、母親は優が来るしばらく前に亡くなったため、実質的に子供だった優の面倒を一人で見ていた。優にとって姉のような存在で、1年間は優の面倒を見ていたが、ある日、優は忽然(こつぜん)とさらわれて行方不明となる。6年後、COSMOSの実験体となった優は、紆余(うよ)曲折の末に戻ってきたが、それまでの経験から人形のように無機質な存在と成り果てていた。懸命に優のリハビリに付き合っていたが、強盗に襲われた際に優が錯乱してしまう。その時に優によってケガを負わされてしまうが、隆が優を打ちのめして説教したのが結果的にショック療法となり、優を立ち直せるきっかけとなった。それからは優と家族の絆(きずな)を育むこととなり、今も姉として優を導いている。芯の強い女性で、最低限の自衛技術を身につけているため、荒事にも慣れている。現在はアーカムに勤務しており、本社の秘書兼遺跡統括役として働いている。優にとって公私共に頭の上がらない相手。のちにヘンリー・ガーナムが新会長となった際には彼の秘書を務めるも、優のことを心配して彼にヘンリーの動向をまとめた資料を手渡している。

パーカップ・ラムディ

医者を務める高齢の男性。髪もヒゲも白くなっている。かくしゃくとした言動で、医者として精力的に働いている。元スプリガンの一人で、「神の手を持つ男」の異名を持つスゴ腕の暗殺者。メスを使わずに素手で対象の肉体に手を突っ込み、傷跡もなく手術を行う特殊能力を持つ。これによって患者の患部を血の一滴も流さず治療したり、逆に敵対者の臓器を素手で抜き取って殺したりと、活殺自在の活躍をしている。スプリガン引退後は、医療を満足に受けられない辺境地域の住人たちを相手に医療行為を行っており、現地の住人たちから慕われている。特殊能力以外にも類まれな格闘能力と判断能力を持つ戦闘のプロで、現役を退いてもその力は健在。神酒の事件では、その医療の知識を求められ、御神苗優に助力。エレクシィの本拠地でエド・クルーガーと遭遇し、彼の豹変っぷりと末路を見て、アーカムの異変を察知する。賢者の石採掘場が襲われた際には、朧に殺されたジャン・ジャックモンドの死体を回収し、懸命な治療の末に蘇生(そせい)させることに成功する。しかしその際、ジャンの死体を実験材料としてしか見ていないアーカムの科学者たちの姿を見て、一層、アーカムへの不信感を募らせる。その後、暴走するアーカムに対して警戒感を強めており、南極遺跡での決戦ではアーカムに反旗を翻した者たちに合流し、南極遺跡にメイゼルたちを送り届けている。

スティーブ・H・フォスター

アーカムの海洋開発部で特別顧問を務める男性。ヒゲと髪を長く伸ばした老爺(ろうや)だが、老いを感じさせない精力的な動きを見せている。海のことなら右に出る者がいないエキスパートであるため、アーカム内では「船長」の通称でも呼ばれている。豪放磊落(らいらく)な性格で、思い切った行動をする御神苗優のことを気に入っており、自分の愛船「ロシナンテ」の後継者と勝手に認定している。アーカムの前会長とは個人的な友人関係で、アーカムでも古参に入る人物であるため発言力が強く、南極遺跡の決戦ではロシナンテの乗組員たちと共にアーカムに反旗を翻し、学者たちを南極に送り込むために尽力した。

エヴァ・マクマホン

アーカムに所属する考古学者の女性。明るくざっくばらんな性格で、御神苗優の考古学における教師を務めた。優からもその人柄を気に入られており、仲がいい。マリ共和国のサハラ砂漠で遺跡の発掘を行っていた際、護衛に訪れた優と再会する。ノンモの舟強奪にきたジャック・ザ・リッパーとトニー・ベネットの襲撃に巻き込まれるも、優と協力して浮上したノンモの舟を海底に沈めた。アーカムの最近の動向には疑問を抱き、襲撃事件によってさらに疑念を深くする。優の不屈の姿に勇気をもらい、アーカムの異変に研究者として立ち向かうことを誓う。山菱理恵の解読したマッパムンディスの一部にも目を通しており、いち早くヘンリー・ガーナムが解読した資料を持ち出したのに気づく。その後は良識派の研究者と共にアーカムに反旗を翻し、炎蛇の暴走を止めるべく南極遺跡に向かう。

ジミー・マックス

アーカムの保有するA級エージェント部隊「マックス隊」の隊長を務める中年の男性。気っぷのいい性格で、黒髪で黒ヒゲを生やしている。御神苗隆とは知り合いで、御神苗優のこともなにかと気に掛けている。スプリガンのように突出した特殊能力はないが、隊員の個々の能力が平均して高く、ジミー・マックスの指揮能力が卓越しているため、チームとしての総合力は非常に高い。スプリガンが安心して戦えるのも、マックス隊が偵察や後方支援を行っているからで、隊の実力はアーカム内でも高く評価されている。マックス隊は任務遂行のプロフェッショナルで構成されており、YAMAとの戦いでは隊員全員が決死の思いで援護し、優とジミー・マックスをYAMAのもとに送り出し、YAMAの試練を突破した。事件解決後はアーカムの保有するインド北部の賢者の石の採掘場の警備に当たっていたが、COSMOSの襲撃によってマックス隊は全滅。マックス自身は優へのメッセンジャーとしてあえて生かされて帰されるも、悲惨な拷問を受け、生きている方が地獄といわれるほど再起不能の重傷を負う。それでも優のことを気に掛けており、重症の身を押してCOSMOSのことを警告した。

笹原 香穂 (ささはら かがほ)

小学館第3高校に通う女子。御神苗優のクラスメイトで、考古学マニアである笹原耕一の娘。笹原初穂は双子の姉で、姉とは正反対の内気でおとなしい性格をしている。黒髪をストレートロングに伸ばした美少女で、健気な姿から校内でも人気がある。まじめな性格からクラスの学級委員長を務めているが、クラスメイトの優が問題児であるため、教師から代わりに怒られているらしく、それを見かねた姉が優とケンカするという日常的に繰り返している。実はひそかに優に好意を寄せており、姉にはその思いを見透かされている。偶然、父親が手に入れたパレンケの仮面を手にしたことで、仮面に宿るケツアルクアトルに肉体を乗っ取られてしまう。乗っ取られこそしたもののケツアルクアトルの思いには共感しており、ケツアルクアトルから解放されたあとも、純粋に彼を故郷に送り返しあげたいと願っている。事件に深くかかわったため、優の正体を知り、学校内では数少ない優の裏の事情を知る理解者となる。

笹原 耕一 (ささはら こういち)

笹原初穂と笹原香穂の父親。資産家のうえ、度を越した考古学マニアで、金に物を言わせて古代の遺物を集めている。裏世界の事情には疎く、超古代文明の遺産については無知。純粋にコレクション目的で集めていたが、偶然、超古代文明の遺産の一つである「パレンケの仮面」と、同じ遺跡から発掘された10個の指輪を手に入れる。闇ルートを利用してパレンケの仮面を手に入れたらしく、アーカムからパレンケの仮面が危険なものと警告されていたにもかかわらず、後ろめたい思いから知らぬ存ぜぬを貫いていた。しかし、パレンケの仮面を巡る争いに自分だけではなく、娘たちまで巻き込んだことで目を覚まし、御神苗優に頭を下げて香穂を連れ戻すことをお願いする。テスカポリトカの1度目の襲来で重傷を負い、入院していたが、その後は肉体を失ったテスカポリトカに乗っ取られ、優たちの前に敵として立ちはだかる。優とケツアルクアトルの活躍によってテスカポリトカから解放され、正気を取り戻す。乗っ取られているあいだの記憶はなく、意識を取り戻した際にはひどくうろたえていた。

真田 柊 (さなだ ひいらぎ)

小学館第3高校に通う女子。御神苗優のクラスメイト。好奇心旺盛な性格で、観察力が鋭く、頭の回転も速い。しかし配慮に欠ける部分があり、優の異質さを見抜き、好奇心の赴くまま無遠慮にそれを暴き立てようとする。修学旅行で優に近づき、彼の正体を確かめようとするが、その好奇心がわざわいして巨大な賢者の石を巡る騒動に巻き込まれる。中野建造に人質としてさらわれるが、優に助けられ事なきを得る。しかし、今まで暴力とは無縁の世界で生きてきたため、目の前で起こった異常事態を拒絶し、優にも心ない言葉を投げかけてしまう。優は反論しなかったが、その態度を見かねた笹原初穂に逆に糾弾され、改心する。

ケイト

イタリアのロッキスにある古い教会のシスター。信心深い性格をしている。教会の司教の孫娘で、リバースバベルの秘密を握る一族の末裔(まつえい)。死の間際の司教から一族の秘密が記された「ロッキスの外典」を授かり、その秘密を探っているヘウンリー・バレスから狙われている。リバースバベルの封印を自らの使命と考えており、アーカムに護衛を依頼する。当初は護衛としてやって来た朧と行動を共にしていたが、ヘウンリーによって朧が闇の世界に封印され、離れ離れとなってしまう。その後、なんとかヘウンリーから逃げ切り、応援にやって来た御神苗優と合流し、共にリバースバベルを目指す。敬虔なクリスチャンで、神を信じるあまり思考停止してしまうことがある。しかし、優との交流でさまざまな価値観があると学び、視野が広くなっていく。実はケイトの先祖は、当時迫害を受けていたキリスト教を盛り返すため、リバースバベルの力を使って勢力図を大きく書き換えており、ロッキスの外典にはその罪の詳細が記されている。先祖の罪と邪悪な所業を繰り返すヘウンリーにも、かつては神を信じていた過去があったことを知り、神ではなく己の意思で正しい道を選んで歩むことを決意する。リバースバベルをロッキスの外典を用いて破壊。その後は、破壊されてもいまだに終わらないリバースバベルを巡る争いを身を呈して制止し、己の本分を果たすべく邁進している。

