兄に愛されすぎて困ってます

兄に愛されすぎて困ってます

実は血がつながっていないと発覚した日から、お互いを異性として意識するようになった兄・橘はるかと妹・橘せとか。そんな二人と、せとかに思いを寄せる「兄系イケメン」達の恋愛模様を描いた義兄妹ラブロマンス。小学館「Sho-Comi」2015年第14号から2018年第8号にかけて連載された作品。

正式名称
兄に愛されすぎて困ってます
ふりがな
あににあいされすぎてこまってます
作者
ジャンル
恋愛
レーベル
フラワーコミックス(小学館)
巻数
既刊11巻
関連商品
Amazon 楽天 小学館eコミックストア

世界観

恋愛が題材。それまでお互いを「兄」と「妹」だと思って生活していた高校生の男女が、実は血の繋がりがなかったことを知り、それをきっかけに変化していく2人の関係を描いている。主人公の橘せとかにとって「年上」で「自分に対して、兄のように接する」存在である「兄系イケメン」のキャラクターが他にも多数登場し、さまざまなタイプの男性との交流も描かれる。

作品誕生のいきさつ

夜神里奈は、コミックス1巻のおまけページで、本作『兄に愛されすぎて困ってます』誕生のいきさつを語っている。本作は「Sho-Comi」では王道ともいえる「兄と妹の恋愛」をテーマにした作品ではあるが、作者の夜神里奈はそれを「禁断の恋愛」として描きたくはないと考えていた。そのため「実は血が繋がっていない」という事実をあえて最初に明かし、その事実がもたらす人間関係の遍歴に重点を置くことで本作のコンセプトが決定したという。

あらすじ

第1巻

橘はるか橘せとかは、近所でも評判のなかよし兄妹だったが、実ははるかは、せとかを妹ではなく一人の女性として愛していた。そんな思いを隠しながら生活していく中、せとかがパスポートを申請した事をきっかけに、実はせとかは養子であり、ほかの家族とは血がつながっていない事が発覚する。これを知ったせとかはショックを受けるが、はるかはそんなせとかを心配に思いつつ、自分達が他人であれば、問題なく恋愛できる事を内心喜んでいた。そんなある日、とうとう気持ちを抑えきれなくなったはるかは、せとかにキスをする。せとかは、はるかにからかわれていると思うものの、その直後、せとかにしつこく言い寄る男性・御法川達郎をはるかが撃退。その後、はるかが改めてせとかに告白した事により、せとかははるかの思いと、はるかにときめいている自分に気づくのだった。後日、せとかは友人のみゆうの誘いで、聖レヲリウス学園の男子達と遊園地に行く事になる。そこでせとかは美丘千秋と二人で行動する事になるが、千秋ははるかの友人・美丘千夏の兄であったうえに、女遊びが激しい事で有名な男性であった。それを知ったはるかは現地に急ぎ、無理やりせとかを連れ去る。

第2巻

橘せとかは、橘はるかに自分をどう思っているのか聞かれ、たとえ血がつながっていなくても、兄妹としてなかよくしたいと答える。はるかはその答えに納得しつつも、だからといって簡単にはあきらめられないと告げるのだった。一方その頃、美丘千秋は、親密すぎるせとかとはるかの関係に興味を持ち、二人の関係を壊したら楽しいだろうと考えるようになっていた。千秋はせとかに近づくため、先日はるかに殴られた傷が回復するまで、自分の恋人になるよう求める。はるかへの思いが恋愛感情がかどうかわからず悩んでいたせとかは彼の言葉に応じ、こうして二人は、せとかの高校の文化祭をいっしょに回る事になる。しかしその途中、千秋の交際相手・美沙と偶然会った事で、せとかは千秋が女性の心を弄ぶ悪趣味な人間である事を知る。千秋には優しい一面もあると知るせとかは、美沙に改めて謝りに行こうと説得する。だが、まだ千秋を忘れられずにいた美沙は、そんなせとかを逆恨みしケガをさせようとする。

