丹下左膳

丹下左膳

戦前に大ヒットした林不忘(長谷川海太郎の別名義)の小説を原案にした痛快娯楽時代劇漫画。特異な容貌をしたニヒルな性格の剣豪の戦いを描く短編作品。手塚治虫には珍しく原作のある作品。同名の映画や舞台の主人公像と比較すると、少年向けにおどけたキャラクターにデフォルメされている。「おもしろブック」1954年12月号の別冊付録として掲載された作品。

正式名称
丹下左膳
ふりがな
たんげさぜん
原作者
林不忘
作者
ジャンル
時代劇
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概要・あらすじ

江戸時代、幕府指南役の柳生家に先祖から伝わる、百万両の黄金のありかを印した「こけ猿の壺」が行方不明となり、騒動となる。ひょんなことから壺を手に入れた孤児のちょび安は、壺を狙う者たちに襲われて危機一髪のところを、怪しげな浪人の丹下左膳に救われる。かくして百万両の黄金を巡り、欲に目がくらんだ魑魅魍魎が入り乱れてのチャンバラと、奪い奪われ、追いつ追われつの、派手な争奪戦が江戸の街を舞台に繰り広げられる。

登場人物・キャラクター

丹下 左膳 (たんげ さぜん)

左腕一本で日本刀を操る隻眼隻手の武士。屋形船をねぐらとし、勝手気ままな暮しをしている着流し姿のぐうたら浪人。しかし、ひとたび愛剣「濡れ燕」を抜刀するや、襲いかかる敵をバッタバッタと斬り倒す無敵の剣豪に変身する。周りからばけもの扱いされるほどの暴れ者だが、親代わりとなって孤児の面倒を見る人情家でもある。

チョビ安 (ちょびやす)

トンガリ長屋に住む孤児の少年。「十三里」という屋号の焼きいもの屋台を引いて生計を立てているしっかり者。相手が大人でも、悪人には敢然と立ち向かう勇気を持っている。しかし、丹下左膳に「自分のおとうちゃんになってくれ」と頼み込む、さびしがり屋の一面もある。おキヌに恋心を抱いている。

ツヅミの与吉 (つづみのよきち)

欲深な泥棒。神田八丁にその名が知れた大泥棒というのが自慢。司馬道場から「こけ猿の壺」を盗み出し、ひと儲けを企む悪者。弱い者には威張り散らすが、強い者に出会うと、とたんに卑屈になる臆病者でもある。

伊賀 源三郎 (いが げんざぶろう)

柳生家の子孫の武士。伊賀藩領主の弟。伊賀一刀流の達人として「伊賀のあばれん坊」の異名を持ち、吃音で、うりざね顔の美男子。司馬道場に婿入りするが、事前に身分を隠して道場に潜入調査するほどの戦略家。婿入り後は丹下左膳の力を借りて、奪われた「こけ猿の壺」を取り戻すために奮闘する。

おキヌ

トンガリ長屋に住む少女。作阿彌の孫娘。チョビ安とは口喧嘩ばかりしているが、実際は相思相愛の仲。活発過ぎていつも危険な眼に遭うチョビ安を心配する、けなげな性格。チョビ安の行くところには、どこにでも付いて行くという行動力がある。

司馬 十万斎 (しば じゅうまんさい)

司馬道場の道場主。多くの門弟を抱える十方不知火流の師範で、江戸では一流の剣道場の当主。病床に臥せっており、すでに死期が迫っている。後妻のお蓮と高弟の峰丹波の陰謀には気付かず、娘の司馬荻之と入婿の伊賀源三郎に、道場を託して逝去する。

司馬 荻之 (しば おぎの)

司馬十万斎の一人娘。父親であり道場主でもある司馬十万斎の遺言によって、顔も知らない伊賀源三郎を、嫌々ながら婿として迎える。結婚後は婿の源三郎の言葉に従順に従う、おとなしい性格の美人姫。

峰 丹波 (みね たんば)

司馬道場の一番弟子。道場主の信頼が厚く、道場の跡取りとなる伊賀源三郎と娘の司馬荻之への助力を託される。従順な家臣に見えるが、その裏ではお蓮と通じており、「こけ猿の壺」を手に入れて司馬道場を乗っ取ろうと、策略を謀る悪人。

お蓮 (おれん)

司馬十万斎の後妻。普段は道場主への従順さを装っているが、実は峰丹波と通じて、司馬道場の乗っ取りを企んでいる悪女。短銃を使う女傑でもある。婿入りしてきた伊賀源三郎に、峰丹波との悪だくみを暴かれる。意外な過去と数奇な運命を隠している。

作阿彌 (さくあみ)

高名な彫像作家であった老人。今は世をはかなんで、孫娘のおキヌと2人でトンガリ長屋に暮らしている。長屋の長老的存在で、長屋の住人を起こして号令をかけ、仕事に送り出す役目を毎朝続けている。丹下左膳にその正体を見破られる。

蒲生 泰軒 (がもう たいけん)

浮浪者の男性。ボサボサ頭に長い無精ヒゲ、ボロボロの着物を着て空地の土管で暮らしている。長い杖をついて江戸の町を徘徊する。実はその正体は、南町奉行所の大岡越前と通じている幕府側の隠密で、武道の達人。「こけ猿の壺」の争奪戦に加わり、越前の命を受けて暗躍する。

大岡 越前 (おおおか えちぜん)

江戸南町奉行。幕府の命により、隠密の蒲生泰軒を使って「こけ猿の壺」を手に入れる。そして、謎に包まれていた壺に秘められた謎を解き明かし、柳生家財宝の百万両の在り処を突き止める。花鳥風月に想いを馳せる風流な武士でもある。

クレジット

原作

林不忘

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