川原 鈴子 (かわはら すずこ)

高校で教師を務める若い日本人の女性。考古学界では権威のある川原正三の娘で、かつては父親を尊敬していたが、アーカムにかかわるようになって人の変わった父親を軽蔑している。生真面目な性格のため、超古代文明の遺産をオカルトと一蹴し、父親も怪しい絵空事に取りつかれていると思っている。父親が母親の死に目にも現れなかったため、完全に父親のことを見限っており、父親の死に場所に花束をお供えに行って、御神苗優と会っているが、優がアーカムの人間と知ったため態度は非常に冷淡だった。優から父親の事故の真相を教えてもらうも、当初は空想と一蹴する。しかし、直後にネオ・ナチスの刺客の襲撃に巻き込まれ、父親がかかわった水晶の髑髏(どくろ)を巡る事件にかかわっていく。各組織が血まなこになる水晶の髑髏の価値に、当初は懐疑的だったが、ネオ・ナトスの実験で水晶の髑髏が神秘的な力を発揮しているのを見て、父親の真意を知って認識を改める。以降は父親の遺志を継いで自ら水晶の髑髏の奪還に動くが、ハンス・シュナイダーに人質として捕まってしまう。朧に助けられ、その後は優と共に水晶の髑髏を奪還した。のちに父親のあとを継いで考古学の道を進むことを決意するが、山本に説得され、小学館第3高校に歴史の講師として働くことで、アーカムの仕事にかかわるようになる。

ケツアルクアトル

アステカ神話で文化の神として崇(あが)められる神。紀元前3000年頃に、とある星の宇宙人が母星が死に瀕(ひん)したため地球に移住する。その後、宇宙人たちは現地の原住民に知恵と文明を与えたため、神として崇められた。ケツアルクアトルはその宇宙人たちの子孫で、およそ2000年ほど前の人物だったとされる。当時、地球人と共に都市造りをしていたケツアルクアトルは、異邦人の生き残りであったテスカポリトカを見つけ、彼を育てた。当初はテスカポリトカとは友好的な関係だったが、神として崇められたテスカポリトカは次第に増長し、すべてを自らの支配下に置こうと世界征服を始める。ケツアルクアトルたち宇宙人の子孫は、テスカポリトカの横暴を止めるため、地球人たちと協力して打倒し、彼を魂の塚に封じた。テスカポリトカとの戦いで同族の宇宙人たちは全滅し、自らも瀕死の重傷を負ったため、自らの意思をヒスイ製の仮面「パレンケの仮面」に転写し、ケイ素系生物へと転生する。肉体を失っているが故郷に強く焦がれており、もともと地球人が自立できるようになったら故郷に帰り、再建に努めるつもりだったのもあり、今はせめて死ぬ前に故郷を一目見るのを夢見ている。パレンケの仮面は発掘後、盗難に遭い長いあいだ紛失していたが、闇ルートを渡り歩き笹原耕一の手に渡る。同じく現代に復活したテスカポリトカの襲来に伴い、笹原香穂の体を借りて復活する。耕一が収集していた、同じ遺跡に埋葬されていた10個の指輪を使うことで、さまざまな超常現象を引き起こすことが可能。誠実な性格なことから、戦いに無関係の人を巻き込むことを申し訳なく思っており、体を乗っ取った香穂にもきちんと謝罪している。そのため香穂からも信頼され、その願いを叶(かな)えたいと思われている。また意外にも洒落(しゃれ)を解するなど人間味があり、御神苗優からは下手な人間よりよっぽど人道主義者と評されている。テスカポリトカとの決戦では優と共闘し、テスカポリトカを今度こそ完全に打ち倒す。その後は優たちに感謝の言葉を残しながら、残り少ない命を使って故郷の星に帰って行った。

マリア・クレメンティ

イギリス軍に所属する女性。階級は中佐。MIT(マサチューセッツ大学)を首席で卒業した。20歳で博士号を取得した才媛で、機械工学の分野では超天才と呼ばれている。オーパーツの軍事転用を上層部から任されており、その一環でバーサーカーを接収し、その起動実験を行う。しかし、実はアーカムがバーサーカーの暴走を警告していたにもかかわらず、上層部はそれを握りつぶしていたため、バーサーカーの暴走に巻き込まれてしまう。辛うじて実験場から脱出し、バーサーカーの封印に駆け付けた御神苗優と合流。彼から事情を聞いて一般人の命を守るため、共闘してバーサーカーの無力化を行う。優のことは当初は敵視していたが、その懸命な姿を見て心動かされ、感化される。一方、事件解決後は暴走の情報を自分に隠蔽して事件を引き起こし、さらに事件そのものを闇に葬った上層部には愛想が尽き、そのまま軍を離脱した。

ラリー・マーカスン

トライデントの本部長を務める中年男性。上品な身なりでヒゲを生やしている。指揮官としては非常に優秀で、飄々(ひょうひょう)とした態度で戦場を自分の思いどおりにコントロールし、部下たちが負けたとしても最低限の目標を達成する鋭い戦略眼を持つ。暁巌とはかつての傭兵(ようへい)仲間。現在も暁とは上司部下の関係で、お互いにサポートし合っている。また指揮官になってからは、ラリー・マーカスン自身が戦場に出ることは滅多にないが、逃げに徹すればジャン・ジャックモンドからも逃げおおせるほど高い身体能力を持つ。かつてライカンスロープの細胞を狙って暗躍していたことがあり、その際にジャンの家族を人質にして殺しているため、彼からは仇敵(きゅうてき)として狙われている。のちにヘンリー・ガーナムの暗躍によってトライデントのトップの一角である高隅財閥がアーカムに与した際には、アーカムとの交渉の代理人に選ばれる。その後はヘンリーの側近として、彼の意向を汲(く)んで行動している。煙に巻く態度で本心を見せないが、暁はラリーを組織を動かす魅力に取りつかれ、トライデントやアーカムを利用して裏世界そのものをボードゲームのようにあやつるのを目論んでいると考えている。超古代文明の遺産にもかなり博識で、国内の破壊活動を見て即座にトライデントの高隅財閥への報復行動だと分析し、日本沈没作戦の概要を見抜いている。かつて敵であったスプリガンの力すら利用して、日本沈没作戦を阻止するも、暁からはそのやり方を嫌悪され、南極遺跡では暁と対峙して彼に殴り倒される。あまりに無様に殴り倒されたため、ジャンからも復讐する気が失せたと見逃されたが、実は暁はCOSMOSに襲われた際にラリー・マーカスンの救援に助けられており、その貸しを返すためあえて殴り倒し、ジャンの気をそらした。

諸刃 功一 (もろは こういち)

KGBに所属する男性エージェント。目つきが鋭い黒髪の日本人の青年で、スーツを身にまとっている。風を自在にまとう「風獣」と呼ぶ力をあやつり、その力でかまいたちを作って敵を切り刻む攻撃を得意とする。また、オリハルコンと同系の性質を持つヒヒイロカネ製の剣を持っており、その鋭さはA・Mスーツをたやすく切り裂くほど。非常に残忍な性格で、風獣の力を使って他組織のエージェントたちを惨殺している。「火の社」の力を求めていて、KGBと共に暗躍していたが、実は諸刃家には火の社の言い伝えがあり、その力を独占すべくKGBを裏切って同行していたKGBの軍人を惨殺する。その後、山菱理恵を連れ去り、彼女から情報を聞き出して火の社の力である炎蛇を復活させる。炎蛇、風獣、ヒヒイロカネ製の剣の力で、御神苗優を圧倒するが、ヴィクトル・ストローフの特攻と優の機転でヒヒイロカネ製の剣を折られ、その後は自らの出した炎蛇に飲み込まれて死亡した。

ヴィクトル・ストローフ

KGBのスペツナズ特別独立小隊の隊長を務める男性。たくましい体格の大男で、DNA操作と脳手術で肉体を改造されており、人間離れした回復能力を持つ。その恵まれた体格からくるパワーと不死身じみたタフネスさで相手を圧倒する戦い方が得意で、防御を顧みず格闘戦を仕掛けて御神苗優を苦戦させる。しかし、優に頭を地面に叩(たた)きつけられ気絶し、回復能力も気絶にまでは対応しておらず敗北する。祖国であるソ連の疲弊と、勢いの衰えない米国の発展に危機感を抱き、一つの強国による軍事バランスの崩壊を憂えている。そのため「火の社」の力を求めており、その奪取のため山菱理恵をさらおうとしていた。しかし、諸刃功一の裏切りによって部下は全滅する。火の社を求めていたが、それは決して私欲ではなく、祖国を守って世界の軍事バランスを守ろうとする強い信念があった。そのため、独裁者にとなって世界の支配しようとする諸刃の野望を挫くべく、諸刃に捨て身の特攻をした。諸刃による反撃によって死亡したが、その行動は結果的に優を助け、諸刃から世界を守る大きなきっかけとなる。