第3巻

橘はるか美丘千秋は、橘せとかを割れたガラスから守るために大ケガをし、揃って入院する事になってしまった。すぐに二人は退院できたものの、日常生活には支障があり、せとかはそんなはるかの世話をするたびに、彼を強く意識している自分に気づくのだった。そんなある日、せとかは鈴木に誘われ、剣道部の練習試合を見に行く事になる。そこには千秋がおり、みゆうが、鈴木と千秋のうち試合で勝った方がせとかと交際したらどうかと言い出した事により、二人はせとかの意思を無視して火花を散らしてしまう。勝負は千秋の圧勝で、試合後に千秋はせとかに改めて告白し、無理やりキスをする。驚いたせとかは、帰宅後はるかにこれを報告するが、はるかは許さず、二人はケンカになってしまう。このままでは自分の気持ちは伝わらないと考えたせとかは、はるかに自分からキスをし、自分が好きなのははるかであると、はっきり告げる。こうして二人はついに互いの思いを伝え合うのだった。

第4巻

橘せとか橘はるかは順調に交際していたが、美丘千夏は、この状況を快く思っていなかった。兄の美丘千秋と望まぬ跡目争いをしている千夏は、素行の悪い千秋がせとかとの出会いを機に更生してくれれば、千秋が美丘家の後継ぎとなり、自分は解放されると考えていたからである。そんなある日、千夏のアルバイト先であるLoiseau・Blueに、せとかがやって来る。ふだん千夏は女装をしているが、アルバイト中は本来の男性の姿に戻っているため、せとかは気づかずに来店したのである。そこでせとかがトラブルに巻き込まれた事に気づいた千夏はせとかを助けるが、せとかが店を去ったあと、せとかがはるかにもらった指輪を忘れていった事に気づく。ひとまず指輪を回収した千夏だったが、その直後、同級生の藤山がはるかとせとかの関係に気づき、二人を脅そうとしている事を知る。そこで千夏は女装姿を利用し、自分こそがはるかの恋人であると言ってその場を誤魔化す。しかしこれがきっかけで、千夏はせとかにすっかり女性として認識され、なつかれてしまう。この後起きたトラブルによりせとかは千夏が男性であったと理解するが、これを機に千夏は豹変。指輪と、本当は男性である自分と親密になりすぎている事を理由に、せとかを脅すようになる。

第5巻

美丘千夏橘せとかに、自分のアルバイト先であるLoiseau・Blueで、せとかも男装して働けと命令した。現在その店では、美丘千秋も働いており、以前とは見違えるほどまじめで一生懸命な男性となった千秋を見れば、せとかも心動かされるはずだと考えたのである。しかしいざ業務が始まると、千夏はせとかの事ばかり気になってしまい、千秋が、せとかが男装して働いている事に気づき接触しても、なぜか引き離してせとかを連れ出してしまう。これによって自分の気持ちに気づいた千夏は、せとかを迎えに来た橘はるかにライバル宣言。はるかと千夏は、バスケットボールで勝負する事になる。そこへ不良達が現れてせとかを襲おうとした事で、試合は中断。そんな中、千夏は身を呈してせとかを守るはるかを見て、今の自分では勝てないと悟る。そして、いつか実家の問題を清算して女装する必要もなくなったら、改めてせとかに告白すると告げてその場を去るのだった。こうして千夏との問題も解決し、せとかは以前はるかと千秋が入院した病院へ、ボランティアに行く。そこでせとかは次期院長である芹川高嶺と親しくなるが、彼は以前、せとかが「おにぃたん」と呼び非常に親しくしていた少年だった事が発覚する。

第6巻

橘せとか芹川高嶺の再会には、二人だけでなく、その両親までもが大喜びしていた。盛り上がった橘家と芹川家は、二人に無断で、1か月後の沖縄旅行で合流する約束までしてしまう。そんな事はつゆ知らぬせとかと橘はるかは、旅行で観光を楽しんでいたが、二日目の朝、せとかが母親に言われるまま支度すると、そこにはタキシード姿の高嶺が待っていた。二人の両親は、幼い頃高嶺とせとかが結婚の約束を交わした事を今も覚えており、再会を機にこの沖縄で模擬結婚式を行い、本当に婚約させてしまおうと考えたのである。せとかは逃げ出そうとするが、そのまま模擬結婚式は成立してしまい、ホテルの部屋に高嶺とせとかは二人きりにさせられてしまう。一方その頃はるかは、模擬結婚式に入って来られないように、母親から無茶なお使いをさせられていた。その途中、はるかは困っている老人を発見した事で帰りが遅れ、そのあいだに式が終わってしまう。ようやく戻って事態を把握したはるかに対し、せとかは、自分ははるか以外と交際するつもりはないし、はるかといられるのなら不幸になっても構わないと告げるのだった。

