天獄の島

天獄の島

死刑が廃止された架空の日本。家族全員を殺された元戦争ジャーナリストの御子柴鋭が事件の真相を探るべく、自らも殺人を犯して、第一級流刑地の天獄島に乗り込む。無法地帯での危険なサバイバルと、裏でうごめく国家の陰謀を描くサバイバルバイオレンス作品。

正式名称
天獄の島
ふりがな
てんごくのしま
作者
ジャンル
サバイバル
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概要・あらすじ

西暦20X8年。御子柴鋭は5人を殺害した罪で、第一級流刑地の天獄島へと送られた。重罪人しかいない島で、御子柴は家族を惨殺したとされているかつての親友、榊亮児の手がかりを探す。島に着いてまもなく、唯一の街である天国闘技場で殺し合いを演じることになった御子柴は、その最中、榊の姿を目撃する。

登場人物・キャラクター

御子柴 鋭 (みこしば えい)

元戦争ジャーナリストの精悍な中年男性。5人を殺害した罪で遠流に処された。肩までの黒髪と無精ひげ、眼力の強い瞳が特徴。家族を惨殺した事件の犯人とされ、遠流に処された親友の榊亮児を追い、自ら望んで天獄島に送られた。苛烈な戦場を渡り歩いた経験があるため、天獄島の劣悪な環境にも怯えず、堂々とした振る舞いを見せる。 またそれなりの実戦経験と観察力を持っている。天国の住人となるための課題として第1区の代表者に選ばれ、闘技場での殺し合いに参加させられた際にも、冷静に対処する。

上妻 裕史 (こうづま ひろふみ)

御子柴鋭と同じ船で天獄島に流されて来た小男。非常に臆病な小心者で、怯えが強いほど口数が増える傾向にある。元銀行員で、詳細は不明だが、詐欺罪で遠流に処された。御子柴について天国にやって来たが、有馬から出される課題の内容を知らされないまま、邑崎区長に情夫として引き取られた。

榊 亮児 (さかき りょうじ)

御子柴鋭の親友。御子柴教授の助手をしていた男性。御子柴一家惨殺事件の犯人として天獄島に送られた人物。一や仕働夫を研究する医療チームに所属している。実は御子柴教授本人から一のことを託され、仕働夫の研究が完成しないようにと動いていた。

有馬 (ありま)

天国の南門に常在している管理人の老人。常ににこやかな笑みを浮かべている男性で、長い白髪とニット帽が特徴。御子柴鋭たちに食事や布団などの接待をし、天国に入るための課題を与えた。飄々として見えるが、壬影の死後に空席となった第1区の区長の座を狙って、御子柴を犯人に仕立て上げる野心も覗かせる。

壬影 (みかげ)

天国にある7つの地区のうち第1区の区長。常に大きな木製の仮面を身につけていたが、その素顔は90歳を目前にしていた老人。有馬からの連絡を受け、各地区の代表者たちで行われる闘技場での殺し合いに、御子柴鋭を参加させた。優勝地区の区長に与えられる報償として、一と同じく老化しない体を望み、不老薬の投与を受ける。

赤目の男 (あかめのおとこ)

研究途中の仕働夫。邑崎市長が治める第4区の代表者として、闘技場での殺し合いに参加した。第4区の代表には、くじ引きで決められた。眼球が全体的に赤く、俊敏な身体能力と戦闘における適切な判断力を持ち合わせている。

(いち)

天国で神と崇められている女性。少女の体を持っているが、実際は23歳。もともとは癌細胞に蝕まれた少女だった。御子柴教授が研究していた不老薬によって、癌細胞の進行は完全に停止し、悪性細胞も切除された。しかし、この不老薬によって健康な細胞まで成長が停止し、10年以上ほとんど変わらぬ姿で生きている。

御子柴教授 (みこしばきょうじゅ)

御子柴鋭の実父。一の担当医でもあり、榊亮児が研究助手をしていた老齢の男性。不老薬を作り出したことで、急激に老化する仕働夫の対策研究を強制されていた。自らの死を予見し、榊に一のことを託し、一以外のために不老薬を成功させてはならないと遺言を残す。

邑崎区長 (むらさきくちょう)

天国の第4区長を務めている男性。赤目の男をくじ引きで引き当て、闘技場での彼の活躍による報償を期待していた。男色家で、情夫を1人囲っている。赤目の男の敗北後は、期待外れに憤慨していたが、怯える上妻裕史を一目見て気に入り、新たな情夫に引き取る。

水沢 (みずさわ)

榊亮児と同じく、一や仕働夫を研究する医療チームに所属する男性。額が広く、大きな目が特徴。榊を非常に尊敬しており、疑問点があれば榊がすべて答えてくれる、と信じるほどに盲信している節がある。仕働夫の研究データが改ざんされていることに気付き、独自に集めていたデータと御子柴鋭の肉体を用いて、仕働夫を完成させようとする。

獅賀大臣 (しがだいじん)