エド・クルーガー

アーカムに所属する男性科学者。眼鏡をかけている。神酒の製造書の写しと、神酒の材料である「アンブロディア」の種をアーカムから盗み出した。その後、麻薬シンジケート「エレクシィ」と結託し、神酒を使って荒稼ぎしていた。パーカップ・ラムディとはアーカム時代の知り合い同士で、パーカップによれば本来は責任感が強く、アーカム研究所で主任を務めるほど優秀な人物。しかしアーカムが腐敗していく中、徐々に正気を失って半ば自暴自棄になって一連の事件を巻き起こす。エド・クルーガー自身の末路も覚悟のうえで、最期は自分のもとにたどり着いたパーカップの目の前で、怨嗟(えんさ)の言葉を吐きながら自殺した。

テスカポリトカ

アステカ神話で死と戦いの神とされた存在。自らの霊体を他者に乗り移らせる術を編み出し、朽ちた肉体を捨てて他者の肉体を次々と乗っ取っていく。老魔術師の肉体を乗っ取り現代に復活。怨敵であるケツアルクアトルを打ち倒すため、パレンケの仮面を付け狙う。目的のためなら手段を選ばない残忍な性格で、御神苗優のクラスメイトである笹原香穂の家を襲う。その後、優に追い詰められた際に自殺して肉体を捨て、香穂の父親である笹原耕一の肉体を乗っ取り、優たちを心理的に追い詰める。元人間で、ケツアルクアトルが都市作りをしていた際に、遠い異国から流れ着いた異邦人の生き残り。当時子供だったテスカポリトカはケツアルクアトルに保護され、彼から技術と知識を学んだことで、原住民から神として崇められるほどの才能を発揮するようになる。しかしその本性は人間を完全に見下しており、次第に民衆を奴隷と断じ、民衆に対して苛烈な弾圧を取り、世界征服を目指すようになる。ケツアルクアトルに倒され「魂の塚」に封印されていた。現代でもその邪悪な本性はみじんも衰えておらず、人を動物に変貌させる魔術で、手当たり次第に人を人豹(ワージャガー)に変貌させ自らの手駒にしていた。ふつうの民間人や、正々堂々とした戦いを求めたアイアンアームすら人豹にしていたため、優を激怒させている。数多の魔術をあやつり優を苦しめたが、優とケツアルクアトルの奮闘によって魂を肉体からはがされ、魂をマーラの銀鏡に封印された。

アイアンアーム

テスカポリトカに用心棒として雇われた男性。元「機械化小隊」に所属していた軍人で、本名は「ダッチ・メイトリスク」。階級は少佐。両腕が機械化されており、その力を使ってベトナム戦争を戦い抜いた。しかし戦いに取りつかれ、さらなる戦いを求めて米軍を脱走し、各地を渡り歩いている。機械化された右腕には高熱を発する「ヒート・クラッシャー・システム」、左腕には大岩をも砕く振動力を発生する「高震動粉砕システム」が搭載され、その戦闘能力は非常に高い。スリルを求める戦闘狂で、強敵との戦いを何より楽しみとするが、逆に言えばだまし討ちなどを嫌い、強敵と認めた相手とは正々堂々とした戦いを好む。テスカポリトカの命令で御神苗優と戦い、彼を己が倒すべき強敵と認める。テスカポリトカが笹原初穂を人質にした際には優をいたぶるが、卑劣な手段で無抵抗となった優に苛立(いらだ)ちを感じ、初穂が自ら崖から飛び降りたあとは、テスカポリトカを裏切り優と初穂を助けている。優たちが人豹の大軍に襲われ危機に陥った際も、手を貸して笹原香穂を助けている。邪魔者がいなくなったあと、正々堂々と優と戦う。今までにない強敵との戦いに心から満足していたが、乱入したテスカポリトカの魔術によって人豹に変貌させられ、無理やり優と戦わされる。優に打ち倒されることで人の身に戻るが、すでに致命傷を負っており、末期に優の健闘を称えて息を引き取った。

ファットマン

米軍の極秘部隊「機械化小隊」に所属する男性。獰猛(どうもう)な顔つきをした巨漢で、見た目どおりの怪力を発揮する。戦場では巨大なガトリングガンを武器に暴れ回る。全身をオリハルコン製の防護服で身に包んでおり、通常の火器では傷一つつけることができない防御力を誇る。その防御力と火力を活かして正面から突破する戦法が得意で、マクドガルに命じられノアの方舟の発掘現場を襲撃し、リトルボーイと共に多数のアーカム職員を殺害した。御神苗優に敗北し、ジャン・ジャックモンドにトドメを刺されて死亡した。

リトルボーイ

米軍の極秘部隊「機械化小隊」に所属する男性。残忍な顔つきをした小柄な体型の軍人で、身のこなしが身軽ですばやい。左腕に硬質ワイヤーカッターを仕込んでおり、その身のこなしを利用した暗殺を得意とする。右腕には連発式のグレネードランチャーが内蔵されている。マクドガルに命じられノアの方舟の発掘現場を襲撃し、ファットマンと共に多数のアーカム職員を殺害した。御神苗優に敗北して捕まるが、マクドガルが発掘現場を占拠したあと解放され、優を殺そうとするものの、ジャン・ジャックモンドに妨害されて失敗。獣人化したジャンに惨殺される。

マクドガル

米軍の極秘部隊「機械化小隊(マシンナーズ・プラトゥーン)」を率いる少年。階級は大佐。見た目は幼い白人の少年ながら、小隊最強の軍人。類まれな頭脳の持ち主で、小隊の指揮を執っていた。脳に「頭脳磁界増幅装置」が埋め込まれており、その力を使って強力な衝撃波を放ち、手を触れずに敵を殺すことができる。米軍内部でも「悪魔の力を持つ男」として畏れられているが、実は装置を無理やり埋め込んだせいで、使い過ぎると強い頭痛に襲われるうえ、寿命が後数年だと宣告されている。そのため表向きはペンタゴンの命令に従順だが、内心では人類そのものに絶望している。アーカムによってノアの方舟が発見された際には、予(あらかじ)め見つけておいた「ノアの古文書」の情報を使って情報的に優位に立ち、ノアの方舟の発掘現場を機械化小隊に襲わせる。自らも出陣して御神苗優を無力化し、ノアの方舟内部に侵入後はその本性をあらわにし、米軍を裏切って人類の抹殺のため、ノアの方舟の力を独占しようとする。駆け付けた優と再戦して終始優位に戦うが、不屈の意思で立ち上がる優に力を使い過ぎたことで大きく消耗し、最終的に敗北する。優にその生き方自体が、マクドガルが否定する悪しき人類そのままだと否定されるが、その境遇には同情されたらしく、敗北後は優に手を差し伸べられる。しかしマクドガルはその手を振り払い、ノアの方舟の自壊装置を起動し、崩壊する光の中に消えていった。優の生き方に感化されたわけではないと口では言いつつも、最期には優に警告とも取れる言葉を遺している。

ジャック・ザ・リッパー

米軍の極秘部隊「機械化小隊」に所属する男性。「ジャック・ザ・リッパー」は異名で本名は不明。両腕が機械の義手で、腕にはオリハルコン製の高周波振動ナイフを仕込んでいる。格闘術、隠密性の高い身のこなしを活かした戦法が得意で、振動ナイフはその鋭利な切れ味もさることながら、暗器も仕込まれており、人を殺す技を徹底的にまで追求している。ノンモの舟の強奪作戦では、トニー・ベネットと組んで御神苗優と戦った。目的のためなら手段を選ばない非情な人物だが、トニーと違って卑劣漢ではなく、人質を使った戦法を取ったりするが本意ではないと語るなど、根は実直なところを見せる。また国への忠誠心そのものは本物で、トニーは自分とは別の命令系統で動いているのを知った際も、最終的にアメリカの手に遺産が渡ればいいと判断している。しかし作戦中、トニーの裏切りに遭い両腕の義手を破壊され、トニーのあまりに無節操なやり方に、ついに怒りが振り切れ、満身創痍の状態でトニーに一太刀浴びせて一矢報いた。その後、トニーを倒すのに力を使いつくし、優を前に戦闘不能になる。優とは戦いの中で心が通じ合ったのか、自分にトドメを刺さずに去っていく優を笑みを浮かべて見送った。

ヘッジ・ホッグ

米軍の極秘部隊「機械化小隊」に所属する男性。階級は大尉。柔和な顔立ちで、人当りがよさそうな雰囲気を漂わせているが、本性は白人至上主義者で、多人種を見下す差別意識が非常に強い。ガイア仮説に基づき、インディアンの儀式がレイラインを利用するものだと考え、そのメカニズム解明のためにインディアンの集落を狙う。インディアンの予言で白人の文明の終焉(しゅうえん)を仄(ほの)めかす内容があるため、インディアンの全員抹殺を視野に入れて作戦を進めている。交渉と称してインディアンの前に姿を現すが、その内容はほとんど無条件降伏にも等しいもので、交渉決裂後はその傲慢な差別者としての本性を現し、彼らに襲い掛かる。両腕が機械化されており、「ニードルガン」を搭載している。ニードルガンは極細かつ鋭利な針を高速で発射する装置で、丸太を一瞬で破砕するほどの威力がある。また極細であるため、繊維の隙間を縫って対象にダメージを与えることができ、A・Mスーツの防御力ですら貫く貫通力を誇る。御神苗優をニードルガンで苦しめたが、優に殴り倒されて敗北した。