第7巻

冬のある日、橘せとか橘はるかの関係が、ついにみゆうにバレてしまう。てっきり非難されるとばかり考えていたせとかであったが、みゆうは、当然応援するし、ひとまずはバレンタインデーに向けた準備を申し出るなど協力的で、せとかは安堵する。一方その頃はるかは、沖縄で出会った老人のところでアルバイトを始めていた。何と彼はとある企業の社長で、はるかを気に入り、特別に働かせていたのである。さらに社長は、今後はるかを自社の社員として育てるため、自分の家に引っ越させ、高校も転校させる事で、専門教育を受けさせようとしていた。はるかもまた、せとかを将来幸せにするためには、少しでも早く社会人として自立する事が必要と考え、引っ越しを決意。せとかとはるかは、次の春から遠距離恋愛となるのだった。そして4月。新しい高校へ編入したはるかは、早速周囲の注目を集めていた。そんなはるかの世話係となった姫神亜衣加は、はるかの自由奔放な態度に振り回されて困っていた。しかしある日、はるかの交際相手がどうやら妹らしいと気づいた亜衣加は、それをネタにはるかを脅し、服従させようと考える。

第8巻

姫神亜衣加は、橘はるか橘せとかの関係をネタにはるかを服従させようとしたが、はるかの返事は、ばらしたいならばらせばいいというものであった。さらに亜衣加は、交際相手である社会科教師の藤智行から、突如別れを告げられてしまう。二人は以前校内で噂になった事があり、二度目はないと判断した智行は、わざと亜衣加に冷たくして身を引こうとしたのである。偶然これを知ってしまったはるかは、自分と亜衣加が親密にしていれば、まだ未練のある智行が黙っていないのではと考え、恋人のふりをする事を提案する。その作戦はうまくいくが、目撃者は智行だけではなかった。せとかが、ちょうどはるかに秘密で、高校を訪問していたのである。ショックを受けたせとかは、交通事故に遭いそうになり、そこを芹川高嶺に助けられる。高嶺はそんな暗い顔のせとかを案じ、後日食事に誘う。しかしせとかは、出掛けた先でもはるかと亜衣加がいっしょにいる姿を発見してしまう。はるかのせいで傷つくせとかを見ていられないと感じた高嶺は、そのまませとかを、雨宿りのために自宅に招く。そこでせとかはつい眠ってしまうが、目を覚ますとせとかは全裸で、高嶺は昨夜自分達は結ばれたと言い出すのだった。

第9巻

芹川高嶺は、橘せとかと自分達の両親に、二人が結ばれたと嘘をつく事で、無理やり結婚の話を進めようとしていた。高嶺達はすぐに結納の儀を始めてしまい、せとかはなすすべもなく参加させられるが、そこに姫神亜衣加の協力で結納の情報を得た橘はるかがやって来る。そこではるかは、両家の両親の前で、自分とせとかは交際しており、義理の兄妹ではあるが、将来結婚したいと思っていると告げる。せとかとはるかの両親は驚きつつもこれを受け入れ、高嶺もまた、もはや勝ち目はないと判断。高嶺とせとかが結ばれたというのは、結婚を無理に進めるための嘘であったと白状し、留学のために日本を去るのだった。こうしてついにせとかとはるかの関係は両親も公認となったが、それゆえにまじめな交際をするよう強く命じられ、たまに会う事ができても、節度を持って過ごすしかないという、もどかしい日々を過ごす事となる。

第10巻

秋になり、橘せとかの高校に、何人かの教育実習生がやって来る事になった。その中でも、矢高北斗は美形と評判で、生徒達の注目を集めていた。実は北斗には、生き別れの妹を探すために、高校に教育実習に来たという事情があった。そして北斗は、せとかがその妹である事を知る。せとかがすでに新しい家族と幸せに暮らしていた事から、北斗は何も言わず身を引こうと考えていたものの、生徒達の噂話から、せとかが義理の兄と交際しており、そのせいで同級生から白い目で見られている事を知ってしまう。黙っていられないと感じた北斗は橘はるかに接触し、矢高家でせとかを引き取りたいと申し出る。しかしはるかは応じず、北斗ははるかの攻撃的な態度に腹を立てる。そんな中、せとかへのいじめはエスカレートし、とうとうせとかは、階段から突き落とされてケガをしてしまう。幸いせとかは軽傷であったが、そんな彼女のもとに、悪い噂を流して間接的にせとかを攻撃し続けていたのは、北斗であるという情報が届く。