厚生労働省の大臣を務めている男性。大柄な体格と人を威圧するような顔つきが特徴。一を天獄島に送った張本人。天獄島の本当の目的を知っている数少ない人物で、仕働夫の量産を目指して研究を命じた黒幕。島の視察や他国の要人を招く際には、北の施設を利用する。

3番 (さんばん)

ほぼ完全体の仕働夫。水沢が独自にデータを集めて作り出した。水沢の命令にしか従わない。他の仕働夫のように老いておらず、筋肉も衰えていない。このことによって、3番と一に共通する新種のホルモンが発見され、産業として仕働夫を量産、運用する計画が動き始める。

船口 修 (ふなぐち おさむ)

獅賀大臣の参謀。初老の男性で、表情は非常に乏しい。御子柴教授の一家が惨殺された現場に残り、駆けつけた榊亮児に不老薬の研究の続行を要請した。また北の施設においては指令役を務め、医療チームや警備からの情報の集積、指示を行っている。

集団・組織

仕働夫 (しどうふ)

天国における極めて従順な労働力にして奴隷。農耕、狩猟、漁業、建築をはじめとする、すべての労働を担う。3番以外の被験者は急激に老化している。神経ガスによって人格を破壊されるため、命令されたこと以外はなにもできず、上の人間に仕えて働くだけの存在。使い捨てにされる仲間との別れを惜しんで涙を流すこともあるが、有馬には無駄な感情と言われていた。 獅賀大臣には、最大の財源となり得る実験とも称される。

医療チーム (いりょうちーむ)

天獄島における最高位の支配階級。各地区の区長の任命権も有している。榊亮児、水沢が属しており、獅賀大臣の命令によって一の観察研究や、仕働夫の生産研究を行っている。チームとしての研究が遅々として進んでいなかったが、のちに研究データが榊によって改ざんされていたためと判明した。

場所

天獄島 (てんごくじま)

太平洋沖にある島で、第一級流刑の遠流によって流される流刑地。日本領土ではあるが、法も権利も国からの援助もない。現在は国から共存することを拒絶された重罪人のみが暮らしている。流刑地に選定されるまでは、過疎が進みながらも普通に人が暮らしていたため、島の中には電線や舗装道路もある。新しい流刑者は島の最南端にある上陸地で解放される。 島の中央には天国と言われる街があり、付近の森の中には天国から逃げ出したはぐれ者が住んでいる。しかし本来は死刑に値する人間を仕働夫としてリサイクルし、多目的な労働力として生産・輸出することを目的とした研究施設。

上陸地 (じょうりくち)

島の最南端にある、遠流に処された人間が開放される場所。絶壁の最下部に少し凹んだ形でしつらえられている。島内部とは鉄柵、電子ドア、船着き場側からしか開けることのできないドアの三重に仕切られ、島内部の流刑者が絶対に船着き場に入り込めない仕様となっている。

天国 (てんごく)

天獄島のほぼ中央にある大きな街。第1区から第7区までの地区があり、各地区をそれぞれの区長が管理している。一を神と崇める宗教めいた支配体制が敷かれており、街にいる9割の人間が仕働夫と呼ばれる奴隷にされている。

第1区 (だいいっく)

壬影が区長を務める地区。南門を擁しており、御子柴鋭を代表者として闘技場へと送り込み、見事優勝地区として輝いた。報償として住人たちは衣料、食料などの充分な物資を手に入れることになる。しかし壬影の死後は御子柴を生け捕り、医療チームに突き出している。

闘技場 (とうぎじょう)

7つの地区からの代表者に殺し合いをさせている場所。殺し合いは、高い塔から一が見守っている。武器の持ち込みはできず、一の近くにいる男たちから投げ入れられる槍や剣を用いるしかない。この闘技場で優勝した地区の区長は、医療チームから望みのものを与えられる。

北の施設 (きたのしせつ)

オスプレイの離着陸場所もある広い施設。周囲も非常に美しく整えられ、仕働夫研究のお披露目場所として、政府要人を招く施設となっている。エントランスには巨大な一の胸像が飾られ、仕働夫による和食のフルコースなども振る舞われる。警備室は武装され、また、施設自体に自爆装置が備えられている。

その他キーワード

遠流 (おんる)

新日本国刑法第X条による第一級流刑。死刑を廃止した日本において、死刑に替わる極刑として流刑が採用された。罪の重さに応じて3段階からなる流刑の最も重いものが遠流とされ、天獄島へと送られる。他に、「近流」「中流」があるが、その詳細は明らかにされていない。

不老薬 (ふろうやく)

御子柴教授が研究している未完成の新薬。一の癌細胞治療にと、厚生労働省から特別に許可を得て投薬していた。ヒト成長ホルモンに作用して老化を抑止するため、獅賀大臣は、制作過程で急激に老化する仕働夫の研究のために利用しようと、御子柴教授、ひいては榊亮児に持ちかけていた。しかし一以外に不老の効果が出た者はなく、壬影は副作用に耐えきれず出血死した。

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