サイドワインダー

米軍の極秘部隊「機械化小隊」に所属する男性。トライデントの意向に従って聖櫃を輸送するため、暁巌、ボー・ブランシェと共に豪華客船「シバの女王」に乗り込む。御神苗優の抹殺を命じられており、非常事態を前に暁と優が休戦しても、彼に襲い掛かった。腕にワイヤー付きの暗器を発射する機構が備えられているが、優には通じず一蹴される。実は本来の雇い主は米軍でもトライデントでもなく、アーカムの新会長、ヘンリー・ガーナムその人。聖櫃の輸送で船が沈没することは知っていたため、騒動を利用して優や暁を含む全員を殺すつもりだった。人命優先で戦うのを止めたボーを裏切り者として殺そうとするが、彼にも一蹴される。しかしそれでも敗北を認めず、客船に乗っていた子供たちを人質にしてボーに重傷を負わせた。その後、チャーターした軍用機を使って聖櫃を運び出して脱出するも、聖櫃のもたらす災いに巻き込まれて消息不明となる。

マウザー

イギリスで考古学を研究する男性科学者。眼鏡をかけている。長年にわたって超古代の文明を研究している。バーサーカーを発掘するが、本研究直前にイギリス軍部の横やりを受ける。オーパーツの軍事転用をくだらぬと切り捨て、純粋に古代のロマンを追いかける人物だったが、バーサーカーの起動実験の事故に巻き込まれ、仲間が殺されたことで狂気に取りつかれる。実験を強行した軍部への復讐(ふくしゅう)のため、実験事故のあと基地の機能をひそかに掌握し、原子炉にバーサーカーを導くことですべてを破壊しようとする。マリア・クレメンティが制止しようとするも、正気を失い攻撃をしてきたため、マリアに反撃され殺された。

ボーマン

元スプリガンの高齢の老爺。、人当りのよさそうな顔立ちをしている。ベテランの軍人で、たくましい体格をしている。アーカムでは教官を務めており、2年前、スプリガンに志願した御神苗優の教育を担当した。温厚でまじめな性格ながら、軍人らしく非情なところがあり、訓練は非常に厳しい。一方で教え子のことを本当に大切に思っており、彼らに厳しく接するのも期待と心配の裏返し。優が出会った頃は確固とした使命感を持つ高潔な人物で、引退間近な自分の代わりに若い芽を育てる好々爺だったが、再会後は超古代文明の遺産を私欲に利用するトライデントに鞍替(くらが)えし、優の前に敵として立ちふさがる。高齢ながら世界でも5本の指に入るナイフの使い手で、身のこなしも俊敏。催眠術の一種で、自分の実体と気配を切り離し、優ですらまどわせる分身「二重身(ドッペルゲンガー)」を生み出す能力を持つ。幽霊島の調査で優と対峙し、当初は優位に戦っていたが、能力の種を見抜かれ逆転される。敗北濃厚となっても、最後の授業として優と戦い、彼の手に掛かって死亡した。死亡の間際、優にアーカムへの警告の言葉を遺(のこ)しており、これが優がアーカムに不信を持つ大きなきっかけとなっている。

リック・ボルドー

トライデントに雇われたライカンスロープの男性。「獣人」のライカンスロープで、ジャン・ジャックモンドの父親。年齢は40歳前後。ライカンスロープの短命の宿命から逃れられず、余命いくばくもない状態となっている。ライカンスロープであるため一族ごと迫害の対象となり、肉親は全員人間に殺されている。正体を隠して逃亡している最中に出会った女性、ウージェニーと恋に堕ち、つかの間の幸せな生活を送る。ウージェニーのことを愛しており、彼女とのあいだにジャンをもうけるが、自分の正体を知ったウージェニーはジャンを連れて姿を消してしまう。愛する者も自分を受け入れてくれなかったことで、人間に対して深く失望。その思いは煮えたぎる憎悪へと転じ、人類社会そのものをライカンスロープの手で滅ぼすことを誓っている。しかし、ライカンスロープは人間に比べて数が少ないこと、自らの寿命が尽きかけていることに強い焦りを感じており、苦渋の判断でトライデントに協力し、彼らを利用することを目論む。自分の後継者としてジャンの存在を求め、彼の説得とライカンスロープ製造施設を手にするため、ジャンの前に立ちふさがる。だがトライデントを利用しているつもりが、実はラリー・マーカスンからは寿命が尽きかけているため利用価値がないと判断され、捨て石として利用される。ラリーによってスプリガンもろとも爆弾で吹き飛ばされる。九死に一生を得て人間への怒りをあらわにするが、爆発的に巻き込まれ危機的状況に陥った御神苗優とジャン、暁巌が力を合わせて脱出する姿に心動かされ、戦意を喪失する。ティア・フラットにアーカムに誘われるが、その誘いを断って人里離れた場所で余生を過ごすことを決める。ジャンには別れ際、幸せな頃の思い出が詰まったロケットを手渡している。

デリー・グレアム

トライデントに雇われたライカンスロープの男性。「吸血鬼」のライカンスロープで、ふだんはふつうの人間のような姿をしているが、戦闘状態になると目を大きく見開き、血管が浮き出た異様な姿となる。「獣人」と違い、生命維持のために定期的に人間の血液を摂取して、血液を交換しなければいけないため、過去には人間たちから忌み嫌われ迫害を受けたこともある。このため人間を完全に見下しており、戦争で効率よく食料である人間を手に入れるべくトライデントに協力している。ただし人間を見下すあまり、仲間すら自分の道具としか思っておらず、同士討ちも平然と行う。獣人に比べて身体能力では劣るが、それでも常人に比べて高い身体能力を持ち、また血液を摂取することで獣人の数倍にも匹敵する再生能力を発揮することができる。寿命も獣人より長命であるため、さながら血液を燃料にした殺人機械のような存在となっている。ラリー・マーカスンからは敵も味方も区別つかない厄介者と思われており、スプリガンを倒すための捨て石として使われる。高い身体能力を持つが、御神苗優には通じずに味方である暁巌からも、味方殺しをするデリー・グレアムは邪魔者でしかなく、双方から叩きのめされて放置された。その後、ラリーによってスプリガン諸共爆弾で吹き飛ばされるが、持ち前のタフネスさを発揮して五体満足で生き残る。瓦礫(がれき)に挟まれて身動きできなくなった優を殺そうとするが、ティア・フラットに脱出不可能な異空間に閉じ込められ敗北する。

アドルフ・ヒトラー

元ドイツ第三帝国で総統だった男性。口ひげを生やしている。人を惹(ひ)きつけるカリスマ性にあふれ、当時のドイツを立て直した優秀な「政治家」であるのと同時に、苛烈な政策を取った「独裁者」。第二次大戦末期、敗戦濃厚になるのと同時に自殺したが、実は生前に魔術を会得しており、聖杯を入手して己の復活を画策していた。しかし聖杯を運んでいたUボートが沈没したため、聖杯が発掘される半世紀後まで復活が実現することがなかった。ネオ・ナチスがサルベージされた聖杯を奪還し、クローン技術を使用することで肉体を代用し復活する。以前は優秀な人物で責任感も強かったが、重責に押しつぶされ二重人格となってしまう。このため復活後も「政治家」と「独裁者」の二つの人格が共同する形となり、政治家のアドルフ・ヒトラーは、独裁者の自分がこれ以上暴走するのを防ぐため、己もろとも独裁者の自分を封印することを決める。復活の余波で発生した雪崩(なだれ)に巻き込まれることで行方をくらまし、たまたま居合わせた染井芳乃に道案内を頼み、ネオ・ナチスが心の拠(よ)り所にする超古代文明の遺産「ヴァジュラ」を封印しようとする。しかしネオ・ナチスに補足され、彼らの手によって冷酷な独裁者の人格を呼び起されてしまう。聖杯による復活によって治癒能力をはじめさまざまな特殊能力に目覚めており、莫大な精神力が必要となるヴァジュラも難なく使える。だが、通常の人間を超える精神力を持っていたためヴァジュラは暴走し、それに巻き込まれて死亡した。末期には政治家の人格に戻り、最後に芳乃に感謝と別れを告げて満足げに消えていった。

ケルトハイマー

秘密結社「ネオ・ナチス」に所属する高齢の男性。顔にやけど痕がある。階級は大尉。第二次世界大戦の敗北を経験し、ナチスの復権に強い執着を抱いている。その在り様は御神苗優に「狂信者」と評されている。ボー・ブランシェとハンス・シュナイダーの上司で、ハンスに命じて川原正三から水晶の髑髏の強奪する。優と朧の活躍によって水晶の髑髏が奪還され作戦は失敗。その際に朧によって体内の氣の流れを狂わされ満足に歩くこともできない体にされる。ナチス復権のためなら人の命や、平和を微塵(みじん)も顧みない妄執に取りつかれており、その報いとして朧に氣の流れを狂わされたが、それでもナチス復権をあきらめずに再び暗躍を始める。朧の攻撃の後遺症で車いす生活となったが、ボーにイギリス軍にサルベージされた聖杯の強奪を命じ、アドルフ・ヒトラーの復活を行う。ヒトラーが生前、二重人格であることをつき止め、自分たちにとって都合のいい独裁者のヒトラーとして扱っている。ヒトラーが生前集めていた超古代文明の遺産「ヴァジュラ」を手にし、第三帝国復活は目前となるも、ヒトラーがヴァジュラを暴走させ、その野望は塵芥(じんかい)と消える。最期はヒトラーと共に、暴走したヴァジュラの光に呑(の)み込まれて消えた。