第11巻

矢高北斗がいじめの首謀者である事が発覚し、彼は学校を去った。以降、橘せとかは同級生から攻撃される事もなくなったが、そこに北斗の友人である田中が現れる。そして田中は、せとかが学校で悪い噂を流されていると知った北斗が、自分が首謀者だと嘘をつく事でいじめを教師達に周知させ、事態の解決を図ろうとしたのだと語る。これを聞いたせとかはすぐに北斗のもとへ向かうが、北斗は重い持病により、まともに起き上がる事もできない状態にあった。北斗はせとかを悲しませないためにわざと冷たく振る舞って追い出し、このまま死を待とうとしていたが、そこに、険悪な関係だったはずの橘はるかが現れる。はるかは北斗がいい治療を受けられるように、芹川高嶺に頭を下げて医者を紹介してもらったと語り、いつか行う自分とせとかの結婚式には、兄である北斗も来てくれないと困ると告げるのだった。その思いに感激した北斗は、せとかと会い、自分が実の兄であると打ち明ける事を決意する。

単行本の装丁

コミックスのカバー裏表紙部分には、橘はるか美丘千夏美丘千秋芹川高嶺の4人が、本作『兄に愛されすぎて困ってます』のモチーフでもあるドーナツを持って立っているイラストが描かれている。基本的に4人は背を向けた状態で描かれ、毎巻同じイラストが使われているように見える。しかし実は「カバー表紙に描かれたキャラクターのみがこちらを振り返っている」状態のイラストとなっており、各巻ごとに微妙なデザインの違いが楽しめる仕様になっている。

スピンオフ

本作『兄に愛されすぎて困ってます』には、主に「Sho-Comi」の増刊号に掲載されたスピンオフが多数存在する。内容は、橘せとかの友人であるみゆうの視点から、本作に登場する「兄系イケメン」たちを描いた物語や、怪我をした橘はるかの入浴をせとかが手伝う物語など。夜神里奈は、番外編を描く際には本誌よりも「より甘い」「よりセクシーな」展開を意識していると語っており、本編に加えて番外編も読むことで、キャラクターの違う一面を見ることができる仕組みとなっている。なお、これらの番外編も、本作のコミックスやファンブックにあたる「4.5巻」に収録されている。

関連作品

制服でヴァニラ・キス

本作『兄に愛されすぎて困ってます』は、夜神里奈の別作品である『制服でヴァニラ・キス』と同じ世界観で描かれている。本作は『制服でヴァニラ・キス』の2年後の世界にあたり、そのため4話では成長した『制服でヴァニラ・キス』のキャラクター、七瀬拓海が登場したり、東雲万里の母校である聖レヲリウス学園も登場する。また、『制服でヴァニラ・キス』のコミックス6巻には、幼い頃の橘せとか橘はるかが登場するエピソードも収録されている。

17歳、キスとジレンマ

本作『兄に愛されすぎて困ってます』の6話では夜神里奈の別作品である『17歳、キスとジレンマ』が、劇中劇として登場する。『17歳、キスとジレンマ』は橘せとか橘はるかの映画館デートの鑑賞作品として選ばれており、映画の半券でもタイトルが確認できるため、両作品のファンには嬉しいコラボレーションとなっている。

おやすみのちゅーはくちびるにして。

本作『兄に愛されすぎて困ってます』の18話では、夜神里奈の別作品である『おやすみのちゅーはくちびるにして。』に登場するカフェ「Loiseau・Blue」が美丘千夏のアルバイト先として登場する。『おやすみのちゅーはくちびるにして。』の光騎と本作の千夏は、アルバイト期間が入れ違いになっているため、光騎は本作18話には登場しない。しかし、夜神里奈はコミックス4巻のおまけスペースで「光騎がまだアルバイトをしていたら、橘せとかみゆうは「スタッフに素敵な男性が多い!」とさらに盛り上がっていたかも」と語っている。

メディアミックス

2017年夏に、本作『兄に愛されすぎて困ってます』の実写映画版が公開。橘せとか役は土屋太鳳、橘はるか役は片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、芹川高嶺役は千葉雄大が演じる。