ハンス・シュナイダー

秘密結社「ネオ・ナチス」に所属する男性。ナイフを武器にする殺し屋。残忍な性格をした快楽殺人鬼で、ボー・ブランシェと違い卑劣な手段も平気で行う。ナイフの腕は超一流と評されているが、その腕は専ら女性や無抵抗な者をいたぶることに発揮され、強者には通用しない。ケルトハイマーの命令で水晶の髑髏を強奪するため、川原正三を襲い惨殺する。その殺害方法は生きたまま四肢を斬るという残忍なもので、詳細を知った優を怒らせている。また、水晶の髑髏奪還に動いた優に対し、川原鈴子を人質に取るなど、戦法がとにかく卑怯で陰湿であるため、仲間であるボーからもその性根を軽蔑されていた。朧の活躍で人質を取り返され、怒り狂った優に腕を折られて敗北した。

ヘウンリー・バレス

超常現象をあやつる魔術師の中年男性。女言葉を使う。リバースバベルの力を求め、ケイトのいた教会を襲撃する。「影魔(シャドウ)」「砂魔(デイザード)」「水魔(アクア)」と呼ぶ3体の使い魔を従え、多彩な魔術をあやつる。またヘウンリー・バレス自身も類まれな体術の使い手で、A・Mスーツを着た御神苗優を圧倒するほど。朧ですら認めるほどの魔術の使い手で、その筋では「今世紀最悪の黒魔術師」と呼ばれている。ケイトの命を狙い、その護衛である朧と対決し、影魔の持つ闇の力を使って朧を闇の世界に封じる。その後、ケイトに合流した優と戦闘。1度目の戦闘では優を圧倒するも、2度目の戦いでは急速に成長する優に反撃される。使い魔も倒されるが、実は本体と思われた体も遠隔操作した使い魔で、優の猛攻をしのぎきり、彼を後一歩まで追い詰める。しかし封印されたと見せかけ、ひそかに動向を観察していた朧に仕掛けを見破られ、今度こそ敗北する。その正体は高齢のユダヤ人で、かつては神に敬虔(けいけん)な信徒だったが、第二次世界大戦中に強制収容所でこの世の地獄を見て、神と人類に絶望する。そのためリバースバベルの力を使い、自分が神として君臨することで、全人類の価値観や思想を統一して、世界から争いをなくそうとしている。非常に危険な思想だが、その根底には人類への絶望と純粋な平和への意思があり、その信念は敵である優からも共感され、ヘウンリーの死後もその信念は否定されることはなかった。

中野 建造 (なかの けんぞう)

日本の内閣調査室でスパイ教室の教官をしている男性。甲賀流の流れを汲(く)む忍者の家系の生まれで、身体能力に優れ、隠密行動を得意とする。京都の民間人の家で、改装工事中にたまたま超古代の遺跡が発見され、その内部で巨大な賢者の石が見つかる。その報告を受け取った上司から賢者の石奪取を命ぜられ動き始める。日本は超古代の遺物発見競争に出遅れており、その遅れを取り戻す焦りから、非合法な手段を取ってまで賢者の石を手に入れようとする。アーカムからの圧力で上司は賢者の石から手を引いたが、スプリガンの御神苗優が敵であることを知り、功名心に目がくらんで独断で優に襲撃を掛ける。陰湿な性格をしており、自分の目的のためなら卑劣な手段も平気に行う。優のクラスメイトを人質に取って彼を殺そうとするが、染井芳乃に自分のワナを逆に利用されて失敗。優に怒りのまま蹴り飛ばされて戦闘不能となった。

マイク・スペンサー

米軍に所属する男性で、南米での作戦行動中に瀕死(ひんし)の重傷を負う。その時点では辛うじて生きていたが、軍本部は死亡認定して人体実験の被験者として扱われる。インカ帝国の遺跡より発見された穿頭術の手法を試され、感覚器官が鋭敏化したテレパシー能力に目覚める。穿頭(せんとう)術がいかなる効果をもたらすのかわからなかったため、軍本部は使い捨ての実験体としてマイク・スペンサーを使い、その効果を確かめるつもりだった。しかし、テレパシー能力でその事実を知り、家族にもマイク自身の死亡が伝えらているため帰る場所がなくなったことを知る。上官が自分の処分を決定したこともテレパシー能力で察知し、周囲から向けられる敵意に無意識に返したことで、能力を暴走させる。テレパシー能力で敵意のイメージを相手に直接叩きつけることで、暗示にも似た効果をもたらすことができ、幻覚で相手を殺すことが可能。能力を暴走させた結果、基地の人間を全滅させるが、遺物を奪還するため駆け付けたトニー・ベネットに焼き殺された。御神苗優も現場に居合わせたが、マイクは最後まで家族のもとに帰りたがっており、彼の切実な願いを知り複雑な思いを抱いた。

源 双烈 (ちぇん すわんりぇ)

麻薬シンジケート「エレクシィ」に用心棒として雇われた拳法家の男性。黒い髪を長く伸ばしている。ワイルドな雰囲気を身にまとった大男で、凶暴な性格をしている。一昔前、裏世界を席巻していた拳法家の王(ワン)の弟子で、王はとてつもない強さを誇る。しかし金を積めばなんでもする悪党で、最終的に欲に溺れて修行を怠り、当時10代だった朧に敗北して死亡した。源双烈も王から拳法を習いながらも、その生きざまを「成金野郎」と嫌っており、師匠を殺されたことを恨みには思っていない。だが、師匠と同じく名声や金に執着する傾向があり、世界最強の名声を求めて朧と戦う。朧と戦い敗北したが、命を奪われずに見逃されたことに強い屈辱を感じており、朧へ強い復讐心を燃やしている。氣法師ではなかったが、長年の修行によって氣をあやつる術を身につけ、氣によって肉体の強度を上げる「硬氣功」を習得する。硬氣功を使えば生身にもかかわらず銃弾を防ぐことができ、攻撃力も数倍上がる。その攻撃力はA・Mスーツですら防げないほど強力で、御神苗優も手も足も出ず敗北している。ただし拳法の達人であっても、戦闘のプロではないためにワナなどのからめ手に弱く、1度目の優との戦いではあっさりワナに引っ掛かり彼らを逃がしてしまう。優との再戦では朧を挑発するため優をいたぶるが、極限まで追い込まれた優に動きを見切られ逆転される。さらに硬氣功も発動を妨害されれば無効化できるという弱点を見抜かれ、敗北した。

高隅 浩三 (たかすみ こうぞう)

トライデントのトップの一角である高隅の総帥を務める老爺。実質的な経営権は三人の息子に譲っているが、その影響力はいまだに健在で、高隅財閥の裏の影響力も絶大。ヘンリー・ガーナムの申し出で会談を行い、日本の技術力と財界の力を使い、日本を軍事生産大国にするというヘンリーの提案を受け入れる。これによってトライデントを離反し、アーカムに属するようになる。ラリー・マーカスンは部下で、彼を自らの代理人としてアーカムに派遣した。

ヘンリー・ガーナム

アーカムの新会長に就任した壮年の男性。髪をオールバックにセットした紳士で、アーカムが集めた超古代文明の遺産を用いて、世界の軍事バランスを自分でコントロールすることを目論む。非常に優秀な頭脳の持ち主で、ケンブリッジ大学の経済学部を首席で卒業した。その後、アーカム系列の銀行でわずか5年で頭取となり、航空業、造船、建造、自動車などの建造業を経て、アーカムの中枢に迎えられて新会長に就任した。その手腕は繊細にして大胆で、「現実主義者な理想家」と評されている。掲げた理想を合理的な手段で実現する経営家で、世界の軍事バランスを握るという野望の根底にも世界平和を求める純粋な理想がある。しかし、その手段が非情で冷淡な徹底的なリアリストであるため、御神苗優たちにその手段が受け入れられず、多数の離反者を出してアーカムに内部抗争を巻き起こしてしまう。

トニー・ベネット

CIAに非合法職員として雇われている男性エージェント。落ち着いた雰囲気を漂わせているが、その本性は狡猾かつ残忍。対象を燃やし尽くす超能力「ファイヤースターター」を持ち、その力で人を焼き殺すことに快感を覚える快楽殺人者。発火能力は攻撃以外にも催眠術にも使え、汎用性は非常に高い。趣味と実益を兼ねて人殺しをしている節があり、組織や国への忠誠心はなく、CIAに雇われているものの実際には国内の別派閥の命令で動いている。目的のためなら手段を選ばない卑劣漢で、必要とあらば平気な顔して仲間を売り渡したり、女子供を利用する戦法を取ったりしているため、一部では「史上最悪の男」とも呼ばれている。ノンモの舟の強奪作戦では、ジャック・ザ・リッパーと組んで御神苗優と戦う。しかし不利になると命乞いをしたり、ジャックを利用した挙句に裏切ったりと、徹頭徹尾コウモリのように暗躍している。最終的にその言動から優とジャックの両方を敵に回して撃破された。しかし命は落としておらず、のちにアーカムにスプリガンとして雇われ、優の同僚となる。殺人鬼であるトニー・ベネットをアーカムが雇ったのは、腐敗した組織の現状を示すもので、優はこの出来事でアーカムへの不信感をさらに強めることとなった。優と組んで仕事もしたが、仲間思いの優がいっさい気を許さず、トニーのやり方を見た優は怒りのあまりトニーを殴り倒している。スプリガンの中でも己の欲を優先する邪悪な人物で、南極遺跡での決戦でもヘンリー・ガーナムに陣営に与し、優たちと戦う。炎蛇が暴れ回る中、自分の発火能力と引火物を組み合わせて戦うが、トニー本人の戦闘能力は高くないため、ジャン・ジャックモンドの超スピードのはまったく反応できず敗北。そのままジャンに炎蛇に放り込まれ、焼死した。

ラルフ・クーリー

「COSMOS」の指揮官を務める高齢の男性。初期の頃からCOSMOSの計画にかかわってきた人物で、かつての御神苗優を殺人機械に仕立て上げた張本人。当時の階級は大佐。4年前、部隊の初の実戦テストの際に、正気を取り戻した優に打ち倒される。半死半生の大ケガを負うが辛うじて生き残り、その後は体を半機械化して優への復讐を誓う。マッパムンディス強奪作戦に参加し、金谷唱たちを使って優を追い詰めようとする。しかし優の逆鱗(げきりん)に触れ、殺人機械となった優に殺された。また部下の金谷に、実は「私怨に狂った無能な上司」として見られており、スプリガンの戦力偵察として捨て石にされ、利用しているつもりで逆に利用されているという皮肉な結末を迎えた。

金谷 唱 (かなや しょう)

「COSMOS」の兵士。御神苗優と同年代の少年の姿をしている。米軍がプロジェクトを扱っていた頃からの生き残りで、当時は「71」の番号を与えられていた。プロジェクト壊滅後、トライデントに研究結果ごと引き取られる。隊の指揮官である「No.0」のコードネームが与えられ、プロジェクトの中枢的存在に調整される。優の学校に「金谷唱」の名で転校生として編入されるが、そのまま優に挑発と脅迫を行って逃走。トライデントの兵士として暗躍し、上司であるラルフ・クーリーを謀殺しつつ、スプリガンの戦力偵察を行っている。日本沈没作戦では完成した「COSMOS」を率いて参戦。優を心理的に追い詰めるように、マックス隊を壊滅させ、優の知人であるジミー・マックスを拷問してメッセンジャーとする。その後、富士の樹海での決戦で優と仲間たちと対峙(たいじ)。彼らの奮闘によって作戦は失敗し、優に完敗する。度重なる実験で感情的な言動ができないように調整されていたが、内心では同じ境遇でありながら兵器ではなく人間として成長した優に羨望、嫉妬、憎悪の感情を抱いており、優に敗北後はその思いを吐露して自殺した。

YAMA (やーま)

超古代文明の遺産。パキスタンのインダス河上流で発見された壁に記された紋様だが、この紋様自体が一種のプログラムで、現代のスーパーコンピューター「アース」にカメラで画像を取り込んだところ、自力で己のプログラムを構成し、コンピューターを乗っ取る形で誕生した。はるか過去から人類に審判を下すのを役目としており、世界中のコンピューターをハッキングして、過去5000年間の記録を参照し、人類に存続する価値なしと判断する。世界中のコンピューターを支配下に置き、核ミサイルすら掌中に置いて、審判を下そうとする。一方で、アーカムなど一部の善き人々の行いを鑑みて、御神苗優たちに最後のチャンスとして試練を与える。圧倒的なハッキング能力に加え、パソコンの画面を見た人間を催眠状態に置いてあやつることもでき、その多彩な能力で優たちを苦しめた。最後は優が正しい選択を取ったことで人類に猶予と警告を与え、再び眠りについた。

ロードス島の青銅巨人 (ろーどすとうのせいどうきょじん)

超古代文明の遺産。古代人が作った一種の防衛装置で、鎧(よろい)を身にまとった巨人のような姿をしている。全長3メートルほどで、青銅で造られた像のような姿をしているが、全身が総オリハルコン製。なんの金属と掛け合わせたオリハルコンなのかも不明だが、頑丈なのに加え、地脈からエネルギーを補充することで、たとえ傷ついてもすぐさま復元する特性を持つ。伝承のスプリガンは財宝を守る際に巨人となることから、この巨人をラリー・マーカスンは「本物のスプリガン」と評した。圧倒的なパワーと頑丈さを誇り、その巨体に反してライカンスロープであるジャン・ジャックモンドすら敵(かな)わないほど機敏に動く。南極遺跡の攻防戦で、アーカム側の防衛装置として使われた。御神苗優と仲間たちの全力を歯牙にもかけない強さを誇り、彼らを全滅一歩手前まで追い詰める。しかし、地脈からエネルギーを受け取る関係上、ガイアの意思を強く受けているらしく、優たちの奮闘と叫びを聞き届けたかのように消滅した。

集団・組織

アーカム

「第二のロックフェラー」とも呼ばれる巨大財閥。創設者で、初代会長である「T・F・アーカム」の意向を受けて、表向きは遺跡の保護を訴え、各地に考古学研究所を作っているが、裏では超古代の文明の遺産の危険性を認識し、それらの回収および封印を行っている。また超古代の遺産を研究し、それらの中でも現状の人類でも扱えるものは積極的に現代装備に転用し、独自に世界最高峰の装備を整えている。技術力、経済力に抜きんでており、表と裏の両側から世界に多大な影響力を誇る財閥となっている。もともと超古代文明の遺産には危険なものが多かったが、近年は各国が超古代文明の遺産の有用性に気づき、それらの争奪戦が勃発しているため、アーカムは独自の戦力を整えている。その戦力は大国の軍隊にも匹敵し、特にアーカムのS級エージェント「スプリガン」の名は裏世界に轟いている。超古代の文明の遺産を守るためとはいえ、それらの遺産を兵器や武器に転用する矛盾には内外から批判もある。中には積極的に遺産を軍事転用し、世界の軍事バランスを整えることで平和を実現しようとする派閥もあり、アーカムも一枚岩ではない。のちにヘンリー・ガーナムが新会長に就任してからは、遺産を軍事転用する派閥が組織の中枢となり、それらを厭う派閥との溝が決定的なものとなる。南極遺跡の決戦では、アーカムは内部分裂し、スプリガンも多数の離反者を出している。

トライデント

大国の軍部と深く結びついている巨大軍産複合体。日本の高隅財閥、アメリカのグラバーズ重工、ヨーロッパのキャンベルカンパニーの三社の裏資金で運営されており、NATO各国と結託して死の商人として暗躍し、裏世界で勢力を広げている。近年は超古代文明の遺産の発掘に力を入れていて、その技術の軍事転用を積極的に進めている。染井芳乃からは、やっていることはアーカムの二番煎じと言われているが、その技術力は確かなもので、自力でオリハルコンの精製とA・Mスーツの開発を実現している。アーカムとはライバル関係にあり、遺跡の発掘現場で出くわすだけではなく、お互いに遺産を奪い合う血みどろの戦いを繰り広げることも珍しくない。のちにアーカムの新会長となったヘンリー・ガーナムが高隅財閥と接触し、アーカムに引き込む。これによってアーカムの軍事力増大を恐れたトライデントは、COSMOSによる日本沈没作戦を決行した。しかし結果は、COSMOSの全滅と作戦失敗。これによってトライデントは現在の形を維持することができなくなって分裂し、それぞれが各国の軍部と癒着して組織の存続を図っている。

COSMOS (こすもす)

アメリカ軍の特殊実験部隊。「COSMOS」は通称で、「機械少年兵による有機的システム(Children Of Soldier Machine Organic System)」の略である。もとは米軍がひそかに進めていた特殊実験部隊で、兵士を子供のうちから教育、洗脳、強化することで完璧な「殺人機械(キリングマシーン)」として調整し、上司の命令に絶対服従の理想的な兵士「キラーエリート」を作り出すのを目的としていた。このため、被験者は個性というものを消され、名前ではなく与えられた番号で呼ばれる。非人道的な実験で御神苗優もその被験者の一人だったが、初の実戦テストの際に人を殺したことで精神制御が解けて暴走。殺人機械として類いまれな力を持つ優によって当時の部隊は全滅した。その後、計画はトライデントに引き継がれ、「理想的な兵士」から「最強の部隊」を作ることに目的が変更され、実験は続けられていた。新しい部隊では「No.0」こと「金谷唱」がリーダーを務め、「No.1」から「No.9」のシングルナンバーがサブリーダーを務め、その下に10人ずつ隊員が配属される形となっている。最終的には100人にせまる部隊となる予定だが、現在時点では総勢50人程度となっている。脳内に埋め込んだオリハルコンによるテレパシーによって部隊全体がいつでも意思疎通ができ、隊員は感情や個性を消し去られているため、部隊全体が一つの生物として一糸乱れぬ連携が可能。ヘンリー・ガーナムの手腕によって不利になったトライデント側が、日本沈没作戦遂行のために投入する。トライデントは金谷の感情を完全に消し去ったと思っていたが、ひそかに残っていた感情によって、優との決着にこだわっていた。そのため、最終的にはその感情によって作戦は失敗。敗北後、金谷の意思によって部隊は全員自決して、壊滅した。

場所

帰らずの森 (かえらずのもり)

インドに存在する秘境。不老不死の妙薬である「神酒」にまつわる伝説があり、それを求めて今まで多くの探索者がこの森を訪れた。しかし、その探索者の誰一人帰ってこなかった不帰の秘境で、今では地元の人間も誰一人近づかない「魔の森」として恐れられている。インドの古代叙事詩「ラーマヤナ」にまつわる場所で、英雄、ラーマとその妻、シータが平和に暮らしていたが、シータはラーマが目を離したスキに魔王、ラヴァナに連れ去られてしまう。妻を奪われたラーマの嘆きによって森は呪われ、怨霊が跋扈(ばっこ)する地へと変貌した。それから幾星霜が過ぎ去り、とある寺院で神酒の製法が記された古文書が発見される。それを知った時の権力者は不老不死の妙薬を独占するため争い合い、いつしかその争いは他国にも拡大して世を大きく乱した。それを見かねた寺院の僧侶たちは、古文書を権力者の手が届かない帰らずの森に封印した。だが欲深い人間は、それでもあきらめ切れず、多くの者が不老不死を求めて呪いの森に足を踏み入れている。それが怨霊たちの犠牲になることで新たな怨念を生み、森をより深く、より呪われたものへと成長させていった。現在では森そのものが怨霊ともいえる存在となっている。森の中枢には呪いの中核ともいえる「呪神樹」が存在し、そこに僧侶が自らの命と引き換えに神酒の製法書を封印している。呪神樹はあまたの怨念が積み重なった異形の姿をしており、その巨大な力で御神苗優たちを苦しめた。あらゆる攻撃を無効化する無敵っぷりを見せたが、英雄を象(かたど)った「ラーマ神像」が弱点。ラーマ神像と優の渾身(こんしん)のサイコブローを食らって呪神樹は消滅した。森を呪ったラーマであったが、のちのちその出来事を反省し、呪いを解くためのカギとしてラーマ神像を残していたのだと優は推測している。