キャラクターブック

2016年12月にファンブックとして『兄に愛されすぎて困ってます』4.5巻が発売。内容は、夜神里奈による書き下ろし漫画に加え、コミックスに未収録の番外編、設定資料など盛りだくさんの内容となっている。

登場人物・キャラクター

橘 せとか (たちばな せとか)

仁央河高校に通う1年生の女子生徒。前髪を右寄りの位置で斜めに分け、胸の下まで伸ばした茶髪ストレートロングヘアをしている。明るく心優しい性格で、可愛らしい容姿と抜群のスタイルから異性に人気があるが、本人にその自覚はない。そのため、やや隙が多く無防備なところがある。両親と兄の4人家族で仲良く暮らしていたが、パスポートの申請をきっかけに自分が養子であることを知る。 「義兄」となった橘はるかとの関係に悩むが、はるかが実は自分に想いを寄せていたことを知り、嫌われているとばかり思っていたせとかはさらに驚くことになる。彼の想いに困惑しつつも、次第に異性として大切に想うようになっていく。雷が苦手。

橘 はるか (たちばな はるか)

仁央河高校に通う男子生徒で、橘せとかの義兄。前髪を左寄りの位置で斜めに切った金髪のウルフカットをしている。容姿端麗で非常に目立つため女子から人気が高く、みゆうなどからは「はるか様」と呼ばれている。せとかのことは実の兄妹だと思っていた頃から非常に大切に想っており、義兄妹であることを知ってからは、その想いを抑えきれず悩んでいる。 普段は明るく頼りがいのある性格だが、独占欲が強く、やや「ヤンデレ」な一面がある。そのため、せとかと親しい男性に厳しく振る舞い、せとかを困らせることもある。

美丘 千夏 (みおか ちなつ)

仁央河高校に通う男子生徒。橘せとかの友人で、美丘千秋の弟でもある。「千夏」は「ちか」とも読めるため、「チカ」と名乗ることもある。前髪を目の上で切り、肩につかない長さのウェーブがかったボブヘアをしている。猫耳の付いた帽子をかぶっているのと、男子なのに女子の制服を着ているのが特徴。家庭の事情から女装して生活しており、小柄な体格と可愛らしい顔立ちも手伝って見た目も完全に女性。 はるかとは非常に仲が良く、はるかを無自覚に振り回すせとかのことは実はあまり快く思っていなかった。しかしある一件からせとかの人柄を知り、関心を持つようになる。女癖の悪い千秋のことを案じている。

美丘 千秋 (みおか ちあき)

聖レヲリウス学園に通う男子生徒で、美丘千夏の兄。前髪を左寄りの位置で分け、肩につかない長さの癖のある髪の毛をハーフアップにしている。右目尻のほくろが特徴。美しい容姿とスマートなふるまいから女子に非常に人気があり、千夏に「千秋が狙って、落とせなかった女性はいない」と言われるほど女性慣れしている。ナルシストでややひねくれた性格で、女性をその気にさせては平気で捨てるという、女性の心をもてあそんで楽しんでいるところがある。 橘せとかとは七瀬拓海を通じて知り合い、遊び相手の1人として考えていたが、次第にせとかの人柄に触れ、本気で想いを寄せるようになっていく。特技は剣道で、小学4年生から中学3年生まで、全国大会で6連覇したという素晴らしい成績の持ち主でもある。

芹川 高嶺 (せりかわ たかね)

勲智医大付属病院の院長の息子。前髪を左寄りの位置で分けて額を全開にした黒髪ストレートヘアで、眼鏡をかけた男子高校生。クールでそっけない性格だが、勲智医大付属病院の次期医院長として病院のスタッフから大きな信頼を寄せられており、まだ高校生で医師の資格はないにもかかわらず「若センセー」と呼ばれ親しまれている。橘せとかとは、橘はるかと美丘千秋が勲智医大付属病院に入院したことがきっかけで知り合う。

鈴木 (すずき)

仁央河高校に通う1年生の男子生徒で、橘せとかとは中学校時代からのクラスメイト。前髪を眉上で短く切ったウルフカットをしている。爽やかで親しみやすい性格で、せとかとは仲が良く、みゆうにも知られているほど、はっきりと想いを寄せている。しかし、橘はるかの妨害に遭うことが多く、なかなか会話できないのを歯がゆく思っている。 特技は剣道で、強豪校である仁央河高校剣道部のレギュラーになるほどの実力者。家では3人兄弟の長男でもある。