リバースバベル

超古代文明の遺跡。旧約聖書の「創世記」に登場する、神の怒りに触れた「混乱(バベル)の塔」とは別に造られたもう一つのバベルの塔で、悪魔と交信するのを目的として造られたとされる。天に向かって築かれたバビロンのバベルの塔に対し、リバースバベルは中東の荒野に地底に向かって建造されている。内部は巨大な地下迷宮となっており、侵入者を撃退する致死性のワナが張り巡らされている。迷宮の奥には巨大な魔法陣があり、魔王「バズス」を召喚できるとされるが、魔王の正体は「混沌(カオス)」そのもの。混沌とは地球上の生命体の情報のやり取りを書き換える力で、バベルの塔とリバースバベルはそれらを利用する装置とされる。リバースバベルは迷宮の罠(わな)で死んだ人間を生贄(いけにえ)とし、死んだ人間の生命エネルギーを糧として稼働する。十分な寮の生命エネルギーがあれば、世界中の人間の価値観を書き換えることができる。ヘウンリー・バレスはこの力を使い、自らが神となる野望を秘めていたが、御神苗優たちの活躍によって阻まれた。その後、リバースバベルはケイトがロッキスの外典を使い、完全に破壊する。

その他キーワード

スプリガン

アーカムが擁するS級(スペシャル)エージョント。突出した能力を持つ個人が選ばれ、それぞれが超人じみた技能や、超常現象じみた異能を持っている。名前の由来は財宝を守る妖精「スプリガン」。裏世界でスプリガンの存在は有名で、名を上げるために彼らの命を狙う者も存在する。

メッセージプレート

超古代から未来に送られた伝言板。白金にも似た金属製のプレートに、古代ヘブライ文字が彫られている。超古代には多種多様な文明が栄えていたが、その文明は種の限界をはじめとしたさまざまな原因で滅び去ってしまう。伝言板はそんな滅びに向かう中、古代人が未来への警告として残したメッセージで、「超古代文明の遺産(オーパーツ)」を各地に残すこととその危険性について記し、もし超古代文明の遺産が悪用される危険がある場合は封印するように警告を訴えている。メッセージプレートは複数存在するようで、近代に入って各地で発見されている。ノアの方舟からも見つかっているほか、深海で発見されたものを御神苗優は所持している。メッセージプレートは三次元空間に時間軸が存在しないらしく、あらゆる物理干渉を無効化する。また破壊することは不可能で、オリハルコンに匹敵するヒヒイロカネ製の剣でも傷一つ付けることができなかった。

賢者の石 (けんじゃのいし)

粘土のような質感を持つ特殊な鉱石。古代文明の錬金術によって作られた特殊な物質で、この賢者の石単体ではなんの使い道のないただの石。しかし触媒として非常に優秀で、ほかの物質と組み合わせることでさまざまな用途で使える。オリハルコンも賢者の石をほかの物質と組み合わせて別の物を生み出しているほか、使い方によってはわずかな賢者の石で莫大な黄金を生み出すことも可能。自然界には存在せず、現代では賢者の石の精製技術も失われているため、古代遺跡周辺でわずかに発見されるのが唯一の入手法となっている。発見される量はわずかな量だが、時おり、大きな賢者の石の結晶が発見されることもある。

オリハルコン

超古代文明で使われていた伝説の金属。アトランティス大陸で使われていたとされる幻の金属で、賢者の石と同じくこの金属単体ではただの希少金属だが、ほかの金属と合金化して使うことでさまざまな特性を発揮する。使い方によっては人の精神に反応する特製を持つため、「精神感応金属」とも呼ばれる。また、御神苗優の持つオリハルコン製のナイフは、圧力をかければかけるほど硬度を高める特性を利用して作られており、セラミックの3倍の硬度を誇る。このようにさまざまな特性を持つオリハルコンだが、まだ判明していないことも多く、超古代文明が作ったオリハルコン製の人型ロボット、ロードス島の青銅巨人は、非常に硬いにもかかわらず再生能力を持つという特異な特性を持っていた。

A・Mスーツ (あーまーど まっするすーつ)

オリハルコンを用いて作られた特殊な装備。合金化されたさまざまな種類のオリハルコンが使われており、表面繊維はオリハルコンとチタニウムを合成することで金属繊維の高度を飛躍的に高め、内部の人工筋肉部分はオリハルコンとニッケルを合成することで、人間の精神波に反応する特殊な形状記憶合金化している。これによってジャケットのような見た目ながら、生半可な銃やナイフでは傷一つ付かない高い防御力を誇る。また、火や電気といったエネルギーに対しても非常に強い耐性を持つ。精神波に反応する性質から着用者の闘志に反応して、内部の人工筋肉を肥大化させることで通常の30倍の力を発揮することも可能。この機能を応用することで、精神力を拳に集めれば、幽霊など実体を持たない者にダメージを与える「サイコブロー」を放つこともできる。A・Mスーツは川原正三の発掘した超古代文明の遺産がヒントとなって開発されたアーカム独自の装備だったが、のちにトライデントも開発に成功し、実践投入している。ただしトライデント製のものは機械製になっており、アーカムのものに比べ性能に差異が存在する。

ロシナンテ

スティーブ・H・フォスターが船長を務める調査船。見た目は真新しい船だが、アーカムが解析した超古代文明の技術が注ぎ込まれた高性能船で、超電導推進を搭載し、120ノットを超える巡航速度を出すことができる。コンピューター制御による高性能安定装置で、安定しない海上でもスピードを出して航行することが可能。また武装としてレーザー砲を搭載しており、対空迎撃能力も高く、スティーブは一対一であれば戦艦にも負けないと豪語している。

パレンケの仮面 (ぱれんけのかめん)

超古代文明の遺産。マヤ文明の遺跡「パレンケ」より発見されたヒスイ製の仮面で、石棺に納められていたパレンケの王らしき人物の装飾品だとされる。また石棺には、10個の指輪がいっしょに収められていた。石棺に納められていた人物は当時のマヤ男性の平均身長に比べ大幅に大きかったことと、石棺には宇宙船に乗った宇宙人のような浮彫があったことから、石棺の人物は宇宙人ではないかといわれていた。その正体は遠い昔、地球にやって来た異星人、ケツアルクアトル。パレンケの仮面は一種のコンピューターのようなもので、肉体を失ったケツアルクアトルの意識が宿っている。

マーラの銀鏡 (まーらのぎんきょう)

超古代文明の遺産。アーカムによって回収され、研究所に保管されていたが、テスカポリトカを倒すため御神苗優が取り寄せた。鏡が映した物の怪(け)を吸い込み、封じることができるが、実体があるものは封印できない。そのため、他者の肉体に取りつくテスカポリトカにも効果がなかったが、テスカポリトカを取りついた肉体より追い出したことで、その魂を吸い込んで封印した。

ノアの方舟 (のあのはこぶね)

超古代文明の遺産。旧約聖書の「創世記」に登場する巨大な方舟。アーカムの考古学研究所がトルコのアララト山中で発見した。古代文明のメッセージプレートも発見されたが、今までのものと微妙に違って逆三角形型で、今までの警告に加えノアの危険性を訴える旨の警告文が追記されている。発見されたノアの方舟は木材で構造されているが、メッセージプレートと同じく時間が止まった物質で、破壊は不可能。聖書ではサイズは全長300キュピト、幅50キュピトとされていたが、発見されたものはその倍はあった。その正体は地球規模で影響をもたらす「大気調整装置」で、天候や気候を自在にあやつる力を持つ。ノアの方舟伝説で語られる大洪水も、この装置によって引き起こされたものだとされる。また、ノアの方舟には大災害を引き起こしたあとの次世代を担う生物を作るという目的があり、方舟内部にはそのための生命体のサンプルが保管されており、御神苗優は多数の恐竜のサンプルを発見している。アメリカはノアの方舟の力を使い、環境問題を解決すると共に世界に対する抑止力にするつもりだったが、マクドガルが反旗を翻し、人類文明に鉄槌をくだすべくノアの方舟の力を独占する。その後、優に敗北したマクドガルは最期の力を振り絞り、ノアの方舟の自壊装置を発動させて破壊した。

バーサーカー

超古代文明の遺産。戦闘目的で造られたロボットで、一度起動すると制御が利かず暴れ回る。純粋に戦闘目的で造られた兵器で、生体反応を発見すると即座に殺害に向かう残忍な性質を持つため、アーカムでは「狂戦士」を意味する「バーサーカー」の名で呼ばれる。その姿は人と昆虫を融合させたような有機的なフォルムで、二足歩行で歩く人型をしている。全身にビームを装備しており、その威力は鉄はおろかA・Mスーツですら溶かすほど。非常に頑強で力もあり、現代兵器ではまともにダメージを与えることもできない。また、背中にはジェット機構を備えて飛行も可能。古代では複数機作られていたらしく、アーカムも以前発見して起動。その後、暴れ回ったバーサーカーをアーカムは多大な犠牲を出して無力化するも、最後は自爆し、核爆発に匹敵する威力の爆発を巻き起こした。2機目はイギリスの考古学グループによって発見され、軍部によって回収される。アーカムは警告していたが、軍部はその警告を無視して基地に運び込んで起動した。復活したバーサーカーが暴れ回り基地を半壊させるが、駆け付けた御神苗優によって破壊された。

水晶の髑髏 (すいしょうのどくろ)

超古代文明の遺産。人間の髑髏を模して、水晶によく似た未知の物質で造られている。当時の加工技術では作ることのできないオーパーツで、一定の振動を与えると最大2億ジュールにも及ぶ莫大なエネルギーを発する。誰がなんの目的で作り出し、なぜ髑髏を模しているのかは謎に包まれている。過去にはアレキサンダー大王もこの水晶の髑髏の力に気づき、世界七不思議にも数えられる「大灯台」にその力を利用していたとされる。このため、水晶の髑髏が持つ神秘的な力ははるか昔から有名で、世に出回る水晶で造られた髑髏は、その力を欲した者たちが形だけマネして生み出したレプリカとされる。オリジナルの水晶の髑髏は複数存在し、現在は二つ発見されている。内一つは過去にアーカムに発見され、実験で特性を確かめたあと封印されている。

神酒 (そーま)

不老不死の妙薬。古来より権力者が追い求めてやまないもので、神酒を巡って何度も争いが起きている。現物は存在しないが、過去にインドの古い寺院より神酒の製法が記された石板が見つかるも、その製法書を巡って国全体が戦火に見舞われることとなった。それを見かねた僧侶たちは、石板を誰の手も届かない帰らずの森に封印することを決定する。のちに染井芳乃が森の奥地で製法書を見つけ、御神苗優が回収し、アーカムが封印した。製法書を解読した結果、製造には現代では絶滅した超古代植物「アンブロディア」が必要とされ、現代では精製不可能と思われていた。しかし、のちにアーカムの科学者であるエド・クルーガーが神酒の製法書とアンブロディアの種をアーカムから持ち出し、麻薬シンジゲート「エレクシィ」と結託して、精製した神酒を売りさばいていた。作り出した神酒は単純に治癒力を増大させるもので、切り傷レベルならすぐに癒やすが、失った臓器を再生するほどの力はない。また精製された神酒は一度服用すると、定期的に服用しなければ体が急激に老化し、死亡してしまう。一度使うと飲み続けなければならない麻薬のようなもので、エレクシィは一般人にまでこの麻薬をばらまくことで、周囲の人間を己の意のままに動くように脅していた。朧曰(いわ)く、アンブロディアは仙道でいう「仙丹」の材料になる植物で、本来であれば「精神そのものを物質化」するのが効能だが、中途半端な知識で作った結果、不完全な不死をもたらす薬になったと推測している。

聖杯 (ほーりーぐれいる)

超古代文明の遺産。イエス・キリストが最後の晩餐で使用し、処刑された際にその地を受けたとされる盃で、死者を復活させる力を持つとされる。その盃に血を捧げると、魂を盃に宿すことができ、アドルフ・ヒトラーは第二次世界大戦中に聖杯を手にして己の血を聖杯に捧げ、復活の布石としていた。しかし終戦後、聖杯を輸送していたUボートが沈没し、半世紀ものあいだ海中に没したままとなっていた。その間にヒトラーの肉体も朽ちていたが、ネオ・ナチスはヒトラーの肉体をクローン技術で代用。サルベージされた聖杯を奪取し、ヒトラーの復活を行った。聖杯によって復活した人間は脳の潜在能力を解放され、さまざまな能力に目覚める。ヒトラーは治癒能力に目覚めており、他者や自分の傷を瞬く間に癒やすことができるようになっていた。

聖櫃 (あーく)

超古代文明の遺産。旧約聖書でモーゼが神と契約を結んだ際、その十戒を刻んだ2枚の石板を納めたとされる箱で、「契約の箱」とも呼ばれる。神聖な箱で、その箱を触れたり、覗いたりした者には神によって災いが訪れるとされる。古代に戦禍に巻き込まれて行方不明となったが、テンプル騎士団によってシリア砂漠に運ばれたという古文書が見つかり、トライデントによって発掘される。その正体は人の意思が持つエネルギーを集める装置で、箱自体が人の集団意識のエネルギーを内包する「神」のような存在。つねに莫大なエネルギーを身にまとっており、それを安定化させるために「聖域」と呼ばれる場所に保管されていた。トライデントによって持ち出され、豪華客船「シバの女王」で輸送されるが、聖櫃の持つ力が不安定となり、磁場となって船を襲って電気機器を使用不能とする。また、箱から無秩序に放たれた神の力は未曽有(みぞう)の大嵐を巻き起こし、豪華客船を沈没間近にまで追い込む。御神苗優は船を守るため聖櫃を海に放棄しようとするも、サイドワインダーに奪われた。

マッパムンディス

紀元前4世紀頃に記されたとされる24枚の古い地図。石板に描かれた地図で、16世紀のトルコの海軍提督、ピリ船長はこの地図を模して地図を書いたとされ、ピリの地図は気球すらなかった時代にもかかわらず航空地図として非常に正確で、さらに当時は未発見だった南極大陸と、その氷の下にある山脈の高さまで正確に記録されていた。ピリ船長のお抱えの学者がこのマッパムンディスを解読していたが、何かの事実に気づいた学者は突如、地図を封印するため失踪されたとされる。アーカムが発見し、山菱理恵が解読したことで全体像がわかり、マッパムンディスは世界各地の「龍脈」あるいは「レイライン」と呼ばれるものを示したものだと判明する。富士遺跡の「火の社」も示されており、炎蛇にも関係するものだとされ、地図にはそれらの力の利用法も記されていた。そのためマッパムンディスの解読後、ヘンリー・ガーナムは会長権限でその情報を接収して、兵器利用することを目論む。

ライカンスロープ

超古代文明の技術で造られた生物兵器。見た目は人間と同じだが、超人的な力と生殖能力を持ち、人間と同じように子孫を残すことも可能。現在存在するライカンスロープは過去に生物兵器として造られた者たちの子孫で、その特異な生い立ちから各地で迫害の対象となることが多い。ヨーロッパに伝わる「狼男」の伝承もライカンスロープだとされる。ライカンスロープは能力そのものは高いが、数が圧倒的に少ないため、迫害の末に殺されることもある。ライカンスロープは何種類か存在し、ジャン・ジャックモンドは「獣人」と呼ばれるタイプで、超人的な身体能力と再生能力を持つ。しかしその反面、寿命が短く、獣人系のライカンスロープは平均で40歳までしか生きられない。一方、「吸血鬼(バンパイア)」と呼ばれるタイプは、身体能力では獣人には及ばず、生存に血液の摂取が必要なものの、獣人を超える不死身ともいえる再生能力と長命の寿命を保持している。

ノンモの舟 (のんものふね)

超古代文明の遺跡。マリ共和国のサハラ砂漠で発見された遺跡で、この地に昔から住むドゴン族には創造神、アンマが、「ノンモ・アナゴンノ」と呼ぶ神を遣わし、人々に文明を与えたという神話が伝わっている。遺跡の正体はノンモが天から降りてきた際に使った船そのもので、全長数キロにわたる巨大な船体でありながら、空を飛ぶことができる。その目的は古代人が未来の人間に向けて送ったタイムカプセルで、死滅しかけた星のあらゆる情報を蓄えたデータベースとなっている。船の内部には太古の昔に絶滅した生物や、大昔の環境の精巧な立体映像が流される部屋も存在する。遺跡の奥地にはコントロールルームが存在し、この部屋に入った人間は思考に直接情報が流れ込み、船を思考で操作することができる。本来、この遺跡はもっと未来で発見されるはずだったが、古代人の予想以上に環境破壊が進み、予定よりかなり早い段階で見つかってしまう。御神苗優は現代の人間にこの遺跡はまだ早いと判断し、コントロールルームで船を数千メートルの深海に行くようにセットし、海に沈めた。

要石 (かなめいし)

超古代文明の遺跡。日本の山を利用して作った遺跡で、地脈と密接にリンクし、その制御を行うことができるとされる。日本はこれをプレートの重なる地に複数の要石を築いている。また、要石はエジプトにあるピラミッドのルーツともされており、山のない場所であるため石を積み重ねて作ったとされる。要石を破壊すると、その地の地脈の流れが乱れるため、COSMOSはこれを破壊することで大地震を起こし、日本を沈没させようとしていた。

炎蛇 (えんじゃ)

巨大な火をまとった蛇のような生命体。正体不明だが、地球内部で生まれた超生命体らしく、龍穴を刺激するとその地の火山から出現する。「火の社」を作り出した古代文明では制御されており、火の社に安置されていた宝玉の力を使うことであやつることができる。しかし、本質的には完全に制御できるものではないようで、のちにアーカムが染井芳乃を使い南極遺跡でガイアにアクセスした際には、世界規模で炎蛇の暴走を巻き起こしている。芳乃によれば「本能の集合体」のようなもので、外から刺激を受ければ簡単に暴走する「荒ぶる神」として古代の人々も封印したのだと推測を立てている。

クレジット

原作

たかしげ 宙

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