みゆう

橘せとかの友人で、仁央河高校に通う1年生の女子生徒。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につかない長さの後ろ下がりのボブヘアをしている。せとかと橘はるかが義兄妹であることは知らず、はるかに守られるあまり恋人を作ろうとしないせとかのことを案じている。そのため、せとかに男性を紹介したり、恋愛に関するアドバイスをすることもある。 帰国子女であるため、時折英単語混じりで芸能人のルー大柴のような口調で話す。

御法川 達郎 (みのりかわ たつろう)

仁央河高校に通う男子生徒。前髪を右から左へ流す形で上げて額を全開にした、撫でつけ髪をしている。派手なアクセサリーと丸い鼻、太目の体型が特徴。市議会長の息子で、裕福な家のお坊ちゃま。そのためわがままで身勝手なところがあり、欲しいものは手に入れないと気が済まない性格。橘せとかのことを入学当初から気に入っており、自分と交際するよう一方的に迫っている。

七瀬 拓海 (ななせ たくみ)

美丘千秋の友人で、聖レヲリウス学園に通う男子生徒。前髪を左寄りの位置で分けて額を全開にし、髪の大半を右に向かって流した髪型をしている。左目尻のほくろが特徴。橘せとかとはみゆうの紹介で知り合い、千秋を含めた4人で遊園地デートをすることになる。夜神里奈の別作品『制服でヴァニラ・キス』にも登場する。

美沙 (みさ)

美丘千秋の元交際相手の女子高生。前髪を眉の上で切り、胸のあたりまで伸ばしたロングウェーブヘアをしている。かつて、交際していた相手と別れてまで千秋を選んだが、その後あっさり捨てられてしまい、深く傷ついていた。そのため、偶然再会した千秋が今は橘せとかと親しくしていると知り、せとかに逆恨みするようになる。交際していた頃から千秋が本心では自分を愛してはいないことに気づいており、それでもいつか彼の本当の笑顔が見られるような深い間柄になりたいと思っていた。

藤山 (ふじやま)

仁央河高校に通う女子生徒。前髪を真ん中で分け、肩につくほどの長さのセミロングヘアをしている。非常に胸が大きくセクシーな容姿から、周囲からは密かに「パイ山」と呼ばれている。橘はるかのことを気に入っており、はるかには意中の相手がいると知りながら、何度もアプローチしては困らせている。

姫神 亜衣加 (ひめがみ あいか)

橘はるかの編入先の高校に通う3年生の女子。はるかが高校3年生の時に知り合ったため、同学年。前髪を眉上で切り揃え、胸の下まで伸ばした黒のストレートロングヘアにしている。校内のミスコンで1位になるほどの美貌に加え、クラスでは委員長を務める優等生。しかし、社会科教師の藤智行と密かに交際しており、一度校内で噂になってしまった事もある。はるかとは、3年生の春にはるかが転校して来た事で知り合い、智行からはるかの教育係を命じられる。しかし、はるかの自由奔放な態度に困らされていたところ、はるかが妹である橘せとかと交際しているらしい事を知り、これを知った事を理由にはるかを服従させられないだろうかと考える。だが、はるかはまったく動じなかったうえ、智行との関係に悩んでいる事を知られてしまう。そこで関係修復のために、姫神亜衣加の方がはるかに協力してもらう形になっていく。

藤 智行 (ふじ としゆき)

橘はるかの編入先の高校で社会科教師を務める若い男性。前髪を右目が完全に隠れるほど伸ばした、癖のある短髪。いつも笑顔で穏やかだが、やや頼りない。密かに姫神亜衣加と交際しているが、一度校内で噂になってしまった事があり、次に噂になった場合、お互い何らかの処分は避けられないと考えている。そこでわざと冷たい態度を取って亜衣加と別れようとするが、その思惑をはるかに知られてしまう。そこではるかは、実際には亜衣加への思いが冷めたわけではない藤智行に、自分と亜衣加が親し気にしている光景を見せつける事で嫉妬心をあおり、本音を引き出させようとする。

矢高 北斗 (やたか ほくと)

橘せとかの実の兄。仁央河高校に教育実習生としてやって来た男子大学生。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、亜麻色の短髪。中性的でかわいらしい容姿の、穏やかでおっとりとした性格。一方で思い込みが激しく、敵とみなした者には冷たい態度を取る、攻撃的な一面もある。もともとは「高尾」姓であったが、2歳の時に交通事故で両親を亡くして自分も大ケガを負い、しばらく意識を失っていた。ようやく意識を取り戻した頃には、妹のせとかは橘家に養子として引き取られており、自身も矢高家に引き取られ、現在の「矢高」姓になった。その後は温かく優しい両親のもとで不自由なく育つが、引き取られる前からあった持病は回復せず、自分は長く生きられないかもしれないと思い続けたまま現在に至る。そのため、どうしても生きているうちにせとかと再会したいと考えており、大学では教育学部ではないにもかかわらず教育実習に参加し、生きていれば高校2年生になっているはずのせとかを探すため、仁央河高校にやって来た。そこですぐにせとかを発見したものの、せとかが義兄の橘はるかのせいで不幸になっていると思い込み、二人を引き離そうとする。現在の両親には「ほくちゃん」と呼ばれている。

社長 (しゃちょう)

とある企業の社長を務める年老いた男性。頭頂部は禿げ上がり、こめかみの高さから顎の高さまで伸ばした外はねボブヘアに、顎ひげと口ひげを長く伸ばしている。小柄で、和服姿に帽子をかぶっている事が多い。沖縄で一人きりになってしまい、困っていたところを偶然通りがかった橘はるかに助けられる。これがきっかけではるかの事を気に入り、なにかあったら頼れと言ってその場は別れた。その後、はるかを将来的に自社の社員にしようと考え、アルバイトとして会社に呼ぶ。さらに自分の家に引っ越しさせ、高校ももっとハイレベルな学校に転校するようにと勧めた。はるかの、橘せとかと結婚したいという願いをかなえるためには、まずははるかが自立するべきだと考えており、そのサポートをする。

芹川 国光 (せりかわ くにみつ)

芹川高嶺の弟。橘はるかの編入先の高校に通う男子。前髪を左寄りの位置で、目が隠れないように斜めに分けた短髪。背が高く、足が長いモデル体型。しかし性格はやや気弱で、ヘタレと評される事が多い。バス通学をしており、毎朝同じバスに乗る美丘千夏を女性と勘違いして片思いをしていた。そこである日、痴漢に遭っている千夏を助けた事で知り合うが、すぐに男性と発覚し、失恋してしまった。子供の頃は病弱で、よく病院のお世話になっていた。

田中 (たなか)

矢高北斗の友人の男子大学生。仁央河高校に教育実習生としてやって来た。髪型は、前髪を額が見えるほど短く切った短髪。鼻が大きく、太眉が特徴。心優しく涙もろい性格で、北斗が妹探しのために、ずっと手を尽くしている事を知っている。そのため、北斗がいつか絶対に妹と再会してほしいと、強く願っている。

場所

聖レヲリウス学園 (せんとれをりうすがくえん)

美丘千秋と七瀬拓海が通う高校。超名門として有名な男子校で、偏差値、授業料ともに非常に高いお坊ちゃま学校。さらに学生には美形が多いということから、近隣の学校に通う女子生徒たちには「イケメン学校」としても人気がある。夜神里奈の別作品『制服でヴァニラ・キス』にも登場する。

Loiseau・Blue

美丘千夏がアルバイトしているカフェ。義母の目が届かない場所であることから、アルバイト中の千夏は女装をせず、ウエーブボブヘアのかつらを外して「チカ」と偽名を使い、男性として働いている。従業員に美形の男性が多い「イケメンカフェ」として知られており、普通に来店するだけでなく、閉店後の従業員目当てでたむろする女性客もいるほどの人気店。 夜神里奈の別作品『おやすみのちゅーはくちびるにして。』にも登場する。

書誌情報

兄に愛されすぎて困ってます 11巻 小学館〈フラワーコミックス〉

第1巻

(2015-10-26発行、 978-4091378132)

第2巻

(2016-01-26発行、 978-4091382412)

第3巻

(2016-03-25発行、 978-4091383303)

第4巻

(2016-09-26発行、 978-4091385093)

第5巻

(2017-03-24発行、 978-4091391605)

第6巻

(2017-06-09発行、 978-4091393692)

第7巻

(2017-06-09発行、 978-4091393708)

第8巻

(2017-10-26発行、 978-4091397478)

第9巻

(2017-12-26発行、 978-4091397836)

第10巻

(2018-02-26発行、 978-4098700455)

第11巻

(2018-05-25発行、 978-4098700868)

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